(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】サイクロン分離装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/185 20060101AFI20240913BHJP
B04C 5/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B04C5/185
B04C5/08
(21)【出願番号】P 2023016646
(22)【出願日】2023-02-07
(62)【分割の表示】P 2018179593の分割
【原出願日】2018-09-26
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】中原 健吾
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特許第7236605(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/061513(WO,A1)
【文献】特開2010-207745(JP,A)
【文献】特開2018-034146(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111773(WO,A1)
【文献】特開昭59-130553(JP,A)
【文献】実開昭56-044854(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 5/00 - 5/30
B01D 45/12
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に空気を流入させる流入口と、
前記筐体内に旋回気流を発生させる旋回流発生手段と、
前記筐体の背面側に設けられ、前記流入口から流入した空気を前記筐体外へ流出させる流出口と連通する内筒管と、
前記筐体内の正面側において、前記流入口と連通する旋回室と、前記旋回室よりも外周側に位置する分離室とに区切る空間分割板と、
前記空間分割板に設けられ、前記旋回室と前記分離室とを連通する貫通孔と、
前記筐体の中心軸を水平に配置した状態で、前記分離室における重力方向の下方の位置に設けられ、前記下方に向かって傾斜する排出促進面を介して前記分離室と前記筐体外とを連通する排出口と、
前記旋回気流によって前記分離室に分離された異物が前記貫通孔から前記旋回室に再流入するのを抑制する流入気流制御板と、
を備えるサイクロン分離装置。
【請求項2】
前記流入気流制御板の上方には、前記分離室内の空気が通過できるように、前記空間分割板との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項
1に記載のサイクロン分離装置。
【請求項3】
前記排出促進面の前記分離室側の面上には、前記排出促進面から前記分離室へ端部を突出させた返し板をさらに備えることを特徴とする請求項1
または2に記載のサイクロン分離装置。
【請求項4】
前記旋回気流の方向において、前記貫通孔と前記流入気流制御板との間における前記流入気流制御板の上流側に設けられた下部遮蔽板をさらに備え、
前記下部遮蔽板は、前記筐体の前記中心軸から引いた半径上に延設した板体であり、前記筐体の前記中心軸に垂直な面において、前記返し板の前記端部から前記排出促進面に引いた接線の延長線上における前記分離室の下部空間内に配置されていることを特徴とする請求項
3に記載のサイクロン分離装置。
【請求項5】
前記旋回気流の方向において、前記流入気流制御板と前記貫通孔との間における前記流入気流制御板の下流側に設けられた上部遮蔽板をさらに備え、
前記上部遮蔽板は、前記筐体の前記中心軸よりも上方における前記分離室の上部空間内に配置されていることを特徴とする請求項
4に記載のサイクロン分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる異物を、遠心力を用いて分離するサイクロン分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサイクロン分離装置は、住宅において外気を室内に取り込む際に、外気と一緒に吸込んでしまう虫や塵埃(以下、異物)を分離するために、住宅外壁の給気口部分に取り付けて使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、給気と排気を行う換気装置を備えた住宅において、屋外の空気を取り込む給気口部分にサイクロン分離装置を設けている。これにより、空気中に含まれる異物をサイクロン分離装置で分離し、その内部に設けた分離室に、分離した異物を貯留し、換気装置内への異物の侵入を防止している。
【0004】
また、特許文献2には、同じく給気と排気を行う換気装置を備えた住宅において、屋外の空気を取り込む給気口部分にサイクロン分離装置を設けている。そして同じく分離した異物を貯留する分離室を備える。分離室には、風力を利用して、蓋が開く構造になっており、自然界で発生した風(以下、自然風)によって蓋が開いたときに、分離した異物が屋外へ排出されるようになっている。
【0005】
その構成は、風圧の力を受ける受風板を設け、受風板はある程度の強い風によって、振り子のように動くよう上部に支点をおいた構成とし、受風板が振り子のように動くことで、分離室に設けた2ヶ所の蓋が交互に開く構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-98208号公報
【文献】特開2008-36579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のサイクロン分離装置においては、特許文献1のように分離室に異物を貯留すると、定期的に貯留物を取り除くというメンテナンスを行う必要があった。また、特許文献2のように受風板を設けてある程度の強い風によって振り子のように動く構成とすると、装置が大型化するのと、稼動部分があるため、定期的なメンテナンスが必要であった。
【0008】
そこで、定期的なメンテナンスを必要とせず、自然風によってサイクロンで分離された異物を効率よく排出できる排出構造を有しながら、自然風の向きが変わってもサイクロンの分離性能の低下を抑制することができる構造を備えたサイクロン分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明に係るサイクロン分離装置は、筐体に空気を流入させる流入口と、筐体内に旋回気流を発生させる旋回流発生手段と、筐体の背面側に設けられ、流入口から流入した空気を筐体外へ流出させる流出口と連通する内筒管と、筐体内の正面側において、流入口と連通する旋回室と、旋回室よりも外周側に位置する分
離室とに区切る空間分割板と、空間分割板に設けられ、旋回室と分離室とを連通する貫通孔と、筐体の中心軸を水平に配置した状態で、分離室における重力方向の下方の位置に設けられ、下方に向かって傾斜する排出促進面を介して分離室と筐体外とを連通する排出口と、旋回気流によって分離室に分離された異物が貫通孔から旋回室に再流入するのを抑制する流入気流制御板と、を備えるものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自然風の向きがどの方向であっても、分離性能を低下させることなく、効率よく筐体外へ異物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1のサイクロン分離装置の斜め下正面側から見た斜視図
【
図4】同排出部の要部を示す拡大図((a)排出部近傍の拡大図、(b)返し板を示す図)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るサイクロン分離装置は、筐体に空気を流入させる流入口と、旋回気流を発生させる旋回流発生手段と、筐体の背面に設けて空気を筐体の外へ流出させる流出口と、筐体の内部を該筐体の側面に近い外周側と該筐体の中心部を含む内周側とに仕切る空間分割板によってそれぞれ形成した分離室と旋回室と、空間分割板に備えた分離室と旋回室を連通させる貫通孔と、分離室内部と筐体外とを連通させる排出口とを備えたサイクロン分離装置において、排出口は分離室に対して重力方向の下方となる位置に配置でき、排出口に向かって傾斜を有する排出促進面を備え、分離室内部に、貫通孔から旋回気流の方向へ、下部遮蔽板、返し板、流入気流制御板を備え、流入気流制御板は、排出促進面の上方部に配置し、かつ筐体の正面側から見て、貫通孔側が下方へ傾斜した板体をなし、返し板は、排出促進面から分離室へ端部を突出させた板体であって、下部遮蔽板は、旋回室の中心軸に垂直な面において、端部から排出促進面にひいた接線の線上にくるよう配置した。
【0013】
これにより、排出口から流入した空気を、流入気流制御板によって、貫通孔と反対側に流れるようにすることができる。また、筐体の正面から見て、排出口の外側を貫通孔のない側からある側へ向かって、自然風が吹いた場合、排出口から流入する気流は、自然風の下流側にあたる排出促進面の傾斜に沿った方向に向きを変える。排出促進面の傾斜に沿った気流は、貫通孔側へ向かう流れとなるが、下部遮蔽板によってその流れは遮られる。
【0014】
つまり、分離室内では、排出口から流入した空気を貫通孔と反対側に流れやすいようにすることができるので、分離室内の異物の再飛散を抑制して、分離室内の塵埃を適時排出することができる。
【0015】
また、本発明に係るサイクロン分離装置は、流入気流制御板の上部にも分離室内の空気が通過できるように、空間分割板との間に隙間を設けた。
【0016】
これにより、排出口から流入した気流が下部遮蔽板に衝突し、向きを反転させた際に、流入気流制御板と空間分割板との隙間を通って、貫通孔から遠ざかる方向へ気流を向かわせることができるために再飛散現象を抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係るサイクロン分離装置は、分離室の上部空間内に上部遮蔽板を設けた。
【0018】
排出口から流入した気流は、一旦貫通孔から遠ざかる方向へ分離室内空間を流れるが、やがて貫通孔へたどり着く。そこで上部遮蔽板を設けることで、その気流の勢いを失わせることで、異物が分離室内の上部まで持ち上がらず、空気のみが上部遮蔽板を超えて貫通孔へ達するため、再飛散現象をさらに抑制することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面参照しながら説明をする。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態ではサイクロン分離装置を換気口フードとして適用した例をもとに以下説明を行う。
【0021】
図1に示す換気口フード1は、住宅の外壁に設けた給気口に取り付けるものである。住宅の外壁に設けて屋外の空気を住宅に取り込む給気口に取り付けるものである。
【0022】
住宅内への屋外の空気を取り込む装置(図示せず)は、住宅内に設置した送風機(図示せず)と換気ダクト(図示せず)を備えて、前記送風機と換気口フード1とを接続している。これにより、換気口フード1を通過した空気を室内へ導入することができる。
【0023】
換気口フード1は、流出管2を用いて換気ダクトと接続し、住宅外壁から突出して設置される。
【0024】
次に、換気口フード1の筐体5の外観構成について説明する。
【0025】
換気口フード1の筐体5は、
図1に示す正面側のカバー3と、背面側のベース板4とで構成されている。換気口フード1の主要部であるカバー3は、四角い箱型の形状であり、正面側を塞ぎ、4つの側面は背面側が流入口7として開口している。カバー3の形状は、四角い箱型の形状に限らず、中心軸6の周りを回転させてできる回転体形状で、正面側を塞いだ円筒形状であってもよい。また、
図1の正面側の面の形状は平面状であるが、中心部が正面側に突出したドーム形状であってもよい。
【0026】
カバー3の側面はベース板4と接続し、換気口フード1として外観を成している。
【0027】
流入口7の下流側には、流入空気を旋回させる旋回流発生手段として、中心軸6に向けて斜めに配置した固定羽根8を複数設けている。固定羽根8は、中心軸6を基準として回転対称に均等間隔で配置されている。また、装置内に大きな虫や鳥類が侵入しないよう、流入口7や固定羽根8の外周部に網を備えても良い。
【0028】
ベース板4は中央部に円形の開口を備え、該開口には流出管2が接続されている。流出管2の一端の流出口9からは、カバー3内部の空気が流出する構成である。
【0029】
中心軸6を略水平に配置した状態において、カバー3の下部には、側面から突出するように排出部11を備えている。排出部11は内外において傾斜を有する排出促進面10を備えている。
【0030】
排出促進面10は対称に配置した二面であり、さらに別の二面と接続され、最下部に排出口12を形成し、これら排出促進面10と別の二面と排出口12で排出部11を構成している。排出部11はカバー3の最下部に位置している。
【0031】
排出部11は下部に向かって断面積が小さくなる方向に排出促進面10を傾斜させ、そ
の先端部に換気口フード1の内外を連通させるように開口させた排出口12を備えている。排出部11は、排出促進面10と排出口12を含むものとなる。なお、本実施の形態では、カバー3は、四角形状の箱型形状として、カバー3の側面から排出部11が突出した構造となっているが、例えばカバー3を下方向に尖った菱形形状として下部側面が傾斜を有している場合は、カバー3側面をそのまま排出促進面10として利用することができる。
【0032】
次に、
図2を用いて、本装置の内部構成について説明する。
【0033】
排出部11をカバー3の最下部に位置させた状態において、
図2に示すように、カバー3の内部空間には、ベース板4を挟んで流出口9に連通するようにベース板4の内側に内筒管19を備え、固定羽根8とカバー3の正面側との間の空間を区切る空間分割板13を備えている。
【0034】
空間分割板13は、カバー3内でベース板4側に向かって断面積が広がるように傾斜しており、円錐台形状である。なお、断面積が変わらない円筒形状であってもよい。
【0035】
カバー3の中心部を含む内周側(空間分割板13より内側)は旋回室14であり、カバー3の内部で筐体5の側面に近い外周側(空間分割板13とカバー3で囲まれた空間)は分離室15である。空間分割板13には貫通孔16を設け、貫通孔16を介して旋回室14と分離室15が連通している。
【0036】
貫通孔16の位置は、空間分割板13上において旋回室底面17側であって、中心軸6より上側で旋回室14内の気流の旋回方向が下方向に向かう側である。そして、
図2の断面図に示すように、内筒管19の先端部から距離を開けて貫通孔16の開口を設けている。
【0037】
空間分割板13はカバー3内で換気口フード1の正面側には旋回室底面17の面を形成しており、空間分割板13と旋回室底面17は連続的に構成されている。なお、空間分割板13をカバー3の内面まで延設し、カバー3の内面を旋回室底面17としてもよい。
【0038】
空間分割板13の外側であってカバー3に囲まれた空間は分離室15であり、旋回室底面17がカバー3とほぼ密接しているので、分離室15は筒状の空間が一周した環状の空間となっている。なお、空間分割板は、カバー3の形状にはよらず、常に回転体形状であることが必須である。
【0039】
そして、分離室15も
図1に示すカバー3の正面側に面が形成され、分離室底面18としている。なお、旋回室底面17と分離室底面18の密接の程度は、組立精度の関係上、旋回室底面17とカバー3の正面側の内面とは僅かな隙間が生じるよう設計されている。
【0040】
このようにして、分離室底面18と旋回室底面17を略同一面上に形成することができるので、中心軸6方向の本サイクロン分離装置、すなわち換気口フード1の厚みを最小限に抑えることができる。
【0041】
また、内筒管19は、ベース板4の中央部からカバー3の内部へ、すなわち換気口フード1の正面側に向けて突出させて備え、流出口9と同軸上に配置されている。なお、本実施の形態では、ベース板4部分において、内筒管19の内径は流出管2の内径と異なっており、流出管2の内径よりも内筒管19の内径の方が小さくなっているが、同じ大きさであってもよい。ベース板4部分で、流出管2側に急拡大が生じるため、気流の乱れが予想される場合、徐々に広がるような形状にしてもよい。
【0042】
次に
図3と
図4を用いて分離室15内部の構造を説明する。本実施の形態において、分離室15内には流入気流制御板20、返し板21、下部遮蔽板22、上部遮蔽板23の4つの部材を備える。貫通孔16を起点にして、旋回室内で旋回気流の流れる方向に、下部遮蔽板22、返し板21、流入気流制御板20、上部遮蔽板23の順に配置している。
【0043】
排出口12の上部には流入気流制御板20を備える。
図4(a)に示すように流入気流制御板20は、排出口12の中心から真上にひいた垂線24をまたがって傾斜を有し、さらに分離室底面から中心軸6方向へ、分離室15を構成している面に衝突するまで押し出した板体である。
【0044】
流入気流制御板20は、二つの端部を有している。二つの端部は、流入気流制御板20の傾斜によって、上側端部25と下側端部26に区別できる。中心軸6から見て近い側を上位側に、遠い側を下位側に配置し、かつ円周方向で上位側は下位側に比べて貫通孔16から離れる方向に配置している。上位側の端部が上側端部25で、下位側の端部が下側端部26である。さらに、流入気流制御板の上側端部25と空間分割板13の間には隙間を備える。
【0045】
図4(b)は、返し板21を示す図である。返し板21は、排出促進面10の面上(排出促進面10から隣接する面上でもよい)から垂線24に向かって先端部を突出した板体である。返し板21の突出した先端部を先端端部27とする。
【0046】
下部遮蔽板22は、中心軸6から引いた半径上で延設した板体である。下部遮蔽板22は内周側では空間分割板13と接触させ、外周側には隙間ができるように構成している。
【0047】
排出促進面10と返し板21の先端端部27と下部遮蔽板22には関係があり、先端端部27から排出促進面10に引いた接線(
図4(a)の点線)の逆方向延長上に下部遮蔽板22が存在するように構成する。
【0048】
排出部11をカバー3の最下部に位置させた状態において、
図3に示すように、上部遮蔽板23は、中心軸6の真上に位置し、上部遮蔽板23の内周側は空間分割板13と接触させ、外周側には隙間ができるように構成している。なお、上部遮蔽板23の位置は分離室15の上部で、かつ貫通孔16よりも上部(上部空間内)であればどこでもよい。
【0049】
上記構成において、気流の流れと分離機構について説明する。
【0050】
まず、異物を含んだ屋外空気は、
図1に示す流入口7より換気口フード1内に流入し、固定羽根8により旋回気流となり、旋回室14内で換気口フード1の正面側へ向かいながら旋回する。ここで、異物は遠心力により空間分割板13側に移動し、貫通孔16付近を通過する際に分離室15内へ移動する。異物を分離した空気は、内筒管19に流入し、流出管2を通って流出口9より装置外へ流出する。
【0051】
分離室15に移動した異物は、一旦、分離室15内に貯留される。送風機により換気口フード1内は負圧となっているため、排出口12から分離室15内にも空気が流入する。その流入した空気は、
図2に示す貫通孔16を通り、旋回室14内へ流入し、旋回室14内の旋回気流と合流する。
【0052】
次に、分離室15内の異物の排出機構について説明する。
【0053】
図3は、換気口フード1の正面側から見た断面図である。
図3の白抜きの矢印は気流の
流れを表している。
図3に示すように分離室15内部の空気は、旋回室14内部の旋回気流の影響により、全体的には旋回室14内部と同方向の旋回気流となっている(全ての気流が同方向とは限らない)。そのため、分離室15内の異物もその流れの影響で移動する。
【0054】
図3に示すように、排出部11の上部は下部に対して左右方向に広がっている。
【0055】
旋回気流によって運ばれた異物は排出部11に流入しやすくなっている。また、中心軸6方向にも幅を持たせることで、分離室15内を流れる旋回気流が排出部11を横断することとなり、異物が移動してきた際に、排出部11に流入しやすくなっている。なお、中心軸6方向の長さは、分離室15の中心軸6方向の長さと同じまで広げても良い。
【0056】
排出口12は、排出部11の下部で、中心軸6方向に長い長方形状である。
【0057】
細長い形状としたのは、体の大きい虫や鳥類などが侵入させずに、排出しやすいよう面積をかせぐためである。さらに、排出口12を中心軸6方向に長くしたのは、自然風による排出効果を高めるためある。
【0058】
カバー3内は負圧であるため、排出口12からも気流が流入する。排出口12から異物が重さにより落下しようとしても、流入気流により押し戻されるため、通常は異物が排出口12から筐体5外へ出て行くことはほとんどない。
【0059】
ところが、筐体5外で排出部11近傍を自然風(横風)が吹くと、自然風は排出促進面10の傾斜により、下方向の気流となる。筐体5内で排出口12近傍に存在する異物は、この気流に誘引される形で筐体5外へ引っ張り出される。このように、分離室15内に一時貯留している異物は、自然風が吹くたびに、自動で筐体5外へ排出されるため、異物を分離可能な換気口フード1でありながら、分離した異物のメンテナンスは不要となる。
【0060】
本実施の形態のサイクロン分離装置は、換気口フード1として、住宅外壁に設置されるので、装置の背面側には壁面が存在する。そのため、自然風は中心軸6方向には流れにくく、住宅外壁に沿って流れやすくなる。すなわち、中心軸に垂直な面方向に流れることが多い。
【0061】
排出促進面10は排出口12の両側に2面あり、それらは対称構造となっている。これは左右どちらから自然風が吹いても同様の排出促進効果を得るためである。なお、左右両側に傾斜を持った排出促進面10が必要だが、厳密に対称構造でなくてもよく、多少角度が違っていたりしても構わない。
【0062】
本実施の形態では、排出促進面10に衝突する自然風がスムーズに向きを変えられるよう、逆さ富士のように徐々に傾斜が急になるスムーズな面とした。
【0063】
次に、分離室15内部の気流について詳細に説明する。
【0064】
前述したように、空間分割板13に設けた貫通孔16から旋回気流の一部が分離室15内に流入する。その影響により、分離室15内では、旋回室14内と同方向の旋回気流が発生する。しかし、換気口フード1内は下流の送風機により負圧となるため、同時に排出口12からも分離室15内に気流が流入する。この気流の向きは、垂線24の方向となる。貫通孔16を通って旋回室14内へ流れる気流となる。
【0065】
排出口12から流入した気流は、分離室15内に一時貯留されている異物を巻き上げ、
貫通孔16を通り流出口9から下流へ飛散する再飛散現象が発生することがある。流入気流制御板20を備えることで、この再飛散現象を防止することができる。排出口12の上方を覆うように流入気流制御板20を備えることで、排出口12から流入した気流は流入気流制御板20に衝突し、排出促進面10の近傍において、貫通孔16から離れる方向へ気流を向かわせることができる。そのため異物は、
図4(a)の垂線24よりも右側の貫通孔16の存在しない側で舞い上がるので、貫通孔16への異物の再流入がなく、再飛散現象を防ぐことができるため、分離性能の低下を抑制することができる。
【0066】
この時、垂線24を基準にして、貫通孔16の存在しない側で舞い上がったものが環状の分離室15をさらに上方に行き、貫通孔16に向かう場合がある。この場合、上部遮蔽板23を設けることにより、分離室15内の旋回気流(
図3、白矢印で示す)の勢いを弱めることができるため、さらに再飛散現象を抑制することができる。
【0067】
次に、筐体5外を自然風が吹いた場合、排出口12から流入する気流の向きは自然風に影響され、自然風と同じ方向へ傾く。
図3において、左から右側に向かって自然風が流れている場合、排出口12から流入した気流は、排出促進面10の傾斜に沿って、右側に傾いた気流となる。この場合、流入気流制御板20に衝突しないが、貫通孔16が存在しない側に向かうため、特に問題ない。
【0068】
しかし、
図3において、右から左側に向かって自然風が流れる場合、排出促進面10に沿って左側に傾いた気流となる。この場合も流入気流制御板20には衝突しない。そこで、返し板21を設け、排出促進面10の接線と先端端部27とを結んだ線上に下部遮蔽板22を備えることで、排出口12から流入した気流が貫通孔16側に傾いて
図4(a)の点線の方向に向いたとしても、下部遮蔽板22に衝突する。このため、異物が舞い上がっても下部遮蔽板22に衝突し勢いを失い、直接、貫通孔16に向かうことがないので、再飛散現象を抑制することができる。本実施の形態においては、さらに、流入気流制御板20の上側端部25側に隙間を設けたため、下部遮蔽板22に衝突した気流の一部を通過させて、貫通孔16の存在しない側へ逃がすことができる。つまり、下部遮蔽板22から貫通孔16側へ向かう気流をより減らすことができ、さらに再飛散現象を抑制することができる。
【0069】
なお、換気口フード1は、住宅の壁面に設置されるため、
図3において、壁面は奥側になるので、紙面の奥から手前に向かう流れは発生しない。逆に、紙面の手前から奥に向かう流れは発生することがあるが、この場合は、排出口12から流入した気流は紙面の奥側に向かうこととなるが、流入気流制御板20が分離室15内を中心軸6方向に横たわって存在しているので、流入気流制御板20に衝突することとなり、再飛散現象を防止できる。つまり、どの方角から自然風が吹いても再飛散現象の発生を抑制することができる。
【0070】
以上のように本発明において、自然風の向きに左右されずに、常に排出口12から流入する気流を制御し、再飛散現象を抑制することができるので、分離性能の低下を抑制しながら、自然風を利用して効率よく異物を排出させることができる換気口フード1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るサイクロン分離装置は、分離した異物を自然風を利用して自動排出させることができ、自然風の向きによらず再飛散現象を防止し、分離性能の低下を抑制できるものであるので、住宅内の換気で屋外の空気を取り込む住宅外壁の給気口部分に使用される換気口フード等として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 換気口フード
2 流出管
3 カバー
4 ベース板
5 筐体
6 中心軸
7 流入口
8 固定羽根
9 流出口
10 排出促進面
11 排出部
12 排出口
13 空間分割板
14 旋回室
15 分離室
16 貫通孔
17 旋回室底面
18 分離室底面
19 内筒管
20 流入気流制御板
21 返し板
22 下部遮蔽板
23 上部遮蔽板
24 垂線
25 上側端部
26 下側端部
27 先端端部