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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/66 20060101AFI20240913BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240913BHJP
【FI】
G01S17/66
G01S17/89
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022505787
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049225
(87)【国際公開番号】W WO2021181841
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020041891
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 建治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弓子
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-072563(JP,A)
【文献】特表2008-509413(JP,A)
【文献】特開平11-072562(JP,A)
【文献】実開平03-110389(JP,U)
【文献】特開2001-174547(JP,A)
【文献】特表2018-529099(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065411(WO,A1)
【文献】特開昭50-128988(JP,A)
【文献】実公昭63-022546(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/64
G01S 13/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、
受光装置と、
前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、
前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得られた第1の信号に基づいて第1の距離データを生成し、
前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得られた第2の信号に基づいて第2の距離データを生成し、
対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記発光装置に前記第2の光前記対象物を追尾するように前記第2の光を照射させ、
前記対象物が前記第1の対象範囲の外側から内側に進入したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記追尾を停止させる、
測距装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記対象物が前記第1の対象範囲の内側に進入した後、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記処理回路は、
前記発光装置に、前記第1の対象範囲の外側にある第2の対象範囲を前記第2の光によってスキャンさせ、
前記スキャンによって得られた前記第2の信号または前記第2の距離データに基づき、前記対象物を検知し、
前記対象物を検知したことを受けて、前記発光装置に前記第2の光によって前記対象物の追尾を開始させる、
請求項1または2に記載の測距装置。
【請求項4】
第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、
受光装置と、
前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、
前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得た第1の信号に基づいて第1の距離データを生成し、
前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得た第2の信号に基づいて第2の距離データを生成し、
対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の内側に存在するとき、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録し、
前記対象物が、前記第1の対象範囲の内側から外側に移動したとき、前記発光装置に前記第2の光前記対象物追尾するように前記第2の光の照射を開始させる、
測距装置。
【請求項5】
前記処理回路は、
前記対象物が前記第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記第1の光による測距を実行する、
請求項1から4のいずれかに記載の測距装置。
【請求項6】
前記処理回路は、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側に存在するか内側に存在するかを、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて決定する、
請求項1から5のいずれかに記載の測距装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記対象物の前記第1の対象範囲の外側から内側への移動、および内側から外側への移動を、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて予測する、
請求項1から6のいずれかに記載の測距装置。
【請求項8】
前記受光装置は、2次元に配列された複数の画素を有するイメージセンサである、
請求項1から7のいずれかに記載の測距装置。
【請求項9】
前記処理回路は、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて前記第1の対象範囲を変化させる、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項10】
前記処理回路は、
前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、第2の距離データ、および前記外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて前記対象物の位置を検出し、
前記対象物の位置の分散によって規定される前記対象物の位置の信頼度を算出し、
前記対象物の位置の信頼度に基づいて、前記第1の対象範囲を決定する、
請求項に記載の測距装置。
【請求項11】
前記処理回路は、前記第1の距離データおよび前記第2の距離データを統合して出力する、
請求項1から10のいずれかに記載の測距装置。
【請求項12】
前記第1の光はフラッシュ光であり、
前記第2の光は光ビームである、
請求項1から11のいずれかに記載の測距装置。
【請求項13】
第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、
受光装置と、
前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を含む測距装置に用いられるプログラムであって、
前記処理回路に、
前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得られた第1の信号に基づいて第1の距離データを生成することと、
前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得られた第2の信号に基づいて第2の距離データを生成することと、
対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記発光装置に前記第2の光前記対象物を追尾するように前記第2の光を照射させることと、
前記対象物が前記第1の対象範囲の外側から内側に進入したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記追尾を停止させることと、を実行させる、
プログラム。
【請求項14】
第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、
受光装置と、
前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を含む測距装置に用いられるプログラムであって、
前記処理回路に、
前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得た第1の信号に基づいて第1の距離データを生成することと、
前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得た第2の信号に基づいて第2の距離データを生成することと、
対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の内側に存在するとき、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録させることと、
前記対象物が、前記第1の対象範囲の内側から外側に移動したとき、前記発光装置に前記第2の光前記対象物追尾するように前記第2の光の照射を開始させることと、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体に光を照射し、当該物体からの反射光を検出することにより、当該物体の位置または距離に関するデータを取得する種々のデバイスが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1は、光源を含む投光系と、投光系から投光され物体で反射された光を受光する光検出器を含む受光系と、光検出器の出力信号が入力される信号処理系と、制御系とを備える物体検出装置を開示している。制御系は、投光系の投光範囲内の少なくとも1つの領域を注目領域として設定し、投光系の投光条件または信号処理系の処理条件を、注目領域に投光するときと注目領域以外の領域に投光するときとで異なるように制御する。
【0004】
特許文献2は、LiDAR(Light Detection and Ranging)装置を開示している。当該LiDAR装置は、第1のビームスキャナと、第2のビームスキャナと、コントローラとを備える。第1のビームスキャナは、第1のスキャンパターンの第1のレーザビームで第1の領域をスキャンする。第2のビームスキャナは、第2のスキャンパターンの第2のレーザビームで、第1の領域よりも狭い第2の領域をスキャンする。コントローラは、第1のビームスキャナを駆動して第1の領域をスキャンし、第1のレーザビームによる反射光のデータを取得する。当該データから、1つ以上の対象物を決定し、第2のビームスキャナを駆動して第2の領域内を照射することにより、当該対象物をモニターする。
【0005】
特許文献3は、測距撮像装置を開示している。この測距撮像装置は、パッシブ光を検出するイメージセンサから出力された信号に基づき、撮像対象エリア全体の中から測距を必要とする被写体を特定する。この測距撮像装置は、当該被写体をレーザ光で照射し、その反射光を検出することにより、当該被写体までの距離を計測する。
【0006】
特許文献4は、光ビームによって空間を走査し、イメージセンサによって物体からの反射光を受光して距離情報を取得する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-173298号公報
【文献】米国特許第10061020号明細書
【文献】特開2018-185342号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0217258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、測距対象シーンにおける対象物の距離データを効率的に取得することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る測距装置は、第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、受光装置と、前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得られた第1の信号に基づいて第1の距離データを生成し、前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得られた第2の信号に基づいて第2の距離データを生成し、対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記発光装置に前記第2の光によって前記対象物を追尾させ、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側から内側に進入したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記追尾を停止させる。
【0010】
本開示の包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc‐Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含み得る。装置は、1つ以上の装置で構成されてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよく、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されてもよい。本明細書および特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示の実施形態によれば、測距対象シーンにおける対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態による測距装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2図2は、測距装置の動作の概要を説明するための図である。
図3図3は、前面に測距装置が搭載された車両の例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、道路を走行中の車両を模式的に示す側面図である。
図5図5は、道路を走行中の車両に対向車が近づく場合における測距動作の例を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、道路を走行中の車両に対向車が近づく様子を模式的に示す第1の図である。
図6B図6Bは、道路を走行中の車両に対向車が近づく様子を模式的に示す第2の図である。
図6C図6Cは、道路を走行中の車両に対向車が近づく様子を模式的に示す第3の図である。
図6D図6Dは、道路を走行中の車両に対向車が近づく様子を模式的に示す第4の図である。
図6E図6Eは、道路を走行中の車両に対向車が近づく様子を模式的に示す第5の図である。
図7図7は、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる場合における測距動作の例を示すフローチャートである。
図8A図8Aは、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す第1の図である。
図8B図8Bは、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す第2の図である。
図8C図8Cは、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す第3の図である。
図8D図8Dは、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す第4の図である。
図8E図8Eは、道路を走行中の車両から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す第5の図である。
図9図9は、発光装置の発光タイミングと、受光装置への反射光の入射タイミングと、露光タイミングの第1の例を模式的に示す図である。
図10図10は、発光装置の発光タイミングと、受光装置への反射光の入射タイミングと、露光タイミングの第2の例を模式的に示す図である。
図11図11は、実施形態1の変形例における測距動作を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態2の変形例における測距動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0014】
まず、図1から図4を参照して、本開示の例示的な実施形態を簡単に説明する。
【0015】
図1は、本開示の例示的な実施形態による測距装置10の概略的な構成を示すブロック図である。本実施形態における測距装置10は、発光装置100と、受光装置200と、処理回路300とを備える。測距装置10は、例えば車両に搭載されるLiDARシステムの一部として利用され得る。測距装置10は、測距対象のシーンを光で照射し、距離データを生成して出力するように構成されている。なお、本開示における「距離データ」とは、計測点の基準点からの絶対的な距離、または計測点間の相対的な深度を表す様々なデータを意味する。距離データは、例えば、距離画像データであってもよいし、3次元点群データであってもよい。距離データは、直接的に距離または深度を表すデータに限られず、距離または深度を算出するためのセンサデータそのもの、すなわちRawデータであってもよい。Rawデータは、例えば受光装置200が受けた光の強度に基づき生成した輝度データであり得る。輝度データは、例えば、輝度画像データであってもよい。
【0016】
発光装置100は、広がりの程度の異なる複数種類の光を出射する。例えば、シーンに向けて相対的に広がりの大きい光ビームまたはフラッシュ光を照射したり、シーン中の特定の対象物に向けて広がりの小さい光ビームを照射したりすることができる。言い替えれば、発光装置100は、相対的にブロードな第1の光と、第1の光の照射範囲よりも狭い範囲を照射する第2の光を出射することができる。発光装置100は、第1の光を出射する第1の光源と、第2の光を出射する第2の光源とを備えていてもよい。あるいは、発光装置100は、第1の光および第2の光の両方を出射することが可能な1つの光源を備えていてもよい。
【0017】
受光装置200は、発光装置100から出射された光によって生じた反射光を検出し、反射光の強度に応じた信号を出力する。受光装置200は、例えば1つ以上のイメージセンサを備える。2次元に配列された複数の光検出セル(以下、画素とも称する。)を有するイメージセンサから出力された信号は、反射光の2次元強度分布の情報を含む。受光装置200は、第1の光の照射によって生じた第1の反射光を検出して第1の反射光の強度に応じた第1の信号を出力する。受光装置200はまた、第2の光の照射によって生じた第2の反射光を検出して第2の反射光の強度に応じた第2の信号を出力する。受光装置200は、第1の反射光を検出して第1の信号を出力する第1イメージセンサと、第2の反射光を検出して第2の信号を出力する第2イメージセンサとを備えていてもよい。あるいは、受光装置200は、第1の反射光および第2の反射光を検出して第1の信号および第2の信号をそれぞれ出力することが可能な1つのイメージセンサを備えていてもよい。受光装置200が1つのセンサを備える場合、受光装置200の構成を簡略化できる。
【0018】
処理回路300は、発光装置100および受光装置200を制御し、受光装置200から出力された信号を処理する。処理回路300は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上の記録媒体とを含む。記録媒体は、例えばRAMおよびROMなどのメモリを含む。記録媒体には、プロセッサによって実行されるコンピュータプログラム、および処理の過程で生じた種々のデータが格納され得る。処理回路300は、複数の回路の集合体であってもよい。例えば、処理回路300は、発光装置100および受光装置200を制御する制御回路と、受光装置200から出力された信号を処理する信号処理回路とを含んでいてもよい。
【0019】
処理回路300は、発光装置100および受光装置200とは別の筐体に内蔵されてもよい。また、処理回路は、発光装置100および受光装置200とは離れた場所に設置され、無線通信により発光装置100および受光装置200を遠隔制御してもよい。
【0020】
図2は、測距装置10の動作の概要を説明するための図である。図2には、測距装置10の一例と、測距装置10によって生成され得る距離画像の一例とが模式的に示されている。図2に示す例において、発光装置100は、第1の光源110と、第2の光源120とを備える。第1の光源110は、第1の光として、フラッシュ光L1を出射するように構成されている。第2の光源120は、第2の光として、光ビームL2を出射するように構成されている。第2の光源120は、光ビームL2の出射方向を変化させることができる。これにより、空間中の所定の領域を光ビームL2でスキャンすることもできる。受光装置200は、イメージセンサ210を備える。この例におけるイメージセンサ210は、TOF(Time of Flight)による測距が可能なTOFイメージセンサである。イメージセンサ210は、直接TOFまたは間接TOFの技術を利用して、測距対象のシーンの距離画像を生成することができる。処理回路300は、第1の光源110、第2の光源120、およびイメージセンサ210を制御する。
【0021】
本実施形態における測距装置10は、歩行者、自動車、二輪車、または自転車などの特定の対象物の距離データを、フラッシュ光L1および光ビームL2を用いて取得する。測距装置10は、フラッシュ光L1によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲30T1の内部に当該対象物が存在するか否かに応じて動作モードを変更する。図2の例において、第1の対象範囲30T1は、受光装置200によって取得される画像中でフラッシュ光L1によって照射される範囲に含まれる矩形の範囲である。第1の対象範囲30T1は、矩形に限らず、楕円形などの範囲であってもよい。処理回路300は、測距の動作に先立って、第1の対象範囲30T1をまず決定する。第1の対象範囲30T1は、例えば現実の3次元空間中の座標の範囲、または受光装置200によって取得される画像の2次元平面中の座標の範囲として設定され得る。この例における測距装置10は、対象物が第1の対象範囲30T1の外側に存在する場合には、光ビームL2で対象物を照射して距離データを取得する動作を繰り返す。一方、対象物が第1の対象範囲30T1の内側に存在する場合には、フラッシュ光L1で対象物を照射して距離データを取得する動作を繰り返す。以下に、対象物が第1の対象範囲30T1の外を移動する場合と、第1の対象範囲30T1内を移動する場合とにおける処理回路300の動作をより詳細に説明する。
【0022】
対象物が第1の対象範囲30T1の外側に存在する場合、処理回路300は、第2の光源120に光ビームL2を出射させ、光ビームL2によって生じた反射光をイメージセンサ210に検出させ、各画素の検出光量に応じた第2の信号を出力させる。処理回路300は、第2の信号に基づいて、シーンの中の対象物の距離データまたは輝度データをフレームごとに生成して出力する。
【0023】
処理回路300は、複数のフレームにおける距離データまたは輝度データに基づいて、対象物の動く方向を算出し、第2の光源120に、その方向に合わせて光ビームL2を出射させる。これにより、処理回路300は、光ビームL2のビームスポットの範囲30Bを、対象物に追尾させることができる。図2の右側の図に示す複数の白丸は、光ビームL2によって照射されるビームスポットの範囲30Bの例を表す。ビームスポットの範囲30Bの大きさは、イメージセンサ210によって撮像されるシーンの画角、光ビームL2の広がり角、および対象物の距離に依存して変化する。対象物が第1の対象範囲30T1の外側に存在している間、測距装置10は、フラッシュ光L1の出射を停止してもよいし、フラッシュ光L1を用いて第1の対象範囲30T1内の距離データを取得してもよい。
【0024】
対象物が第1の対象範囲30T1の内側に存在する場合、処理回路300は、第1の光源110にフラッシュ光L1を出射させ、フラッシュ光L1によって生じた反射光をイメージセンサ210に検出させ、各画素の検出光量に応じた第1の信号を出力させる。フラッシュ光L1の広がりの程度は、光ビームL2の広がりの程度よりも大きい一方で、フラッシュ光L1は、光ビームL2と比較して、低いエネルギー密度を有する。よって、フラッシュ光L1は、比較的近距離で広い第1の対象範囲30T1を照射する。処理回路300は、後述するように、第1の信号に基づいて、第1の対象範囲30T1内に存在する対象物の位置を検出して記録する動作を繰り返す。以下の説明において、この動作を、「対象物を内部的に追尾する」と表現することがある。フラッシュ光L1は比較的広い範囲を照射することができるので、フラッシュ光L1の出射方向は固定であり得る。発光装置100は、フラッシュ光L1の出射方向を変化させることができるように構成されていてもよい。
【0025】
処理回路300は、上記の動作を繰り返すことにより、例えば対象物の距離データまたは輝度データを所定のフレームレートで出力する。
【0026】
図3は、前面に測距装置10が搭載された車両50の例を模式的に示す斜視図である。図3に示す例において、車両50における測距装置10は、フラッシュ光L1および光ビームL2を車両50の前方に向けて出射する。測距装置10の車両50への搭載位置は、その前面に限らず、その上面、側面、または後面でもよい。当該搭載位置は、対象物を測距する方向に応じて適切に決定される。
【0027】
図4は、道路を走行中の車両50の例を模式的に示す側面図である。光ビームL2の広がりの程度は、フラッシュ光L1の広がりの程度よりも小さいので、光ビームL2の照射エネルギー密度は、フラッシュ光L1の照射エネルギー密度よりも高い。したがって、光ビームL2は、フラッシュ光L1よりも遠方の対象物20を照射するのに適している。図4に示す例において、遠方の対象物20は、歩行者であるが、対象物20は人以外の物体であり得る。
【0028】
(実施形態1)
以下、図5から図6Eを参照して、本開示の例示的な実施形態1を説明する。図5は、道路を走行中の車両50に対向車などの対象物が近づく場合における測距動作の例を示すフローチャートである。処理回路300は、測距動作中、図5のフローチャートに示すステップS101からステップS114の動作を実行する。図6Aから図6Eは、道路を走行中の車両50に対向車が近づく様子を模式的に示す図である。図6Aから図6Eの順に、時間が経過する。図6Aから図6Eには、車両50の正面から対向車を含むシーンを撮影することによって取得される画像の例が模式的に示されている。図6Aに示す画像内で上下に並ぶ破線によって囲まれた範囲のうち、下の範囲は、フラッシュ光L1で照射される第1の対象範囲30T1であり、上の範囲は、光ビームL2によってスキャンされる第2の対象範囲30T2である。第2の対象範囲30T2は、第1の対象範囲30T1の外側に存在する。処理回路300は、測距動作の前に、第1の対象範囲30T1および第2の対象範囲30T2を決定する。第1の対象範囲30T1および第2の対象範囲30T2の決定方法については後述する。以下、図5に示す各ステップの動作を説明する。
【0029】
(ステップS101)
処理回路300は、発光装置100に、シーン内の第1の対象範囲30T1をフラッシュ光L1で照射させる。フラッシュ光L1の広がりの程度は、光ビームL2の広がりの程度よりも大きい。この例における第1の対象範囲30T1は、第2の対象範囲30T2よりも相対的に近い距離に対応する。
【0030】
(ステップS102)
処理回路300は、発光装置100に、光ビームL2の出射方向を変化させながら連続的に光ビームL2を出射させることにより、シーン内の第2の対象範囲30T2を光ビームL2でスキャンする。図6Aに示す矢印は、スキャンによるビームスポットの範囲30Bの軌道を表す。この例における第2の対象範囲30T2は、第1の対象範囲30T1よりも相対的に遠い距離に対応する。
【0031】
(ステップS103)
処理回路300は、受光装置200に、フラッシュ光L1の照射によって生じた第1の反射光および光ビームL2の照射によって生じた第2の反射光を検出させて、それぞれ第1の信号および第2の信号を出力させる。処理回路300は、第1の信号および第2の信号に基づいて、対象物20の位置または距離を示す第1の検出データおよび第2の検出データをそれぞれ生成して出力する。処理回路300は、第1の検出データおよび第2の検出データを処理回路300内の不図示のメモリに記憶する。第1の検出データは、例えば、図2に示す第1の対象範囲30T1内の距離データであり得る。第2の検出データは、例えば、図2に示すビームスポットの範囲30B内の距離データであり得る。本明細書では、第1の対象範囲30T1内の距離データを「第1の距離データ」と称し、ビームスポットの範囲30B内の距離データを「第2の距離データ」と称する。図2に示すように、第1の対象範囲30T1内の距離データと、ビームスポットの範囲30B内の距離データとを統合して出力してもよい。この統合により、遠距離および近距離での対象物20の距離データを把握しやすくなる。距離データではなく、輝度データを生成して出力してもよい。第2の検出データとして、照射方向の異なる複数のビームスポットの範囲30B内の検出データを統合して出力してもよい。
【0032】
処理回路300は、メモリ内に時系列で記憶された対象物20の距離データまたは輝度データなどの検出データに基づいて、運転支援または自動運転による車両の挙動を決定してもよい。処理回路300は、対象物20の距離データに関連する情報を、車両50内の不図示のディスプレイまたは計器に表示させてもよい。
【0033】
(ステップS104)
処理回路300は、第2の検出データに基づき、追尾すべき対象物20が第2の対象範囲30T2に存在するか否かを判定する。処理回路300は、距離データまたは輝度データに基づいて公知の画像認識技術によって特定の物体を認識することにより、対象物20が何であるかを決定してもよい。特定の物体は、例えば、自動車、二輪車、自転車、または歩行者である。複数の物体が存在する場合、物体の種類によって物体の優先順位を決定し、最も優先順位の高い物体を、対象物20としてもよい。対象物20が第2の対象範囲30T2内に存在しない場合、処理回路300は、ステップS101からステップS104の動作を繰り返し実行し、追尾すべき対象物20の探索を継続する。図6Aに示すように対象物20が第2の対象範囲30T2内に存在する場合、ステップS105に進む。
【0034】
(ステップS105)
処理回路300は、発光装置100に、シーン内の第1の対象範囲30T1をフラッシュ光L1で照射させる。この動作は、ステップS101の動作と同じである。
【0035】
(ステップS106)
処理回路300は、第2の検出データに含まれる対象物20の位置に関する情報に基づいて光ビームL2の出射方向を決定し、発光装置100に、対象物20に向けて光ビームL2を照射させる。対象物20の位置に関する情報は、例えば、対象物20の距離または輝度の値であり得る。処理回路300は、対象物20の位置に関する情報に基づいて対象物20を検知し、図6Bに示すように光ビームL2によるスキャン動作を中断する。その後、処理回路300は、対象物20を検知したことを受けて、図6Cに示すように光ビームL2によって対象物20を追尾する。これにより、対象物20の少なくとも一部は、ビームスポットの範囲30B内に含まれ続ける。処理回路300は、第2の検出データに基づいて、追尾における対象物20の位置を決定する。第2の検出データではなく、カメラなどの外部のセンサから取得された外部データを用いて対象物20の位置を決定してもよい。あるいは、第2の検出データおよび外部データの両方を用いてもよい。
【0036】
(ステップS107)
処理回路300は、ステップS103と同様の動作を実行することにより、第1の検出データおよび第2の検出データを生成して出力する。処理回路300は、第1の検出データおよび第2の検出データを処理回路300内の不図示のメモリに記憶する。
【0037】
(ステップS108)
処理回路300は、第2の検出データに含まれる対象物20の位置に関する情報に基づいて、対象物20が第2の対象範囲30T2を出たか否かを判定する。判定は、例えば第2の検出データに含まれる対象物20の距離の値に基づいて行われ得る。例えば、第2の検出データに含まれる対象物20の距離の値が、第1基準値よりも大きい場合、または第2基準値よりも小さい場合、対象物20が第2の対象範囲30T2を出たと判定することができる。第1基準値および第2基準値は、それぞれ、図6Aに示す第2の対象範囲30T2のうち、最長および最短の距離に相当する。第1基準値および第2基準値は、それぞれ、例えば200mおよび50mであり得る。判定は、第2の検出データに含まれる対象物20の輝度値に基づいて行ってもよい。例えば、第2の検出データに含まれる対象物20の輝度値が、第3基準値よりも大きい場合、または第4基準値よりも小さい場合、対象物20が第2の対象範囲30T2を出たと判定することができる。第3基準値および第4基準値は、それぞれ、図6Aに示す第2の対象範囲30T2のうち、最短および最長の距離での輝度値に相当する。光ビームL2の照射エネルギー密度は相対的に高く、第3基準値は、例えば受光装置200における輝度値の飽和値の90%であり得る。第4基準値は、例えば輝度値の飽和値の1%であり得る。
【0038】
対象物20が第2の対象範囲30T2から出ていない場合、処理回路300は、ステップS105からステップS108の動作を繰り返し実行し、光ビームL2による対象物20の追尾を継続する。対象物20が第2の対象範囲30T2から出た場合、ステップS109に進む。
【0039】
(ステップS109)
図6Dに示すように対象物20が第2の対象範囲30T2から出た場合、処理回路300は、対象物20が第1の対象範囲30T1に進入したか否かを判定する。例えば、第2の検出データに含まれる対象物20の距離の値が、所定の基準値以下である場合には、対象物20が第1の対象範囲30T1に進入したと判定してもよい。基準値は、第1の対象範囲30T1のうち、最長の距離に相当し、例えば50mであり得る。あるいは、第1の検出データに基づいて対象物20の距離の値を取得できた場合には対象物20が第1の対象範囲30T1に進入したと判定してもよい。判定は、第2の検出データに含まれる対象物20の輝度値に基づいて行われてもよい。例えば、対象物20の輝度値が、所定の基準値以上である場合には、対象物20が第1の対象範囲30T1に進入したと判定してもよい。この基準値は、第1の対象範囲30T1のうち、最長の距離での輝度値に相当し、例えば、輝度の飽和値の90%であり得る。対象物20が第1の対象範囲30T1に進入していない場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。対象物20が第2の対象範囲30T2を出るが、第1の対象範囲30T1に進入しない状況は、例えば、対象物20が道路を横切る場合に発生する。この場合、処理回路300は、ステップS101の動作を再開してもよい。
【0040】
(ステップS110)
図6Dに示すように対象物20が第1の対象範囲30T1に進入した場合、処理回路300は、ステップS101と同様、発光装置100に、シーン内の第1の対象範囲30T1をフラッシュ光L1で照射させる。
【0041】
(ステップS111)
処理回路300は、光ビームL2による対象物20の追尾を停止する。その後、処理回路300は、図6Eに示すように、ステップS102と同様、光ビームでスキャン範囲をスキャンする。
【0042】
(ステップS112)
処理回路300は、ステップS103と同様、第1の検出データおよび第2の検出データを生成して出力する。処理回路300は、第1の検出データおよび第2の検出データを処理回路300内の不図示のメモリに記憶する。
【0043】
(ステップS113)
処理回路300は、図6Eに示すように、フラッシュ光L1によって対象物20を内部的に追尾する。図6Eに示す白抜きの矢印は、内部的に追尾していることを表す。この動作は、第1の検出データに加えて対象物20の位置の変化を記録することに相当する。この点において、当該動作は、光ビームL2によって対象物20を追尾する動作とは異なる。フラッシュ光L1の広がりの程度は、光ビームL2の広がりの程度よりも大きい。したがって、フラッシュ光L1の照射方向を固定してもよい。対象物20の移動に合わせてフラッシュ光の照射方向を変化させることは必ずしも必要ではない。処理回路300は、第1の検出データに基づいて、追尾における対象物20の位置を決定する。第1の検出データではなく、カメラなどの外部のセンサから取得された外部データを用いてもよい。あるいは、第1の検出データおよび外部データの両方を用いてもよい。
【0044】
(ステップS114)
処理回路300は、第1の検出データに基づいて、対象物20が第1の対象範囲30T1から出たか否かを判定する。対象物20が第1の対象範囲30T1から出たという状況は、例えば、対向車が車両50の横を通り過ぎる場合に発生する。対象物20が第1の対象範囲30T1から出た場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。処理回路300は、ステップS101の動作を再開してもよい。対象物20が第1の対象範囲30T1を出ていない場合、処理回路300は、ステップS110からステップS114の動作を繰り返し実行し、フラッシュ光L1による対象物20の内部的な追尾を継続する。
【0045】
実施形態1におけるステップS101からステップS114の動作によって以下の効果を得ることができる。すなわち、車両50の近くに存在する第1の対象範囲30T1に対象物20が移動した場合、処理回路300は、対象物20を光ビームL2によって追尾する必要がなくなる。したがって、処理回路300は、その分、第2の対象範囲30T2内を移動する遠方の対象物20を光ビームL2によって効率的に追尾することができる。その結果、測距対象シーンにおける対象物20の位置を示すデータを効率的に取得でき、当該データの量を増加させることができる。さらに、光ビームL2によって測距対象シーン全体をスキャンする構成と比較して、必要なデータを短い時間で取得することができる。
【0046】
(実施形態2)
以下、図7および図8Eを参照して、本開示の例示的な実施形態2を説明する。実施形態1における説明と重複する説明は省略することがある。図7は、道路を走行中の車両50から先行車が遠ざかる場合における、本開示の例示的な実施形態2における測距動作のフローチャートである。処理回路300は、測距動作中、図7のフローチャートに示すステップS201からS214の動作を実行する。図8Aから図8Eは、道路を走行中の車両50から先行車が遠ざかる様子を模式的に示す図である。図8Aから図8Eの順番に、時間が経過する。以下、図7に示す各ステップの動作を説明する。
【0047】
(ステップS201)
処理回路300は、発光装置100に、シーン内の第1の対象範囲30T1をフラッシュ光L1で照射させる。この動作は、実施形態1におけるステップS101の動作と同じである。
【0048】
(ステップS202)
処理回路300は、発光装置100に、光ビームL2の出射方向を変化させ、シーン内の第2の対象範囲30T2を光ビームL2でスキャンしながら照射させる。この動作は、実施形態1におけるステップS102の動作と同じである。
【0049】
(ステップS203)
処理回路300は、受光装置200に、フラッシュ光L1の照射によって生じた第1の反射光および光ビームL2の照射によって生じた第2の反射光を検出させて、それぞれ第1の信号および第2の信号を出力させる。処理回路300は、第1の信号および第2の信号に基づいて、対象物20の位置を示す第1の検出データおよび第2の検出データを生成させて出力させる。この動作は、実施形態1におけるステップS103の動作と同じである。
【0050】
(ステップS204)
処理回路300は、第1の検出データに基づき、追尾すべき対象物20が第1の対象範囲30T1に存在するか否かを判定する。対象物20が何であるかを決定する方法については、実施形態1におけるステップS104において説明した通りである。対象物20が第1の対象範囲30T1内に存在しない場合、処理回路300は、ステップS201からステップS204の動作を繰り返し、追尾すべき対象物20の探索を継続する。
【0051】
(ステップS205)
図8Aに示すように対象物20が第1の対象範囲30T1内に存在する場合、処理回路300は、ステップS201と同様の動作を実行する。
【0052】
(ステップS206)
処理回路300は、ステップS202と同様の動作を実行する。
【0053】
(ステップS207)
処理回路300は、ステップS203と同様の動作を実行する。
【0054】
(ステップS208)
処理回路300は、図8Bに示すように、フラッシュ光L1によって対象物20を内部的に追尾する。この動作は、実施形態1におけるステップS113の動作と同じである。
【0055】
(ステップS209)
処理回路300は、第1の検出データに含まれる対象物20の位置に関する情報に基づいて、対象物20が第1の対象範囲30T1を出たか否かを判定する。例えば、第1の検出データに含まれる対象物20の距離値が、所定の基準値以上である場合には、対象物20は第1の対象範囲30T1を出たと判定してもよい。基準値は、第1の対象範囲30T1のうち、最長の距離値に相当する。距離値の基準値は、例えば50mであり得る。あるいは、第1の検出データに基づいて対象物20の距離の値を取得できない場合には対象物20が第1の対象範囲30T1を出たと判定してもよい。判定は、第1の検出データに含まれる対象物20の輝度値に基づいて行われてもよい。例えば、対象物20の輝度値が、所定の基準値以下である場合には、対象物20が第1の対象範囲30T1を出たと判定してもよい。この基準値は、第1の対象範囲30T1のうち、最長の距離値での輝度値に相当する。フラッシュ光L1の照射エネルギー密度は相対的に低く、輝度値の基準値は、例えば、輝度値の飽和値の10%であり得る。対象物20が第1の対象範囲30T1を出ていない場合、処理回路300は、ステップS205からステップS209の動作を繰り返し実行し、フラッシュ光L1による対象物20の内部的な追尾を継続する。
【0056】
(ステップS210)
図8Cに示すように対象物20が第1の対象範囲30T1から出た場合、処理回路300は、対象物20が第2の対象範囲30T2に進入したか否かを判定する。判定は、例えば第2の検出データに含まれる対象物20の距離の値に基づいて行われ得る。例えば、第2の検出データに含まれる対象物20の距離の値が、第1基準値よりも大きい場合、または第2基準値よりも小さい場合、対象物20が第2の対象範囲30T2を出たと判定することができる。第1基準値および第2基準値は、それぞれ、図8Aに示す第2の対象範囲30T2のうち、最長および最短の距離に相当する。第1基準値および第2基準値は、それぞれ、例えば200mおよび50mであり得る。判定は、第2の検出データに含まれる対象物20の輝度値に基づいて行ってもよい。例えば、第2の検出データに含まれる対象物20の輝度値が、第3基準値よりも大きい場合、または第4基準値よりも小さい場合、対象物20が第2の対象範囲30T2を出たと判定することができる。第3基準値および第4基準値は、それぞれ、図8Aに示す第2の対象範囲30T2のうち、最短および最長の距離での輝度値に相当する。第3基準値および第4基準値は、それぞれ、例えば輝度値の飽和値の90%および1%であり得る。対象物20が第2の対象範囲30T2に進入していない場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。対象物20が第1の対象範囲30T1を出るが、第2の対象範囲30T2に進入しない状況は、例えば、対象物20が道路を横切る場合に発生する。処理回路300は、ステップS201の動作を再開してもよい。
【0057】
(ステップS211)
処理回路300は、ステップS201と同様の動作を実行する。
【0058】
(ステップS212)
処理回路300は、第2の検出データに含まれる対象物20の位置に関する情報に基づいて光ビームL2の出射方向を決定し、発光装置100に、対象物20に向けて光ビームL2を照射させる。言い換えれば、処理回路300は、図8Cに示すように光ビームL2によるスキャン動作を中断し、図8Dに示すように光ビームL2によって対象物20を追尾する。
【0059】
(ステップS213)
処理回路300は、ステップS203と同様の動作を実行する。
【0060】
(ステップS214)
処理回路300は、第2の検出データに基づいて、対象物20が第2の対象範囲30T2から出たか否かを判定する。対象物20が第2の対象範囲30T2から出た場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。処理回路300は、ステップS201の動作を再開してもよい。対象物20が第2の対象範囲30T2を出ていない場合、処理回路300は、ステップS211からステップS214の動作を繰り返し実行し、光ビームL2による対象物20の追尾を継続する。
【0061】
実施形態2におけるステップS201からステップS214の動作により、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0062】
実際には、実施形態1のように車両50に近づく対向車と、実施形態2のように車両50から遠ざかる先行車との両方が、同時に存在し得る。この場合、車両50に搭載された1つの測距装置10が、車両50に近づく対向車を測距する第1動作と、車両50から遠ざかる先行車を測距する第2動作とを別々のフレームで実行してもよい。当該1つの測距装置10は、第1動作および第2動作をフレームごとに交互に実行してもよいし、第1動作を所定フレーム数だけ実行し、その後第2動作を所定フレーム数だけ実行してもよい。第1動作と第2動作とは入れ替えてもよい。あるいは、車両50に2つの測距装置10を搭載し、当該2つの測距装置10のうち、一方が車両50に近づく対向車を測距し、他方が車両50から遠ざかる先行車を測距してもよい。
【0063】
(第1の対象範囲30T1および第2の対象範囲30T2の決定)
次に、第1の対象範囲30T1の決定方法を説明する。
【0064】
第1の対象範囲30T1は、距離値に基づいて決定してもよい。第1の対象範囲30T1は、距離値が測距装置10から20m以上50m以下の範囲内であり得る。あるいは、第1の対象範囲30T1は、対象物20からの反射光の輝度値に基づいて決定してもよい。その理由として、特にフラッシュ光の場合では、照射範囲内において照明光の強度が一様ではないことが挙げられる。また、他の理由として、同じ距離の対象物20であっても、対象物20の反射率もしくは散乱性、または対象物20の表面の法線の向きに依存して、イメージセンサ210によって検出される反射光の輝度値が変化することが挙げられる。
【0065】
反射光の輝度値の例として、フラッシュ光L1の照射によって生じた対象物20からの反射光の輝度値が挙げられる。フラッシュ光L1の照射エネルギー密度は相対的に低く、第1の対象範囲30T1は、当該反射光の輝度値が輝度値の飽和値の10%以上の範囲であり得る。
【0066】
反射光の輝度値の他の例として、光ビームL2の照射によって生じた対象物20からの反射光の輝度値が挙げられる。光ビームL2の照射エネルギー密度は相対的に高く、第1の対象範囲30T1は、当該反射光の輝度値が輝度値の飽和値の90%以上の範囲であり得る。
【0067】
あるいは、第1の対象範囲30T1は、第1の検出データ、第2の検出データ、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて決定してもよい。第1の検出データ、第2の検出データ、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つから得られた距離データから、前述した距離値の第1基準値および第2基準値を決定してもよい。また、第1の検出データ、第2の検出データ、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つから得られた輝度データから、前述した輝度値の第3基準値および第基準値を決定してもよい。
【0068】
あるいは、第1の対象範囲30T1は、対象物20の位置の信頼度に基づいて決定してもよい。対象物20の位置の信頼度は、例えば、複数の第1の検出データ、複数の第2の検出データ、および複数の外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて決定された対象物20の位置の分散によって規定され得る。処理回路300は、第1の検出データもしくは第2の検出データを複数回生成して出力し、または外部の装置から外部データを複数回取得して、対象物20の位置の信頼度を算出する。対象物20の位置の分散が所定の基準値よりも大きい範囲では、対象物20の位置の信頼度が低いと考えられる。したがって、当該分散が所定の基準値以上の範囲を、第1の対象範囲30T1としてもよい。
【0069】
第1の対象範囲30T1は、輝度値、距離値、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて、決定してもよいし、適宜変化させてもよい。
【0070】
次に、第2の対象範囲30T2の決定方法を説明する。第2の対象範囲30T2は、第1の対象範囲30T1と同様の方法によって決定してもよい。
【0071】
第2の対象範囲30T2は、例えば、距離値が測距装置10から50m以上200m以下の範囲内であり得る。あるいは、第2の対象範囲30T2は、例えば、光ビームL2の照射によって生じる反射光の輝度値が、輝度値の飽和値の1%以上90%以下の範囲であり得る。あるいは、第2の対象範囲30T2は、例えば、第1の対象範囲30T1に含まれない範囲であり、かつ、光ビームL2の照射によって生じた反射光によって距離データまたは輝度データを生成することが可能な範囲であり得る。
【0072】
(発光装置および受光装置の動作)
次に、発光装置および受光装置の動作を説明する。
【0073】
図9は、1フレームにおける、発光装置100から出射されるフラッシュ光L1および光ビームL2の発光タイミングと、受光装置200への第1の反射光および第2の反射光の入射タイミングと、受光装置200の露光タイミングとの第1の例を模式的に示す図である。図9に示す例では、間接TOFの動作が説明されている。イメージセンサ210による光検出のための露光期間は、フラッシュ光L1および光ビームL2の発光期間Δtの3倍に設定されている。露光期間を3等分した第1期間から第3期間における受光装置200の検出光量を、それぞれA0からA2とする。発光開始のタイミングと、露光開始のタイミングとの差を とする。処理回路300は、間接TOFの技術を利用して、検出光量A0から検出光量A2、およびタイミング差tから、対象物20までの距離を算出する。フラッシュ光L1および光ビームL2が出射され、対象物20で反射され、それぞれ第1の反射光および第2の反射光として戻ってくるまでの往復時間をτ、空気中での光速をcとすると、対象物20までの距離はcτ/2である。
【0074】
図9に示す例において、フラッシュ光L1の往復時間は、τ=t+Δt×(A1-A2)/(A0+A1-2×A2)によって表される。この式におけるA2は、A0およびA1に含まれるノイズ光の検出光量に相当する。一方、光ビームL2の往復時間は、τ=t+Δt+Δt×(A2-A0)/(A1+A2-2×A0)によって表される。この式におけるA0は、A1およびA2に含まれるノイズ光の検出光量に相当する。用途によっては、ノイズ光の検出光量は、考慮しなくてもよい。
【0075】
各フレームにおいて、処理回路300は、発光装置100に、フラッシュ光L1および光ビームL2を同時に出射させ、イメージセンサ210に、第1の反射光および第2の反射光を同一の露光期間内に検出させる。この動作により、フレーム当たりの露光回数を増やすことができる。その結果、イメージセンサ210によって検出される信号のS/Nを向上させることができ、高精度の測距が可能になる。
【0076】
フラッシュ光L1によって対象物20を測距する距離と、光ビームL2によって対象物20を測距する距離とが大きく異なる場合、第1の反射光が受光装置200に入射するタイミングと、第2の反射光が受光装置200に入射するタイミングとの時間差が大きくなり得る。この場合、フラッシュ光L1の発光タイミングと、光ビームL2の発光タイミングとを時間的にずらすことにより、第1の反射光および第2の反射光を共通の露光期間内に検出することができる。
【0077】
図10は、1フレームにおける、発光装置100から出射されるフラッシュ光L1および光ビームL2の発光タイミングと、受光装置200への第1の反射光および第2の反射光の入射タイミングと、受光装置200の露光タイミングとの第2の例を模式的に示す図である。図10に示す例では、フラッシュ光L1の発光動作および第1の反射光の露光動作と、光ビームL2の発光動作および第2の反射光の露光動作が独立している。この場合、第1の反射光を検出する露光期間と、第2の反射光を検出する露光期間とを独立に設定することができる。したがって、フラッシュ光L1によって対象物20を測距する距離と、光ビームL2によって対象物20を測距する距離とが大きく異なる場合でも、対象物20を問題なく測距することができる。
【0078】
(実施形態1の変形例)
次に、図11を参照して、実施形態1の変形例を説明する。図11は、実施形態1の変形例における測距動作のフローチャートである。実施形態1の変形例が実施形態1とは異なる点は、ステップS121からステップS123の動作である。
【0079】
(ステップS121)
処理回路300は、第2の検出データに含まれる対象物20の位置に関する情報に基づいて、将来の対象物20の位置を予測する。「将来」は、次のフレームであってもよいし、複数フレーム先であってもよい。
【0080】
対象物20の将来の位置は、例えば、以下のようにして予測され得る。繰り返しの動作によって取得された現在のフレームまでの距離データから3次元空間中の対象物20の移動ベクトルを算出し、当該移動ベクトルに基づいて、対象物20の将来の位置を予測してもよい。あるいは、繰り返しの動作によって取得された現在のフレームまでの輝度データから対象物20のオプティカルフローを算出し、当該オプティカルフローに基づいて、対象物20の将来の位置を予測してもよい。
【0081】
(ステップS122)
処理回路300は、対象物20の予測位置が第2の対象範囲30T2の外に存在するか否かを判定する。対象物20の予測位置が第2の対象範囲30T2の外に存在しない場合、処理回路300は、ステップS105からステップS122の動作を繰り返し実行し、光ビームL2による対象物20の追尾を継続する。
【0082】
(ステップS123)
対象物20の予測位置が第2の対象範囲30T2の外に存在する場合、処理回路300は、予測位置が第1の対象範囲30T1内に存在するか否かを判定する。判定基準は、実施形態1におけるステップS109において説明した通りである。対象物20が第1の対象範囲30T1内に存在しない場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。処理回路300は、ステップS101の動作を再開してもよい。
【0083】
実施形態1の変形例におけるステップS121からステップS123の動作によって以下の効果を得ることができる。すなわち、対象物20が第2の対象範囲30T2から第1の対象範囲30T1に移動した場合、フラッシュ光L1および光ビームL2で対象物20を同時に照射するオーバーヘッドの時間を低減することができる。その結果、測距対象シーンにおける対象物20の位置を示すデータをさらに効率的に取得でき、当該データの量をさらに増加させることができる。
【0084】
(実施形態2の変形例)
次に、図12を参照して、実施形態2の変形例を説明する。図12は、実施形態2の変形例における測距動作のフローチャートである。実施形態2の変形例が実施形態2とは異なる点は、ステップS221からステップS223の動作である。
【0085】
(ステップS221)
処理回路300は、第1の検出データに含まれる対象物20の情報に基づいて、将来の対象物20の位置を予測する。対象物20の位置を予測については、実施形態1の変形例におけるステップS121において説明した通りである。
【0086】
(ステップS222)
処理回路300は、対象物20の予測位置が第1の対象範囲30T1の外に存在するか否かを判定する。対象物20の予測位置が第1の対象範囲30T1の外に存在しない場合、処理回路300は、ステップS205からステップS222の動作を繰り返し実行し、フラッシュ光L1による対象物20の内部的な追尾を継続する。
【0087】
(ステップS223)
対象物20の予測位置が第1の対象範囲30T1の外にある場合、処理回路300は、予測位置が第2の対象範囲30T2内であるか否かを判定する。判定基準は、実施形態2におけるステップS210において説明した通りである。対象物20の予測位置が第2の対象範囲30T2に存在しない場合、処理回路300は、フラッシュ光L1および光ビームL2による対象物20の追尾を終了する。処理回路300は、ステップS201の動作を再開してもよい。
【0088】
実施形態2の変形例におけるステップS221からステップS223の動作により、実施形態1の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0089】
以下に、本開示の実施形態1および実施形態2における測距装置を項目ごとに記載する。
【0090】
第1の項目に係る測距装置は、第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、受光装置と、前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を備える。前記処理回路は、前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得られた第1の信号に基づいて第1の距離データを生成し、前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得られた第2の信号に基づいて第2の距離データを生成し、対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記発光装置に前記第2の光によって前記対象物を追尾させ、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側から内側に進入したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記追尾を停止させる。
【0091】
この測距装置では、測距対象シーンにおける第1の対象範囲の外側から内側に進入する対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【0092】
第2の項目に係る測距装置は、第1の項目に係る測距装置において、前記対象物が前記第1の対象範囲の内側に進入した後、前記処理回路が、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録する。
【0093】
この測距装置では、第1の対象範囲の内側に進入した対象物を内部的に追尾することができる。
【0094】
第3の項目に係る測距装置は、第1または第2の項目に係る測距装置において、前記処理回路が、前記発光装置に、前記第1の対象範囲の外側にある第2の対象範囲を前記第2の光によってスキャンさせ、前記スキャンによって得られた前記第2の信号または前記第2の距離データに基づき、前記対象物を検知し、前記対象物を検知したことを受けて、前記発光装置に前記第2の光によって前記対象物の追尾を開始させる。この測距装置では、第2の対象範囲にある対象物を追尾することができる。
【0095】
第4の項目に係る測距装置は、第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、受光装置と、前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を備える。前記処理回路は、前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得た第1の信号に基づいて第1の距離データを生成し、前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得た第2の信号に基づいて第2の距離データを生成し、対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の内側に存在するとき、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録し、前記対象物が、前記第1の対象範囲の内側から外側に移動したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記対象物の追尾を開始させる。
【0096】
この測距装置では、測距対象シーンにおける第1の対象範囲の内側から外側に移動する対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【0097】
第5の項目に係る測距装置は、第1から第4の項目のいずれかに係る測距装置において、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記処理回路が、前記第1の光による測距を実行する。
【0098】
この測距装置では、第1の対象範囲の外側にある対象物が、第1の対象範囲の内側に進入しても、すぐに対象物の測距を実行することができる。第6の項目に係る測距装置は、第1から第5の項目のいずれかに係る測距装置において、前記処理回路が、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側に存在するか内側に存在するかを、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて決定する。
【0099】
この測距装置では、対象物の位置を、輝度値、距離値、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つによって決定することができる。
【0100】
第7の項目に係る測距装置は、第1から第6の項目のいずれかに係る測距装置において、前記処理回路が、前記対象物の前記第1の対象範囲の外側から内側への移動、および内側から外側への移動を、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて予測する。
【0101】
この測距装置では、対象物の上記の移動を、輝度値、距離値、および外部データからなる群から選択される少なくとも1つによって決定することができる。
【0102】
第8の項目に係る測距装置は、第1から第7の項目のいずれかに係る測距装置において、前記受光装置が、2次元に配列された複数の画素を有するイメージセンサである。
【0103】
この測距装置では、対象物の測距画像データまたは輝度画像データを取得することができる。
【0104】
第9の項目に係る測距装置は、第1の項目に係る測距装置において、前記処理回路が、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、前記第2の距離データ、および外部のセンサから入力された外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて前記第1の対象範囲を変化させる。
【0105】
この測距装置では、距離値、輝度値、および外部データから選択される少なくとも1つに基づいて、第1の対象範囲が決定される。
【0106】
第10の項目に係る測距装置は、第8の項目に係る測距装置において、前記処理回路が、前記第1の信号の強度、前記第2の信号の強度、前記第1の距離データ、第2の距離データ、および前記外部データからなる群から選択される少なくとも1つに基づいて前記対象物の位置を検出し、前記対象物の位置の分散によって規定される前記対象物の位置の信頼度を算出し、前記対象物の位置の信頼度に基づいて、前記第1の対象範囲を決定する。
【0107】
この測距装置では、対象物の位置の信頼度に基づいて、第1の対象範囲が決定される。
【0108】
第11の項目に係る測距装置は、第1から第10の項目のいずれかに係る測距装置において、前記処理回路が、前記第1の距離データおよび前記第2の距離データを統合して出力する。
【0109】
この測距装置では、遠距離および近距離での対象物の距離データを把握しやすくなる。
【0110】
第12の項目に係る測距装置は、第1から第11の項目のいずれかに係る測距装置において、前記第1の光はフラッシュ光であり、前記第2の光は光ビームである。
【0111】
この測距装置では、照射範囲が大きく異なるフラッシュ光および光ビームによって対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【0112】
第13の項目に係るプログラムは、第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、受光装置と、前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を含む測距装置に用いられるプログラムであって、前記処理回路に、前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得られた第1の信号に基づいて第1の距離データを生成することと、前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得られた第2の信号に基づいて第2の距離データを生成することと、対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の外側に存在するとき、前記発光装置に前記第2の光によって前記対象物を追尾させることと、前記対象物が前記第1の対象範囲の外側から内側に進入したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記追尾を停止させることと、を実行させる。
【0113】
このプログラムでは、測距対象シーンにおける第1の対象範囲の外側から内側に進入する対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【0114】
第14の項目に係るプログラムは、第1の光、および前記第1の光よりも広がりの程度が小さい第2の光を出射し、前記第2の光の出射方向を変化させることが可能な発光装置と、受光装置と、前記発光装置および前記受光装置を制御し、前記受光装置から出力された信号を処理する処理回路と、を含む測距装置に用いられるプログラムであって、前記処理回路に、前記受光装置が前記第1の光によって生じた第1の反射光を検出することにより得た第1の信号に基づいて第1の距離データを生成することと、前記受光装置が前記第2の光によって生じた第2の反射光を検出することにより得た第2の信号に基づいて第2の距離データを生成することと、対象物が前記第1の光によって照射される範囲に含まれる第1の対象範囲の内側に存在するとき、前記第1の距離データに加えて前記対象物の位置の変化を記録させることと、前記対象物が、前記第1の対象範囲の内側から外側に移動したとき、前記発光装置に前記第2の光による前記対象物の追尾を開始させることと、を実行させる。
【0115】
このプログラムでは、測距対象シーンにおける第1の対象範囲の内側から外側に移動する対象物の距離データを効率的に取得することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示における測距装置は、例えば、自動車、AGV(無人搬送車)などの車両、および、UAV(無人飛行機)などの飛行体に搭載されるLiDARシステムの用途に利用できる。本開示における測距装置は、例えば、建築物に取り付ける監視システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0117】
10 測距装置
20 対象物
30B ビームスポット範囲
30T 対象範囲
30S スキャン範囲
50 車両
100 発光装置
110 第1の光源
120 第2の光源
200 受光装置
210 イメージセンサ
300 処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12