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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/201 20110101AFI20240913BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20240913BHJP
【FI】
B60R21/201
B60R21/205
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021053259
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150589
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0120853(US,A1)
【文献】特開平6-8783(JP,A)
【文献】特開2000-326815(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0021178(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102009029711(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装パネルの裏面側に設けられる車両用エアバッグ装置であって、
上記内装パネルに対向する開口を有するケースと、
上記ケースに予め折り畳まれた状態で膨張展開可能に収容されるエアバッグと、
上記エアバッグに膨張展開用のガスを供給するインフレータと、
上記内装パネルよりも柔軟なシート材からなり上記ケースに収容された上記エアバッグを覆うように設けられる保護部材と、
を備え、
上記保護部材は、上記エアバッグの膨張展開時に上記エアバッグが上記ケースから上記開口を通じて突出する突出方向について開口し、その開口縁部が上記エアバッグと上記内装パネルとの間に介在するように構成されている、車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
上記保護部材は、上記エアバッグを上記突出方向のエアバッグ膨出面を除いて取り囲み上記エアバッグの膨張展開時に上記突出方向と交差する方向の揺動を抑制する揺動抑制壁部と、上記揺動抑制壁部から上記突出方向に延びており上記開口縁部をなす筒端壁部と、を有する筒状部材である、請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
上記保護部材は、上記筒端壁部を上記エアバッグの上記エアバッグ膨出面を覆うように折り返した状態で縫合された縫合部を有する、請求項2に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
上記内装パネルには、ヒンジ部を中心に開閉可能なエアバッグドアが設けられており、上記エアバッグの膨張展開時に上記ヒンジ部と上記エアバッグとの間に上記保護部材の上記開口縁部が介在するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車両の助手席の乗員を保護するための助手席用のエアバッグ装置が開示されている。このエアバッグ装置は、インストルメントパネルのような内装パネルの裏面側に設置されるものであり、エアバッグが予め折り畳まれたケースに収容されている。ケースにはエアバッグの展開を規制するために鋼板からなる2つの展開規制片が対をなすように取り付けられている。2つの展開規制片は、内装パネルの裏面側に設けられたエアバッグドアとエアバッグとの間に隙間を隔てて配置されており、そのサイド部にはエアバッグが展開し易いようにするための切り欠きが設けられている。
【0003】
このエアバッグ装置によれば、エアバッグはインフレータからのガスの供給によって膨張展開を開始する。エアバッグは2つの展開規制片を間に挟んだ状態でエアバッグドアを開放するように膨張展開し、エアバッグの入力によって内装パネルがテアラインに沿って開裂する。このとき、エアバッグは、展開規制片の作用によって、両サイド部から優先に展開し、センター部が最後に展開するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-173350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のエアバッグ装置の場合、エアバッグと内装パネルとの間に鋼板からなる展開規制片が介装されているため、エアバッグの膨張展開時に展開規制片が内装パネルの裏面側に干渉すると、エアバッグの入力が内装パネルの損傷の要因に成り得る。とりわけ、エアバッグの高出力化が進むと、エアバッグからの入力荷重の増加に応じて内装パネルが展開規制片から受ける荷重が高くなるため、このような問題がより顕著になる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、エアバッグの膨張展開時における内装パネルの保護効果に優れた車両用エアバッグ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両の内装パネルの裏面側に設けられる車両用エアバッグ装置であって、
上記内装パネルに対向する開口を有するケースと、
上記ケースに予め折り畳まれた状態で膨張展開可能に収容されるエアバッグと、
上記エアバッグに膨張展開用のガスを供給するインフレータと、
上記内装パネルよりも柔軟なシート材からなり上記ケースに収容された上記エアバッグを覆うように設けられる保護部材と、
を備え、
上記保護部材は、上記エアバッグの膨張展開時に上記エアバッグが上記ケースから上記開口を通じて突出する突出方向について開口し、その開口縁部が上記エアバッグと上記内装パネルとの間に介在するように構成されている、車両用エアバッグ装置、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様の車両用エアバッグ装置において、エアバッグを折り畳み状態で収容するケースは、その開口が車両の内装パネルの裏面に対向するように設けられる。エアバッグは、インフレータからのガスの供給によって、ケースから開口を通じて突出するように膨張展開する。
【0009】
保護部材は、ケースに収容されたエアバッグを覆うように設けられており、このエアバッグの膨張展開時に突出方向について開口し、その開口縁部がエアバッグと内装パネルとの間に介在する。エアバッグの膨張展開時に、保護部材の開口縁部を内装パネルとエアバッグとの間に介在させることにより、エアバッグが内装パネルに直接作用するのを防ぐことができ、内装パネルがエアバッグから受ける荷重を保護部材の開口縁部によって低減させることができる。このとき、保護部材を内装パネルよりも柔軟なシート材によって構成することで、例えばエアバッグの高出力化に伴いエアバッグからの入力荷重が増加した場合でも、この保護部材の開口縁部が内装パネルの損傷の要因になりにくい。
【0010】
従って、上述の態様によれば、エアバッグの膨張展開時における内装パネルの保護効果に優れた車両用エアバッグ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1にかかる車両のインストルメントパネルを車室側からみた図。
図2】実施形態1の車両用エアバッグ装置の平面図。
図3図2のIII-III線矢視断面図。
図4図3中の保護部材をエアバッグとともに示す斜視図。
図5図4の保護部材に対して折り畳み状態のエアバッグをセットする手順を示す斜視図。
図6図3の車両用エアバッグ装置についてエアバッグの膨張展開の初期段階の様子を示す断面図。
図7図3の車両用エアバッグ装置についてエアバッグの膨張展開の中期段階の様子を示す断面図。
図8図3の車両用エアバッグ装置についてエアバッグの膨張展開の最終段階の様子を示す断面図。
図9】実施形態2の車両用エアバッグ装置について図3に対応した断面図。
図10図9の車両用エアバッグ装置について図5に対応した斜視図。
図11】保護部材の筒端壁部の別の折り込み方法を説明するための斜視図。
図12】保護部材の筒端壁部の別の折り込み方法を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
なお、上述の態様において、「膨張展開」とは、予め所定の形態に折り畳まれたエアバッグが、ガスの供給を受けて膨張しながら折り畳まれた状態を解除するように展開する動作をいう。
【0014】
上述の態様の車両用エアバッグ装置では、上記エアバッグを上記突出方向のエアバッグ膨出面を除いて取り囲み上記エアバッグの膨張展開時に上記突出方向と交差する方向の揺動を抑制する揺動抑制壁部と、上記揺動抑制壁部から上記突出方向に延びており上記開口縁部をなす筒端壁部と、を有する筒状部材であるのが好ましい。
【0015】
このエアバッグ装置によれば、保護部材が筒状部材として構成されており、エアバッグの膨張展開時にその筒端壁部が内装パネルとエアバッグとの間に介在する。これにより、筒状部材の筒端壁部を利用して内装パネルを保護することができる。一方で、筒状部材の揺動抑制壁部を利用して、エアバッグの膨張展開時にエアバッグの突出方向と交差する方向のエアバッグの揺動を抑制することができる。このため、内装パネルの保護とエアバッグの揺動抑制を筒状の保護部材によって両立できる。
【0016】
上述の態様の車両用エアバッグ装置では、上記保護部材は、上記筒端壁部を上記エアバッグの上記エアバッグ膨出面を覆うように折り返した状態で縫合された縫合部を有するのが好ましい。
【0017】
このエアバッグ装置において、筒状部材である保護部材の筒端壁部は、エアバッグのエアバッグ膨出面を覆うように折り返した状態で縫合部において縫合される。これにより、折り畳み状態のエアバッグの所望の保形性を保護部材によって確保することができる。保護部材に縫合部を設けることによりエアバッグの保形性を確保するための巻き布などの要素を省略することが可能になる。その結果、エアバッグ装置の部品点数を少なく抑えることができる。
【0018】
上述の態様の車両用エアバッグ装置では、上記内装パネルには、ヒンジ部を中心に開閉可能なエアバッグドアが設けられており、上記エアバッグの膨張展開時に上記ヒンジ部と上記エアバッグとの間に上記保護部材の上記開口縁部が介在するように構成されているのが好ましい。
【0019】
このエアバッグ装置によれば、エアバッグの膨張展開時にエアバッグドアのヒンジ部とエアバッグとの間に保護部材の開口縁部を介在させることにより、エアバッグドアの開放動作時の応力が集中し易いヒンジ部がエアバッグから受ける荷重を低減させることができる。また、このとき、内装パネルよりも柔軟なシート材からなる保護部材の開口縁部がエアバッグドアのヒンジ部の損傷の要因になりにくい。
【0020】
以下、本実施形態の車両用エアバッグ装置の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
なお、本明細書を説明するための図面では、特に断わらない限り、車両上方を矢印UPで示し、車両後方を矢印RRで示し、車両内方を矢印INで示すものとする。また、車両用エアバッグ装置について車幅方向に相当する幅方向を矢印Xで示し、幅方向Xを長手方向としたときの短手方向に相当する奥行方向を矢印Yで示し、幅方向X及び奥行方向Yの両方に直交する高さ方向を矢印Zで示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の車両用エアバッグ装置(以下、単に「エアバッグ装置」ともいう。)101は、車両1の助手席(図示省略)に着座する乗員を保護するためのものであり、インストルメントパネル2のうち助手席に対向する内装パネル3の裏面3a側に設けられている。ここで、内装パネル3の裏面3aは、車室側の面を表面としたとき、表面とは反対側の面として定義される。
【0023】
図2及び図3に示されるように、内装パネル3は、その裏面3aからケース10に向けて立設する筒状の立設壁部4(図3を参照)を有し、この立設壁部4においてケース10に固定されている。内装パネル3は、硬質の樹脂材料からなる。内装パネル3の表面は表皮材6によって構成されている。
【0024】
内装パネル3には、ヒンジ部5bを中心に開閉可能な複数(図2では4つ)のエアバッグドア5が設けられている。ヒンジ部5bは、内装パネル3を高さ方向Zについて見たとき、略矩形をなすように構成されている(図2を参照)。複数のエアバッグドア5は、エアバッグ11から膨張展開時の入力荷重を受けてテアライン5aに沿って開裂して、ヒンジ部5bを中心に車室側に開放されるように構成されている。
【0025】
図2及び図3に示されるように、エアバッグ装置101は、ケース10と、エアバッグ11と、インフレータ12と、巻き布13と、保護部材20と、を少なくとも備えている。
【0026】
ケース10は、内装パネル3とは別部材として構成されており、内装パネル3の裏面3a(図3を参照)に対向する開口10aを有する。このケース10は、エアバッグ11を収容するための収容空間を有する。このケース10の材料は特に限定されないが、典型的には金属材料によってケース10が構成されるのが好ましい。
【0027】
エアバッグ11は、可撓性を有する複数の基布を縫合して袋状に形成されており、予め所定の形態に折り畳まれた状態でケース10に膨張展開可能に収容されている。このときの膨張展開とは、予め所定の形態に折り畳まれたエアバッグ11が、ガスの供給を受けて膨張しながら折り畳まれた状態を解除するように展開する動作をいう。この動作を、単に「膨張」或いは「展開」ということもできる。本実施形態では、折り畳み状態のエアバッグ11の平面視形状が矩形である場合について例示している。
【0028】
インフレータ12は、エアバッグ11に膨張展開用のガスを供給するガス供給部である。このインフレータ12は、そのガス発生口12aが袋状のエアバッグ11の内部空間に連通しており、作動時にエアバッグ11の内部空間にガスを供給するように構成されている。特に図示しないものの、このインフレータ12は、衝突検知センサが車両1の衝突を検知したときに制御ユニットから出力される制御信号に応じて作動する。
【0029】
図3及び図4に示されるように、保護部材20は、ケース10に収容されたエアバッグ11を筒内空間20aに収容するための筒状部材である。このとき、折り畳み状態のエアバッグ11の全体が保護部材20の筒内空間20aに収容される。
【0030】
保護部材20は、硬質の樹脂材料からなる内装パネル3よりも柔軟なシート材からなる。折り畳み状態のエアバッグ11の保形性を運搬時等において確保するために、この保護部材20の周りに巻き布13が巻かれている。保護部材20の具体的な材質は特に限定されないが、コストを抑えるためには、エアバッグ11と同種の可撓性を有する基布によって保護部材20が構成されるのが好ましい。また、巻き布13は、エアバッグ11の膨張展開動作を極力邪魔しないように、保護部材20よりも薄手の布材によって構成されるのが好ましい。
【0031】
保護部材20は、エアバッグ11の突出方向Dの先端面であるエアバッグ膨出面11aを除いて取り囲む有底筒状の揺動抑制壁部21と、揺動抑制壁部21からエアバッグ11の突出方向Dに延びており開口縁部をなす筒端壁部22と、を有する。ここで、突出方向Dは、エアバッグ11の膨張展開時にこのエアバッグ11がケース10から開口10aを通じて突出する方向である。保護部材20をエアバッグ11の突出方向Dについて見たとき、保護部材20は折り畳み状態のエアバッグ11の平面視形状と概ね同形状をなすように構成されている。
【0032】
揺動抑制壁部21は、エアバッグ11の膨張展開時にその周りを取り囲むことによって、突出方向Dと交差する方向のエアバッグ11の揺動を抑制する機能を果たす。これに対して、筒端壁部22は、エアバッグ11の膨張展開時に保護部材20が開口した状態でその開口縁部をなす。この筒端壁部22は、保護部材20の各部位のうちケース10に収容されたエアバッグ11を覆う部位である。エアバッグ11の膨張展開前の状態で保護部材20の筒端壁部22の2つ対向部同士が幅方向Xに沿って延びる合わせ面22aで合わせられている。
【0033】
エアバッグ11の突出方向Dを法線方向とする平面についての、保護部材20の周長方向の長さは、内装パネル3のヒンジ部5bの同方向の長さを下回るように設定されている。これにより、保護部材20が筒端壁部22において開口したとき、筒端壁部22が内装パネル3のヒンジ部5bよりも内側に配置されるようになっている。
【0034】
図4に示されるように、保護部材20は、その幅方向X及び奥行方向Yの寸法がいずれも、折り畳み状態のエアバッグ11のものと同様或いは若干上回るように構成されている。また、この保護部材20の揺動抑制壁部21は、その高さ方向Zの寸法が折り畳み状態のエアバッグ11のものと概ね同様になるように構成されている。このため、保護部材20の筒端壁部22を、筒内空間20aに収容されたエアバッグ11のエアバッグ膨出面11aを覆うのに使用することができる。
【0035】
ここで、保護部材20に対して折り畳み状態のエアバッグ11をセットする手順について図5を参照しながら説明する。
【0036】
図5(a)に示されるように、先ず、保護部材20を筒端壁部22において開口させて、この開口を通じて筒内空間20aに折り畳み状態のエアバッグ11を収容する。その後、図5(b)に示されるように、保護部材20の筒端壁部22をエアバッグ11のエアバッグ膨出面11aを覆うように折り線22b(図5(a)を参照)に沿って内側に折り込む。このとき、図5(c)のように、この保護部材20の筒端壁部22の2つ対向部同士が合わせ面22aで合わせられる。筒端壁部22の折り込み片同士で前後と左右にラップ部Wが形成される。これにより、保護部材20に対する折り畳み状態のエアバッグ11のセットが完了する。最後に、折り畳み状態のエアバッグ11の保形性を確保するために、図5(d)に示されるように、図5(c)の状態の保護部材20の周りに巻き布13を巻き付ける。
【0037】
次に、実施形態1のエアバッグ装置101のエアバッグ11の膨張展開時の動作について、図6図8を参照しつつ説明する。
【0038】
図6に示されるように、エアバッグ11は、インフレータ12の作動時に発生したガスがガス発生口12aを通じて内部空間に供給されることによって膨張展開する。この膨張展開の初期段階において、エアバッグ11は、ケース10から開口10aを通じて突出方向D1に突出する。このエアバッグ11の膨張展開時に、保護部材20は、予め内側に折り畳まれている筒端壁部22がエアバッグ11から受ける荷重によって容易に撓み変形し折り畳みを解除するように外側に広げられ、突出方向Dについて開口する。
【0039】
このとき、内装パネル3の各部位のうち、特にエアバッグドア5のヒンジ部5bとエアバッグ11との間に保護部材20の開口縁部である筒端壁部22が介在し、この筒端壁部22がヒンジ部5bの全周を覆うように配置される。このとき、保護部材20の筒端壁部22は、エアバッグ11とエアバッグドア5とによって厚み方向の両側から挟み込まれる。また、巻き布13は、エアバッグ11から受ける荷重によって開口し、保護部材20に対する巻き付けを部分的に解除する。
【0040】
エアバッグ11は、図6に示される膨張展開の初期段階から、図7に示される膨張展開の中期段階を経て、図8に示される膨張展開の最終段階(展開完了の状態)まで、幅方向X及び奥行方向Yについて大径化する動作を継続した状態で乗員に干渉する。このとき、エアバッグドア5は、エアバッグ11からの入力荷重を受けてヒンジ部5bを中心としたその開放動作が進行する。
【0041】
保護部材20の筒端壁部22は、エアバッグ11の膨張展開の初期段階から最終段階までの間で、エアバッグ11とエアバッグドア5とによって挟み込まれて、エアバッグドア5のヒンジ部5bの全周を覆う状態を維持する。このとき、保護部材20の筒端壁部22は、内装パネル3の表面から突出方向Dに延びる出代寸法が、巻き布13が同方向に延びる出代寸法を上回るように構成されている。筒端壁部22の出代寸法を増やすにつれて内装パネル3の保護効果が高まる一方で、筒端壁部22の出代寸法を減らすにつれてエアバッグ11の動作を邪魔することなく円滑に膨張展開させる効果が高まる。従って、筒端壁部22の出代寸法は、これらの効果のバランスを考慮して適宜に設定されるのが好ましい。
【0042】
エアバッグ11は、その膨張展開の初期段階において、突出方向Dと交差する方向に揺動しようとする。このとき、保護部材20の揺動抑制壁部21は、エアバッグ11の根本部分に相当する位置にあるため、エアバッグ11の振動及び振幅を制御することができ、エアバッグ11のこのような揺動を抑えることが可能になる。これにより、複数のエアバッグドア5のテアライン5a(図3を参照)に対するエアバッグ11の突出方向Dの入力を増やすことができる。その結果、エアバッグ11の膨張展開動作を早期に進行させて、乗員のための拘束面を早期に形成させることができる。
【0043】
また、エアバッグ11は、その膨張展開の中期段階から最終段階までの間では乗員に干渉することによって、突出方向Dの逆方向の反力、及び突出方向Dと交差する方向の反力を受けて大きく揺動しようとする。このとき、保護部材20の揺動抑制壁部21は、エアバッグ11の根本部分に相当する位置にあるため、エアバッグ11の振動及び振幅を制御することができ、エアバッグ11のこのような揺動を抑えることが可能になる。これにより、エアバッグ11による乗員の保護効果を高めることができる。
【0044】
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0045】
上記構成のエアバッグ装置101において、エアバッグ11を折り畳み状態で収容するケース10は、その開口10aが車両1の内装パネル3の裏面3aに対向するように設けられる。エアバッグ11は、インフレータ12からのガスの供給によって、ケース10から開口10aを通じて突出するように膨張展開する。
【0046】
保護部材20は、ケース10に収容されたエアバッグ11を覆うように設けられており、このエアバッグ11の膨張展開時に突出方向Dについて開口し、その開口縁部である筒端壁部22がエアバッグ11と内装パネル3との間に介在する。エアバッグ11の膨張展開時に、保護部材20の筒端壁部22を内装パネル3とエアバッグ11との間に介在させることにより、エアバッグ11が内装パネル3に直接作用するのを防ぐことができ、内装パネル3(特に、エアバッグドア5のヒンジ部5b)がエアバッグ11から受ける荷重を保護部材20の筒端壁部22によって低減させることができる。
【0047】
このとき、保護部材20を内装パネル3よりも柔軟なシート材によって構成することで、例えばエアバッグ11の高出力化に伴いエアバッグ11からの入力荷重が増加した場合でも、この保護部材20の筒端壁部22が内装パネル3(特に、エアバッグドア5のヒンジ部5b)の損傷の要因になりにくい。
【0048】
ヒンジ部5bは、エアバッグドア5の開放動作時の応力が集中し易い部位であり、内装パネル3の中でも特に保護の優先度が高い部位である。このため、エアバッグドア5のヒンジ部5bを保護部材20の筒端壁部22によって優先的に保護するのが好ましい。
【0049】
従って、上述の実施形態1によれば、エアバッグ11の膨張展開時における内装パネル3の保護効果に優れたエアバッグ装置101を提供することが可能になる。
【0050】
上記構成のエアバッグ装置101によれば、保護部材20の筒端壁部22を利用して内装パネル3を保護することができる一方で、保護部材20の揺動抑制壁部21を利用して、エアバッグ11の膨張展開時にエアバッグ11の突出方向Dと交差する方向のエアバッグ11の揺動を抑制することができる。このため、内装パネル3の保護とエアバッグ11の揺動抑制を筒状の保護部材20によって両立できる。
【0051】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0052】
(実施形態2)
図9に示されるように、実施形態2のエアバッグ装置201の構造は、巻き布13に相当する要素を備えていない点と、保護部材20に代わる保護部材20Aを備える点で、実施形態1のエアバッグ装置101の構造と相違している。
【0053】
保護部材20Aの筒端壁部22は、エアバッグ11のエアバッグ膨出面11aを覆うように折り返した状態で縫合部23において縫合される。これにより、折り畳み状態のエアバッグ11の所望の保形性を保護部材20Aによって確保することができる。
【0054】
保護部材20Aに対して折り畳み状態のエアバッグ11をセットするとき、図10(a)に示されるように、先ず、保護部材20Aを筒端壁部22において開口させて、この開口を通じて筒内空間20aに折り畳み状態のエアバッグ11を収容する。その後、図10(b)に示されるように、保護部材20Aの筒端壁部22をエアバッグ11のエアバッグ膨出面11aを覆うように折り線22b(図10(a)を参照)に沿って内側に折り込む。このとき、図10(c)のように、この保護部材20Aの筒端壁部22の2つ対向部同士が合わせ面22aで合わせられる。これにより、保護部材20Aに対する折り畳み状態のエアバッグ11のセットが完了する。最後に、折り畳み状態のエアバッグ11の保形性を確保するために、図10(d)に示されるように、図10(c)の状態の保護部材20Aの筒端壁部22の2つ対向部同士を縫合部23において縫合する。
【0055】
その他の構成については、実施形態1の場合と同様である。
【0056】
上述の実施形態2のエアバッグ装置201によれば、保護部材20Aに縫合部23を設けることによりエアバッグ11の保形性を確保するための巻き布13などの要素を省略することが可能になる。その結果、エアバッグ装置201の部品点数を少なく抑えることができる。
【0057】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0059】
上述の実施形態において、保護部材20,20Aの筒端壁部22の折り込み方法については、図5図10に示すものに限定されず、必要に応じて別の折り込み方法を使用することができる。別の折り込み方法として、例えば、図11及び図12に示されるもの使用できる。
【0060】
図11及び図12はいずれも、図5(c)及び図10(c)に対応する斜視図である。この斜視図に示されるように、これらの折り込み方法では、第1折り込み片22c、第2折り込み片22d、第3折り込み片22e、第4折り込み片22fの順番で、筒端壁部22が折り込まれる。このとき、筒端壁部22の折り込み片同士で前後と左右に形成されるラップ部Wの面積を、図5(c)及び図10(c)に示されるものに比べて小さく抑えることが可能になる。なお、図11及び図12では、説明の便宜上、1つのラップ部Wにハッチングを付している。その結果、筒端壁部22の折り込みが解けるときの摩擦抵抗を抑制することができ、保護部材20,20Aを筒状に展開させ易いという効果を得ることができる。
【0061】
上述の実施形態では、揺動抑制壁部21と筒端壁部22の両方を有する保護部材20,20Aについて例示したが、これに代えて、筒端壁部22に相当する部位を残して、揺動抑制壁部21に相当する部位のみが省略された構造を採用することもできる。この場合、保護部材20,20Aは、内装パネル3(特に、エアバッグドア5のヒンジ部5b)を保護する機能のみを有する。
【0062】
上述の実施形態では、保護部材20,20Aによる内装パネル3の保護対象箇所がエアバッグドア5のヒンジ部5bである場合について例示したが、内装パネル3の保護対象箇所はこれに限定されるものではない。例えば、内装パネル3のうちヒンジ部5b以外の部位を保護対象箇所にしてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、車両1の助手席に着座する乗員を保護するエアバッグ装置101,201について例示したが、必要に応じては、エアバッグ装置101,201の特徴的な構造を、助手席用以外のエアバッグ装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
3 内装パネル
3a 裏面
5 エアバッグドア
5b ヒンジ部
10 ケース
10a 開口
11 エアバッグ
11a エアバッグ膨出面
12 インフレータ
20,20A 保護部材
20a 筒内空間
21 揺動抑制壁部
22 筒端壁部(開口縁部)
23 縫合部
101,201 車両用エアバッグ装置
D エアバッグの突出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12