(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】二次電池用の正極活物質、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20240913BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240913BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021554305
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038575
(87)【国際公開番号】W WO2021085113
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2019197818
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】日比野 光宏
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/187531(WO,A1)
【文献】特表2018-535904(JP,A)
【文献】特表2016-524275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/505
H01M 4/525
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属複合酸化物を含む二次電池用の正極活物質において、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式Li
xMn
yNi
zSb
aO
bF
c(x+y+z+a≦b+c=2、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<a<0.01、1.8<b<2を満たす)で表され、Coを含まない複合酸化物である、二次電池用の正極活物質。
【請求項2】
前記一般式は、0.002≦a≦0.005を満たす、請求項1に記載の二次電池用の正極活物質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二次電池用の正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを備えた、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池用の正極活物質、及び当該正極活物質を用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池等の二次電池用の正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が広く使用されている。例えば、特許文献1には、Coを含まないリチウム過剰型のリチウム遷移金属複合酸化物が提案されている。なお、本明細書では、リチウム遷移金属複合酸化物中のリチウムを除く金属(Me)に対するリチウムのモル比(Li/Me)が1以上であるリチウム遷移金属複合酸化物をリチウム過剰型のリチウム遷移金属複合酸化物と記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
Coを含まないリチウム過剰型のリチウム遷移金属複合酸化物は、二次電池の負荷特性が低下するといった問題がある。
【0005】
本開示の一態様である二次電池用の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LixMnyNizSbaObFc(x+y+z+a≦b+c=2、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<a<0.01、1.8<b<2を満たす)で表され、Coを含まない複合酸化物である。
【0006】
本開示の一態様である二次電池は、上記正極活物質を含む正極と、負極と、電解質とを備える。
【0007】
本開示の一態様である二次電池用の正極活物質によれば、二次電池の負荷特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の一例である二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様である二次電池用の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LixMnyNizSbaObFc(x+y+z+a≦b+c=2、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<a<0.01、1.8<b<2を満たす)で表され、Coを含まない複合酸化物である。一般的に、Coを含まないリチウム過剰型のリチウム遷移金属複合酸化物は、結晶構造の安定性が低く、また電子伝導性も低いため、二次電池の負荷特性が低下する傾向にある。しかし、上記一般式で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム過剰型であり、Coを含まないが、結晶構造の安定性が高く、また、電子伝導性も高いため、二次電池の負荷特性の低下が抑制されると考えられる。特に、複合酸化物の結晶構造の安定性向上は、複合酸化物に含まれる所定量のF原子による影響が大きいと推察され、また、複合酸化物の電子伝導性の向上は、複合酸化物に含まれる所定量のSb原子による影響が大きいと推察される。
【0010】
以下に、本開示の一態様である二次電池の一例について説明する。
【0011】
図1は、実施形態の一例である二次電池の断面図である。
図1に示す二次電池10は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の電極体14と、電解質と、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19と、上記部材を収容する電池ケース15と、を備える。電池ケース15は、有底円筒形状のケース本体16と、ケース本体16の開口部を塞ぐ封口体17とにより構成される。なお、巻回型の電極体14の代わりに、正極及び負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。また、電池ケース15としては、円筒形、角形、コイン形、ボタン形等の金属製ケース、樹脂シートをラミネートして形成された樹脂製ケース(所謂ラミネート型)などが例示できる。
【0012】
電解質は、水系電解質であってもよいが、好ましくは非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む非水電解質である。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等が用いられる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。なお、電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0013】
ケース本体16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。ケース本体16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池内部の密閉性が確保される。ケース本体16は、例えば側面部の一部が内側に張出した、封口体17を支持する張り出し部22を有する。張り出し部22は、ケース本体16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0014】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。内部短絡等による発熱で二次電池10の内圧が上昇すると、例えば下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0015】
図1に示す二次電池10では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通ってケース本体16の底部側に延びている。正極リード20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21はケース本体16の底部内面に溶接等で接続され、ケース本体16が負極端子となる。
【0016】
以下に、正極11、負極12、セパレータ13について詳述する。
【0017】
[正極]
正極11は、正極芯体と、正極芯体の表面に設けられた正極合材層とを有する。正極芯体には、アルミニウムなどの正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、結着材、及び導電材を含み、正極リード20が接続される部分を除く正極芯体の両面に設けられることが好ましい。正極11は、例えば正極芯体の表面に正極活物質、結着材、及び導電材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0018】
正極合材層に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。
【0019】
正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む。リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LixMnyNizSbaObFc(x+y+z+a≦b+c=2、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<a<0.01、1.8<b<2を満たす)で表され、Coを含まない。なお、一般式において、x+y+z+aは最大2であり、xは1以上1.2以下であることから、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム遷移金属複合酸化物中のLiを除く金属(Me)に対するLiのモル比(Li/Me)は1以上であり、Li過剰型の複合酸化物である。
【0020】
正極活物質は、上記リチウム遷移金属複合酸化物(以下、「複合酸化物A」とする)を主成分として含むことが望ましい。主成分とは、正極活物質中の成分の中で最も含有量の多い成分を指す。正極活物質中の複合酸化物Aの含有量は、例えば、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより好ましい。なお、正極活物質は、本開示の効果を損なわない範囲で、複合酸化物A以外の化合物を含んでいてもよい。
【0021】
複合酸化物Aは、O2構造の結晶構造を有することが好ましい。O2構造は、例えば、結晶構造の安定性等の点から、複合酸化物Aの結晶構造の50体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、98体積%以上であることがより好ましく、100体積%であることがより好ましい。ここで、O2構造とは、リチウムが酸素八面体の中心に存在し、酸素と遷移金属の重なり方が単位格子あたり2種類存在する層状の結晶構造であって、空間群P63mcに属する。
【0022】
複合酸化物Aは、複合酸化物Aを合成する際に、副生成物として合成されるT2構造やO6構造の複合酸化物を含んでもよい。ここで、T2構造とは、リチウムが酸素四面体の中心に存在し、酸素と遷移金属の重なり方が単位格子あたり2種類存在する層状の結晶構造であって、空間群Cmcaに属する。O6構造とは、リチウムが酸素八面体の中心に存在し、酸素と遷移金属の重なり方が単位格子あたり6種類存在する層状の結晶構造であって、空間群R-3mに属する。
【0023】
複合酸化物Aの上記一般式において、Sbの含有量を示すaは、0<a<0.01を満たせばよいが、0.002≦a≦0.005を満たすことが好ましい。複合酸化物A中に上記所定量のSbが含まれることで、例えば、複合酸化物Aの電子伝導性が向上し、二次電池の負荷特性の低下が抑制される。なお、aが0.01以上であると、例えば、複合酸化物Aのリチウムイオンの拡散性が低下して、二次電池の負荷特性の低下を十分に抑制できない。
【0024】
また、複合酸化物Aの上記一般式において、Fの含有量を示すcは、0<c≦0.2を満たせばよいが、0.02≦c≦0.1を満たすことが好ましい。複合酸化物A中に上記所定量のFが含まれることで、例えば、複合酸化物Aの結晶構造の安定性が向上し、二次電池の負荷特性の低下が抑制される。
【0025】
また、複合酸化物Aの上記一般式において、Mnの含有量を示すyは、二次電池の負荷特性の低下を抑制する点で、0.4≦y≦0.8を満たせばよいが、例えば、二次電池の高容量化等の点で、0.6≦y≦0.7を満たすことが好ましい。また、複合酸化物Aの上記一般式において、Niの含有量を示すzは、二次電池の負荷特性の低下を抑制する点で、0≦z≦0.4を満たせばよいが、例えば、二次電池の高容量化等の点で、0.3≦z≦0.4を満たすことが好ましい。また、複合酸化物Aの上記一般式において、Liの含有量を示すxは、二次電池の負荷特性の低下を抑制する点で、1≦x≦1.2を満たせばよいが、例えば、二次電池の充放電サイクル特性の低下を抑制する等の点で、1.1≦x≦1.15を満たすことが好ましい。
【0026】
上記一般式で表される複合酸化物Aは、Li、Mn、Ni、Sb及びCo以外の金属元素を含んでいてもよい。但し、複合酸化物A中のLiを除く金属(Me)に対するLiのモル比(Li/Me)は1以上である。Li、Mn、Ni、Sb及びCo以外の金属元素としては、例えば、Fe、Ti、Bi、Nbから選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、Ni、Feが好ましい。
【0027】
複合酸化物Aを構成する各成分量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により測定される。
【0028】
複合酸化物Aは、例えば、Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、Sb化合物、F化合物等の原料を、所定のモル比となるように添加・混合し、得られた混合物を、メカノケミカル処理で粉砕・混合し、粉砕・混合後の混合物を、焼成することにより製造される。混合物の焼成温度は、700℃以上900℃以下の範囲が好ましい。また、焼成雰囲気は、酸素雰囲気又は大気中であることが好ましい。また、各原料を添加・混合した混合物に対してメカノケミカル処理を行わずに焼成して、複合酸化物Aを製造してもよい。合成した複合酸化物Aにおいて、Sbの一部が固溶せずに、複合酸化物Aの粒子表面に酸化物として残存する場合があるが、このSbも、複合酸化物Aを構成する元素である。複合酸化物Aの合成方法としては、Sbが固溶し易い点で、メカノケミカル処理を行うことが望ましい。
【0029】
Li化合物は、特に限定されないが、例えば、Li酸化物、Li炭酸塩、Li水酸化物等が挙げられる。Mn化合物、Ni化合物、Sb化合物、F化合物も同様である。また、各原料は、Li、Mn、Ni、Sb、Fのうちの少なくとも2つを含む複合酸化物、複合水酸化物、複合炭酸塩等でもよい。
【0030】
[負極]
負極12は、負極芯体と、負極芯体の表面に設けられた負極合材層とを有する。負極芯体には、銅などの負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質及び結着材を含み、例えば負極リード21が接続される部分を除く負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極12は、例えば負極芯体の表面に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0031】
負極活物質は、例えばリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出することができる物質であれば特に限定されないが、炭素系活物質が含まれることが好ましい。好適な炭素系活物質は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。また、負極活物質は、Si及びSi含有化合物の少なくとも一方で構成されるSi系活物質が含まれてもよい。
【0032】
結着材には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることもできるが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いることが好ましい。また、負極合材層は、さらに、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などを含むことが好ましい。中でも、SBRと、CMC又はその塩、PAA又はその塩を併用することが好適である。
【0033】
[セパレータ]
セパレータ13には、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれであってもよい。セパレータの表面には、耐熱層などが形成されていてもよい。
【0034】
<実施例>
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>
[正極活物質の合成]
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、Sb2O3を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.001の化学量論比となるように混合し、この混合物を、直径5mmのジルコニア製ボールが入った内容積45ccのジルコニア製ポットに投入した。これを遊星型ボールミル(FRITSCH社製、商品名「PLP-7」)にセットし、公転回転数600rpmで35時間、粉砕・混合した。この混合物を焼成炉に投入し、大気中で800℃1時間焼成することにより、正極活物質を得た。
【0036】
誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、商品名「iCAP6300」)を用いて、得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.554Ni0.277Sb0.002O1.95F0.05であった。
【0037】
[正極の作製]
上記正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、92:5:3の質量比で混合し、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて、正極合材スラリーを調製した。次に、この正極合材スラリーをアルミニウム箔からなる正極芯体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、正極芯体上に正極合材層が形成された正極を作製した。
【0038】
[非水電解液の調製]
フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを、1:3の質量比で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解して、非水電解液を調製した。
【0039】
[試験セルの作製]
上記正極及びLi金属製の対極にリード線をそれぞれ取り付け、ポリオレフィン製のセパレータを介して正極と対極を対向配置することにより、電極体を作製した。この電極体及び上記非水電解液を、アルミニウムラミネートフィルムで構成された外装体内に封入して、試験セルを作製した。
【0040】
<実施例2>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、Sb2O3を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.0025の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.553Ni0.276Sb0.005O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0041】
<比較例1>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、Sb2O3を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.005の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.55Ni0.274Sb0.01O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0042】
<比較例2>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiFを、0.033:0.3:0.3:0.05の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.555Ni0.278O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0043】
<比較例3>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、TiO2を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.005の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.553Ni0.276Ti0.005O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0044】
<比較例4>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、Sr(OH)2・8H2Oを、0.033:0.3:0.3:0.05:0.005の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.553Ni0.276Sr0.005O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0045】
<比較例5>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、Al(OH)3を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.002の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.554Ni0.277Al0.002O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0046】
<比較例6>
LiMnO2、Li2MnO3、LiNiO2、LiF、(NH4)2HPO4を、0.033:0.3:0.3:0.05:0.01の化学量論比となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を合成した。得られた正極活物質の組成を分析した結果、Li1.167Mn0.55Ni0.274P0.01O1.95F0.05であった。また、当該正極活物質を用いて、実施例1と同様にして試験セルを作製した。
【0047】
[充放電試験]
各実施例及び各比較例の試験セルを、25℃の温度環境で、0.05Cの定電流で4.7Vまで充電を行った後、0.05Cの定電流で2.5Vまで放電を行った。この時の放電容量を、0.05Cの電池容量として表1にまとめた。また、各実施例及び各比較例の試験セルを、25℃の温度環境で、0.2Cの定電流で4.7Vまで充電を行った後、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電を行った。この時の放電容量を、0.2Cの電池容量として表1にまとめた。0.05Cの電池容量と0.2Cの電池容量との差が小さいほど、二次電池の負荷特性の低下が抑制されていることを示している。
【0048】
【0049】
実施例1~2の試験セルは、比較例1~6の試験セルと比べて、0.05Cの電池容量と0.2Cの電池容量との差が小さく抑えられていた。したがって、実施例1~2は、比較例1~6より、二次電池の負荷特性の低下が抑制されたと言える。
【符号の説明】
【0050】
10 二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極体
15 電池ケース
16 ケース本体
17 封口体
18,19 絶縁板
20 正極リード
21 負極リード
22 張り出し部
23 フィルタ
24 下弁体
25 絶縁部材
26 上弁体
27 キャップ
28 ガスケット