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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】芳香カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20240912BHJP
   A24B 15/16 20200101ALI20240912BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20240912BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20240912BHJP
【FI】
A24D1/20
A24B15/16
A24D3/17
A24F40/42
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024116183
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2023203716の分割
【原出願日】2019-04-24
【審査請求日】2024-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018095473
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018095478
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/153443(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206472844(CN,U)
【文献】特表2015-508676(JP,A)
【文献】特表2015-503337(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/20
A24B 15/16
A24D 3/17
A24F 40/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と接触するエアロゾルフォーマと香気成分を含む被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体と、前記被加熱芳香発生体の両端部のうちの芳香カートリッジの端部側に配設される蓋材と、前記被加熱芳香発生体に隣接するマウスピースとを、長手方向に連結するように巻装するカートリッジ外装体と、
を備え、
前記マウスピースは、前記被加熱芳香発生体に隣接する円柱状支持部材と、円柱状冷却部材と、前記冷却部材に隣接するフィルタと、を備え、
前記冷却部材は、連続孔を有する円柱状の多孔質体または貫通孔が設けられた円柱状の管で形成されており、空隙率が50~90%であ
前記被加熱芳香発生体は、煙及び前記香気成分の気体生成持続材料を有し、
前記気体生成持続材料は無機粒子である、
ことを特徴とする、芳香カートリッジ。
【請求項2】
前記無機粒子は、金属塩化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属のリン酸塩、チタン酸塩、酸化ケイ素、珪藻土、バーミキュライトのうちの何れか単独又は二つ以上からなる、
ことを特徴とする、請求項に記載の芳香カートリッジ。
【請求項3】
前記無機粒子は、平均粒子径が1~100μmである、
ことを特徴とする、請求項またはのいずれか一項に記載の芳香カートリッジ。
【請求項4】
前記無機粒子は、直径が10~50μmである、
ことを特徴とする、請求項またはのいずれか一項に記載の芳香カートリッジ。
【請求項5】
無機粒子が、前記被加熱芳香発生基材の表面または内部に存在する、
ことを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の芳香カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式喫煙具の電気制御式発熱体を備えたチャンバに、発熱体と接触するように装着され、発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができる芳香カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タバコの分煙及び禁煙が、職場や飲食店等の人々が集う空間に幅広く普及する傾向に従って、紙巻きタバコ等のように、火炎で燃焼したタバコの煙を吸う喫煙愛好者が減少するのに対し、ヒーター等の電気制御式発熱体によって伝達された熱によって発生する煙を吸引する加熱式喫煙具である電子タバコを利用する喫煙愛好者が急激に増加している。この原因は、従来の火炎式喫煙によれば、喫煙者及びその周囲の非喫煙者が、タバコ材及び紙の熱分解及び燃焼(600℃以上)によって生成される有害物質を吸引するのに対し、電子タバコによれば、タバコ材の熱分解及び燃焼に至らない低温(200~350℃)でタバコ材やエアロゾルフォーマを原料とした無害なグリセリン等の煙や芳香を喫煙者が吸引し、喫煙を楽しむことができる上、その周囲の非喫煙者に及ぼす影響も低減できるためである。
【0003】
このような電子タバコには、大別すると二種類ある(非特許文献1及び2)。一つは、タバコの葉等が入ったカプセルやスティックを加熱して煙等を吸引するカプセル型電子タバコ及びスティック型電子タバコである。もう一つは、香りや味のついた液体を加熱して発生させた蒸気を吸うリキッド型電子タバコである。
【0004】
特に、スティック型電子タバコは、従来の紙巻タバコと、形態、喫煙方法、及び、味わい等における類似性が高い上、紙巻きタバコのような有害物質の吸引量が少ないため、その愛好者が多く、様々な開発が行われている(例えば、特許文献1~3)。具体的には、タバコ成分と共に、煙となるエアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマ、香料、結合剤等で紙巻きタバコのようなスティック状に加工されたエアロゾル形成体にマウスピースが備えられたスティック(電子タバコカートリッジ)を加熱式喫煙具に装着して喫煙する電子タバコである。その喫煙の仕組みは、エアロゾル形成体を加熱式喫煙具の熱源と接触するように装着されて加熱されると、エアロゾル形成体からエアロゾルフォーマを含む揮発物が放出されると同時に、この揮発物は、喫煙者の吸引によって空気と共に他端のマウスピース側に吸い込まれ、この揮発物の搬送工程において、エアロゾルフォーマの揮発物は冷却、凝縮して、煙のようなエアロゾルを形成すると共に、その他の揮発物は、喫煙者の口及び鼻に芳香を与え、その結果として喫煙を楽しむことができるというものである(特許文献2)。この仕組みによれば、スティック型電子タバコのような加熱式喫煙の場合、エアロゾル形成体に含まれるグリセリンまたはプロピレングリコール等のエアロゾルフォーマを揮発させることができる200~250℃程度、すなわち、タバコの葉の熱分解が開始する程度の温度で喫煙できる。このため、少なくとも燃焼するために必要な600℃、更に喫煙時には900℃を超える温度で燃焼する火炎式喫煙の場合と比較して、温度の上昇と共に発生量が多いと言われている有害物質の発生が抑制され、健康に悪影響を及ぼすことが少ない。
【0005】
また、リキッド型電子タバコは、スティック型電子タバコと異なり、タバコ成分が含まれておらず、コーヒー、コーラ、レッドブル等の飲料、チョコ、バニラ、クリーム等のデザート、オレンジ、レモン、メロン等の果物、メンソール、ミント、ハーブ等の清涼剤等、様々な味わいを楽しむことができる新しい喫煙具である(非特許文献2)。具体的には、プロピレングリコール及び植物性グリセリンに香料を混合した液体を加熱して蒸発した揮発物を吸引する電子タバコである。有害物質が全く入っておらず、タールやニコチンも発生することがなく、多種多様な味わいを楽しめるということに最大の特徴があり、実際に、多種多様なリキッドが販売されている。
【0006】
更に、近年、このような二つの電子タバコの特徴の融合が試みられている(特許文献4)。上述したように、従来のスティック型電子タバコの加熱されるスティック状に加工されたエアロゾル形成体にはタバコ成分が含まれていたため、少量とはいえ、有害物質の発生、タールやニコチンも発生していた。そこで、特許文献4では、スティック型電子タバコの課題であったタバコ成分を含まないスティック型電子タバコを発明している。すなわち、タバコ成分の代わりに、喫煙による心身の安らぎ、健康及び美容の増進に役立つ効果がある香気だけを発生させる非タバコ材を採用し、エアロゾルフォーマ、結合剤等を配合したエアロゾル形成体を使用するスティック型電子タバコである。
【0007】
しかしながら、このような非タバコ材のみを使用するスティック型電子タバコでは、そのエアロゾル形成体に繊維を多量に含むタバコ材を用いることができない上、様々な風味を放出させるために、多種多様な非タバコ材を使用するが故の問題を抱えている。
【0008】
まず、タバコ材を含むエアロゾル形成体は、タバコ材の繊維がその塊状状態を維持し、タバコ材の脱落及び融着を妨げていたが、繊維を多量に含んでいない非タバコ材を使用する場合、被加熱芳香発生シート又は被加熱芳香発生充填物(以下、「被加熱芳香発生基材」という。)の塊状状態を安定して維持するためには、繊維の機能を果たす結合剤等を多量に使用することになる。そのため、結合剤が増加すると、被加熱芳香発生基材の密度が高くなり、加熱により放出されるエアロゾルフォーマ及び非タバコ材の被加熱芳香発生基材内部からの揮発成分(以下「気体」)の流路(以下「気体流路」)が閉ざされ、エアロゾルの煙や非タバコ材の香気成分(以下「吸引成分」)の吸引が困難となり、結果として、吸引量が低下する。
【0009】
また、エアロゾルフォーマは、常温で液体であるグリセリンやプロピレングリコール等であるため、結合剤が多くなる程被加熱芳香発生基材から経時的にブリードアウトし、被加熱芳香発生基材同士が融着する。そのため、気体流路が閉ざされ、吸引成分の吸引が困難となり、結果として吸引量が低下する。また、このような融着が生じると発熱体が被加熱芳香発生基材の中に挿入することが困難になるばかりか、発熱体を破損する場合もある。具体的には、輸送中又は倉庫・店先で保管中に被加熱芳香発生基材が貼りつき、固まってしまい、発熱体による貫通が困難となり、カートリッジの破損、又は、発熱体の破損を招くことがある。
【0010】
逆に、結合剤等の添加量を低減し、気体流路を確保すると、非タバコ材の脱落や粉塵等が発生し、カートリッジの形態を強固に維持することが困難で、発熱体に挿入されると破壊してしまう場合がある。また、これらが、口腔内に吸引される場合も生じる。
【0011】
すなわち、煙となるエアロゾルの発生や非タバコ材から放出される香気成分の発生を維持する必要があるため、被加熱芳香発生基材を構成する組成物や配合比を大きく変更して解決することは難しい。そのため、吸引量に大きな影響を及ぼすマウスピースの構造、並びに、被加熱芳香発生基材の製造方法及びその充填状態等に着目した解決手段が求められるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
特許文献1:特表2010-520764号公報
特許文献2:特表2013-519384号公報
特許文献3:特表2016-538848号公報
特許文献4:特許第6371928号公報
【非特許文献】
【0013】
非特許文献1:「電子タバコ人気8選!初心者さんに電子タバコのタイプを解説」,Digmoホームページ,https:digmo.infoseek.co.jp/articles-410
非特許文献2:「電子タバコリキッドおすすめランキング|おいしく吸える人気商品15選」,Customlifeホームページ,https://customlife-media.jp/electronic-cigarette-liquid
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述したように、タバコ成分を全く使用せず、非タバコ材のみを使用するが故の特有の吸引力低下の課題、すなわち、被加熱芳香発生基材内及び被加熱芳香発生基材間における気体流路の閉塞による吸引成分の吸引量低下の課題、を解決することができ、非タバコ材等の脱落や粉塵の発生もない芳香カートリッジを提供することを目的としている。
【0015】
なお、ここでは「芳香カートリッジ」とするが、「喫煙カートリッジ」や「電子タバコ互換カートリッジ」と呼んでもよい。
【0016】
香りの元になるものとしては、タバコ成分の無い非タバコ材を使用するものにも適用される。
【0017】
「芳香」は「良い香り」の意味であり、素材そのものから漂う香り(フレグランス)、加熱されたときに空間に漂う香り(アロマ)、吸引したときに口に漂う香り(フレーバー)、などを含む。
【0018】
「喫煙」は、一般にはタバコを吸うことを意味することが多いが、ここでは、単に「煙を楽しむ」「煙を味わう」「煙を堪能する」の意味であり、煙の元になるものはタバコに限定されず、非タバコ材を使用するものにも適用される。また、ここでの「煙」には、例えばエアロゾルなどの空気中に分散した液滴のように、「煙に見えるもの」「煙状のもの」も含まれる。
【0019】
「電子タバコ互換カートリッジ」も、タバコ成分を含むか否かに関わらず、単に「タバコ成分を含む電子タバコカートリッジと相互に交換して使用可能な(互換性有の)カートリッジ」と定義される。
【0020】
より具体的には、電気制御式発熱体をチャンバ内に備えた加熱式喫煙具の発熱体に接触するように装着され、発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができる円柱状の芳香カートリッジにおいて、少なくとも煙と香気成分を濾過するフィルタを備えるマウスピースと少なくとも発熱体と接触する被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体とが隣接してカートリッジ外装体で巻装されており、マウスピースに気体の吸引量を向上させる機能及び非タバコ材等の脱落物や粉塵を捕捉する機能を有する機構、並びに、被加熱芳香発生体に気体の吸引量を低下させず、非タバコ材等の脱落や粉塵のない構造を有する材料を備えた芳香カートリッジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち、本発明の芳香カートリッジは、発熱体と接触する被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体と、前記発熱体からの加熱により生成されるエアロゾルの煙と香気成分とを濾過するフィルタを備えるマウスピースと、前記被加熱芳香発生体と前記マウスピースとを連結するように外周を包んだカートリッジ外装体と、を備え、前記被加熱芳香発生体及び前記マウスピースの少なくとも一方は、前記煙及び前記香気成分の吸引最適化手段並びに前記煙及び前記香気成分の気体生成持続材料の少なくとも1つを有する。
【0022】
このような吸引最適化手段及び気体生成維持材料は、それぞれ、次のような構造及び材料のことを意味する。吸引最適化手段は、マウスピースの吸引量を向上させる構造、被加熱芳香発生体の非たばこ材等の脱落物や粉塵の発生を防止し、補足する構造である。より具体的には、マウスピースを構成するフィルタに備えられる気体流路の拡大による吸引量の向上を図るキャビティ、マウスピースを構成する被加熱芳香発生体のマウスピース側への移動を防止する支持体に備えられる変形による吸引量低下を防止する形状補強部材、マウスピースに備えられる熱の拡散による接合部の破損を防止する断熱材、並びに、非たばこ材等の脱落物や粉塵の発生を防止する蓋材及び補足する隔壁材を意味する。気体生成維持材料は、被加熱芳香発生体から放出される気体の流路が閉塞されない材料である。より具体的には、製造方法により内部構造が改良された被加熱芳香発生基材、配合量が最適化された被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材の内部及び/又は表面に存在する無機粒子、充填率が改良された被加熱芳香発生基材である。以下、これら本発明の構造及び材料について詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の芳香カートリッジでは、フィルタは、繊維を円柱状に成形したもので、且つ、前記マウスピースの全体又は一部を構成するものであり、吸引最適化手段は、フィルタ内に長手方向に貫通しないように設けられたキャビティを有する。このフィルタは、一般的に使用されているセルロースアセテート(CA)繊維やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維等で形成されているフィルタであって、非タバコ材を使用する被加熱芳香発生体の芳香カートリッジの場合、一般的な喫煙者が吸引する気体の流量が十分ではないため、キャビティにより吸引量を向上させたものである。
【0024】
キャビティは、その形状や数量について、特に限定されるものではなく、被加熱芳香発生体の種類に対応して適宜決定されればよいが、一般的な喫煙者が吸引する気体量を増加する効果、及び、キャビティの製造方法の難易度を考慮すれば、フィルタの長手方向のどちらか一方の端部又は両端部に少なくとも1つ配設されていることが好ましい。
【0025】
また、キャビティが形成される位置は、喫煙者が吸引した際に、吸引される気体が均一に口腔内全体に入るように配設される。キャビティが一つの場合には、フィルタの長手方向に存する円柱の中心軸上に形成することが好ましい。キャビティが二つの場合には、フィルタの長手方向に存する円柱の中心軸を対象の中心として形成することが好ましい。更に、フィルタが三つ以上の場合には、フィルタの長手方向に存する円柱の中心軸上、並びに、フィルタの長手方向に存する円柱の中心軸上及びフィルタの長手方向に存する円柱の中心軸を中心として回転対称な位置に配設されていることが好ましい。
【0026】
更に、キャビティの形状についても、一般的な喫煙者が吸引する気体量を増加する効果、及び、キャビティの製造方法の難易度という観点から、柱状又は錐状であることが好ましいが、柱状又は錘状の底面の形状は限定されるものではない。しかし、これらのキャビティは、一般的な機械的ドリリング、放電加工、レーザー加工で形成することが効率的であるため、加工性という観点からは、円柱状又は円錐状が好ましい。
【0027】
このようなフィルタは、フィルタ単独でマウスピース全体を構成しても良いが、マウスピースの一部であっても良い。マウスピースの一部がフィルタである場合、その残部は、カートリッジ外装体によって形成される空洞であることが好ましい。そして、フィルタと空洞の配列は特に限定されることはなく、被加熱芳香体とフィルタとが隣接しても、被加熱芳香体と空洞とが隣接してもよい。カートリッジ外装体は、通常、PE、PP等のポリオレフィン樹脂、PET樹脂、CA樹脂、及び、ポリ乳酸(PLA)等の薄いフィルム、並びに、薄い紙等が使用されるが、カートリッジ外装体で空洞を形成する場合、材質により異なるが、マウスピースとしての強度を維持するだけの厚さが必要である。
【0028】
更に、マウスピースには、フィルタ以外の好ましい機能を有する部材を配備し、マウスピースの機能を向上させることができる。このような代表的な部材としては、一般的に、被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止するための支持部材、及び、被加熱芳香発生体のエアロゾルフォーマが揮発した後、冷却されて煙の生成を促進し、気体の温度を低下させるための冷却部材があり、フィルタと共にマウスピースを構成することがある。このような部材は、いずれか一方だけを適用してもよいし、両方を適用してもよい。いずれか一方を適用する場合は、被加熱芳香発生体とフィルタの間に配設される。両方を適用する場合は、被加熱芳香発生体とフィルタの間に、支持部材と冷却部材をこの順又は逆順に配設される。
【0029】
なお、冷却部材により気体の温度を低下させる必要があるのは、揮発してきたエアロゾルフォーマを冷却、凝縮して煙を発生させることを目的とするだけでなく、紙巻きタバコと比較して、芳香カートリッジの加熱部とマウスピースとの極端に短い間隔で、気体自体の温度を下げ、口腔内で心地よい喫煙を楽しめるようにするためでもある。従って、冷却部材は、熱交換器の役割を果たすものが好ましく、空隙率が高い連続孔を有する円柱状の多孔質体や数多くの貫通孔が設けられた円柱状の管等が用いられる。空隙率は、少なくとも50%以上は必要であり、70~90%であることが好ましい。素材としては、PE、PP等のポリオレフィン樹脂、PET樹脂、CA樹脂、ポリ乳酸(PLA)等が使用されてきたが、熱導電性の高いアルミニウム等の金属箔をこれらに巻き付けたもの、及び、金属そのものであるものがより好ましい。
【0030】
このように、マウスピースは、喫煙者が芳香カートリッジを口で咥え易くすると共に、気体を濾過し気体の味わいをまろやかにするフィルタを必須構成部材とし、必要に応じて、支持部材及び/又は冷却部材を配設することができる。この構造を利用すると、気体の吸引を妨げるのはフィルタであるため、フィルタの長さを短くして吸引量を高めることが可能になる。そこで、上述したようなキャビティを設ける代わりに、フィルタを短くして吸引量を高めるマウスピースの構造を検討した。
【0031】
芳香カートリッジ自体の長さおよび被加熱芳香発生体の長さは、加熱式喫煙具の構造に従って決定されるため、マウスピースのフィルタを短くする場合、フィルタの一部を支持部材で置き換える構造となる。従来、支持部材は、被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する反面、気体の通過を妨げることはできないため、側面の厚さが薄い中空円柱状の構造で、素材としては、安価なポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、CA樹脂等のプラスチック、並びに、紙等が使用されてきた。そして、気体の通過を妨げないためには、空洞で、支持部材の側面の厚さが薄い程好ましい。しかし、フィルタを短くして、このような支持部材の長さを長くすると、マウスピースが容易に変形するという問題が発生する。
【0032】
この課題に対し、本発明は、少なくともフィルタと支持部材から構成されるマウスピースを備えた芳香カートリッジにおいて、支持部材の長さを大きくし、側面の厚さを薄くしても、マウスピースが変形することなく、吸引量を低下させることがない支持部材の構造を提供するものである。
【0033】
すなわち、この芳香カートリッジでは、マウスピースは、被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する、貫通孔を含む支持部材を有し、支持部材と貫通孔の円柱の中心軸が略同一であって、吸引最適化手段は、貫通孔内に固定的又は可動的に配設される形状補強部材を含む。より具体的には、この形状補強部材が、支持部材とその貫通孔の軸を面内に有し、貫通孔の内壁と接触する少なくとも1つ以上の板状部材を備えて構成される。このような板状部材を、支持部材の円柱状貫通孔に配設することによって、円柱状支持部材の長さを大きくし、側面の厚さを薄くしても、素材を変える必要がなく、支持部材の変形を防止することが可能となる。この板状部材の形状は、円柱の軸方向に切断した断面、すなわち、長方形であることが好ましく、吸引量という観点からは、厚さは薄い程好ましく、数は少ない程好ましいが、変形を防止するという観点も考慮して、2~4枚、厚さは0.1~0.5mmのポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0034】
更に、形状補強部材が、支持部材と貫通孔との円柱の中心軸と略同一の軸を有する貫通孔の半径より小さい半径を有する同心円柱と、同心円柱の外周側において同心円柱の半径方向に貫通孔の内壁と接触するように形設される板状部材とを備えることが、支持部材の変形を防止するためにより好ましく、気体の吸引という観点から、同心円柱が中空であることがより更に好ましい。
【0035】
このように、被加熱芳香発生体に隣接して被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止するための形状補強部材が配設される支持部材と、支持部材に隣接するフィルタとを備えるマウスピースが適用された芳香カートリッジでは、支持体が変形することなく気体の吸引を最適化することができるが、より幅広く気体の吸引を制御するためには、フィルタとしてキャビティを有するフィルタを適用することがより好ましい。更に、揮発したエアロゾルファーマを効率よくエアロゾルの煙とすることができる冷却部材をフィルタと支持部材の間に配設することもできる。これらいずれの場合にも、吸引量をより最適化するためには、フィルタとして、キャビティを有するフィルタを適用することが好ましい。
【0036】
一方、フィルタ及び支持部材の改良によって吸引量が増加するに伴い、気体の熱が、発熱体からフィルタに対流して伝わりやすくなるため、芳香カートリッジを構成する各部材間の接合力が低下する場合がある。このような接合面の箇所は、芳香カートリッジの構成により異なるが、被加熱芳香発生体とフィルタ、支持部材、冷却部材及びカートリッジ外装体との界面、フィルタと支持部材、冷却部材及びカートリッジ外装体との界面、支持部材と、冷却部材及びカートリッジ外装体との界面、冷却部材とカートリッジ外装体との界面等が挙げられる。
【0037】
このような各界面の接合力が低下すると、気体が漏洩して吸引量に悪影響を及ぼすため、被加熱芳香発生体とマウスピースとの間に断熱部材を設けることが好ましい。この断熱部材は、被加熱芳香体に隣接する支持部材のように、高温の気体を全体に行き渡らせるのではなく、流路の長い連続孔のスポンジのようなプラスチック製の断熱性多孔質体が好ましく、多少滞留させて冷却する程度の機能を有するものであればよい。従って、断熱部材の長さは極めて短く、冷却部材までの冷却機能は必要がなく、被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する支持部材の代わりに適用されることが好ましい。
【0038】
また、チャンバの底に針状の発熱体を備えた一般的な加熱式喫煙具(図2)ではなく、チャンバを発熱体が被覆するような加熱式喫煙具(図3)の場合、芳香カートリッジに及ぼす熱の影響はより大きく、上述したような各部材界面の接合力の低下が著しいため、断熱部材を設け、接合力の低下、すなわち、吸引量の低減を防止する必要がある。このように、本発明は、発熱体の熱の影響を排除して吸引量の低減を防止するという観点から、被加熱芳香発生体とマウスピースとの間に、吸引最適化手段として断熱部材を介在させた芳香カートリッジを提供するものでもある。
【0039】
更に、被加熱芳香発生基材は、種々の芳香を放つため、繊維成分が極端に少なくなる場合がある。このような場合には、結合剤の配合量等の調整が施されるが、芳香を維持するためには大幅に非タバコ材の配合比を低減することはできず、非タバコ材等の脱落物や粉塵が通常よりも生じやすい。これらは、喫煙によってマウスピースの方向に運ばれ、フィルタ及び冷却部材の空隙を詰まらせる要因となって、吸引量を極端に低下させる。また、このような配合の被加熱芳香発生基材の場合、芳香カートリッジを針状の発熱体に突き刺す場合にも脱落物や粉塵等を発生しやすい。
【0040】
そこで、本発明は、吸引最適化手段として、被加熱芳香発生体のマウスピース側の端部に蓋材を、マウスピースの反対側の端部に隔壁材を配設する芳香カートリッジを提供するものでもある。蓋材及び隔壁材は、被加熱芳香発生基材及びそれらを束ねた被加熱芳香発生体の状態に応じ、いずれか一方だけ備えてもよいし、両方備えてもよい。この蓋材及び/又は隔壁材により、脱落物や粉塵によるフィルタ及び/又は冷却部材の目詰まりが防止され、安定した吸引量が確保される。
【0041】
以上、芳香カートリッジの気体の吸引最適化を、構造的に改良する解決手段を説明した。しかし、吸引最適化を図るためには、加熱により気体を放出する被加熱芳香発生体の改良も必要である。被加熱芳香発生体の気体放出量は、上述した吸引量と密接な関係にあり、以下、この点について説明する。本発明では、気体放出量を安定化する材料を気体生成持続材料と称する。
【0042】
被加熱芳香発生体の加熱による気体放出量改良が持続されない理由は、既に説明したが、本発明において重要なポイントであるため、改めて説明する。タバコ材を含むエアロゾル形成体は、タバコ材の繊維がその塊状状態を維持し、タバコ材の脱落及び融着を妨げていたが、繊維を多量に含んでいない非タバコ材を使用する場合、被加熱芳香発生基材の塊状状態を安定して維持するためには、繊維の機能を果たす結合剤等を多量に使用することになる。そのため、結合剤が増加すると、被加熱芳香発生基材の密度が高くなり、気体流路が閉ざされ、吸引成分の吸引が困難となる。
【0043】
また、エアロゾルフォーマは、常温で液体であるグリセリンやプロピレングリコール等であるため、結合剤が多くなる程被加熱芳香発生基材から経時的にブリードアウトし易く、被加熱芳香発生基材同士が融着するので、被加熱芳香発生基材間の流路を閉ざし、吸引成分の吸引が困難となる。また、このような融着が生じると発熱体が被加熱芳香発生基材の中に挿入することが困難になるばかりか、発熱体を破損する場合もある。逆に、結合剤等の添加量を低減し、気体流路を確保すると、非タバコ材の脱落や粉塵等が発生し、芳香カートリッジの形態を強固に維持することが困難で、発熱体に挿入されると破壊してしまう場合がある。また、これらが、口腔内に吸引される場合も生じる。
【0044】
そこで、本発明では、まず、被加熱芳香発生基材の製造方法[装置]により、上記課題を解決しうることを見出した。なお、以下では、主に各工程を備えた製造方法に沿って説明するが、各工程を実行する手段を備えることで、全体としてその製造方法を実施できる製造装置が存在することは明らかである。このため、製造方法と製造装置の説明を重複することなく、「工程[手段]」、「方法[装置]」として、同時に(重ねて)説明するものとする。
【0045】
さて、被加熱芳香発生基材の製造方法[装置]により、上記課題を解決しうる理由は、被加熱芳香発生基材が、純水及びアルコール等の媒体に、非タバコ材、エアロゾルフォーマ、結合剤、付着防止剤、香料、非タバコ材抽出物、抗菌性保存剤等から選択される素材が媒質として分散又は溶解した組成物から、抄紙法、ロールプレス、プレス等の圧縮成形法、及び、キャスト法等で成形されたシートを乾燥させた後、裁断して製造されており、成形及び乾燥工程[手段]における製造方法[装置]によって、被加熱芳香発生基材の内部構造が種々変化するためであると考えられる。
【0046】
この根拠は、例えば、異種高分子のブレンドにおいて、ブレンド物の相分離構造が製造方法[装置]や製造条件の影響を受けこと、油を水中に分散させるエマルションやサスペンション等の場合に、油中水滴型又は水中油滴型となるかは、油の種類、油と水の配合比、界面活性剤の種類等様々な要因の影響を受けることにある。そして、このような製造方法[装置]の違いによる被加熱芳香発生基材の構造の明確な差異を分析することは、含まれている材料系が複雑であるため、ほぼ不可能であり、分析法を見出すために多大な労力が必要であると考えられる。高分子ブレンドやエマルション等を製造方法[装置]によって内部構造に差異が生起するということの根拠としたのは、配合される物質が限定的であり、研究の歴史が長く、分析手法が確立されているため、製造条件により生起する構造の差異が明確になっているためである。
【0047】
被加熱芳香発生基材の製造方法[装置]は、既に種々検討されているが、次のような一例がある。非タバコ材を乾燥・粉砕した後、乾式混合して非タバコ材を準備する工程[手段]と、エアロゾルフォーマ、結合剤、付着防止剤、香料、非タバコ材抽出物、抗菌性保存剤等から選択される素材を準備する工程[手段]と、純水及びアルコールを準備する工程[手段]と、これらの準備された材料を一括して混合する湿式混合工程[手段]と、湿式混合して製造されたスラリーから含水シート製造する抄紙工程[手段]、抄紙された含水シートをロールプレスしてシートを製造する成形工程[手段]と、成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥する工程[手段]とから製造された被加熱芳香発生シートを裁断して被加熱芳香充填物を製造する方法[装置]である。
【0048】
しかし、このような方法[装置]で製造された被加熱芳香発生基材は、塊状状態の維持が困難であるため、多量の結合剤が必要であり、エアロゾルフォーマのブリードアウトによる被加熱芳香発生基材の融着が生じやすいという問題があった。従って、この充填物を用いた被加熱芳香発生体の気体放出量は、経時的に大きく変化し、喫煙者が、安定した気体の吸引をすることはできなかった。
【0049】
本発明の芳香カートリッジにおける、被加熱芳香発生体の気体放出量を安定化する材料、すなわち、気体生成持続材料は、第一に、乾燥して粉砕した非タバコ材を混合する乾式混合工程[手段]と、乾式混合工程[手段]で製造された非タバコ材と、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とをアルコール及び純水混合液に混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]によって製造された非タバコ材等を含むアルコール及び純水混合液に、純水及び/又はアルコールを更に添加して非タバコ材等を含むスラリーを製造する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮してシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから製造される被加熱芳香発生基材である。
【0050】
この方法[装置]における製造の特徴は、第二の湿式混合にある。この純水及びアルコールを添加した第二の湿式混合によって、ポリプロピレングリコールやグリセリン等のエアロゾルフォーマと非タバコ材との分散状態が改善されるため、結合剤の添加量を増加させることなく、被加熱芳香発生基材の塊状状態を安定化でき、エアロゾルフォーマのブリードアウトが低減できる。特に、アルコールは、エタノールやプロパノール等の低級モノアルコールが効果的で好ましく、その添加量は、非タバコ材100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
【0051】
本発明の第二の芳香カートリッジにおける気体生成持続材料は、乾燥して粉砕した非タバコ材を混合する乾式混合工程[手段]と、乾式混合工程[手段]で製造された非タバコ材と、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とをアルコール及び純水混合液に混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]によって製造された前記非タバコ材等を含むアルコール及び純水混合液に、純水及び/又はアルコールを更に添加して非タバコ材等を含むスラリーを製造する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮又はキャストしてシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]によって、含水量を50質量%未満に減少させた含水シートにエアロゾルフォーマを塗布又は浸漬させるエアロゾルフォーマ吸収工程[手段]と、エアロゾルフォーマ吸収工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから製造される被加熱芳香発生基材である。
【0052】
この方法[装置]の製造の特徴も、第二の湿式混合にあり、アルコールは、エタノールやプロパノール等の低級モノアルコールが好ましく、その添加量は、非タバコ材100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましいことは、第一の製造方法[装置]と同様であるが、第二の製造方法[装置]の特徴は、更に、含水量を50質量%未満に減少させた含水シートにエアロゾルフォーマを塗布又は浸漬させるエアロゾルフォーマ吸収工程[手段]を追加したことにある。従来の製造方法[装置]では、エアロゾルフォーマと非タバコ材との分散状態が悪く、含水量が50質量%未満である未乾燥の被加熱芳香発生基材シートにおいて、エアロゾルフォーマと非タバコ材とが遊離していたため、エアロゾルフォーマの吸収が困難であった。しかし、第二の湿式工程[手段]により分散状態が改善されるため、エアロゾルフォーマ吸収工程[手段]において、エアロゾルフォーマがシート内部まで吸収されるので、エアロゾルフォーマ及び結合剤の添加量が第一の製造方法[装置]と同じでも、被加熱芳香発生基材の塊状状態を安定化でき、エアロゾルフォーマのブリードアウトが低減できることに加え、エアロゾルフォーマが加熱によって揮発されやすくなった。
【0053】
本発明の第三の芳香カートリッジにおける気体生成持続材料は、乾燥して粉砕した非タバコ材を純水と混合して非タバコ材のスラリーを製造する湿式混合工程[手段]と、湿式混合工程[手段]で製造された前記スラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮又はキャストしてシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]で製造されたシートの含水量を50質量%未満に減少させる乾燥工程[手段]と、乾燥工程[手段]で製造されたシートに、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、シート成形工程[手段]で排出された水の濃縮液、及び、抗菌性保存剤から選択される材料のアルコール及び純水混合液を塗布又は浸漬させる吸収及び吸着工程[手段]と、吸収及び吸着工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから製造される被加熱芳香発生基材である。
【0054】
第一及び第二の製造方法[装置]は、非タバコ材等すべての材料を純水及びアルコールと湿式混合したスラリーから抄紙して含水シートを形成していたが、第三の製造方法[装置]の特徴は、非タバコ材単体のスラリーから含水シードを製造し、その乾燥したシートに、エアロゾルフォーマ等その他の材料を吸収及び吸着させることにある。第一及び第二の製造方法[装置]では、非タバコ材とエアロゾルフォーマとの分散を改良したように、全ての材料を湿式分散すること自体に課題があった。そこで、非タバコ材とエアロゾルフォーマとを混合し、分散する工程[手段]を経由しない製造方法[装置]を検討した結果、第三の製造方法[装置]のように、乾燥させた非タバコ材のシートには、エアロゾルフォーマ等その他の材料の純水及びアルコール混合液が速やかに浸透し、吸収及び吸着されることを見出し、本発明に至った。この方法[装置]によって製造された被加熱芳香発生基材の塊状状態は、安定であり、そのエアロゾルフォーマのブリードアウトも低減された。
【0055】
本発明の第四の芳香カートリッジにおける気体生成持続材料は、非タバコ材を乾燥して粉砕する非タバコ材準備工程[手段]と、少なくとも香料及び/又は非タバコ材抽出物と架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンとをアルコールに混合して香料及び/又は非タバコ抽出物を架橋PVP及び又はβ-シクロデキストリンに寄留させる香料及び/又は非タバコ抽出物混合工程[手段]と、少なくともエアロゾルフォーマと結合剤又は増粘剤とを純水に混合するエアロゾルフォーマ溶解工程[手段]と、非タバコ材準備工程[手段]で製造された材料と、香料及び/又は非タバコ抽出物溶解工程[手段]で製造された材料と、エアロゾルフォーマ溶解工程[手段]で製造された材料を混合する湿式混合工程[手段]と、湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから製造される被加熱芳香発生基材である。
【0056】
これまでの製造方法[装置]が、非タバコ材等のスラリーから抄紙工程[手段]を経てシートを成形することを特徴としていたが、第三の製造方法[装置]の結果を鑑み、非タバコ材等の種々の性質が異なる材料のスラリーからシートをキャストすること自体に問題があるため、多量の純水及びアルコールのスラリーを経由することなく、純水及びアルコールが少なく、粘性の高い非タバコ材等の混合物を、三本ロールのようなロールプレスを使用して被加熱芳香発生基材のシートを成形する。この方法[装置]では、非タバコ材等の混合物に大きな剪断力及び圧縮力が加わるため、全ての材料が均一に混錬され分散するものと考えられる。
【0057】
ここで、少なくとも香料及び/又は非タバコ材抽出物と架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンとをアルコールに混合して香料及び/又は非タバコ抽出物を架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンに寄留させる混合工程[手段]と、少なくともエアロゾルフォーマと結合剤又は増粘剤とを純水に混合するエアロゾルフォーマ溶解工程[手段]とを設け、香料、非タバコ材抽出物、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤等の純水及びアルコールに溶解しうる材料を予め溶解させておくことは重要である。特に、香料として、メントール及び/又はキシリトールを用いる場合、架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンにこれらが収着され、被加熱芳香発生基材中で安定して存在し、エアロゾルフォーマのブリードアウトを抑制する効果があるため、少なくとも香料及び/又は非タバコ材抽出物と架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンとをアルコールに混合して香料及び/又は非タバコ抽出物を架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンに寄留させる混合工程[手段]は極めて重要な役割を果たす。
【0058】
この製造方法[装置]を採用することによって、被加熱芳香発生基材の塊状状態は安定で、エアロゾルフォーマのブリードアウトを大幅に低減することができ、被加熱芳香発生基材の融着もなく、被加熱芳香発生体の加熱による気体の揮発が促進され、経時的な吸引量の低下を防止することができた。
【0059】
更に、この製造方法[装置]のシート成形工程[手段]において、非タバコ材、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、抗菌性保存剤、及び、純水から選択される材料を添加する工程[手段]を加えることが好ましい。この工程[手段]は、シート成形工程[手段]における、剪断力及び圧縮力による混錬を促進し、水分量を制御することができると共に、エアロゾルフォーマの揮発性を高めることができる。
【0060】
本発明の第五の芳香カートリッジにおける気体生成持続材料は、乾燥して粉砕された非タバコ材と、純水に第一の結合剤を溶解した第一の結合剤水溶液と、エアロゾルフォーマ、架橋PVP、香料、非タバコ材抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とを混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]で製造された混合液を安定化する養生工程[手段]と、養生工程[手段]で製造された養生混合液と第二の結合剤を純水に溶解した第二の結合剤水溶液とを混合する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから製造される被加熱芳香発生基材である。またこの製造方法[装置]においても、第四の製造方法[装置]同様、シート成形工程[手段]において、非タバコ材、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、抗菌性保存剤、及び、純水から選択される材料を添加する工程[手段]を加えることが好ましい。
【0061】
この製造方法[装置]は、特に、混合液を養生する工程[手段]を設けたことと、養生工程[手段]の前後に結合剤を二回に分割して添加する工程[手段]を設けたことにある。そして、結合剤は、第一回目は変性セルロース系高分子が好ましく、第二回目はセルロース系以外の多糖類系高分子が好ましい。
【0062】
養生工程[手段]は、非タバコ材等の混合物の分散状態が経時的に変化するものであることを意味し、最も低エネルギーの低い、安定した均一な分散状態に導くものと推測され、この状態変化が被加熱芳香発生基材の塊状状態を形成できるためであると考えられる。
【0063】
また、結合剤を二回に分割して添加することによって、結合剤の添加量を削減しても混合物を十分に分散することができ、粘度の調整が行い易いためであるが、これは、養生工程[手段]と密接な関係がある。第一回目の結合剤を添加して養生することによって安定した分散状態が作り出されるため、第二回目の結合剤を添加することが容易になり、添加量を削減でき、粘度の調整が容易となる。従って、第一回目では分散能力に勝る変性セルロース系高分子が好ましく、第二回目では、粘度を調整する増粘剤としての能力に勝るセルロース系以外の多糖類系高分子が好ましい。
【0064】
このような変性セルロース系高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、並びに、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシエチルセルロースのナトリウム塩、カリウム塩、及び、カルシウム塩のいずれか一つ以上を用いることが好ましく、多糖類系高分子として、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンシードガム、アラビアゴム、大豆多糖類、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、及び、寒天のいずれか一つ以上を用いることが好ましい。
【0065】
そして、結合剤の配合量は、非タバコ材100質量部に対し、第一の結合剤を5~20質量部、第二の結合剤を0.1~5質量部用いることが好ましい。
【0066】
安定した分散状態を導く養生工程[手段]にも適切な条件があり、15~30℃で、72~336時間行われることが好ましい。適切な温度条件は、結合剤が水酸基やカルボキシル基を有する高分子であるため、水素結合の形成の有無が純水及びアルコールに溶解している分子状態に差異をもたらし、それが温度に依存することに起因しているものと考えられ、実験結果として最適な温度範囲が導かれた。分散状態が経時的に変化し、安定するまでに最低限の時間が必要であるが、必要以上に時間を要しても有意な変化はなく、生産性を低下させる。
【0067】
以上、被加熱芳香発生体から気体を安定的に放出させる材料、すなわち、気体生成持続材料となる被加熱芳香発生基材を製造方法[装置]によって最適化するという解決手段を説明してきたが、より積極的に安定して気体を放出させる材料を考案した。
【0068】
この気体生成持続材料は、無機粒子である。無機粒子の効果は、それが存在する場所に依存して二通りある。一方は、無機粒子が被加熱芳香充填物の内部に存在する場合である。無機粒子を被加熱芳香発生体に添加することによって、被加熱芳香発生基材の密度が低くなり、気体流路が閉ざされることが解消され、気体の吸引が困難となることがない。他方は、無機粒子が被加熱芳香発生シート又は被加熱芳香発生基材の表面にある場合である。エアロゾルフォーマが、被加熱芳香発生基材から経時的にブリードアウトしても、無機粒子が、被加熱芳香発生基材同士の融着現象を防止することができ、被加熱芳香発生シート又は被加熱芳香発生基材間の流路を閉ざされることがなく、吸引成分の吸引が困難となることが解決される。また、被加熱芳香発生シート又は被加熱芳香発生基材の融着が解消されるため、発熱体が被加熱芳香発生基材の中に挿入することが困難になることも解決される。更に、被加熱芳香発生体に無機粒子を導入することは、被加熱芳香発生基材の内部又は表面にかかわらず、発熱体と被加熱芳香発生基材の有機成分との接触面積を低減するため、加熱式喫煙具の発熱体の汚れを軽減することができるという効果もある。
【0069】
このような無機粒子を、気体生成持続材料として、被加熱芳香発生基材の内部に存在させるためには、上述した被加熱芳香発生基材の製造プロセスの原材料として、被加熱芳香発生基材組成物中に添加すればよい。無機粒子を添加する工程[手段]は特に限定されないが、タバコ材等の湿式混合の前に添加することが好ましい。
【0070】
一方、被加熱芳香発生基材の表面に存在させるためには、上述した五つの製造方法[装置]において、被加熱芳香発生シートが製造される工程[手段]の後に、無機粒子を前記被加熱芳香発生シートに散布する工程[手段]と、被加熱芳香発生基材が製造されるシート加工工程[手段]の後に、無機粒子を被加熱芳香発生基材に散布する工程[手段]がある。
【0071】
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム等のチタン酸塩、ゼオライト、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等の酸化ケイ素等であることが好ましく、平均粒子径が、1~100μmであることがより好ましい。更に、無機粒子が効果的に機能するためには、非タバコ材100質量部に対し、無機粒子が0.1~10質量部添加されることが好ましい。
【0072】
上述のように、本発明の芳香カートリッジは、発熱体と接触する被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体と、発熱体からの加熱により生成されるエアロゾルの煙と香気成分とを濾過するフィルタを備えるマウスピースと、被加熱芳香発生体とマウスピースとを連結するように外周を包んだカートリッジ外装体と、を備え、被加熱芳香発生体及びマウスピースの少なくとも一方は、煙及び香気成分の吸引最適化手段並びに煙及び香気成分の気体生成持続材料の少なくとも1つを有する。上述では、本発明の芳香カートリッジにおける吸引最適化手段及び気体生成持続材料について説明したが、以下更に、これらを補完する発明について説明する。
【0073】
まず、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材の充填率が60~90%であることが安定した気体の吸引には好ましい。この充填率を超えると気体の吸引が困難であり、この充填率未満では気体の放出量が不足する。特に、被加熱芳香発生基材の継時的な融着を防止するためには、充填率が60~73%であることが好ましい。充填率73%を超えると、被加熱芳香発生基材の継時的な融着が目立つようになる。しかし、上述したような改良された製造方法[装置]から製造される被加熱芳香発生基材、無機粒子が内部又は表面に存在する被加熱芳香発生基材の場合にはこの限りではなく、充填率が73%を超えても継時的な融着が激しくなることはない。
【0074】
また、被加熱芳香発生基材に含まれるエアロゾルフォーマは、非タバコ材100質量部に対し、50~80質量部であることが好ましい。この配合量よりも少ないとエアロゾルとなるエアロゾルフォーマの揮発量が不足し、この配合量よりも多いと、被加熱芳香発生基材からのエアロゾルフォーマのブリードアウトが激しく、被加熱芳香発生基材が激しく融着する。
【0075】
更に、架橋PVPは、被加熱芳香発生基材の塊状状態を安定化すると共に、メントール、キシリトール等の香気成分を寄留する役割を果たし、非タバコ材100質量部に対し、7~25質量部であることが好ましく、この配合量未満では、架橋PVPの機能を発現することはできず、この配合量を超えると、非タバコ材等による香気成分が不足する。
【0076】
そして、微結晶セルロースは、非タバコ材100質量部に対し、7~25質量部であることが好ましい。この微結晶セルロースは、流動性のある粉末で、水、エタノール等の有機溶媒には溶解せず、医薬の錠剤成形用の賦形剤として用いられている。これは、微結晶セルロースの流動性と体積変化が大きい高圧縮性により、直打法による錠剤の成形における、凝集破壊の防止、金型との付着防止等に効果的であるためである。被加熱芳香発生基材においても同様の効果があり、上記配合量未満では、この機能を発現することができない。逆に、この配合量を超えると、その他の材料の配合比が相対的に不足し、被加熱芳香発生基材としての機能に悪影響を及ぼす。
【0077】
最後に、β-シクロデキストリンは、非タバコ材100質量部に対し、0.2~1.0質量部であることが好ましい。β-シクロデキストリンは、メントールやキシリトール等の香気成分を寄留する役割を果たすため、少なくともこの配合量が必要であるが、過剰に添加することは、被加熱芳香発生基材としての機能を阻害する。特に、メントールを包接することが知られており、メントールを香気成分とする場合には添加することが好ましい。
【0078】
以下、特に、本発明の被加熱芳香発生基材に適した構成材料を列挙する。
【0079】
非タバコ材として使用できる部位は、根(鱗根(鱗茎)、塊根(イモ類)、球根などを含む)、茎、塊茎、皮(茎皮、樹皮などを含む)、葉、花(花弁、雌蕊、雄蕊などを含む)、種実、樹木の幹や枝等を挙げることができる。
【0080】
特に、鱗茎としては、タマネギ、ヒガンバナ、チューリップ、ヒヤシンス、ニンニク、ラッキョウ、ユリ、球茎としては、クロッカス、グラジオラス、フリージア、アヤメ、サトイモ、コンニャク、塊茎としては、コンニャク、シクラメン、アネモネ、ベゴニア、チョロギ、ジャガイモ、アピオス(ほど芋)、根茎としては、カンナ、ハス(レンコン)、ショウガ、塊根としては、ダリア、サツマイモ、キャッサバ、キクイモ担根体としては、ヤマノイモ属(ヤマノイモ、自然薯、ナガイモなどのヤムイモ類)を挙げることができる。その他、カブ、ゴボウ、ニンジン、ダイコン、クズ、アスパラガス、タケノコ、ウド、ダイコン、ヤーコン等が好ましく用いられる。
【0081】
塊根(イモ類)及び以下に挙げる植物には、炭水化物が含有され、被加熱芳香充填シート及び充填物として好ましく用いられる。澱粉としては、コーンスターチ(とうもろこし)、ばれいしょ澱粉(じゃがいも)、かんしょ澱粉(サツマイモ)、タピオカ澱粉(タピオカ)等が挙げられ、増粘剤、安定剤等としても機能する。また、これらの澱粉は、架橋により耐酸性向上、耐熱性向上、耐シェア性向上等、エステル化、エーテル化により保存安定性向上、糊化促進等、酸化により透明性向上、フィルム性向上、保存安定性向上等を図ることも可能である。
【0082】
種実としては、モモ、ブルーベリー、レモン、オレンジ、リンゴ、バナナ、パイナップル、マンゴー、葡萄、キンカン、メロン、梅、アーモンド、カカオ、コーヒー豆、ピーナッツ、ひまわり、オリーブ、クルミ、その他ナッツ類などの食用果実(果肉部分)や種子が好ましく使用できる。
【0083】
海藻としては、アオサ、アオノリ、アカモク、アサクサノリ、アラメ、イワノリ(岩海苔)、エゴノリ、オゴノリ、ガゴメコンブ、カジメ、ガニアシ、クビレズタ、クロメ、コンブ、スサビノリ、ダルス、チシマクロノリ、ツルアラメ、テングサ、トロロコンブ、ネコアシコンブ属、ノリ(海苔)、ハバノリ、ヒジキ、ヒトエグサ、ヒロメ、フノリ、ボウアオノリ、マコンブ、メカブ、モズク、及び、ワカメが好ましく用いられる。
【0084】
ハーブやスパイスとして使用されている植物も非タバコ材として好ましく使用でき、くちなしの実、こぶみかんの葉、みょうが、よもぎ、わさび、アジョワンシード、アニス、アルファルファ、エキナセア、エシャロット、エストラゴン、エバーラスティングフラワー、エルダー、オールスパイス、オリスルート、オレガノ、オレンジピール、オレンジフラワー、オレンジリーフ、カイエンチリペッパー(カイエンヌチリペッパー)、カモミールジャーマン、カモミールローマン、カルダモン、カレーリーフ、ガーリック(にんにく)、キャットニップ、キャラウェイ、キャラウェイシード、キンモクセイ、クミン、クミンシード、クローブ、グリーンカルダモン、グリーンペッパー、コーンフラワー、サフラン、シダー、シナモン、ジャスミン、ジュニパーベリー、ジョロキア、ジンジャー(しょうが)、スターアニス、スペアミント、スマック、セイジ、セボリ(セイボリー)、セロリ、セロリシード、ターメリック(ウコン)、タイム、タマリンド、タラゴン、チャービル(セルフィーユ)、チャイブ、ディル、ディルシード、トマト(ドライトマト)、トンカ豆、ドライパクチー、ナツメグ、ハイビスカス、ハバネロ、ハラペーニョ、バーズアイ、バジル、バニラ、パクチー(コリアンダー)、パセリ、パプリカ、ヒソップ、ピメンツデスペレット、ピンクペッパー、フェヌグリークシード、フェンネル、ブラウンマスタード、ブラックカルダモン、ブラッククミン、ブラックペッパー、ベチバー、ペニーロイヤル、ペパーミント(ハッカ)、ホースラディッシュ、ホワイトペッパー、ホワイトマスタード、ポピーシード、ポルチーニ、マジョラム、マスタードシード、マニゲット、マリーゴールド、マルバフラワー、メース、ヤローフラワー、ユーカリ、ラベンダー、リコリス、リンデン、レッドクローバー、レッドペッパー、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンピール、ローズ(バラ)、ローズバッズ(パープル)、ローズヒップ、ローズペタル、ローズマリー、ローズレッド、ローレル(ローリエ)、ロングペッパー、胡麻(生胡麻、煎り胡麻)、黄金唐辛子、花椒(ホアジャオ)、三鷹、山椒、唐辛子、柚子などを使用できる。また、ミックススパイス(たとえば、五香粉、ガラムマサラ、ラスエルハヌート、バリグール、チキンカレーマサラ、タンドリーマサラ、カトルエピス、エルブ・ド・プロバンス)や、ポプリ等として使用されている様々な植物の混合物を挙げることができる。
【0085】
茶類も好ましく使用できる。茶類は茶になる植物が異なるだけでなく、同じ植物であっても加工方法[装置]によって異なるお茶になるので、いずれも異なる芳香成分の非タバコ材として好ましい。具体的には、日本茶、紅茶、明日葉茶、甘茶、アマチャヅル茶、アロエ茶、イチョウ葉茶、ウーロン茶、ウコン茶、ウラジロガシ茶、エゾウコギ茶、オオバコ茶、カキオドシ茶、柿の葉茶、カミツレ茶、カモミールティ、河原決明茶、カリン茶、菊花茶、ギムネマ茶、グァバ茶、クコ茶、桑の葉茶、黒豆茶、ゲンノショウコ茶、玄米茶、ゴボウ茶、コンフリー茶、昆布茶、桜茶、サフラン茶、シイタケ茶、シソ茶、ジャスミン茶、しょうが茶、スギナ茶、セキショウ茶、センブリ茶、ソバ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、甜茶、ドクダミ茶、杜仲茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、ハトムギ茶、ハブ茶、ビワの葉茶、プーアル茶、紅花茶、松葉茶、マテ茶、麦茶、メグスリノキ茶、ヨモギ茶、ユーカリ茶、羅漢果茶、ルイボスティ、ゴーヤ茶等が挙げられる。茶類については、飲用後の茶殻を使用してもよい。茶殻を使用すれば高価な茶類の再利用として有効活用できるというメリットがある。
【0086】
米類としては、インディカ種(インド型、大陸型、長粒種)、グラベリマ種(アフリカイネ)、サティバ種(アジアイネ)、ジャバニカ種(ジャワ型、熱帯島嶼形、大粒種)、ジャポニカ種(日本型、温帯島嶼型、短粒種)、ネリカ(アジアイネとアフリカイネの種間雑種)を好ましく使用することができ、粉又は糠としても使用することができる。
【0087】
麦類としては、アワ、エンバク(カラス麦の栽培品種、オーツ麦)、オオムギ(大麦)、カラスムギ、キビ、コドラ(コードンビエ)、コムギ(小麦)、シコクビエ、テフ、トウジンビエ、ハダカムギ(オオムギの変種)、ハトムギ(種子ではなく果実である)、ヒエ、フォニオ、マコモ、モチムギ(オオムギのモチ種)、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)、トウモロコシ、ライムギ(ライ麦)、ソバ、アマランス(アマランサス、センニンコク)、キヌア、ダッタンソバを好ましく使用することができる。
【0088】
菽穀類(マメ科)としては、アズキ、イナゴマメ、インゲンマメ、エンドウキマメクラスタマメグラスピー(英:Lathyrus sativus)ケツルアズキ、ササゲ、シカクマメ、ゼオカルパマメ、ソラマメ、ダイズ、タケアズキ、タチナタマメ、タマリンド、テパリービーン、ナタマメ、ハッショウマメ(英:Mucuna pruriens)、バンバラマメ、ヒヨコマメ、フジマメ、ベニバナインゲン、ホースグラム(英: Macrotyloma uniflorum)、モスビーン、ライマメ、ラッカセイ、リョクトウ、ルピナス、レンズマメ、レンズマメ(ヘントウ)を好ましく使用できる。
【0089】
キノコ類としては、マツタケ、シイタケ、ハツタケ、シメジ、ショウロ、マッシュルーム、ハラタケを好ましく用いることができる。
【0090】
更に、さとうきび(糖蜜の搾りかすでもよい)、てんさい(ビート)、ヒノキ、松、杉、ヒバ、椿、白檀等の芳香を有する樹木の幹、枝、樹皮、葉、根も好ましく使用できる。
【0091】
シダ類、コケ類等も非タバコ材として使用することが可能である。
【0092】
また、日本酒、ワイン等の発酵酒を製造する際の副産物や絞りかす(酒粕、葡萄の絞りかす(葡萄の皮や種子、果軸等からなる))等も使用できる。
【0093】
一方、生薬として知られているものも好ましく用いられる。具体的には、藍草(アイソウ)、茜根(アカネコン)、赤目柏(アカメガシワ)、阿仙薬(アセンヤク)、安息香(アンソクコウ)、威霊仙(イレイセン)、茵陳蒿(インチンコウ)、茴香(ウイキョウ)、ウコン(ターメリック)、烏梅(ウバイ)、烏薬(ウヤク)、裏白柏(ウラジロガシ)、ウワウルシ、営実(エイジツ)、延胡索(エンゴサク)、延命草(エンメイソウ)、黄耆(オウギ)、黄今(オウゴン)、黄精(オウセイ)、黄柏(オウバク)、黄連(オウレン)、桜皮(オウヒ)、弟切草(オトギリソウ)、遠志(オンジ)、槐花(カイカ)、薤白(ガイハク)、夏枯草(カゴソウ)、訶子(カシ)、何首烏(カシュウ)、莪朮(ガジュツ)、霍香(カッコウ)、葛根(カッコン)、カミツレ、瓜呂根(カロコン)、瓜呂仁(カロニン)、乾姜(カンキョウ)、甘草(カンゾウ)、款冬花(カントウカ)、艾葉(ガイヨウ)、桔梗(キキョウ)、枳具子(キグシ)、枳殻(キコク)、枳実(キジツ)、菊花(キクカ)、橘皮(キッピ)、羌活(キョウカツ)、杏仁(キョウニン)、金柑(キンカン)、金銀花(キンギンカ)、金銭草(キンセンソウ)、枸杞子(クコシ)、枸杞葉(クコヨウ)、苦参(クジン)、胡桃(クルミ)、苦楝皮(クレンピ)、黒文字(クロモジ)、瞿麦(クバク)、荊芥(ケイガイ)、桂皮(ケイヒ)、決明子(ケツメイシ)、牽牛子(ケンゴシ)、玄参(ゲンジン)、膠飴(コウイ)、紅花(コウカ)、合歓皮(ゴウカンピ)、降香(コウコウ)、香鼓(コウシ)、香需(コウジュ)、紅参(コウジン)、香附子(コウブシ)、粳米(コウベイ)、厚朴(コウボク)、藁本(コウホン)、五加皮(ゴカヒ)、牛膝(ゴシツ)、呉茱萸(ゴシュユ)、虎杖根(ゴジョウコン)、牛蒡子(ゴボウシ)、五味子(ゴミシ)、柴胡(サイコ)、細辛(サイシン)、サフラン、山帰来(サンキライ)、山査子(サンザシ)、山梔子(サンシシ)、山茱萸(サンシュユ)、山豆根(サンズコン)、酸棗仁(サンソウニン)、山椒(サンショウ)、三稜(サンリョウ)、山薬(サンヤク)、地黄(ジオウ)、紫苑(シオン)、地骨皮(ジコッピ)、紫根(シコン)、紫蘇子(シソシ)、紫蘇葉(シソヨウ)、疾藜子(シツリシ)、柿蒂(シテイ)、地膚子(ジフシ)、芍薬(シャクヤク)、蛇床子(ジャショウシ)、沙参(シャジン)、車前子(シャゼンシ)、車前草(シャゼンソウ)、縮砂(シュクシャ)、十薬(ジュウヤク)、生姜(ショウキョウ)、棕櫚実(シュロジツ)、棕櫚葉(シュロヨウ)、升麻(ショウマ)、小麦(ショウバク)、菖蒲根(ショウブコン)、辛夷(シンイ)、女貞子(ジョテイシ)、秦皮(シンピ)、神麹(シンキク)、秦ぎょう(ジンギョウ)、充蔚子(ジュウイシ)、椒目(ショクモク)、青皮(セイヒ)、石菖根(セキショウコン)、石榴実皮(セキリュウジツヒ)、石斛(セッコク)、川弓(センキュウ)、前胡(ゼンコ)、川骨(センコツ)、旋覆花(センプクカ)、接骨木(セッコツボク)、草果(ソウカ)、ソウ角子(ソウカクシ)、桑寄生(ソウキセイ)、蒼耳子(ソウジシ)、蒼朮(ソウジュツ)、側柏葉(ソクハクヨウ)、続断(ゾクダン)、桑白皮(ソウハクヒ)、蘇木(ソボク)、蘇葉(ソヨウ)、ソウ莢(ソウキョウ)、大黄(ダイオウ)、大棗(タイソウ)、大腹皮(ダイフクヒ)、沢瀉(タクシャ)、丹参(タンジン)、竹如(チクジョ)、竹節人参(チクセツニンジン)、竹葉(チクヨウ)、知母(チモ)、地楡(チユ)、丁子(チョウッジ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、天南星(テンナンショウ)、天麻(テンマ)、天門冬(テンモントウ)、冬瓜子(トウガシ)、当帰(トウキ)、唐胡麻(トウゴマ)、党参(トウジン)、灯芯草(トウシンソウ)、桃仁(トウニン)、橙皮(トウヒ)、兎絲子(トシシ)、栃実(トチノミ)、杜仲(トチュウ)、独活(ドッカツ)、土瓜根(ドカコン)、肉従容(ニクジュヨウ)、ニクズク、忍冬(ニンドウ)、人参(ニンジン)、貝母(バイモ)、麦芽(バクガ)、柏子仁(ハクシニン)、白扁豆(ハクヘンズ)、麦門冬(バクモントウ)、破胡紙(ハコシ)、薄荷(ハッカ)、蕃果(バンカ)、半夏(ハンゲ)、反鼻(ハンビ)、板藍根(バンランコン)、半枝連(ハンシレン)、百合根(ユリネ)、白止(ビャクシ)、白花蛇舌草(ビャクカジャゼツソウ)、百部根(ヒャクブコン)、白朮(ビャクジュツ)、檳榔子(ビンロウジ)、防已(ボウイ)、茅根(ボウコン)、防風(ボウフウ)、蒲黄(ホウオウ)、蒲公英根(ホウエイコン)、牡丹皮(ボタンピ)、麻黄(マオウ)、麻子仁(マシニン)、蔓荊子(マンケイシ)、松脂(マツヤニ)、木通(モクツウ)、木瓜(モッカ)、木香(モッコウ)、没薬(モツヤク)、木賊(モクゾク)、射干(ヤカン)、益智(ヤクチ)、夜交藤(ヤコウトウ)、羅漢果(ラカンカ)、蘭草(ランソウ)、竜眼肉(リュウガンニク)、竜胆(リュウタン)、良姜(リョウキョウ)、霊芝(レイシ)、連翹(レンギョウ)、連銭草(レンセンソウ)、蓮肉(レンニク)、芦根(ロコン)を挙げることができる。
【0094】
最後に非タバコ材の抽出物、所謂エキスも使用することができ、抽出物の形態としては、液体、水あめ状、粉末、顆粒、溶液等が挙げられる。
【0095】
エアロゾルフォーマとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチルなどが使用できるが、特に、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0096】
架橋PVPとしては、BASF欧州会社製のダイバガン(登録商標)やISP株式会社製ポリクラール(登録商標)VTに代表される市販品をそのまま使用することができる。
【発明の効果】
【0097】
本発明の吸引最適化手段を備えた芳香カートリッジは、タバコ成分を全く使用せず、非タバコ材を使用するが故の芳香カートリッジに特有の課題である、被加熱芳香発生基材の内部及び相互間における気体流路の閉塞による喫煙者の気体の吸引量低下を解決することができる。一方、気体生成持続材料を備えた芳香カートリッジでは、気体流路の閉塞による気体放出量の低下そのものを改善することができ、非タバコ材等の脱落や粉塵の発生もない芳香カートリッジを提供できる。
【0098】
また、本発明の気体生成持続材料として無機粒子を備えた被加熱芳香発生体は、被加熱芳香発生基材間の融着を防止し、長期保管した芳香カートリッジが加熱式喫煙具の発熱体に装着できない問題、その発熱体を破損したり汚染したりするという問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】電気制御式発熱体をチャンバ内に備えた加熱式喫煙具の発熱体に接触するように装着され、発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができる円柱状の芳香カートリッジの一般的な構成及び製造方法[装置]の工程[手段]を示す概要図である。
図2】(A)針状の電気制御式発熱体をチャンバの底に設けた加熱式喫煙具の概略模式図である。(B)(A)の加熱式喫煙具に装着して発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができる円柱状の芳香カートリッジの構成を示す概略模式図である。(C)(A)に(B)の芳香カートリッジを装着した状態の概略模式図である。
図3】(A)芳香カートリッジを包むように電気制御式発熱体がチャンバの外周に設けられた加熱式喫煙具を示す概略模式図である。(B)(A)の加熱式喫煙具に図2(B)の芳香カートリッジを装着した状態の概略模式図である。
図4】本発明の吸引安定化手段を備えたマウスピースの構成とそのマウスピースを気体生成持続材料を備えていない被加熱芳香発生体と接合して芳香カートリッジを製造する製造方法[装置]の工程[手段]を示す概要図である。
図5】本発明の一実施形態に掛かる、1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円柱状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図6】本発明の一実施形態に掛かる、2つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円柱状で、フィルタの長手方向の両端部からフィルタ内に、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図7】本発明の一実施形態に掛かる、4つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円柱状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタの長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図8】本発明の一実施形態に掛かる、5つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティの形状は全て直円柱状で、4つのキャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタの長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設され、1つのキャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体と反対側の端部からフィルタ内に、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図9】本発明の一実施形態に掛かる、1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円錐状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタの直円柱の中心軸とキャビティの直円錐の中心軸が略同一となるように配設されていることを特徴とする芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図10】本発明の一実施形態に掛かる、3つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタ単体で構成されたマウスピースと被加熱芳香発生体が隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円垂状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタの長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図11】本発明の一実施形態に掛かる、1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタとカートリッジ外装体で形成された空洞とで構成されたマウスピースが、被加熱芳香発生体とフィルタとが隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円柱状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図12】本発明の一実施形態に掛かる、4つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタとカートリッジの外装体で形成された空洞とで構成されたマウスピースが、被加熱芳香発生体とフィルタとが隣接する直円柱状の芳香カートリッジであって、キャビティが、直円柱状で、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部からフィルタ内に、フィルタの長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図13】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する円柱状支持部材とそれに隣接する1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、キャビティが、フィルタの長手方向の両端部で、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図14】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する円柱状支持部材と、支持部材に隣接する被加熱芳香発生体が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材と、冷却部材と隣接する1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、キャビティが、フィルタの長手方向の両端部で、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図15】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材と、冷却部材と隣接する1つのキャビティが形成された気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、キャビティが、フィルタの長手方向の両端部で、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図16】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する支持部材と、支持部材に隣接する気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、吸引最適化手段が、支持部材と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材の貫通孔内に、支持部材と貫通孔の軸を面内に有し、貫通孔の内壁と接触する1つの板状の形状補強材であり、固定的又は可動的に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図17】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する支持部材と、支持部材と隣接する気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、吸引最適化手段が、支持部材と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材の貫通孔内に、支持部材と貫通孔の軸を面内に有し、貫通孔の内壁と接触する2つの板状補強材が交差した形状補強材であり、固定的又は可動的に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図18】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する支持部材と、支持部材に隣接する気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、吸引最適化手段が、支持部材と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材の貫通孔内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔の半径より小さい半径を有する同心円管の管状補強材と、この同心円管の外周側において同心円管の半径方向に貫通孔の内壁と接触するように形設される4つの板状補強材とから構成され、固定的又は可動的に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図19】本発明の一実施形態に掛かる、図18の同心円管の管状補強材が中空の管であったのに代えて、実柱である同心円注の柱状補強材を使用した芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図20】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する形状補強材が備えられた補強支持部材と、補強支持部材に隣接する気体を濾過する1つのキャビティが形成されたフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、キャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部で、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されており、吸引最適化手段が、支持部材と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材の貫通孔内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔の半径より小さい半径を有する中空の同心円柱の管状補強材と、この管状補強材の外周側において管状補強材の半径方向に貫通孔の内壁と接触するように形設される4つの板状補強材とから構成され、固定的又は可動的に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図21】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する形状補強材が備えられた補強支持部材と、補強支持部材に隣接する被加熱芳香発生体が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材と、冷却部材に隣接する気体を濾過する1つのキャビティが形成されたフィルタとから構成されるマウスピースが被加熱芳香体と隣接する芳香カートリッジであって、キャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部で、フィルタとキャビティの直円柱の中心軸が略同一となるように配設されており、吸引最適化手段が、支持部材と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材の貫通孔内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔の半径より小さい半径を有する中空の同心円柱の管状補強材と、この管状補強材の外周側において管状補強材の半径方向に貫通孔の内壁と接触するように形設される4つの板状補強材とから構成され、固定的又は可動的に配設されている芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図22】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する吸引最適化手段である断熱部材と、断熱部材と隣接する気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが、被加熱芳香発生体と隣接している芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図23】本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体に隣接する吸引最適化手段である断熱部材と、断熱部材と隣接する被加熱芳香発生体が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材と、冷却部材に隣接する気体を濾過するフィルタとから構成されるマウスピースが、被加熱芳香発生体と隣接している芳香カートリッジを示す概略模式図である。
図24】本発明の一実施形態に掛かる、吸引最適化手段である蓋材及び隔壁材が、被加熱芳香発生体の両端部に配設されている芳香カートリッジの被加熱芳香発生体の部分概略模式図である。
図25】(A)本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生シートの概略模式図である。(B)本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生充填物の概略模式図である。
図26】(A-1)本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生シートを折り畳んで用いた被加熱芳香発生体を示す概略模式図である。(A-2)本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生シートを巻いて用いた被加熱芳香発生体を示す概略模式図である。(B)本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生充填物を用いた被加熱芳香発生体を示す概略模式図である。
図27】本発明の一実施形態に掛かる、乾燥して粉砕した非タバコ材を混合する乾式混合工程[手段]と、乾式混合工程[手段]で製造された非タバコ材と、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とをアルコール及び純水混合液に混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]によって製造された非タバコ材等を含むアルコール及び純水混合液に、純水及び/又はアルコールを更に添加して非タバコ材等を含むスラリーを製造する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮してシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図28】本発明の一実施形態に掛かる、乾燥して粉砕した非タバコ材を混合する乾式混合工程[手段]と、乾式混合工程[手段]で製造された非タバコ材と、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とをアルコール及び純水混合液に混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]によって製造された非タバコ材等を含むアルコール及び純水混合液に、純水及び/又はアルコールを更に添加して非タバコ材等を含むスラリーを製造する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮又はキャストしてシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]によって、含水量を50質量%未満に減少させた含水シートにエアロゾルフォーマを塗布又は浸漬させるエアロゾルフォーマ吸収工程[手段]と、エアロゾルフォーマ吸収工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図29】本発明の一実施形態に掛かる、乾燥して粉砕した非タバコ材を純水と混合して非タバコ材のスラリーを製造する湿式混合工程[手段]と、湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]と、含水シートを圧縮又はキャストしてシートに加工するシート成形工程[手段]と、シート成形工程[手段]で製造されたシートの含水量を50質量%未満に減少させる乾燥工程[手段]と、乾燥工程[手段]で製造されたシートに、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、シート成形工程[手段]で排出された水の濃縮液、及び、抗菌性保存剤から選択される材料のアルコール及び純水混合液を塗布又は浸漬させる吸収及び吸着工程[手段]と、吸収及び吸着工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図30】本発明の一実施形態に掛かる、非タバコ材を乾燥して粉砕する非タバコ材準備工程[手段]と、少なくとも香料及び/又は非タバコ材抽出物と架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンとをアルコールに混合して香料及び/又は非タバコ抽出物を架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンに寄留させる香料及び/又は非タバコ抽出物混合工程[手段]と、少なくともエアロゾルフォーマと結合剤又は増粘剤とを純水に混合するエアロゾルフォーマ溶解工程[手段]と、非タバコ材準備工程[手段]で製造された材料と、香料及び/又は非タバコ抽出物溶解工程[手段]で製造された材料と、エアロゾルフォーマ溶解工程[手段]で製造された材料を混合する湿式混合工程[手段]と、湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図31】本発明の一実施形態に掛かる、乾燥して粉砕された非タバコ材と、純水に第一の結合剤を溶解した第一の結合剤水溶液と、エアロゾルフォーマ、架橋PVP、香料、非タバコ材抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とを混合する第一の湿式混合工程[手段]と、第一の湿式混合工程[手段]で製造された混合液を安定化する養生工程[手段]と、養生工程[手段]で製造された養生混合液と第二の結合剤を純水に溶解した第二の結合剤水溶液とを混合する第二の湿式混合工程[手段]と、第二の湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図32】本発明の一実施形態に掛かる、非タバコ材を乾燥・粉砕した後、乾式混合して非タバコ材を準備する工程[手段]と、エアロゾルフォーマ、結合剤、付着防止剤、香料、非タバコ材抽出物、抗菌性保存剤等から選択される素材を準備する工程[手段]と、純水及びアルコールを準備する工程[手段]と、これらの準備された材料を一括して混合する湿式混合工程[手段]と、湿式混合して製造されたスラリーから含水シート製造する抄紙工程[手段]、抄紙された含水シートを圧縮又はキャストしてシートを製造する成形工程[手段]と、成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥する工程[手段]と、乾燥されたシートに無機粒子を散布する工程[手段]と、無機粒子が表面に付着した被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]とから被加熱芳香発生基材を製造する概略工程[手段]図、及び、被加熱芳香発生基体を製造する製造方法[装置]の概略工程[手段]図である。
図33】本発明の吸引安定化手段を備えていないマウスピースと気体生成持続材料を備えた被加熱芳香発生体と接合して芳香カートリッジを製造する製造方法[装置]の工程[手段]を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、図面及び実施形態を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0101】
図1に、電気制御式発熱体をチャンバ内に備えた加熱式喫煙具の発熱体に接触するように装着され、発熱体の加熱により生成するエアロゾルの煙と香気成分とを堪能することができる円柱状の芳香カートリッジの一般的な構成及び製造方法[装置]の工程[手段]を示す概要図である。本発明の芳香カートリッジも、発熱体で加熱されて放出されるエアロゾルを発生する被加熱芳香発生体として、タバコ成分を全く使用しない点を除けば、基本的には同様の構成で、同様に組み立てられる。すなわち、本発明の芳香カートリッジは、非タバコ材及びエアロゾルフォーマ等からなる被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体が接触とマウスピースとが、被加熱芳香発生体が電気制御式発熱体に接触するように装着される長手方向に隣接した状態で、被加熱芳香発生体とマウスピースの外側が、カートリッジ外装体によって巻かれた状態で連結されている。
【0102】
図2及び3には、このような芳香カートリッジを加熱式喫煙具に装着して喫煙する状態が、二種の発熱体の形式について示されている。本発明の芳香カートリッジの特徴を明らかにするために、加熱式喫煙具に装着して芳香カートリッジを楽しむ仕組みを簡単に説明する。
【0103】
図2(A)は、ケーシング111に収められたチャンバ112の底に設けられた針状の電気制御式発熱体113を備えた電気加熱式喫煙具(1) 11の断面の概略模式図である。図2(B)は、芳香カートリッジ の断面の概略模式図で、内装材21-pで巻装された被加熱芳香発生体21と内装材22-pで巻装されたマウスピース22とが、加熱式喫煙具(1) 11の長手方向に隣接した状態で、カートリッジ外装体23によって巻かれて連結されている。そして、図2(C)には、喫煙者が電気加熱式喫煙具(1) 11を用いて、芳香カートリッジ を吸引する状態が示されている。図2(B)に示す芳香カートリッジ の被加熱芳香発生体21側をチャンバ112に挿入し、電気制御式発熱体113に被加熱芳香発生体21を突き刺す。喫煙者が、図示していないスイッチを押すと、図示していない電気制御部の信号に従って電気制御式発熱体113が加熱され、被加熱芳香発生体21からエアロゾルの煙と香気成分とが放出され、それらを吸引する。喫煙者が吸引すると、矢印Wに示すように、空気が、吸気口115から入り、ケーシング111とチャンバ112との間隙を通過して、被加熱芳香発生体21から揮発されたエアロゾルフォーマと香気成分とがマウスピース22に運ばれ、喫煙者の口腔内に吸引される。煙は、マウスピース22内で冷却されてエアロゾルとして吸引される。
【0104】
図3(A)は、ケーシング121に収められたチャンバ122の外周に備えられた電気制御式発熱体123を備えた電気加熱式喫煙具(2) 12の断面の概略模式図である。図3(B)は、喫煙者が電気加熱式喫煙具(2) 12を用いて、芳香カートリッジ を吸引する状態が示されている。図3(B)に示す芳香カートリッジ の被加熱芳香発生体21側を芳香カートリッジ挿入口124からチャンバ122に挿入すると、被加熱芳香発生体21が電気制御式発熱体123に囲まれる。図示していないスイッチを押すと、電気制御部1231の信号に従って電気制御式発熱体123が加熱され、被加熱芳香発生体21からエアロゾルの煙と香気成分とが放出され、それらを吸引する。喫煙者が吸引すると、矢印Wに示すように、吸気孔125から空気が入り、被加熱芳香発生体21から揮発されたエアロゾルフォーマと香気成分とがマウスピース22に運ばれ、喫煙者の口腔内に吸引される。煙は、マウスピース22内で冷却されてエアロゾルとして吸引される。
【0105】
このような喫煙において、非タバコ材だけから構成される芳香カートリッジは、人体に有害な物質、タール、及び、ニコチンの発生がなく、コーヒー、コーラ、レッドブル等の飲料、チョコ、バニラ、クリーム等のデザート、オレンジ、レモン、メロン等の果物、メンソール、ミント、ハーブ等の清涼剤等、様々な味わいを楽しむことができる長所があるが、繊維を多量に含むタバコ材の代用として、様々な風味を放出させるための多種多様な非タバコ材を使用するが故の問題を抱えている。
【0106】
タバコ材を含むエアロゾル形成体は、タバコ材の繊維が、その塊状状態を維持し、タバコ材の脱落及び融着を妨げていたが、繊維を多量に含んでいない非タバコ材を含む被加熱芳香発生基材は、その塊状状態を安定して維持するためには、繊維の機能を果たす結合剤等を多量に配合する必要がある。そのため、被加熱芳香発生基材の密度が高くなり、気体流路が閉ざされ、吸引成分の吸引が困難となり、結果として、吸引量が低下する。
【0107】
また、エアロゾルフォーマは、常温で液体であるグリセリンやプロピレングリコール等であるため、結合剤が多くなる程被加熱芳香発生基材から経時的にブリードアウトし、被加熱芳香発生基材同士が融着する。そのため、気体流路が閉ざされ、香気成分の吸引が困難となり、結果として、吸引量が低下する。また、このような融着が生じると発熱体が被加熱芳香発生基材の中に挿入することが困難になるばかりか、発熱体を破損する場合もある。
【0108】
逆に、結合剤等の添加量を低減し、気体流路を確保すると、非タバコ材の脱落や粉塵等が発生し、芳香カートリッジの形態を強固に維持することが困難で、発熱体に挿入されると破壊してしまう場合がある。また、これらが、口腔内に吸引される場合も生じる。
【0109】
本発明は、これらの課題を解決する手段を提供することを目的としている。すなわち、気体流路を確保して吸引量の低下を防止する手段を提供する。なお、被加熱芳香発生基材を構成する組成物や配合比を大きく変更する解決方法は、煙となるエアロゾルの発生や非タバコ材から放出される香気成分の発生を維持する必要上、採用できない。そこで、本発明は、それらと異なる二つの側面から解決する手段を提供する。
【0110】
一つは、芳香カートリッジを構成し、吸引量に大きな影響を及ぼすマウスピースの構造等に着目した物理的解決手段である。もう一つは、被加熱芳香発生基材の製造方法[装置]及びその充填状態等に着目した化学的解決手段である。
【0111】
前者の物理的解決手段は、マウスピースに吸引量を向上させる吸引最適化手段を備えた芳香カートリッジの提供であり、被加熱芳香発生体に非たばこ材等の脱落物や粉塵を補足することによって吸引量の低下を防止する吸引最適化手段を備えた芳香カートリッジを提供することである。より具体的には、マウスピースを構成するフィルタ、マウスピースを構成する被加熱芳香発生体のマウスピース側への移動を防止する支持体、及び、マウスピースに、吸引最適化手段として、それぞれ、気体流路の拡大による吸引量の向上を図るキャビティ、変形による吸引量低下を防止する形状補強部材、熱の拡散による接合部の破損を防止する断熱材を配設される芳香カートリッジを提供することである。また、被加熱芳香発生体に吸引最適化手段として、非タバコ材等の脱落物や粉塵の防止及び捕捉する蓋材及び/又は隔壁材を配設される芳香カートリッジを提供することである。
【0112】
後者の化学的解決手段は、被加熱芳香発生体に吸引量を低下させない気体生成維持材料を備えた芳香カートリッジを提供することである。より具体的には、被加熱芳香発生体に、気体生成維持材料として、製造方法[装置]により内部構造が改良された被加熱芳香発生基材、配合量が最適化された被加熱芳香発生基材、被加熱芳香発生基材の内部及び/又は表面に存在する無機粒子、及び、充填率が改良された被加熱芳香発生基材を備えた芳香カートリッジを提供することである。
【0113】
これらの吸引最適化手段及び気体生成維持材料は、単独で十分な効果を発揮することができるため、図4には、気体生成維持材料が配設されていない被加熱芳香発生体と吸引最適化手段が配設されているマウスピースを接合する芳香カートリッジの構成を、図33には、気体生成維持材料が配設されている被加熱芳香発生体と吸引最適化手段が配設されていないマウスピースを接合する芳香カートリッジの構成を示した。しかし、併用することによってより高い又はより幅広い効果が得られるため、図4及び図33に示す被加熱芳香発生体とマウスピースの全ての組合せの極めて幅広いバリエーションの芳香カートリッジを提供できる。
【0114】
まず、吸引最適化手段について、図面を用いて詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態に掛かる、1つのキャビティ221-1-c1が形成された気体を濾過するフィルタ単体221-1で構成されたマウスピース221-1と被加熱芳香発生体21が隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている芳香カートリッジ 2-1であって、キャビティ221-1-c1が、フィルタ221-1の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部のフィルタ221-1内に、フィルタ221-1とキャビティ221-1-c1の直円柱の中心軸оが略同一となるように配設されている芳香カートリッジ 2-1を示す概略模式図である。例えば、芳香カートリッジ、被加熱芳香発生体、マウスピースの外径は、図2及び3に示したように、加熱式喫煙具(1) 11や(2) 12によって決定されるので、適宜設定すればよいが、以下、芳香カートリッジの外径j及び長さkは、それぞれ、6.9mm及び45mm、被加熱芳香発生体の長さaは12mm、マウスピース(=フィルタ)の長さm(=f)は33mmとした。
【0115】
キャビティの大きさは、長く太くする程吸引量を増加させることができるが、マウスピースの強度の問題があるため、長さc1、内径b1、及び、表面積が、それぞれ、10~25mm、1~4mm、34.54~326.54mm であることが好ましい。図5の一実施例では、長さc1が20mm、内径が3mmの直円柱状のキャビティを形成している。また、キャビティの形状は、最も好ましい形状として、直円柱状のキャビティを例示したが、斜円柱状でもよく、限定されるものではない。フィルタを貫通しない孔であればよいが、口腔内への均一な気体の吸引及び加工性を考慮すると、フィルタの中心軸を中心にして対称な形状が好ましく、三角柱状、四角柱状、及び、五角柱状等の柱状、並びに、円錐状(図9)、三角錘状、四角錘状、及び、五角錐状等の錘状が好ましい。
【0116】
更に、図5のキャビティは、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部に形成されているが、この端部の反対側の端部に設けてもよい。
【0117】
図6は、本発明の一実施形態に掛かる、2つのキャビティ221-2-c2及び221-2-c3が形成された気体を濾過するフィルタ単体221-2で構成されたマウスピース221-2と被加熱芳香発生体21が隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている芳香カートリッジ 2-2であって、キャビティ221-2-c2及び221-2-c3が、フィルタ221-2の長手方向の両端部のフィルタ221-2内に、フィルタ221-2とキャビティ221-2-c2及び221-2-c3の直円柱の中心軸оが略同一となるように配設されている芳香カートリッジ 2-2を示す概略模式図である。吸引量の向上を図ることができるキャビティの形状は、長く太い程吸引量の増大することができるが、マウスピースの強度の問題があるため、長さc2及びc3が5~15mm、外径b2及びb3が1~3.5mmであることが好ましく、総表面積が34.54~326.54mm であることが好ましい。形状については、図5の説明に記述した通りである。
【0118】
図7は、本発明の一実施形態に掛かる、4つのキャビティ221-3-c4が形成された気体を濾過するフィルタ単体221-3で構成されたマウスピース221-3と被加熱芳香発生体21が隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている直円柱状の芳香カートリッジ 2-3であって、キャビティ221-3-c4が、直円柱状で、フィルタ221-3の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部からフィルタ221-3内に、フィルタ221-3の長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設されている芳香カートリッジ 2-3を示す概略模式図である。図7には、好ましい一例として、4つのキャビティの場合を例示したが、これに限定されず、2つ以上あればよい。キャビティの数及び大きさは、図6の記述した説明同様、吸引量とフィルタの強度とのバランスに応じて適宜設定されるが、総表面積が34.54~326.54mm となるようにすることが好ましい。形状については、図5の説明に記述した通りである。また、図7のキャビティも、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部に形成されているが、この端部の反対側の端部に設けてもよい。
【0119】
図8は、本発明の一実施形態に掛かる、5つのキャビティ221-4-c5及び221-4-c6が形成された気体を濾過するフィルタ単体221-4で構成されたマウスピース221-4と被加熱芳香発生体21が隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている直円柱状の芳香カートリッジ 2-4であって、キャビティの形状は全て直円柱状で、4つのキャビティ221-4-c5が、フィルタ221-4の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部からフィルタ内に、フィルタ221-4の長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設され、1つのキャビティ221-4-c6が、フィルタ221-4の長手方向の被加熱芳香発生21体と反対側の端部からフィルタ内に、フィルタ221-4とキャビティ221-4-c6の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている芳香カートリッジ 2-4を示す概略模式図である。図8には、一例として、フィルタの被加熱芳香発生体側端部のキャビティ221-4-c5を4つ及びその反対側のキャビティ221-4-c6を5つとしたが、それらの数及び大きさはこれらに限定されるものではなく、図6の記述した説明のように、吸引量とフィルタの強度とのバランスに応じて適宜設定されるが、総表面積が34.54~326.54mmとなるようにすることが好ましい。形状については、図5の説明に記述した通りである。
【0120】
図9は、キャビティの形状の一変形例で、図5に示す芳香カートリッジ2-1において、直円錐状のキャビティ221-5-d1としたものである。この場合も、表面積が34.54~326.54mmとなるように、直円錐状キャビティの寸法を適宜設計することができる。また、図9では、キャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部に形成されているが、この端部の反対側の端部に設けられてもよい。
【0121】
図10も、キャビティの形状の一変形例で、図7に示す芳香カートリッジ 2-3において、3つの直円錐状のキャビティ221-6-d2としたものである。この場合も、表面積が34.54~326.54mmとなるように、直円錐状キャビティの数及び寸法を適宜設計することができる。この場合も、キャビティが、フィルタの長手方向の被加熱芳香発生体側の端部に形成されているが、この端部の反対側の端部に設けられてもよい。
【0122】
図11は、本発明の一実施形態に掛かる、1つのキャビティ221-7-c7が形成された気体を濾過するフィルタ2211とカートリッジ外装体24で形成された空洞221-7-v1とで構成されたマウスピース221-7が、被加熱芳香発生体21とフィルタ2211とが隣接し、カートリッジ外装体24でこれらが接合、巻装された直円柱状の芳香カートリッジ 2-7であって、キャビティ221-7-c7が、直円柱状で、フィルタ2211の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部からフィルタ2211内に、フィルタ2211とキャビティ221-7-c7の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている概略模式図である。図11は、被加熱芳香発生体とフィルタとが隣接しているが、この配列に限定されることはなく、逆に、被加熱芳香発生体と空洞とが隣接していても良い。この場合、フィルタの長さfが短くなることによって、吸引量が増加するため、フィルタに形成されるキャビティの数及び大きさ、すなわち、表面積を低減することができる。なお、カートリッジ外装体だけでマウスピースとしての強度が必要であるため、カートリッジ外装体の素材となるPE、PP等のポリオレフィン樹脂、PET樹脂、CA樹脂、及び、ポリ乳酸(PLA)等、並びに、紙等の厚さを、材質に応じて適宜大きくしても良い。
【0123】
図12は、本発明の一実施形態に掛かる、4つのキャビティ221-8-c8が形成された気体を濾過するフィルタ2212とカートリッジの外装体で形成された空洞221-8-v2とで構成されたマウスピース221-8が、被加熱芳香発生体21とフィルタ2212とが隣接する直円柱状の芳香カートリッジ 2-8であって、キャビティ221-8-c8が、直円柱状で、フィルタ2212の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部からフィルタ21212内に、フィルタ2212の長手方向に存する直円柱の中心軸を中心として、回転対称な位置に配設されている概略模式図である。この場合も、図11の説明と同様に、被加熱芳香発生体と空洞とが隣接していても良く、フィルタの長さfが短くなって、吸引量が増加するため、フィルタに形成されるキャビティの数及び大きさ、すなわち、表面積を低減することができる。また、カートリッジ外装体の強度についても図11と同様である。
【0124】
このようなキャビティを備えたフィルタは、従来の一般的な支持部材及び/又は冷却部材が備えられたマウスピースの吸引量の低下を解決する吸引最適化手段にも極めて効果的である。
【0125】
図13は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-9を示す概略模式図である。被加熱芳香発生体21のマウスピース222方向への移動を防止する円柱状支持部材2221と、それに隣接する1つのキャビティ2222-c1が形成された気体を濾過するフィルタ2222と、を備えたマウスピース222が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体24でこれらが接合、巻装され、キャビティ2222-c1が、フィルタ2222の長手方向の支持部材2221側の端部からフィルタ2222内に、フィルタ2222とキャビティ2222-c1の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている。この場合も、キャビティの数、大きさ、及び、形状は、図13に限定されるものではなく、図6~10の説明で記載したものを適用することができるが、支持部材が略空洞となっているので、キャビティの数及び大きさは、かなり低減できる。
【0126】
図14は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-10を示す概略模式図である。隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース223方向への移動を防止する円柱状支持部材2231と、支持部材に隣接する被加熱芳香発生体21が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材2232と、冷却部材2232と隣接する1つのキャビティ2223-c1を有して気体を濾過するフィルタ2223と、を備えたマウスピース223が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。キャビティ2223-c1が、フィルタ2223の長手方向の冷却部材2232側の端部からフィルタ2223内に、フィルタ2223とキャビティ2223-c1の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている。この場合も、キャビティ-の数、大きさ、及び、形状は、図14に限定されず、図6~10の説明で記載したものも適用できる。
【0127】
図15は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-11を示す概略模式図である。隣接する被加熱芳香発生体21が加熱されて揮発する成分を冷却する円柱状冷却部材2241と、冷却部材2241と隣接する1つのキャビティ2242-c1を有して気体を濾過するフィルタ2242と、を備えたマウスピース224が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。キャビティ2242-c1が、フィルタ2242の長手方向の冷却部材2241側の端部からフィルタ2242内に、フィルタ2242とキャビティ2242-c1の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている。この場合も、キャビティの数、大きさ、及び、形状は、図15に限定されず、図6~10で記載したものも適用でき、冷却部材の構造に応じて適宜設計できる。
【0128】
次いで、図13及び14の説明にも記載したように、マウスピースにフィルタと支持部材及び/又は冷却部材を配設し、支持部材の長さを大きくして吸引量を高める場合のマウスピースの変形の課題に対する本発明の解決手段を具体的に説明する。ここでは、マウスピースの変形を防止することによって、気体の吸引量の低下を解消するため、マウスピースの形状補強部材が吸引最適化手段となる。
【0129】
図16は、マウスピースの変形を防止する本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-12を示す概略模式図である。隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース225-1方向への移動を防止する支持部材2251-1と、支持部材2251-1に隣接して気体を濾過するフィルタ2252-1と、を備えたマウスピース225-1が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。この場合の吸引最適化手段は、貫通孔2251-1-hの内壁と接触する1つの板状補強材2252-1-s1であり、支持部材2251-1と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される貫通孔2251-1-h内に、中心軸を面内に有し、固定的又は可動的に配設されている。このように支持部材を板状補強材で貫通孔の内部から支えることで支持部材の変形が防止され、吸引量の低下を防止することができる。そして、この板状補強材は、例えば、貫通孔に溝を形成して、接着剤で固定してもよいし、可動できるように、貫通孔に嵌入させるだけでもよいが、この方法に限定されるものではない。
【0130】
図17は、マウスピースの変形を防止する本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-13を示す概略模式図である。隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース225-2方向への移動を防止する支持部材2251-2と、支持部材2251-2と隣接して気体を濾過するフィルタ2252-2とを備えたマウスピース225-2が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体でこれらが接合、巻装されている。吸引最適化手段は、補強支持部材225-2に含まれる、貫通孔2251-2-hの内壁と接触する2つの板状部材が交差した板状補強材2251-2-s2であり、支持部材2251-2と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される貫通孔2251-2-h内に、その中心軸を面内に有し、固定的又は可動的に配設されている。この板状補強材は、図16に示す板状補強材よりも更に強固に変形を防止することができるので、より支持部材の長さを長くして、吸引量の低下を防止することが可能となる。固定的又は可動的な配設方法としては、例えば、図16で説明した方法をそのまま適用できるが、限定されるものではない。
【0131】
図18は、マウスピースの変形を防止する本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-14を示す概略模式図である。隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース225-3方向への移動を防止する支持部材2251-3と、支持部材2251-3に隣接して気体を濾過するフィルタ2252-3と、を備えたマウスピース225-3が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。吸引最適化手段は、補強支持部材2251-3として、固定的又は可動的に配設されている管状補強材2251-3-s4と4つの板状補強材2251-3-s3とを含む形状補強材である。管状補強材2251-3-s4は、支持部材2251-3と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材2251-3の貫通孔2251-3-h内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔2251-3-hの半径より小さい半径を有する同心円管である。また、4つの板状補強材2251-3-s3は、管状補強材2251-3-s4の外周側且つ半径方向に、貫通孔2251-3-hの内壁と接触するように形設されている。この管状補強材と板状補強材からなる形状補強材は、図17に示す板状補強材より更に補強効果が大きく、より更に支持部材の長さを長くすることができる。この場合も、固定的又は可動的配設方法は、図16と同様である。
【0132】
図19は、図18で同心円管であった管状補強材2251-3-s4の代わりに、(中空ではない)実柱の同心円柱の柱状補強材2251-4-s4を使用した芳香カートリッジ2-15を示す概略模式図である。中空の円管を使用するか実柱の円柱を使用するかは、補強効果と吸引量とのバランスで適宜交換可能である。
【0133】
図16~19の補強支持部材は、図5~10において説明したキャビティが形成されたフィルタと共にマウスピースを構成することができ、更に、冷却部材も連接してマウスピースを構成することもできる。
【0134】
図20は、芳香カートリッジ2-15を示す概略模式図であり、図16~19の補強支持部材と、図5~10において説明したキャビティが形成されたフィルタとを連接したマウスピースを、被加熱芳香体と隣接して接合させた芳香カートリッジの一例を示す。これは、隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース225-5方向への移動を防止する形状補強材2251-3-s3及び2251-3-s4が備えられた補強支持部材2251-5と、それに隣接して気体を濾過する1つのキャビティが形成されたフィルタ2252-5と、を備えたマウスピース225-5が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。
【0135】
キャビティ2252-5-c1が、フィルタ2252-5の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部のフィルタ2252-5内に、フィルタ2252-5とキャビティ2252-5-c1の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている。ここでの吸引最適化手段は、支持部材2251-5と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材2251-5の貫通孔2251-5-h内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔2251-5-hの半径より小さい半径を有する中空の同心円管の管状補強材2251-5-s4と、この管状補強材2251-5-s4の外周側において管状補強材2251-5-s4の半径方向に貫通孔2251-5-hの内壁と接触するように形設される4つの板状補強材2251-5-s3とを有する形状補強材であり、補強支持部材2251-5として固定的又は可動的に配設されている。このような構成に限定されず、種々の補強支持部材と種々のキャビティが形成されたフィルタとを組み合わせることが可能である。
【0136】
図21は、芳香カートリッジ2-15を示す概略模式図であり、図16~19の補強支持部材と、図5~10において説明したキャビティが形成されたフィルタとの間に冷却部材を介在させたマウスピースを、被加熱芳香体と連接した芳香カートリッジの一例を示す。隣接する被加熱芳香発生体21のマウスピース226方向への移動を防止する形状補強材2261-s3及び2261-s4を有する補強支持部材2261と、被加熱芳香発生体21からの気体を冷却する冷却部材2262と、冷却部材2262に隣接して気体を濾過する1つのキャビティ2263-c1が形成されたフィルタ2263と、を備えたマウスピース226が、被加熱芳香体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。
【0137】
キャビティ2263-c1が、フィルタ2263の長手方向の被加熱芳香発生体21側の端部で、フィルタ2263とキャビティ2263-c1の直円柱の中心軸が略同一となるように配設されている。ここでの吸引最適化手段は、支持部材2261と直円柱の中心軸が略同一となるように形成される支持部材2261の貫通孔2261-h内に、この軸と略同一の軸を有する貫通孔2261-hの半径より小さい半径を有する中空の同心円管の管状補強材2261-s4と、この管状補強材2261-s4の外周側において管状補強材2261-s4の半径方向に貫通孔2261-hの内壁と接触するように形設される4つの板状補強材2261-s3とを有する形状補強材であり、補強支持部材2261として固定的又は可動的に配設されている。この場合も、このような構成に限定されず、冷却部材を介在して種々の補強支持部材と種々のキャビティが形成されたフィルタとを組み合わせることが可能である。
【0138】
以上のように、フィルタ及び支持部材の改良によって吸引量が増加するに伴い、気体の熱が、発熱体からフィルタに対流して伝わりやすくなるため、芳香カートリッジを構成する各部材間の接合力が低下し、各部材間から気体が漏洩して吸引量に悪影響を及ぼすことがある。以下では、この問題を解決可能な、被加熱芳香発生体とマウスピースとの間に断熱部材を設けた芳香カートリッジを提供する。
【0139】
図22は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-18を示す概略模式図である。ここでの吸引最適化手段は、断熱部材2271を有する。被加熱芳香発生体21に隣接する断熱部材2271と、断熱部材2271と隣接して気体を濾過するフィルタ2272と、を備えたマウスピース227が、被加熱芳香発生体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。
【0140】
また、図23は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジ2-19を示す概略模式図である。ここでも吸引最適化手段は、断熱部材2281を有する。被加熱芳香発生体21に隣接する断熱部材2281と、断熱部材2281と隣接して被加熱芳香発生体21からの気体を冷却する円柱状冷却部材2282と、冷却部材2282に隣接して気体を濾過するフィルタ2283と、を備えたマウスピース228が、被加熱芳香発生体21と隣接し、カートリッジ外装体23でこれらが接合、巻装されている。
【0141】
これらの断熱部材は、被加熱芳香体に隣接する支持部材のように、高温の気体を全体に行き渡らせるのではなく、流路の長い連続孔のスポンジのようなプラスチック製の断熱性多孔質体が好ましく、多少滞留させて冷却する程度の機能であって、冷却部材までの冷却機能は必要がなく、被加熱芳香発生体のマウスピース方向への移動を防止する支持部材の代わりに適用されることが好ましい。従って、断熱部材の長さsは使用する材質によるが、1~5mm程度で十分である。
【0142】
次いで、非タバコ材等の脱落物や粉塵によるフィルタ及び冷却部材の空隙が詰まることによって生じる吸引量の極端な低下を防止する吸引最適化手段として機能する蓋材及び隔壁材について図面を用いて説明する。
【0143】
図24は、本発明の一実施形態に掛かる芳香カートリッジの被加熱芳香発生体の部分概略模式図である。ここでの吸引最適化手段は、被加熱芳香発生体の両端部のうちの芳香カートリッジの端部側に配設される蓋材211と、被加熱芳香発生体のの他の端部側に配設される隔壁材212を含む。これらの蓋材211と隔壁材212としては、気体の吸引量を低下することがない、フィルタのような素材を極めて薄くスライスしたもの、不織布、及び、メッシュのような素材が好ましく用いられ、被加熱芳香発生体21に、接着剤等で固定すればよい。
【0144】
このような蓋材及び隔壁材は、被加熱芳香発生基材及びそれらを束ねた被加熱芳香発生体の状態に応じ、いずれか一方だけ備えてもよいし、両方備えてもよい。この蓋材及び/又は隔壁材により、脱落物や粉塵によるフィルタ及び/又は冷却部材の目詰まりが防止され、安定した吸引量が確保される。また、芳香カートリッジを針状の発熱体に突き刺す場合に生じる脱落物や粉塵等の発生も防止できる。
【0145】
以上、芳香カートリッジを喫煙する場合の気体の吸引量を確保するため、構造的に改良する物理的解決手段について図面を用いて具体的に説明した。以下、気体の吸引量低下を解決し、被加熱芳香発生体に備えられる気体生成持続材料について図面を用いて説明する。従来の被加熱芳香発生体は、気体の放出量が継時的に低下するため、喫煙時の気体の吸引量の減少をもたらすという問題があった。本発明の芳香カートリッジは、気体の吸引量の減少を防止する気体生成持続材料として、化学的解決手段が施された、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生基材を備えている。
【0146】
まず、図25には、本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生シートの概略模式図(A)及び本発明の一実施形態に掛かる、被加熱芳香発生体を構成する被加熱芳香発生充填物の概略模式図(B)を示す。
【0147】
被加熱芳香発生基材は、種々の製造工程[手段]で製造されるが、最終的にはシート又は充填物として巻装され被加熱芳香発生基体となる。図2及び3に示したように、加熱式喫煙具(1) 11や(2) 12の長手方向と長さz方向が対応しており、加熱式喫煙具に応じた長さzに切断されるが、気体生成持続材料として、適切な幅w及び厚さyを有している。ここには、一例として、図25を用い、図5で説明した被加熱芳香発生体に対応した寸法を示す。芳香カートリッジの長手方向と長さz方向が対応しており、この方向に被加熱芳香発生基材が紙に巻かれて被加熱芳香発生体となっている。被加熱芳香発生体に入っている被加熱芳香発生シート(A)は、加熱式喫煙具の長さzを12mm、幅w及び厚さyは、それぞれ、60~90mm及び0.1~1.0mmの範囲であることが好ましい。被加熱芳香発生充填物(B)は、長さzを12mmとするが、幅x及び厚さyは、それぞれ、1.0~2.0mm、厚さが0.1~1.0mmであることが好ましい。被加熱芳香発生充填物は、被加熱芳香発生シートを更に裁断したものである。
【0148】
図25(A)の被加熱芳香発生シート一枚を折り畳んで被加熱芳香発生体内装材21-pで巻かれた被加熱芳香発生体が図26(A-1)であり、図25(A)の被加熱芳香発生シート一枚を巻いて被加熱芳香発生体内装材21-pで巻かれた被加熱芳香発生体が図26(A-2)である。また、被加熱芳香発生充填物50本が被加熱芳香発生体内装材21-pで巻かれた被加熱芳香発生体が図26(B)である。これらの外径も、加熱式喫煙具(1) 11や(2) 12に応じて適宜設定されるものであるが、図5で説明した被加熱芳香発生体に対応し、6.9mmとすると、充填率が60~90%に納まる。特に、充填率が60~73%の場合、被加熱芳香発生基材に継時的な融着が激しく生じることは観測されていない。この充填率は、被加熱芳香発生シートの幅w及び被加熱芳香発生充填物の本数によって調整され、気体生成持続材料が存在する場合はこの限りではない。
【0149】
以下では、喫煙時の気体の吸引量の低下と密接な関係にある被加熱芳香発生体の気体放出量の低下を防ぎ、気体の吸引量を確保する機能を有する気体生成持続材料、すなわち、化学的解決手段が施された被加熱芳香発生基材について、図面を用いて具体的に説明する。本発明の芳香カートリッジは、被加熱芳香発生体に、気体生成維持材料として、この化学的解決手段が施された被加熱芳香発生基材を備えている。
【0150】
従来の被加熱芳香発生基材の製造方法[装置]には、様々な方法[装置]があるが、一例を図33に示す。非タバコ材を乾燥・粉砕した後、乾式混合して非タバコ材を準備する工程[手段]と、エアロゾルフォーマ、結合剤、付着防止剤、香料、非タバコ材抽出物、抗菌性保存剤等から選択される素材を準備する工程[手段]と、純水及びアルコールを準備する工程[手段]と、これらの準備された材料を一括して混合する湿式混合工程[手段]と、湿式混合して製造されたスラリーから含水シート製造する抄紙工程[手段]、抄紙された含水シートを圧縮又はキャストしてシートを製造する成形工程[手段]と、成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥する工程[手段]と、乾燥した被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]から製造される。
【0151】
具体例として、(製造例1)を示す。
【0152】
(製造例1)
下記粉砕物を非タバコ材として乾式混合機に投入し、5分間乾式混合を行った。
紅茶葉の乾燥粉砕物 100質量部
マメ科カンゾウの乾燥粉砕物 20質量部
蓮の葉の乾燥粉砕物 10質量部
【0153】
上記乾式混合物と下記材料を湿式混合機に投入し、15分間湿式混合した。
ポリプロピレングリコール 25質量部
グリセリン 25質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 5質量部
メンソール 3質量部
エタノール 3質量部
純水 200質量部
【0154】
このように得られたスラリーからシートを形成する工程[手段]においては、上記スラリーを適当な簀子を備えた枠体に指定の量を投入し含水シートを作成した。この時、本製造例では、含水シートにはおよそ、上記スラリーの含水量を、100とすると、95程度の水分量となる。
【0155】
引き続き、上記含水シートを所定のクリアランスを設定したプレスロールに3回通過させ成形を行い、その後に、前記3回通過させた含水シートに100質量部に対し、7質量部相当の純水を上記含水シートに追加し、更に上記プレスロールを5回通過させた。
【0156】
更に、上記の様に得られた、成形含水シートを35℃の環境下で、300分乾燥させて含水量20質量%の被加熱芳香発生シートを作製した。乾燥温度については、50℃未満とするのが香味を保つために好ましい。更に好ましくは45℃未満であり、更には40℃未満である。シートの厚さは、適宜調整されるが、本製造例では厚さを0.5mmとした。このシートは、裁断され、長さ240mm×幅75mmである長方形の被加熱芳香発生シート、長さ240mm×幅1.5mmの被加熱芳香発生充填物とした。なお、被加熱芳香発生シートを切断したシート及び充填物の長さ方向はロールの回転軸の平行方向であり、その幅方向はロールの回転方向とした。
【0157】
このようにして作製した被加熱芳香発生シート1枚及び被加熱芳香発生充填物50本が、それぞれ、巻装された後、長さが12mmとなるように裁断され、図26(A-1)及び図26(B)のような被加熱芳香発生体が作製された。そして、図13に示す、支持部材、フィルタを備えたマウスピースに被加熱芳香発生体を接合するタイプの芳香カートリッジを作製した。支持部材としては、外径6.9mmの円柱に、内径4.0mmの貫通孔を設けたPEの管を使用した。フィルタは、アセチルセルロース繊維を円柱状に成形し、坪量34g/m の紙で巻装された長さ23mmのものを用いた。カートリッジ外装体は、坪量38g/mの紙を用い、内径6.9mmとなるように2周半巻装し、のり付けして形成された。なお、カートリッジ外装体は、坪量が、32~45g/mの紙を2周半巻装して形成された紙製の筒を使用すると、被加熱芳香発生体の部分を加熱式喫煙具の発熱体に差し込んで使用する芳香カートリッジとして好適なものとなる。そして、カートリッジ外装体の一端から、支持部材及びフィルタを挿入してマウスピースとし、他端から、被加熱芳香発生体を挿入した後、マウスピースの部分に重なるように、坪量40g/mの紙を巻装し、芳香カートリッジを作製した。但し、フィルタは、製造方法[装置]が被加熱芳香発生基材に及ぼす影響、すなわち、気体生成持続材料の機能の差異を明確にするため、吸引最適化手段であるキャビティが形成されていないフィルタを使用した。
【0158】
このようにして作製された被加熱芳香発生体及び芳香カートリッジは、次のような評価を行った。
【0159】
≪評価1≫
作製した芳香カートリッジを長辺70mm、短辺14mm、高さ45mmである紙製の箱に、被加熱芳香発生体が底に向くように充填した。このように、用意された芳香カートリッジ入り箱を、40℃の環境下、2週間ポリ袋に入れて放置した。その後に、取り出し、常温常湿環境に1日放置したものについて以下の評価を行う。充填物を被加熱芳香発生体より取り出し、それらが固まっているかどうかを確認する。それと共に、5人の被験者に喫煙を行ってもらい、吸引量と風味の官能評価を実施した。
ランクA:ピンセットで取り出した時点で、ほぐれるもの
4人以上が吸引量及び風味共に十分感じ取れるもの
ランクB:ピンセットで押してほぐれるもの
2人以上が吸引量及び風味共に十分感じ取れるもの
ランクC:ピンセットで押しても、塊の残るもの
誰も吸引量及び風味共に十分感じ取れないもの
ランクCのものは、長期の保管などにより、加熱式喫煙具の発熱体に挿入するのが困難となる可能性の高いものである。
【0160】
(製造例1)で作製した芳香カートリッジは、ランクCの評価となり、被加熱芳香発生シート及び被加熱芳香充填物は、継時的に融着し、喫煙時の気体放出量、すなわち、気体吸引量が少なくなると共に、風味も変質し、被加熱芳香体の気体生成持続材料として機能しなかった。
【0161】
この問題を製造方法[装置]の改良によって解決した。この製造方法[装置]は、図27に示すように、製造工程[手段]として、第二の湿式混合工程[手段]を導入したところに特徴がある。図から明らかなように、乾燥して粉砕した非タバコ材を混合する乾式混合工程[手段]Z1と、乾式混合工程[手段]で製造された非タバコ材と、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料とをアルコール及び純水混合液に混合する第一の湿式混合工程[手段]M2と、第一の湿式混合工程[手段]によって製造された非タバコ材等を含むアルコール及び純水混合液に、純水及び/又はアルコールを更に添加して非タバコ材等を含むスラリーを製造する第二の湿式混合工程[手段]M3と、第二の湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]S1と、含水シートを圧縮してシートに加工するシート成形工程[手段]S2と、シート成形工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]S3と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]H1とから被加熱芳香発生基材は製造される。
【0162】
具体例として、(製造例2)を示す。
【0163】
(製造例2)
紅茶の葉を70℃で、水分量が2質量%となるように乾燥させた後、粉砕する。同様に、マメ科カンゾウ、蓮の葉、高麗ニンジンを乾燥させ、粉砕する。なお、乾燥温度は、60℃~80℃以下が好ましい。この範囲であると、必要とする香味成分の消散を避けながら、所望の水分量に到達しやすい。なお、65℃以上であると更に所望の水分量へ到達しやすく、75℃以下であると更に必要とする香気成分の消散を防止できる。
【0164】
なお、粉砕後の水分量は5質量%以下とするのが好ましい。このようにすると、後の工程[手段]でのスラリー化が容易となる。3質量%以下であると更に好ましい。また、水分量は0.1質量%以上であると、水等との親和性がよい状態を保つことができて好ましい。
【0165】
このように、乾燥・粉砕したものを、80メッシュのふるいを通過したものを非タバコ材として使用し、下記の配合量で乾式混合機に投入し、5分間乾式混合を行った。
紅茶葉の乾燥粉砕物 100質量部
マメ科カンゾウの乾燥粉砕物 20質量部
蓮の葉の乾燥粉砕物 10質量部
高麗人参の乾燥粉砕物 5質量部
【0166】
上記乾式混合物と下記材料を湿式混合機に投入し、第一の湿式混合を15分間行った。
ポリプロピレングリコール 30質量部
グリセリン 20質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 5質量部
メンソール 3質量部
エタノール 3質量部
純水 20質量部
【0167】
次いで、上記スラリーを含む湿式混合機に、純水180質量部と、エタノール10質量部を追加して投入し、第二の湿式混合を10分間行う。ここで、エタノールを添加したのは、ポリプロピレングリコール、グリセリンに対する上記乾燥粉砕物の分散状態が大きく改善することができるからである。アルコールは、低級モノアルコールあれば、エタノールに限定されるものではない。このような低級モノアルコールの添加量は、乾燥粉砕物100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。0.1質量部以上とすると、上記分散状態の改善が認められ、10質量部以下とすると、低級モノアルコールの残留を抑制することができる。0.5~5質量部であれば、この効果はより顕著である。
【0168】
純水を最初に投入して混合物を形成する理由は、上記混合物の分散を予め進め、そののちに追加の水で、希釈・混合することにより分散性の良好なスラリーを得ることができるからであり、複数回に分けて水を投入することも好ましい。複数回に分けて投入する際は、前に投入した水の量を少なくし、後に投入する水の量を多くする組み合わせをとることが好ましい。このようにすると、前に水を投入した際の分散性向上の度合いが高く、後に投入する水の量を多くすると均一なスラリーとなるからである。
【0169】
上記のように得られたスラリーからシートを形成する工程[手段]においては、上記スラリーを適当な簀子を備えた枠体に指定の量を投入し含水シートを作成した。この時、本実施の例では、含水シートにはおよそ、上記スラリーの含水量を、100とすると、95程度の水分量となる。
【0170】
引き続き、上記含水シートを所定のクリアランスを設定したプレスロールに3回通過させ成形を行い、その後に、前記3回通過させた含水シートに100質量部に対し、7質量部相当の水を上記含水シートに追加し更に上記プレスロールを5回通過させた。好ましくは、含水シート100質量部に対し、水2質量部以上15質量部以下である。このように、含水シートの成形を複数回行う際に、途中で、水を加えることにより含水シートに含まれる水をある範囲にそろえやすいという効果を有し、後の乾燥工程[手段]の条件をそろえることができるという効果があるとともに、最終生成物の品質をそろえることができるという効果がある。
【0171】
更に、上記の様に得られた、成形含水シートを35℃の環境下で、300分乾燥させて含水量20質量%の電子タバコ充填物用成形シートを作成した。乾燥温度については、50℃未満とするのが香味を保つために好ましい。更に好ましくは45℃未満であり、更には40℃未満である。シートの厚みは0.5mmとした。このシート、被加熱芳香発生体として巻装されるために、長さzが240mm、幅xが75mmの被加熱芳香発生シート、及び、長さzが240mm、幅xが1.5mmの被加熱芳香発生充填物に裁断された。
【0172】
この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生シート1枚及び被加熱芳香発生充填物50本が、それぞれ、巻装された後、長さzが12mmとなるように裁断され、図26(A-1)及び図26(B)に示すような被加熱芳香発生体が作製された。そして、(製造例1)同様、図13に示す、支持部材、フィルタを備えたマウスピースに被加熱芳香発生体を接合するタイプの芳香カートリッジを作製した。但し、フィルタは、製造方法[装置]が被加熱芳香発生基材に及ぼす影響、すなわち、気体生成持続材料の機能の差異を明確にするため、吸引最適化手段であるキャビティが形成されていないフィルタを使用した。
【0173】
そして、(製造例1)で作製された芳香カートリッジ同様、≪評価1≫を行ったところ、ランクAの結果が得られた。このことは、この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生基材は、経時的に生じる、被加熱芳香発生基材内部及び相互間の経時的融着が少なく、加熱による気体の放出量の変化が少なく、喫煙時の気体吸引量維持されるものと考えられる。すなわち、この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生基材は、被加熱芳香発生基体の気体生成持続材料として機能している。
【0174】
図27に示す製造方法[装置]は、図28に示すように、製造方法[装置]が改良された。図28の製造方法[装置]は、図27に示す製造方法[装置]において、シートの成形工程[手段]S2において、シートの含水量が50%未満になった時に、エアロゾルフォーマを添加する工程[手段]S3を更に追加することを特徴としている。具体的には、(製造例2)における第一の湿式混合におけるプロピレングリコールの配合量を10質量部削減し、プロピレングリコールのエタノール50%溶液を用い、40℃未満の温度でスプレーして、シートにプロピレングリコールを吸収させ、第一の湿式混合において削減したプロピレングリコールを補った。ここで、エアロゾルフォーマのアルコール溶液の濃度は、20~80%の範囲で行うことが、エアロゾルフォーマの吸収性とアルコールの乾燥性という点から好ましい。濃度が高いと吸収されにくく、濃度が低いとアルコールの乾燥に時間を要す。吸収させる温度も、エアロゾルフォーマの吸収性という点で20~50℃であることが好ましい。温度が高すぎるとエアロゾルフォーマの蒸発が激しく、温度が低すぎると吸収しにくくなる。
【0175】
第二の湿式混合における分散状態が良好であったため、この工程[手段]におけるプロピレングリコールの吸収が速やかに行われた。この方法[装置]で製造された厚さ0.5mmの被加熱芳香発生基材も(製造例2)と同様のサイズに裁断し、芳香カートリッジを作製し、≪評価1≫を行ったところ、ランクAという結果が得られ、この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生シートも、被加熱芳香発生基体の気体生成持続材料として機能することが明らかとなった。
【0176】
図27及び28の製造方法[装置]の共通した改良点は、非タバコ材とエアロゾルフォーマの混合、分散を改良したことにある。この点を鑑み、非タバコ材とエアロゾルフォーマの混合、分散工程[手段]を経由しない製造方法[装置]を見出したのが図29に示す被加熱芳香発生基材の製造工程[手段]である。
【0177】
すなわち、気体生成持続材料を製造する乾燥して粉砕した非タバコ材を純水と混合して非タバコ材のスラリーを製造する湿式混合工程[手段]M1と、湿式混合工程[手段]で製造されたスラリーから含水シートを製造する抄紙工程[手段]S1と、含水シートを圧縮又はキャストしてシートに加工するシート成形工程[手段]とS2、シート成形工程[手段]で製造されたシートの含水量を50質量%未満に減少させる乾燥工程[手段]S3と、乾燥工程[手段]で製造されたシートに、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、架橋PVP、香料、非タバコ抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、シート成形工程[手段]で排出された水の濃縮液、及び、抗菌性保存剤から選択される材料のアルコール及び純水混合液を塗布又は浸漬させる吸収及び吸着工程[手段]S4と、吸収及び吸着工程[手段]で製造されたシートを乾燥して被加熱芳香発生シートを製造する乾燥工程[手段]S5と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]H1とから被加熱芳香発生基材が製造される。
【0178】
この製造方法[装置]の具体例を(製造例3)に示す。
【0179】
(製造例3)
木材繊維 50質量部
乾燥紅茶葉 50質量部
水 5000質量部
以上を混合し、スラリーとした。
【0180】
このスラリーをキャストして、厚み0.5mmのシートとした。なお、キャストの残り水は濃縮して保管し、次の工程[手段]で使用した。
【0181】
上記シートを乾燥し、シート100質量部当たり、
ポリプロピレングリコール 10質量部
グリセリン 20質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 2質量部
メンソール(50%エタノール溶液) 3質量部
キャストのこりの濃縮した水 50質量部
を添加し、乾燥してシートを作製した。
【0182】
作製されたシートは、(製造例2)と同様に、被加熱芳香発生体及びそれを用いた芳香カートリッジを作製して、≪評価1≫を行ったところ、ランクAの結果が得られ、この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生シートも、被加熱芳香発生基体の気体生成持続材料として機能することが明らかとなった。
【0183】
これまでの製造方法[装置]は、非タバコ材等のスラリーを作製し、抄紙することによって被加熱芳香発生シートを作製することに特徴を有していたが、図29に示すように、非タバコ材だけのスラリーの抄紙によって製造された含水シートに、エアロゾルフォーマ、香料、結合剤等を吸収させる方法[装置]が良い結果を得られたことより、様々な性質異なる材料のスラリーから抄紙するという工程[手段]に無理があると考え、抄紙工程[手段]を必要としない製造方法[装置]を検討した結果、図30に示す方法[装置]が見出された。三本ロール等の、大きな剪断力及び圧縮力が非タバコ材等の混合物に加わることを特徴としている。
【0184】
すなわち、非タバコ材を乾燥して粉砕する非タバコ材準備工程[手段]Z1及び2と、少なくとも香料及び/又は非タバコ材抽出物と架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンとをアルコールに混合して香料及び/又は非タバコ抽出物を架橋PVP及び/又はβ-シクロデキストリンに寄留させる香料及び/又は非タバコ抽出物溶解工程[手段]M1と、少なくともエアロゾルフォーマと結合剤又は増粘剤とを純水に混合するエアロゾルフォーマ溶解工程[手段]M2と、非タバコ材準備工程[手段]で製造された材料と、香料及び/又は非タバコ抽出物溶解工程[手段]で製造された材料と、エアロゾルフォーマ溶解工程[手段]で製造された材料を混合する湿式混合工程[手段]M3と、湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]S1と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]H1とから被加熱芳香発生基材を製造する方法[装置]である。
【0185】
この製造方法[装置]の具体例を(製造例4)に示す。
【0186】
(製造例4)
非タバコ材を乾燥して粉砕する非タバコ材準備工程[手段]Z1及び2では、紅茶の葉を非タバコ材として用い、70℃のオーブンで乾燥させた後、撹拌型粉砕機を使用して粉砕し、80メッシュの篩を通過させ、水分量が2質量%の非タバコ材を準備する。
【0187】
メントールを溶解する工程[手段]M1では、メントール、低級アルコール、及び、非水溶性架橋ポリマーを秤量して混合しメントールを溶解する。低級アルコールにメントールを溶解した後、非水溶性架橋ポリマーを添加し混合することが好ましい。メントール、低級アルコール、及び、非水溶性架橋ポリマーを混合すると、メントールの消散を抑制する効果が得られる。
【0188】
ここで、メントールは、天然物から得られたものに限られず、合成物を用いることもできる。また、薄荷、ミント、ハッカ油、その他メントールを含む材料を使用してもよい。
【0189】
低級アルコールは、メントールを溶解する溶媒であり、エチルアルコールが特に好ましく用いられる。
【0190】
非水溶性架橋ポリマーとは非架橋のポリマーが水に可溶であるものに架橋を施し、水に不溶となり膨潤するものを意図している。もちろん、低級アルコールに溶解せず、膨潤することが好ましく、そのようなものが選択される。このような非水溶性架橋ポリマーは、親水性部分と疎水性部分を有しており、親水性部分が膨潤に寄与し、親水性部分がメントールに配向することによりメントールの消散が抑制されると考えられる。親水性架橋ポリマーの好ましい例としては、架橋PVP、水溶性の多糖類をエポキシ架橋、エステル架橋、エーテル架橋を施し非水溶性とした架橋多糖類が挙げられる。特に、メントールと共にエタノール及び架橋PVPを用いた場合に、メントールの消散が顕著に抑制されるという効果が認められた。
【0191】
メントールは、所望の風味を目標とした量を添加すれば足りるが、被加熱芳香発生基材中のメントール含有量が、0.1~10質量であることが好ましく、0.2~5質量であることがより好ましい。
【0192】
被加熱芳香発生基材の形成にあたっては、メントール100質量部に対して、親水性架橋ポリマーの添加量は10~2000質量部が好ましく、50~600質量部であることがより好ましい。
【0193】
メントールの消散抑止という効果を奏するためには、被加熱芳香発生基材中、親水性架橋ポリマーは、2質量%以上存在していることが好ましく、4質量%以上存在していることがより好ましい。このような量を存在させることで、メントールの消散を抑制しながら長期の保存が可能となり、長期保存後においても、メントールの清涼感を楽しむことができる。また、被加熱芳香発生基材中、親水性架橋ポリマーの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。10質量%以下であると、非植物由来のポリフェノール等に起因する風味を保つことが可能である。
【0194】
使用する低級アルコールは、メントール100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましい。更に、100質量部以上であると、メントールを溶解しつつ、親水性架橋ポリマーの混合を十分に行うことができる。2000質量部以下であると、後工程[手段]において低級アルコールの残留を少なくすることができ、効率的な製造工程[手段]とすることが可能である。
【0195】
以上から、一実施例としては、
メントール 100質量部
エチルアルコール 200質量部
ポリビニルポリピロリドン 200質量部
を秤量し、メントールをエチルアルコールに溶解させて、メントールエチルアルコール溶液を得た後、メントールエチルアルコール溶液に架橋PVPを加え、撹拌混合して、メントール/エチルアルコール/架橋PVP混合物を得た。
【0196】
次いで、エアロゾルフォーマ等の材料を溶解する工程[手段]M2は、エアロゾルフォーマ、風味添加剤、保存料、結合剤または増粘剤等が純水に溶解される。
【0197】
ここで、エアロゾルフォーマとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチル等を使用可能である。特に、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく用いられる。これらは、被加熱芳香発生基材に対して、1~80質量%の量で用いられることが好ましく、10~40質量%とすることがより好ましい。
【0198】
風味を追加する香料は必要に応じて使用され、ハッカ、ココア、コーヒー、紅茶等のエキスを挙げられる。
【0199】
また、必要に応じて食品の抗菌性保存剤を添加することができる。抗菌性保存剤として、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等を使用可能である。
【0200】
結合剤又は増粘剤等として、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、及び、ローカストビーンガム等のゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及び、エチルセルロース等の変性セルロース系高分子、デンプン、アルギン酸等の有機酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラナギン、寒天、及び、ペクチン等の有機酸の共役塩基塩等の多糖類を用いることができる。これらを組み合わせて使用してもよい。
【0201】
これらの中から、グリセリン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、グルコマンナン、キシリトールの20%水溶液を準備した。
【0202】
次に、非タバコ材準備工程[手段]Z1及び2、香料溶解工程[手段]M1、及び、エアロゾルフォーマ溶解工程[手段]M2の各工程[手段]の材料を湿式混合する工程[手段]M3では、通常の湿式混合機を使用し、下記配合で、15分間、撹拌羽根により剪断力を加えつつ撹拌して、非タバコ植物の被加熱芳香発生基材用組成物を作製した。
紅茶葉の乾燥粉砕物 100質量部
メントール/エチルアルコール/架橋PVP 25質量部
グリセリン 30質量部
プロピレングリコール 30質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4質量部
メチルセルロース 15質量部
キシリトール水溶液 8質量部
グルコマンナン 1質量部
【0203】
シートを成形する工程[手段]S1では、3本ロールミルを使用した。上記組成物を3本ロールミルに投入し、シートの状態を見ながら純水を20質量部加え、ドクターブレードをロールに押し当ててシート状物を採取する工程[手段]を8回繰り返して、最終的なシート状非タバコ植物組成物を得た。3本ロールミルを用いると、狭いロール間に押し込まれることによる圧縮力と、ロール速度差による剪断力により、混練、分散等を行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることができ、スラリーの抄紙工程[手段]からシートを作製するよりも均質なシート製造することができる。3本ロールミルの他、プレスローラやプレス機も好適に使用可能である。
【0204】
シート成形工程[手段]S1においては、必要に応じ、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、香料、抗菌性保存剤、結合剤又は増粘剤、水等を添加してもよい。
【0205】
なお、本発明で使用する純水は、殺菌あるいは微生物を除去したものを使用することが好ましいが、逆浸透膜又はイオン交換等により得られる純水でもよい。
【0206】
このシート成形工程[手段]S1で、厚さ約0.5mmのシートに成形した。シートの厚さは、0.1~1.0mm、又は、0.1~0.5mmの範囲にあればよい。
【0207】
続いて、この厚さ0.5mmの被加熱芳香発生シートを、(製造例2)と同様に、被加熱芳香発生シート及び被加熱芳香発生充填物に裁断した後、被加熱芳香発生体に加工し、芳香カートリッジに組み立てた。そして、同様に≪評価1≫を行ったところ、ランクAの結果が得られ、この方法[装置]で製造された被加熱芳香発生シートも、被加熱芳香発生基体の気体生成持続材料として機能することが明らかとなった。
【0208】
以上、非タバコ材を使用する被加熱芳香発生基材は、それを構成する組成物及びそれらの性質が多岐に亘っており、これらの混合、分散、溶解状態の不均一性が、被加熱芳香発生基材からのエアロゾルフォーマのブリードアウト等の継時的変化を招き、被加熱芳香発生基材からの気体放出量が低下し、喫煙時の気体吸引量が低下する原因であることが明らかとなった。従って、その不均一性を改良することによって気体吸引量の継時的変化を解決することができた。
【0209】
更に、非タバコ材を使用する芳香カートリッジ特有の問題の原因が、非タバコ材を使用する被加熱芳香発生基材の構成材料の一つである結合剤又は増粘剤にあることを見出した。これらは、繊維を多量に含ませることができないために生起する塊状状態の破壊及び被加熱芳香発生基材内部及び被加熱芳香発生基材間に生じる融着を防止するために添加しているが、添加量を増加させると、被加熱芳香発生基材の密度が高くなり、塊状状態を維持することはできるが、継時的に被加熱芳香発生基材が収縮し、エアロゾルフォーマのブリードアウトが激しくなることが分かった。そこで、結合剤の添加量、添加方法[装置]、種類を検討した結果、図31に示す方法[装置]で製造された被加熱芳香発生基材は、上記課題を解決できることを見出した。
【0210】
すなわち、乾燥して粉砕された非タバコ材を準備する工程[手段]Z1及び2と、純水に第一の結合剤を溶解した第一の結合剤水溶液を作製する工程[手段]M1と、エアロゾルフォーマ、架橋PVP、香料、非タバコ材抽出物、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、抗菌性保存剤から選択される材料を準備する工程[手段]Z4及び5で用意された材料を混合する第一の湿式混合工程[手段]M1と、第一の湿式混合工程[手段]で製造された混合液を安定化する養生工程[手段]Y1と、養生工程[手段]で製造された養生混合液と第二の結合剤を純水に溶解する工程[手段]Z6で作製された第二の結合剤水溶液とを混合する第二の湿式混合工程[手段]M2と、第二の湿式混合工程[手段]で製造された材料から圧縮して被加熱芳香発生シートを製造するシート成形工程[手段]S1と、被加熱芳香発生シートを裁断又は折り曲げを行うシート加工工程[手段]H1とから製造される被加熱芳香発生基材は、塊状状態を安定に保持でき、気体流路を閉塞することがない。また、継時的な被加熱芳香発生基材間の融着も認められなかった。
【0211】
この製造方法[装置]の具体例として(製造例5)を示す。
【0212】
(製造例5)
原料となる非タバコ植物を乾燥、粉砕する工程[手段]Z1では、エアロゾルフォーマ、純水、その他の成分を吸収又は担持し易くするように、水分量を調整することが好ましく、乾燥温度は、60~80℃以下が好ましい。この範囲であると、必要とする香味成分の消散を避けながら、所望の水分量へ到達しやすい。なお、65℃以上であると更に所望の水分量に到達しやすく、75℃以下であると必要とする香気成分の消散を更に防止できる。なお、乾燥・粉砕後の水分量は5質量%以下とすることが好ましく、後工程[手段]におけるスラリー化が容易となる。3質量%以下であると更に好ましい。しかし、水分量が0.1質量%以上なければ、水等との親和性が低下する。更に、前記乾燥粉砕物を篩分けする篩工程[手段]を設けることによって、所望の粒度の非タバコ植物を第一の湿式混合工程[手段]M3へ投入することができ、スラリー化が容易となる。
【0213】
第一の結合剤を純水に溶解して準備する工程[手段]Z3で用いられる第一の結合剤としては、セルロース類、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンシードガム、アラビアゴム、大豆多糖類、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、コーンスターチ等を挙げることができるが、セルロース類が好ましい。粘度について、溶液粘度が300mPa・s以上であると、非タバコ植物との混合が良好である。また、溶液粘度が5000mPa・s以上であると、非タバコ植物を結束するのに適している。なお、溶液粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用い、1%水溶液を準備し、25℃の環境下で、10~30rpmで、ロータの回転を開始して表示値が安定したところの測定値である。ここで、ブルックフィールド型粘度計の測定上限は、100,000mPa・sであるが、この上限を越える粘度も上述した粘度範囲に入る。
【0214】
第一結合剤として好ましいセルロース類とは、一般に、セルロース、セルロース誘導体、及び、これらの金属塩を含むが、本発明には、水溶性であるものが、非タバコ植物を結束するという観点から特に好ましい。このようなセルロース類としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及び、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩を挙げることができる。この中でも、セルロース類の金属塩がより好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより更に好ましい。
【0215】
エアロゾルフォーマを準備しておく工程[手段]Z4に用いられるエアロゾルフォーマとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチル等を使用できるが、特に、グリセリン、プロピレングリコールが好ましい。これらは、被加熱芳香発生基材の組成物に対して、1~80質量%の範囲で用いられ、特に、10~40質量%であることが好ましい。
【0216】
上記以外に使用するものを準備する工程[手段]Z5においては、必要に応じ風味を追加するため、メントール、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス等の香味料、香味料を寄留させる機能を有する架橋PVPやβ-シクロデキストリン、金型等との剥離性及び成形性を有する微結晶セルロース、保存安定性のためのソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等の食品用抗菌性保存剤等を添加することができる。
【0217】
以上のように準備された材料は、第一の湿式混合工程[手段]M1で混合される。混合機は、特殊なものを必要とせず、例えば、混合槽中の材料を撹拌羽根によって剪断力を加えつつ混合するような混合機でもよく、ロールミル、ニーダー、エクストルーダーを用いて混錬し、混合を更に強化することも可能である。この工程[手段]における混合温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、25℃程度に保持されるのがより更に好ましい。混合時に過度の熱がかかると、香気成分が消散する恐れがあるためである。そのため、混合槽の温度制御が必要である。
【0218】
第一の湿式混合工程[手段]M1で製造された第一の混合物は、所定の温度及び所定の時間放置する養生工程[手段]Y1を経ることが好ましいが、必須工程[手段]ではない。しかし、必ず結合剤を第一の混合工程[手段]と第二の混合工程[手段]に分割して添加しなければならない。このようにして、結合剤を分割添加した養生工程[手段]Y1を経ない非タバコ材混合物も、養生工程[手段]Y1を経た養生混合物も、被加熱芳香発生基材を芳香カートリッジに加工して、例えば、図2に示す加熱式喫煙具を用いて、喫煙評価すると、初期吸引量及び風味共に改善される。高温多湿な環境で保存安定性評価をしても、被加熱芳香発生基材内部及び被加熱芳香発生基材間の融着がなく、初期喫煙時のエアロゾルの煙及び非タバコ材の香気成分の放出量、すなわち、吸引量に経時的な変化がない上、風味の変化も認められない。特に、非タバコ材として、茶類を用いた場合の効果が顕著であり好ましい。しかし、養生工程[手段]Y1は、これらの効果をより高めることができる。
【0219】
養生工程[手段]Y1の温度は、15~30℃が好ましく、18~24℃であることがより好ましい。15℃以上であると、上述した風味の改善効果が上がり、30℃以下であると、上記経時的な吸引量の変化及び風味の変化が抑えられ、経時的変化風味の改善が保持されるからである。18~24℃の場合、これらの効果がより顕著である。また、養生工程[手段]Y1の時間は、72~336時間であることが好ましく、96~192時間であることがより好ましい。72時間以上であると風味の改善が見られ、336時間以下であると、上記経時的な吸引量の変化及び風味の変化が抑えられ、経時的変化風味の改善が保持されるからである。96~192時間の場合、これらの効果がより顕著である。そして、養生は、第一湿式混合後の混合物を密閉下において行うことが好ましい。香味の消散を防ぐためである。
【0220】
第一の湿式混合直後の混合物及び第一の湿式工程[手段]後の養生を行った混合物は、第二の湿式混合工程[手段]M2に投入される。第二の湿式混合工程[手段]M2は、第二の結合剤を添加して混合を行うことに特徴がある。このように、第一の結合剤と第二の結合剤の分割添加の効果は、初期吸引量及び風味の改善、吸引量及び風味の経時的変化の低減という効果に加え、シート成形工程[手段]H1において所望の形態に成形しやすくなる。また、第一の工程[手段]で添加するよりも、混合が容易となり、混合物の粘度が均一になるまでの時間を短縮することができ、粘度調整が容易となるからである。
【0221】
第二の結合剤としては、第一の結合剤同様、セルロース類、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンシードガム、アラビアゴム、大豆多糖類、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、澱粉、コーンスターチ等を使用することができるが、セルロース類以外の多糖類が好ましい。粘度についても、第一結合剤同様、溶液粘度が300mPa・s以上であると、非タバコ植物との混合が良好である。また、溶液粘度が5000mPa・s以上であると、非タバコ植物を結束するのに適している。なお、この粘度も、上述した方法[装置]で測定した。ここで、ブルックフィールド型粘度計の測定上限は、100,000mPa・sであるが、この上限を越える粘度も上述した粘度範囲に入る。
【0222】
第二の結合剤としては、多糖類が好ましく用いられる。多糖類の内で特に水溶性或いは水を含んで膨潤するものやゲル化するものを使用することが好ましい。このようなものを用いることで、成形した被加熱芳香発生基材が塊状状態を保ち、成形加工性が高まり、シート成形工程[手段]H1におけるシートの破壊、非タバコ材の脱落等の発生が減少する。このような多糖類としては、グルコマンナン、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天が挙げられる。添加するにあたっては、これらの溶液粘度を第一の結合剤の溶液粘度よりも高くして使用することが好ましい。このようにして結合剤を使用することにより、更に、シート成形工程[手段]11における加工適性が向上する。中でも、グルコマンナンが最も好ましい。
【0223】
この第二の湿式混合工程[手段]M2においても、更に必要に応じ、メントール、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス等の香味料、香味料を寄留させる機能を有する架橋PVPやβ-シクロデキストリン、金型等との剥離性及び成形性を有する微結晶セルロース、保存安定性のためのソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等の食品用抗菌性保存剤等を、工程[手段]Z5と同様に準備して添加する製造方法[装置]とすることが好ましい場合がある。
【0224】
以上のように準備された材料を第二の湿式混合工程[手段]M2で混合する場合も、第一の湿式混合工程[手段]M1同様、通常の湿式混合機を使用することができる。例えば、混合槽中の材料を撹拌羽根によって剪断力を加えつつ混合するような混合機でもよく、ロールミル、ニーダー、エクストルーダーを用いて混錬し、混合を更に強化することも可能である。この工程[手段]における混合温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、25℃程度に保持されるのがより更に好ましい。混合時に過度の熱がかかると、香気成分が消散する恐れがあるためである。そのため、混合槽の温度制御が必要である。
【0225】
次に、第二の湿式混合M2で製造された非タバコ材を含む被加熱芳香発生基材の組成物をシート成形工程[手段]H1に投入し、所望の形態に成形加工する。この組成物を被加熱芳香発生基材として使用するには、ロール成形やプレス成形等のシート成形加工が好ましいが、これには限定されない。加圧によりオリフィスを通過させ棒状に成形する方法[装置]、乾燥させた後に粉砕して粒状にする方法[装置]を採用してもよい。
【0226】
ここでは、被加熱芳香発生基材の製造に適したシート成形加工について説明する。その一つの方法[装置]として、3本ロールミルを使用してシートに成形した。3本ロールミルを用いると、狭いロール間に押し込まれることによる圧縮力と、ロール間速度差による剪断力により、混練・分散等を行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることが可能であり、性質が異なる多種多様な材料が混合されている本発明の組成物のようなシート成形には特に好ましい。また、プレスローラ又はプレス機を併用して作製してもよい。このように、3本ロールミルは、混錬分散を行いつつ、シート状に加工するから、第一及び第二の湿式混合を補完しており、より好ましい混合分散状態にすることができる。従って、第二の湿式混合工程[手段]M2において3本ロールミルを使用する場合、第二の湿式混合工程[手段]M2とシート成形工程[手段]H1とは、装置上の区別はなく、同一プロセス内で、混合と成形が行われていることを意味する。
【0227】
このように、三本ロールミルを用いたシート成形においては、混合分散が行えるので、必要に応じて、非タバコ材、エアロゾルフォーマ、結合剤又は増粘剤、香料、架橋PVP、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、抗菌性保存剤、純水等も添加する製造方法[装置]とすることもできる。
【0228】
このような第一の結合剤と第二の結合剤を分割添加することにある被加熱芳香発生基材を製造する方法[装置]の特徴を明確にするため、使用する材料を共通にすると共に、被加熱芳香発生基材の形態を充填物に限定して、従来の製造方法[装置]と比較評価した。本発明を製造例及び実施例をもって説明する。
【0229】
(製造例A)
キシリトール 100質量部
水 400質量部
を撹拌混合し、キシリトール/水溶液を得た。
【0230】
次に、紅茶の葉を70℃で乾燥させ、粉砕し、80メッシュの篩を通過したものを用いた。水分量は2質量%であった。同様に、あまちゃづるの乾燥物を粉砕し、80メッシュの篩を通過したものを用いた。
【0231】
紅茶葉の乾燥粉砕物 80質量部
あまちゃづるの乾燥粉砕物 20質量部
メチルセルロース 15質量部
グリセリン 30質量部
プロピレングリコール 30質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4質量部
キシリトール/水溶液 8質量部
を混合機に投入し、15分間の混合(第一の湿式混合工程[手段]M1)を行い、第一の混合物を得た。
【0232】
得られた第一の混合物を第二の湿式混合工程[手段]M2に投入した。第一の混合物100質量部を3本ロールミルに投入しつつ、グルコマンナン0.5質量部と水20質量部を添加した。その後、ドクターブレードをロールに押し当てシート状物を採取とする工程[手段]を8回繰り返した。このような工程[手段]は、第二の湿式混合工程[手段]M2とシート成形工程[手段]H1が同一の装置で行われており、混合前半が第二の混合工程[手段]M2、混合後半がシート成形工程[手段]H1と見做せる。そして、3本ロールミルにて、混錬分散を兼ねながら所望の厚みのシートが製造された。
【0233】
これらの工程[手段]を経て製造された被加熱芳香発生シートは、厚みを0.3mmとなるように成形された。このシートを縦150mm×横240mmの長方形に切断をし、ロータリーカッターに供給し、幅1.5mm、長さ240mm、厚み0.3mmの形状に加工し、被加熱芳香発生充填物とした。この充填物50本を、束ねて長手方向に揃えた上で、坪量34g/m の紙で巻装し、のり付けして円柱状の被加熱芳香発生加工物とした。この加工物の内径は6.9mmであった。更に、これを長さ12.0mmに切断し、被加熱芳香発生体とした。この被加熱芳香発生体の質量は0.29gであり、これの容積に対する充填物の体積充填率は0.60であった。なお、被加熱芳香発生シートを切断した長方形の縦方向はロールの回転軸の平行であり、その横方向はロールの回転方向とした(以下同様)。
【0234】
本製造例に用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液粘度は、650mPa・s(ブルックフィールド型粘度計、1%水溶液、25℃)であり、多糖類であるグルコマンナンの水溶液粘度は、44000mPa・s(ブルックフィールド型粘度計、1%水溶液、25℃)とした。
【0235】
(製造例B)
第一の湿式混合工程[手段]M1までは、(製造例A)と同様にして第一の混合物を作製した。第一の混合物をポリエチレン袋に入れ密封し、20℃の温度下、6日間(144時間)養生して養生混合物を作製した。養生工程[手段]Y1後は、見かけの体積が、約1.5倍となった。養生工程[手段]Y1後の第二の養生混合物を確認したところ、養生前に比べ茶類の粉砕物の遊離が少なくなっている様子が認められ、養生が安定した均一な分散状態に導くものと考えられる。養生工程[手段]Y1によって作製された混合物を第二の湿式混合工程[手段]M2に投入し、(製造例A)と同様にして、被加熱芳香発生体を作製した。
【0236】
(製造例C)
(製造例B)と同様にして、養生混合物を第二の湿式混合工程[手段]M2に投入し、シート成形工程[手段]H1を経て被加熱芳香発生シートを作製したが、この製造例では、第二の湿式混合工程[手段]とシート成形工程[手段]H1において、加工条件を変え、厚みが0.1mmとなるように成形して被加熱芳香発生シートを作製した。このシートを縦150mm×横240mmの長方形に切断をし、ロータリーカッターに供給し、幅1.0mm、長さ240mm、厚み0.1mmの形状に加工した被加熱芳香発生充填物とした。この充填物225本を、束ねて長手方向に揃えた上で、坪量34g/mの紙で巻装し、のり付けして円柱状の被加熱芳香発生加工物とした。この加工物の内径は6.9mmであった。更に、これを長さ12.0mmに切断し、被加熱芳香発生体とした。この被加熱芳香発生体の質量は0.29gであり、これの容積に対する充填物の体積充填率は0.60であった。
【0237】
(製造例D)
(製造例B)と同様にして、養生混合物を第二の湿式混合工程[手段]M2に投入し、シート成形工程[手段]H1を経て被加熱芳香発生シートを作製したが、この製造例では、第二の湿式混合工程[手段]とシート成形工程[手段]H1において、加工条件を変え、厚みが0.5mmとなるように成形して被加熱芳香発生シートを作製した。被加熱芳香発生シートを縦150mm×横240mmの長方形に切断をし、ロータリーカッターに供給し、幅1.0mm、長さ240mm、厚み0.5mmの形状に加工した被加熱芳香発生充填物とした。この充填物225本を、束ねて長手方向に揃えた上で、坪量34g/mの紙で巻装し、のり付けして円柱状の被加熱芳香発生加工物とした。この加工物の内径は6.9mmであった。更に、これを長さ12.0mmに切断し、被加熱芳香発生体とした。この被加熱芳香発生体の質量は0.29gであり、これの容積に対する充填物の体積充填率は0.60であった。
【0238】
比較のため、第一の結合剤であるメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースと第二の結合剤であるグルコマンナンを一括添加して被加熱芳香発生体を作製した。
【0239】
(比較製造例)
キシリトール 100質量部
水 400質量部
を撹拌混合し、キシリトール/水溶液を得た。
【0240】
次に、紅茶の葉を70℃で乾燥させ、粉砕し、80メッシュの篩を通過したものを用いた。水分量は2質量%であった。同様に、あまちゃづるの乾燥物を粉砕し、80メッシュの篩を通過したものを用いた。
【0241】
紅茶葉の乾燥粉砕物 80質量部
あまちゃづるの乾燥粉砕物 20質量部
メチルセルロース 15質量部
グリセリン 30質量部
プロピレングリコール 30質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4質量部
キシリトール/水溶液 8質量部
グルコマンナン 0.5質量部
水 20質量部
を混合機に投入し、15分間混合を行い、グルコマンナン等全ての材料を含む混合物を得た。
【0242】
このようにして作製された混合物を3本ロールミルに混合し、ドクターブレードをロールに押し当てシート状物を採取とする工程[手段]を8回繰り返し、混錬分散を兼ねながら厚み0.3mmの被加熱芳香発生シートを作製した。ただし、3本ロールミルを用いた成形時に、シートとすることに難があった。また、シート化はしたものの、評価Aの測定ができないものであった。
【0243】
このようにして作製された被加熱芳香発生シートは、シートを縦150mm×横240mmの長方形に切断をし、ロータリーカッターに供給し、幅1.5mm、長さ240mm、厚み0.3mmの形状に加工した被加熱芳香発生充填物とした。この充填物50本を、束ねて長手方向に揃えた上で、坪量34g/mの紙で巻装し、のり付けして円柱状の被加熱芳香発生加工物とした。この加工物の内径は6.9mmとした。更に、これを長さ12.0mmに切断し、被加熱芳香発生体とした。この被加熱芳香発生体の質量は0.29gであり、これの容積に対する充填物の体積充填率は0.60であった。
【0244】
(実施例A)
(製造例A)で作製した被加熱芳香発生体を用い、図13に示す、支持部材、フィルタを備えたマウスピースに被加熱芳香発生体を接合するタイプの芳香カートリッジを作製した。支持部材としては、外径6.9mmの円柱に、内径4.0mmの貫通孔を設けたPEの管を使用した。フィルタは、アセチルセルロース繊維を円柱状に成形し、坪量34g/mの紙で巻装された長さ23mmのものを用いた。カートリッジ外装体は、坪量38g/mの紙を用い、内径6.9mmとなるように2周半巻装し、のり付けして形成された。なお、カートリッジ外装体は、坪量が、32~45g/mの紙を2周半巻装して形成された紙製の筒を使用すると、被加熱芳香発生体の部分を加熱式喫煙具の発熱体に差し込んで使用する芳香カートリッジとして好適なものとなる。そして、カートリッジ外装体の一端から、支持部材及びフィルタを挿入してマウスピースとし、他端から、被加熱芳香発生体を挿入した後、マウスピースの部分に重なるように、坪量40g/mの紙を巻装し、芳香カートリッジを作製した。但し、フィルタは、製造方法[装置]が被加熱芳香発生基材に及ぼす影響、すなわち、気体生成持続材料の機能の差異を明確にするため、吸引最適化手段であるキャビティが形成されていないフィルタを使用した。
【0245】
(実施例B)
(製造例B)で作製した被加熱芳香発生体を用いることを除いて、(実施例A)と同様に芳香カートリッジを作製した。
【0246】
(実施例C)
(製造例C)で作製した被加熱芳香発生体を用いることを除いて、(実施例A)と同様に芳香カートリッジを作製した。
【0247】
(実施例D)
(製造例D)で作製した被加熱芳香発生体を用いることを除いて、(実施例A)と同様に芳香カートリッジを作製した。
【0248】
(比較実施例)
(比較製造例)で作製した被加熱芳香発生体を用いることを除いて、(実施例A)と同様に芳香カートリッジを作製した。ただし、芳香カートリッジ作製の際、被加熱芳香発生充填物が柔らすぎて作製に難があった。
【0249】
以上のようにして作製した被加熱芳香発生シート及び芳香カートリッジについて次のような評価を行った。また、下記の評価に加え、≪評価1≫も行った。
【0250】
≪評価A≫
被加熱芳香発生シートの引張強度試験を行った。引張強度試験は、一般的に使用されている引張強度試験機を用いた。試料は、被加熱芳香発生シートを幅10.0cm、長さ22.0cmに切断したものを使用し、引張強度試験のクランプ間の距離20.0cm、クロスヘッドスピード10cm/minで測定した。試験環境は、室温20℃、湿度50%である。破断強度を比較して各製造方法[装置]で作製した被加熱芳香発生シートを評価し、破断強度が、3.9N/mm以上、好ましくは5.0N/mm以上の強度を有していることが、成形加工、芳香カートリッジ作製、初期吸引量、初期風味、並びに、吸引量及び風味の経時変化等総合的に好ましいことが分かった。
【0251】
≪評価B≫
使用する加熱式喫煙具は、図2(A)に示した方式のフィリップモーリス社製加熱式電子タバコ装置であるアイコス(登録商標)を用いた。この発熱体は、幅4.5mm、先端までの長さ12mm、厚さ0.4mmである。チャンバの内径は7mmであるため、そこに芳香カートリッジが隙間なく挿入されるように、芳香カートリッジの外径を6.9mmとしている。発熱体は、加熱式電子タバコ本体内に設けられているバッテリーから供給される電力よって発熱し、およそ350℃となる。そして内蔵の制御システムにより、従来の電子タバコカートリッジで、14回の吸引によって1本の消費が終了する。なお、本実施例の喫煙タバコカートリッジを差し込んだ際に、電子タバコ装置本体の下流側から外側に現れる芳香カートリッジ部分は約20mmである。そして、本実施例及び比較実施例製造した芳香カートリッジを電子タバコ装置のチャンバに差し込み、喫煙の試験を行った。吸引量及び風味共に、喫煙時の口腔内の官能評価であり、特に、風味は、お茶の香りについて、芳香カートリッジ作製直後と、≪評価1≫の放置後において評価した。なお、官能試験は、被験者5人で行われた。評価基準は、次のとおりである。
ランクA:喫煙時に、十分な吸引量があり、吸引に抵抗がなく、お茶の香りが楽しめるレベルである。
ランクB:喫煙時に、吸引量が不足しており、吸引に抵抗があり、お茶の香りが、物足りないレベルである。
【0252】
≪評価C≫
喫煙後の充填物の脱落を評価した。評価方法[装置]は、喫煙後の芳香カートリッジの被加熱芳香発生体側を鉛直下方に向け、被加熱芳香発生充填物の落下の有無を観察した。評価基準は、次のとおりである。
ランクA:落下物見られず
ランクB:充填物の一部の落下あり
【0253】
試験結果を表1に示す。表1から明らかなように、成形加工、芳香カートリッジ作製、初期吸引量及び風味、吸引量及び風味の経時変化、並びに、経時的な被加熱芳香発生充填物の融着のいずれについても、結合剤を分割添加する効果が認められ、養生は、更に、その効果を高めることができる。従って、結合剤を分割添加した被加熱芳香発生基材、更に養生工程[手段]を施して作製した被加熱芳香発生基材は、芳香カートリッジの気体生成持続材料として機能していることが明白である。
【0254】
【表1】
【0255】
以上、製造方法[装置]は、被加熱芳香発生基材の内部構造に影響を及ぼし、適切な製造方法[装置]で作製した被加熱芳香発生基材を用いて作製した芳香カートリッジの気体生成持続材料として機能していることが認められた。本発明では、更に、気体生成持続材料として機能するものを見出した。それは、無機粒子である。
【0256】
具体的な実施例で無機粒子の効果を説明する。そのために、従来から行われている製造方法[装置]として、(製造例1)を採用し、この製造方法[装置]で作製された被加熱芳香発生基材の気体生成持続性に及ぼす各種無機粒子の影響を次のようにして評価した。
【0257】
(製造例1)に従って、被加熱芳香発生体の作製及び芳香カートリッジの組立が行われるが、本実施例では、図32の散布工程[手段]H2に示すように、(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートが、長さ12mm×幅1.5mm(厚さ0.5mm)に裁断され、被加熱芳香発生充填物を作製した後に、各種無機粒子を所定量添加し、被加熱芳香発生充填物表面に均一に付着するように散布及びまぶす工程[手段]を追加した。このような工程[手段]は、無機粒子を被加熱芳香発生充填物表面に均一に付着させることを目的としている。また、この工程[手段]において、被加熱芳香発生充填物表面に無機粒子が付着されていることを確認するため、その表面を顕微鏡で観察した。次いで、この無機粒子が付着した被加熱芳香発充填物は、被加熱芳香発生体に加工され、(製造例1)に従って芳香カートリッジに組み立てられた。更に、無機粒子の効果を明確にするため、充填率を高くした。このようにして作製された芳香カートリッジについて、≪評価1≫を行った。更に、≪評価B≫に記載した加熱式電子タバコ装置を用い、下記≪評価2≫を行った。
【0258】
≪評価2≫
芳香カートリッジを、図2(C)に示すように使用をした際の発熱体113に付着した汚れを確認した後、次のような評価を行った。まず、比較例1の芳香カートリッジを用いて、1本につき14回吸引を行い、10本、20本、30本、40本、50本の吸引を終了した際の加熱要素に付着した汚れを、エタノールを含浸させたガーゼを用いて拭き取り、その汚れの程度を記録する。そして、各種無機粒子を表面に付着した被加熱芳香発生充填物を用いて作製した本実施例の各種芳香カートリッジを50本吸引した際の汚れを比較例1と同様に採取し、比較例1で記録された汚れの程度とを比較評価した。評価の指標は、本実施例の各種芳香カートリッジを50本吸引した際の汚れの程度を、比較例1の芳香カートリッジを用いて吸引した場合の汚れと一致する本数とした。従って、本数が少ない程好ましい。
【0259】
(実施例I)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径15μmの炭酸カルシウム粉体1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、直径10~50μmの炭酸カルシウム粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることを確認した後、炭酸カルシウム粒子を表面に有する被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、81%であった。
【0260】
(実施例II)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径10μmの炭酸マグネシウム粉体1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、直径10μm~50μmの炭酸マグネシウム粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることを確認した後、炭酸マグネシウム粒子を表面に有する被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、80%であった。
【0261】
(実施例III)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径20μmの酸化ケイ素粒子1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、直径10μm~50μmの酸化ケイ素粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることを確認した後、酸化ケイ素粒子を表面に有する被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、80%であった。
【0262】
(実施例IV)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径5μmのアルミナ粒子1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、直径10μm~50μmのアルミナ粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることを確認した後、アルミナ粒子を表面に有する被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、81%であった。
【0263】
(実施例V)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径2μmのアルミナ粒子1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、この場合は、直径10μm~50μmのアルミナ粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることが確認できなかったが、アルミナ粒子をまぶした被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、81%であった。
【0264】
(実施例VI)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径0.5μmの酸化ケイ素粒子1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、この場合も、直径10μm~50μmの酸化ケイ素粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることが確認できなかったが、酸化ケイ素粒子をまぶした被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、81%であった。
【0265】
(実施例VII)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物100質量部に対して、平均粒子径47μmの酸化ケイ素粒子1質量部を、被加熱芳香発生充填物表面全体に付着するように散布すると共にまぶした。顕微鏡観察により、直径10μm~50μmの酸化ケイ素粒子が被加熱芳香発生充填物に付着していることを確認した後、酸化ケイ素粒子をまぶした被加熱芳香発生充填物0.29gを用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、65%であった。
【0266】
(比較例I)
(製造例1)で作製した被加熱芳香発生シートから、上述したように裁断された被加熱芳香発生充填物0.29gをそのまま用いて被加熱芳香発生体を作製した。そして、この被加熱芳香発生体とマウスピースとから芳香カートリッジを組み立てた。この場合の充填物の充填率を測定したところ、81%であった。
【0267】
以上の評価結果を表2に示す。表から明らかなように、幅広い粒子径の無機粒子が、その材質にかかわらず、気体生成持続材料として機能していることが分かる。≪評価1≫の結果から明らかなように、被加熱芳香発生充填剤の経時的な融着が生じることがなく、気体放出量、すなわち、気体吸引量及び風味共に、経時的な変化が少ない。このような効果を発現する理由は定かではないが、次のように考えられる。無機粒子が充填物の表面に存在すると、無機粒子がスペーサとして充填物同士の接触面積を低減し、長時間高温状態におかれても、エアロゾルフォーマのブリードアウトによる充填物同士の融着を阻害する効果があること、及び、無機粒子がエアロゾルフォーマのブリードアウトを抑制する効果があること等が考えられる。
【0268】
【表2】
【0269】
更に、≪評価2≫から明らかなように、無機粒子は、発熱体の汚染を防止する効果もあることが認められた。特に、添加する無機粉体の平均粒子径は、1~50μmであると良好な効果があり、5μm以上であると更に汚染の防止効果が高まる。添加する無機粉体の添加量は、0.01~5質量部であると良好な効果があり、0.1質量部以上とすると更に汚染の防止効果が高まる。無機粒子が発熱体の防止効果を有する理由は、定かではないが、次のように推測される。無機物が加熱分解し難いこと、芳香カートリッジの発熱体への脱着時に無機粒子が表面を研磨し、汚染物質を除去すること、及び、無機粒子が発熱体表面と被加熱芳香発生充填物との接触面積を低減すること等が挙げることができる。
【0270】
このような効果を得るためには、無機粒子が、平均粒子径1~100μmの直径を有していることが好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、無機粒子の効果が低減する。一方、5μm以上であると、無機粒子の効果が高まるのでより好ましい。同様の理由で、10μm以上であることがより更に好ましい。また、粒子径が大きくなる程、充填物の充填率を下げるが、50μm以下であれば、無機粒子の効果が大きいと共に、必要最低限の充填率を確保することが可能である。
【0271】
ここで最低限の充填率というのは、加熱によって発生する気体の吸引量と密接な関係がある。充填率が60%未満の場合、加熱によって十分な気体放出量が少なく、喫煙者の気体吸引量が不足し、吸い心地が不十分なものとなる。従って、より好ましくは65%以上、より更に好ましくは70%以上の充填率が必要である。逆に、充填率が90%を超えると、充填物間の空隙が少なく、喫煙が困難で、発熱体への挿入も困難になるという問題が発生する。
【0272】
なお、このような充填率は、被加熱芳香発生体の断面において、被加熱芳香発生基材の占める面積率を算出する方法で評価することができる。デジタルマイクロスコープを用いて、充填物と充填物の無い空隙部分を評価することにより求めた。デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製:VHX-2000)を使用し、倍率は100倍としディスプレーに投影した。画像を解析する範囲については、充填物と充填物の無い空隙部分のみが現れる領域とする。この場合、観察サンプル直径7.0mmについて、横3.5mm縦2.6mmとした。上記範囲において、画像解析は付属のソフトウェアを用い、「自動計測モード」で「抽出モード」を「輝度」とした。計測は、「標準」を選択し「抽出パラメーター」を「明るい」とし、観察する充填物と空隙が分かれるように「閾値」を選択した。計測領域全体に対して、充填物の占める比率をもって充填率とした。
【0273】
また、本発明における無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式
粒子径分布測定装置を用いた湿式法で決定された。本発明では、マイクロトラックベル社製、マイクロトラックMT3300IIIが用いられた。そして、本発明の平均粒子径は、0.02μm~2000μmまでの範囲について、体積基準の分布を累積し、50%となったメジアン径D50を指す。
【0274】
更に、本発明における無機粒子の存在は、製造工程[手段]における顕微鏡観察だけでなく、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いた充填物表面の観察によっても確認された。更に、充填物を熱分解した残存物の顕微鏡又は電子顕微鏡観察によっても確認した。適切な倍率で、1視野100μm×100μmとしたときの、10枚程度の観察結果による。更に、残存物の無機粒子が添加した無機粒子であることは、エックス線マイクロアナリシス(XMA)を備える走査型電子顕微鏡にて確認した。
【0275】
無機粒子の添加量は、その効果が発現するためには、少なくとも充填物100質量部に対して0.001質量部が必要であり、0.01質量部以上であるとより好ましく、0.05質量部以上であるとより更に好ましい。逆に、充填物100質量部に対して10質量部を超えると、充填物の充填率が低下するため、気体吸引量や風味への影響がある。このような観点から、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがより更に好ましい。
【0276】
本発明の無機粒子として使用をすることのできる無機物は、特に限定されないが、塩化ナトリウム及び塩化カリウム等の金属塩化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、及び、アルミナ等の金属酸化物、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、硫酸マグネシウム及び硫酸カルシウム等の金属硫酸塩、リン酸カルシウム等の金属のリン酸塩、並びに、チタン酸カリウム及びチタン酸マグネシウム等のチタン酸塩を単独で又は二つ以上を選択して用いることができる。更に、ゼオライト、コロイダルシリカ及びヒュームドシリカ等の酸化ケイ素、並びに、天然物である珪藻土及びバーミキュライト等も用いることができる。特に、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、及び、アルミナが好ましい。
【0277】
このように、無機粒子は、図32の散布工程[手段]H2において、被加熱芳香発生基材に付着させることができるが、図32の散布工程[手段]S4においても付着させることができる。更に、図28~31に示したように、被加熱芳香発生組成物中に無機粒子を添加して、無機粒子を含む被加熱芳香発生基材を作製することもできる。この方法[装置]の場合、無機粒子が被加熱芳香発生基材の表面だけに存在することはないが、無機粒子の効果が発現されることを確認している。このため、無機粒子が気体生成持続材料として機能するのは、無機粒子が、被加熱芳香発生基材間の融着を阻害するスペーサとして接触面積を低下するだけでなく、被加熱芳香発生基材内部において、エアロゾルフォーマ、非タバコ材、結合剤等の構成材料の運動を妨げているものと推測される。この推測は、高分子材料において、無機粒子が充填剤として使用されると、架橋点の役割を果たし、耐熱性、耐薬品性等の化学的特性、引張強度、弾性率等の物理的特性が向上することに基づいている。
【0278】
以上、本発明により、製造方法[装置]の改良により、被加熱芳香発生基材が気体生成持続材料として機能する被加熱芳香発生体、及び、無機粒子が気体生成持続材料として機能する被加熱芳香発生体を提供することができる。従って、図33に示すように、マウスピースに気体吸引最適化手段を設ける必要のない芳香カートリッジも提供することができる。もちろん、気体生成持続材料を備えた被加熱芳香発生体と気体吸引最適化手段を備えたマウスピースを組み合わせた芳香カートリッジも提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明は、ナス科タバコ属であるタバコ及びその同属植物、並びに、その成分を含まない、植物等に由来する無害な芳香であるため、火炎式喫煙の経験者のみならず、初めての喫煙者にも、タバコ感覚で、喫煙を楽しむことができる芳香カートリッジを提供することができるので、喫煙者本人のみならず、周囲の非喫煙者に対しても健康に悪影響を及ぼすことがない喫煙を楽しめ、脳内にα波をもたらす、癒し効果があり、健康及び美容の増進に役立つ新しい喫煙具である。しかも、気体吸引最適化手段及び気体生成持続材料を備えた芳香カートリッジであるため、長期間にわたり保管されていても、煙及び香気成分の吸引量及びふみの変化がないという特徴を有している。従って、本発明の芳香カートリッジに関する技術は、線香、焼香、抹香、塗香等や、アロマセラピー等に広く応用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0280】
11 電気加熱式喫煙具(1)
111 ケーシング
112 チャンバ
113 電気制御式発熱体
1131 電気制御装置
114 芳香カートリッジ挿入口
115 吸気口
12 電気加熱式喫煙具(2)
121 ケーシング
122 チャンバ
123 電気制御式発熱体
1231 電気制御装置
124 芳香カートリッジ挿入口
125 吸気孔
芳香カートリッジ
2-1~ 2-19 芳香カートリッジ(1)~(19)
21 被加熱芳香発生体
21-p 被加熱芳香発生体内装材
211 蓋材
212 隔壁材
213 被加熱芳香発生シート
214 被加熱芳香発生充填物
22 マウスピース
22-p マウスピース内装材
221 キャビティ付きマウスピース
221-1 円柱キャビティ付きマウスピース(1)
221-1-c1 円柱キャビティ(1)
221-2 円柱キャビティ付きマウスピース(2)
221-2-c2 円柱キャビティ(2)
221-2-c3 円柱キャビティ(3)
221-3 円柱キャビティ付きマウスピース(3)
221-3-c4 円柱キャビティ(4)
221-4 円柱キャビティ付きマウスピース(4)
221-4-c5 円柱キャビティ(5)
221-4-c6 円柱キャビティ(6)
221-5 円錐キャビティ付きマウスピース(1)
221-5-d1 円錐キャビティ(1)
221-6 円錐キャビティ付きマウスピース(2)
221-6-d2 円錐キャビティ(2)
221-7 空洞及び円柱キャビティ付きマウスピース(1)
2211 キャビティ付きフィルタ(1)
221-7-c7 円柱キャビティ(7)
221-7-v1 空洞(1)
221-8 空洞及び円柱キャビティ付きマウスピース(2)
2212 キャビティ付きフィルタ(2)
221-8-c8 円柱キャビティ(8)
221-8-v2 空洞(2)
222 支持部材付きマウスピース
222-1 支持部材付きマウスピース(1)
2221 支持部材
2221-h 貫通孔
2222 キャビティ付きフィルタ(3)
2222-c1 キャビティ(1)
223 支持部材・冷却部材付きマウスピース
2231 支持部材
2231-h 貫通孔
2232 冷却部材
2233 キャビティ付きフィルタ(4)
2233-c1 キャビティ(1)
224 冷却部材付きマウスピース
2241 冷却部材
2242 キャビティ付きフィルタ(5)
2242-c1 キャビティ(1)
225 補強支持部材付きマウスピース
225-1 補強支持部材付きマウスピース(1)
2251-1 補強支持部材(1)
2251-1-s1 板状補強材
2251-1-h 貫通孔
2252-1 フィルタ(1)
225-2 補強支持部材付きマウスピース(2)
2251-2 補強支持部材(2)
2251-2-s2 板状補強材
2251-2-h 貫通孔
2252-2 フィルタ(2)
225-3 補強支持部材付きマウスピース(3)
2251-3 補強支持部材(3)
2251-3-s3 板状補強材
2251-3-s4 管状補強材
2252-3 フィルタ(3)
225-4 補強支持部材付きマウスピース(4)
2251-4-s3 板状補強材
2251-4-s4 柱状補強材
2252-4 フィルタ(4)
225-5 補強支持部材付きマウスピース(5)
2251-5-s3 板状補強材
2251-5-s4 管状補強材
2251-5-h 貫通孔
2252-5 フィルタ(5)
2252-5-c1 キャビティ
226 補強支持部材・冷却部材付きマウスピース
2261 補強支持部材
2261-s3 板状補強材
2261-s6 管状補強材
2262 冷却部材
2263 キャビティ付きフィルタ(6)
2263-c1 キャビティ(1)
227 断熱部材付きマウスピース
2271 断熱部材
2272 フィルタ
228 断熱部材・冷却部材付きマウスピース
2281 断熱部材
2282 冷却部材
2283 フィルタ
23 カートリッジ外装体(1)
24 カートリッジ外装体(2)
W 気流
о 芳香カートリッジの直円柱の中心軸
j 芳香カートリッジの外径
k 芳香カートリッジの長さ
a 被加熱芳香発生体の長さ
m マウスピースの長さ
f フィルタの長さ
b キャビティの底面の内径
c 円柱キャビティの高さ
d 円錐キャビティの高さ
v 空洞の長さ
s 支持部材の長さ
r 冷却部材の長さ
x 被加熱芳香発生充填物の幅
y 被加熱芳香発生基材の厚さ
z 被加熱芳香発生基材の長さ

【要約】
【課題】
被加熱芳香発生基材内及び被加熱芳香発生基材間における気体流路の閉塞による吸引成分の吸引量低下の課題、を解決することができ、非タバコ材等の脱落や粉塵の発生もない芳香カートリッジを提供する。
【解決手段】
発熱体と接触するエアロゾルフォーマと香気成分を含む被加熱芳香発生基材が巻装された被加熱芳香発生体と、被加熱芳香発生体の両端部のうちの芳香カートリッジの端部側に配設される蓋材と、被加熱芳香発生体に隣接するマウスピースとを、長手方向に連結するように巻装するカートリッジ外装体とを備え、マウスピースは、被加熱芳香発生体に隣接する円柱状支持部材と、円柱状冷却部材と、冷却部材に隣接するフィルタと、を備え、冷却部材は、連続孔を有する円柱状の多孔質体または貫通孔が設けられた円柱状の管で形成されており、空隙率が50~90%である。
【選択図】図14
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33