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特許7555007インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240913BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240913BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240913BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 305
B05D1/26 Z
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089174
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183392
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南雲 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】川西 努
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-83604(JP,A)
【文献】特開2011-5661(JP,A)
【文献】特開2019-10784(JP,A)
【文献】米国特許第10434764(US,B1)
【文献】特開2013-71039(JP,A)
【文献】特開2008-87289(JP,A)
【文献】特開2007-74116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05D 1/00-7/26
B05C 5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷基板を移動させる移動ステージと、前記印刷基板に対して複数のノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドと、を有するインクジェット印刷装置であって、
前記印刷基板上における前記インク滴の着弾位置を示す原画データを保持する印刷原画保持器と、
前記ノズル毎の前記インク滴の着弾位置の2次元ズレの補正に用いられる2次元ズレ補正量及び1次元ズレの補正に用いられる1次元ズレ補正量を保持するズレ情報保持器と、
前記原画データ並びに前記1次元ズレ補正量及び2次元ズレ補正量に基づいて、前記インク滴の吐出タイミングを変化させた吐出オン/オフ指示情報を生成するノズル毎可変遅延器と、
前記吐出オン/オフ指示情報に基づいて、前記ノズル毎に前記インク滴の吐出をオン/オフする駆動信号選択器と、を有し、
前記1次元ズレ補正量及び前記2次元ズレ補正量を、各ノズルの面内スキャン方向ズレ量に基づいて算出する、
インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記2次元ズレ補正量を、
各ノズルのスキャン方向の各列における面内スキャン方向ズレ量を求め、
所定のスキャン列における前記面内スキャン方向ズレ量を基準とした他のスキャン列における面内スキャン方向ズレ量である基準ノズル毎ズレ量を算出し、
最小の前記基準ノズル毎ズレ量を前記基準ノズル毎ズレ量から減算して2次元ズレを算出し、
前記2次元ズレをスキャン方向分解能で除算することにより算出し、
前記1次元ズレ補正量を、
前記所定のスキャン列における最小の面内スキャン方向ズレ量を当該所定のスキャン列の面内スキャン方向ズレ量に加算して1次元ズレを算出し、
前記1次元ズレをスキャン方向分解能で除算することにより算出する、
請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記2次元ズレ補正量を、
各ノズルのスキャン方向の各列における面内スキャン方向ズレ量を求め、
最初のスキャン列における前記面内スキャン方向ズレ量を基準とした他のスキャン列における面内スキャン方向ズレ量である1列目基準ノズル毎ズレ量を算出し、
最小の前記1列目基準ノズル毎ズレ量を前記1列目基準ノズル毎ズレ量から減算して2次元ズレを算出し、
前記2次元ズレをスキャン方向分解能で除算することにより算出し、
前記1次元ズレ補正量を、
前記最初のスキャン列における最小の面内スキャン方向ズレ量を当該最初のスキャン列の面内スキャン方向ズレ量に加算して1次元ズレを算出し、
前記1次元ズレをスキャン方向分解能で除算することにより算出する、
請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記1次元ズレ補正量を保持する1次元ズレ情報保持器と、
前記2次元ズレ補正量を保持する2次元ズレ情報保持器と、
前記1次元ズレ情報保持器に保持されている前記1次元ズレ補正量と、前記2次元ズレ情報保持器に保持されている前記2次元ズレ補正量とを加算して加算値を算出するノズル毎ズレ情報加算器と、をさらに有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記加算値は、整数である、
請求項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドがSCAN方向に対して傾いて配置されることによって前記SCAN方向においてノズルピッチが発生した場合、前記ノズルピッチを、前記ノズル毎のずらし量に基づいて補正する、
請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
印刷基板を移動させる移動ステージと、前記印刷基板に対して複数のノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドと、を用いて行われるインクジェット印刷方法であって、
前記印刷基板上における前記インク滴の着弾位置を示す原画データと、
前記ノズル毎の前記インク滴の着弾位置の2次元ズレの補正に用いられる2次元ズレ補正量及び1次元ズレの補正に用いられる1次元ズレ補正量を別々のメモリに保持しておき、
前記原画データ並びに前記1次元ズレ補正量及び2次元ズレ補正量に基づいて、前記インク滴の吐出タイミングを変化させた吐出オン/オフ指示情報を生成し、
前記吐出オン/オフ指示情報に基づいて、前記ノズル毎に前記インク滴の吐出をオン/オフし、
前記1次元ズレ補正量及び前記2次元ズレ補正量を、各ノズルの面内スキャン方向ズレ量に基づいて算出する、
インクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置を用いて、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネルの有機発光層を形成する方法が知られている。その方法として、例えば、低分子有機材料または高分子有機材料を溶媒塗布法にて形成する方法がある。
【0003】
溶媒塗布法により有機発光層を形成する代表的な方法1つとして、インクジェット印刷装置を用いて、有機発光材料を含むインクの液滴(以下、インク滴ともいう)をディスプレイ基板の画素領域に吐出することにより、有機発光層を形成する方法がある。このとき吐出されるインク滴には、有機発光材料および溶媒が含まれる。
【0004】
一般的なインクジェット印刷装置は、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを有し、ノズルと被印刷物(ワーク)との位置関係を制御しながら、ノズルからインク滴を吐出し、被印刷物にインクを塗布する。
【0005】
例えば特許文献1には、画素領域と呼ばれる凹みの中を等方向に広がるように基板上にインク滴を着弾させることにより、所定の線幅を有する画素を形成することができるインクジェット印刷装置が開示されている。
【0006】
上記インクジェット印刷装置を用いて所定の線幅を有する画素を複数形成する場合において、インク滴の着弾位置にズレが生じると、目標位置である自画素領域内に必要量のインク滴が塗布されず、自画素領域内のインク量が不足する。また、自画素領域内に着弾すべきインク滴が、自画素領域に隣接する隣接画素領域内に吐出されると、その隣接画素領域のインク量が過剰となる。
【0007】
このようなインク量の過不足により、形成される発光層の厚みが自画素領域と他画素領域とで異なる場合が起こりうる。
【0008】
また、隣接画素領域に吐出されるインク滴と、自画素領域に吐出されるインク滴とが互いに異なる発光インクであり、それらのうちいずれかのインク滴が自画素領域と隣接画素領域との間に着弾した場合、そのインク滴が2つの画素領域を繋いでしまう。これにより、各画素領域において混色発光になることがある。
【0009】
インク滴の着弾位置のズレの原因としては、例えば、ディスプレイ基板の掃引時に発生するヨーイング(ディスプレイ基板の進行方向に対する回転方向の振れ)、ピッチング、ノズルの配置のズレ(以下、ノズル配置ズレという)、ノズルから吐出されるインク滴の鉛直方向に対する角度のズレ(以下、吐出角度ズレという)などがある。
【0010】
上記着弾位置のズレを解消する方法として、例えば特許文献2には、ディスプレイ基板を掃引する際に発生するヨーイングの程度に基づいて、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出するタイミングを変化させる方法が開示されている。
【0011】
より具体的には、特許文献2の方法では、ディスプレイ基板を装着したテーブル(直線移動手段)の左右端にスケールおよびエンコーダを設け、それらによって得られる各々のテーブル端の位置からヨーイング量を算出し、全ノズルからインク滴を吐出するタイミングを、ヨーイング量に合わせた吐出タイミングに補正する。
【0012】
図13(特許文献2の図4と同じ)は、特許文献2に開示されている、基板のヨーイングによるノズル吐出孔の位置ズレを説明する図である。図13は、ステージの定盤を移動するテーブルの左右に取り付けられた2つのスケール(p0・・・pnで示すp側スケール、および、q0・・・qnで示すq側スケール)と、テーブルがインクジェットヘッド(図中のヘッド67)の直下を通過したときにノズル(図中のノズル吐出孔69)から吐出されるインク滴の位置とを示している。
【0013】
時刻Tでは、p0かつq0の位置に、ノズル吐出孔69-1~nのそれぞれからインク滴が吐出される。また、時刻Tnでは、pnかつqn-1の位置に、ノズル吐出孔69-1~nのそれぞれからインク滴が吐出される。図13において、p側スケールにおいて1つ分の刻み(パルス)が遅れる現象が、ヨーイングである。そして、図13に示すように、ヨーイング量(ヨーイングの程度)は、p側スケール、q側スケールから得ることができる。
【0014】
図14(特許文献2の図7と同じ)は、特許文献2に開示されている、インクジェットヘッドからインク滴が吐出されるタイミングを補正するために用いられる各種構成要素を示す図である。
【0015】
スケール読取ヘッドA65-1、B65-2は、それぞれ、図13に示したp側スケール、q側スケールのパルス(位置)を読み取る。位置エンコーダ91-1A、91-2Bは、それぞれ、スケール毎に読み取られたパルス数を計数する。波形生成部81は、スケール毎のパルス数に基づいて時間ズレ(p側スケールにおける1刻み分の遅延)を計測する。次に、波形生成部81は、その時間ズレおよびパターニングデータ(印刷画像)に基づいて、全てのノズルの吐出オン/オフタイミングを生成する。そして、波形生成部81は、吐出オン/オフタイミングに基づいて、各ノズルからインク滴を吐出するタイミングを制御する。これにより、ヨーイングに基づいた吐出タイミングの補正を実現することができる。
【0016】
また、例えば特許文献3には、ディスプレイ基板と同一面積を持つ着弾観測用基板に対して全ノズルからインク滴を面内吐出させ、着弾位置と基準位置とのズレの様子から、ヨーイング、ピッチング、ノズル配置ズレ、ノズル吐出角度ズレの合算量(以下、着弾総合ズレ量という)を予め計測し、その着弾総合ズレ量と、負の向きのズレ量(以下、着弾総合ズレ補正量という)とに基づいて印刷画像を変形(補正)し、印刷する方法が開示されている。
【0017】
図15(特許文献3の図16と同じ)は、特許文献3に開示されている、ステージ移動による印刷動作における印刷基板とインクジェットヘッドの関係を示す図である。
【0018】
図15において、符号1はディスプレイ基板を示し、符号1cは画素領域を示し、符号3はインクジェットヘッドを示し、符号3aはノズルを示し、符号4は移動ステージを示している。
【0019】
また、図15の上段に示される(a)は、移動ステージ4のヨーイングおよびインクジェットヘッド3の回転がない状態を示している。
【0020】
また、図15の下段に示される(b)は、インクジェットヘッド3の前半部は回転しておらず、インクジェットヘッド3の後半部は回転している状態を示している。さらに、(b1)は、移動ステージ4が反時計回りの方向に回転している状態を示している。(b2)は、移動ステージ4が時計回りの方向に回転している状態を示している。(b3)は、移動ステージ4が反時計回りの方向に回転しながら掃引して、印刷を行っている状態を示している。
【0021】
図16(引用文献3の図13と同じ)は、特許文献3に開示されている、図15の(b)に示した印刷動作により、ディスプレイ基板と同一面積を持つ着弾観測用基板に対して均一ピッチで面内吐出したときの想定着弾位置を示す図である。図16に示すように、各画素領域1cには、8滴の想定着弾位置(図中の黒丸)が示されている。
【0022】
図17(引用文献3の図14と同じ)は、特許文献3に開示されている、図16に示した想定着弾位置に基づいて作成された原画データを示す図である。図17に示す原画データは、印刷装置のメモリに格納される。印刷装置は、その原画データに基づいて、インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出させ、着弾総合ズレを補正し、各画素領域内に8滴のインク滴を着弾させる。これにより、ディスプレイ発光時の混色発光、ムラ発光を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2003-266669号公報
【文献】特開2007-152215号公報
【文献】特開2015-138693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献2の方法では、ステージのスケール部位で全ノズルの吐出タイミングを補正するため、スケール部位で観測される第1のヨーイングと、ステージ上のディスプレイ基板上の第2のヨーイングとが異なる場合、第1ヨーイングと第2ヨーイングとの差分だけ着弾位置にズレが発生するという問題がある。近年、ディスプレイパネルの大型化や多面取化、生産量増大による印刷タクトの短縮化が進んでいる。そのため、ステージの面積が拡大することによる剛性低下や、印刷掃引の高速化によって、第1ヨーイングと第2ヨーイングとの差がより大きくなる傾向にある。
【0025】
また、特許文献3では、着弾総合ズレ量(ヨーイング、ピッチング、ノズル配置ズレ、および吐出角度ズレの合算量)に基づく着弾総合ズレ補正量を印刷画像全面に反映することで、着弾位置のズレを補正することができる。
【0026】
ここで、着弾総合ズレ量は、ステージ移動に依存しない1次元ズレ(ノズル配置ズレ、吐出角度ズレの合算量)と、ステージ移動により生じる2次元ズレ(ヨーイング、ピッチングの合算量)との合算値であるが、1次元ズレは2次元ズレに対して、経時変化頻度と程度が大きい。これは、質量の大きいステージの精度変動はもっぱら温度に依存して緩やかに変化するのに対して,数pL(ピコリットル)の液滴での吐出角度ズレの変動は、インク濃度変化や吐出回数に依存するためである。これら異なる変動を合算した着弾総合ズレ量の補正は、頻度の高い1次元ズレの変動に従って行わなければならない。
【0027】
しかし、印刷画像が大きくなるに比例して、着弾総合ズレ補正量の反映にかかる時間や原画データをメモリへ書き込む時間といった処理時間が増大するという問題がある。また,上述したとおり、近年、ディスプレイパネルの大型化や多面取化、生産量増大による印刷タクトの短縮化が進んでいることにより、要求される生産量を満たす印刷タクトの時間内に、巨大な印刷画像を作成し、画像メモリに書き込むことが困難になってきている。
【0028】
本開示の一態様の目的は、処理時間を削減しつつ、インク滴の着弾位置のズレを補正することができるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本開示の一態様に係るインクジェット印刷装置は、印刷基板を移動させる移動ステージと、前記印刷基板に対して複数のノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドと、を有するインクジェット印刷装置であって、前記印刷基板上における前記インク滴の着弾位置を示す原画データを保持する印刷原画保持器と、前記ノズル毎の前記インク滴の着弾位置の2次元ズレの補正に用いられる2次元ズレ補正量及び1次元ズレの補正に用いられる1次元ズレ補正量を保持するズレ情報保持器と、前記原画データ並びに前記1次元ズレ補正量及び2次元ズレ補正量に基づいて、前記インク滴の吐出タイミングを変化させた吐出オン/オフ指示情報を生成するノズル毎可変遅延器と、前記吐出オン/オフ指示情報に基づいて、前記ノズル毎に前記インク滴の吐出をオン/オフする駆動信号選択器と、を有し、前記1次元ズレ補正量及び前記2次元ズレ補正量を、各ノズルの面内スキャン方向ズレ量に基づいて算出する。
【0030】
本開示の一態様に係るインクジェット印刷方法は、印刷基板を移動させる移動ステージと、前記印刷基板に対して複数のノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドと、を用いて行われるインクジェット印刷方法であって、前記印刷基板上における前記インク滴の着弾位置を示す原画データと、前記ノズル毎の前記インク滴の着弾位置の2次元ズレの補正に用いられる2次元ズレ補正量及び1次元ズレの補正に用いられる1次元ズレ補正量を別々のメモリに保持しておき、前記原画データ並びに前記1次元ズレ補正量及び2次元ズレ補正量に基づいて、前記インク滴の吐出タイミングを変化させた吐出オン/オフ指示情報を生成し、前記吐出オン/オフ指示情報に基づいて、前記ノズル毎に前記インク滴の吐出をオン/オフし、前記1次元ズレ補正量及び前記2次元ズレ補正量を、各ノズルの面内スキャン方向ズレ量に基づいて算出する。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、処理時間を削減しつつ、インク滴の着弾位置のズレを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の実施の形態1に係るディスプレイパネル用基板の平面図
図2A図1のA-A断面図
図2B図1のB-B断面図
図2C図1のC-C断面図
図3】本開示の実施の形態1に係る画素領域と印刷吐出ドット格子との関係を示す図
図4】本開示の実施の形態1に係るインクジェット印刷装置を示すブロック図
図5】本開示の実施の形態1に係る液滴着弾観測用基板における着弾位置のズレの分布を示す図
図6A】本開示の実施の形態1に係る面内SCAN方向ズレ量の一覧を示す図
図6B】本開示の実施の形態1に係る1列目基準ノズル毎ズレ量の一覧を示す図
図6C】本開示の実施の形態1に係る2次元ズレの一覧を示す図
図6D】本開示の実施の形態1に係る1次元ズレの一覧を示す図
図6E】本開示の実施の形態1に係る吐出開始位置補正量を示す図
図7】本開示の実施の形態1に係る原画データを示す図
図8A】本開示の実施の形態1に係る2次元ズレ画素量データを示す図
図8B】本開示の実施の形態1に係る1次元ズレ画素量データを示す図
図8C】本開示の実施の形態1に係る吐出終了位置補正画素数量を示す図
図8D】本開示の実施の形態1に係る吐出開始位置補正画素数量を示す図
図9】本開示の実施の形態1に係る補正動作を行う主要構成要素のつながりを示す図
図10】本開示の実施の形態1に係るノズル毎可変遅延器におけるノズル2可変遅延器の内部構成の一例を示す図
図11】本開示の実施の形態1に係るノズル2可変遅延器の内部の信号の状態を、時間の経過とともに示した図
図12】本開示の実施の形態3、4に係るインクジェットヘッドの傾き状態の一例を示す図
図13】特許文献2に開示されている、基板のヨーイングによるノズル吐出孔の位置ズレを説明する図
図14】特許文献2に開示されている、ヘッド吐出タイミング補正を実現させる構成要素を示す図
図15】特許文献3に開示されている、ステージ移動による印刷動作における印刷基板とインクジェットヘッドの関係を示す図
図16】特許文献3に開示されている、着弾観測用基板に対して均一ピッチで面内吐出したときの想定着弾位置を示す図
図17】特許文献3に開示されている、想定着弾位置に基づいて作成された印刷画像データを示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0034】
(実施の形態1)
本実施の形態の印刷基板1について説明する。図1は、印刷基板1の平面図(上面図)である。図1に示す印刷基板1は、例えば、ディスプレイパネル用基板である。
【0035】
図1において、符号1aは、印刷基板1の上の撥液膜を示す。符号1bは、撥液膜1a上のバンクを示す。バンク1bは、ノズル列方向Yに伸びている。符号1cは、画素領域を示す。画素領域1cは、印刷基板1上において撥液膜1aとバンク1bとにより区切られている。
【0036】
バンク1bは、図中の左右方向に隣り合う画素領域1cをSCAN方向Xにおいて区切っている。SCAN方向Xにおける間隔Lpxは、図中の左右方向に隣り合う画素領域1cの中心(図中の一点鎖線の交点。以下同様)間の間隔である。ノズル列方向Yにおける間隔Lpyは、図中の上下方向に隣り合う画素領域1cの中心間の間隔である。
【0037】
Lwxは、画素領域1cのSCAN方向Xの長さである。Lwyは、画素領域1cのノズル列方向Yの長さである。画素領域1cは、その中心から、SCAN方向Xに±Lwx/2、ノズル列方向Yに±Lwy/2で形成された円縁長方形領域である。
【0038】
図2A図2Cは、印刷基板1の断面図である。
【0039】
図2Aは、図1のA-A断面を示している。A-A断面は、SCAN方向Xにおいて画素領域1cを切り出した断面である。図2Aに示すように、隣り合うバンク1b間における画素領域1cには、撥液膜1aが存在しない。
【0040】
図2Bは、図1のB-B断面を示している。B-B断面は、SCAN方向Xにおいて画素領域1cが無い領域を切り出した断面である。図2Bに示すように、隣り合うバンク1b間における画素領域1cには、撥液膜1aが存在する。
【0041】
図2Cは、図1のC-C断面を示している。C-C断面は、ノズル列方向Yにおいて画素領域1cを切り出した断面である、図2Cに示すように、バンク1bは存在しておらず、画素領域1cには、部分的に撥液膜1aが存在する。
【0042】
図3は、画素領域1cと印刷吐出ドット格子2aとの関係を示す図である。
【0043】
図3は、図1に示した複数の画素領域1cのうちの1つを示している。
【0044】
画素内着弾領域1eは、SCAN方向Xの長さewxと、ノズル列方向Yの長さewyとを有し、インク滴が着弾可能な画素領域である。画素内に着弾させるインク滴は、この画素内着弾領域1e内に吐出される。
【0045】
着弾逃げ部分1dは、画素領域1cから画素内着弾領域1dを差し引いた領域である。着弾逃げ部分1dは、ノズルからインク滴がずれて吐出された場合に画素領域1cからはみ出さないようにするための余裕領域である。
【0046】
図3では、SCAN方向Xの印刷分解能pxに相当する幅毎に、ノズル列方向Yに延伸した点線(以下、第1の点線という)が図示されている。また、図3では、ノズル列方向Yの印刷分解能pyに相当する幅毎に、SCAN方向Xに延伸した点線(以下、第2の点線という)が図示されている。印刷吐出ドット格子2aは、第1の点線と第2の点線との交点である。印刷吐出ドット格子2aは、インク滴の着弾が期待される位置(後述する着弾期待位置20)となりうる。
【0047】
なお、SCAN方向Xの印刷分解能px(以下、SCAN方向印刷分解能pxという)およびノズル列方向Yの印刷分解能py(以下、ノズル列方向印刷分解能pyという)それぞれの決定方法については、後述する。
【0048】
着弾領域内ドット格子2bは、画素内着弾領域1e内に配置された印刷吐出ドット格子2aである。
【0049】
本実施の形態では、画素内着弾領域1e内に標準で8滴のインク滴を吐出させる場合を例に挙げる。この場合、8滴のインク滴、画素内着弾領域1e、および、後述するノズル列方向間隔Lny(図4参照)の関係から、SCAN方向印刷分解能pxおよびノズル列方向印刷分解能pyが決定される。本実施の形態では、SCAN方向Xに3ドット、ノズル列方向Yに4ドットの計12ドット分(図3参照)が画素内着弾領域1e内に確保されるように、SCAN方向印刷分解能pxおよびノズル列方向印刷分解能pyを決定する。
【0050】
図3では、12個の着弾領域内ドット格子2bのうち、吐出が行われる8滴分の着弾領域内ドット格子2bを黒丸で示し、吐出が行われない4滴分の着弾領域内ドット格子2bを白丸で示している。また、8滴分の着弾領域内ドット格子2bの座標上の重心が画素領域1cの中心に位置するように、8滴分の着弾領域内ドット格子2bを配置した。
【0051】
本実施の形態のインクジェット印刷装置100について説明する。図4は、インクジェット印刷装置100の構成を示すブロック図である。
【0052】
図4に示すように、インクジェット印刷装置100は、インクジェットヘッド3、移動ステージ4、位置検出器5、吐出タイミング発生器6、駆動信号発生器7、正規化1次元ズレ情報保持器8、正規化2次元ズレ情報保持器9、印刷原画保持器10、ノズル毎ズレ情報加算器11、ノズル毎可変遅延器12、駆動信号選択器13を有する。インクジェット印刷装置100は、印刷基板1に対して印刷を行う。
【0053】
インクジェットヘッド3は、インク滴を吐出する複数のノズル3aを有する。本実施の形態では、ノズル列方向Yに沿って、2つのインクジェットヘッド3が設けられている。
【0054】
複数のノズル3aは、ノズル列方向Yに沿って、間隔Lny毎に配置されている。この間隔Lnyは、2つのインクジェットヘッド3のつなぎ目でも維持される。図3に示したノズル列方向印刷分解能pyは、間隔Lnyと同一である。
【0055】
移動ステージ4は、載置された印刷基板1を移動させる。
【0056】
位置検出器5は、印刷基板1が載せられた移動ステージ4が位置情報をパルス信号に変換した位置情報パルス信号を生成し、吐出タイミング発生器6へ出力する。
【0057】
吐出タイミング発生器6は、予め設定されたSCAN方向印刷分解能pxに基づいて、位置検出部5からの位置情報パルス信号を分周し、吐出タイミング信号を生成し、その吐出タイミング信号を駆動信号発生器7、正規化1次元ズレ情報保持器8、印刷原画保持器10、ノズル毎ズレ情報加算器11、ノズル毎可変遅延器12に出力する。吐出タイミング信号は、インクジェットヘッド3のノズル3aを駆動する電圧波形の発生タイミングを規定する信号である。
【0058】
吐出タイミング発生器6は、吐出タイミング発生器6内に保持されている吐出開始位置情報に従って、吐出タイミング信号の出力を開始する。そして、吐出タイミング発生器6は、吐出タイミング発生器6内に保持されている吐出回数情報に示される回数分の吐出タイミング信号を出力した後、吐出タイミング信号の発生、出力を停止する。
【0059】
また、吐出タイミング発生器6は、分割タイミング信号を生成し、それを正規化2次元ズレ情報保持器9に出力する。吐出タイミング発生器6は、吐出タイミング発生器6内に保持されている分割幅回数情報に従って吐出タイミング計数し間引いた信号であり、正規化2次元ズレ量をノズル毎ズレ情報加算器11に出力させるタイミングを指定する信号である。
【0060】
駆動信号発生器7は、吐出タイミング発生器6からの吐出タイミング信号に基づいて、インクジェットヘッド3のノズル3aからインク滴を吐出させるための駆動波形信号を生成し、駆動信号選択器13へ出力する。
【0061】
正規化1次元ズレ情報保持器8は、正規化1次元ズレ画素データを保持するメモリであり、その正規化1次元ズレ画素データをノズル毎ズレ情報加算器11へ出力する。正規化1次元ズレ画素データについては後述する.
【0062】
正規化2次元ズレ情報保持器9は、正規化2次元ズレ画素データを保持するメモリである。正規化2次元ズレ情報保持器9は、分割タイミング信号に従って、正規化2次元ズレ画素データをノズル毎ズレ情報加算器11へ出力する。正規化2次元ズレ画素データについては後述する。
【0063】
印刷原画保持器10は、原画データ(印刷元データ)を保持するメモリであり、その原画データをノズル毎可変遅延器12へ出力する。原画データは、印刷基板1上に設定された印刷吐出ドット格子2aに対するインク滴の吐出を指示するためのデータである。
【0064】
ノズル毎ズレ情報加算器11は、正規化1次元ズレ情報保持器8からの正規化1次元ズレ画素データと、正規化2次元ズレ情報保持器9からの正規化2次元ズレ画素データとを、吐出タイミング信号毎に加算する。そして、ノズル毎ズレ情報加算器11は、加算の結果得られたノズル3a毎のズレ量(遅延量)を示すズレ量情報を、ノズル毎可変遅延器12へ出力する。
【0065】
ノズル毎可変遅延器12は、印刷原画保持器10からの原画データと、ノズル毎ズレ情報加算器11からのズレ量情報とに基づいて、吐出オン/オフ指示情報を生成し、駆動信号選択器13へ出力する。吐出オン/オフ指示情報とは、印刷吐出ドット格子2aそれぞれに対する吐出のオン/オフ(実行/非実行)をノズル3a毎に指示する情報である。
【0066】
駆動信号選択器13は、ノズル毎可変遅延器12からの吐出オン/オフ指示情報に基づいて、駆動信号発生器7からの駆動波形信号を、ノズル3a毎にオン/オフする。これにより、各ノズル3aからのインク滴の吐出が制御される。
【0067】
上述した構成を備えたインクジェット印刷装置100は、印刷基板1に対する印刷を実行する前に、印刷基板1と同等サイズの液滴着弾観測用基板(図示略)の一面にインク滴を着弾させ、液滴着弾観測用基板上における、実際の着弾位置と目標着弾位置とのズレ量を測定する。そして、インクジェット印刷装置100は、測定されたズレ量に基づいて1次元着弾ズレ情報および2次元着弾ズレ情報を決定する。
【0068】
図5は、液滴着弾観測用基板における着弾位置のズレの分布を示す図である。図5に示すように、液滴着弾観測用基板上の印刷範囲は、例えば、SCAN方向Xに4等分される。SCAN方向Xにおける印刷範囲の境界は、例えば、x1、x9、x17、x25である。SCAN方向Xにおける1分割分の間隔(以下、分割間隔BKWという)は、例えば、40.0μmである。インクジェット印刷装置100は、上記境界の位置や分割間隔BKWを記憶する。なお、このBKWは、SCAN方向印刷分解能pxで除されたBKGSWとして吐出タイミング発生器6に記憶される。また、インクジェットヘッド3には、例えば、ノズル列方向印刷分解能py毎に、20個のノズル3aが設けられている。
【0069】
インクジェット印刷装置100は、ノズル3aから、予め設定された着弾期待位置20に対してインク滴を吐出させる。着弾期待位置20は、SCAN方向Xにおける印刷範囲の境界x1、x9、x17、x25においてノズル列方向Yに沿って設定されている。
【0070】
図5中の白丸は、着弾期待位置20を表している。また、図5中の黒丸は、吐出されたインク滴が実際に着弾した位置21(以下、実際の着弾位置21という)を表している。図5に示すように、着弾期待位置20と実際の着弾位置21との間には、ズレが生じている。図5において、着弾期待位置20と実際の着弾位置21との間に示す矢印は、ズレ量を表している。
【0071】
図6Aは、面内SCAN方向ズレ量(単位:μm)の一覧を示す図である。面内SCAN方向ズレ量は、図5に示した着弾期待位置20と実際の着弾位置21とのズレ量である。単位は、μmである。
【0072】
なお、図6Aにおいて、xの1は、図5における1列目の境界x1(以下、単に1列目という)を表しており、xの2は、図5における2列目の境界x9(以下、単に2列目という)を表しており、xの3は、図5における3列目の境界x17(以下、単に3列目という)を表しており、xの4は、図5における4列目の境界x25(以下、単に4列目という)を表している。なお、これについては、図6B図6Cも同様である。
【0073】
図6Aに示すx1かつy15における-14.2μmは、1列目の境界(x1)におけるズレ量の中での最小ズレ量(1DZRMIN)である。
【0074】
図6Bは、1列目基準ノズル毎ズレ量の一覧を示す図である。1列目基準ノズル毎ズレ量は、1列目における面内SCAN方向ズレ量と、2~4列目それぞれにおける面内SCAN方向ズレ量との差分量である。単位は、μmである。
【0075】
例えば、図6Bに示すx2かつy2における-6.8μmは、図6Aに示すx2かつy2における-2.7μmから、図6Aに示すx1かつy2における4.1μmを引いた値である。
【0076】
また、図6Bに示すx4かつy17における-8.0μmは、図6Bに示す全ての値の中での最小差分量(2DZRMIN)である。
【0077】
図6Cは、2次元ズレの一覧(以下、2次元ズレテーブルという)を示す図である。2次元ズレは、図6Bに示した差分量(1列目基準ノズル毎ズレ量)のそれぞれから、2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)を引いて、正の値に正規化した値である。単位は、μmである。
【0078】
例えば、図6Cに示すx2かつy2における1.2μmは、図6Bに示すx2かつy2における-6.8μmから、図6Bに示す2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)である-8.0μmを引いた値である。
【0079】
図6Dは、1次元ズレの一覧(以下、1次元ズレテーブルという)を示す図である。1次元ズレは、図6Aに示した1列目の面内SCAN方向ズレ量のそれぞれから、それらのうちの1次元ズレ最小差分量(1DZRMIN)を引いて、正の値に正規化した値である。単位は、μmである。
【0080】
例えば、図6Dに示すy2における18.3は、図6Aに示すx1かつy2における4.1μmから、図6Aに示す1次元ズレ最小ズレ量(1DZRMIN)である-14.2μmを引いた値である。
【0081】
図6Eは、吐出開始位置補正量を示す図である。吐出開始位置補正量は、1次元ズレ最小ズレ量(1DZRMIN)と2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)との合計値である。単位は、μmである。
【0082】
例えば、図6Eに示す-22.2は、図6Aに示す1次元ズレ最小ズレ量(1DZRMIN)である-14.2μmと、図6Bに示す2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)である-8.0μmとの合計値である。
【0083】
なお、1次元ズレテーブルおよび2次元ズレテーブルにおける値を正の値にする理由は、ノズル毎可変遅延器12が使用可能なズレ量(詳細は後述)にするためである。
【0084】
<プロセス>
以下、インクジェット印刷装置100が行う印刷動作のプロセスについて説明する。
【0085】
(1)データ格納工程
まず、各種データの格納が行われる。
【0086】
具体的には、印刷原画保持器10には、原画データが格納される。また、正規化1次元ズレ情報保持器8には、正規化1次元ズレ画素データが格納される。また、正規化2次元ズレ情報保持器9には、正規化2次元ズレ画素データが格納される。
【0087】
図7は、原画データの一例を示す図である。
【0088】
図7に示すように、原画データは、ノズル数が20、SCAN数が31)は、SCAN方向印刷分解能px、ノズル列方向印刷分解能pyにより格子状に区分けされている。ここでいう格子は、図3に示した印刷吐出ドット格子2aである。
【0089】
また、図7に示すように、原画データには、複数の画素領域1cが設定されている。各画素領域1cは、図3に示したものと同じである。各画素内着弾領域1e内に示されている黒丸は、図3と同様に、吐出が行われる8滴分の着弾領域内ドット格子2bを示している。
【0090】
図8Aは、2次元ズレ画素量データの一例を示す図である。図8Aに示す2次元ズレ画素量データは、2次元ズレ補正量の一例に相当する。
【0091】
2次元ズレ画素量データは、図6Cに示した2次元ズレテーブルの各値をSCAN方向分解能px(例えば、5.0μm)で割ることにより、画素量に変換したものである。
【0092】
例えば、図8Aに示すx2かつy2における0.24画素は、図6Cに示すx2かつy2における1.2μmを5.0μmで割った値である。
【0093】
また、図8Aに示すx4かつy1における3.44画素は、図8Aに示す全ての値の中での最大値(2DZRGSMAX)である。
【0094】
図8Bは、1次元ズレ画素量データの一例を示す図である。図8Bに示す1次元ズレ画素量データは、1次元ズレ補正量の一例に相当する。
【0095】
1次元ズレ画素量データは、図6Dに示した1次元ズレテーブルの各値をSCAN方向分解能px(例えば、5.0μm)で割ることにより、画素量に変換したものである。
【0096】
例えば、図8Bに示すy2における3.66画素は、図6Dに示すy2における18.3μmを5.0μmで割った値である。
【0097】
また、図8Bに示すy12における4.8画素は、図8Bに示す全ての値の中での最大値(1DZRGSMAX)である。
【0098】
図8Cは、吐出終了位置補正画素数量の一例を示す図である。図8に示す8.24画素は、図8Aに示す2DZRGSMAXである3.44画素と、図8Bに示す1DZRGSMAXである4.8画素との加算値である。
【0099】
吐出終了位置補正画素数量と、原画データのSCAN数との加算値は、吐出タイミング発生器6内に、吐出回数情報として記憶される。例えば、2DZRGSMAXである3.44画素と、1DZRGSMAXである4.8画素との加算値は、8.24画素となり、原画データのSCAN数は31であるので、全加算値は、39.24となる。この値は、整数値に切り上げられて、吐出回数情報「40画素」として吐出タイミング発生器6に記憶される。
【0100】
また、SCAN方向の1分割分の間隔(μm)を分割間隔画素に変換した、正規化2次元ズレ画素量データの繰り出し間隔である分割間隔画素BKGSWを得て、吐出タイミング発生器6内にある分割間隔情報として記憶しておく。例えば、BKW=40.0μmであり、px=5.0μmであることから、BKGSW=8となる。
【0101】
さらに、1次元ズレ最小差分量(1DZRMIN)と2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)の加算値(μm)を最小差分量画素に変換した、吐出タイミング信号を発生させる、吐出開始位置補正量(画素)を得る。吐出タイミング信号は、原画画像の先頭がノズル位置に到来したときに発生を開始するが、この発生開始位置を吐出タイミング信号の発生開始位置補正量で補正する。1次元ズレ最小ズレ量(1DZRMIN)が-14.2μm、2次元ズレ最小差分量(2DZRMIN)が-8.0μm、px=5.0μmであることから、発生開始位置補正量(画素)=-4.44画素となる(図8D参照)。
【0102】
以下、本実施の形態におけるズレに関する用語についてまとめる。
【0103】
着弾ズレ(μm)は、着弾期待位置20と実際の着弾位置21とのズレ量である(例えば、図6A参照)。
1次元着弾ズレ(μm)は、1列目の着弾ズレ量である(例えば、図6Aのx=1の列参照)。
2次元着弾ズレ(μm)は、1次元着弾ズレと各列(例えば、図6Aのx=2~4の各列)の着弾ズレの差分量である(例えば、図6B参照)。
正規化2次元ズレ(μm)は、2次元着弾ズレを正値に正規化したズレ量である(例えば、図6C参照)。
正規化1次元ズレ(μm)は、1次元着弾ズレを正値に正規化したズレ量である(例えば、図6D参照)。
正規化2次元ズレ(画素)は、正規化2次元ズレをSCAN方向印刷分解能pxで正規化したデータである(例えば、図8A参照)。
正規化1次元ズレ(画素)は、正規化1次元ズレをSCAN方向印刷分解能pxで正規化したデータである(例えば、図8B参照)。
吐出回数情報(回)は、ズレ補正された原画をすべて吐出させるために必要な吐出回数である。
分割間隔画素(画素)は、正規化2次元ズレ画素データを取り出す間隔である。
吐出終了位置補正量(画素)は、ズレ補正された原画の負のズレ分の絶対量と正のズレ量とを合算して,原画の合計ズレ補正分を吐出させるために,吐出終了位置をずらす補正量(正値)である(図8C参照)。
吐出開始位置補正量(画素)は、ズレ補正された原画の負のズレ分のズレ補正を行うために吐出開始位置をずらす補正量(負値)である(図8D参照)。
【0104】
(2)吐出工程
次に、インク滴の吐出により印刷が行われる。以下では、まず、印刷動作の全体の流れを説明し、その後、補正動作について詳細に説明する。
【0105】
印刷タイミング発生器6は、吐出開始位置補正量(画素)=-4.44画素で補正された吐出開始位置で、SCAN方向印刷分解能pxで吐出回数情報(回)=40回、吐出タイミング信号を発生するように設定される。また、印刷タイミング発生器6は、吐出タイミング信号を分割間隔画素(画素)=8画素分発生させる毎に、分割タイミング信号を発生するように設定される。
【0106】
印刷基板1が載置された移動ステージ4がインクジェットヘッド3に対して相対的に移動すると、位置情報が時系列に発生する。
【0107】
位置情報は、位置検出器5に入力される。位置検出器5は、位置情報をパルス信号に整頓した位置情報パルス信号を生成し、吐出タイミング発生器6に出力する。
【0108】
吐出タイミング発生器6は、予め設定されたSCAN方向印刷分解能pxに基づいて、位置検出部5からの位置情報パルス信号を分周し、吐出タイミング信号を発生させ、駆動信号発生器7へ出力する。上述したとおり、吐出タイミング信号は、インクジェットヘッド3のノズル3aを駆動する電圧波形の発生タイミングを規定する信号である。また,吐出タイミング信号は、印刷原画保持器10、ノズル毎ズレ情報加算器11、ノズル毎可変遅延器12にも出力される。分割タイミング信号は、正規化2次元ズレ情報保持器9に出力される。
【0109】
駆動信号発生器7は、吐出タイミング発生器6からの吐出タイミング信号に基づいて、駆動波形信号を生成し、駆動信号選択器13へ出力する。上述したとおり、駆動波形信号は、インクジェットヘッド3のノズル3aからインク滴を吐出させるための信号である。
【0110】
一方、印刷原画保持器10は、論理印刷ビットマップデータである原画データを、吐出タイミング信号に同期させて、ノズル毎可変遅延器12へ出力する。上述したとおり、原画データは、印刷基板1上に設定された印刷吐出ドット格子2aに対するインク滴の吐出を指示するためのデータである。
【0111】
また、正規化1次元ズレ情報保持器8は、ノズル3a毎の正規化1次元ズレデータ(画素)量を吐出タイミング信号に同期させて、ノズル毎ズレ情報加算器11へ出力する。正規化2次元ズレ情報保持器9は、ノズル3a毎の正規化2次元ズレデータ(画素)量を分割タイミング信号に同期させて、ノズル毎ズレ情報加算器11へ出力する。
【0112】
ノズル毎ズレ情報加算器11は、正規化1次元ズレ情報保持器8からのノズル3a毎の正規化1次元ズレデータ(画素)と、正規化2次元ズレ情報保持器9からのノズル3a毎の正規化2次元ズレデータ(画素)量とを、吐出タイミング信号毎に加算する。そして、ノズル毎ズレ情報加算器11は、加算の結果得られたノズル毎のズレ量(遅延量)を示すズレ量情報を、ノズル毎可変遅延器12へ出力する。
【0113】
ノズル毎可変遅延器12は、印刷原画保持器10からの原画データと、ノズル毎ズレ情報加算器11からのズレ量情報とに基づいて、吐出オン/オフ指示情報を生成し、駆動信号選択器13へ出力する。上述したとおり、吐出オン/オフ指示情報とは、印刷吐出ドット格子2aそれぞれに対する吐出のオン/オフ(実行/非実行)をノズル3a毎に指示する情報である。
【0114】
駆動信号選択器13は、ノズル毎可変遅延器12からの吐出オン/オフ指示情報に基づいて、駆動信号発生器7からの駆動波形信号を、ノズル3a毎にオン/オフする。これにより、各ノズル3aからのインク滴の吐出が制御される。
【0115】
移動ステージ4がインクジェットヘッド3の下を所定の速度で通過する間、上述した動作が繰り返し実行され、印刷基板1上には、原画データに基づいてインク滴が吐出される。そして、移動ステージ4がインクジェットヘッド3の下を通過し終えると、原画データに基づくインク滴の吐出は完了する。
【0116】
次に、本実施の形態の特徴である補正動作について説明する。この補正動作では、原画データと着弾ズレ情報を予め各々の保持器に設定することにより、ノズル3a毎の着弾ズレおよび移動ステージ4のヨーイングにより発生する印刷基板1の面内着弾ズレを補正する。
【0117】
図9は、図4に示したインクジェット印刷装置100の構成要素のうち、補正動作を行う主要構成要素のつながりを示す図である。
【0118】
図9に示すように、正規化1次元ズレ情報保持器8、正規化2次元ズレ情報保持器9、印刷原画保持器10、ノズル毎ズレ情報加算器11、およびノズル毎可変遅延器12は、ノズル3a毎につながっている。図9において、♯1~♯20は、20個のノズル3aの識別番号を示している。
【0119】
また、図9に示すように、ノズル毎可変遅延器12は、20個の可変遅延器(ノズル1可変遅延器~ノズル20可変遅延器12)を有する。
【0120】
図10は、図4図9に示したノズル毎可変遅延器12におけるノズル2可変遅延器の内部構成の一例を示す図である。
【0121】
符号30a~hは、画素保持器(1bitフリップフロップ)であり、D入力値をCKクロック信号の立ち上がりタイミングでQに保持する。/CLR信号により、Qが0クリアされる。
【0122】
符号31a~31hは、論理乗算器(ANDゲート)であり、2入力の論理積(AND)を出力する。
【0123】
符号32a~32hは、一部負論理乗算器(1入力負論理ANDゲート)であり、正論理1入力と負論理1入力の論理積(AND)を出力する。
【0124】
符号33a~33hは、論理加算器(ORゲート)であり、2入力の論理和(OR)を出力する。
【0125】
符号34はデコーダであり、1~8の数値に従って、S1~S8に正論理bitを出力する。入力値=1では、S1は1となり、S2~S8はそれぞれ0となる。入力値=2では、S1~S2はそれぞれ1となり、S3~S8はそれぞれ0となる。入力値=3では、S1~S3はそれぞれ1となり、S4~S8はそれぞれ0となる。入力値=4では、S1~S4はそれぞれ1となり、S5~S8はそれぞれ0となる。入力値=5では、S1~S5はそれぞれ1となり、S6~S8はそれぞれ0となる。入力値=6では、S1~S6はそれぞれ1となり、S7~S8はそれぞれ0となる。入力値=7では、S1~S7はそれぞれ1となり、S8は0となる。入力値=8では、S1~S8はすべて1となる。
【0126】
図11は、図10に示したノズル2可変遅延器の内部の信号の状態を、時間の経過とともに示した図である。
【0127】
以下、印刷中の補正動作を、♯2のノズル(以下、2番目ノズルという)を例に挙げて説明する。
【0128】
図9に示すように、正規化1次元ズレ情報保持器8は、2番目ノズルの1次元ズレ画素量データとして、3.66(単位:画素)を保持している。また、図9に示すように、正規化2次元ズレ情報保持器9は、2番目ノズルの2次元ズレ画素量データとして、1.6、0.24、1.04、2.44(単位:画素)を保持している。
【0129】
印刷原画保持器10は、2番目ノズルの原画データとして、図7におけるy2のx1~x31の順に、印刷吐出ドット格子2aが吐出対象(黒丸)であるか非吐出対象(白丸)であるかを示す数値列を保持している。例えば、2番目ノズルの原画データは、0(非吐出対象)、0、0、1(吐出対象)、1、0、0、0、0、・・・1、1、0、0となる。
【0130】
2番目ノズルの1次元ズレ画素量データである3.66は、吐出タイミング信号に同期してノズル毎ズレ情報加算器11に出力される。
【0131】
2番目ノズルの1次元ズレ画素量データである1.6、0.24、1.04、2.44は、分割タイミング信号に同期して順にノズル毎ズレ情報加算器11に出力される。
【0132】
ノズル毎ズレ情報加算器11において、2番目ノズルの1次元ズレ画素量データと2番目ノズルの1次元ズレ画素量データとは算術加算される。そして、その加算値(換言すれば、遅延量)は、図10に示すように、選択データSEL#2信号として、ノズル毎可変遅延器12のノズル2可変遅延器へ出力される。
【0133】
一方、2番目ノズルの原画データは、上述した順に、吐出タイミング信号に同期して、ノズル毎可変遅延器12のノズル2可変遅延器に出力される。図10に示すように、2番目ノズルの原画データは、選択データDin#2信号として、ノズル2可変遅延器へ出力される。
【0134】
図11は、吐出タイミングt=1~40毎に、SEL#2、Din#2の値を示している。
【0135】
ここで、図10図11を用いて、Din#2がSEL#2に基づいて遅延され、Dout#2として出力される動作について説明する。
【0136】
まず、図10に示すように、吐出タイミング発生器6からノズル2可変遅延器へ*CLR信号が出力され、画素保持器30a~hのQ出力は0にクリアされる。
【0137】
ノズル毎ズレ情報加算器11では、図11に示すように、時刻t=1において、3.66(1Dzure#2:1次元ズレ画素量データ)+1.6(2Dzure#2:1列目の2次元ズレ画素両データ)=5.26画素(SEL#2.float)が算出される。そして、その5.26画素の小数点以下が切り捨てられた5画素が、SEL#2信号として、ノズル毎ズレ情報加算器11からノズル2可変遅延器のデコーダ34へ出力される。
【0138】
図10に示すデコーダ34において、S1~S5はそれぞれ1を出力し、S6~S8はそれぞれ0を出力する。
【0139】
S1~S5と接続されている論理乗算器31a~31e、一部負論理乗算器32a~32e、論理加算器33a~33eでは、画素保持器30a~30eのQ出力を、Dout#2または画素保持器30a~30dのD入力に伝える。
【0140】
S6~S8が接続されている論理乗算器31f~31h、一部負論理乗算器32f~32h、論理加算器33f~33hでは、Din#2の入力を、画素保持器30e~30gのD入力に伝える。画素保持器30hのD入力には、Din#2が入力される。吐出タイミング発生器6からのCLK信号の立ち上がりにより、画素保持器30a~30hへのD入力値は保持され、Qに出力される。
【0141】
図11に示すように、時刻t=1~3ではDin#2=0であるため、画素保持器30a~30hのQは、0のままである。時刻t=4、5において、Din#2=1になると、Din#2は、画素保持器30eのD5に伝えられる。そして、時刻t=6~8では、Din#2は、画素保持器30eのD5から画像保持器30a~30dに順次伝えられ、5画素分の遅延をもたらす。
【0142】
その後、図11に示すように、t=9において、SEL#2が5から3に変わると、Din#2の出力先は、D4~D3に切り替えられる。その結果、t=7~8では、画素保持器30d~30eのQに保持されていた値は、捨てられ、t=9からは、遅延量が5画素から3画素に変化する。
【0143】
以下同様に、t=17において、SEL#2信号が3から4に変わると、遅延量が3画素から4画素に変わる。また、t=25において、SEL#2信号が4から6に変わると、遅延量が4画素から6画素に変わる。そして、時刻t=40になると、遅延動作が完了する。
【0144】
図11に示すように、Dout#2として、時刻t=9、10、t=15、16、t=24、25、t=34、35のそれぞれにおいて、1が出力されている。
【0145】
以上のように、Din#2に示される値は、SEL#2に示される遅延量の増減に基づいて遅延し、Dout#2として出力される。
【0146】
なお、2次元ズレが縮小する方向になった時刻tにDin画素が吐出画素である場合、非吐出画素になる時刻t+nまで、SEL信号を切り変えないようにしてもよい。これにより、吐出画素が削除されることを防ぐことができる。
【0147】
また、分割画素間隔が小数画素値になる場合には、小数の加算器で累算を取り、整数間隔値をまたいだ時点で、2次元ズレ画素量データを切り変えるようにしてもよい。これによって小数の分割位置を整数にすることで発生する、累積誤差を生じさせず、端数誤差のみに抑えることができる。
【0148】
本実施の形態のインクジェット印刷装置100は、原画データを印刷原画保持器10に格納した上で、インクジェットヘッド3のノズル3aの特性変化により吐出位置が変化した場合では、その特性を表す1次元ズレ画素量データを正規化1次元ズレ情報保持器8に格納し、移動ステージ4の移動特性が変化した場合では、その特性を表す2次元ズレ画素量データを正規化2次元ズレ情報保持器9に格納し、それらのデータに基づいて原画データの印刷を行う。すなわち、インクジェット印刷装置100は、原画データ、2次元ズレ画素量データをそれぞれ別々に保持しておき、1次元ズレ画素量データと2次元ズレ画素量データとの加算値に基づいて、原画データを印刷することを特徴とする。よって、1次元ズレ補正時には1次元ズレ画素量データのみを書き換えればよく、2次元ズレ補正時には2次元ズレ画素量データのみを書き換えればよいため、両ズレ画素量の原画データへの反映処理や原画データをメモリへ書き込む処理が不要となる。また、印刷原画保持器10において原画データを入れ替える必要がない。したがって、印刷準備に要する処理時間を大幅に削減できる。すなわち、本実施の形態のインクジェット印刷装置100は、処理時間を削減しつつ、インク滴の着弾位置のズレを補正することができる。その結果、ディスプレイパネルの大型化や多面取化、および、生産量増大による印刷タクトの短縮を満たした、混色発光と輝度ムラのすくない高品質ディスプレイやそれを有する電子機器の提供に大きく寄与することができる。
【0149】
(実施の形態2)
インクジェット印刷装置100は、図4に示した構成要素のうち、正規化1次元ズレ情報保持器8およびノズル毎ズレ情報加算器11を備えなくてもよい。
【0150】
その場合、ノズル3a毎の1次元ズレ画素量データと2次元ズレ画素量データとの加算処理をソフトウェア処理で行い、得られた加算値を、2次元ズレ画素量データの代わりに、正規化2次元ズレ情報保持器9に格納するようにするようにしてもよい。これにより、実施の形態1と同様の動作を実現することができる。
【0151】
その場合、加算値は、小数点以下が切り捨てられた整数データとして正規化2次元ズレ情報保持器9に格納されてもよい。これにより、加算値が小数データである実施の形態1に比べて、メモリと回路規模を削減できる。
【0152】
(実施の形態3)
図4に示したノズル間ピッチLnyを細かくするために、図4に示した2つのインクジェットヘッド3の配置を、図12に示すようにSCAN方向Xに対して斜めに傾けた場合、SCAN方向XにおけるノズルピッチLnX(以下、SCAN方向ノズルピッチLnXという)が発生する。
【0153】
実施の形態1において、所定の制御コンピュータ(ソフトウェア)を用いて、SCAN方向ノズルピッチLnXのn倍を、原画データにおいてノズル3a毎にずらすこと(以下、ずらし加工という)により、ズレ補正された印刷が可能になる。ノズル3a毎のずらし量は、SCAN方向印刷画像分解能pxが変化する度に再計算され、それに基づいて原画データはずらし加工される。なお、上記nは、原画データのSCAN方向印刷分解能pxが変更される毎に、Lnxと割算値とに基づいて決定される。この場合、端数(小数)が出るが、その端数は正規化1次元ズレ情報保持器8の1次元ズレ画素量データに加算される。
【0154】
ずらし加工とは、原画データ自体をノズル3aの配置に合わせて加工する処理である。ノズル3aの配置は設計時に決まっている一方で、インクジェットヘッド3の取り付けやインクジェットヘッド3自体の吐出の様子(機差)によって着弾ズレが発生する。ずらし加工では、後者を1次元ズレ画素量データに基づいて補正し、前者は原画データ自体をノズル3aの配置に合わせて加工する。ズレ補正量の加工頻度に比べて、原画データの作成頻度は多くないので、原画データが大きくても、加工にかかる時間は生産を圧迫しない。
【0155】
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態3で説明したLnXのn倍のズレ補正を、原画データを加工することなく行う方法である。
【0156】
インクジェット印刷装置100は、図4に示す構成要素に加えて、ノズル3a毎のずらし量を保持するノズル配置ズレ情報保持器(図示略)を備える。このノズル3a毎のずらし量は、SCAN方向印刷画像分解能pxが変化する度に再計算され、ノズル配置ズレ情報保持器に格納される。
【0157】
ノズル毎ズレ情報加算器11は、ノズル配置ズレ情報保持器に格納されているノズル3a毎のずらし量に基づいて、ノズル毎可変遅延器12の可変遅延範囲をLnXのn倍のズレ量のズレ補正ができる範囲に拡張する。
【0158】
本実施の形態では、原画データの加工することなく、ズレ補正された印刷が可能になる。
【0159】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本開示のインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法は、インク滴の着弾位置のズレの補正に有用である。
【符号の説明】
【0161】
1 印刷基板
1a 撥液膜
1b バンク
1c 画素領域
1d 着弾逃げ部分
1e 画素内着弾領域
2a 印刷吐出ドット格子
2b 着弾領域内ドット格子
3 インクジェットヘッド
3a ノズル穴
4 移動ステージ
5 位置検出器
6 印刷タイミング発生器
7 駆動信号発生器
8 正規化1次元ズレ情報保持器
9 正規化2次元ズレ情報保持器
10 印刷原画保持器
11 ノズル毎ズレ情報加算器
12 ノズル毎可変遅延器
13 駆動信号選択器
20 着弾期待位置
21 着弾位置
30a~h 画素保持器(1bitフリップフロップ)
31a~h 論理乗算器(ANDゲート)
32a~h 一部負論理乗算器(1入力負論理ANDゲート)
33a~h 論理加算器(ORゲート)
34 デコーダ
100 インクジェット印刷装置
図1
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図2B
図2C
図3
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図5
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