(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240913BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20240913BHJP
F24H 3/02 20220101ALI20240913BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240913BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20240913BHJP
【FI】
F24F7/007 101
F24F7/007 B
F24F11/77
F24H3/02
F24F110:10
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2021548877
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035406
(87)【国際公開番号】W WO2021060175
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2019176622
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】松浪 弘貴
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167467(WO,A1)
【文献】特開2019-148454(JP,A)
【文献】特開2019-45186(JP,A)
【文献】特開2018-141768(JP,A)
【文献】特開2018-141632(JP,A)
【文献】特開2017-49029(JP,A)
【文献】特開2015-148600(JP,A)
【文献】特開2010-223871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/77
F24H 3/02
F24F 110/10
F24F 110/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に風を送風する送風部と、
所定の空間の温度を検知する温度検知部と、
前記所定の空間の湿度を検知する湿度検知部と、
前記対象物の水分量を検知する水分量検知部と、
前記対象物のカビ発生の予測を行うカビ判定部と、を備え、
前記水分量検知部は、
前記対象物へ向けて水に吸収される波長の光である検知光と前記検知光より水に吸収されにくい波長の光である参照光とを発光する発光部と、
前記対象物から前記検知光の反射光と前記参照光の反射光とを受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記検知光の反射光と前記参照光の反射光との強度を比較して前記水分量を算出する水分量算出部と、を有し、
前記カビ判定部は、前記水分量算出部によって算出された前記水分量と前記温度検知部によって検知された前記温度と前記湿度検知部によって検知された前記湿度とに基づいて、前記予測を行う
ことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記カビ判定部は、前記水分量算出部によって算出された前記水分量と前記温度検知部によって検知された前記温度と前記湿度検知部によって検知された前記湿度とからなる環境情報とカビの発生のしやすさとの関係を表したカビ判定情報とに基づいて、前記予測を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記送風装置は、さらに
前記カビ判定部による前記予測に関する情報を表示する表示部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記送風装置は、さらに
前記カビ判定部による前記予測に基づいて前記送風部による送風を制御する送風制御部を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記送風部は、複数の羽根をモータによって回転させて送風する軸流ファンである
ことを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
【請求項6】
前記送風装置は、さらに
空気の吸込口と吹出口とを有する本体ケースと、
前記吸込口から前記吹出口への通風経路に、前記吸込口から吸い込んだ前記空気を加熱する加熱部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置に関し、特に、主に一般家庭における浴室内や室内でカビの発生を抑制するために送風を行う送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室内や室内のカビの発生を抑制するための送風装置として、浴室暖房乾燥機や除湿機や扇風機が知られている。
【0003】
カビの繁殖を抑制するためには、壁面に付着した水滴を乾燥させる必要があるが、送風装置からの送風によって水分を完全に乾燥させるには長時間運転する必要がある。また、室内に充満した高湿度空気によって壁面に水滴が生じる場合があり、壁面を乾燥させるためには多くのエネルギーを要する。
【0004】
この種の送風装置の送風制御方法には、例えば特許文献1にあるように、温度と湿度とをカビ指標値と対応付けたテーブルを用いてカビがどの程度繁殖しているかを判定し、判定結果に基づいて送風を制御する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
このような従来の送風装置における送風制御方法では、上述のように周囲の温度と湿度とからカビの発生を予測している。そのため、壁面の一部に水滴が残ったままである場合にも、温度や湿度によっては、カビが発生しないと判定して運転を停止し得る。カビは水分の存在する場所から発生するため、従来の方法では、カビの発生を正確に判定することは困難であるという課題を有している。
【0007】
本開示は、より正確にカビの発生を予測可能な送風装置を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の送風装置は、対象物に風を送風する送風部と、所定の空間の温度を検知する温度検知部と、所定の空間の湿度を検知する湿度検知部と、対象物の水分量を検知する水分量検知部と、対象物のカビ発生の予測を行うカビ判定部と、を備える。水分量検知部は、対象物へ向けて水に吸収される波長の光である検知光と検知光より水に吸収されにくい波長の光である参照光とを発光する発光部と、対象物から検知光の反射光と参照光の反射光とを受光する受光部と、受光部が受光した検知光の反射光と参照光の反射光との強度を比較して水分量を算出する水分量算出部と、を有する。そして、カビ判定部は、水分量算出部によって算出された水分量と温度検知部によって検知された温度と湿度検知部によって検知された湿度に基づいて、予測を行う。
【0009】
本開示の送風装置は、より正確にカビの発生を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る除湿機の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同除湿機の概略構成を示す側断面構成図である。
【
図3】
図3は、同除湿機の発光部と受光部の概略構成を示す側断面構成図である。
【
図4】
図4は、同除湿機の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、同除湿機の水分と水蒸気との吸光スペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、同除湿機の検出範囲と単位領域とを示す模式図である。
【
図7】
図7は、同除湿機の発光部と受光部の走査方向を示す模式図である。
【
図8】
図8は、同除湿機の制御部による水分量算出処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、同除湿機の水分量算出結果を格納する水分量テーブルを示す図である。
【
図10】
図10は、同除湿機のカビ判定部の動作を説明するためのブロック図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態に係る扇風機の概略構成を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態に係る浴室乾燥機の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る送風装置は、対象物に風を送風する送風部と、所定の空間の温度を検知する温度検知部と、所定の空間の湿度を検知する湿度検知部と、対象物の水分量を検知する水分量検知部と、対象物のカビ発生の予測を行うカビ判定部と、を備える。水分量検知部は、対象物へ向けて水に吸収される波長の光である検知光と検知光より水に吸収されにくい波長の光である参照光とを発光する発光部と、対象物から検知光の反射光と参照光の反射光とを受光する受光部と、受光部が受光した検知光の反射光と参照光の反射光との強度を比較して水分量を算出する水分量算出部と、を有する。そして、カビ判定部は、水分量算出部によって算出された水分量と温度検知部によって検知された温度と湿度検知部によって検知された湿度とに基づいて、予測を行う。
【0012】
これにより、本開示に係る送風装置は、所定の空間における温度と湿度とだけでなく、水分量算出部が算出した対象物の水分量にも基づいてカビの発生を予測するため、従来よりも正確にカビの発生を予測し得る。したがって、本開示に係る送風装置は、より正確なカビの発生予測の結果に基づいて送風を制御することで、カビの発生を抑制できる。
【0013】
また、本開示に係る送風装置のカビ判定部は、水分量算出部によって算出された水分量と温度検知部によって検知された温度と湿度検知部によって検知された湿度とからなる環境情報とカビの発生のしやすさとの関係を表したカビ判定情報とに基づいて、予測を行うこととしてもよい。
【0014】
これにより、本開示に係る送風装置は、カビの発生のしやすさとの関係を表したカビ判定情報に基づいてカビの発生を予測するので、従来よりも正確にカビの発生を予測し得る。
【0015】
また、本開示に係る送風装置は、さらにカビ判定部による予測に関する情報を表示する表示部を備えてもよい。
【0016】
これにより、本開示に係る送風装置の使用者は、カビ発生の予測に関する情報を得ることができる。したがって、本開示に係る送風装置の使用者は、表示された情報に基づいて、例えば、カビの発生を予防したり、発生しているカビを除去したりといった行動を起こすことが可能となり、カビの繁殖を抑制し得る。
【0017】
また、本開示に係る送風装置は、さらにカビ判定部による予測に基づいて送風部による送風を制御する送風制御部を備えてもよい。
【0018】
これにより、本開示に係る送風装置は、予測結果に基づいて、例えば、送風を開始したり終了したりすることで、カビの繁殖を抑制し得る。
【0019】
また、本開示に係る送風装置の送風部は、複数の羽根をモータによって回転させて送風する軸流ファンであってもよい。
【0020】
これにより、本開示に係る送風装置は、軸流ファンにより指向性の高い送風が可能となるため、カビの繁殖を抑制し得る。
【0021】
また、本開示に係る送風装置は、さらに空気の吸込口と吹出口とを有する本体ケースと、吸込口から吹出口への通風経路に、吸込口から吸い込んだ空気を加熱する加熱部と、を備えてもよい。
【0022】
これにより、本開示に係る送風装置は、加熱部により加熱された高温の風を送風することが可能となるため、カビの繁殖を抑制し得る。
【0023】
以下では、本開示の実施の形態に係る送風装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0025】
(実施の形態)
本実施の形態では、本開示の送風装置の一例としての除湿機1、扇風機81及び浴室乾燥機91について順に説明する。
【0026】
(除湿機)
先ずは、除湿機1について説明する。
図1は除湿機1の概略構成を示す斜視図である。
図2は除湿機1の概略構成を示す側断面構成図である。
【0027】
図1に示すように、本開示の送風装置の一例である除湿機1は、カビ判定を行う対象物の一例である壁面100の前に設置されている。除湿機1は、
図2に示すように、本体2、送風部3、除湿部4、制御部5、温度検知部6、湿度検知部7、発光部8、受光部9、吸込口10、吹出口11及び表示部12を備える。
【0028】
除湿機1は、本体2の上面には吹出口11と温度検知部6と湿度検知部7と発光部8と受光部9とを設け、側面の下方には吸込口10を設ける。なお、吹出口11と吸込口10は同一の側面に係るように設けられている。
【0029】
ここで、送風部3は、除湿部4を通過した空気を吹出口11へ導き、吹出口11より対象範囲にある対象物(本実施の形態では壁面100)に送風する。すなわち、除湿機1は、対象物である壁面100に風を送風する送風部3を備える。除湿部4は、吸込口10から吸い込んだ室内空気を除湿するものであり、例えば、シリカゲルなどの除湿材を用いたデシカント除湿や蒸気圧縮式のヒートポンプなどである。すなわち、除湿機1では、吸込口10から取り込まれた室内空気は、除湿部4にて除湿され、送風部3によって吹出口11から除湿空気として送風される。
【0030】
温度検知部6は、所定の空間である室内の温度(以下、「周囲温度」ともいう)を検知する温度センサである。温度検知部6は、周囲温度を検知し、検知した周囲温度を制御部5へ出力する。
【0031】
湿度検知部7は、所定の空間である室内の湿度(以下、「周囲湿度」ともいう)を検知する湿度センサである。湿度検知部7は、周囲湿度を検知し、検知した周囲湿度を制御部5へ出力する。
【0032】
発光部8は、対象物である壁面100へ向けて水に吸収される波長の光である検知光と検知光より水に吸収されにくい波長の光である参照光とを発光する。
【0033】
受光部9は、対象物である壁面100から検知光の反射光と参照光の反射光とを受光する。なお、発光部8及び受光部9の詳細は後述する。
【0034】
制御部5は、1つまたは複数のマイクロコントローラで構成される。制御部5は、温度検知部6が検知した周囲温度と湿度検知部7が検知した周囲湿度とを格納する。また、制御部5は、不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。不揮発性メモリには、発光部8より照射される検知光及び参照光を制御する光源制御部51と、受光部9によって受光した反射光を検知し、壁面100の水分量を算出する水分量算出部56と、カビ判定部57と、送風制御部58と、除湿機1の統括的な動作プログラムが格納される。即ち、プロセッサが不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行することにより、マイクロコントローラが、制御部5として機能する。なお、プロセッサが実行するプログラムは、ここでは、不揮発性メモリに予め格納されているとしたが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。なお、実施の形態に係る除湿機1の発光部8、受光部9及び水分量算出部56は、対象物の水分量を検知する本開示に係る水分量検知部に相当する。
【0035】
具体的には、制御部5は、受光部9が受光した検知光の反射光と参照光の反射光との強度を比較することによって、対象物である壁面100の水分量を算出する。制御部5は、算出した水分量に基づいて、対象物である壁面100のカビ発生の予測を行い、その結果に基づいて、送風部3と除湿部4のうち少なくとも1つの乾燥手段を制御する。これにより、除湿機1では、壁面100の水分量に応じて、適切なカビ判定と乾燥制御がなされる。
【0036】
次に、除湿機1の発光部8と受光部9と制御部5の構成の概要について
図3及び
図4を用いて説明する。
【0037】
図3は、除湿機1の発光部8と受光部9の概略構成を示す側断面構成図である。
図4は、除湿機1の制御部5の概略構成を示すブロック図である。
【0038】
本実施の形態に係る除湿機1では、
図3に示すように、発光部8は、空間を隔てて存在する壁面100に向けて光を照射し、反射光RA1を受光部9で検出し、
図4に示す制御部5の水分量算出部56で壁面100に存在する水分量を算出する。壁面100に存在する水分量とは、壁面100に溜まった水分と、壁面100の表面部分に付着した水滴の量のことである。
【0039】
以下では、発光部8、受光部9及び制御部5の各構成要素について詳細に説明する。
【0040】
(発光部)
発光部8は、水に吸収される波長の光である第一波長帯を含む検知光と、第一波長帯よりも水による吸収が小さい第二波長帯を含む参照光とを壁面100に向けて発する。
【0041】
具体的には、発光部8は、
図3に示すように、投光レンズ21と、光源22とを有している。
【0042】
ここで、投光レンズ21は、光源22が発した光を、壁面100に対して集光する集光レンズである。投光レンズ21は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。
【0043】
光源22は、検知光をなす第一波長帯と参照光をなす第二波長帯とを含み、ピーク波長が第二波長帯側にある連続した光を発するLED(Light Emitting Diode)光源である。具体的には、光源22は、化合半導体からなるLED光源である。
【0044】
図5は、水と水蒸気との吸光スペクトルを示す図である。
図5に示すように、水は、約1450nmの波長に吸収ピークP1と約1940nmの波長に吸収ピークP2とを有する。水蒸気は、水の吸収ピークP1、P2よりやや低い波長、具体的には約1350nm~1400nm及び約1800nm~1900nmの波長にそれぞれ吸収ピークを有する。
【0045】
このため、検知光をなす第一波長帯としては、水の吸光度が高い波長帯を選択し、参照光をなす第二波長帯としては、第一波長帯よりも水の吸光度が小さい波長帯を選択する。そして、一例としては、第二波長帯の平均波長は、第一波長体の平均波長よりも長くする。光源22は、第一波長帯と第二波長帯とを連続して含む光を照射するので、壁面100には、水による吸収が大きな第一波長帯を含む検知光と、水による吸収が第一波長帯よりも小さい第二波長帯を含む参照光が照射される。
【0046】
(受光部)
図3に示すように、受光部9は、受光レンズ71、ハーフミラー34、第一バンドパスフィルタ72、第一受光素子73、第二バンドパスフィルタ42及び第二受光素子43を有している。受光部9では、発光部8によって照射され壁面100に反射した反射光RA1を、受光レンズ71によって集光し、ハーフミラー34によって第一光路LR01と第二光路LR02に分割する。
【0047】
ここで、受光レンズ71は、壁面100によって反射された反射光RA1を第一受光素子73及び第二受光素子43に集光するための集光レンズである。受光レンズ71は、例えば、焦点が第一受光素子73の受光面に位置するように受光部9に固定されている。受光レンズ71は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。
【0048】
ハーフミラー34は、例えば、受光レンズ71と第一受光素子73との間に配置され、受光レンズ71によって集光された光のうち半分を透過し、残りを反射する。ハーフミラー34を透過した第一光路LR01の先には、第一バンドパスフィルタ72と、第一受光素子73とが設けられている。
【0049】
第一バンドパスフィルタ72は、反射光RA1から第一波長帯の光を抽出するためのバンドパスフィルタである。具体的には、第一バンドパスフィルタ72は、ハーフミラー34と、第一受光素子73との間に配置されており、ハーフミラー34を透過して第一受光素子73に入射する反射光の光路上に設けられている。第一バンドパスフィルタ72は、第一波長帯の光を透過するとともに、それ以外の波長帯の光を反射または吸収する。
【0050】
第一受光素子73は、壁面100によって反射された反射光RA1のうち、ハーフミラー34を透過し、第一バンドパスフィルタ72を透過した第一波長帯の光を受光し、電気信号(以下、「第一電気信号」ともいう)に変換する受光素子である。第一受光素子73は、受光した第一波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第一電気信号を生成する。生成された第一電気信号は、制御部5に出力される。第一受光素子73は、例えば、フォトダイオードであるが、これに限定されない。例えば、第一受光素子73は、フォトトランジスタ、または、イメージセンサでもよい。
【0051】
第二バンドパスフィルタ42は、ハーフミラー34で反射された光から第二波長帯の光を抽出するためのバンドパスフィルタである。具体的には、第二バンドパスフィルタ42は、ハーフミラー34と、第二受光素子43との間に配置されており、ハーフミラー34を反射して第二受光素子43に入射する光の光路上に設けられている。そして、第二バンドパスフィルタ42は、第二波長帯の光を透過し、かつ、それ以外の波長帯の光を反射または吸収する。
【0052】
第二受光素子43は、壁面100によって反射された反射光RA1のうち、第二バンドパスフィルタ42を透過した第二波長帯の光を受光し、電気信号(以下、「第二電気信号」ともいう)に変換する受光素子である。第二受光素子43は、受光した第二波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第二電気信号を生成する。生成された第二電気信号は、制御部5に出力される。第二受光素子43は、第一受光素子73と同形の受光素子である。つまり、第一受光素子73がフォトダイオードである場合には、第二受光素子43もフォトダイオードである。
【0053】
(制御部)
制御部5は、発光部8の光源22を点灯制御するとともに、第一受光素子73及び第二受光素子43から出力された第一電気信号及び第二電気信号を処理することで、水分量を算出する水分量算出部56と、壁面100のカビ発生を予測するカビ判定部57とを有する。
【0054】
制御部5は、本体2内に収容されていてもよく、または、本体2の外側面に取り付けられていてもよい。あるいは、制御部5は、複数に分かれており無線通信などの通信機能を有し、第一受光素子73からの第一電気信号及び第二受光素子43からの第二電気信号を受信してもよい。
【0055】
具体的には、
図4に示すように、制御部5は、光源制御部51、第一増幅部52、第二増幅部53、第一信号処理部54、第二信号処理部55、水分量算出部56、カビ判定部57及び送風制御部58を有している。なお、上述したように、制御部5は、1つまたは複数のマイクロコントローラを有している。以下の記載において、光源制御部51、第一信号処理部54、第二信号処理部55、水分量算出部56、カビ判定部57及び送風制御部58が有するマイクロコントローラは、同一のマイクロコントローラでもよいし、異なるマイクロコントローラであってもよい。
【0056】
ここで、光源制御部51は、駆動回路及びマイクロコントローラで構成される。光源制御部51は、光源22の制御プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。光源制御部51は、光源22の点灯及び消灯が所定の発光周期で繰り返されるように、光源22を制御する。具体的には、光源制御部51は、所定の周波数(例えば、1kHz)のパルス信号を光源22に出力することで、光源22を所定の発光周期で点灯及び消灯させる。
【0057】
第一増幅部52は、第一受光素子73が出力した第一電気信号を増幅して第一信号処理部54に出力する。具体的には、第一増幅部52は、第一電気信号を増幅するオペアンプである。
【0058】
第一信号処理部54は、マイクロコントローラで構成される。第一信号処理部54は、第一電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第一信号処理部54は、第一電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第一電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、外乱光に基づくノイズを第一電気信号からある程度除去することが可能である。
【0059】
第二増幅部53は、第二受光素子43が出力した第二電気信号を増幅して第二信号処理部55に出力する。具体的には、第二増幅部53は、第二電気信号を増幅するオペアンプである。
【0060】
第二信号処理部55は、マイクロコントローラで構成される。第二信号処理部55は、第二電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第二信号処理部55は、第二電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第二電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、外乱光に基づくノイズを第二電気信号からある程度除去することが可能である。
【0061】
水分量算出部56は、第一受光素子73から出力された第一電気信号と、第二受光素子43から出力された第二電気信号とに基づいて、壁面100に存在する水分量を算出する。すなわち、水分量算出部56は、受光部9が受光した検知光の反射光と参照光の反射光との強度を比較して対象物である壁面100の水分量を算出する。具体的には、水分量算出部56は、第一電気信号の電圧レベルと第二電気信号の電圧レベルとの比(信号比)に基づいて、壁面100に存在する水分量を算出する。本実施の形態では、水分量算出部56は、第一信号処理部54によって処理された第一電気信号と、第二信号処理部55によって処理された第二電気信号とに基づいて、壁面100に存在する水分量を算出する。なお、以下では、第一信号処理部54によって処理された第一電気信号についても単に第一電気信号と、第二信号処理部55によって処理された第二電気信号についても単に第二電気信号をいう場合がある。水分量算出部56は、算出した水分量をカビ判定部57に出力する。具体的な水分量の算出処理については後で説明する。
【0062】
水分量算出部56は、例えば、マイクロコントローラで構成される。水分量算出部56は、信号処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0063】
(水分量の算出処理)
水分量算出部56による水分量の算出処理について説明する。本実施の形態では、水分量算出部56は、反射光に含まれる検知光の光エネルギーPdと、参照光の光エネルギーPrとを比較することで、壁面100に含まれる成分量を算出する。なお、検知光の光エネルギーPdは、第一受光素子73から出力される第一電気信号の強度に対応し、参照光の光エネルギーPrは、第二受光素子43から出力される第二電気信号の強度に対応する。
【0064】
光エネルギーPdは、次の(式1)で表される。
【0065】
(式1) Pd=Pd0×Gd×Rd×Td×Aad×Ivd
ここで、Pd0は、光源22が発した光のうち、検知光をなす第一波長帯の光の光エネルギーである。Gdは、第一波長帯の光の第一受光素子73に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Gdは、光源22が発した光のうち、対象物(壁面100)で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる検知光)になる部分の割合に相当する。
【0066】
Rdは、壁面100による検知光の反射率である。Tdは、第一バンドパスフィルタ72により検知光の透過率である。Ivdは、第一受光素子73における反射光に含まれる検知光に対する受光感度である。
【0067】
Aadは、壁面100に存在する成分(水分)による検知光の吸収率であり、次の(式2)で表される。
【0068】
(式2) Aad=10-αa×Ca×D
ここで、αaは、予め定められた吸光係数であり、具体的には、成分(水分)による検知光の吸光係数である。Caは、壁面100に存在する成分(水分)の体積濃度である。Dは、検知光の吸収に寄与する成分の厚みの2倍である寄与厚みである。
【0069】
より具体的には、水分が均質に分散した壁面100では、光が壁面100に入射し、反射して壁面100から出射する場合において、Caは、壁面100の成分に含まれる体積濃度に相当する。また、Dは、反射して壁面100から出射するまでの光路長に相当する。例えば、Caは、壁面100を覆っている液相に含まれる水分の濃度である。また、Dは、壁面100を覆っている液相の平均的な厚みとして換算される寄与厚みである。
【0070】
したがって、αa×Ca×Dは、壁面100に存在する成分量(水分量)に相当する。以上のことから、壁面100に存在する水分量に応じて、第一電気信号の強度に相当する光エネルギーPdが変化することが分かる。なお、水分と比べて湿気の吸光度は極端に小さいので、無視することができる。
【0071】
同様に、第二受光素子43に入射する参照光の光エネルギーPrは、次の(式3)で表される。
【0072】
(式3) Pr=Pr0×Gr×Rr×Tr×Ivr
本実施の形態では、参照光は、壁面100に含まれる成分によって実質的には吸収されないとみなすことができるので、(式1)と比較して分かるように、水分による吸収率Aadに相当する項は(式3)には含まれていない。
【0073】
(式3)において、Pr0は、光源22が発した光のうち、参照光をなす第二波長帯の光の光エネルギーである。Grは、光源22が発した参照光の第二受光素子43に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Grは、参照光のうち、壁面100で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる参照光)になる部分の割合に相当する。Rrは、対象物による参照光の反射率である。Trは、第二バンドパスフィルタ42による参照光の透過率である。Ivrは、第二受光素子43の反射光に対する受光感度である。
【0074】
本実施の形態では、光源22から照射される光、つまり、検知光と参照光とは、同軸かつ同スポットサイズで照射されるため、検知光の結合効率Gdと参照光の結合効率Grとは略等しくなる。また、検知光と参照光とはピーク波長が比較的近いので、検知光の反射率Rdと参照光の反射率Rrとが略等しくなる。
【0075】
したがって、(式1)と(式3)との比(信号比)を取ることにより、次の(式4)が導き出される。
【0076】
(式4) Pd/Pr=Z×Aad
ここで、Zは、定数項であり、(式5)で示される。
【0077】
(式5) Z=(Pd0/Pr0)×(Td/Tr)×(Ivd/Ivr)
光エネルギーPd0及びPr0はそれぞれ、光源22の初期出力として予め定められている。また、透過率Td及び透過率Trはそれぞれ、第一バンドパスフィルタ72及び第二バンドパスフィルタ42の透過特性により予め定められている。受光感度Ivd及び受光感度Ivrはそれぞれ、第一受光素子73及び第二受光素子43の受光特性により予め定められている。したがって、(式5)で示されるZは、定数とみなすことができる。
【0078】
水分量算出部56は、第一電気信号に基づいて検知光の光エネルギーPdを算出し、第二電気信号に基づいて参照光の光エネルギーPrを算出する。具体的には、第一電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPdに相当し、第二電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPrに相当する。
【0079】
したがって、水分量算出部56は、(式4)に基づいて、対象物である壁面100に含まれる水分の吸収率Aadを算出することができる。これにより、水分量算出部56は、(式2)に基づいて水分量を算出することができる。水分量算出部56が算出した水分量は、対象領域に存在する水分の重さ[g]を対象領域の面積[m2](平方メートル)で割った値としてカビ判定部57へ引き渡される。
【0080】
なお、空間には湿気(水蒸気)も存在しているが、水蒸気によって検知光及び参照光が吸収される場合も想定される。除湿機1は、この水蒸気による吸収分をキャンセルするように第一電気信号及び第二電気信号を補正する補正部を制御部5に設けてもよい。
【0081】
(水分量の検出範囲)
図6は、実施の形態に係る発光部8及び受光部9の検出範囲Aを模式的に示す平面図である。検出範囲Aは、除湿機1によって除湿された風が送風される範囲と同等または広く設定されていることが好ましい。また、検出範囲Aは、受光部9の受光範囲と同等または広い範囲である。
図6に示すように、単位領域Rは、受光部9によって個別に光の検出が行われる領域である。単位領域Rは検出範囲Aと同等サイズでも良いし、検出範囲Aよりも小さいサイズでも良い。例えば、
図6では、単位領域Rは検出範囲Aを縦方向に6分割し、横方向に6分割したサイズである。個々の単位領域RであるS11~S66ごとに検出を行う方法として、例えば、第一受光素子73と第二受光素子43とにイメージセンサを採用しても良い。また、他の方法として、本実施の形態では、
図7に示すように発光部8の照射領域を走査させながら照射すると同時に受光部9の受光領域も走査させて、各領域の反射光を受光する方法を採用する。走査の手段としては、例えば発光部8と受光部9を固定した台座を2つのステッピングモータ(図示せず)を用いて直交する2軸に回転可能に配置する。一方のステッピングモータは、
図7の主走査方向に照射領域を走査できる角度に配置し、もう一方のステッピングモータは、
図7の副走査方向に照射領域を走査できる角度に配置する。
図6及び
図7では、一行あたり等間隔で6箇所検出し、一列あたり等間隔で6箇所検出する場合を例示している。
【0082】
(水分量算出処理)
次に、
図7に示す走査方法を用いた水分量算出処理について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
図8は、制御部5による水分量算出処理を示すフローチャートである。
【0083】
先ず、制御部5は、発光部8の照射領域と受光部9の受光領域とを基準位置(
図7のS11)に移動させ、変数nを1に設定する(ステップSt1)。次に、制御部5は、各領域の指定位置をSn6に設定する(ステップSt2)。例えば、変数nが1の場合、指定位置はS16となる。
【0084】
続いて、制御部5は、照射領域と受光領域を、
図7に示す主走査方向と平行に(ここでは、左から右へ)移動させ、指定位置であるSn6に位置するようにステッピングモータによって動かしていく(ステップSt3)。制御部5は、照射領域と受光領域とが単位領域Rの中心に位置するかどうかを判定する(ステップSt4)。単位領域Rの中心に位置しているかどうかの判定は、例えばステッピングモータの駆動ステップ数から算出する。すなわち、制御部5は、ステッピングモータの駆動ステップ数を計数していき、予め設定された、単位領域Rの中心に位置する場合の駆動ステップ数に達した場合に、単位領域Rの中心に位置していると判定する。照射領域と受光領域とが単位領域Rの中心に位置していない場合(ステップSt4:no)、制御部5は、ステッピングモータの駆動を続ける(ステップSt3)。照射領域と受光領域とが単位領域Rの中心に位置している場合(ステップSt4:yes)、制御部5は、受光強度を取得し(ステップSt5)、強度の比から水分量を算出し、水分量テーブルTに格納する。より詳細には、制御部5の光源制御部51は、光源22を制御することで、発光部8により検知光と参照光とを発光させ、受光部9は検知光の反射光と参照光の反射光とを受光する。制御部5の第一信号処理部54は、受光部9の第一受光素子73からの第一電気信号について、第二信号処理部55は、第二受光素子43からの第二電気信号について、それぞれノイズを除去する処理を行う。そして、制御部5の水分量算出部56は、第一信号処理部54によって処理された第一電気信号に基づいて、検知光の光エネルギーPdを算出し、第二信号処理部55によって処理された第二電気信号に基づいて、参照光の光エネルギーPrを算出する。また、水分量算出部56は、算出した検知光の光エネルギーPdと参照光の光エネルギーPrとを用いて、上述の(式4)により水分の吸収率Aadを算出し、上述の(式2)に基づいて壁面100に存在する水分量(αa×Ca×D)を算出する。水分量算出部56は、算出した壁面100に存在する水分量(ここでは単位面積当たりの水分量)を
図9に示す水分量テーブルTの対応する位置に格納する。例えば、単位領域S11の水分量は、水分量テーブルTのT11に格納される。水分量テーブルTについては後述する。
【0085】
続いて、制御部5は、現在位置する単位領域Rが指定位置であるSn6かどうかの判定を行う(ステップSt7)。単位領域Rが指定位置であるSn6で無ければ(ステップSt7:no)、制御部5は、ステッピングモータの駆動を続ける(ステップSt3)。単位領域Rが指定位置であるSn6であれば(ステップSt7:yes)、制御部5は、ステッピングモータの駆動を停止させる(ステップSt8)。制御部5は、変数nに1を足して、
図7の副走査方向と平行に(ここでは、上から下へ)Sn6に向かって照射領域と受光領域とを動かす(ステップSt9)。
【0086】
次に、制御部5は、指定位置をSn1に設定する(ステップSt10)。例えば、変数nが2の場合、指定位置はS21となる。制御部5は、照射領域と受光領域を、
図7の主走査方向と平行にステップSt2とは逆方向に(ここでは、右から左へ)移動させ、指定位置であるSn1に位置するようにステッピングモータを動かしていく(ステップSt11)。制御部5は、ステップSt4~ステップSt8と同様に処理を行う(ステップSt12~ステップSt16)。
【0087】
続いて、制御部5は、変数nが6であるか判定する(ステップSt17)。変数nが6で無ければ(ステップSt17:no)、制御部5は、変数nに1を足して指定位置Sn1に向かって
図7の副走査方向と平行に(ここでは、上から下へ)照射領域と受光領域とを動かし(ステップSt18)、再びステップSt2から処理を行う。
【0088】
一方、変数nが6であれば(ステップSt17:yes)、制御部5は、水分量算出処理を終了する。
【0089】
次に、
図9を用いて、水分量テーブルTについて説明する。
【0090】
図9は、水分量算出結果を格納する水分量テーブルTを示す図である。水分量テーブルTは、
図7に示す単位領域RであるS11~S66のそれぞれに対応した位置に、算出したそれぞれの単位領域Rの水分量を格納できるように構成される。すなわち、
図7では、一例として検出範囲Aが6行6列に分割されているため、
図9に示す水分量テーブルTも6行6列の行列として構成される。例えば、
図7に示す単位領域RであるS11(1行目1列目)について算出した水分量は、
図9に示す水分量テーブルTのT11(1行目1列目)に格納される。
図8に示す水分量算出処理が終了すると、
図9に示す水分量テーブルTには、単位領域Rごとの水分量の算出結果が格納されていることになる。なお、この水分量テーブルTは、水分量算出部56が有する揮発性メモリに一時的に記録される。この水分量テーブルTの情報に基づいて、カビ判定部57は、以下説明するカビ判定処理を行う。なお、本実施の形態では、水分量テーブルTの情報は、単位領域Rごとの個別の情報として、カビ判定処理に用いられるが、平均化して1つまたは少数の情報に加工しても良い。
【0091】
(カビ判定)
次いで、カビ判定部57の動作について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、カビ判定部57の動作を説明するためのブロック図であり、
図11は、カビ判定情報61を示す図である。
【0092】
カビ判定部57は、水分量算出部56によって算出された水分量と温度検知部6によって検知された周囲温度と湿度検知部7によって検知された周囲湿度とに基づいて、対象物である壁面100のカビ発生の予測を行う。除湿機1の乾燥時においては、カビ判定部57は、水分量算出部56から出力された
図9に示す水分量テーブルTと温度検知部6から出力された周囲温度と湿度検知部7から出力された周囲湿度と測定時間間隔に基づいて、壁面100のカビ発生を予測する。
【0093】
この予測方法として、カビ判定部57は、定期的に水分量算出部56で算出した壁面100の水分量と周囲温度と周囲湿度とからなる環境情報をカビ判定情報61と比較するカビ予測部62を用いて、壁面100のカビ発生危険度を算出する。すなわち、カビ判定部57は、水分量算出部56によって算出された水分量と温度検知部6によって検知された周囲温度と湿度検知部7によって検知された周囲湿度とからなる環境情報とカビの発生のしやすさとの関係を表したカビ判定情報61に基づいて、壁面100のカビ発生を予測する。
【0094】
カビ判定部57は、例えば、マイクロコントローラで構成される。カビ判定部57は、カビ判定処理プログラム等が格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0095】
カビ判定部57は、
図10に示すように、カビ判定情報61とカビ予測部62とを有する。
【0096】
カビ判定情報61は、
図11に示すように、環境情報である水分量63、周囲温度64及び周囲湿度65と対応付けてカビの発生しやすさを示すカビ判定指数66がテーブル状に格納されている。カビ判定情報61は、上述の不揮発性メモリに予め記録されている。
【0097】
図11は、例えば、水分量63が「100~」(100[g/m2]以上)で、周囲温度64が「30~」(30℃以上)で、周囲湿度65が「80~」(80%RH以上)の場合のカビ判定指数66は「0.080」であることを示している。
【0098】
カビ予測部62は、測定時間間隔ごとに環境情報に応じたカビ判定指数を足し算してカビ発生危険度を算出する。カビ発生危険度が1を超えたらカビが発生すると予測する。カビ発生危険度は、本実施の形態では水分量テーブルTと同じ行列のテーブル(以下、「カビ発生危険度テーブル」ともいう)に格納される。つまりカビ発生危険度は、単位領域Rごとに算出されて壁面100内の分布情報として保持されるが、平均化して1つまたは少数の情報に加工してもよい。また、水分量63が「0~10」(0~10[g/m2])で、周囲温度64が「~20」(20℃以下)で、周囲湿度65が「~40」(40%RH以下)の値で一定期間継続した場合は、カビ発生危険度をリセットするとしても良い。
【0099】
以上のように、本実施の形態に係る除湿機1は、本体2と、空気を本体2の内部に吸い込む吸込口10と、吸込口10から吸い込んだ空気を外部へ吹き出す吹出口11と、吸込口10から吹出口11へ空気を搬送させる送風部3と、吸込口10から吸い込んだ空気を除湿する除湿部4と、所定の空間の温度である周囲温度を検知するための温度検知部6及び所定の空間の湿度である周囲湿度を検知する湿度検知部7と壁面100へ向けて発光する発光部8と、発光に対して壁面100から反射された光を受光する受光部9と、吹出口11からの送風を制御する制御部5と、を備える。発光部8は水に吸収される光である第一波長帯を含む検知光と、検知光よりも水に吸収されにくい光である第二波長帯を含む参照光を壁面100に向けて照射し、受光部9は、壁面100によって反射された検知光を受光し、第一電気信号に変換する第一受光素子73と、壁面100によって反射された参照光を受光し、第二電気信号に変換する第二受光素子43とを有する。そして、制御部5は第一電気信号及び第二電気信号の信号比から水分量を算出する水分量算出部56と、水分量と周囲湿度と周囲温度に基づいて壁面100のカビ発生危険度を判断するカビ判定部57と、を有する。
【0100】
この構成によれば、除湿機1は、壁面100の水分量をより正確に検出することができる。そのため、除湿機1は、従来は正確に予測できていなかった、壁面100のカビの発生予測をより正確に行うことができる。カビの発生の予測は、カビ判定部57が算出するカビ発生危険度に基づき行われる。カビ判定部57は、カビ発生危険度が1となればカビが発生すると予測する。
【0101】
また、カビ判定部57は定期的に水分量算出部56で算出した壁面100の水分量と周囲温度と周囲湿度とからなる環境情報とカビ判定情報61とを比較するカビ予測部62を有する。カビ予測部62は、水分量テーブルTと周囲温度と周囲湿度と内部に保持しているカビ判定情報61とを比較し、測定時間間隔ごとにカビ発生危険度の判定を行う。
【0102】
この構成によれば、除湿機1は、周囲環境や壁面100の水分量の分布に応じたより正確なカビ発生予測が可能になる。具体的には、カビ予測部62が、カビ判定情報61に存在するカビ発生指標を測定時間間隔ごとに足し算したカビ発生危険度を算出する。カビ発生危険度の値が1を超えると、カビ予測部62は、カビが発生したと判定する。
【0103】
また、本実施の形態に係る除湿機1は、カビ判定部57による予測に関する情報を表示する表示部12(
図4参照)を備える。表示部12は、具体的には、カビ判定部57(カビ予測部62)によって算出されたカビ発生危険度を表示する。表示部12は、発光ダイオード表示や液晶パネル表示などを行う。表示部12は、カビ発生危険度テーブルを分布情報として表示してもよいし、平均化した1つまたは少数のデータとして表示しても良いし、その両方の表示をしても良い。表示部12は、本体2の上部に設けるのが良いが、これに限定されない。また、カビ発生危険度が予め設定した閾値以上となった場合、表示部12の発光ダイオード表示の色を緑色から黄色、もしくは赤色へと変更する。これにより、カビの汚染が進行したことを、除湿機1の使用者は知ることができる。
【0104】
この構成によれば、壁面100などの対象物のカビの発生危険度と発生場所を除湿機1の使用者が知ることができるため、除湿機1の乾燥で対処できないカビを除去するかどうか、除湿機1の使用者が判断をすることができる。
【0105】
また、除湿機1は、送風部3と除湿部4の少なくとも1つ以上を制御する送風制御部58(
図4参照)を備え、送風制御部58は、カビ判定部57によるカビ発生危険度を基に送風を制御する。送風制御部58は、例えば、カビ発生危険度が0.1以上の部分に送風を開始し、測定時間間隔ごとのカビ判定指標が0.05以下になると送風を停止するよう制御する。すなわち、除湿機1は、カビ判定部57による壁面100のカビ発生の予測に基づいて送風部3による送風を制御する送風制御部58を備える。
【0106】
(扇風機)
次に、本開示の送風装置の一例としての扇風機81について説明する。
図12は扇風機81の概略構成を示す斜視図である。
【0107】
図12には、複数の羽根82がモータ83の回動軸に固定された軸流ファン84を備える扇風機81が示されている。すなわち、軸流ファン84は、複数の羽根82をモータ83によって回転させて送風する本開示の送風部に相当する。軸流ファン84に取り付けられた羽根82は、フロントガード86とリアガード87とによって覆われており、モータ83が回転することで送風を可能にしている。軸流ファン84は、本体軸85の一端に固定され、本体軸85の他端が基台88に固定されている。軸流ファン84は、本体軸85に対して、左右及び上下方向に可動する構造で設置されている。
【0108】
扇風機81は、
図12に示す扇風機81の基台88に、対象物である壁面100の水分量を検知する水分量検知部13を備えている。なお、
図12では、図示していないが、水分量検知部13は、上述の除湿機1と同様の発光部8、受光部9及び水分量算出部56を有しており、また、扇風機81は、上述の除湿機1と同様のカビ判定部57を有する。
【0109】
図12に示すように室内に干された壁面100に対して、扇風機81が送風し乾燥を行う場合、水分量検知部13が正確に壁面100に付着した水分量を検知する。そして、カビ判定部57(
図12では不図示)が周囲温度と周囲湿度とを基に予測したカビ危険度を基に、扇風機81の送風制御部(不図示)は、風向、風量、送風時間等を制御することができる。例えば、扇風機81の送風制御部は、カビ発生危険度が0.1以上の部分に送風を開始し、測定時間間隔ごとのカビ判定指標が0.05以下になると送風を停止するよう制御する。
【0110】
(浴室乾燥機)
次に、本開示の送風装置の一例としての浴室乾燥機91について説明する。
図13は浴室乾燥機91の概略構成を示す斜視図である。
【0111】
図13には、浴室内における衣類乾燥及び浴室乾燥に使用される浴室乾燥機91が示されている。
図13に示す浴室乾燥機91は、本体ケース92と加熱部95とを備える。浴室乾燥機91は、浴室の空気を浴室乾燥機91に取り入れる吸込口10と、吸込口10より吸い込んだ空気を吹き出す吹出口11とを有する本体ケース92で外装が構成されている。また、吸込口10より吸い込んだ空気を加熱する加熱部95が吸込口10から吹出口11への通風経路に設けられている。また、吸込口10から吹出口11へと空気を循環させる送風部93が通風経路内に配置されている。
【0112】
浴室乾燥機91は、さらに、吹出口11から送風される風の風向を変化させる風向制御部96と、浴室を換気する換気部97と、浴室乾燥機91の加熱量、送風量、風向等を制御する運転制御部98とを備えている。浴室乾燥機91は、衣類または浴室を乾燥させることを目的として加熱量、送風量、風向等を制御する乾燥モードを設けている。
【0113】
浴室乾燥機91の乾燥モードにおいて、衣類乾燥及び浴室乾燥等は、乾燥させる対象物の材質、位置、大きさ等が異なるため、適切に乾燥状態を検知し、浴室乾燥機91の運転を制御する必要がある。そこで、浴室乾燥機91は、乾燥させる対象物の水分量を検知する水分量検知部13を備えている。なお、
図13では、図示していないが、水分量検知部13は、上述の除湿機1と同様の発光部8、受光部9及び水分量算出部56を有しており、また、浴室乾燥機91は、上述の除湿機1と同様のカビ判定部57を備える。
【0114】
図13に示すように浴室内に干された衣類に対して、浴室乾燥機91が送風し乾燥を行う場合、水分量検知部13が正確に壁面100や床面101に存在する水分量を検知し、カビ判定部57(
図13では不図示)がカビ発生危険度を判定する。運転制御部98は、例えば、カビ判定部57が判定した発生危険度が所定値よりも高い場合に加熱送風を開始する。所定値とは例えば0.3である。加熱送風による浴室内の温度上昇で水滴の蒸発が加速される。そのため、送風のみの場合と比較し、カビの発生速度が抑制される。その他、運転制御部98は、風向制御部96を制御してカビ発生危険度が0.1以上の部分に向けて送風し、測定時間間隔ごとのカビ判定指標が0.05以下になると送風を停止してもよい。なお、運転制御部98は、カビ判定部57による予測に基づいて送風部による送風を制御する本開示の送風制御部に相当する。
【0115】
[効果]
実施の形態に係る送風装置(1、81、91)は、対象物である壁面100に風を送風する送風部(3、84、93)と、所定の空間の温度である周囲温度を検知する温度検知部6と、所定の空間の湿度である周囲湿度を検知する湿度検知部7と、壁面100の水分量を検知する水分量検知部13と、壁面100のカビ発生の予測を行うカビ判定部57とを備える。水分量検知部13は、壁面100へ向けて水に吸収される波長の光である検知光と検知光より水に吸収されにくい波長の光である参照光とを発光する発光部8と、壁面100から検知光の反射光と参照光の反射光とを受光する受光部9と、受光部9が受光した検知光の反射光と参照光の反射光との強度を比較して水分量を算出する水分量算出部56と、を有する。そして、カビ判定部57は、水分量算出部56によって算出された水分量と温度検知部6によって検知された周囲温度と湿度検知部7によって検知された周囲湿度とに基づいて予測を行う。
【0116】
この構成によれば、本実施の形態に係る送風装置(1、81、91)は、壁面100の水分量をより正確に検出することができる。そのため、従来は正確に予測できていなかった、壁面100のカビの発生予測をより正確に行うことができる。したがって、本実施の形態に係る送風装置(1、81、91)は、壁面100の水分や結露の発生によるカビの発生を抑制することができる。
【0117】
また、カビ判定部57は定期的に水分量算出部56で算出した壁面100の水分量と周囲温度と周囲湿度とからなる環境情報とカビ判定情報61とを比較するカビ予測部62を有する。カビ予測部62は、水分量テーブルTと周囲温度と周囲湿度と内部に保持しているカビ判定情報61とを比較し、測定時間間隔ごとにカビ発生危険度の判定を行う。
【0118】
この構成によれば、壁面100などの対象物のカビの発生危険度と発生場所を本実施の形態に係る送風装置(1、81、91)の使用者が知ることができる。そのため、送風装置(1、81、91)の乾燥で対処できないカビを除去するかどうかを、送風装置(1、81、91)の使用者が判断をすることができる。
【0119】
また、送風装置(1、81、91)は、送風部(3、84、93)を制御する送風制御部58を備え、送風制御部58は、カビ判定部57によるカビ発生危険度を基に送風を制御する。送風制御部58は、例えば、カビ発生危険度が0.1以上の部分に送風を開始し、測定時間間隔ごとのカビ判定指標が0.05以下になると送風を停止するよう制御する。
【0120】
この構成によれば、送風装置(1、81、91)は、壁面100などの対象物のカビ発生危険度に応じた送風が可能になる。すなわち、従来はカビ発生を抑制するために長時間の送風運転が必要であったが、送風装置(1、81、91)は、最適な送風制御を行うことができる。送風装置(1、81、91)は、例えば、水滴の付着が少ない領域においては、過剰な電力消費を抑え、水滴の付着が多い領域においては、送風運転が足りずカビの発生が起きることを防ぐことができる。
【0121】
また、送風装置(81)の送風部は、複数の羽根82をモータ83によって回転させて送風する軸流ファン84である。送風装置(81)は、水分量検知部13がより正確に壁面100に付着した水分量を検知し、周囲温度と周囲湿度とを基に予測したカビ危険度を基に、風向、風量、送風時間等を制御することができる。送風装置(81)は、例えば、カビ発生危険度が0.1以上の部分に送風を開始し、測定時間間隔ごとのカビ判定指標が0.05以下になると送風を停止するよう制御する。
【0122】
この構成によれば、送風装置(81)は、軸流ファン84により指向性の高い送風が可能となる。そのため、送風装置(81)は、カビ発生危険度の高い部分に効率的に送風することが可能となり、より低消費電力でカビの発生を抑制することができる。
【0123】
また、送風装置(91)は、さらに空気の吸込口10と吹出口11とを備える本体ケース92と、吸込口10から吹出口11への通風経路に、吸込口10から吸い込んだ空気を加熱する加熱部95と、を備える。そして、送風装置(91)は、水分量が第一の所定値よりも多い場合に加熱送風し、所定値よりも少ない場合に送風のみを行う。
【0124】
この構成によって、送風装置(91)は、対象物に高温の風を送風することが可能となる。そのため、送風装置(91)は、カビ発生危険度の高い部分に存在する水滴を効率的に蒸発させ除去することが可能となる。そのため、送風装置(91)は、送風のみを行う場合と比較し、短時間でカビの発生を抑えることができる。
【0125】
その他、各実施の形態に対して当業者が想到する各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本開示に係る送風装置は、主に一般家庭における浴室内や室内で使用される送風装置として有用である。
【符号の説明】
【0127】
1 除湿機
2 本体
3 送風部
4 除湿部
5 制御部
6 温度検知部
7 湿度検知部
8 発光部
9 受光部
10 吸込口
11 吹出口
12 表示部
13 水分量検知部
21 投光レンズ
22 光源
34 ハーフミラー
42 第二バンドパスフィルタ
43 第二受光素子
51 光源制御部
52 第一増幅部
53 第二増幅部
54 第一信号処理部
55 第二信号処理部
56 水分量算出部
57 カビ判定部
58 送風制御部
61 カビ判定情報
62 カビ予測部
63 水分量
64 周囲温度
65 周囲湿度
66 カビ判定指数
71 受光レンズ
72 第一バンドパスフィルタ
73 第一受光素子
81 扇風機
82 羽根
83 モータ
84 軸流ファン
85 本体軸
86 フロントガード
87 リアガード
88 基台
91 浴室乾燥機
92 本体ケース
93 送風部
95 加熱部
96 風向制御部
97 換気部
98 運転制御部
100 壁面
101 床面
A 検出範囲
LR01 第一光路
LR02 第二光路
P1 吸収ピーク
P2 吸収ピーク
Pd 光エネルギー
Pr 光エネルギー
R 単位領域
S11~S66 単位領域
RA1 反射光
T 水分量テーブル