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特許7555019空気質管理システム、及び、空気質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】空気質管理システム、及び、空気質管理方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/72 20180101AFI20240913BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20240913BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20240913BHJP
【FI】
F24F11/72
F24F8/80 145
F24F110:70
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021088085
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181255
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌史
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179362(WO,A1)
【文献】特開2013-120001(JP,A)
【文献】特開2000-234782(JP,A)
【文献】特開平11-248210(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146121(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/217616(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 8/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して前記空間に放出する空気浄化装置の浄化能力を示す第一情報、及び、前記空間に位置する人の人数を示す第二情報を取得する取得部と、
取得された前記第一情報及び取得された前記第二情報に基づいて、前記空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定部とを備える
空気質管理システム。
【請求項2】
前記取得部は、さらに、前記空間に位置する人が前記空間を利用し始めてからの経過時間を示す第三情報を取得し、
前記決定部は、取得された前記第一情報、取得された前記第二情報、及び、取得された前記第三情報に基づいて、前記目標値を決定する
請求項1に記載の空気質管理システム。
【請求項3】
前記取得部は、さらに、前記空気浄化装置の状態を示す第四情報を取得し、
前記決定部は、取得された前記第四情報に基づいて前記第一情報を補正し、補正した前記第一情報、及び、取得された前記第二情報に基づいて、前記目標値を決定する
請求項1または2に記載の空気質管理システム。
【請求項4】
前記決定部は、
前記第一情報が示す前記浄化能力を換気量相当値に換算し、
前記空間を所定の換気量で換気しているときの前記空間における二酸化炭素濃度を示す式、及び、前記第二情報が示す人数を用いて、前記空間における換気量が前記換気量相当値だけ増えることによる二酸化炭素濃度の減少量を算出し、
前記空間における二酸化炭素濃度の所定の基準値を、前記減少量だけオフセットさせた値を前記目標値として決定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気質管理システム。
【請求項5】
さらに、前記空間における二酸化炭素濃度の実測値と前記目標値とを比較することによりユーザへコンテンツを提示する提示部を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気質管理システム。
【請求項6】
前記提示部は、
前記空気浄化装置が動作中であるときには、前記実測値と前記目標値とを比較することにより前記ユーザへコンテンツを提示し、
前記空気浄化装置が停止中であるときには、前記実測値と所定の基準値とを比較することにより前記ユーザへコンテンツを提示する
請求項5に記載の空気質管理システム。
【請求項7】
さらに、前記空間における二酸化炭素濃度の実測値が決定された前記目標値以下となるように前記空間に設けられた換気装置を制御する制御部を備える
請求項1~6のいずれか1項に記載の空気質管理システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記空気浄化装置が動作中であるときには、前記実測値が前記目標値以下となるように前記換気装置を制御し、
前記空気浄化装置が停止中であるときには、前記実測値が所定の基準値以下となるように前記換気装置を制御する
請求項7に記載の空気質管理システム。
【請求項9】
前記空気質管理システムは、前記換気装置による換気量を抑制するための換気抑制モードを有し、
前記換気抑制モードにおいて、
前記決定部は、前記第一情報が前記空気浄化装置の最大の浄化能力を示すときの前記目標値を決定し、
前記制御部は、前記空気浄化装置を最大の浄化能力で動作させ、かつ、前記空間における二酸化炭素濃度の実測値が決定された前記目標値以下となるように前記換気装置を制御する
請求項7または8に記載の空気質管理システム。
【請求項10】
前記空気質管理システムは、前記空間における微粒子濃度が所定値よりも大きい場合に、前記換気抑制モードの動作を行う
請求項9に記載の空気質管理システム。
【請求項11】
前記空気質管理システムは、前記空間における湿度が所定値未満である場合に、前記換気抑制モードの動作を行う
請求項9または10に記載の空気質管理システム。
【請求項12】
前記取得部は、前記空間における人のセンシング結果に基づいて前記第二情報を取得する
請求項1~11のいずれか1項に記載の空気質管理システム。
【請求項13】
空間の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して前記空間に放出する空気浄化装置の浄化能力を示す第一情報を取得する第一取得ステップと、
前記空間に位置する人の人数を示す第二情報を取得する第二取得ステップと、
取得された前記第一情報及び取得された前記第二情報に基づいて、前記空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定ステップとを含む
空気質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気質管理システム、及び、空気質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほこり、粒子状物質(PM2.5など)、VOC(Volatile Organic Compounds)、及び、感染性物質などは人体にとって有害である。室内空間を換気することは、室内空間において有害物質を減少させる(つまり、空気質を改善する)ための一つの手段である。換気に関する技術として、例えば、特許文献1には、複数の換気装置が一つの対象空間に設置され、各換気装置が二酸化炭素センサを備えた換気システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-119752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、空間の換気する際には当該空間における二酸化炭素濃度が指標として用いられる。
【0005】
本発明は、空気清浄機等によって得られる効果を考慮して、空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定することができる空気質管理システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る空気質管理システムは、空間の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して前記空間に放出する空気浄化装置の浄化能力を示す第一情報、及び、前記空間に位置する人の人数を示す第二情報を取得する取得部と、取得された前記第一情報及び取得された前記第二情報に基づいて、前記空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定部とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係る空気質管理方法は、空間の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して前記空間に放出する空気浄化装置の浄化能力を示す第一情報を取得する第一取得ステップと、前記空間に位置する人の人数を示す第二情報を取得する第二取得ステップと、取得された前記第一情報及び取得された前記第二情報に基づいて、前記空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定ステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る空気質管理システム等は、空気清浄機等によって得られる効果を考慮して空間における二酸化炭素濃度の目標値を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る空気質管理システムの機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態に係る空気質管理システムが適用される施設内の空間を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る空気質管理システムの二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例1のフローチャートである。
図4図4は、実施の形態に係る空気質管理システムの二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例2のフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る空気質管理システムの二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例3のフローチャートである。
図6図6は、エアフィルタの性能曲線の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る空気質管理システムのコンテンツの表示動作のフローチャートである。
図8図8は、表示されるコンテンツ(メッセージ)と判定基準との関係を示す図である。
図9図9は、実施の形態に係る空気質管理システムの換気装置の制御動作のフローチャートである。
図10図10は、実施の形態に係る空気質管理システムの、通常モード及び換気抑制モードの切り替え動作例1のフローチャートである。
図11図11は、実施の形態に係る空気質管理システムの、通常モード及び換気抑制モードの切り替え動作例2のフローチャートである。
図12図12は、実施の形態に係る空気質管理システムの換気抑制モードの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る空気質管理システムの構成について説明する。図1は、実施の形態に係る空気質管理システムの機能構成を示すブロック図である。図2は、実施の形態に係る空気質管理システムが適用される施設内の空間を示す図である。
【0013】
図1に示されるように、空気質管理システム10は、施設80内の空間81における空気質を管理するシステムである。空気質管理システム10は、具体的には、空間81における二酸化炭素濃度を管理し、空間81における情報の提示、及び、空間81の換気制御などを行う。施設80は、例えば、オフィスビルなどであるが、住宅などのその他の施設であってもよい。空間81は、例えば、会議室などであるが、その他の部屋等であってもよい。
【0014】
空気質管理システム10は、具体的には、制御装置20と、センサ群30と、空気浄化装置41と、換気装置42と、表示装置50と、サーバ装置60とを備える。制御装置20、センサ群30、空気浄化装置41、換気装置42、及び、表示装置50は、施設80に設置される。サーバ装置60は、施設80外に設置されるが、施設80内に設置されてもよい。以下、これらの各構成要素について説明する。
【0015】
制御装置20は、換気装置42及び空気浄化装置41を制御する装置である。制御装置20は、施設80内に設置されるローカルコントローラである。制御装置20は、サーバ装置60から広域通信ネットワーク70を介して制御指令を受信し、受信した制御指令に基づいて換気装置42及び空気浄化装置41を制御する。また、制御装置20は、センサ群30からセンサ群30のセンシングによって得られる計測値を受信し、受信した計測値を広域通信ネットワーク70を介してサーバ装置60へ送信する。制御装置20は、記憶部21を備える。
【0016】
記憶部21は、センサ群30から得られる計測値、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報、空間81に位置する人の人数を示す第二情報、並びに、制御装置20が換気装置42及び空気浄化装置41の制御を行うために必要な各種情報(コンピュータプログラムなど)などが記憶される記憶装置である。記憶部21は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0017】
センサ群30は、空間81における空気質または人のセンシングを行い、センシング結果を制御装置20へ送信する。センサ群30には、二酸化炭素濃度センサ31、人数センサ32、微粒子濃度センサ33、及び、湿度センサ34が含まれる。
【0018】
二酸化炭素濃度センサ31は、空間81における二酸化炭素濃度を計測し、二酸化炭素濃度の計測値を制御装置20へ送信する。
【0019】
人数センサ32は、空間81における人の数をセンシングする。人数センサ32は、例えば、空間81における人の映像を撮影し、撮影した映像を処理することにより空間81における人の人数を示す情報(第二情報)を制御装置20へ送信する。人数センサ32は、人の体から発せられる赤外線を検出し、赤外線の検出結果に基づいて人の人数を推定するセンサであってもよい。
【0020】
微粒子濃度センサ33は、空間81における微粒子(例えば、花粉またはPM(Particulate Matter)2.5など)の濃度を計測し、計測した微粒子濃度の計測値を制御装置20へ送信する。微粒子濃度センサ33は、例えば、LED等の光源が発する光の散乱に基づいて微粒子濃度をセンシングする光学式のセンサである。なお、微粒子濃度センサ33は、空気浄化装置41に内蔵されてもよい。以下の実施の形態では、微粒子濃度センサ33は、花粉の濃度をセンシングするセンサであるとして説明が行われる。
【0021】
湿度センサ34は、空間81における湿度を計測し、湿度の計測値を制御装置20へ送信する。湿度センサ34は、例えば、静電容量型の感湿素子または抵抗変化型の感湿素子などの湿度計測素子によって実現される。
【0022】
空気浄化装置41は、空間81の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して空間81に放出する装置である。空気浄化装置41は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどのエアフィルタを備え、吸引した空気をエアフィルタによって浄化(濾過)して空間81に放出する空気清浄機である。なお、空気浄化装置41は、例えば、吸引した空気を紫外光によって浄化(除菌)して空間81に放出する装置であってもよい。また、空気浄化装置41は、吸引した空気を次亜塩素酸水によって浄化(除菌)して空間81に放出する装置であってもよい。
【0023】
換気装置42は、空間81における換気を行う。換気装置42は、例えば、ERV(Energy Recovery Ventilator)などの全熱交換器を含む換気装置であるが、換気扇などの熱交換をともなわない換気装置であってもよい。
【0024】
表示装置50は、空間81における二酸化炭素濃度の実測値に応じたコンテンツの表示を行う。表示装置50は、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネルなどの表示パネルによって実現される。なお、表示装置50は、広域通信ネットワーク70を通じてサーバ装置60と通信を行うことができる。表示装置50は、制御装置20を介してサーバ装置60と通信を行ってもよい。
【0025】
サーバ装置60は、施設80外に設けられるクラウドサーバである。サーバ装置60は、具体的には、通信部61と、情報処理部62と、記憶部63とを備える。
【0026】
通信部61は、サーバ装置60が広域通信ネットワーク70を通じて制御装置20及び表示装置50と通信を行うための通信モジュール(通信回路)である。通信部61によって行われる通信は、例えば、有線通信であるが、無線通信であってもよい。通信に用いられる通信規格についても特に限定されない。
【0027】
情報処理部62は、空間81における二酸化炭素濃度の目標値の決定などの情報処理を行う。情報処理部62は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0028】
情報処理部62は、機能的な構成要素として、取得部64、決定部65、提示部66、及び、制御部67を有する。取得部64、決定部65、提示部66、及び、制御部67の機能は、例えば、情報処理部62を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサ等が記憶部63に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。取得部64、決定部65、提示部66、及び、制御部67のそれぞれの詳細な機能については後述する。
【0029】
記憶部63は、上記情報処理に必要な情報(後述の数式、及び、各種数値など)、及び、情報処理部62が実行するコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部63は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリなどによって実現されてもよい。
【0030】
[目標値の決定動作の例1]
空気質管理システム10は、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定し、この目標値を表示装置50へコンテンツを表示するときの閾値、及び、換気装置42を制御するときの閾値として使用する。以下、空気質管理システム10の二酸化炭素濃度の目標値の決定動作について説明する。図3は、空気質管理システム10の二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例1のフローチャートである。
【0031】
まず、サーバ装置60の取得部64は、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を取得する(S11)。浄化能力は、具体的には、空気浄化装置41による空気の循環量q[m/h]、及び、除去率ε(紫外光または次亜塩素酸水で浄化が行われる場合は除菌率ε)などである。例えば、制御装置20は、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を管理(記憶部21に記憶)している。通信部61は、制御装置20から第一情報を受信し、取得部64は、通信部61によって受信された第一情報を取得する。
【0032】
なお、取得部64は、通信部61を用いて制御装置20から空気浄化装置41の識別情報(品番など)を取得し、取得した品番に対応する空気浄化装置41の浄化能力を、空気浄化装置41の製造事業者が使用する他のサーバ装置(図示せず)に問い合わせることで、他のサーバ装置から第一情報を取得してもよい。また、ユーザは、図示されないユーザインターフェース装置へ空気浄化装置41の浄化能力を手動入力し、取得部64は、通信部61を用いてユーザインターフェース装置から第一情報を取得してもよい。
【0033】
次に、取得部64は、空間81に位置する人の人数を示す第二情報を取得する(S12)。例えば、通信部61は、人数センサ32によって送信される第二情報を制御装置20を介して受信し、取得部64は、通信部61によって受信された第二情報を取得する。つまり、取得部64は、空間81における人のセンシング結果に基づいて第二情報を取得する。なお、ユーザは、図示されないユーザインターフェース装置へ空間81に位置する人の人数を手動入力し、取得部64は、通信部61を用いてユーザインターフェース装置から第二情報を取得してもよい。
【0034】
次に、決定部65は、ステップS11において取得された第一情報、及び、ステップS12において取得された第二情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定し(S13)、決定した目標値を記憶部63に記憶する(S14)。この目標値は、例えば、表示装置50へコンテンツを表示するときの閾値、及び、換気装置42を制御するときの閾値として使用される。
【0035】
以下、目標値の決定方法について詳細に説明する。一般的に、空間81を所定の換気量で換気しているときの二酸化炭素の濃度を示す式として、下記の式(1)が知られている。式(1)は完全混合式などと呼ばれる場合がある。
【0036】
CO2,t=C+(M/Q)・(1-exp(-Q/Vt))・・式(1)
【0037】
式(1)において、Cは空間81における初期の二酸化炭素濃度であり、Mは二酸化炭素の発生量であり、Qは換気量であり、Vは、空間81の容積であり、tは経過時間である。経過時間tが十分に長い場合(t=∞)には、式(1)は、以下の式(2)のように変形できる。
【0038】
CO2,∞=C+(M/Q)・・式(2)
【0039】
ここで、決定部65は、循環量q[m/h]、及び、除去率εを乗算することにより、浄化能力を第一情報が示す換気量相当値に換算することができる。つまり、換気量相当値ΔQ=q・εとなる。
【0040】
空間81において空気浄化装置41が動作しているときには、上記式(2)において、換気量Qは、Q+ΔQ=Q+q・εに置き換えられる。つまり、以下の式(3)が得られる。
【0041】
CO2,∞=C+(M/(Q+q・ε))・・式(3)
【0042】
空気浄化装置41の動作の有無に基づく二酸化炭素濃度の差(後述の減少量)ΔCCO2,∞は、式(2)から式(3)を減算することで求められ、以下の式(4)のように表される。
【0043】
ΔCCO2,∞=(M/Q)-(M/(Q+q・ε))・・式(4)
【0044】
ここで、人の呼気に含まれる二酸化炭素の量(つまり、二酸化炭素の発生量M)は、空間81における人数をn、活動状態を示す数値をkとして、M=n・k・0.01794で算出される。例えば、ステップS12で取得された第二情報が示す人数が3人であり、安静状態(k=1)である場合、M=3・1・0.01794となる。換気量QをQ=90[m/h]とすると、式(4)のM/Qの項は、M/Q=598[ppm]となる。
【0045】
一方、循環量q=30、除去率ε=0.9とすると、M/(Q+q・ε)の項は、M/(Q+q・ε)=460[ppm]となる。
【0046】
そうすると、式(4)から、ΔCCO2,∞=598-460=138[ppm]となる。この138ppmは、空間81における換気量Qが換気量相当値ΔQだけ増えることによる二酸化炭素濃度の減少量であるといえる。
【0047】
一般に、空間81においては二酸化炭素濃度の基準値が定められており、この基準値は、例えば、1000ppmである。つまり、空間81においては、二酸化炭素濃度が1000ppm以下になるように換気される(換気装置42を動作させる)ことが推奨されている。しかしながら、この基準値は空気浄化装置41が動作していないことを前提としており、空気浄化装置41が動作しているときには、二酸化炭素濃度が138ppm減少することに等しい効果が得られる。つまり、空間81における二酸化炭素濃度は、1000ppmではなく、1138ppm以下に抑えられればよいと考えられる。
【0048】
そこで、決定部65は所定の基準値(例えば、1000ppm)から上述の減少量(例えば、138ppm)だけオフセットした1138ppmを、空気浄化装置41が動作中の換気等の目標値として決定する。
【0049】
以上説明したように、空気質管理システム10は、取得された第一情報及び取得された第二情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定する。空気質管理システム10は、具体的には、第一情報が示す浄化能力を換気量相当値に換算し、空間81を所定の換気量で換気しているときの空間における二酸化炭素濃度を示す式(1)、及び、第二情報が示す人数を用いて、空間81における換気量が換気量相当値だけ増えることによる二酸化炭素濃度の減少量を算出する。そして、空気質管理システム10は、空間81における二酸化炭素濃度の所定の基準値を、算出された減少量だけオフセットさせた値を目標値として決定する。
【0050】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮した目標値に基づいて、表示装置50へのコンテンツの表示、及び、換気装置42の制御などを行うことができる。例えば、空気質管理システム10は、空気浄化装置41及び換気装置42を制御するときには、空気浄化装置41を動作させ、かつ、決定した目標値に基づいて換気装置42を制御すればよく、制御を簡素化することができる。なお、表示装置50へのコンテンツの表示の具体例、及び、換気装置42の制御の具体例については後述する。
【0051】
[目標値の決定動作の例2]
上記二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例1においては、経過時間tは、t=∞とされたが、二酸化炭素濃度の目標値は、経過時間tを考慮して決定されてもよい。図4は、空気質管理システム10の二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例2のフローチャートである。
【0052】
サーバ装置60の取得部64は、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を取得し(S21)、空間81に位置する人の人数を示す第二情報を取得する(S22)。ステップS21及びS22の処理は、ステップS11及びS12の処理と同様である。
【0053】
次に、取得部64は、空間81に位置する人が空間81を利用し始めてからの経過時間tを示す第三情報を取得する(S23)。取得部64は、例えば、第二情報(人数センサ32によって送信される情報)が示す人数が0から1以上に変化したタイミングを起点として、経過時間tを計測することにより、経過時間t(経過時間tを示す第三情報)を取得することができる。
【0054】
また、空間81が会議室などである場合には、通信部61は、会議室の予約管理システム(図示せず)等から会議のスケジュール情報を受信し、取得部64は、受信したスケジュール情報を第三情報として取得してもよい。スケジュール情報には会議の開始時刻が含まれるため、取得部64は、スケジュール情報と現在時刻とを用いて経過時間を特定することができる。
【0055】
次に、決定部65は、ステップS21において取得された第一情報、ステップS22において取得された第二情報、及び、ステップS23において取得された第三情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定し(S23)。決定した目標値を記憶部63に記憶する(S24)。
【0056】
二酸化炭素濃度の減少量ΔCCO2,∞は、経過時間tを考慮する場合には、以下の式(5)で表される。
【0057】
ΔCCO2,∞=M/Q*(1-exp(-Q/Vt))
-M/(Q+qε)・(1-exp(-(Q+qε)/Vt))・・式(5)
【0058】
ステップS23では、決定部65は、このような式(5)に基づいてΔCCO2,∞を算出する。経過時間t以外のパラメータが二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例1と同一であるとすると、例えば、t=0.5[h]のときには、ΔCCO2,t=0.5=43[ppm]、t=1[h]のときには、ΔCCO2,t=1=91[ppm]、t=2[h]のときには、ΔCCO2,t=2=130[ppm]となる。
【0059】
そして、決定部65は、所定の基準値(例えば、1000[ppm])から減少量だけオフセットした二酸化炭素濃度を、空気浄化装置41が動作中の換気等の目標値として決定する。つまり、経過時間tが長いほど、目標値は大きくなる。
【0060】
以上説明したように、空気質管理システム10は、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報、及び、空間81に位置する人の人数を示す第二情報に加えて、空間81に位置する人が空間81を利用し始めてからの経過時間tを示す第三情報に基づいて目標値を決定する。これにより、空気質管理システム10は、経過時間tに応じて適切に目標値を決定することができる。
【0061】
[目標値の決定動作の例3]
空気浄化装置41の浄化能力は、例えば、想定される浄化能力(カタログ値)であり、空気浄化装置41の状態(メンテナンス状態、コンディション)によっては低下している可能性がある。例えば、空気浄化装置41が備えるエアフィルタが目詰まりしている場合には、浄化能力は低下する。
【0062】
そこで、二酸化炭素濃度の目標値を決定するときには、空気浄化装置41の状態に応じて浄化能力を示す第一情報が補正されてもよい。図5は、空気質管理システム10の二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例3のフローチャートである。
【0063】
サーバ装置60の取得部64は、空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を取得し(S31)、空間81に位置する人の人数を示す第二情報を取得する(S32)。ステップS31及びS32の処理は、ステップS11及びS12の処理と同様である。
【0064】
次に、取得部64は、空気浄化装置41の状態を示す第四情報を取得する(S33)。例えば、制御装置20は、空気浄化装置41の累積稼働時間を計測し、記憶部21に記憶している。通信部61は、制御装置20から空気浄化装置41の累積稼働時間を示す情報を受信し、取得部64は、通信部61によって受信された情報を、空気浄化装置41の状態に関する第四情報として取得する。
【0065】
次に、決定部65は、第四情報に基づいて第一情報を補正する(S34)。例えば、サーバ装置60の記憶部63に、空気浄化装置41の累積稼働時間と空気浄化装置41が備えるエアフィルタの性能(圧力損失)との関係を示す情報(エアフィルタの性能曲線)が記憶されている。図6は、エアフィルタの性能曲線の一例を示す図である。決定部65は、ステップS33において取得された第四情報が示す累積稼働時間と、図6のようなエアフィルタの性能曲線とに基づいて、第一情報(浄化能力)を補正することができる。例えば、累積稼働時間が6000hであれば、エアフィルタの効率が20%低下するので、除去率εが0.8倍される。
【0066】
次に、決定部65は、ステップS33において補正された第一情報、及び、ステップS32において取得された第二情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定し(S35)。決定した目標値を記憶部63に記憶する(S36)。ステップS35の処理は、ステップS33において補正された第一情報が用いられることを除いて、ステップS13の処理と同様である。
【0067】
以上説明したように、空気質管理システム10は、空気浄化装置41の状態を示す第四情報に基づいて空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を補正し、補正した第一情報に基づいて、二酸化炭素濃度の目標値を決定する。これにより、空気質管理システム10は、空気浄化装置41の状態(浄化能力の低下)に応じて適切に目標値を決定することができる。
【0068】
なお、空気浄化装置41の状態を示す第四情報は、空気浄化装置41の累積稼働時間を示す情報に限定されない。例えば、空気浄化装置41がエアフィルタの前後の差圧を計測するセンサを備え、制御装置20がこの差圧を管理(記憶部21に記憶)しているような場合、第四情報は、差圧を示す情報であってもよい。この場合、サーバ装置60の記憶部63に、差圧とエアフィルタの性能(効率)との関係を示す情報(エアフィルタの性能曲線)が記憶されていれば、決定部65は、第一情報(浄化能力)を補正することができる。
【0069】
また、二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例3においては、二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例1に第一情報の補正処理が加えられる例について説明されたが、二酸化炭素濃度の目標値の決定動作の例2に第一情報の補正処理が加えられてもよい。
【0070】
[コンテンツの表示動作]
次に、上記のように決定された目標値を用いたコンテンツの表示動作について説明する。図7は、コンテンツの表示動作のフローチャートである。
【0071】
まず、取得部64は、二酸化炭素濃度センサ31によって計測される空間81における二酸化炭素濃度の計測値を取得する(S41)。通信部61は、制御装置20から二酸化炭素濃度の計測値を受信し、取得部64は、通信部61によって受信された計測値を取得する。
【0072】
次に、取得部64は、空気浄化装置41の動作状態を示す情報を取得する(S42)。取得部64は、通信部61を用いて制御装置20から空気浄化装置41の動作状態を示す情報を受信し、受信した空気浄化装置41の動作状態を示す情報を取得する。
【0073】
次に、提示部66は、ステップS42において取得された空気浄化装置41の動作状態を示す情報に基づいて、空気浄化装置41が動作中であるか否かを判定する(S43)。提示部66は、空気浄化装置41が停止中であると判定すると(S43でNo)、ステップS41において取得された計測値と、記憶部63に記憶された所定の基準値(例えば、1000ppm)に基づく判定基準とを比較することにより、表示装置50に表示するコンテンツを決定する(S44)。また、提示部66は、通信部61を用いて、決定したコンテンツの表示指令を表示装置50へ送信する(S46)。この結果、表示装置50にコンテンツが表示される。図8は、表示されるコンテンツ(メッセージ)と、判定基準との関係を示す図である。
【0074】
図8に示されるように、空気浄化装置41が停止中のときには、二酸化炭素濃度の計測値が1000ppm以下の場合、「換気に余裕があります」というメッセージが表示され、二酸化炭素濃度の計測値が1000ppmよりも大きく1300ppm以下の場合に「やや混んできております」というメッセージが表示される。また、二酸化炭素濃度の計測値が1300ppmよりも大きい場合に「混んでおりますので利用をお控えください」というメッセージが表示される。
【0075】
一方、提示部66は、空気浄化装置41が動作中であると判定すると(S43でYes)、ステップS41において取得された計測値と、記憶部63に記憶された目標値(上記のように決定された目標値。例えば、1138ppm)に基づく判定基準とを比較することにより、表示装置50に表示するコンテンツを決定する(S45)。提示部66は、通信部61を用いて、決定したコンテンツの表示指令を表示装置50へ送信する(S46)。この結果、表示装置50にコンテンツが表示される。
【0076】
図8に示されるように、空気浄化装置41が動作中のときには、二酸化炭素濃度の計測値が1138ppm以下の場合、「換気に余裕があります」というメッセージが表示され、二酸化炭素濃度の計測値が1138ppmよりも大きく1438ppm以下の場合に「やや混んできております」というメッセージが表示される。また、二酸化炭素濃度の計測値が1438ppmよりも大きい場合に「混んでおりますので利用をお控えください」というメッセージが表示される。
【0077】
このように、空気質管理システム10は、空気浄化装置41が動作中であるか否かに応じてどのようなコンテンツを表示するかの判定基準を変更する。これにより、空気浄化装置41の空気質への影響を考慮したコンテンツの表示が実現される。
【0078】
なお、上記のコンテンツの表示動作の説明において、コンテンツとは、映像コンテンツを意味するが、コンテンツは、サウンドコンテンツであってもよい。つまり、空気質管理システム10は、空気浄化装置41が動作中であるか否かに応じてどのようなサウンドコンテンツを提示(出力)するかの判定基準を変更してもよい。
【0079】
[換気装置の制御動作]
次に、上記のように決定された目標値を用いた換気装置42の制御動作について説明する。図9は、換気装置42の制御動作のフローチャートである。
【0080】
まず、取得部64は、二酸化炭素濃度センサ31によって計測される空間81における二酸化炭素濃度の計測値を取得する(S51)。次に、取得部64は、空気浄化装置41の動作状態を示す情報を取得する(S52)。ステップS51及びS52の処理は、ステップS41及びS42の処理と同様である。
【0081】
次に、制御部67は、ステップS52において取得された空気浄化装置41の動作状態を示す情報に基づいて、空気浄化装置41が動作中であるか否かを判定する(S53)。制御部67は、空気浄化装置41が停止中であると判定すると(S53でNo)、ステップS51において取得された計測値と、記憶部63に記憶された所定の基準値(例えば、1000ppm)とを比較することにより、ステップS51において取得された計測値が、所定の基準値以下となるように換気装置42を制御する(S54)。制御部67は、具体的には、通信部61を用いて、制御装置20へ制御指令を送信することにより制御装置20を介して換気装置42を制御する。制御部67は、例えば、計測値が所定の基準値以下である場合には換気装置42を通常運転させ、計測値が所定の基準値よりも大きい場合には換気装置42の換気量を通常運転時よりも増大させる。
【0082】
一方、制御部67は、空気浄化装置41が動作中であると判定すると(S53でYes)、ステップS51において取得された計測値と、記憶部63に記憶された目標値(上記のように決定された目標値。例えば、1138ppm)とを比較することにより、ステップS51において取得された計測値が、目標値以下となるように換気装置42を制御する(S55)。制御部67は、具体的には、通信部61を用いて、制御装置20へ制御指令を送信することにより制御装置20を介して換気装置42を制御する。制御部67は、例えば、計測値が目標値以下である場合には換気装置42を通常運転させ、計測値が目標値よりも大きい場合には換気装置42の換気量を通常運転時よりも増大させる。
【0083】
このように、空気質管理システム10は、空気浄化装置41が動作中であるか否かに応じて換気装置42の制御基準を変更する。これにより、空気浄化装置41の空気質への影響を考慮した空間81の換気が実現される。
【0084】
[換気抑制モード]
ところで、花粉が多い季節には、換気量を減らすことで、空間81に花粉が侵入することを抑制することができる。同様に、湿度の低い乾燥した季節などには、換気量を減らすことで空間81の乾燥を抑制することができる。そこで、空気質管理システム10は、通常モードに加えて、換気装置42による換気量を抑制するための換気抑制モードを有してもよい。図10は、通常モード及び換気抑制モードの切り替え動作例1のフローチャートである。切り替え動作例1においては、微粒子濃度(つまり、花粉の量)に基づいて通常モード及び換気抑制モードが切り替えられる。
【0085】
まず、取得部64は、微粒子濃度センサ33によって計測される空間81における微粒子濃度の計測値を取得する(S61)。通信部61は、制御装置20から微粒子濃度の計測値を受信し、取得部64は、通信部61によって受信された計測値を取得する。
【0086】
次に、制御部67は、ステップS61において取得された微粒子濃度の計測値が所定値以上であるか否かを判定する(S62)。制御部67は、微粒子濃度の計測値が所定値未満であると判定すると(S62でNo)、通常モードの動作を行う(S63)。通常モードの動作とは、図8で説明した動作である。一方、制御部67は、微粒子濃度の計測値が所定値以上であると判定すると(S62でYes)、換気抑制モードの動作を行う(S64)。換気抑制モードの動作については後述する。
【0087】
図11は、通常モード及び換気抑制モードの切り替え動作例2のフローチャートである。切り替え動作例2においては、湿度に基づいて通常モード及び換気抑制モードが切り替えられる。
【0088】
まず、取得部64は、湿度センサ34によって計測される空間81における湿度の計測値を取得する(S71)。通信部61は、制御装置20から湿度の計測値を受信し、取得部64は、通信部61によって受信された計測値を取得する。
【0089】
次に、制御部67は、ステップS71において取得された湿度の計測値が所定値未満であるか否かを判定する(S72)。制御部67は、湿度の計測値が所定値以上であると判定すると(S72でNo)、通常モードの動作を行う(S73)。通常モードの動作とは、図8で説明した動作である。一方、制御部67は、湿度の計測値が所定値未満であると判定すると(S72でYes)、換気抑制モードの動作を行う(S74)。
【0090】
以下、換気抑制モードの動作について具体的に説明する。図12は、換気抑制モードの動作のフローチャートである。
【0091】
まず、決定部65は、目標値の再決定処理を行う(S81)。上述の目標値の決定動作の例1~3においては、通常時の空気浄化装置41の浄化能力に基づいて決定されているが、換気抑制モードにおいては、決定部65は、空気浄化装置41の最大の浄化能力を示す第一情報に基づいて目標値の再決定を行う。ステップS81の処理は、第一情報が空気浄化装置41の最大の浄化能力を示す点以外は、目標値の決定動作の例1~3と同様であるため詳細な説明が省略される。
【0092】
次に、制御部67は、空気浄化装置41を最大の浄化能力で動作させる(S82)。制御部67は、具体的には、通信部61を用いて、制御装置20へ制御指令を送信することにより制御装置20を介して空気浄化装置41を制御する。
【0093】
次に、取得部64は、二酸化炭素濃度センサ31によって計測される空間81における二酸化炭素濃度の計測値を取得する(S83)。ステップS83の処理は、ステップS41の処理と同様である。
【0094】
次に、制御部67は、ステップS83において取得された計測値が、ステップS81において再決定された目標値以下となるように換気装置42を制御する(S84)。制御部67は、具体的には、通信部61を用いて、制御装置20へ制御指令を送信することにより制御装置20を介して換気装置42を制御する。制御部67は、例えば、計測値が目標値以下である場合には換気装置42を通常運転させ、計測値が目標値よりも大きい場合には換気装置42換気量を通常運転時よりも増大させる。ステップS81で設定された目標値は、通常時の目標値(例えば、1138ppm)よりも大きい値となる。このため、換気抑制モードにおいては、通常モードよりも換気量が増大されにくくなる。
【0095】
以上説明したように、空気質管理システム10は、換気抑制モードにおいて、第一情報が空気浄化装置41の最大の浄化能力を示すときの目標値を決定し、空気浄化装置41を最大の浄化能力で動作させ、かつ、空間81における二酸化炭素濃度の実測値が決定された目標値以下となるように換気装置42を制御する。これにより、空気質管理システム10は、花粉が多い季節に、空間81における花粉の量の増加を抑制したり、湿度が低い乾燥した季節に空間81における空気の乾燥を抑制したりすることができる。
【0096】
なお、通常モードから換気抑制モードへの切り替えは、ユーザの手動入力によって行われてもよい。例えば、ユーザは、図示されないユーザインターフェース装置へ換気抑制モードへの切り替えを指示する手動入力を行い、取得部64は、通信部61を用いてユーザインターフェース装置から換気抑制モードへの切り替えを指示する指示情報を取得してもよい。
【0097】
[変形例]
上記実施の形態では、人数センサ32により空間81に位置する人の人数が検出されたが、人数センサ32に代えてカメラ(画像センサ)が設置され、サーバ装置60の取得部64は、カメラによって撮影された映像の映像情報を取得し、取得した映像情報を処理することで空間に位置する人の人数を特定してもよい。この場合、カメラによって撮影された映像の映像情報は、空間81に位置する人の数を間接的に示す第二情報であるといえる。
【0098】
また、この場合、決定部65は、取得部64によって取得された映像情報を処理することにより、目標値の決定において二酸化炭素の発生量を算出するために必要な、活動状態を示す数値kを特定することもできる。
【0099】
また、人数センサ32としては、LPS(Local Positioning System)が使用されてもよい。LPSは、施設80内に分散して配置された複数の無線通信装置を有し、これら複数の無線通信装置と施設80内に位置する人が所持する発信機との近距離無線通信における受信信号強度に基づいて、発信機の現在位置(つまり、人の現在位置)を計測する。LPSは、施設80内のどこに何人の人がいるか、つまり、空間81に何人の人がいるかを管理することができ、このような情報をサーバ装置60に提供することができる。
【0100】
また、取得部64は、二酸化炭素濃度センサ31によって計測される二酸化炭素濃度と、外気の二酸化炭素濃度と、空間81における換気量(上記式(1)のQ)から空間81に位置する人の人数を算出し、算出した人数を示す第二情報を取得してもよい。この場合、空気質管理システム10は、人数センサ32を備えていなくてもよい。
【0101】
例えば、空間81においてデスク作業が行われているとしたときの二酸化炭素濃度は、外気の二酸化炭素濃度、人数n、及び、換気量Qを用いて以下の式で算出することができる。
【0102】
二酸化炭素濃度=外気の二酸化炭素濃度+n*0.01794/Q
【0103】
取得部64は、この式を用いて、空間81における人数を算出することができる。例えば、二酸化炭素濃度が1596[ppm]、外気の二酸化炭素濃度が400[ppm]、Q=120[m/h]の場合、上記式は、1596=400+n*0.01794/120となり、n=8[人]と算出することができる。
【0104】
なお、外気の二酸化炭素濃度の計測には、例えば、図示されない二酸化炭素濃度センサ31とは別の外気用の二酸化炭素濃度センサが用いられるが、二酸化炭素濃度センサ31が外気の二酸化炭素濃度を計測することができる位置に設置されているのであれば、二酸化炭素濃度センサ31によって計測することもできる。外気の二酸化炭素濃度は平均的な二酸化炭素濃度を示す情報に基づいて固定値とされてもよいし、上記式(1)における初期の二酸化炭素濃度Cが外気の二酸化炭素濃度として使用されてもよい。
【0105】
[効果等]
以上説明したように、空気質管理システム10は、空間81の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して空間81に放出する空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報、及び、空間81に位置する人の人数を示す第二情報を取得する取得部64と、取得された第一情報及び取得された第二情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定部65とを備える。
【0106】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮して、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定することができる。
【0107】
また、例えば、取得部64は、さらに、空間81に位置する人が空間81を利用し始めてからの経過時間tを示す第三情報を取得する。決定部65は、取得された第一情報、取得された第二情報、及び、取得された第三情報に基づいて、目標値を決定する。
【0108】
このような空気質管理システム10は、経過時間tに応じて適切に目標値を決定することができる。
【0109】
また、例えば、取得部64は、さらに、空気浄化装置41の状態を示す第四情報を取得する。決定部65は、取得された第四情報に基づいて第一情報を補正し、補正した第一情報、及び、取得された第二情報に基づいて、目標値を決定する。
【0110】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41の状態(浄化能力の低下)に応じて適切に目標値を決定することができる。
【0111】
また、例えば、決定部65は、第一情報が示す浄化能力を換気量相当値に換算し、空間81を所定の換気量で換気しているときの空間81における二酸化炭素濃度を示す式、及び、第二情報が示す人数を用いて、空間81における換気量が換気量相当値だけ増えることによる二酸化炭素濃度の減少量を算出する。決定部65は、空間81における二酸化炭素濃度の所定の基準値を、減少量だけオフセットさせた値を目標値として決定する。
【0112】
このような空気質管理システム10は、第一情報が示す浄化能力を換気量相当値に換算することで、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮して、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定することができる。
【0113】
また、例えば、空気質管理システム10は、さらに、空間81における二酸化炭素濃度の実測値と目標値とを比較することによりユーザへコンテンツを提示する提示部66を備える。
【0114】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮して、コンテンツを提示することができる。
【0115】
また、例えば、提示部66は、空気浄化装置41が動作中であるときには、実測値と目標値とを比較することによりユーザへコンテンツを提示する。提示部66は、空気浄化装置41が停止中であるときには、実測値と所定の基準値とを比較することによりユーザへコンテンツを提示する。
【0116】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41が動作中であるか否かに応じてコンテンツを提示するときの基準を変更することができる。
【0117】
また、例えば、空気質管理システム10は、さらに、空間81における二酸化炭素濃度の実測値が決定された目標値以下となるように空間81に設けられた換気装置42を制御する制御部67を備える。
【0118】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮して、換気装置42を制御することができる。
【0119】
また、例えば、制御部67は、空気浄化装置41が動作中であるときには、実測値が目標値以下となるように換気装置42を制御し、空気浄化装置41が停止中であるときには、実測値が所定の基準値以下となるように換気装置42を制御する。
【0120】
このような空気質管理システム10は、空気浄化装置41が動作中であるか否かに応じて換気装置42の制御の基準を変更することができる。
【0121】
また、例えば、空気質管理システム10は、換気装置42による換気量を抑制するための換気抑制モードを有する。換気抑制モードにおいて、決定部65は、第一情報が空気浄化装置41の最大の浄化能力を示すときの目標値を決定し、制御部67は、空気浄化装置41を最大の浄化能力で動作させ、かつ、空間81における二酸化炭素濃度の実測値が決定された目標値以下となるように換気装置42を制御する。
【0122】
このような空気質管理システム10は、空間81における換気量を抑制することができる。
【0123】
また、例えば、空気質管理システム10は、空間81における微粒子濃度が所定値よりも大きい場合に、換気抑制モードの動作を行う。
【0124】
このような空気質管理システム10は、空間81における微粒子濃度(花粉の量)の増加を抑制することができる。
【0125】
また、例えば、空気質管理システム10は、空間81における湿度が所定値未満である場合に、換気抑制モードの動作を行う。
【0126】
このような空気質管理システム10は、空間81における空気の乾燥を抑制することができる。
【0127】
また、例えば、取得部64は、空間81における人のセンシング結果に基づいて第二情報を取得する。
【0128】
このような空気質管理システム10は、空間81における人のセンシング結果に基づいて第二情報を取得することができる。
【0129】
また、空気質管理システム10などのコンピュータによって実行される空気質管理方法は、空間81の空気を吸引し、吸引した空気を浄化して空間81に放出する空気浄化装置41の浄化能力を示す第一情報を取得する第一取得ステップS11と、空間81に位置する人の人数を示す第二情報を取得する第二取得ステップS12と、取得された第一情報及び取得された第二情報に基づいて、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定する決定ステップS13とを含む。
【0130】
このような空気質管理方法は、空気浄化装置41によって得られる効果を考慮して、空間81における二酸化炭素濃度の目標値を決定することができる。
【0131】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0132】
例えば、上記実施の形態において、空気質管理システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。例えば、空気質管理システムは、サーバ装置に相当する単一の装置として実現されてもよい。空気質管理システムが複数の装置によって実現される場合、空気質管理システムが備える構成要素(特に、機能的な構成要素)は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、上記実施の形態では、サーバ装置が備えると説明された構成要素の一部または全部は、制御装置によって備えられてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態で説明された処理の順序は、一例である。複数の処理の順序は変更されてもよいし、複数の処理は並行して実行されてもよい。また、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。
【0134】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0135】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0136】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、本発明は、空気質管理システムなどのコンピュータが実行する空気質管理方法として実行されてもよいし、このような空気質管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0137】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
10 空気質管理システム
41 空気浄化装置
42 換気装置
64 取得部
65 決定部
66 提示部
67 制御部
81 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12