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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ホイールローダの制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240912BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02F9/22 K
E02F9/22 H
E02F9/20 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024510201
(86)(22)【出願日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2023011062
(87)【国際公開番号】W WO2023182320
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2022047877
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】関根 和也
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-051131(JP,A)
【文献】特開2011-196457(JP,A)
【文献】特開2018-053539(JP,A)
【文献】特開平06-058345(JP,A)
【文献】特開平04-000058(JP,A)
【文献】特開平07-149221(JP,A)
【文献】特開平10-088622(JP,A)
【文献】米国特許第6631320(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転により車体を前進させてバケットを対象物に突入させることで前記対象物を掘削するホイールローダの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記バケットを前記対象物に突入させた状態で前記車体を前進させ、前記車輪の回転速度が予め定められた閾値を上回る場合には、前記車輪を制動させる
ことを特徴とするホイールローダの制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車体の走行及び前記バケットの姿勢を制御して前記ホイールローダの掘削動作を自動で行わせる自動掘削処理を行い、
前記自動掘削処理によって行われる前記掘削動作は、前記車体を前進させながら前記対象物に突入した前記バケットのリフト上げを開始し、前記車輪を制動させた後、前記バケットをクラウド方向に回動させて前記バケットを積載状態とし、前記バケットが所定高さに到達すると前記リフト上げを停止する動作である
ことを特徴とする請求項1に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記自動掘削処理が有効であるか否かを判定する有効判定部と、前記自動掘削処理を開始するか否かを判定する開始判定部と、を有し、
前記有効判定部は、前記バケットが所定範囲に収まる掘削姿勢であり、且つ、前記車体が前進している場合、前記自動掘削処理が有効であると判定し、
前記開始判定部は、前記有効判定部により前記自動掘削処理が有効であると判定され、前記バケットが前記掘削姿勢であり、且つ、前記リフト上げを行うリフトシリンダの圧力が所定圧力を上回るように変化した場合、前記自動掘削処理を開始すると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記自動掘削処理が有効であるか否かを判定する有効判定部と、前記自動掘削処理を開始するか否かを判定する開始判定部と、を有し、
前記有効判定部は、前記バケットが所定範囲に収まる掘削姿勢であり、且つ、前記車体が前進している場合、前記自動掘削処理が有効であると判定し、
前記開始判定部は、前記有効判定部により前記自動掘削処理が有効であると判定され、前記バケットが前記掘削姿勢であり、且つ、前記バケットと前記対象物との相対距離が所定距離以下である場合、前記自動掘削処理を開始すると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記有効判定部により前記自動掘削処理が有効であると判定された場合、前記開始判定部が前記自動掘削処理を開始するか否かを判定する前に、前記自動掘削処理の準備動作を前記ホイールローダに行わせる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記バケットが前記対象物に突入する前、前記車体の車速を所定速度以上に保って前記車体を前進させる
ことを特徴とする請求項1に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記車輪の前記回転速度が前記閾値を上回る場合には、前記車輪を制動させると共に、前記車輪の動力源の出力を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載のホイールローダの制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記車輪の前記回転速度が前記閾値を上回る場合には、前記車輪を制動させると共に、前記車輪の動力源から前記車輪への動力の伝達を遮断する
ことを特徴とする請求項1に記載のホイールローダの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダは、4輪駆動の車輪で走行し、中折れ式で操舵される作業機械及びその派生機械である。ホイールローダの車体の前部には、地上の土砂等の対象物を掬い込むバケット等の作業装置が連結されている。ホイールローダの制御装置は、運転室に搭乗したオペレータの操作に従って、バケットの高さ及び角度、並びに、車体の車速及び方向を制御する。これによりに、ホイールローダは、バケットで対象物を掘削する掘削作業と、バケットに積載された対象物をダンプトラックの荷台まで移動させる運搬作業と、対象物をバケットからダンプトラックの荷台に放出する積込作業とを行うことができる。
【0003】
掘削作業では、地面に略平行なバケットを地面付近に移動させた姿勢から、アクセルペダルの操作等によって車体を加速前進させてバケットを対象物に突入させる走行動作と、バケットを対象物に突入させた後に対象物を掬い上げる掘削動作とが行われる。掘削動作では、バケットを対象物に突入させた後、アクセルペダルの操作等によって車輪の回転量を調整しながら車体を前進させる。同時に、掘削動作では、リフト操作レバーの操作等によってバケットを上方に移動させるリフト上げを行うと共に、バケット操作レバーの操作等によってバケットをクラウド方向に回動(チルト)させる。これにより、対象物はバケットの内部に格納され、バケットは積載状態となる。
【0004】
この掘削作業に係る一連の操作を簡便化するために、特許文献1には、フルアクセルの状態でバケットのリフト上げ及びクラウド方向への回動を行う自動掘削技術が開示されている。また、特許文献2には、特許文献1を従来技術として、ホイールローダが掘削開始位置に近付いた時にエンジン回転数を増加させつつ走行油圧モータの傾転率を低下させることによって、車速を低下させ、掘削動作開始時(対象物へのバケットの突入時)の衝撃を抑制する技術が開示されている。また、特許文献3には、特許文献2を従来技術として、走行油圧モータの傾転率を低下させるのではなく、トランスミッションの速度段を低速側にシフトさせることによって、掘削動作開始時の衝撃を抑制する技術が開示されており、適用可能な機種の拡充が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-185928号公報
【文献】特開2008-133657号公報
【文献】米国特許第10041229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に開示の技術は、掘削動作開始時の衝撃を抑制するために、掘削動作開始前から車速を減速させている。これにより、特許文献2及び特許文献3に開示の技術は、掘削作業に要する作業時間が増加してしまい、掘削作業の生産性が低下する可能性がある。また、特許文献1に開示の技術は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を図る点について何ら考慮されておらず、改善の余地がある。
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を図って掘削作業の生産性を向上させることが可能なホイールローダの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るホイールローダの制御装置は、車輪の回転により車体を前進させてバケットを対象物に突入させることで前記対象物を掘削するホイールローダの制御装置であって、前記制御装置は、前記バケットを前記対象物に突入させた状態で前記車体を前進させ、前記車輪の回転速度が予め定められた閾値を上回る場合には、前記車輪を制動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、掘削作業に要する作業時間の短縮化を図って掘削作業の生産性を向上させることが可能なホイールローダの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)はホイールローダの外観を示す側面図、図1(b)は図1(a)の斜視図。
図2図1(a)に示すホイールローダの系統図。
図3】実施形態1の制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図4図3に示す制御装置によって行われる処理を示すフローチャート。
図5】実施形態2の制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図6】実施形態3の制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図7】実施形態4の制御装置の機能的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0012】
[実施形態1]
図1図4を用いて、実施形態1に係るホイールローダ1の制御装置120について説明する。
【0013】
図1(a)は、ホイールローダ1の外観を示す側面図である。図1(b)は、図1(a)の斜視図である。
【0014】
ホイールローダ1は、4輪駆動の車輪5f,5rで走行し、中折れ式で操舵される作業機械及び派生機械である。ホイールローダ1の車体2の前部には、地上の土砂等の対象物を掬い込むバケット3等の作業装置4が連結されている。ホイールローダ1の制御装置120は、運転室7に搭乗したオペレータの操作に従って、バケット3の高さ及び角度(すなわちバケット3の姿勢)、並びに、車体2の車速及び方向を制御する。これによりに、ホイールローダ1は、バケット3で対象物を掘削する掘削作業と、バケット3に積載された対象物をダンプトラックの荷台まで移動させる運搬作業と、対象物をバケット3からダンプトラックの荷台に放出する積込作業とを行うことができる。
【0015】
車体2は、作業装置4及び前輪5fを有するフロントフレーム6と、後輪5r、運転室7及びエンジン100を有するリアフレーム8とを有する。フロントフレーム6とリアフレーム8とは、センターピン9によって左右方向に屈曲可能に連結され、センターピン9の左右に設けられたステアシリンダ10L,10Rによって屈曲角度を変更可能に構成されている。車体2は、走行中にステアシリンダ10L,10Rを伸縮させ、フロントフレーム6のリアフレーム8に対する角度(屈曲角度)を変更することにより、操舵される。
【0016】
作業装置4は、フロントフレーム6に対して回動可能に連結されたリフトアーム11と、リフトアーム11に対して回動可能に連結されたバケット3と、を有する。
【0017】
リフトアーム11は、リフトシリンダ12に連結されている。リフトシリンダ12は、リフトアーム11に連結されたバケット3の荷重をフロントフレーム6で支持できるよう、フロントフレーム6に連結されている。リフトシリンダ12は、リフトアーム11を上方に回動させてバケット3の高さを高くするリフト上げとリフトアーム11を下方に回動させてバケット3の高さを低くするリフト下げとを行う。リフトシリンダ12には、リフトシリンダ12のボトム室の圧力を計測するリフトシリンダ圧力センサ12bが取り付けられている。リフトシリンダ圧力センサ12bの取り付け位置は、リフトシリンダ12のボトム室の圧力と同じ圧力を計測可能であれば、特に限定されない。
【0018】
バケット3は、リフトアーム11に対して支点13で回動可能に連結されている。支点13は、リフトアーム11に対するバケット3の角度を変更可能なように、プッシュロッド14及びベルクランク15を介して、バケットシリンダ16に接続されている。バケットシリンダ16は、支点17でフロントフレーム6に連結されている。バケット3の高さは、リフトシリンダ12の伸縮によって変更可能である。バケット3の角度は、バケットシリンダ16の伸縮によって変更可能である。バケット3の高さ及び角度(すなわちバケット3の姿勢)を既知の寸法から算出できるように、ベルクランク角度センサ19a及びリフトアーム角度センサ19bが作業装置4に取り付けられている。
【0019】
図2は、図1(a)に示すホイールローダ1の系統図である。
【0020】
車輪5f,5rの動力源であるエンジン100は、その出力軸100aが、トルクコンバータ101、油圧ポンプ102及びブレーキポンプ103に直結されている。エンジン100の回転数は、エンジンコントローラ104の電気信号105sによって制御される。エンジンコントローラ104は、アクセルペダル106の踏み込み量、又は、制御装置120の電気信号106sに応じて、エンジン100の回転数を制御する。
【0021】
トルクコンバータ101の出力軸は、トランスミッション107を介してドライブシャフト108に接続され、車輪5f,5rを駆動する。トルクコンバータ101は、トルクコンバータ101の出力回転数に対してエンジン100の回転数が大きいほど、トランスミッション107に伝達される動力が大きくなるような構造を有する。トルクコンバータ101から出力される動力は、アクセルペダル106の踏み込み量が大きくなりエンジン100の回転数が増加することによって大きくなる。
【0022】
トランスミッション107は、トランスミッションコントローラ109の電気信号110sによって、トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続を遮断したり、ドライブシャフト108の回転方向を反転させたりする。トランスミッション107は、トルクコンバータ101及びドライブシャフト108と共に、エンジン100からの動力を車輪5f,5rに伝達する。トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続が遮断されると、エンジン100から車輪5f,5rへの動力の伝達が遮断されて車輪5f,5rの駆動力が低下する。ドライブシャフト108の回転方向を反転されると、車輪5f,5rの駆動力の方向が反転して、車輪5f,5rの回転方向が反転する。トランスミッションコントローラ109は、ブレーキペダル112の踏み込み量が一定以上の場合、又は、制御装置120の電気信号107sに応じて、トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続を遮断する電気信号110sを出力する。トランスミッション107には、車速センサ21が取り付けられている。車速センサ21は、ドライブシャフト108の回転数から車輪5f,5rの回転速度を計測する。車速センサ21は、車輪5f,5rの回転速度と車輪5f,5rの寸法とから車体2の単位時間当たりの移動量を算出することによって、車体2の車速を計測することができる。
【0023】
油圧ポンプ102は、エンジン100の出力軸100aが1回転する毎に、一定量の圧油を吐出する。油圧ポンプ102から吐出された圧油は、バケット駆動油圧回路113を介して、リフトシリンダ12及びバケットシリンダ16にそれぞれ供給される。リフトシリンダ12及びバケットシリンダ16のそれぞれは、バケット駆動油圧回路113からの圧油によって伸縮する。油圧ポンプ102から吐出される圧油の量は、エンジン100の回転数が増加するほど増加するので、アクセルペダル106の踏み込み量を大きくしてエンジン100の回転数を増加させると、リフトシリンダ12及びバケットシリンダ16の伸縮速度は速くなる。
【0024】
バケット駆動油圧回路113は、オペレータによるリフト操作レバー114の操作、又は、制御装置120の電気信号113sに応じて、油圧ポンプ102からリフトシリンダ12への圧油の供給を遮断したり、リフトシリンダ12の伸縮方向を反転したりする。油圧ポンプ102からリフトシリンダ12への圧油の供給が遮断されると、リフトアーム11の回動動作が停止する。リフトシリンダ12の伸縮方向が反転すると、リフトアーム11の上方又は下方への回動方向が切り替わる。
【0025】
バケット駆動油圧回路113は、オペレータによるバケット操作レバー115の操作、又は、制御装置120の電気信号113sに応じて、油圧ポンプ102からバケットシリンダ16への圧油の供給を遮断したり、バケットシリンダ16の伸縮方向を反転したりする。油圧ポンプ102からバケットシリンダ16への圧油の供給が遮断されると、バケット3の回動動作が停止する。バケットシリンダ16の伸縮方向が反転すると、バケット3のダンプ方向又はクラウド方向への回動方向が切り替わる。
【0026】
油圧ポンプ102から吐出された圧油は、ステア駆動油圧回路116を介して、ステアシリンダ10L,10Rに供給される。ステアシリンダ10L,10Rは、ステア駆動油圧回路116からの圧油によって伸縮する。
【0027】
ステア駆動油圧回路116は、オペレータによるステアリングホイール117の操作に応じて、ステアシリンダ10L,10Rを伸縮する。例えば、ステアリングホイール117が右回転された場合、ステア駆動油圧回路116は、油圧ポンプ102から吐出された圧油を、右ステアシリンダ10Rが縮むと共に左ステアシリンダ10Lが伸びるように供給する。これにより、車体2は右旋回するように操舵される。例えば、ステアリングホイール117が左回転された場合、ステア駆動油圧回路116は、油圧ポンプ102から吐出された圧油を、右ステアシリンダ10Rが伸びると共に左ステアシリンダ10Lが縮むように供給する。これにより、車体2は左旋回するように操舵される。
【0028】
ブレーキポンプ103から吐出された圧油は、アキュムレータ103aに蓄圧される。アキュムレータ103aに蓄圧された圧油は、ブレーキ駆動油圧回路119を介して、車輪5f,5rを制動する制動装置としてのブレーキ118に供給される。
【0029】
ブレーキ駆動油圧回路119は、オペレータによるブレーキペダル112の踏み込み量、又は、制御装置120の電気信号118sに応じて、車輪5f,5rに印加されるブレーキ圧を制御する。車輪5f,5rに印加されるブレーキ圧が大きくなると、車輪5f,5rへの制動力が大きくなるので、車輪5f,5rの回転速度が減速し、車体2の車速が減速される。
【0030】
図3は、実施形態1の制御装置120の機能的構成を示すブロック図である。
【0031】
ホイールローダ1は、掘削作業において、地面に略平行なバケット3を地面付近に移動させた掘削姿勢から、車体2を前進させてバケット3を対象物に突入させる走行動作と、対象物に突入したバケット3で対象物を掬い上げる掘削動作とを行う。
【0032】
制御装置120は、車体2の走行及びバケット3の姿勢を制御して掘削作業における掘削動作を自動で行わせる自動掘削処理を行う。本実施形態の自動掘削処理によって行われる掘削動作は、車体2を前進させながらバケット3のリフト上げを開始し、車輪5f,5rが空転しないようブレーキ118を駆動した後(すなわち車輪5f,5rを制動させた後)、バケット3をクラウド方向に回動させてバケット3を積載状態とし、バケット3が所定高さに到達するとリフト上げを停止する動作である。
【0033】
なお、制御装置120は、車体2の走行及びバケット3の姿勢を制御して掘削作業における走行動作を自動で行わせる自動走行処理を行ってもよい。本実施形態の自動走行処理によって行われる走行動作は、バケット3を地面に略平行にして地面付近に移動させた掘削姿勢とし、車体2の車速を所定速度以上に保って車体2を前進させてバケット3を対象物に突入させる動作である。所定速度は、例えば2km/hである。これにより、制御装置120は、バケット3が対象物に突入する前に車体2の車速を減速させないので、掘削作業の走行動作に要する時間を短縮することができる。
【0034】
自動掘削処理を行うために、制御装置120は、車速センサ21により計測された車輪5f,5rの回転速度(及び車体2の車速)を取得する。制御装置120は、ベルクランク角度センサ19aにより計測されたベルクランク15の角度を取得する。制御装置120は、リフトアーム角度センサ19bにより計測されたリフトアーム11の角度を取得する。制御装置120は、リフトシリンダ圧力センサ12bにより計測されたリフトシリンダ12の圧力(ボトム室の圧力)を取得する。そして、制御装置120は、取得されたこれらの情報に基づいて、ブレーキ駆動油圧回路119に対する制御指令を示す電気信号118sを出力すると共に、バケット駆動油圧回路113に対する制御指令を示す電気信号113sを出力する。
【0035】
制御装置120は、姿勢演算部121と、自動掘削処理部122と、ブレーキ駆動指令部125と、リフト駆動指令部126と、バケット駆動指令部127と、を有する。
【0036】
姿勢演算部121は、ベルクランク角度センサ19a及びリフトアーム角度センサ19bによりそれぞれ計測されたベルクランク15及びリフトアーム11の各角度に基づいて、バケット3の爪先角度及び高さを算出する。バケット3の爪先角度は、バケット3の底面と地面とが成す角度である。
【0037】
自動掘削処理部122は、自動掘削処理を開始するにあたって必要な処理を行う。自動掘削処理部122は、自動掘削処理が有効であるか否かを判定する有効判定部123と、自動掘削処理を開始するか否かを判定する開始判定部124と、を有する。
【0038】
有効判定部123は、車速センサ21により計測された車輪5f,5rの回転速度と、姿勢演算部121の算出結果に基づいて、自動掘削処理が有効であるか否かを判定する。自動掘削処理が有効であるとは、ホイールローダ1の状態が現在の状態のままバケット3を対象物に突入させ自動掘削処理を開始した場合に掘削動作が適切に行われると想定される状態のことである。開始判定部124は、有効判定部123の判定結果と、姿勢演算部121の算出結果と、リフトシリンダ圧力センサ12bにより計測されたリフトシリンダ12の圧力とに基づいて、自動掘削処理を開始するか否かを判定する。
【0039】
自動掘削処理部122は、開始判定部124により自動掘削処理を開始すると判定された場合、自動掘削処理の動作計画を生成してもよい。或いは、この場合、自動掘削処理部122は、予め生成され記憶された自動掘削処理の動作計画を読み出してもよい。動作計画は、例えば、車輪5f,5rの回転速度(及び車体2の車速)、バケット3の角度(爪先角度)及び高さについての各目標値の推移であってもよい。バケット3の角度及び高さについての目標値の推移は、バケット3の目標動作軌跡である。自動掘削処理部122は、動作計画を、ブレーキ駆動指令部125、リフト駆動指令部126及びバケット駆動指令部127に出力してもよい。
【0040】
ブレーキ駆動指令部125は、車速センサ21により計測された車輪5f,5rの回転速度と、自動掘削処理部122からの出力とに基づき、車輪5f,5rに印加するべきブレーキ圧を演算し、ブレーキ圧制御電磁弁119aに対する制御指令を生成する。ブレーキ駆動指令部125は、生成された制御指令を示す電気信号118sを生成し、ブレーキ駆動油圧回路119のブレーキ圧制御電磁弁119aに出力する。
【0041】
リフト駆動指令部126は、自動掘削処理部122からの出力に基づき、リフトシリンダ12の伸縮量を演算し、バケット駆動油圧回路113に対する制御指令を生成する。リフト駆動指令部126は、生成された制御指令を示す電気信号113sを生成し、バケット駆動油圧回路113に出力する。
【0042】
バケット駆動指令部127は、自動掘削処理部122からの出力に基づき、バケットシリンダ16の伸縮量を演算し、バケット駆動油圧回路113に対する制御指令を生成する。バケット駆動指令部127は、生成された制御指令を示す電気信号113sを生成し、バケット駆動油圧回路113に出力する。
【0043】
図4は、図3に示す制御装置120によって行われる処理を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS101において、制御装置120は、有効判定部123を用いて、自動掘削処理が有効であるか否かを判定する。有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定された場合、制御装置120は、ステップS102に移行する。有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定されなかった場合、制御装置120は、自動掘削処理が有効であると判定されるまで、ステップS101を例えば1秒毎に繰り返す。
【0045】
有効判定部123は、バケット3が所定範囲に収まる掘削姿勢であり、且つ、車体2が前進している場合、自動掘削処理が有効であると判定する。バケット3が所定範囲に収まる掘削姿勢とは、バケット3が地面に略平行(爪先角度が10°以内)であり、且つ、バケット3の高さが地面付近である姿勢のことである。車体2が前進しているとは、車体2の車速が所定速度以上であることであってもよい。所定速度は、例えば2km/hである。
【0046】
ステップS102において、制御装置120は、自動掘削処理部122を用いて、開始判定部124がステップS103において自動掘削処理を開始するか否かを判定する前に、自動掘削処理の準備動作をホイールローダ1に行わせる。
【0047】
自動掘削処理の準備動作とは、例えば、リフトシリンダ12のボトム室又はロッド室のうちのリフトアーム11を上方に回動させる方に対して、リフトシリンダ12が実際には伸縮しない範囲において圧油を供給しておくことである。これにより、制御装置120は、開始判定部124が自動掘削処理を開始するか否かを判定する前に、バケット駆動油圧回路113に含まれる電磁比例弁の位置を、中立位置よりもリフトアーム11を上方に回動させる側に移動させておくことができる。制御装置120は、開始判定部124が自動掘削処理を開始すると判定してからリフトシリンダ12が実際に伸縮するまでのリフトシリンダ12の応答時間を短縮することができる。したがって、制御装置120は、自動掘削処理において行われるバケット3のリフト上げを直ちに開始することができるので、掘削作業における掘削動作に要する時間を短縮することができる。
【0048】
上記に加えて、自動掘削処理の準備動作とは、例えば、ホイールローダ1に設けられたブザーの発音、ランプの点灯又はモニタの表示等によって、オペレータ又は周囲の作業員に対して自動掘削処理が開始されることを予め報知することであってもよい。これにより、制御装置120は、オペレータ又は周囲の作業員にとって自動掘削処理が突然開始されることがないので、オペレータ又は周囲の作業員の心理的な衝撃を緩和することができる。
【0049】
ステップS103において、制御装置120は、開始判定部124を用いて、自動掘削処理を開始するか否かを判定する。開始判定部124により自動掘削処理を開始すると判定された場合、制御装置120は、自動掘削処理を開始して、ステップS104に移行する。開始判定部124により自動掘削処理を開始すると判定されなかった場合、制御装置120は、自動掘削処理を開始すると判定するまで、ステップS103を例えば1秒毎に繰り返す。
【0050】
開始判定部124は、有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定され、バケット3が掘削姿勢であり、且つ、バケット3のリフト上げを行うリフトシリンダ12の圧力が所定圧力を上回るように変化した場合、自動掘削処理を開始すると判定する。バケット3が掘削姿勢であるか否かの判定基準は、ステップS101と同様であってもよい。リフトシリンダ12の圧力の判定基準である所定圧力は、バケット3が空荷状態で前進する時のリフトシリンダ12の圧力より大きい値であって、バケット3が対象物に突入した時に対象物から受ける衝撃によって増加するリフトシリンダ12の圧力より小さい値であってもよい。リフトシリンダ12の圧力の判定基準である所定圧力の下限値を、バケット3が空荷状態で前進する時のリフトシリンダ12の圧力とするのは、ステップS101において、バケット3が掘削姿勢で前進していることを判定済であるからである。すなわち、バケット3が掘削姿勢で前進する場合、バケット3が地面に略平行な姿勢で前進することから、仮にバケット3が積載状態であるとしても多くの対象物がバケット3からこぼれ落ちる。バケット3が掘削姿勢で前進する場合、バケット3が積載状態を維持することは通常は考えられない。したがって、リフトシリンダ12の圧力の判定基準である所定圧力の下限値を、バケット3が空荷状態で前進する時のリフトシリンダ12の圧力とすることは、合理的である。
【0051】
制御装置120は、開始判定部124により自動掘削処理を開始すると判定された場合、自動掘削処理を開始する。具体的には、制御装置120は、自動掘削処理として、車体2を前進させながら対象物に突入したバケット3のリフト上げを開始する。この際、制御装置120は、バケット3が対象物に突入して反力を受けても車体2が前進するよう、車輪5f,5rを回転させる。この車輪5f,5rの回転速度は、制御装置120によって後述の閾値BE以上に保たれていてもよい。バケット3のリフト上げに関する詳細な制御内容については、例えば特許文献1に開示された技術を適用することができる。
【0052】
また、制御装置120は、ホイールローダ1が停車中に自動掘削処理が開始される誤作動を防ぐため、ステップS103において車体2の車速が所定速度(例えば2km/h)を下回った場合には、再びステップS101に移行してもよい。そして、制御装置120は、自動掘削処理が有効であると判定されるまで、ステップS101を例えば1秒毎に繰り返してもよい。
【0053】
ステップS104において、制御装置120は、車輪5f,5rの回転速度が閾値BSを上回るか否かを判定する。車輪5f,5rの回転速度が閾値BSを上回る場合、制御装置120は、ステップS105に移行する。車輪5f,5rの回転速度が閾値BS以下の場合、制御装置120は、バケット3をクラウド方向に回動させてバケット3を積載状態とし、バケット3が所定高さに到達するとリフト上げを停止する。その後、制御装置120は、図4に示す処理を終了する。
【0054】
閾値BSは、車輪5f,5rの空転を防止するよう予め定められた閾値である。閾値BSは、バケット3が対象物に突入して車体2を前進させようとしても車輪5f,5rが空転しないような車輪5f,5rの回転速度を示す。閾値BSは、車輪5f,5rが空転しないようブレーキ118を駆動する空転防止処理を開始するか否かの判定基準であり得る。閾値BSは、後述の閾値BEより大きい値である。閾値BSは、車体2の車速に換算すると、例えば6km/hであってもよい。閾値BSは、掘削対象物の形状や硬さ(突入し易さ)、地面の滑りやすさなどに基づき、実験等により設定される値である。閾値BSは、ホイールローダ1の作業現場に応じて調整可能である。例えば、車体2が走行する地面が滑りやすい雪面等である場合、閾値BSは、通常よりも小さい値に調整される。例えば、対象物が大鋸屑のように軽く、突入し易く、バケット3に与える衝撃が小さい場合、閾値BSは、通常よりも大きい値に調整される。また、制御装置120は、車輪5f、5rの回転速度に代えて、車体2の車速と、当該車速に基づく閾値BSとを用いて、空転防止処理を開始するか否かを判定するようにしてもよい。
【0055】
ステップS105において、制御装置120は、車輪5f,5rが空転しないようブレーキ118を駆動する空転防止処理を開始する。本実施形態の制御装置120は、所定のブレーキ圧を車輪5f,5rに印加する制御指令を示す電気信号118sをブレーキ圧制御電磁弁119aに出力する。これにより、車輪5f,5rの回転量が減少し、車輪5f,5rの回転速度が減速される。すなわち、制御装置120は、ステップS104及びステップS105を行うことによって、バケット3を対象物に突入させた状態で車体2を前進させ、車輪5f,5rの回転速度が閾値BSを上回る場合には、車輪5f,5rが空転しないようブレーキ118を駆動して車輪5f,5rを制動させる。
【0056】
車輪5f,5rに印加される所定のブレーキ圧は、バケット3が対象物から受ける反力によって車体2が減速する際の減速度に対して車輪5f,5rが空転しない範囲に車輪5f,5rの回転量を抑えるようなブレーキ圧であってもよい。
【0057】
この所定のブレーキ圧は、ホイールローダ1の仕様又は実験から予め算出される得る。例えば、対象物からの反力による車体2の減速度Aが、-4m/sであるとする。ブレーキペダル112の最大踏み込み量に応じた最大ブレーキ圧が5MPaであり、最大ブレーキ圧が車輪5f,5rに印加された時の車輪5f,5rの減速度Bが-6m/sであるとする。車輪5f,5rが空転する時の地面に対する車輪5f,5rの減速度Cが-3m/sであるとする。この場合、対象物からの反力による車体2の減速度Aに対して車輪5f,5rが空転しないためには、最大ブレーキ圧印加時の車輪5f,5rの減速度Bの1/6を生じさせて、空転時の地面に対する車輪5f,5rの減速度Cより大きくすればよい。よって、この場合、所定のブレーキ圧は、最大ブレーキ圧5MPaの1/6に相当する5/6MPaと算出され得る。更に、誤差によって車輪5f,5rが空転しないよう余裕を持たせるために、所定のブレーキ圧は、最大ブレーキ圧5MPaの1/5に相当する1MPaと算出され得る。
【0058】
なお、対象物からの反力による車体2の減速度A、最大ブレーキ圧印加時の車輪5f,5rの減速度B、及び、空転時の地面に対する車輪5f,5rの減速度Cは、ホイールローダ1の仕様又は実験から予め算出される得る。空転時の地面に対する車輪5f,5rの減速度Cは、車輪5f,5rが空転するときの地面に対する車輪5f,5rの加速度を負の数にすることによって算出されてもよい。
【0059】
車輪5f,5rの回転量が地面に対する車輪5f,5rの移動量を大きく上回ると、車輪5f,5rが空転する。したがって、所定のブレーキ圧における上記の算出手法には、ブレーキ118の駆動によって車輪5f,5rの回転量を小さくする狙いがある。同時に、所定のブレーキ圧における上記の算出手法には、ブレーキ118の駆動によって車輪5f,5rの回転量を小さくし過ぎずに、車輪5f,5rが地面からの推進力を得ることができる狙いがある。車輪5f,5rが地面から得られる推進力は、車輪5f,5rの回転量と地面に対する車輪5f,5rの移動量との差に比例して大きくなる。しかし、この差が大きすぎると、車輪5f,5rは空転してしまい、地面から得られる推進力が急激に低下してしまう。
【0060】
地面に対する車輪5f,5rの移動量は、バケット3が対象物に突入する前の車体2の車速と、対象物からの反力による車体2の減速度Aとに基づいて算出され得る。車輪5f,5rの回転量は、車速センサ21により計測された車輪5f,5rの回転速度から算出され得る。
【0061】
上記の例において、最大ブレーキ圧印加時の車輪5f,5rの減速度B(すなわち-6m/s)の4/6(すなわち-4m/s)で減速される場合、車輪5f,5rの回転量と地面に対する車輪5f,5rの移動量との差は、ゼロになる。この場合は、車輪5f,5rが地面からの推進力を得ることができないので不適である。また、最大ブレーキ圧印加時の車輪5f,5rの減速度Bの0/6(すなわち0m/s)で減速される場合、車輪5f,5rの回転量と地面に対する車輪5f,5rの移動量との差は、-4m/sに対応する値のままであり、空転時の地面に対する車輪5f,5rの減速度C(すなわち-3m/s)に対応する値より小さい。この場合は、車輪5f,5rが空転するので不適である。最大ブレーキ圧印加時の車輪5f,5rの減速度Bの1/6(すなわち-1m/s)で減速される場合、車輪5f,5rの回転量と地面に対する車輪5f,5rの移動量との差は、車輪5f,5rが空転しない範囲内の限界値付近になる。車輪5f,5rが空転しない範囲内の限界値付近で車輪5f,5rの回転量を抑えると、車輪5f,5rが地面から得られる推進力が大きくなる。これにより、制御装置120は、バケット3を対象物の深い位置(対象物の奥まった位置)まで突入させることができる。制御装置120は、バケット3のリフト上げ及びクラウド方向への回動によって、バケット3の内部に多量の対象物を格納させることができ、1回の掘削動作におけるバケット3の積載量を最大限確保することができる。したがって、制御装置120は、掘削作業における掘削動作の実行回数を最小限に抑えることができる。
【0062】
ステップS106において、制御装置120は、車輪5f,5rの回転速度が閾値BE以下であるか否かを判定する。車輪5f,5rの回転速度が閾値BE以下である場合、制御装置120は、ステップS107に移行する。車輪5f,5rの回転速度が閾値BEを上回る場合、車輪5f,5rの回転速度が閾値BE以下になるまで、ステップS106を例えば0.1秒毎に繰り返してもよい。閾値BEは、バケット3が対象物に突入して反力を受けても車体2が前進するような車輪5f,5rの回転速度を示す。閾値BEは、空転防止処理を終了するか否かの判定基準であり得る。
【0063】
閾値BEは、例えば車速に換算して3km/h分だけ閾値BSより小さい値であってもよい。これにより、制御装置120は、車速が3km/h減速する間に、所定のブレーキ圧を車輪5f,5rに印加することができる。この閾値BEを変更することによって、制御装置120は、所定のブレーキ圧が車輪5f,5rに印加する時間を間接的に変更することができる。また、制御装置120は、車輪5f、5rの回転速度に代えて、車体2の車速と、当該車速に基づく閾値BEとを用いて、空転防止処理を終了するか否かを判定するようにしてもよい。
【0064】
ステップS107において、制御装置120は、ステップS105において開始された空転防止処理を終了する。空転防止処理を終了すると、ブレーキ118の駆動が停止する。すなわち、制御装置120は、ステップS106及びステップS107を行うことによって、バケット3を対象物に突入させた状態でも車体2が前進するよう車輪5f,5rの回転速度を閾値BE以上に保っている。空転防止処理の終了後、制御装置120は、バケット3をクラウド方向に回動させてバケット3を積載状態とし、バケット3が所定高さに到達するとリフト上げを停止する。その後、制御装置120は、図4に示す処理を終了する。
【0065】
以上のように、実施形態1の制御装置120は、車輪5f,5rの回転により車体2を前進させてバケット3を対象物に突入させることで対象物を掘削するホイールローダ1の制御装置である。実施形態1の制御装置120は、バケット3を対象物に突入させた状態で車体2を前進させ、車輪5f,5rの回転速度が予め定められた閾値BSを上回る場合には、車輪5f,5rを制動させる。
【0066】
これにより、実施形態1の制御装置120は、バケット3が対象物に突入しても、車輪5f,5rを空転させずに地面からの推進力を得て車体2を前進させることができる。実施形態1の制御装置120は、バケット3のリフト上げ及びクラウド方向への回動を行うことによって、1回の掘削動作におけるバケット3の積載量を最大限確保することができる。したがって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業における掘削動作の実行回数を最小限に抑えることができる。よって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を図って掘削作業の生産性を向上させることができる。
【0067】
更に、実施形態1の制御装置120は、車体2の走行及びバケット3の姿勢を制御してホイールローダ1の掘削動作を自動で行わせる自動掘削処理を行う。自動掘削処理によって行われる掘削動作は、車体2を前進させながら対象物に突入したバケット3のリフト上げを開始し、車輪5f,5rを制動させた後、バケット3をクラウド方向に回動させてバケット3を積載状態とし、バケット3が所定高さに到達するとリフト上げを停止する動作である。
【0068】
これにより、実施形態1の制御装置120は、オペレータの操作に拠らずに掘削動作をホイールローダ1に行わせることができるので、オペレータの技量により1回の掘削動作に要する時間が長時間化することを抑制することができる。加えて、実施形態1の制御装置120は、1回の掘削動作におけるバケット3の積載量を確実に確保することができる。したがって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業における全掘削動作に要する時間を短縮することができる。よって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を更に図って掘削作業の生産性を更に向上させることができる。
【0069】
更に、実施形態1の制御装置120は、自動掘削処理が有効であるか否かを判定する有効判定部123と、自動掘削処理を開始するか否かを判定する開始判定部124と、を有する。有効判定部123は、バケット3が所定範囲に収まる掘削姿勢であり、且つ、車体2が前進している場合、自動掘削処理が有効であると判定する。開始判定部124は、有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定され、バケット3が掘削姿勢であり、且つ、リフト上げを行うリフトシリンダ12の圧力が所定圧力を上回るように変化した場合、自動掘削処理を開始すると判定する。
【0070】
これにより、実施形態1の制御装置120は、バケット3が対象物に確実に突入した後に自動掘削処理を開始してホイールローダ1に掘削動作を適切に行わせることができる。すなわち、実施形態1の制御装置120は、バケット3が対象物に突入する前に自動掘削処理を開始してホイールローダ1が掘削動作を適切に行うことができないような誤作動を防止することができる。実施形態1の制御装置120は、このような誤作動によって掘削動作に要する時間が長時間化することを抑制することができる。よって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を確実に図って掘削作業の生産性を確実に向上させることができる。
【0071】
更に、実施形態1の制御装置120は、有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定された場合、開始判定部124が自動掘削処理を開始するか否かを判定する前に、自動掘削処理の準備動作をホイールローダ1に行わせる。
【0072】
これにより、実施形態1の制御装置120は、開始判定部124が自動掘削処理を開始すると判定してからリフトシリンダ12が実際に伸縮するまでのリフトシリンダ12の応答時間を短縮することができる。したがって、実施形態1の制御装置120は、自動掘削処理において行われるバケット3のリフト上げを直ちに開始することができるので、掘削作業における掘削動作に要する時間を短縮することができる。よって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を更に図って掘削作業の生産性を更に向上させることができる。
【0073】
更に、実施形態1の制御装置120は、バケット3が対象物に突入する前、車体2の車速を所定速度以上に保って車体2を前進させる。
【0074】
これにより、実施形態1の制御装置120は、バケット3が対象物に突入する前に車体2の車速を減速させないので、掘削作業における走行動作に要する時間を短縮することができる。よって、実施形態1の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を更に図って掘削作業の生産性を更に向上させることができる。
【0075】
[実施形態2]
図5を用いて、実施形態2に係るホイールローダ1の制御装置120について説明する。実施形態2の制御装置120において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0076】
図5は、実施形態2の制御装置120の機能的構成を示すブロック図である。
【0077】
実施形態1の制御装置120は、リフトシリンダ12の圧力を、開始判定部124が自動掘削処理を開始する判定基準の1つとして採用していた。実施形態2の制御装置120は、バケット3と対象物との相対距離を、開始判定部124が自動掘削処理を開始する判定基準の1つとして採用してもよい。
【0078】
実施形態2のホイールローダ1は、図5に示すように、車体2の位置情報を受信するGNSS受信機22と、外部装置との通信によって対象物の位置情報を取得する通信機23とを備える。実施形態2の開始判定部124は、図4のステップS103において実施形態1とは異なる処理を行う。すなわち、実施形態2の開始判定部124は、車体2の位置情報からバケット3の位置情報を演算し、バケット3の位置情報と対象物の位置情報とからバケット3と対象物との相対距離を演算する。そして、実施形態2の開始判定部124は、有効判定部123により自動掘削処理が有効であると判定され、バケット3が掘削姿勢であり、且つ、バケット3と対象物との相対距離が所定距離以下である場合、自動掘削処理を開始すると判定する。
【0079】
所定距離は、例えば1mであってもよい。所定距離を1mとし、閾値BSを車速に換算して6km/hとし、車体2の車速を6km/h以上とすると、バケット3は約0.5秒以下で対象物に突入するが、自動掘削処理が開始され空転防止処理が開始される。空転防止処理を開始してから実際に車輪5f,5rに制動力が作用するまでの時間が約0.5秒とすると、車輪5f,5rに制動力が作用するのは、バケット3が対象物に突入した後になる。したがって、このような場合でも自動掘削処理によって行われる掘削動作に与える影響は非常に小さい。よって、実施形態2の開始判定部124がバケット3と対象物との相対距離が所定距離以下であることを、自動掘削処理を開始する判定基準の1つとして採用することは有効である。
【0080】
実施形態2の制御装置120は、実施形態1と同様に、車輪5f,5rを空転させずに地面からの推進力を得て車体2を前進させることができる。よって、実施形態2の制御装置120は、掘削作業に要する作業時間の短縮化を図って掘削作業の生産性を向上させることができる。
【0081】
なお、実施形態2のホイールローダ1は、外部装置との通信によって対象物の位置情報を取得する通信機23の代わりに、対象物の位置情報を入力可能な端末装置を備えていてもよい。実施形態2の開始判定部124は、端末装置から対象物の位置情報を取得してもよい。
【0082】
[実施形態3]
図6を用いて、実施形態3に係るホイールローダ1の制御装置120について説明する。実施形態3の制御装置120において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0083】
図6は、実施形態3の制御装置120の機能的構成を示すブロック図である。
【0084】
実施形態1の制御装置120は、ブレーキ118を駆動して車輪5f,5rを制動させることを、空転防止処理における車輪5f,5rの回転速度の減速手段として採用していた。実施形態3の制御装置120は、車輪5f,5rの制動だけでなく、車輪5f,5rの動力源の出力を低下させることを、空転防止処理における車輪5f,5rの回転速度の減速手段として採用してもよい。車輪5f,5rの動力源の出力を低下させることは、例えば、エンジン100の回転数を減少させることであってもよい。
【0085】
実施形態3の制御装置120は、図6に示すように、エンジン指令部128を更に有する。エンジン指令部128は、自動掘削処理部122からの出力に基づき、エンジン100の回転数の減少量(補正量)を演算し、エンジンコントローラ104に対する制御指令を生成する。エンジン指令部128は、生成された制御指令を示す電気信号106sを生成し、エンジンコントローラ104に出力する。
【0086】
実施形態3の制御装置120は、図4のステップS105において実施形態1とは異なる処理を行う。すなわち、実施形態3の制御装置120は、上記のブレーキ圧に係る制御指令を示す電気信号118sをブレーキ圧制御電磁弁119aに出力するだけでなく、エンジン100の回転数の減少させる制御指令を示す電気信号106sをエンジンコントローラ104に出力する。このエンジン100の回転数の減少させる制御指令は、例えば、エンジン100の回転数を通常よりも300回転減少させるといった補正を行う制御指令であってもよい。
【0087】
このように、実施形態3の制御装置120は、車輪5f,5rの回転速度が閾値BSを上回る場合には、車輪5f,5rを制動させると共に、車輪5f,5rの動力源の出力を低下させる。
【0088】
これにより、実施形態3の制御装置120は、実施形態1よりも、空転防止処理において車輪5f,5rの回転速度を効率よく抑えることができるので、車輪5f,5rの空転を更に防止することができる。よって、実施形態3の制御装置120は、実施形態1よりも、掘削作業に要する作業時間の短縮化を更に図って掘削作業の生産性を更に向上させることができる。
【0089】
[実施形態4]
図7を用いて、実施形態4に係るホイールローダ1の制御装置120について説明する。実施形態4の制御装置120において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0090】
図7は、実施形態4の制御装置120の機能的構成を示すブロック図である。
【0091】
実施形態4の制御装置120は、車輪5f,5rの制動だけでなく、車輪5f,5rの動力源から車輪5f,5rへの動力の伝達を遮断することを、空転防止処理における車輪5f,5rの回転速度の減速手段として採用してもよい。車輪5f,5rの動力源から車輪5f,5rへの動力の伝達を遮断することは、例えば、車輪5f,5rの動力源であるエンジン100から車輪5f,5rへの動力の伝達を遮断させることであってもよい。具体的には、車輪5f,5rの動力源から車輪5f,5rへの動力の伝達を遮断することは、トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続をトランスミッション107において遮断することであってもよい。
【0092】
実施形態4の制御装置120は、図7に示すように、トランスミッション指令部129を更に有する。トランスミッション指令部129は、自動掘削処理部122からの出力に基づき、トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続を遮断させる制御指令を生成する。トランスミッション指令部129は、生成された制御指令を示す電気信号107sを生成し、トランスミッションコントローラ109に出力する。
【0093】
実施形態4の制御装置120は、図4のステップS105において実施形態1とは異なる処理を行う。すなわち、実施形態4の制御装置120は、上記のブレーキ圧に係る制御指令を示す電気信号118sをブレーキ圧制御電磁弁119aに出力するだけでなく、トルクコンバータ101の出力軸とドライブシャフト108との接続を遮断させる制御指令を示す電気信号107sをトランスミッションコントローラ109に出力する。これは、トランスミッション107がニュートラルにシフトされることに相当し、エンジン100から車輪5f,5rへの動力の伝達が遮断される。
【0094】
このように、実施形態4の制御装置120は、車輪5f,5rの回転速度が閾値BSを上回る場合には、車輪5f,5rを制動させると共に、車輪5f,5rの動力源から車輪5f,5rへの動力の伝達を遮断する。
【0095】
これにより、実施形態4の制御装置120は、実施形態1よりも、空転防止処理において車輪5f,5rの回転速度を効率よく抑えることができるので、車輪5f,5rの空転を更に防止することができる。よって、実施形態4の制御装置120は、実施形態1よりも、掘削作業に要する作業時間の短縮化を更に図って掘削作業の生産性を更に向上させることができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0097】
1…ホイールローダ、2…車体、3…バケット、5f…前輪、5r…後輪、12…リフトシリンダ、100…エンジン、107…トランスミッション、118…ブレーキ(制動装置)、120…制御装置、123…有効判定部、124…開始判定部、BS…閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7