(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電気化学式水素ポンプ
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240913BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240913BHJP
C25B 9/63 20210101ALI20240913BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B9/63
(21)【出願番号】P 2023118544
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2019183563の分割
【原出願日】2019-10-04
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018196391
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 恒行
(72)【発明者】
【氏名】川畑 徳彦
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0211679(US,A1)
【文献】特開2005-097644(JP,A)
【文献】特開2008-121086(JP,A)
【文献】特開2006-316288(JP,A)
【文献】国際公開第2015/020065(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00- 9/77
C25B 1/00- 1/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、前記電解質膜の一方の主面上に設けられたアノード、前記電解質膜の他方の主面上に設けられたカソード、前記アノード上に積層されたアノードセパレーター、および前記カソード上に積層されたカソードセパレーターを含む、少なくとも1つの水素ポンプユニットと、
前記積層された方向において、一方の端に位置する前記アノードセパレーター上に設けられたアノード端板と、
前記積層された方向において、他方の端に位置する前記カソードセパレーター上に設けられたカソード端板と、
少なくとも前記アノード端板から前記一方の端に位置するアノードセパレーターまでの部材について、前記積層された方向への移動をさせないための固定部材と、
前記アノード端板と前記一方の端に位置するアノードセパレーターとの間に設けられた空間に前記カソードで生成された水素を供給するガス流路と、
前記空間に設けられ、前記一方の端に位置するアノードセパレーターからの押圧を前記アノード端板に伝える伝圧部材と、を備える電気化学式水素ポンプ。
【請求項2】
前記アノード端板と前記一方の端に位置するアノードセパレーターとの間に設けられたアノード板部材を備え、
前記伝圧部材は、前記アノード端板および前記アノード板部材の間において、前記アノード端板と別体または一体に設けられている柱状部材を含む請求項1に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項3】
前記アノード板部材と前記一方の端に位置するアノードセパレーターとが、前記固定部材に含まれるボルトで貫通されている、請求項2に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項4】
前記アノード板部材はアノード絶縁板を含み、
前記柱状部材は、前記アノード端板および前記アノード絶縁板の間に設けられている請求項2に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項5】
前記アノード板部材はアノード給電板を含み、
前記柱状部材は、前記アノード端板および前記アノード給電板の間に設けられている請求項2に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項6】
前記柱状部材は絶縁部材である請求項5に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項7】
前記伝圧部材は、多孔性部材である請求項1に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項8】
前記伝圧部材は、弾性部材である請求項1に記載の電気化学式水素ポンプ。
【請求項9】
前記伝圧部材は、前記カソードに含まれるカソードガス拡散層と同等の弾性率を備える請求項1に記載の電気化学式水素ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電気化学式水素ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化などの環境問題、石油資源の枯渇などのエネルギー問題から、化石燃料に代わるクリーンな代替エネルギー源として、水素が注目されている。水素は燃焼しても基本的に水しか放出せず、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が排出されずかつ窒素酸化物などもほとんど排出されないので、クリーンエネルギーとして期待されている。また、水素を燃料として高効率に利用する装置として、例えば、燃料電池があり、自動車用電源向け、家庭用自家発電向けに開発および普及が進んでいる。
【0003】
来るべき水素社会では、水素を製造することに加えて、水素を高密度で貯蔵し、小容量かつ低コストで輸送または利用し得る技術開発が求められている。特に、分散型のエネルギー源となる燃料電池の普及促進には、水素供給インフラを整備する必要がある。
【0004】
そこで、水素を安定的に供給するために、高純度の水素を製造、精製、高密度貯蔵する様々な提案が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、固体高分子電解質膜、給電体およびセパレーターの積層体をエンドプレートで挟んだ状態で、エンドプレートを貫通する締結ボルトにより積層体が締結された高圧水素製造装置が提案されている。この高圧水素製造装置において、高圧側のカソード給電体および低圧側のアノード給電体間に、所定圧以上の差圧が生じると、固体高分子電解質膜および低圧側のアノード給電体が変形する。すると、高圧側のカソード給電体および固体高分子電解質膜間の接触抵抗が増加する。
【0006】
そこで、特許文献1の高圧水素製造装置に、固体高分子電解質膜および低圧側のアノード給電体が変形しても、高圧側のカソード給電体を固体高分子電解質膜に押圧して密着させる皿バネ、コイルバネなどの押圧手段が設けられている。これにより、高圧側のカソード給電体および固体高分子電解質膜間の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例は、カソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加については十分に検討されていない。本開示の一態様(aspect)は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を適切に抑制し得る電気化学式水素ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示の一態様の電気化学式水素ポンプは、電解質膜、前記電解質膜の一方の主面上に設けられたアノード、前記電解質膜の他方の主面上に設けられたカソード、前記アノード上に積層されたアノードセパレーター、および前記カソード上に積層されたカソードセパレーターを含む、少なくとも1つの水素ポンプユニットと、前記積層された方向において、一方の端に位置する前記アノードセパレーター上に設けられたアノード端板と、前記積層された方向において、他方の端に位置する前記カソードセパレーター上に設けられたカソード端板と、少なくとも前記カソード端板から前記他方の端に位置するカソードセパレーターまでの部材について、前記積層された方向への移動をさせないための固定部材と、前記カソード端板と前記他方の端に位置するカソードセパレーターとの間に設けられた第一空間に前記カソードで生成される水素を供給する第1のガス流路と、前記第一空間に設けられ、前記他方の端に位置するカソードセパレーターからの押圧を前記カソード端板に伝える第1の伝圧部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様の電気化学式水素ポンプは、従来に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を適切に抑制し得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第1実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第1実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態の第3実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、第1実施形態の第4実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図4E】
図4Eは、第1実施形態の第5実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第1実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、第1実施形態の第3変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、第3実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第3実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、第3実施形態の第3実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図8D】
図8Dは、第3実施形態の第4実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図8E】
図8Eは、第3実施形態の第5実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、第3実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、第3実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、第3実施形態の第3変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特許文献1の高圧水素製造装置では、エンドプレートを貫通する締結ボルトにより積層体が締結され、積層方向に圧縮されている。しかしながら、発明者らが鋭意検討した結果、カソードのガス圧が高圧であるため、カソードセパレーターが、これに近接するエンドプレート側に膨らむように変形し、これに伴いエンドプレートも積層体側と反対の方向である外側に向け膨らむよう変形することを見出した。また、上記積層体が複数であるとき、複数の積層体において、積層方向において端に位置するセパレーターが、近接するエンドプレート側に変形する。この変形に伴い、エンドプレートも上記と同様に変形する。
【0013】
カソードセパレーターの上記変形に伴い、カソードセパレーターとカソード給電体の間には、特許文献1の段落[0020]に記載の隙間よりも大きな隙間が生じ、この隙間を補うために、カソード給電体とカソードセパレーターとを電気的に接続する皿バネの距離が長くなり、皿バネの電気抵抗が増加する。
【0014】
これは、特許文献1の高圧水素製造装置に限らず、
図1Aおよび
図1Bに示すような出願人による先行特許の電気化学式水素ポンプにおいても同様である。
【0015】
例えば、
図1Aに示す如く、カソードガス拡散層114が、カソードセパレーター116の凹部に収納されるとともに、電解質膜111、カソード触媒層112、アノード触媒層113、カソードガス拡散層114、およびアノードガス拡散層115の積層体500の締結前に、凹部からその厚み方向に所定の大きさEcdではみ出して配設される構成が提案された。
【0016】
このとき、
図1Bに示す如く、積層体500の締結時において、カソードガス拡散層114を、はみ出し量Ecd分、厚み方向に弾性変形する。
【0017】
ここで、この電気化学式水素ポンプの動作時に、積層体500のカソードガス拡散層114のガス圧が高圧になると、アノードガス拡散層115、アノード触媒層113および電解質膜111に高圧がかかる。すると、アノードガス拡散層115、アノード触媒層113および電解質膜111のそれぞれが圧縮変形する。しかし、このとき、カソードガス拡散層114が、締結器による圧縮後の厚みT2から圧縮前の厚みT1に戻る方向に弾性変形することにより、カソード触媒層112とカソードガス拡散層114との間の接触を適切に維持することができる。
【0018】
しかし、上記の通り、カソードのガス圧が高圧になると、カソードセパレーター116が、これに近接する図示しないエンドプレート側(外側)に膨らむように変形する。すると、カソードセパレーター116の凹部の底面とカソードガス拡散層114との間に隙間が生じやすくなるので、両者間の接触抵抗が増加する可能性がある。その結果、電圧印加器で印加する電圧が増加することにより、電気化学式水素ポンプの運転効率を低下させる恐れがある。
【0019】
そこで、出願人による先行特許の電気化学式水素ポンプにおいて、カソードのガス圧が高圧になるときのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を、カソードセパレーター上に設けられたカソード端板とカソードセパレーターとの間にカソードに連通する空間を設ける構成が提案された。
【0020】
ここで、カソードセパレーター上に設けられたカソード端板とカソードセパレーターとの間にカソードに連通する空間を設ける場合、カソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加について更なる検討が行われ、以下の知見が得られた。
【0021】
例えば、
図1Bに示す如く、積層体500の締結時において、カソードガス拡散層114を、はみ出し量Ecd分、厚み方向に弾性変形すると、カソードガス拡散層114の圧縮応力がカソードセパレーター116の凹部の底面に作用する。このとき、カソードセパレーター116は、これに近接する図示しない上記の空間に高圧のガスを供給できないので、この空間側(外側)に膨らむように変形する。すると、カソードセパレーター116の凹部の底面とカソードガス拡散層114との間に隙間が生じやすくなるので、両者間の接触抵抗が増加する可能性がある。その結果、電圧印加器で印加する電圧が増加することにより、電気化学式水素ポンプの運転効率を低下させる恐れがある。
【0022】
そこで、発明者らは、カソードセパレーターにカソードの圧縮応力が作用することに起因するカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を、カソードセパレーターからの押圧をカソード端板に伝える伝圧部材を、上記の空間に設けることで、伝圧部材を設けない場合に比べ、抑制できることを見出した。
【0023】
すなわち、本開示の第1態様の電気化学式水素ポンプは、電解質膜、電解質膜の一方の主面上に設けられたアノード、電解質膜の他方の主面上に設けられたカソード、アノード上に積層されたアノードセパレーター、およびカソード上に積層されたカソードセパレーターを含む、少なくとも1つの水素ポンプユニットと、積層された方向において、一方の端に位置するアノードセパレーター上に設けられたアノード端板と、積層された方向において、他方の端に位置するカソードセパレーター上に設けられたカソード端板と、少なくともカソード端板から他方の端に位置するカソードセパレーターまでの部材について、積層された方向への移動をさせないための固定部材と、カソード端板と他方の端に位置するカソードセパレーターとの間に設けられた第一空間にカソードで生成される水素を供給する第1のガス流路と、第一空間に設けられ、他方の端に位置するカソードセパレーターからの押圧をカソード端板に伝える第1の伝圧部材と、を備える。
【0024】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、伝圧部材を設けない場合に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を適切に抑制し得る。
【0025】
第1に、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードのガス圧が高圧になるときのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0026】
本態様の電気化学式水素ポンプでは、水素ポンプユニットのカソードで生成される高圧の水素を、第1のガス流路を通じてカソード端板とカソードセパレーターとの間に設けられた第一空間に供給することができる。このため、第一空間内の水素ガス圧は、水素ポンプユニットのカソード内の水素ガス圧とほぼ同等の高圧である。すると、第一空間内の水素によってカソードセパレーターに付与される荷重は、カソード内の水素ガス圧に起因するカソードセパレーターのカソード端板側への変形(撓み)を抑えるように作用する。
【0027】
ここで、仮に、カソードセパレーターがカソード端板側に撓むと、カソードセパレーターとカソードとの間で隙間が発生しやすい。そして、カソードセパレーターとカソードとの間で隙間が生じる場合、両者間の接触抵抗が増加する。
【0028】
しかしながら、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記のとおり、カソード端板とカソードセパレーターとの間に設けられた第一空間に高圧の水素ガスを供給することにより、カソードセパレーターがカソード端板側に撓みにくくなるように構成している。よって、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記の第一空間を設けない場合に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0029】
第2に、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードセパレーターにカソードの圧縮応力が作用することに起因するカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0030】
本態様の電気化学式水素ポンプでは、カソードの厚みが減る方向に弾性変形するとき、カソードの圧縮応力は、カソードセパレーターを第一空間側に押す方向に作用する。よって、カソードセパレーターからの押圧をカソード端板に伝える第1の伝圧部材を第一空間に設けない場合は、カソードセパレーターがカソード端板側に撓みやすくなる。
【0031】
ここで、仮に、カソードセパレーターがカソード端板側に撓むと、カソードセパレーターとカソードとの間で隙間が発生しやすい。そして、カソードセパレーターとカソードとの間で隙間が生じる場合、両者間の接触抵抗が増加する。
【0032】
しかしながら、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記のとおり、カソードセパレーターからの押圧をカソード端板に伝える第1の伝圧部材を第一空間に設けることにより、カソードの厚みが減る方向に弾性変形するときにカソードセパレーターがカソード端板側に撓みにくくなるように構成している。よって、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記の第1の伝圧部材を第一空間に設けない場合に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0033】
本開示の第2態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、カソード端板と他方の端に位置するカソードセパレーターとの間に設けられたカソード板部材を備え、第1の伝圧部材は、カソード端板およびカソード板部材の間において、カソード端板と別体または一体に設けられている柱状部材を含んでいてもよい。
【0034】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソード端板およびカソード板部材の間に第一空間を設ける場合、カソード端板と別体または一体に設けられた柱状部材を介して、カソード板部材からの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0035】
本開示の第3態様の電気化学式水素ポンプは、第2態様の電気化学式水素ポンプにおいて、カソード板部材と他方の端に位置するカソードセパレーターとが、固定部材に含まれるボルトで貫通されていてもよい。
【0036】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記の積層方向において他方の端に位置するカソードセパレーターの変形に対して、第一空間の面方向の位置ずれが低減される。
【0037】
本開示の第4態様の電気化学式水素ポンプは、第2態様の電気化学式水素ポンプにおいて、カソード板部材はカソード絶縁板を含み、柱状部材は、カソード端板およびカソード絶縁板の間に設けられていてもよい。
【0038】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソード端板およびカソード絶縁板の間に設けられた柱状部材を介して、カソード絶縁板からの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0039】
本開示の第5態様の電気化学式水素ポンプは、第2態様の電気化学式水素ポンプにおいて、カソード板部材はカソード給電板を含み、柱状部材は、カソード端板およびカソード給電板の間に設けられていてもよい。ここで、本開示の第6態様の電気化学式水素ポンプは、第5態様の電気化学式水素ポンプにおいて、柱状部材は絶縁部材であってもよい。
【0040】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソード端板およびカソード給電板の間に設けられた絶縁性の柱状部材を介して、カソード給電板からの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0041】
本開示の第7態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第1の伝圧部材は多孔性部材を含んでいてもよい。
【0042】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、第一空間に設けられた多孔性部材を介して、カソードセパレーターからの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0043】
また、本態様の電気化学式水素ポンプは、第1の伝圧部材として多孔性部材を用いることで、例えば、多孔性部材を第一空間のほぼ全域に設けた場合でも、第一空間におけるガス透過性を適切に確保することができる。
【0044】
本開示の第8態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第1の伝圧部材は、弾性部材を含んでいてもよい。
【0045】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、第一空間に設けられた弾性部材を介して、カソードセパレーターからの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0046】
また、本態様の電気化学式水素ポンプは、第1の伝圧部材として弾性部材を用いることで、仮に、カソードセパレーターがカソードの圧縮応力に起因して変形した場合でも、弾性部材がカソードセパレーターの変形に対して追従し得るので、カソードセパレーターからの押圧が、弾性部材を介してカソード端板に均等に伝わる。
【0047】
本開示の第9態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、固定部材は、更に、アノード端板から一方の端に位置するアノードセパレーターまでの部材について、積層された方向への移動をさせないための部材であり、アノード端板と一方の端に位置するアノードセパレーターとの間に設けられた第二空間にカソードで生成された水素を供給する第2のガス流路と、第二空間に設けられ、一方の端に位置するアノードセパレーターからの押圧をアノード端板に伝える第2の伝圧部材と、を備えてもよい。
【0048】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードのガス圧が高圧になるときの水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0049】
水素ポンプユニットのカソード内の水素ガス圧に基づいて、アノードおよびアノードセパレーターに対しても荷重が伝わる。すると、水素ポンプユニットのカソード内の水素ガス圧が高圧である場合、アノードセパレーターがこの荷重により外側に押圧されることで変形する可能性がある。このとき、仮に、カソードの厚みが増える方向の弾性変形が、アノードセパレーターの変形に追従できない場合、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間に隙間が生じる可能性がある。すると、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の接触抵抗が増加する可能性がある。
【0050】
しかしながら、本態様の電気化学式水素ポンプでは、水素ポンプユニットのカソードで生成される高圧の水素を、第2のガス流路を通じてアノード端板とアノードセパレーターとの間に設けられた第二空間に供給することができる。このため、第二空間内の水素ガス圧は、水素ポンプユニットのカソード内の水素ガス圧とほぼ同等の高圧である。すると、第二空間内の水素によってアノードセパレーターに付与される荷重は、カソード内の水素ガス圧に起因するアノードセパレーターの変形を抑えるように作用する。よって、本態様の電気化学式水素ポンプは、このような第二空間を設けない場合に比べて、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の隙間が発生しにくくなるので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0051】
また、本態様の電気化学式水素ポンプは、アノードセパレーターにカソードの圧縮応力が作用することに起因する水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0052】
カソードの厚みが減る方向に弾性変形するとき、カソードの圧縮応力は、電解質膜を介してアノードセパレーターを第二空間側に押す方向に作用する。よって、アノードセパレーターからの押圧をアノード端板に伝える第2の伝圧部材を第二空間に設けない場合は、アノードセパレーターがアノード端板側に撓みやすくなる。このとき、仮に、カソードの厚みが増える方向の弾性変形が、アノードセパレーターの変形に追従できない場合、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間に隙間が生じる可能性がある。すると、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の接触抵抗が増加する可能性がある。
【0053】
しかしながら、本態様の電気化学式水素ポンプでは、上記のとおり、アノードセパレーターからの押圧をアノード端板に伝える第2の伝圧部材を第二空間に設けることにより、カソードの厚みが減る方向に弾性変形するときにアノードセパレーターがアノード端板側に撓みにくくなるように構成している。よって、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記の第2の伝圧部材を第二空間に設けない場合に比べて、水素ポンプユニットのカソードおよび電解質膜間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0054】
本開示の第10態様の電気化学式水素ポンプは、第9態様の電気化学式水素ポンプにおいて、アノード端板と一方の端に位置するアノードセパレーターとの間に設けられたアノード板部材を備え、第2の伝圧部材は、アノード端板およびアノード板部材の間において、アノード端板と別体または一体に設けられている柱状部材を含んでいてもよい。
【0055】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、アノード端板およびアノード板部材の間に第二空間を設ける場合、アノード端板と別体または一体に設けられた柱状部材を介して、アノード板部材からの押圧をカソード端板に適切に伝えることができる。
【0056】
本開示の第11態様の電気化学式水素ポンプは、第10態様の電気化学式水素ポンプにおいて、アノード板部材と一方の端に位置するアノードセパレーターとが、固定部材に含まれるボルトで貫通されていてもよい。
【0057】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、上記の積層方向において一方の端に位置するアノードセパレーターの変形に対して、第二空間の面方向の位置ずれが低減される。
【0058】
本開示の第12態様の電気化学式水素ポンプは、第10態様の電気化学式水素ポンプにおいて、アノード板部材はアノード絶縁板を含み、柱状部材は、アノード端板およびアノード絶縁板の間に設けられていてもよい。
【0059】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、アノード端板およびアノード絶縁板の間に設けられた柱状部材を介して、アノード絶縁板からの押圧をアノード端板に適切に伝えることができる。
【0060】
本開示の第13態様の電気化学式水素ポンプは、第10態様の電気化学式水素ポンプにおいて、アノード板部材はアノード給電板を含み、柱状部材は、アノード端板およびアノード給電板の間に設けられていてもよい。ここで、本開示の第14態様の電気化学式水素ポンプは、第13態様の電気化学式水素ポンプにおいて、柱状部材は絶縁部材であってもよい。
【0061】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、アノード端板およびアノード給電板の間に設けられた絶縁性の柱状部材を介して、アノード給電板からの押圧をアノード端板に適切に伝えることができる。
【0062】
本開示の第15態様の電気化学式水素ポンプは、第9態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第2の伝圧部材は多孔性部材を含んでいてもよい。
【0063】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、第二空間に設けられた多孔性部材を介して、アノードセパレーターからの押圧をアノード端板に適切に伝えることができる。
【0064】
また、本態様の電気化学式水素ポンプは、第2の伝圧部材として多孔性部材を用いることで、例えば、多孔性部材を第二空間のほぼ全域に設けた場合でも、第二空間におけるガス透過性を適切に確保することができる。
【0065】
本開示の第16態様の電気化学式水素ポンプは、第9態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第2の伝圧部材は、弾性部材を含んでいてもよい。
【0066】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、第二空間に設けられた弾性部材を介して、アノードセパレーターからの押圧をアノード端板に適切に伝えることができる。
【0067】
また、本態様の電気化学式水素ポンプは、第2の伝圧部材として弾性部材を用いることで、仮に、アノードセパレーターがカソードの圧縮応力に起因して変形した場合でも、弾性部材がアノードセパレーターの変形に対して追従し得るので、アノードセパレーターからの押圧が、弾性部材を介してアノード端板に均等に伝わる。
【0068】
本開示の第17態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様から第16態様のいずれか一つの電気化学式水素ポンプにおいて、アノードは、アノードガス拡散層を含み、カソードは、カソードガス拡散層を含み、アノードガス拡散層の弾性率は、カソードガス拡散層の弾性率よりも高くてもよい。
【0069】
本開示の第18態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第1の伝圧部材は、カソードに含まれるカソードガス拡散層と同等の弾性率を備えてもよい。
【0070】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードガス拡散層の圧縮応力に起因するカソードセパレーターの変形が、カソードガス拡散層と同等の弾性率を備える第1の伝圧部材の厚みが減る方向の弾性変形で生じる反力により抑制される。つまり、カソードガス拡散層の弾性変形量と第1の伝圧部材の弾性変形量とがほぼ同じになるので、電気化学式水素ポンプの水素昇圧動作の進行に伴い、カソードガス拡散層が、圧縮後の厚みから圧縮前の厚みに戻る方向に弾性変形する際にも、上記の反力を適切に維持することができる。
【0071】
本開示の第19態様の電気化学式水素ポンプは、第9態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第2の伝圧部材は、カソードに含まれるカソードガス拡散層と同等の弾性率を備えてもよい。
【0072】
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードガス拡散層の圧縮応力に起因するアノードセパレーターの変形が、カソードガス拡散層と同等の弾性率を備える第2の伝圧部材の厚みが減る方向の弾性変形で生じる反力により抑制される。つまり、カソードガス拡散層の弾性変形量と第2の伝圧部材の弾性変形量とがほぼ同じになるので、電気化学式水素ポンプの水素昇圧動作の進行に伴い、カソードガス拡散層が、圧縮後の厚みから圧縮前の厚みに戻る方向に弾性変形する際にも、上記の反力を適切に維持することができる。
【0073】
本開示の第20態様の電気化学式水素ポンプは、第1態様の電気化学式水素ポンプにおいて、固定部材が、少なくとも1つの水素ポンプユニットをアノード端板およびカソード端板で挟んだ状態で締結する締結器であってもよい。
【0074】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、材料、構成要素、および、構成要素の配置位置および接続形態などは、あくまで一例であり、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、上記の各態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
【0075】
(第1実施形態)
[装置構成]
図2Aおよび
図3Aは、第1実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図2Bは、
図2AのB部の拡大図である。
図3Bは、
図3AのB部の拡大図である。
【0076】
なお、
図2Aには、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、カソードガス導出マニホールド50の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。また、
図3Aには、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、アノードガス導入マニホールド27の中心と、アノードガス導出マニホールド30の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。
【0077】
図2Aおよび
図3Bに示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、少なくとも一つの水素ポンプユニット100Aを備える。
【0078】
なお、
図2Aおよび
図3Bの電気化学式水素ポンプ100には、3段の水素ポンプユニット100Aが積層されているが、水素ポンプユニット100Aの段数はこれに限定されない。つまり、水素ポンプユニット100Aの段数は、電気化学式水素ポンプ100が昇圧する水素量などの運転条件をもとに適宜の数に設定することができる。
【0079】
水素ポンプユニット100Aは、電解質膜11と、アノードANと、カソードCAと、カソードセパレーター16と、アノードセパレーター17と、絶縁体21と、を備える。
【0080】
アノードANは、電解質膜11の一方の主面に設けられている。アノードANは、アノード触媒層13と、アノード触媒層13上に設けられたアノードガス拡散層15とを含む電極である。なお、平面視において、アノード触媒層13の周囲を囲むように環状のシール部材43が設けられ、アノード触媒層13が、シール部材43で適切にシールされている。
【0081】
カソードCAは、電解質膜11の他方の主面に設けられている。カソードCAは、カソード触媒層12と、カソード触媒層12上に設けられたカソードガス拡散層14とを含む電極である。なお、平面視において、カソード触媒層12の周囲を囲むように環状のシール部材42が設けられ、カソード触媒層12が、シール部材42で適切にシールされている。
【0082】
以上により、電解質膜11は、アノード触媒層13およびカソード触媒層12のそれぞれと接触するようにして、アノードANとカソードCAとによって挟持されている。なお、カソードCA、電解質膜11およびアノードANの積層体を膜-電極接合体(以下、MEA:Membrane Electrode Assembly)という。
【0083】
電解質膜11は、プロトン伝導性を備える。電解質膜11は、プロトン伝導性を備えていれば、どのような構成であってもよい。例えば、電解質膜11として、フッ素系高分子電解質膜、炭化水素系高分子電解質膜を挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、電解質膜11として、Nafion(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(登録商標、旭化成株式会社製)などを用いることができる。
【0084】
アノード触媒層13は、電解質膜11の一方の主面に設けられている。アノード触媒層13は、触媒金属として、例えば、白金を含むが、これに限定されない。
【0085】
カソード触媒層12は、電解質膜11の他方の主面に設けられている。カソード触媒層12は、触媒金属として、例えば、白金を含むが、これに限定されない。
【0086】
カソード触媒層12およびアノード触媒層13の触媒担体としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉体、導電性の酸化物粉体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
なお、カソード触媒層12およびアノード触媒層13では、触媒金属の微粒子が、触媒担体に高分散に担持されている。また、これらのカソード触媒層12およびアノード触媒層13中には、電極反応場を大きくするために、水素イオン伝導性のイオノマー成分を加えることが一般的である。
【0088】
アノードガス拡散層15は多孔性材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。また、アノードガス拡散層15は、電気化学式水素ポンプ100の動作時にカソードCAおよびアノードAN間の差圧で発生する構成部材の変位、変形を抑制可能な高剛性であることが望ましい。つまり、アノードガス拡散層15の弾性率は、カソードガス拡散層14の弾性率よりも高い。
【0089】
アノードガス拡散層15の基材として、例えば、チタン、チタン合金、ステンレススチールなどを素材とする金属繊維の焼結体、これらを素材とする金属粉体の焼結体、エキスパンドメタル、金属メッシュ、パンチングメタルなどを用いることができる。
【0090】
カソードガス拡散層14は多孔性材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。また、カソードガス拡散層14は、電気化学式水素ポンプ100の動作時にカソードおよびアノード間の差圧で発生する構成部材の変位、変形に適切に追従するような弾性を備える方が望ましい。つまり、カソードガス拡散層14の弾性率は、アノードガス拡散層115の弾性率よりも低い。
【0091】
カソードガス拡散層14の基材として、例えば、チタン、チタン合金、ステンレススチールなどを素材とする金属繊維の焼結体、これらを素材とする金属粉末の焼結体などを用いることができる。また、カソードガス拡散層14の基材に、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの多孔性の炭素材料を用いることもできる。さらに、カーボンブラックとPTFEなどのエラストマーを混錬、圧延した多孔性のシート材料などを用いることもできる。
【0092】
アノードセパレーター17は、アノードAN上に積層された部材である。また、カソードセパレーター16は、カソードCA上に積層された部材である。そして、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17のそれぞれの中央部には、凹部が設けられている。これらの凹部のそれぞれに、カソードガス拡散層14およびアノードガス拡散層15がそれぞれ収容されている。
【0093】
このようにして、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17で上記のMEAを挟むことにより、水素ポンプユニット100Aが形成されている。
【0094】
カソードガス拡散層14と接触するカソードセパレーター16の主面には、平面視において、例えば、複数のU字状の折り返す部分と複数の直線部分とを含むサーペンタイン状のカソードガス流路32が設けられている。そして、カソードガス流路32の直線部分は、
図2Aの紙面に垂直な方向に延伸している。但し、このようなカソードガス流路32は、例示であって、本例に限定されない。例えば、カソードガス流路は、複数の直線状の流路により構成されていてもよい。
【0095】
アノードガス拡散層15と接触するアノードセパレーター17の主面には、平面視において、例えば、複数のU字状の折り返す部分と複数の直線部分とを含むサーペンタイン状のアノードガス流路33が設けられている。そして、アノードガス流路33の直線部分は、
図3Aの紙面に垂直な方向に延伸している。但し、このようなアノードガス流路33は、例示であって、本例に限定されない。例えば、アノードガス流路は、複数の直線状の流路により構成されていてもよい。
【0096】
また、導電性のカソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間には、MEAの周囲を囲むように設けられた環状かつ平板状の絶縁体21が挟み込まれている。これにより、カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の短絡が防止されている。
【0097】
図2Aおよび
図3Aに示すように、電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aと、カソード端板24Cと、を備える。
【0098】
アノード端板24Aは、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された方向において、電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17上に設けられた部材である。電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17とは、換言すると、アノード端板24Aの最も近くに位置するアノードセパレーター17である。また、カソード端板24Cは、水素ポンプユニット100Aの各部材の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16上に設けられた部材である。電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16とは、換言すると、カソード端板24Cの最も近くに位置するカソードセパレーター16である。
【0099】
また、
図2Aおよび
図3Aに示すように、電気化学式水素ポンプ100は、少なくともカソード端板24Cから電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16までの部材について、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された方向への移動をさせないための固定部材を備える。
ここで、上記水素ポンプユニット100Aの各部材とは、電解質膜11、アノードAN、カソードCA、アノードセパレーター17、およびカソードセパレーター16を意味する。また、カソード端板24Cから他方の端に位置するカソードセパレーター16までの部材とは、カソード端板24C、他方の端に位置するカソードセパレーター16およびカソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に積層された部材を意味する。本実施の形態では、具体的には、カソード端板24C、カソード絶縁板23C、カソード給電板22Cおよび他方の端に位置するカソードセパレーター16を意味する。
また、上記の固定部材は、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された方向に少なくともカソード端板24Cから電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16までの部材を固定することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、固定部材は、
図2Aおよび
図3Aに示す如く、少なくとも1つの水素ポンプユニット100Aをアノード端板24Aおよびカソード端板24Cで挟んだ状態で締結する締結器25であってもよい。締結器25として、ボルトおよび皿ばね付きナットなどを挙げることができる。
【0100】
このとき、締結器25のボルトは、アノード端板24Aおよびカソード端板24Cのみを貫通するように構成してもよい。
【0101】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、締結器25のボルトは、アノード端板24Aおよびカソード端板24C以外にも、水素ポンプユニット100Aの各部材、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられたカソード板部材80C、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられたアノード板部材80Aをも貫通している。
【0102】
そして、上記の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16の端面、および、上記の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17の端面をそれぞれ、カソード板部材80Cおよびアノード板部材80Aのそれぞれを介して、カソード端板24Cおよびアノード端板24Aのそれぞれで挟むようにして、締結器25により水素ポンプユニット100Aに所望の締結圧が付与されている。
つまり、本実施の形態において、固定部材は、カソード端板24Cから電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16までの部材に加え、更に、アノード端板24Aから電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17までの部材についても、水素ポンプユニット100Aの各部材が積層された方向への移動をさせないよう構成されている。なお、アノード端板24Aから電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17までの部材とは、アノード端板24A、一方の端に位置するアノードセパレーター17およびアノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に積層された部材を意味する。本実施の形態では、具体的には、アノード端板24A、アノード絶縁板23A、アノード給電板22Aおよび一方の端に位置するアノードセパレーター17を意味する。
【0103】
なお、カソード板部材80Cは、例えば、カソード給電板22Cと、カソード絶縁板23Cとを含む部材である。アノード板部材80Aは、例えば、アノード給電板22Aと、アノード絶縁板23Aとを含む部材である。
【0104】
以上により、3段の水素ポンプユニット100Aが、上記の積層方向において、カソード板部材80Cおよびカソード板部材80Cに最も近接するカソードセパレーター16と、アノード板部材80Aおよびアノード板部材80Aに最も近接するアノードセパレーター17とのそれぞれが締結器25のボルトで貫通された状態で、締結器25の締結圧により積層状態で適切に保持されている。よって、カソード板部材80Cとアノード板部材80Aが締結器25に含まれるボルトで貫通されているので、これらの各部材の面内方向における移動を適切に抑えることができる。これにより、上記の積層方向において他方の端に位置するカソードセパレーター16の変形に対して、下記で説明する第一空間60の面方向の位置ずれが低減される。また、上記の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17の変形に対して、下記で説明する第二空間65の面方向の位置ずれが低減される。
【0105】
なお、ここでは、詳細な説明および図示を省略するが、締結器25に代えて、電気化学式水素ポンプの各部材の側面に樹脂製のシール材を設けることで、電気化学式水素ポンプを固定してもよい。
【0106】
図2Aおよび
図3Aに示すように、電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間60にカソードCAで生成される水素を供給する第1のガス流路を備える。
【0107】
第一空間60は、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられた空間であれば、どのような構成であってもよい。
図2Aおよび
図3Aに示す例では、第一空間60は、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第一空間60は、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部とカソード絶縁板23Cとによって区画された空間である。なお、第一空間の他の例については変形例で説明する。
【0108】
そして、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、
図2Aおよび
図3Aの矢印の如く、第1の伝圧部材が、第一空間60に設けられている。第1の伝圧部材は、他方の端に位置するカソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝えることができれば、どのような構成であってもよい。なお、第1の伝圧部材の具体的な構成については実施例で説明する。
【0109】
第1のガス流路は、第一空間60にカソードCAで生成される水素を供給できれば、どのような構成であってもよい。例えば、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、
図2Aに示す如く、第1のガス流路は、筒状のカソードガス導出マニホールド50と、カソードガス導出マニホールド50と第一空間60とを連通するカソードガス供給経路51とを含む流路である。
【0110】
また、カソードガス導出マニホールド50は、水素ポンプユニット100Aの各部材に設けられた貫通孔およびアノード端板24Aおよびカソード端板24Cに設けられた非貫通孔の連なりによって構成されている。
【0111】
また、カソードガス供給経路51は、カソード端板24Cの凹部内(第一空間60)とカソードガス導出マニホールド50の他方の端部とを連通するカソード端板24Cの主面に設けられた溝によって構成されている。
【0112】
ここで、
図2Aに示す如く、カソード端板24Cには、カソードガス導出経路26が設けられている。カソードガス導出経路26は、カソードCAから排出される水素(H
2)が流通する配管で構成されていてもよい。そして、カソードガス導出経路26は、上記の第一空間60と連通している。これにより、カソードガス導出経路26は、第一空間60およびカソードガス供給経路51を介してカソードガス導出マニホールド50に連通している。
【0113】
また、カソードガス導出マニホールド50は、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのカソードガス流路32の一方の端部と、カソードガス通過経路34のそれぞれを介して連通している。つまり、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのカソードガス拡散層14から流出するカソードガスが流れるカソードガス流路32は連通されている。これにより、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのカソードガス流路32およびカソードガス通過経路34を通過した水素が、カソードガス導出マニホールド50で合流される。そして、合流された水素が、カソードガス供給経路51および第一空間60をこの順番に通過してから、カソードガス導出経路26に導かれる。このようにして、第一空間60内を高圧の水素が流通する。
【0114】
カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間、カソードセパレーター16およびカソード給電板22Cの間、アノードセパレーター17およびアノード給電板22Aの間には、平面視において、カソードガス導出マニホールド50を囲むように、Oリングなどの環状のシール部材40が設けられ、カソードガス導出マニホールド50が、このシール部材40で適切にシールされている。
【0115】
図3Aに示す如く、アノード端板24Aには、アノードガス導入経路29が設けられている。アノードガス導入経路29は、アノードANに供給される水素(H
2)が流通する配管で構成されていてもよい。そして、アノードガス導入経路29は、筒状のアノードガス導入マニホールド27に連通している。なお、アノードガス導入マニホールド27は、水素ポンプユニット100Aの各部材およびアノード端板24Aに設けられた貫通孔の連なりによって構成されている。
【0116】
また、アノードガス導入マニホールド27は、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33の一方の端部と、第1アノードガス通過経路35のそれぞれを介して連通している。これにより、アノードガス導入経路29からアノードガス導入マニホールド27に供給された水素は、水素ポンプユニット100Aのそれぞれの第1アノードガス通過経路35を通じて、水素ポンプユニット100Aのそれぞれに分配される。そして、分配された水素がアノードガス流路33を通過する間に、アノードガス拡散層15からアノード触媒層13に水素が供給される。
【0117】
また、
図3Aに示す如く、アノード端板24Aには、アノードガス導出経路31が設けられている。アノードガス導出経路31は、アノードANから排出される水素(H
2)が流通する配管で構成されていてもよい。そして、アノードガス導出経路31は、筒状のアノードガス導出マニホールド30に連通している。なお、アノードガス導出マニホールド30は、水素ポンプユニット100Aの各部材およびアノード端板24Aに設けられた貫通孔の連なりによって構成されている。
【0118】
また、アノードガス導出マニホールド30が、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33の他方の端部と、第2アノードガス通過経路36のそれぞれを介して連通している。これにより、水素ポンプユニット100Aのそれぞれのアノードガス流路33を通過した水素が、第2アノードガス通過経路36のそれぞれを通じてアノードガス導出マニホールド30に供給され、ここで合流される。そして、合流された水素が、アノードガス導出経路31に導かれる。
【0119】
カソードセパレーター16およびアノードセパレーター17の間、カソードセパレーター16およびカソード給電板22Cの間、アノードセパレーター17およびアノード給電板22Aの間には、平面視において、アノードガス導入マニホールド27およびアノードガス導出マニホールド30を囲むようにOリングなどの環状のシール部材40が設けられ、アノードガス導入マニホールド27およびアノードガス導出マニホールド30が、シール部材40で適切にシールされている。
【0120】
図2Aおよび
図3Aに示すように、電気化学式水素ポンプ100は、電圧印加器102を備える。
【0121】
電圧印加器102は、アノードANおよびカソードCA間に電圧を印加する装置である。具体的には、電圧印加器102の高電位が、導電性のアノードANに印加され、電圧印加器102の低電位が、導電性のカソードCAに印加されている。電圧印加器102は、アノードANおよびカソードCA間に電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。例えば、電圧印加器102は、アノードANおよびカソードCA間に印加する電圧を調整する装置であってもよい。このとき、電圧印加器102は、バッテリ、太陽電池、燃料電池などの直流電源と接続されているときは、DC/DCコンバータを備え、商用電源などの交流電源と接続されているときは、AC/DCコンバータを備える。
【0122】
また、電圧印加器102は、例えば、水素ポンプユニット100Aに供給する電力が所定の設定値となるように、アノードANおよびカソードCA間に印加される電圧、アノードANおよびカソードCA間に流れる電流が調整される電力型電源であってもよい。
【0123】
なお、
図2Aおよび
図3Aに示す例では、電圧印加器102の低電位側の端子が、カソード給電板22Cに接続され、電圧印加器102の高電位側の端子が、アノード給電板22Aに接続されている。カソード給電板22Cは、上記の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の他方の端に位置するカソードセパレーター16と電気的に接触しており、アノード給電板22Aは、上記の積層方向において、電気化学式水素ポンプ100の一方の端に位置するアノードセパレーター17と電気的に接触している。
【0124】
なお、図示を省略するが、上記の電気化学式水素ポンプ100を備える水素供給システムを構築することもできる。この場合、水素供給システムの水素供給動作において必要となる機器は適宜、設けられる。
【0125】
例えば、水素供給システムには、アノードガス導出経路31を通じてアノードANから排出される高加湿状態の水素(H2)と、アノードガス導入経路29を通して外部の水素供給源から供給される低加湿状態の水素(H2)とが混合された混合ガスの露点を調整する露点調整器(例えば、加湿器)が設けられていてもよい。このとき、外部の水素供給源の水素は、例えば、水電解装置で生成されてもよい。
【0126】
また、水素供給システムには、例えば、電気化学式水素ポンプ100の温度を検出する温度検出器、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから排出された水素を一時的に貯蔵する水素貯蔵器、水素貯蔵器内の水素ガス圧を検出する圧力検出器などが設けられていてもよい。
【0127】
なお、上記の電気化学式水素ポンプ100の構成、および、水素供給システムにおける図示しない様々な機器は例示であって、本例に限定されない。
【0128】
例えば、アノードガス導出マニホールド30およびアノードガス導出経路31を設けずに、アノードガス導入マニホールド27を通してアノードANに供給する水素を全てカソードCAで昇圧するデッドエンド構造が採用されてもよい。また、例えば、アノードガス流路33およびカソードガス流路32には、上記のとおり、水素(H2)が流れるが、水素濃度は、100%でなくてもよい。水素が含まれる水素含有ガスが流れればよい。
【0129】
[動作]
以下、電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0130】
以下の動作は、例えば、図示しない制御器の演算回路が、制御器の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。
【0131】
まず、電気化学式水素ポンプ100のアノードANに低圧の水素が供給されるとともに、電圧印加器102の電圧が電気化学式水素ポンプ100に給電される。
【0132】
すると、アノードANのアノード触媒層13において、酸化反応で水素分子が水素イオン(プロトン)と電子とに分離する(式(1))。プロトンは電解質膜11内を伝導してカソード触媒層12に移動する。電子は電圧印加器102を通じてカソード触媒層12に移動する。
【0133】
そして、カソード触媒層12において、還元反応で水素分子が再び生成される(式(2))。なお、プロトンが電解質膜11中を伝導する際に、所定水量の水が、電気浸透水としてアノードANからカソードCAにプロトンと同伴して移動することが知られている。
【0134】
このとき、図示しない流量調整器を用いて、水素導出経路の圧損を増加させることにより、カソードCAで生成された水素(H
2)を昇圧することができる。すると、カソード端板24Cとカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間60には、カソードガス導出マニホールド50およびカソードガス供給経路51を通じてカソードCAで生成される高圧の水素が供給される。なお、水素導出経路として、例えば、
図2Aのカソードガス導出経路26を挙げることができる。また、流量調整器として、例えば、水素導出経路に設けられた背圧弁、調整弁などを挙げることができる。
【0135】
アノード:H2(低圧)→2H++2e- ・・・(1)
カソード:2H++2e-→H2(高圧) ・・・(2)
このようにして、電気化学式水素ポンプ100では、電圧印加器102で電圧を印加することで、アノードANに供給される水素がカソードCAにおいて昇圧される。これにより、電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作が行われ、カソードCAで昇圧された水素は、例えば、図示しない水素貯蔵器に一時的に貯蔵される。また、水素貯蔵器で貯蔵された水素は、適時に、水素需要体に供給される。なお、水素需要体として、例えば、水素を用いて発電する燃料電池などを挙げることができる。
【0136】
ここで、以上の電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作では、カソードCAのガス圧が高圧になることで、電解質膜11、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層15が押圧される。すると、この押圧によって、電解質膜11、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層15はそれぞれ圧縮される。
【0137】
このとき、仮に、カソード触媒層12とカソードガス拡散層14との間の密着性が低いと、両者間で隙間が生じやすい。そして、カソード触媒層12とカソードガス拡散層14との間で隙間が生じる場合、両者間の接触抵抗が増加する。すると、電圧印加器102で印加する電圧が増加することにより、電気化学式水素ポンプ100の運転効率を低下させる恐れがある。
【0138】
そこで、カソードガス拡散層14は、締結器25による水素ポンプユニット100Aの締結前は、カソードセパレーター16の凹部からその厚み方向に、所望のはみ出し量分、はみ出すように構成されている。また、カソードガス拡散層14は、水素ポンプユニット100Aの締結の際には、締結器25の締結力によって、上記のはみ出し量分だけ圧縮される。
【0139】
このようにして、電気化学式水素ポンプ100の動作時に、電解質膜11、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層15のそれぞれが圧縮変形しても、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、カソードガス拡散層14は、締結器25による圧縮後の厚みから圧縮前の元の厚みに戻る方向に弾性変形することにより、カソード触媒層12とカソードガス拡散層14との間の接触を適切に維持することができる。
【0140】
また、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、従来に比べて、水素ポンプユニット100Aのカソードセパレーター16およびカソードCA間の接触抵抗の増加を適切に抑制し得る。
【0141】
第1に、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、カソードCAのガス圧が高圧になるときのカソードセパレーター16およびカソードガス拡散層14間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0142】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、水素ポンプユニット100AのカソードCAで生成される高圧の水素を、カソードガス導出マニホールド50およびカソードガス供給経路51を通じてカソード端板24Cとカソード絶縁板23Cとの間に設けられた第一空間60に供給することができる。このため、第一空間60内の水素ガス圧は、水素ポンプユニット100AのカソードCA内の水素ガス圧とほぼ同等の高圧である。すると、第一空間60内の水素によってカソードセパレーター16に付与される荷重は、カソードCA内の水素ガス圧に起因するカソードセパレーター16のカソード端板24C側への変形(撓み)を抑えるように作用する。
【0143】
ここで、仮に、カソードセパレーター16がカソード端板24C側に撓むと、カソードセパレーター16とカソードガス拡散層14との間で隙間が発生しやすい。そして、カソードセパレーター16とカソードガス拡散層14との間で隙間が生じる場合、両者間の接触抵抗が増加する。
【0144】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記のとおり、カソード端板24Cとカソード絶縁板23Cとの間に設けられた第一空間60に高圧の水素ガスを供給することにより、カソードセパレーター16がカソード端板24C側に撓みにくくなるように構成している。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の第一空間60を設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100Aのカソードセパレーター16およびカソードガス拡散層14間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0145】
第2に、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、カソードセパレーター16にカソードガス拡散層14の圧縮応力が作用することに起因するカソードセパレーター16およびカソードガス拡散層14間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0146】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、カソードガス拡散層14の厚みが減る方向に弾性変形するとき、カソードガス拡散層14の圧縮応力は、カソードセパレーター16を第一空間60側に押す方向に作用する。よって、カソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝える第1の伝圧部材を第一空間60に設けない場合は、カソードセパレーター16がカソード端板24C側に撓みやすくなる。
【0147】
ここで、仮に、カソードセパレーター16がカソード端板24C側に撓むと、カソードセパレーター16とカソードガス拡散層14との間で隙間が発生しやすい。そして、カソードセパレーター16とカソードガス拡散層14との間で隙間が生じる場合、両者間の接触抵抗が増加する。
【0148】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記のとおり、カソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝える第1の伝圧部材を第一空間60に設けることにより、カソードガス拡散層14の厚みが減る方向に弾性変形するときにカソードセパレーター16がカソード端板24C側に撓みにくくなるように構成している。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の第1の伝圧部材を第一空間60に設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100Aのカソードセパレーター16およびカソードガス拡散層14間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0149】
なお、
図2Aおよび
図3Aに示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、第一空間60が、カソードCAの主面と平行に設けられている。
【0150】
これにより、第一空間60内の水素ガス圧に基づいて、カソードセパレーター16に伝わる荷重をカソードセパレーター16の面内で均等に与えることができる。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、第一空間60をカソードCAの主面と平行に設けない場合に比べて、第一空間60内の水素によってカソードセパレーター16に付与される荷重が、カソードセパレーター16の変形(撓み)を抑えるように効果的に作用する。
【0151】
また、
図2Aおよび
図3Aに示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、カソードセパレーター16の主面と平行な方向における第一空間60の開口面積が、カソードCAの主面の面積以上である。但し、このような第一空間60の開口面積は、カソードセパレーター16の主面の面積以下である。
【0152】
仮に、カソードセパレーター16の主面と平行な方向における第一空間60の開口面積が、カソードCAの主面の面積未満の場合、第一空間60で覆われていないカソードCAに対応するカソードセパレーター16の部分では、カソードCA内の水素ガス圧に起因する変形が起きる可能性がある。
【0153】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の第一空間60の開口面積をカソードCAの主面の面積以上に設定することで、カソードCAの主面全域を第一空間60で覆うことができる。このため、第一空間60内の水素ガス圧に基づいて、カソードCAに対向するカソードセパレーター16の全域に荷重が伝わるので、上記の可能性を低減することができる。
【0154】
(実施例)
以下、第1の伝圧部材の具体的な構成について、図面を参照しながら説明する。
【0155】
<第1実施例>
図4Aは、第1実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図4Aには、電気化学式水素ポンプ100の第一空間60内の第1の伝圧部材が示されている。
【0156】
図4Aに示す例では、第1の伝圧部材は、カソード端板24Cおよびカソード板部材80Cの間において、カソード端板24Cと一体に設けられている柱状部材70Cを含んでいる。本例では、柱状部材70Cは、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられている。つまり、カソード端板24Cと一体に設けられている柱状部材70Cは、第一空間60内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材70Cの端部が、カソード絶縁板23Cに接触している。なお、柱状部材70Cの横断面の形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。
【0157】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられた柱状部材70Cを介して、カソード絶縁板23Cからの押圧をカソード端板24Cに適切に伝えることができる。また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材70Cの間に存在する空隙を介して、第一空間60に水素(H2)を流通させることができる。
【0158】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0159】
<第2実施例>
図4Bは、第1実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図4Bには、電気化学式水素ポンプ100の第一空間60内の第1の伝圧部材が示されている。
【0160】
図4Bに示す例では、第1の伝圧部材は、カソード端板24Cおよびカソード板部材80Cの間において、カソード端板24Cと別体に設けられている柱状部材71Cを含んでいる。本例では、柱状部材71Cは、カソード端板24Cおよびカソード給電板22Cの間に設けられている。つまり、柱状部材71Cは、第一空間60内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材71Cの一方の端部が、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部の底面に接触し、他方の端部が、カソード給電板22Cに接触している。但し、本例の場合は、柱状部材71Cが、カソード絶縁板23Cの中央部に設けられた開口部を介してカソード端板24Cとカソード給電板22Cとに接触するので、柱状部材71Cは絶縁部材である。これにより、カソード端板24Cおよびカソード給電板22Cの短絡が防止されている。なお、柱状部材71Cの横断面の形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。
【0161】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cおよびカソード給電板22Cの間に設けられた絶縁性の柱状部材71Cを介して、カソード給電板22Cからの押圧をカソード端板24Cに適切に伝えることができる。
【0162】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材71Cの間に存在する空隙を介して、第一空間60に水素(H2)を流通させることができる。
【0163】
さらに、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、柱状部材71Cとして弾性部材を用いる場合は、仮に、カソード給電板22Cがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、柱状部材71Cがカソード給電板22Cの変形に対して伸縮し得るので、カソード給電板22Cからの押圧が、柱状部材71Cを介してカソード端板24Cに均等に伝わる。
【0164】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0165】
<第3実施例>
図4Cは、第1実施形態の第3実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図4Cには、電気化学式水素ポンプ100の第一空間60内の第1の伝圧部材が示されている。
【0166】
図4Cに示す例では、第1の伝圧部材は、カソード端板24Cおよびカソード板部材80Cの間において、カソード端板24Cと別体に設けられている柱状部材72Cを含んでいる。本例では、柱状部材72Cは、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられている。つまり、柱状部材72Cは、第一空間60内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材72Cの一方の端部が、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部の底面に接触し、他方の端部が、カソード絶縁板23Cに接触している。
【0167】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられた柱状部材72Cを介して、カソード絶縁板23Cからの押圧をカソード端板24Cに適切に伝えることができる。
【0168】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材72Cの間に存在する空隙を介して、第一空間60に水素(H2)を流通させることができる。
【0169】
さらに、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、柱状部材72Cとして弾性部材を用いる場合は、仮に、カソード絶縁板23Cがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、柱状部材72Cがカソード絶縁板23Cの変形に対して伸縮し得るので、カソード絶縁板23Cからの押圧が、柱状部材72Cを介してカソード端板24Cに均等に伝わる。
【0170】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0171】
<第4実施例>
図4Dは、第1実施形態の第4実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図4Dには、電気化学式水素ポンプ100の第一空間60内の第1の伝圧部材が示されている。
【0172】
図4Dに示す例では、第1の伝圧部材は、多孔性部材73Cを含んでいる。第1の伝圧部材は、多孔性部材73Cを含むものであれば、どのような構成であってもよい。
【0173】
例えば、
図4Dに示す如く、平板状の多孔性部材73Cが、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部(第一空間60)内のほぼ全域に設けられており、多孔性部材73Cの一方の主面とこの凹部の底面とが接触し、多孔性部材73Cの他方の主面とカソード絶縁板23Cの主面とが接触している。
【0174】
なお、多孔性部材73Cの基材として、例えば、アノードガス拡散層15の基材などを挙げることができる。つまり、この場合、第1の伝圧部材は、アノードANに含まれるアノードガス拡散層15と同等の高剛性を備える。第一の伝圧部材の剛性が高いことで、カソード板部材80Cからの押圧で第一の伝圧部材が変位するのが抑制でき、ひいては、第一空間60へのカソード板部材80Cの変位を抑制することができる。
【0175】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられた多孔性部材73Cを介して、カソード絶縁板23Cからの押圧をカソード端板24Cに適切に伝えることができる。特に、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、多孔性部材73Cの主面のほぼ全面を介して、カソード絶縁板23Cからの押圧がカソード端板24Cに伝わるので、カソード絶縁板23Cのカソード端板24C側への撓みを効果的に抑制することができる。これにより、カソードガス拡散層14がカソード端板24C側にのびることを抑止することができる。
【0176】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第1の伝圧部材として多孔性部材73Cを用いることで、
図4Dに示す如く、多孔性部材73Cを第一空間60のほぼ全域に設けた場合でも、第一空間60におけるガス透過性を適切に確保することができる。
【0177】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0178】
<第5実施例>
図4Eは、第1実施形態の第5実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図4Eには、電気化学式水素ポンプ100の第一空間60内の第1の伝圧部材が示されている。
【0179】
図4Eに示す例では、第1の伝圧部材は、弾性部材74Cを含んでいる。第1の伝圧部材は、弾性部材74Cを含むものであれば、どのような構成であってもよい。
【0180】
例えば、
図4Eに示す如く、平板状の弾性部材74Cが、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部(第一空間60)内のほぼ全域に設けられており、弾性部材74Cの一方の主面とこの凹部の底面とが接触し、弾性部材74Cの他方の主面とカソード絶縁板23Cの主面とが接触している。
【0181】
なお、弾性部材74Cの基材として、例えば、カソードガス拡散層14の基材などを挙げることができる。つまり、この場合、第1の伝圧部材は、カソードCAに含まれるカソードガス拡散層14と同等の弾性率を備える。
【0182】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソード端板24Cおよびカソード絶縁板23Cの間に設けられた弾性部材74Cを介して、カソード絶縁板23Cからの押圧をカソード端板24Cに適切に伝えることができる。特に、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、弾性部材74Cの主面のほぼ全面を介して、カソード絶縁板23Cからの押圧がカソード端板24Cに伝わるので、カソード絶縁板23Cのカソード端板24C側への撓みを効果的に抑制することができる。
【0183】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第1の伝圧部材として弾性部材74Cを用いることで、仮に、カソード絶縁板23Cがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、弾性部材74Cがカソード絶縁板23Cの変形に対して追従し得るので、カソード絶縁板23Cからの押圧が、弾性部材74Cを介してカソード端板24Cに均等に伝わる。
【0184】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソードガス拡散層14の圧縮応力に起因するカソード絶縁板23Cの変形が、カソードガス拡散層14と同等の弾性率を備える弾性部材74Cの厚みが減る方向の弾性変形で生じる反力により抑制される。つまり、カソードガス拡散層14の弾性変形量と弾性部材74Cの弾性変形量とがほぼ同じになるので、電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作の進行に伴い、カソードガス拡散層14が、圧縮後の厚みから圧縮前の厚みに戻る方向に弾性変形する際にも、上記の反力を適切に維持することができる。
【0185】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0186】
(変形例)
第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、第一空間60は、カソード端板24Cの中央部に設けられた凹部によって構成されている。しかし、このような第一空間60は、例示であって本例に限定されない。以下、第一空間の他の例について、図面を参照しながら説明する。
【0187】
<第1変形例>
図5Aは、第1実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図5Aには、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間61が示されている。
【0188】
図5Aに示す例では、第一空間61は、カソードセパレーター16とカソード給電板22Cとが接触する部分において、カソードセパレーター16の中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第一空間61は、カソードセパレーター16の中央部に設けられた凹部とカソード給電板22Cとによって区画された空間である。
【0189】
なお、第一空間61内には、カソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝える第1の伝圧部材が設けられている。この第1の伝圧部材の具体例は、第1実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0190】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0191】
<第2変形例>
図5Bは、第1実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図5Bには、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間62が示されている。
【0192】
図5Bに示す例では、第一空間62は、カソード給電板22Cの中央部に設けられた凹部とカソード絶縁板23Cの中央部に設けられた開口部とによって構成されている。つまり、第一空間62は、カソード給電板22Cの中央部に設けられた凹部とカソード絶縁板23Cの中央部に設けられた開口部とカソード端板24Cとによって区画された空間である。
【0193】
なお、第一空間62内には、カソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝える第1の伝圧部材が設けられている。この第1の伝圧部材の具体例は、第1実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。但し、本例の場合は、第1の伝圧部材が、カソード絶縁板23Cの中央部に設けられた開口部を介してカソード端板24Cとカソード給電板22Cとに接触するので、第1の伝圧部材は絶縁部材である。これにより、カソード端板24Cおよびカソード給電板22Cの短絡が防止されている。
【0194】
また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0195】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0196】
<第3変形例>
図5Cは、第1実施形態の第3変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図5Cには、カソード端板24Cと他方の端に位置するカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間63が示されている。
【0197】
図5Cに示す例では、第一空間63は、カソード給電板22Cの中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第一空間63は、カソード給電板22Cの中央部に設けられた凹部とカソード絶縁板23Cとによって区画された空間である。
【0198】
なお、第一空間63内には、カソードセパレーター16からの押圧をカソード端板24Cに伝える第1の伝圧部材が設けられている。この第1の伝圧部材の具体例は、第1実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0199】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態および第1実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0200】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【0201】
図6には、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、カソードガス導出マニホールド50の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。
【0202】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明するカソードガス導出経路26Aの配置位置以外、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0203】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、カソードガス導出経路26Aを、
図2Aのカソードガス導出経路26の如く、第一空間60内から延伸するように引き回さずに、カソードガス導出マニホールド50から延伸するように引き回している。
【0204】
なお、この場合、カソードガス導出マニホールド50は、水素ポンプユニット100Aの各部材およびカソード端板24Cに設けられた貫通孔、および、アノード端板24Aに設けられた非貫通孔の連なりによって構成されている。
【0205】
以上により、本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、水素ポンプユニット100AのカソードCAで生成される高圧の水素を、カソードガス導出マニホールド50およびカソードガス供給経路51を通じてカソード端板24Cとカソードセパレーター16との間に設けられた第一空間60に供給することができる。つまり、第一空間60内を高圧の水素が滞留する。
【0206】
なお、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0207】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例および第1実施形態の第1変形例-第3変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0208】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【0209】
図7には、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、カソードガス導出マニホールド50の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。
【0210】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明する第二空間65、第2のガス流路および第2の伝圧部材を備えること以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0211】
図7に示すように、電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間65にカソードCA(
図2B参照)で生成された水素を供給する第2のガス流路を備える。
【0212】
第二空間65は、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられた空間であれば、どのような構成であってもよい。
図7に示す例では、第二空間65は、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第二空間65は、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部とアノード絶縁板23Aとによって区画された空間である。なお、第二空間の他の例については変形例で説明する。
【0213】
そして、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、
図7の矢印の如く、第2の伝圧部材が、第二空間65に設けられている。第2の伝圧部材は、一方の端に位置するアノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝えることができれば、どのような構成であってもよい。なお、第2の伝圧部材の具体的な構成については実施例で説明する。
【0214】
第2のガス流路は、第二空間65にカソードCAで生成される水素を供給することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、
図7に示す如く、第2のガス流路は、筒状のカソードガス導出マニホールド50と、カソードガス導出マニホールド50と第二空間65とを連通するカソードガス供給経路52とを含む流路である。
【0215】
また、カソードガス導出マニホールド50は、第1実施形態と同様に、水素ポンプユニット100Aの各部材に設けられた貫通孔およびアノード端板24Aおよびカソード端板24Cに設けられた非貫通孔の連なりによって構成されている。
【0216】
そして、カソードガス供給経路52は、アノード端板24Aの凹部内(第二空間65)とカソードガス導出マニホールド50の一方の端部とを連通するアノード端板24Aの主面に設けられた溝によって構成されている。
【0217】
以上の構成により、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、カソードCAのガス圧が高圧になるときの水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0218】
水素ポンプユニット100AのカソードCA内の水素ガス圧に基づいて、アノードANおよびアノードセパレーター17に対しても荷重が伝わる。すると、水素ポンプユニット100AのカソードCA内の水素ガス圧が高圧である場合、アノードセパレーター17がこの荷重により外側に押圧されることで変形する可能性がある。このとき、仮に、カソードガス拡散層14の厚みが増える方向の弾性変形が、アノードセパレーター17の変形に追従できない場合、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間に隙間が生じる可能性がある。すると、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の接触抵抗が増加する可能性がある。
【0219】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、水素ポンプユニット100AのカソードCAで生成される高圧の水素を、カソードガス導出マニホールド50およびカソードガス供給経路52を通じてアノード端板24Aとアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間65に供給することができる。このため、第二空間65内の水素ガス圧は、水素ポンプユニット100AのカソードCA内の水素ガス圧とほぼ同等の高圧である。すると、第二空間65内の水素によってアノードセパレーター17に付与される荷重は、カソードCA内の水素ガス圧に起因するアノードセパレーター17の変形を抑えるように作用する。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、このような第二空間65を設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の隙間が発生しにくくなるので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0220】
また、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、アノードセパレーター17にカソードガス拡散層14の圧縮応力が作用することに起因する水素ポンプユニットのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の接触抵抗の増加が以下の如く抑制される。
【0221】
カソードガス拡散層14の厚みが減る方向に弾性変形するとき、カソードガス拡散層14の圧縮応力は、カソード触媒層12、電解質膜11、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層15を介して、アノードセパレーター17を第二空間65側に押す方向に作用する。よって、アノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝える第2の伝圧部材を第二空間65に設けない場合は、アノードセパレーター17がアノード端板24A側に撓みやすくなる。このとき、仮に、カソードガス拡散層14の厚みが増える方向の弾性変形が、アノードセパレーター17の変形に追従できない場合、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間に隙間が生じる可能性がある。すると、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の接触抵抗が増加する可能性がある。
【0222】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、上記のとおり、アノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝える第2の伝圧部材を第二空間65に設けることにより、カソードガス拡散層14の厚みが減る方向に弾性変形するときにアノードセパレーター17がアノード端板24A側に撓みにくくなるように構成している。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、第2の伝圧部材を第二空間65に設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100Aのカソードガス拡散層14および電解質膜11(カソード触媒層12)間の隙間が発生しにくいので、両者間の接触抵抗の増加を適切に抑制することができる。
【0223】
なお、電解質膜11が、例えば、高分子電解質膜である場合、この高分子電解質膜は、湿潤状態で所望のプロトン伝導性を示す。このため、電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作の効率を所望の値を維持するには、電解質膜11を湿潤状態に保つ必要がある。このとき、仮に、アノードセパレーター17のアノードガス流路33(
図2B参照)などが水により閉塞されると、水素ポンプユニット100Aの水素供給が阻害される。つまり、アノードガス流路33を通過する水素の流れの安定化は、電気化学式水素ポンプ100の高効率な水素昇圧動作を行う際の重要な要素になる。このような観点から、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、第二空間65を設けない場合、および、第2の伝圧部材を第二空間65に設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100AのカソードCAで生成される水素のガス圧に寄らず、アノードセパレーター17の変形が抑制されるので、アノードセパレーター17のアノードガス流路33を通過する水素の流れを適切に安定化することができる。
【0224】
また、
図7に示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、第一空間60と第二空間65が対向する位置に設けられている。
【0225】
これにより、第一空間60内の水素によってカソードセパレーター16に付与される荷重および第二空間65内の水素によってアノードセパレーター17に付与される荷重は、カソードCA内の水素ガス圧に起因する水素ポンプユニット100Aの各部の変形を水素ポンプユニット100Aの両端部から面内で均等に抑えるように作用する。
【0226】
よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、第一空間60と第二空間65とを対向する位置に設けない場合に比べて、水素ポンプユニット100Aの各部の変形を効果的に抑制することができる。
【0227】
また、
図7に示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、第二空間65が、アノードAN(
図2B参照)の主面と平行に設けられている。
【0228】
これにより、第二空間65内の水素ガス圧に基づいて、アノードセパレーター17に伝わる荷重をアノードセパレーター17の面内で均等に与えることができる。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、第二空間65をアノードANの主面と平行に設けない場合に比べて、第二空間65内の水素によってアノードセパレーター17に付与される荷重が、アノードセパレーター17の変形(撓み)を抑えるように効果的に作用する。
【0229】
また、
図7に示す例では、電気化学式水素ポンプ100は、アノードセパレーター17の主面と平行な方向における第二空間65の開口面積が、アノードAN(
図2B参照)の主面の面積以上である。但し、このような第二空間65の開口面積は、アノードセパレーター17の主面の面積以下である。
【0230】
仮に、アノードセパレーター17の主面と平行な方向における第二空間65の開口面積が、アノードANの主面の面積未満の場合、第二空間65で覆われていないアノードANに対向するアノードセパレーター17の部分では、カソードCA内の水素ガス圧に起因する変形が起きる可能性がある。
【0231】
しかしながら、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の第二空間65の開口面積をアノードANの主面の面積以上に設定することで、アノードANの主面全域を第二空間65で覆うことができる。このため、第二空間65内の水素ガス圧に基づいて、アノードANに対向するアノードセパレーター17の全域に荷重が伝わるので、上記の可能性を低減することができる。
【0232】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例および第2実施形態のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0233】
(実施例)
以下、第2の伝圧部材の具体的な構成について、図面を参照しながら説明する。
【0234】
<第1実施例>
図8Aは、第3実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図8Aには、電気化学式水素ポンプ100の第二空間65内の第2の伝圧部材が示されている。
【0235】
図8Aに示す例では、第2の伝圧部材は、アノード端板24Aおよびアノード板部材80Aの間において、アノード端板24Aと一体に設けられている柱状部材70Aを含んでいる。本例では、柱状部材70Aは、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられている。つまり、アノード端板24Aと一体に設けられている柱状部材70Aは、第二空間65内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材70Aの端部が、アノード絶縁板23Aに接触している。なお、柱状部材70Aの横断面の形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。
【0236】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられた柱状部材70Aを介して、アノード絶縁板23Aからの押圧をアノード端板24Aに適切に伝えることができる。また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材70Aの間に存在する空隙を介して、第二空間65に水素(H2)を滞留させることができる。
【0237】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態および第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0238】
<第2実施例>
図8Bは、第3実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図8Bには、電気化学式水素ポンプ100の第二空間65内の第2の伝圧部材が示されている。
【0239】
図8Bに示す例では、第2の伝圧部材は、アノード端板24Aおよびアノード板部材80Aの間において、アノード端板24Aと別体に設けられている柱状部材71Aを含んでいる。本例では、柱状部材71Aは、アノード端板24Aおよびアノード給電板22Aの間に設けられている。つまり、柱状部材71Aは、第二空間65内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材71Aの一方の端部が、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部の底面に接触し、他方の端部が、アノード給電板22Aに接触している。但し、本例の場合は、柱状部材71Aが、アノード絶縁板23Aの中央部に設けられた開口部を介してアノード端板24Aとアノード給電板22Aとに接触するので、柱状部材71Aは絶縁部材である。これにより、アノード端板24Aおよびアノード給電板22Aの短絡が防止されている。なお、柱状部材71Aの横断面の形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。
【0240】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aおよびアノード給電板22Aの間に設けられた絶縁性の柱状部材71Aを介して、アノード給電板22Aからの押圧をアノード端板24Aに適切に伝えることができる。
【0241】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材71Aの間に存在する空隙を介して、第二空間65に水素(H2)を滞留させることができる。
【0242】
さらに、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、柱状部材71Aとして弾性部材を用いる場合は、仮に、アノード給電板22Aがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、柱状部材71Aがアノード給電板22Aの変形に対して伸縮し得るので、アノード給電板22Aからの押圧が、柱状部材71Aを介してアノード端板24Aに均等に伝わる。
【0243】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態および第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0244】
<第3実施例>
図8Cは、第3実施形態の第3実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図8Cには、電気化学式水素ポンプ100の第二空間65内の第2の伝圧部材が示されている。
【0245】
図8Cに示す例では、第2の伝圧部材は、アノード端板24Aおよびアノード板部材80Aの間において、アノード端板24Aと別体に設けられている柱状部材72Aを含んでいる。本例では、柱状部材72Aは、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられている。つまり、柱状部材72Aは、第二空間65内で面状に均等に並ぶように配置されており、柱状部材72Aの一方の端部が、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部の底面に接触し、他方の端部が、アノード絶縁板23Aに接触している。
【0246】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられた柱状部材72Aを介して、アノード絶縁板23Aからの押圧をアノード端板24Aに適切に伝えることができる。
【0247】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、両隣の柱状部材72Aの間に存在する空隙を介して、第二空間65に水素(H2)を滞留させることができる。
【0248】
さらに、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、柱状部材72Aとして弾性部材を用いる場合は、仮に、アノード絶縁板23Aがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、柱状部材72Aがアノード絶縁板23Aの変形に対して伸縮し得るので、アノード絶縁板23Aからの押圧が、柱状部材72Aを介してアノード端板24Aに均等に伝わる。
【0249】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態および第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0250】
<第4実施例>
図8Dは、第3実施形態の第4実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図8Dには、電気化学式水素ポンプ100の第二空間65内の第2の伝圧部材が示されている。
【0251】
図8Dに示す例では、第2の伝圧部材は、多孔性部材73Aを含んでいる。第2の伝圧部材は、多孔性部材73Aを含むものであれば、どのような構成であってもよい。
【0252】
例えば、
図8Dに示す如く、平板状の多孔性部材73Aが、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部(第二空間65)内のほぼ全域に設けられており、多孔性部材73Aの一方の主面とこの凹部の底面とが接触し、多孔性部材73Aの他方の主面とアノード絶縁板23Aの主面とが接触している。
【0253】
なお、多孔性部材73Aの基材として、例えば、アノードガス拡散層15の基材などを挙げることができる。つまり、この場合、第2の伝圧部材は、アノードANに含まれるアノードガス拡散層15と同等の高剛性を備える。
【0254】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられた多孔性部材73Aを介して、アノード絶縁板23Aからの押圧をアノード端板24Aに適切に伝えることができる。特に、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、多孔性部材73Aの主面のほぼ全面を介して、アノード絶縁板23Aからの押圧がアノード端板24Aに伝わるので、アノード絶縁板23Aのアノード端板24A側への撓みを効果的に抑制することができる。
【0255】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第2の伝圧部材として多孔性部材73Aを用いることで、
図8Dに示す如く、多孔性部材73Aを第二空間65のほぼ全域に設けた場合でも、第二空間65におけるガス透過性を適切に確保することができる。
【0256】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態および第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0257】
<第5実施例>
図8Eは、第3実施形態の第5実施例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図8Eには、電気化学式水素ポンプ100の第二空間65内の第2の伝圧部材が示されている。
【0258】
図8Eに示す例では、第2の伝圧部材は、弾性部材74Aを含んでいる。第2の伝圧部材は、弾性部材74Aを含むものであれば、どのような構成であってもよい。
【0259】
例えば、
図8Eに示す如く、平板状の弾性部材74Aが、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部(第二空間65)内のほぼ全域に設けられており、弾性部材74Aの一方の主面とこの凹部の底面とが接触し、弾性部材74Aの他方の主面とアノード絶縁板23Aの主面とが接触している。
【0260】
なお、弾性部材74Aの基材として、例えば、カソードガス拡散層14の基材などを挙げることができる。つまり、この場合、第2の伝圧部材は、カソードCAに含まれるカソードガス拡散層14と同等の弾性率を備える。
【0261】
以上の構成により、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、アノード端板24Aおよびアノード絶縁板23Aの間に設けられた弾性部材74Aを介して、アノード絶縁板23Aからの押圧をアノード端板24Aに適切に伝えることができる。特に、本実施例の電気化学式水素ポンプ100では、弾性部材74Aの主面のほぼ全面を介して、アノード絶縁板23Aからの押圧がアノード端板24Aに伝わるので、アノード絶縁板23Aのアノード端板24A側への撓みを効果的に抑制することができる。
【0262】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第2の伝圧部材として弾性部材74Aを用いることで、仮に、アノード絶縁板23Aがカソードガス拡散層14の圧縮応力に起因して変形した場合でも、弾性部材74Aがアノード絶縁板23Aの変形に対して追従し得るので、アノード絶縁板23Aからの押圧が、弾性部材74Aを介してアノード端板24Aに均等に伝わる。
【0263】
また、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、カソードガス拡散層14の圧縮応力に起因するアノード絶縁板23Aの変形が、カソードガス拡散層14と同等の弾性率を備える弾性部材74Aの厚みが減る方向の弾性変形で生じる反力により抑制される。つまり、カソードガス拡散層14の弾性変形量と弾性部材74Aの弾性変形量とがほぼ同じになるので、電気化学式水素ポンプ100の水素昇圧動作の進行に伴い、カソードガス拡散層14が、圧縮後の厚みから圧縮前の厚みに戻る方向に弾性変形する際にも、上記の反力を適切に維持することができる。
【0264】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態および第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0265】
(変形例)
第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、第二空間65は、アノード端板24Aの中央部に設けられた凹部によって構成されている。しかし、このような第二空間65は、例示であって本例に限定されない。以下、第二空間の他の例について、図面を参照しながら説明する。
【0266】
<第1変形例>
図9Aは、第3実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図9Aには、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間66が示されている。
【0267】
図9Aに示す例では、第二空間66は、アノードセパレーター17とアノード給電板22Aとが接触する部分において、アノードセパレーター17の中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第二空間66は、アノードセパレーター17の中央部に設けられた凹部とアノード給電板22Aとによって区画された空間である。
【0268】
なお、第二空間66内には、アノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝える第2の伝圧部材が設けられている。この第2の伝圧部材の具体例は、第3実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0269】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態、第3実施形態および第3実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0270】
<第2変形例>
図9Bは、第3実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図9Bには、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間67が示されている。
【0271】
図9Bに示す例では、第二空間67は、アノード給電板22Aの中央部に設けられた凹部とアノード絶縁板23Aの中央部に設けられた開口部とによって構成されている。つまり、第二空間67は、アノード給電板22Aの中央部に設けられた凹部と、アノード絶縁板23Aの中央部に設けられた開口部と、アノード端板24Aとによって区画された空間である。
【0272】
なお、第二空間67内には、アノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝える第2の伝圧部材が設けられている。この第2の伝圧部材の具体例は、第3実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。但し、本例の場合は、第2の伝圧部材が、アノード絶縁板23Aの中央部に設けられた開口部を介してアノード端板24Aとアノード給電板22Aとに接触するので、第1の伝圧部材は絶縁部材である。これにより、アノード端板24Aおよびアノード給電板22Aの短絡が防止されている。
【0273】
また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0274】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態、第3実施形態および第3実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0275】
<第3変形例>
図9Cは、第3実施形態の第3変形例の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
図9Cには、アノード端板24Aと一方の端に位置するアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間68が示されている。
【0276】
図9Cに示す例では、第二空間68は、アノード給電板22Aの中央部に設けられた凹部によって構成されている。つまり、第二空間68は、アノード給電板22Aの中央部に設けられた凹部とアノード絶縁板23Aとによって区画された空間である。
【0277】
なお、第二空間68内には、アノードセパレーター17からの押圧をアノード端板24Aに伝える第2の伝圧部材が設けられている。この第2の伝圧部材の具体例は、第3実施形態の第1実施例-第5実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であるので説明を省略する。また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0278】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態、第3実施形態および第3実施形態の第1実施例-第5実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0279】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
【0280】
図10には、平面視において電気化学式水素ポンプ100の中心と、カソードガス導出マニホールド50の中心と、を通過する直線を含む電気化学式水素ポンプ100の垂直断面が示されている。
【0281】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明する第2のガス流路の構成以外、第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0282】
本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、第2のガス流路は、第一空間60と第二空間65とを連通させる連通流路を含む流路である。この場合、カソードガス導出マニホールド50と第二空間65とを連通するカソードガス供給経路52(
図7参照)を設けなくてもよい。
【0283】
具体的には、例えば、
図10に示すように、カソードガス導出経路26を構成するカソードガス導出配管26Bから分岐する連通流路部材90が、アノード端板24Aを貫通して第二空間65にまで延伸している。つまり、
図10に示す例では、この連通流路部材90が、第一空間60と第二空間65とを連通させる部材であるが、連通流路部材の構成は、これに限定されない。例えば、連通流路部材は、カソードガス導出配管26Bから分岐させずに、カソード端板24Cおよびアノード端板24Aを貫通するように構成してもよい。
【0284】
以上により、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、水素ポンプユニット100AのカソードCAで生成される高圧の水素を、連通流路部材90を通じてアノード端板24Aとアノードセパレーター17との間に設けられた第二空間65に供給することができる。
【0285】
なお、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、第3実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0286】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態、第3実施形態、第3実施形態の第1実施例-第5実施例および第3実施形態の第1変形例-第3変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0287】
第1実施形態、第1実施形態の第1実施例-第5実施例、第1実施形態の第1変形例-第3変形例、第2実施形態、第3実施形態、第3実施形態の第1実施例-第5実施例、第3実施形態の第1変形例-第3変形例および第4実施形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。
【0288】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0289】
本開示の一態様は、従来に比べて、水素ポンプユニットのカソードセパレーターおよびカソード間の接触抵抗の増加を適切に抑制し得る電気化学式水素ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0290】
11 :電解質膜
12 :カソード触媒層
13 :アノード触媒層
14 :カソードガス拡散層
15 :アノードガス拡散層
16 :カソードセパレーター
17 :アノードセパレーター
21 :絶縁体
22A :アノード給電板
22C :カソード給電板
23A :アノード絶縁板
23C :カソード絶縁板
24A :アノード端板
24C :カソード端板
25 :締結器
26 :カソードガス導出経路
26A :カソードガス導出経路
26B :カソードガス導出配管
27 :アノードガス導入マニホールド
29 :アノードガス導入経路
30 :アノードガス導出マニホールド
31 :アノードガス導出経路
32 :カソードガス流路
33 :アノードガス流路
34 :カソードガス通過経路
35 :第1アノードガス通過経路
36 :第2アノードガス通過経路
40 :シール部材
42 :シール部材
43 :シール部材
50 :カソードガス導出マニホールド
51 :カソードガス供給経路
52 :カソードガス供給経路
60 :第一空間
61 :第一空間
62 :第一空間
63 :第一空間
65 :第二空間
66 :第二空間
67 :第二空間
68 :第二空間
70A :柱状部材
70C :柱状部材
71A :柱状部材
71C :柱状部材
72A :柱状部材
72C :柱状部材
73A :多孔性部材
73C :多孔性部材
74A :弾性部材
74C :弾性部材
80A :アノード板部材
80C :カソード板部材
90 :連通流路部材
100 :電気化学式水素ポンプ
100A :水素ポンプユニット
102 :電圧印加器
AN :アノード
CA :カソード