(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】光照射式脱毛装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2021017231
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜平
(72)【発明者】
【氏名】春日井 秀紀
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/037122(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/074830(WO,A2)
【文献】特開2009-240690(JP,A)
【文献】特開2021-10741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0025601(US,A1)
【文献】特開2013-111391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A45D 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する第1光源と、
400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源と対向して前記第1光源及び前記第2光源から照射される光を透過し、皮膚と接触した場合に前記皮膚を冷却する皮膚冷却部と、
前記第1光源、前記第2光源及び前記皮膚冷却部の周囲を取り囲み、押圧されていない場合には前記皮膚冷却部の前記皮膚と接触する面よりも前記皮膚冷却部に対して前記第1光源及び前記第2光源とは反対側の方向に向かって突き出ており、押圧された場合には前記皮膚冷却部に対して前記第1光源及び前記第2光源の方向に向かって前記皮膚によって押圧される面が移動する押圧部を含み、前記押圧部が押圧されている間の少なくとも一部の時間には前記第1光源及び前記第2光源から光が照射され、前記押圧部が押圧されていない間には前記第1光源及び前記第2光源から光が照射されないように前記第1光源及び前記第2光源による光の照射と非照射とを切り替えるプッシュスイッチと、
前記第1光源を冷却する第1冷却部と、
前記第2光源を冷却する第2冷却部と、
を備え、
前記第1冷却部は、前記第1光源を冷却することによって、前記第1光源から照射される光の波長を前記第2光源から照射される光の波長とは異なる波長へシフトさせる、光照射式脱毛装置。
【請求項2】
前記第1光源の温度及び前記第2光源の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記第1光源及び前記第2光源の温度に応じ、前記第1光源を前記第2光源とは異なる温度に冷却するように前記第1冷却部による冷却を制御する制御部と、
をさらに備える、請求項1に記載の光照射式脱毛装置。
【請求項3】
前記第1冷却部はペルチェ素子を含み、前記温度センサはサーミスタを含む、請求項2に記載の光照射式脱毛装置。
【請求項4】
前記第1冷却部は前記第1光源の温度が前記第2光源の温度よりも低くなるように前記第1光源を冷却する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光照射式脱毛装置。
【請求項5】
前記第1冷却部は前記第1光源及び前記第2光源からの光が照射される前記皮膚の部位に応じて予め定められた温度範囲となるように前記第1光源を冷却する、請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射式脱毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光照射式脱毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を照射して脱毛する光照射式脱毛装置が知られている。光照射式脱毛装置は、ユーザの皮膚表面に特定の波長を有する光を照射し、光を毛包のメラニンに作用させることによって毛の排出を促進する。光照射式脱毛装置としては、特許文献1に示すような装置が知られている。
【0003】
特許文献1は、処理光及び検知光を対象物に入射させる光源と、対象物を検知するための検知光を検出する光検出器と、光源を制御するための制御ユニットとを有する装置を開示している。上記制御ユニットは、検出された検知光から検知光の吸収を決定し、処理光が決定された吸収に依存して生成されるように光源を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の装置は、異なる波長の光を照射する互いに独立したサブグループのVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を備えている。そして、検知光の吸収に依存した処理光を生成するに当たり、これらのVCSELの点灯と消灯とを制御している。従来の装置では、搭載されたVCSELの一部を消灯して処理光を生成するため、放射照度が低下し、脱毛効果が低減するおそれがある。また、単一波長を有する光が照射される場合、皮膚内へ侵入する光の深度が一定になり、特定の深度に存在する毛包のメラニンを含むメラノサイトが集中的に加熱されるおそれがある。このような場合、皮膚の深さ方向における加熱にムラが生じ、十分な脱毛効果が得られないおそれがある。
【0006】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、毛包に分布するメラノサイト全域に光を均一に照射することが可能な光照射式脱毛装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様にかかる光照射式脱毛装置は、400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する第1光源と、400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する第2光源とを備える。光照射式脱毛装置は、第1光源及び第2光源と対向して第1光源及び第2光源から照射される光を透過し、皮膚と接触した場合に皮膚を冷却する皮膚冷却部を備える。光照射式脱毛装置は、第1光源、第2光源及び皮膚冷却部の周囲を取り囲み、押圧されていない場合には皮膚冷却部の皮膚と接触する面よりも皮膚冷却部に対して第1光源及び第2光源とは反対側の方向に向かって突き出ており、押圧された場合には皮膚冷却部に対して第1光源及び第2光源の方向に向かって皮膚によって押圧される面が移動する押圧部を含み、押圧部が押圧されている間の少なくとも一部の時間には第1光源及び第2光源から光が照射され、押圧部が押圧されていない間には第1光源及び第2光源から光が照射されないように第1光源及び第2光源による光の照射と非照射とを切り替えるプッシュスイッチを備える。光照射式脱毛装置は、第1光源を冷却する第1冷却部と、第2光源を冷却する第2冷却部とを備える。第1冷却部は、第1光源を冷却することによって、第1光源から照射される光の波長を第2光源から照射される光の波長とは異なる波長へシフトさせる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、毛包に分布するメラノサイト全域に光を均一に照射することが可能な光照射式脱毛装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る光照射式脱毛装置を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る第1光源及び第2光源の配置状態の例を示す斜視図である。
【
図5】光照射式脱毛装置の使用前の状態の一例を示す断面図である。
【
図6】プッシュスイッチが押圧される前の状態の一例を示す断面図である。
【
図7】プッシュスイッチが押圧された後の状態の一例を示す断面図である。
【
図8】皮膚に光が照射されている状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0011】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
また、以下の実施形態では、出射口を上方向、出射口とは反対側の方向を下方向として光照射式脱毛装置の上下方向Zを規定している。また、光照射式脱毛装置の水平方向における一方向を幅方向Y、上下方向Z及び幅方向Yに直交する方向を前後方向Xと規定して説明する。
【0013】
以下、
図1~
図8を用いて、本実施形態に係る光照射式脱毛装置を説明する。
【0014】
[構成]
図1及び
図2に示すように、光照射式脱毛装置1は、ハウジング5と、第1光源10と、第2光源12と、第1温度センサ15と、第2温度センサ16と、第3温度センサ17と、皮膚冷却部20と、プッシュスイッチ30とを備えている。さらに、光照射式脱毛装置1は、第1冷却部40と、第2冷却部41と、制御部50とを備えている。
【0015】
ハウジング5の一端には、光照射式脱毛装置1の出射口となる開口部が設けられている。ハウジング5の開口部には第1光源10及び第2光源12が設けられており、人の皮膚に対して光が照射される。また、ハウジング5の第1光源10及び第2光源12とは反対側には底部が形成されている。ハウジング5には、複数の第1開口部6と複数の第2開口部7とが設けられており、外部の空気が複数の第1開口部6から取り入れられ、複数の第2開口部7から排出される。ハウジング5の内側には、第1光源10と、第2光源12と、第1温度センサ15と、第2温度センサ16と、第3温度センサ17と、皮膚冷却部20と、プッシュスイッチ30と、第1冷却部40と、第2冷却部41と、制御部50とが収容されている。
【0016】
図3は、本実施形態に係る第1光源10及び第2光源12の概略的な配置状態の例を示す斜視図である。なお、
図3では、第3温度センサ17、皮膚冷却部20、プッシュスイッチ30、第2冷却部41の一部の構成などを省略している。
図1~
図3に示すように、第1光源10は基板14の略中央に配置されており、第2光源12は第1光源10を取り囲むように配置されている。本実施形態では、第1光源10は複数のLED(Light Emitting Diode)を含んでいる。また、第2光源12は複数のLEDを含んでいる。第1光源10に含まれる複数のLEDは基板14上に略等間隔に離間配置された状態で実装されている。また、第2光源12に含まれる複数のLEDは基板14上に略等間隔に離間配置された状態で実装されている。第1光源10と第2光源12とは、第1光源10に含まれる各LED間の隙間よりも大きな隙間を空けて配置されている。第1光源10及び第2光源12は図示しない電源と電気的に接続されており、電源から電力が供給されることにより、第1光源10及び第2光源12から光が照射される。
【0017】
第1光源10及び第2光源12は400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する。上記のような光が皮膚に照射されることにより、毛包のメラニンが上記光を吸収して発熱する。そして、この熱により毛包に含まれる毛母体がダメージを受け、毛の排出が促進される。光の波長は、500nm以上であってもよく、600nm以上であってもよく、700nm以上であってもよく、800nm以上であってもよい。また、光の波長は、1000nm以下であってもよく、900nm以下であってもよい。第1光源10及び第2光源12から照射される光は、400nm以上1200nm以下の範囲内にピーク波長を有する光であってもよい。光が上記のような範囲内にピーク波長を有する場合であっても、照射される光は上記範囲外の波長成分を含んでいてもよい。なお、上記波長は第1光源10又は第2光源12の温度が25℃である場合に照射される光の波長である。また、第1光源10と第2光源12の種類は同じであり、第1光源10により照射される光の波長と第2光源12により照射される光の波長とは所定の温度において同じであってもよい。また、異なる波長の光を照射するLEDを組合せて使用してもよい。
【0018】
第1光源10及び第2光源12は、放射照度が15W/cm2以上50W/cm2以下の条件で光を照射することが好ましい。15W/cm2以上の放射照度で光を照射することにより、成長期初期~成長期の毛に高い脱毛効果を与えることが可能となる。また、50W/cm2以下の放射照度で光を照射することにより、光照射による皮膚温度の上昇を抑制することができる。そのため、皮膚がより確実に冷却され、皮膚刺激を軽減することができる。放射照度は、20W/cm2以上であってもよく、25W/cm2以上であってもよく、30W/cm2以上であってもよい。また、放射照度は、45W/cm2以下であってもよく、40W/cm2以下であってもよい。
【0019】
第1光源10及び第2光源12から照射される光は、本実施形態においては、断続的に光が照射されるパルス光である。第1光源10及び第2光源12は、照射時間が500ms以上1000ms以下の条件で断続的に光を照射することが好ましい。500ms以上光を照射することにより、成長期初期~成長期の毛に高い脱毛効果を与えることが可能となる。また、1000ms以下で光を照射することにより、光照射による皮膚温度の上昇を抑制することができる。そのため、皮膚がより確実に冷却され、皮膚刺激を軽減することができる。照射時間は600ms以上であってもよい。また、照射時間は900ms以下であってもよく、800ms以下であってもよい。
【0020】
第1光源10及び第2光源12から照射される各パルス光のエネルギーは9J/cm2以上50J/cm2以下であることが好ましい。上記エネルギーが9J/cm2以上であると、高い脱毛効果を与えることが可能となる。また、皮膚冷却部20を備える光照射式脱毛装置1では、上記エネルギーが50J/cm2以下であると、光照射による皮膚温度の上昇を抑制することができる。そのため、皮膚がより確実に冷却され、皮膚刺激を軽減することができる。
【0021】
第1温度センサ15は第1光源10の温度を検出する。第1温度センサ15は、基板14を挟んで第1光源10と対向するように基板14の第1光源10とは反対側の面に設けられている。そして、第1温度センサ15は、基板14の温度を測定することで第1光源10の温度を間接的に測定している。本実施形態では、第1温度センサ15は、接触式温度センサであるサーミスタを含んでいる。しかしながら、第1温度センサ15は、サーミスタに限定されず、熱電対若しくは測温抵抗体などの接触式温度センサ又は放射温度計などの非接触温度センサを含んでいてもよい。また、第1温度センサ15は第1光源10の温度を検出することができれば、第1温度センサ15の設けられる位置は特に限定されない。
【0022】
第2温度センサ16は第2光源12の温度を検出する。第2温度センサ16は、基板14を挟んで第2光源12と対向するように基板14の第2光源12とは反対側の面に設けられている。そして、第2温度センサ16は、基板14の温度を測定することで第2光源12の温度を間接的に測定している。本実施形態では、第2温度センサ16は、接触式温度センサであるサーミスタを含んでいる。しかしながら、第2温度センサ16は、サーミスタに限定されず、熱電対若しくは測温抵抗体などの接触式温度センサ又は放射温度計などの非接触温度センサを含んでいてもよい。また、第2温度センサ16は第2光源12の温度を検出することができれば、第2温度センサ16の設けられる位置は特に限定されない。
【0023】
皮膚冷却部20は第1光源10及び第2光源12と対向する位置に配置されている。皮膚冷却部20は、第1光源10及び第2光源12と接触していてもよく、第1光源10及び第2光源12と空間を空けて配置されていてもよい。また、皮膚冷却部20は、第1光源10及び第2光源12とは反対側において皮膚と接触するように設けられている。皮膚冷却部20は透光性を有する材料により形成されている。第1光源10及び第2光源12から光が照射されると、皮膚冷却部20は第1光源10及び第2光源12から照射される光を透過し、皮膚冷却部20を透過した光が皮膚に照射される。皮膚冷却部20は例えば透光性を有するプレートであり、本実施形態では円板の皮膚冷却部20を使用している。
【0024】
皮膚冷却部20は、第1光源10及び第2光源12から照射された光が吸収されにくい材料で形成されていることが好ましい。具体的には、皮膚冷却部20の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であると、第1光源10及び第2光源12から照射された光の大部分が皮膚冷却部20を透過することができる。そのため、多くの光をメラニンに到達させることができ、脱毛効果を促進することができる。また、皮膚冷却部20によって吸収されて熱に変換される光の量を低減することができることから、皮膚冷却部20の温度上昇を抑制することができる。光が皮膚冷却部20に吸収されにくくする観点から、全光線透過率は90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。全光線透過率の上限の値は100%である。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従って測定することができる。
【0025】
皮膚冷却部20の屈折率は1.7以上であることが好ましい。皮膚冷却部20の屈折率が1.7以上であると、第1光源10及び第2光源12からの光が皮膚冷却部20で吸収されにくい。皮膚冷却部20は、屈折率の値が大きい程光を透過しやすくなる。そのため、屈折率は、1.8以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。屈折率の上限の値は特に限定されないが、10であってもよい。屈折率は、JIS B7071-1:2015に従って最小偏角法によって測定することができる。
【0026】
皮膚冷却部20は、皮膚と接触した場合に皮膚を冷却する。皮膚冷却部20は熱伝導性が高い材料を含むことが好ましい。皮膚冷却部20の熱伝導率は1W/mK以上であることが好ましい。熱伝導率が1W/mK以上であると、第1光源10及び第2光源12からの光及び皮膚によって皮膚冷却部20が加温されても、熱が放散されやすいため、皮膚を効果的に冷却することができる。熱伝導率の値が大きい程、皮膚冷却部20の熱伝導性が高くなり、皮膚冷却部20の冷却効果が高くなる傾向にある。そのため、冷却効率の観点からは、皮膚冷却部20の熱伝導率は2W/mK以上であることがより好ましく、10W/mK以上であることがさらに好ましく、30W/mK以上であることが特に好ましく、100W/mK以上であることが最も好ましい。熱伝導率の上限の値は特に限定されないが、100000W/mKであってもよい。熱伝導率は、JIS R1611:2010に従ってレーザフラッシュ法によって測定することができる。
【0027】
皮膚冷却部20は、無機物質を含んでいてもよい。具体的には、皮膚冷却部20は、Al2O3、ZnO、ZrO2、MgO、GaN、AlN及びダイヤモンドからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいることが好ましい。これらの材料は、屈折率及び熱伝導率が高いため、皮膚冷却部20の透光性及び熱伝導性を向上させることができる。なお、Al2O3(サファイア)の屈折率は1.79であり、熱伝導率は42W/mKである。ZnOの屈折率は2.01であり、熱伝導率は20W/mKである。ZrO2の屈折率は2.13であり、熱伝導率は3W/mKである。MgOの屈折率は1.74であり、熱伝導率は47W/mKである。GaNの屈折率は2.346であり、熱伝導率は200W/mKである。AlNの屈折率は2.175であり、熱伝導率は150W/mKである。ダイヤモンドの屈折率は2.417であり、熱伝導率は1000W/mKである。
【0028】
皮膚冷却部20は、耐熱性及び透光性の観点などから、シリコーン樹脂などの樹脂を含んでいてもよい。また、皮膚冷却部20は、シリコーン樹脂などの樹脂と、樹脂に分散された高熱伝導フィラーとを含んでいてもよい。皮膚冷却部20が高熱伝導フィラーを含むことで皮膚冷却部20の熱が放散されやすくなるため、皮膚を効果的に冷却することができる。高熱伝導フィラーは、上述のような無機物質を含んでいてもよい。
【0029】
皮膚冷却部20における無機物質の割合は10質量%以上であることが好ましい。皮膚冷却部20における無機物質の割合を10質量%以上とすることにより、皮膚冷却部20の熱伝導性を向上させることができる。皮膚冷却部20における無機物質の割合は30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
【0030】
皮膚冷却部20は-5℃以上35℃以下となるように冷却されることが好ましい。皮膚冷却部20が-5℃以上となるように冷却されることにより、冷却に伴う皮膚の痛みが発生しにくいように皮膚を冷却することができる。一方、皮膚冷却部20が35℃以下となるように冷却されることにより、光照射時の皮膚温度上昇による炎症を抑制することができる。皮膚冷却部20は、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上となるように冷却することが好ましい。また、皮膚冷却部20は、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下、特に好ましくは20℃以下、最も好ましくは15℃以下となるように冷却されることが好ましい。
【0031】
第3温度センサ17は、皮膚冷却部20の温度を検出する。皮膚冷却部20の温度を検出することで、皮膚冷却部20の温度を精密に制御することができる。第3温度センサ17は、皮膚冷却部20と対向するように設けられている。第3温度センサ17は、具体的には、基板14に設けられている。本実施形態では、第3温度センサ17は接触式温度センサを含んでいる。接触式温度センサとしては、サーミスタ、熱電対及び測温抵抗体などが挙げられる。
【0032】
プッシュスイッチ30は、自己復帰タイプのスイッチである。プッシュスイッチ30は、第2冷却部41の接続部43に設けられている。プッシュスイッチ30は、前後方向X及び幅方向Yにおいて第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20よりも外側に配置されており、第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20を取り囲むように設けられている。プッシュスイッチ30は、2つの基部31と、押圧部32とを含んでいる。
【0033】
2つの基部31は、幅方向Yにおいて第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20が間に配置されるように、第2冷却部41の把持部44よりも外側において接続部43に固定されている。基部31は、接続部43から上方に延びた四角柱形状をしている。
【0034】
押圧部32は基部31と係合しており、皮膚で押圧されることによって上下方向Zに移動する。押圧部32は、第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20の周囲を取り囲んでいる。押圧部32は、2つの第1部品321と、1つの第2部品322とを含んでいる。
【0035】
第1部品321は、基部31から上方向に延びた円柱形状をしており、基部31の前後方向X及び幅方向Yの略中央部にそれぞれ設けられている。第2部品322は、第1部品321の基部31とは反対側の面と接するように配置されている。第2部品322は、前後方向X及び幅方向Yの中心部に貫通孔を有し、上下方向Zに延びたドーナツ形状をしている。第2部品322の貫通孔内には、第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20が配置されている。第2部品322の表面の一部は、皮膚冷却部20の第1光源10及び第2光源12とは反対側の面よりも上下方向Zの上側に突き出ている。なお、第1部品321と第2部品322とは分離した異なる部品であるが、押圧部32は、連続して一体的に形成された1つの部品により形成されていてもよい。また、基部31、第1部品321及び第2部品322の数は特に限定されず、適宜変更することができる。
【0036】
押圧部32は、押圧されていない場合には皮膚冷却部20の皮膚と接触する面よりも皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12とは反対側の方向(上下方向Zの上方向)に向かって突き出ている。基部31及び押圧部32の内部には、図示しない接点が設けられている。押圧部32が押圧されていない間には、基部31の接点と押圧部32の接点とが接触せずに第1光源10及び第2光源12が接続された回路が開くようにプッシュスイッチ30が構成されている。一方、押圧部32は、押圧された場合には皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12の方向(上下方向Zの下方向)に向かって皮膚によって押圧される面が移動する。そのため、基部31に設けられた接点と押圧部32に設けられた接点とが接することによって回路が閉じられる。
【0037】
また、基部31と押圧部32との間には、図示しない弾性体が設けられている。弾性体は、押圧部32が押圧された場合には弾性変形し、弾性変形によって生じた弾性力によって押圧部32を押し返す。そのため、押圧部32を押圧する力が取り除かれると、弾性体が押圧部32を元の位置に戻すように押圧部32に作用するため、押圧部32の皮膚との接触面が基部31とは反対側の方向に向かって移動する。
【0038】
プッシュスイッチ30は、第1光源10及び第2光源12による光の照射と非照射とを切り替える。押圧部32が押圧されている間の少なくとも一部の時間には第1光源10及び第2光源12から光が照射される。押圧部32が押圧されていない間には第1光源10及び第2光源12から光が照射されない。そのため、光照射式脱毛装置1が皮膚に押し付けられている間の少なくとも一部の時間に光が皮膚に照射され、光照射式脱毛装置1が皮膚から離されると光の照射が停止されるように構成されている。
【0039】
光は、プッシュスイッチ30が押圧されてすぐに照射されてもよく、プッシュスイッチ30が押圧されてから所定の時間後に照射されてもよい。第1光源10及び第2光源12から光が照射されるタイミングは、制御部50によって制御されてもよい。光照射式脱毛装置1は、皮膚が皮膚冷却部20の表面と接触した後に第1光源10及び第2光源12から光を照射してもよい。これにより、皮膚表面が冷却された状態で光が照射される。したがって、皮膚の発熱が抑制されるため、皮膚への刺激を抑制することができる。また、皮膚冷却部20に皮膚が接触した状態で光が照射されるため、照射ムラを抑制でき、安定した脱毛効果を得ることができる。
【0040】
第1冷却部40は第1光源10を冷却する。第1冷却部40は、基板14を挟んで第1光源10と対向するように基板14の第1光源10とは反対側の面に設けられている。そして、第1冷却部40は、基板14を介して第1光源10を冷却している。第1冷却部40は、第1光源10の温度が第2光源12の温度よりも低くなるように第1光源10を冷却してもよい。なお、本実施形態では、第1冷却部40はペルチェ素子を含んでいる。そして、第1冷却部40の一方の面は基板14と接続されており、もう一方の面には第2冷却部41の放熱フィン45が接続されている。しかしながら、第1冷却部40は、第1光源10を冷却することができれば特に限定されない。
【0041】
第2冷却部41は第2光源12を冷却する。第2冷却部41は、基板14を挟んで第2光源12と対向するように基板14の第2光源12とは反対側の面に設けられている。具体的には、第2冷却部41は、基板14の縁部と接続されている。そして、第2冷却部41は、基板14を介して第2光源12を冷却している。本実施形態では、第2冷却部41は空冷式の冷却器を含んでいる。
【0042】
また、第2冷却部41は、皮膚冷却部20を冷却する。光照射式脱毛装置1が第2冷却部41を備えていることにより、皮膚冷却部20をより低温にすることができる。そのため、皮膚冷却部20による皮膚冷却効果をより向上させることができる。第2冷却部41は、放熱部42と、送風部46とを含んでいる。
【0043】
放熱部42は、皮膚冷却部20と接続されており、皮膚冷却部20から奪い取った熱を放熱する。放熱部42は、接続部43と、把持部44と、放熱フィン45とを含んでいる。
【0044】
接続部43は中央部に開口を有する板状の部材である。接続部43の一方の面である第1面には、基板14が設けられている。基板14は接続部43よりも小さく、接続部43の内側に収まるように設けられている。接続部43の第1面における基板14の外側には把持部44及びプッシュスイッチ30が接続されている。接続部43の第1面とは反対側の面である第2面には、放熱フィン45が設けられている。接続部43の開口内には、第1冷却部40、第1温度センサ15及び第2温度センサ16が配置されている。
【0045】
把持部44は、接続部43の第1面から上下方向Zの上方向に向かって突き出しており、皮膚冷却部20の全周縁を把持している。したがって、第1光源10及び第2光源12は、皮膚冷却部20、把持部44及び接続部43で囲われている。第1光源10及び第2光源12で生成された熱は、皮膚冷却部20並びに第2冷却部41の放熱部42を介して放熱される。なお、把持部44は、皮膚冷却部20の全周縁を把持しているが、把持部44は皮膚冷却部20の少なくとも一部と接続されていればよい。
【0046】
放熱フィン45は、接続部43の第1光源10及び第2光源12とは反対側の面に設けられている。そのため、皮膚冷却部20及び第1冷却部40の熱は、把持部44及び接続部43を通じて放熱フィン45へ移動する。放熱フィン45は、複数のフィンを含んでおり、空気との接触面積が大きいため、熱が放散されやすくなっている。
【0047】
放熱部42は、熱伝導性に優れる材料を含んでいることが好ましい。放熱部42の熱伝導率の値は、皮膚冷却部20よりも大きくてもよい。具体的には、放熱部42は、アルミニウム、鉄及び銅などの金属を含んでいてもよい。把持部44、接続部43及び放熱フィン45は、同じ材料によって形成されていてもよく、異なる材料によって形成されていてもよい。
【0048】
送風部46は、放熱部42に空気を送ることによって放熱部42を冷却する。送風部46は、例えばファンを含んでおり、ファンが回転することによって、気流が発生する。ハウジング5には、送風部46と対向する箇所に複数の第1開口部6が設けられている。また、ハウジング5には、放熱フィン45と対向する箇所に複数の第2開口部7が設けられている。そのため、送風部46を駆動させると、複数の第1開口部6を通じてハウジング5の外部から取り入れられた空気が放熱フィン45に送られる。放熱フィン45と接触した空気の熱は、放熱フィン45の熱と交換され、放熱フィン45が冷却される。放熱フィン45と接触して温められた空気は、複数の第2開口部7を通じてハウジング5の外部に排出される。
【0049】
制御部50は、基板51に設けられている。制御部50は、第1光源10及び第2光源12の光の照射及び非照射を制御する。また、制御部50は、第1冷却部40及び第2冷却部41の駆動及び停止を制御する。
図4に示すように、制御部50の入力側には、第1温度センサ15、第2温度センサ16、第3温度センサ17、プッシュスイッチ30及びモード選択部52が接続されている。一方、制御部50の出力側には、第1光源10、第2光源12、第1冷却部40及び第2冷却部41が接続されている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。
【0050】
制御部50は、プッシュスイッチ30が押圧されている場合に第1光源10及び第2光源12を点灯又は点滅させる。制御部50は、プッシュスイッチ30が押圧されると同時に第1光源10及び第2光源12に光を照射させてもよく、プッシュスイッチ30が押圧されて所定の時間が経過した後に第1光源10及び第2光源12に光を照射させてもよい。
【0051】
制御部50は、皮膚冷却部20の温度が-5℃以上35℃以下となるように第2冷却部41に皮膚冷却部20を冷却させてもよい。制御部50は、第3温度センサ17から皮膚冷却部20の温度に関する信号を受け取り、当該信号に応じて皮膚冷却部20を冷却するように第2冷却部41を駆動してもよい。制御部50は、送風部46の出力などを制御して皮膚冷却部20を冷却してもよい。
【0052】
制御部50は、第1温度センサ15により検出された第1光源10の温度及び第2温度センサ16により検出された第2光源12の温度に応じ、第1光源10を第2光源12とは異なる温度に冷却するように第1冷却部40による冷却を制御してもよい。そして、制御部50は、第1冷却部40による冷却を制御することによって、第1光源10から照射される光の波長を第2光源12から照射される光の波長とは異なる波長へシフトさせてもよい。
【0053】
具体的には、制御部50は、第1温度センサ15により検出された第1光源10の温度に関する信号を取得する。また、制御部50は、第2温度センサ16により検出された第2光源12の温度に関する信号を取得する。制御部50は、第1光源10の温度と第2光源12の温度とが異なる場合には、第1冷却部40に第1光源10を冷却させず、第1光源10及び第2光源12の温度に関する信号を第1温度センサ15及び第2温度センサ16から再度取得して比較する。一方、制御部50は、第1光源10の温度と第2光源12の温度が同じ場合である場合には、第1冷却部40に第1光源10を冷却させる。
【0054】
制御部50は、第1光源10の温度が第2光源12の温度よりも低くなるように第1冷却部40に第1光源10を冷却させてもよい。例えば、制御部50は、第1光源10の温度と第2光源12の温度とを比較し、第1光源10の温度が第2光源12の温度以上である場合には、第1冷却部40に第1光源10を冷却させる。また、制御部50は、第1光源10の温度が閾値以下である場合には、第1光源10の冷却を停止する。
【0055】
制御部50は第1光源10からの光及び第2光源12からの光が照射される皮膚の部位に応じて予め定められた温度範囲となるように第1冷却部40で第1光源10の温度を制御してもよい。毛包は各部位によってサイズが異なる。例えば、髭の毛包は大きく、産毛の毛包は小さい。そのため、各部位に応じて第1光源10の温度を制御することにより、各部位に最適な波長の光を照射することができる。制御部50は、図示しない記憶部に記憶された上限及び下限閾値温度を読み出し、第1冷却部40に第1光源10を冷却させてもよい。そして、制御部50は、予め定められた各部位に対応する上限閾値温度から下限閾値温度の範囲内となるように第1冷却部40に第1光源10を冷却させてもよい。光を照射する部位については、モード選択部52を介してユーザが設定してもよく、毛の外観に応じて制御部50が判断してもよい。
【0056】
モード選択部52は、基板51と接続されており、少なくとも一部が外表面に露出している。モード選択部52は、露出した外表面に皮膚の部位を選択可能な図示しないスイッチが設けられている。モード選択部52は、例えば押す度に各部位を切り替えることが可能な1つのスイッチを含んでいてもよい。また、モード選択部52は、各部位に対応する複数のスイッチを含んでおり、各スイッチを押すことによって選択された各部位が選択されてもよい。スイッチは押しボタンスイッチであってもよく、タッチパネル式スイッチであってもよい。
【0057】
[動作]
以上のように構成された光照射式脱毛装置1について、以下その動作、作用を説明する。
【0058】
図5~
図8に基づいて、光照射式脱毛装置1によって光が照射される様子を説明する。
図5は、光照射式脱毛装置1の使用前の状態の一例を示す断面図である。
図6は、プッシュスイッチ30が押圧される前の状態の一例を示す断面図である。
図7は、プッシュスイッチ30が押圧された後の状態の一例を示す断面図である。
図8は、皮膚Sに光が照射されている状態の一例を示す断面図である。
【0059】
図5に示すように、光照射式脱毛装置1の使用前においては、プッシュスイッチ30は押圧されていない。そのため、プッシュスイッチ30の押圧部32は、皮膚冷却部20の皮膚Sと接触する面よりも皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12とは反対側の方向に向かって突き出ている。この状態においては、第1光源10及び第2光源12から光が照射されない。
【0060】
図6に示すように、光照射式脱毛装置1の使用時においては、光照射式脱毛装置1にユーザの皮膚Sが押し当てられる。プッシュスイッチ30の押圧部32は、皮膚冷却部20の皮膚接触面よりも突き出ている。そのため、ユーザの皮膚Sは最初にプッシュスイッチ30と接触し、皮膚Sとプッシュスイッチ30とによって第1光源10及び第2光源12が囲われる。
【0061】
図7に示すように、プッシュスイッチ30が皮膚Sに接した状態で押圧される。具体的には、プッシュスイッチ30の押圧部32が押圧された場合には皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12の方向に向かって皮膚Sによって押圧される面が移動する。これにより、皮膚Sとプッシュスイッチ30とによって第1光源10及び第2光源12が囲われた状態で皮膚Sが皮膚冷却部20と接触し、皮膚Sによって皮膚冷却部20が遮蔽される。そして、皮膚Sは皮膚冷却部20と接触することによって冷却される。
【0062】
図8に示すように、プッシュスイッチ30により回路が閉じられ、第1光源10及び第2光源12から光が照射される。皮膚冷却部20は皮膚Sによって遮蔽されており、プッシュスイッチ30によって第1光源10及び第2光源12も囲われているため、第1光源10及び第2光源12から照射される光が漏れずに皮膚Sに照射される。皮膚冷却部20と皮膚Sとをより確実に接触させるため、プッシュスイッチ30の押圧部32が押圧されて所定の時間が経過した後に第1光源10及び第2光源12から光が照射されてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、制御部50は、第1冷却部40と第2冷却部41を備えている。本実施形態において、第1光源10及び第2光源12は複数のLEDを含んでおり、LEDは温度に依存してピーク波長がシフトする。例えば、LEDの温度が数十℃程度下降すると、照射される光の波長が数十ナノメートル程度小さくなる。そのため、第1冷却部40は、第1光源10を冷却することによって、第1光源10から照射される光の波長を第2光源12から照射される光の波長とは異なる波長へシフトさせる。
【0064】
光の波長がシフトすることによって、光の散乱の波長依存により、皮膚内へ侵入する光の深度が変化する。例えば、第1光源10の温度を下げ、光の波長を短くすると、光の深度が浅くなる。一方、第2光源12の光の波長は第1光源10よりも長いため、皮膚内での光の散乱が少なく、皮膚内へ到達する光の深度が深い。そして、異なる深度の光が皮膚に照射されることによって毛包のメラニンを含むメラノサイト全体が加熱される。このように、第1光源10及び第2光源12から照射される光の波長を、第1光源10及び第2光源12の温度を独立して制御することによってそれぞれ容易に調整することができる。そのため、本実施形態に係る光照射式脱毛装置1によれば、発光波長の異なる種類のLEDを配置しただけの装置では、十分な脱毛効果が得られなかったような毛包サイズの部位も、効果的に脱毛することも可能である。
【0065】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る光照射式脱毛装置1は、第1光源10と、第2光源12と、皮膚冷却部20と、プッシュスイッチ30と、第1冷却部40と、第2冷却部41とを備えている。第1光源10は、400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する。第2光源12は、400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射する。皮膚冷却部20は、第1光源10及び第2光源12と対向して第1光源10及び第2光源12から照射される光を透過し、皮膚と接触した場合に皮膚を冷却する。プッシュスイッチ30は、第1光源10、第2光源12及び皮膚冷却部20の周囲を取り囲む押圧部32を含んでいる。押圧部32は、押圧されていない場合には皮膚冷却部20の皮膚と接触する面よりも皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12とは反対側の方向に向かって突き出ている。押圧部32は、押圧された場合には皮膚冷却部20に対して第1光源10及び第2光源12の方向に向かって皮膚によって押圧される面が移動する。プッシュスイッチ30は、第1光源10及び第2光源12による光の照射と非照射とを切り替える。押圧部32が押圧されている間の少なくとも一部の時間には第1光源10及び第2光源12から光が照射され、押圧部32が押圧されていない間には第1光源10及び第2光源12から光が照射されない。第1冷却部40は第1光源10を冷却する。第2冷却部41は第2光源12を冷却する。第1冷却部40は、第1光源10を冷却することによって、第1光源10から照射される光の波長を第2光源12から照射される光の波長とは異なる波長へシフトさせる。
【0066】
これにより、第1冷却部40が第1光源10を冷却し、第2冷却部41が第2光源12を冷却するため、第1光源10の温度と第2光源12の温度を任意の異なる温度とすることができる。そのため、光の散乱の波長依存により、異なる深度の光が皮膚に照射されるため、毛包に分布するメラノサイト全域に光を均一に照射することができる。
【0067】
また、第1光源10がプッシュスイッチ30と皮膚とによって囲われた状態で皮膚に光を照射することができる。そのため、光の漏洩を抑制することができる。また、光の照射時に皮膚冷却部20が皮膚と接触して皮膚を冷却することができる。そのため、皮膚の炎症を抑制することができる。
【0068】
なお、光照射式脱毛装置1は、近赤外線LED(光源10)と、押込み型照射スイッチ(プッシュスイッチ30)と、肌冷却部(皮膚冷却部20)とを備えていてもよい。肌冷却部(皮膚冷却部20)は、近赤外線LED(光源10)の上部である光線上において冷却され、近赤外線LED(光源10)の光を透過する透明材質である。光照射式脱毛装置1は、肌(皮膚)へ押し込むことで、肌冷却部(皮膚冷却部20)の天面に肌(皮膚)が接触した後に、近赤外線LED(光源10)が発光する構成の光照射式脱毛装置1である。光照射式脱毛装置1は、近赤外線LED(光源10)のLED素子を配置した基板14の一部の温度を任意に制御することで、近赤外線LED(光源10)の波長を変更することを特徴とする。このような光照射式脱毛装置1であっても、毛包に分布するメラノサイト全域に光を均一に照射することが可能である。
【0069】
本実施形態のように、光照射式脱毛装置1は、温度センサ15,16と、制御部50とをさらに備えていてもよい。温度センサ15,16は、第1光源10の温度及び第2光源12の温度を検出してもよい。制御部50は、温度センサ15,16により検出された第1光源10及び第2光源12の温度に応じ、第1光源10を第2光源12とは異なる温度に冷却するように第1冷却部40による冷却を制御してもよい。
【0070】
これにより、第1光源10の温度をより精密に制御することができる。そのため、皮膚内に侵入する光の深度をさらに精密に制御することができる。
【0071】
本実施形態のように、第1冷却部40はペルチェ素子を含み、温度センサ15,16はサーミスタを含んでいてもよい。
【0072】
これにより、第1光源10をより強力に冷却し、さらに高い精度で第1光源10の温度を制御することができる。そのため、皮膚内に侵入する光の深度をさらに精密に制御することができる。
【0073】
第1冷却部40は第1光源10の温度が第2光源12の温度よりも低くなるように第1光源10を冷却してもよい。
【0074】
これにより、第1光源10の光の波長が第2光源12の光の波長よりも短くなる。毛包上部は毛包下部に比べメラノサイトが多く、第1光源10で毛包の上部に光を照射し、第2光源12で毛包の深部に光を照射することによって、メラノサイト分布に応じた光量を照射できるため、脱毛効果をさらに向上させることができる。
【0075】
本実施形態のように、第1冷却部40は第1光源10及び第2光源12からの光が照射される皮膚の部位に応じて予め定められた温度範囲となるように第1光源10を冷却してもよい。
【0076】
これにより、部位に応じて第1光源10及び第2光源12から最適な波長の光を放射することができる。そのため、さらに高い脱毛効果を得ることができる。
【0077】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0078】
上記本実施形態では、第1光源10及び第2光源12の一例として、LEDを説明した。しかしながら、第1光源10及び第2光源12は、400nm以上1200nm以下の波長を有する光を照射することができればよい。第1光源10及び第2光源12は、LEDに限定されず、例えば、レーザーダイオードであってもよい。
【0079】
また、皮膚冷却部20は、第1光源10及び第2光源12から照射された光が反射するのを防止するための反射防止膜を含んでいてもよい。反射防止膜は、例えば皮膚冷却部20の第1光源10及び第2光源12と対向する面に設けてもよい。このような反射防止膜を皮膚冷却部20に設けることにより、光の反射が抑制され、多くの光を皮膚に照射することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第2冷却部41を用いて皮膚冷却部20を冷却する例について説明した。しかしながら、皮膚冷却部20の熱伝導性が高い場合、皮膚冷却部20の放熱性が高いことから、必ずしも第2冷却部41を用いて皮膚冷却部20を冷却する必要はない。
【0081】
また、本実施形態では、第2冷却部41が皮膚冷却部20と接続されて皮膚冷却部20を冷却する例について説明した。しかしながら、第2冷却部41は、皮膚冷却部20と接続されている必要はない。
【0082】
また、本実施形態では、第1光源10の温度を測定するために第1温度センサ15を用いている。また、第2光源12の温度を測定するために第2温度センサ16を用いている。しかしながら、基板14の熱伝導率を算出などすることにより、1つの温度センサで第1光源10及び第2光源12の温度を推定することができる。そのため、光照射式脱毛装置1は、2つの温度センサを用いる必要はなく、第1光源10及び第2光源12の温度を測定する1つの温度センサを備えていてもよい。
【0083】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本開示にかかる光照射式脱毛装置は、毛包に分布するメラノサイト全域に光を均一に照射することが可能である。具体的には、光照射式脱毛装置は、業務用及び家庭用の光照射式脱毛装置などに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 光照射式脱毛装置
5 ハウジング
6 第1開口部
7 第2開口部
10 第1光源
12 第2光源
14 基板
15 第1温度センサ
16 第2温度センサ
17 第3温度センサ
20 皮膚冷却部
30 プッシュスイッチ
31 基部
32 押圧部
40 第1冷却部
41 第2冷却部
42 放熱部
43 接続部
44 把持部
45 放熱フィン
46 送風部 50 制御部
51 基板
52 モード選択部
321 第1部品
322 第2部品
S 皮膚