(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ヘアケア装置およびヘアケアシステム
(51)【国際特許分類】
A45D 20/10 20060101AFI20240913BHJP
A45D 20/12 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A45D20/10 104
A45D20/12 101
(21)【出願番号】P 2021017484
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】石原 綾
(72)【発明者】
【氏名】木下 美栄
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏之
(72)【発明者】
【氏名】近澤 祐樹
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108433318(CN,A)
【文献】特開2020-171532(JP,A)
【文献】特開平04-033602(JP,A)
【文献】特開2015-167704(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109907460(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313340(US,A1)
【文献】中国実用新案第211703744(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 20/10
A45D 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の毛髪に熱を付与する熱付与部と、
前記毛髪に作用させる成分を生成する成分生成部と、
前記毛髪を測定または撮影する測定部と、
前記測定部から得られた髪測定値または髪画像に基づいて前記熱付与部および前記成分生成部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記髪測定値または前記髪画像に基づいて前記使用者の髪特性を分類する髪特性認識部と、
前記髪特性認識部で分類された前記髪特性ごとに、前記成分生成部で生成される前記成分の成分量を設定するテーブル生成部と、
前記髪特性認識部で分類された前記毛髪の部位ごとの前記髪特性と、前記テーブル生成部で設定された前記成分量とに基づいて、前記部位ごとに前記成分生成部が与える成分付与量もしくは前記熱付与部が与える熱付与量を算出する付与量演算部と、を有する、ヘアケア装置。
【請求項2】
前記髪特性は、前記使用者の髪型、前記毛髪の長さ、前記毛髪のボリューム、および、前記毛髪の太さまたは艶に関する髪質のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のヘアケア装置。
【請求項3】
前記毛髪の前後、左右または上下方向に少なくとも2分割された分割画像を少なくとも表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記使用者が前記表示部の前記分割画像において選択した分割部分に基づいて、前記成分量を前記使用者の所望の量に変更する、請求項1または2に記載のヘアケア装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記髪測定値または前記髪画像に基づいて前記毛髪の濡れに関する濡れ情報を算出する濡れ演算部を有し、
前記濡れ演算部が、前記使用者が洗髪前であるまたは前記毛髪が濡れていないと判断した場合、前記髪特性認識部に前記髪特性の分類を実行させ、
一方、前記濡れ演算部が、前記毛髪が濡れていると判断した場合、前記テーブル生成部に、前記髪特性認識部が前回までに分類した前記髪特性に基づいて前記成分量を設定させる、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記髪測定値または前記髪画像に基づいて前記毛髪の乾燥度を推定する乾燥推定演算部を有し、
前記付与量演算部は、さらに、前記乾燥推定演算部で推定された前記乾燥度に基づいて前記成分量を調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項6】
前記測定部は、少なくとも水の吸収波長を前記髪測定値とする濡れ検知センサを有し、
前記濡れ演算部は、前記濡れ検知センサが検知した前記髪測定値から吸光度を算出し、
前記乾燥推定演算部は、前記濡れ演算部が算出した前記吸光度の変化に基づいて前記乾燥度を推定する、請求項5に記載のヘアケア装置。
【請求項7】
前記測定部は、少なくとも水の前記吸収波長の光を照射する照明部を有し、
前記濡れ検知センサは、フォトダイオードであり、
前記乾燥推定演算部は、前記使用者の頭部の曲がり形状に合わせて、前記照明部からの前記光の反射の度合いを均等化して、前記乾燥度を推定する、請求項6に記載のヘアケア装置。
【請求項8】
前記乾燥推定演算部が、前記乾燥度が大気レベルであると判断した場合、
前記制御部は、前記熱付与部に熱を付与させない、前記成分生成部に前記成分の付与を停止させる、および、前記成分生成部が前記成分を付与しても付与時間としてカウントしない、とのうちの少なくとも1つの動作を実施させる、請求項5~7のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項9】
前記乾燥推定演算部が、前記乾燥度が前記使用者の肌レベルであると判断した場合、
前記制御部は、前記熱付与部に熱を付与させない、および、前記成分生成部に使用者の肌に有効な前記成分を付与させる、とのうちの少なくとも1つの動作を実施させる、請求項5~7のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項10】
前記測定部は、二次元画像を前記髪画像とする撮影部を有し、
前記乾燥推定演算部は、前記撮影部が乾燥時間ごとに撮影した前記二次元画像の教師データに基づく機械学習により、前記乾燥度を乾燥時間ごとに推定する、請求項5に記載のヘアケア装置。
【請求項11】
前記乾燥推定演算部は、前記毛髪の部位ごとに前記乾燥度を推定する、請求項10に記載のヘアケア装置。
【請求項12】
外部の通信機器としての携帯端末装置に備わる端末通信部との間で送受信を行う送受信部を備え、
前記携帯端末装置に備わる端末表示部に、前記毛髪の前後、左右または上下方向に少なくとも2分割された分割画像が少なくとも表示されたとき、
前記送受信部は、前記使用者が前記端末表示部の前記分割画像において選択した分割部分に係る情報を前記端末通信部から受信し、
前記制御部は、前記送受信部が前記端末通信部から受信した前記分割部分に係る情報に基づいて、前記成分量を前記使用者の所望の量に変更する、請求項1または2に記載のヘアケア装置。
【請求項13】
送受信部を有するヘアケア装置と、
前記送受信部との間で送受信する端末通信部を有する携帯端末装置と、を備えるヘアケアシステムであって、
前記ヘアケア装置は、請求項1~12のいずれか1項に記載のヘアケア装置である、ヘアケアシステム。
【請求項14】
使用者の髪型を判別する髪型判別部と、
前記髪型判別部で判別された髪型判別データから前記使用者の前記髪型を分類する髪型認識部と、
前記髪型認識部で認識された各々の前記髪型の髪の長さ、前記髪のボリュームまたは前記髪のクセ度合いに応じて前記髪に作用させる剤の成分量を判定する剤成分量判定部と、
前記剤成分量判定部で判定された前記剤の成分量にて前記使用者の前記髪に前記剤を噴出する剤噴出部と、を有
し、
前記髪型判別部は、前記髪の状態を表示する髪型状態表示部を有し、
前記髪型状態表示部は、前記髪の状態を分割表示することができる髪状態分割表示部を有し、
前記剤成分量判定部は、前記髪状態分割表示部での分割表示ごとに所望の量に剤成分量を変化させる剤成分量変更部を有する、ヘアケア装置。
【請求項15】
前記剤噴出部は、前記髪の形状を整える熱付与部を有する、請求項14に記載のヘアケア装置。
【請求項16】
前記剤噴出部は、前記髪の形状を整えるブラシ状部を有する、請求項14に記載のヘアケア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘアケア装置およびヘアケアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の毛髪を単に乾燥させるだけではなく、使用者の毛髪に有効な成分をも付与させるヘアドライヤ等のヘアケア装置がある。特許文献1は、毛髪に有効な成分としてイオンを適用し、使用者の設定のほかに、使用時間に基づいて成分量を調整するヘアドライヤに関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
髪型や髪質は、使用者ごとに異なる。したがって、特許文献1に開示されているヘアドライヤのように毛髪に有効な成分としてのイオン量を調整したとしても、使用者の髪型や髪質によっては、有効に作用しないことも考えられる。つまり、特許文献1に開示されているヘアドライヤでは、使用者の髪型や髪質別に合わせた使用者が望む髪の仕上がりに必ずしもなるとは限らない。
【0005】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、使用者が望む髪の仕上がりに導きやすいヘアケア装置およびヘアケアシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係るヘアケア装置は、使用者の毛髪に熱を付与する熱付与部と、毛髪に作用させる成分を生成する成分生成部と、毛髪を測定または撮影する測定部と、測定部から得られた髪測定値または髪画像に基づいて熱付与部および成分生成部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、髪測定値または髪画像に基づいて使用者の髪特性を分類する髪特性認識部と、髪特性認識部で分類された髪特性ごとに、成分生成部で生成される成分の成分量を設定するテーブル生成部と、髪特性認識部で分類された毛髪の全体の髪特性と、テーブル生成部で設定された成分量とに基づいて、使用者ごとに成分量を調整する、または、髪特性認識部で分類された毛髪の部位ごとの髪特性と、テーブル生成部で設定された成分量とに基づいて、部位ごとに成分生成部が与える成分付与量もしくは熱付与部が与える熱付与量を算出する付与量演算部と、を有する。
【0007】
また、本開示の態様に係るヘアケアシステムは、送受信部を有するヘアケア装置と、送受信部との間で送受信する端末通信部を有する携帯端末装置と、を備え、ヘアケア装置は、上記のヘアケア装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、使用者が望む髪の仕上がりに導きやすいヘアケア装置およびヘアケアシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るヘアドライヤの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るヘアドライヤの断面図である。
【
図3】成分生成部として採用され得る成分発生装置を示す図である。
【
図4】濡れ検知センサと照明部との各設置位置の関係を説明する図である。
【
図5】第1実施形態に係るヘアドライヤの制御ブロック図である。
【
図6】髪特性が毛髪の長さである場合の毛髪を例示する図である。
【
図7】髪特性が髪型である場合の毛髪を例示する図である。
【
図8】髪特性が毛髪のボリュームである場合の毛髪を例示する図である。
【
図9】髪特性が毛髪の太さである場合の毛髪を例示する図である。
【
図10】髪特性が毛髪の艶である場合の毛髪を例示する図である。
【
図11】毛髪のボリュームのレベルの判定項目の第1例を示す図である。
【
図12】毛髪のボリュームのレベルの判定項目の第2例を示す図である。
【
図13】毛髪全体で髪特性ごとに設定される成分量を例示する表である。
【
図14】部位ごとかつ髪特性ごとに設定される成分量を例示する表である。
【
図15】化粧料付与量と毛髪検知との関係を示すチャートである。
【
図16】帯電微粒子付与量と部位検知との関係を示すチャートである。
【
図17】化粧料付与量と部位検知との関係を示すチャートである。
【
図18】2種の化粧料付与量と部位検知との関係を示すチャートである。
【
図19】帯電微粒子付与量とパーマ部分検知との関係を示すチャートである。
【
図20】風量と部位検知との関係を示すチャートである。
【
図27】毛髪の部位ごとに成分量を変更する場合の設定例を示す表である。
【
図28】毛髪が濡れているか否かを判定するための原理を説明する表である。
【
図29】毛髪が濡れているか否かを判定するときの基準を説明する表である。
【
図30】吸光度ごとの引渡しパラメータを示す表である。
【
図31】吸光度基準での乾燥終了の判断工程を示すフローチャートである。
【
図32】使用者の頭部での光の反射の度合いについて説明する図である。
【
図33】使用者の頭部を測定したときの反射率の変化を示すグラフである。
【
図34】対象部分ごとの温度および成分の調整を説明するための図である。
【
図35】2種の化粧料付与量と対象部分検知との関係を示すチャートである。
【
図36】帯電微粒子付与量と乾燥度との関係を示すチャートである。
【
図37】化粧料付与量と乾燥度との関係を示すチャートである。
【
図38】2種の化粧料付与量と乾燥度との関係を示すチャートである。
【
図39】風量と乾燥度との関係を示すチャートである。
【
図40】乾燥時間と毛髪の部位ごとの乾燥度との関係を説明する図である。
【
図41】第2実施形態に係るヘアドライヤの第1例を示す図である。
【
図42】第2実施形態に係るヘアドライヤの第2例を示す図である。
【
図43】乾燥時間ごとに取得された二次元画像の例を示す図である。
【
図44】毛髪全体の乾燥度の結果を表示するまでを説明する図である。
【
図45】頭部平均等の乾燥度の結果を表示するまでを説明する図である。
【
図46】第3実施形態に係るヘアドライヤを示す図である。
【
図47】第4実施形態に係るヘアアイロンを示す図である。
【
図48】第5実施形態に係るヘアブラシを示す図である。
【
図49】一実施形態に係るヘアケアシステムを含むシステム構成図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアドライヤ1を示す概略斜視図である。ヘアドライヤ1は、使用者に向けて温風を送る本体部10と、使用者が使用時に手で握る部分としての把持部20とを備える。
図2は、送風方向に沿って本体部10と把持部20とを含むように切断したヘアドライヤ1の概略断面図である。
【0012】
本体部10は、複数の分割体を継ぎ合わせた外壁をなすハウジング3を備える。ハウジング3の内部には、長手方向の一端部に設けられた吸引口10aから他端部に設けられた吐出口10bに至る送風流路4が形成されている。本体部10と把持部20とは、
図2に示すように、連結部10cによって連結軸10dを基準として回動可能に連結されている。例えば、ヘアドライヤ1の未使用時には、把持部20は、送風方向に延びる本体部10の軸方向とおおよそ平行となるように、本体部10に対して折り畳まれる。把持部20において、連結部10cと反対側の端部からは、電源コード2が引き出されている。
【0013】
ヘアドライヤ1は、まず、熱付与部30と、成分生成部40と、測定部50(
図5参照)と、入力部71と、表示部73とを備える。
【0014】
熱付与部30は、使用者の毛髪に熱を付与する。本実施形態では、熱付与部30は、使用者の毛髪に対して送る温風を生成する送風部である。熱付与部30は、例えば、ファン31と、モータ32と、加熱部33とを備える。ファン31は、送風流路4内の上流側に配置され、モータ32が駆動されることで回転する。ファン31が回転すると、外部から吸引口10aを介して送風流路4内に流入し、送風流路4内を通過して吐出口10bから外部に排出される空気流が形成される。加熱部33は、ファン31の下流側に配置され、ファン31から送られてきた空気流を加熱する。加熱部33が作動すると、ファン31によって形成された空気流が加熱されて、吐出口10bから温風が吹き出される。加熱部33は、例えば、帯状かつ波板状の電気抵抗体をハウジング3の内周に沿って巻回わされたヒータであってもよい。
【0015】
成分生成部40は、使用者の毛髪に作用させる成分を生成する。ここで、毛髪に作用させる成分とは、使用者の少なくとも髪質に対して有効に作用し得る、いわゆる美容成分をいう。この成分としては、例えば、剤・有機物、マイナスイオン、金属微粒子または帯電微粒子水が挙げられる。剤・有機物は、例えば、保湿成分(保湿剤)、補修成分(補修剤)、コーティング成分(コーティング剤)またはトリートメント成分(トリートメント剤)である。保湿成分は、例えば、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、パンテノール、セラミド、ヒアルロン酸、はちみつまたは多糖類である。補修成分は、例えば、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、アミノ酸、毛髪保護タンパク、ポリペプチド、コレステロール、カチオン界面活性剤または有機酸である。コーティング成分は、例えば、シリコン、スクワランまたは油性成分である。トリートメント成分は、例えば、カチオン界面活性剤、アミノ酸、ポリペプチド、パンテノール、セラミドである。また、帯電微粒子水は、OHラジカルを含み、電気を帯びたナノサイズの水粒子である。
【0016】
図3は、成分生成部40として採用され得る各種の成分発生装置を示す概略図である。
図3(a)は、作用させる成分を剤・有機物とする剤噴霧装置の一例としての第1静電霧化装置40aを示す図である。第1静電霧化装置40aは、ミスト噴霧器41aと、タンク41bと、ポンプ41cと、GND電極41dと、高圧回路41eと、ポンプ駆動回路41fとを備える。ミスト噴霧器41aは、剤・有機物としての液体を保持するように形成された放電部である。タンク41bは、剤・有機物としての例えば高分子を含む水溶液を収容する。ポンプ41cは、タンク41bとミスト噴霧器41aとを接続する配管に設置され、タンク41b内に収容されている高分子水溶液をミスト噴霧器41aに送る。高圧回路41eは、ミスト噴霧器41aに高電圧(HV)を印加する。ポンプ駆動回路41fは、ポンプ41cに駆動を制御する。高圧回路41eおよびポンプ駆動回路41fは、以下で詳説する制御部80内の成分量制御部84(
図5参照)により制御される。ミスト噴霧器41aとGND電極41dとの間に高電圧が印加されると、コロナ放電等が生じ、この放電作用によって高分子を含む剤ミストが生成される。なお、作用させる成分を剤・有機物とする剤噴霧装置は、第1静電霧化装置40aのような静電霧化装置に限らず、超音波霧化装置や遠心ポンプなどであってもよい。
【0017】
図3(b)は、作用させる成分をマイナスイオンや金属微粒子とする成分生成装置の一例としての第2静電霧化装置40bを示す図である。第2静電霧化装置40bは、放電部42aと、GND電極42bと、高圧回路42cとを備える。高圧回路42cは、第1静電霧化装置40aの構成と同様に、成分量制御部84により制御される。放電部42aとGND電極41dとの間に高電圧が印加されると、例えば、コロナ放電等が生じ、この放電作用によって、空気中の水分を基として負の電荷を帯びたマイナスイオンが生成される。
【0018】
図3(c)は、作用させる成分を帯電微粒子水とする成分生成装置の一例としての第3静電霧化装置40cを示す図である。第3静電霧化装置40cは、放電部43aと、結露部としてのペルチェ素子43bと、GND電極43cと、高圧回路43dとを備える。高圧回路43dは、第1静電霧化装置40aの構成と同様に、成分量制御部84により制御される。放電部43aとGND電極43cとの間に高電圧が印加されると、コロナ放電等が生じ、この放電作用によって空気中の水分を基とした帯電微粒子水が生成される。
【0019】
例えば、本実施形態における成分生成部40が第3静電霧化装置40cである場合、本体部10のハウジング3の内部には、
図2に示すように、送風流路4と並行に延びる分岐路10eを形成する仕切板3aが設置される。送風流路4は、加熱部33を経由する空気流を流通させるのに対して、分岐路10eは、加熱部33を経由しない空気流を流通させる。そして、第3静電霧化装置40cは、分岐路10e内に設置される。また、本体部10の一部で例えば乾燥操作時に毛髪Hと対向する前面部10gは、成分吐出口10fを有する。成分吐出口10fは、分岐路10eと連通し、成分生成部40で生成された成分を外部に吐出する。なお、成分生成部40は、第1静電霧化装置40a、第2静電霧化装置40bおよび第3静電霧化装置40cの少なくともいずれかであればよい。つまり、成分生成部40は、付与する成分ごとに複数備えられてもよい。
【0020】
測定部50(
図5参照)は、使用者の毛髪を測定または撮影し、信号処理された情報を制御部80に送信する。本実施形態では、測定部50は、使用者の毛髪を測定する構成を採用する。この場合、測定部50は、濡れ検知部60と、照明部72と、信号処理部90(
図5参照)とを有する。
【0021】
濡れ検知部60は、使用者の毛髪の濡れに関する情報を得るために参照し得るパラメータを検知する。本実施形態では、濡れ検知部60は、少なくとも水の吸収波長(1450nm等)を髪測定値とする濡れ検知センサ60aである。濡れ検知センサ60aは、具体的にはフォトダイオードであってもよい。照明部72は、例えばフォトダイオードである濡れ検知センサ60aと対をなす構成要素であり、少なくとも水の吸収波長の光を照射する。なお、信号処理部90については、以下の制御部80に関する事項と併せて説明する。
【0022】
図4は、濡れ検知センサ60aと照明部72との各設置位置の関係について説明するための概略図である。濡れ検知センサ60aと照明部72との各設置位置については、
図1および
図2に示す場合は一例であり、具体的には、
図4に示すような複数の例が考えられる。照明部72が光の照射部であるのに対して、濡れ検知センサ60aは、照明部72から照射され、その後、使用者の毛髪Hで反射された光を受ける受光部である。濡れ検知センサ60aおよび照明部72は、前面部10g、または、吐出口10bに取り付けられるノズル部14(
図4(b),(c)参照)に設置される。
【0023】
図4(a)は、濡れ検知センサ60aおよび照明部72の第1の設置例に関する図である。第1の設置例では、濡れ検知センサ60aと照明部72とが1つずつある。濡れ検知センサ60aは、前面部10gの一部に設置される。照明部72は、吐出口10bを挟んで濡れ検知センサ60aとは反対側の前面部10gの一部に設置される。この場合、濡れ検知センサ60aと照明部72とは、吐出口10bの開口径以上に離間することになるため、光の入射角および反射角が大きい。
【0024】
図4(b)は、濡れ検知センサ60aおよび照明部72の第2の設置例に関する図である。第2の設置例では、濡れ検知センサ60aは1つであるが、照明部72は複数ある。濡れ検知センサ60aは、吐出口10bのおおよそ中心に位置するようにノズル部14に設置される。照明部72は、例えば4つあり、前面部10gに互いに等間隔に設置される。この場合、濡れ検知センサ60aと照明部72とは、ある程度離間するので、光の入射角および反射角をある程度の大きさに確保しつつ、光の照射量を増やすことができる。
【0025】
図4(c)は、濡れ検知センサ60aおよび照明部72の第3の設置例に関する図である。第3の設置例では、濡れ検知センサ60aと照明部72とは、ノズル部14に1つずつ設置される。この場合、濡れ検知センサ60aと照明部72とは、比較的近接することになるため、光の入射角および反射角が小さい。
【0026】
以下、本実施形態では、一例として、濡れ検知センサ60aおよび照明部72が
図4(b)に示す第2の設置例に基づいて設置されるものとして説明する。
【0027】
入力部71は、使用者の毛髪についての特性(以下「髪特性」という)に関する情報を使用者が入力する。ここで、髪特性とは、使用者の髪型、毛髪の長さ、毛髪のボリューム(毛量)、および、毛髪の太さまたは艶に関する髪質のうちの少なくとも1つをいう。
図1に示す例では、入力部71は、それぞれハウジング3に設置された、髪質入力部71a、毛髪長さ入力部71bおよび毛髪ボリューム入力部71cの3つの入力ボタンである。なお、入力部71は、その他、風量や風温等を使用者の好みにより簡易的に切り替えるボタンを含んでもよい。
【0028】
表示部73は、ハウジング3に設置された例えばタッチパネル式の表示画面であり、使用者が情報を入力する入力画面、または、使用者に対して情報を表示する出力画面として機能する。なお、入力画面または出力画面として機能するときの状態については、以下で詳説する。また、表示部73が入力画面として機能する場合には、入力部71が行う機能を表示部73が代替することで、入力部71を不要とする場合もあり得る。
【0029】
また、ヘアドライヤ1は、室温センサ61と、湿度センサ62と、毛髪検知部63と、部位検知部64とを備える。
【0030】
室温センサ61は、ヘアドライヤ1が使用されている室内の温度を測定するためのセンサである。室温センサ61は、ハウジング3の内部に設置される。室温センサ61からの出力信号は、制御部80に送信される。
【0031】
湿度センサ62は、ヘアドライヤ1が使用されている室内の湿度を測定するためのセンサである。室温センサ61は、ハウジング3の内部に設置される。湿度センサ62からの出力信号は、制御部80に送信される。
【0032】
毛髪検知部63は、使用者に毛髪があるかを検知する。毛髪検知部63は、例えば、レーザー距離計、ToF(Time of Flight)カメラであり、前面部10gの一部に設置される。毛髪検知部63からの出力信号は、制御部80に送信される。
【0033】
部位検知部64は、使用者の毛髪に熱が付与される部位、または、使用者の毛髪に上記例示した成分が付与させる部位を検出する。部位検知部64は、ヘアドライヤ1の位置または姿勢を検出する少なくとも1軸の姿勢検出部(姿勢センサ)、または、使用者の毛髪または肌(顔)までの距離を測定する距離測定部(距離センサ)であってもよい。ここで、部位検知部64が距離計測部である場合には、前面部10gの一部に設置される。一方、部位検知部64が姿勢検出部である場合には、前面部10gへの設置に限定されず、ハウジング3の内部に設置されてもよい。部位検知部64からの出力信号は、制御部80に送信される。
【0034】
図5は、ヘアドライヤ1の制御ブロック図である。制御部80は、ヘアドライヤ1の動作全般を制御するものであり、少なくとも、測定部50から得られた髪測定値に基づいて熱付与部30および成分生成部40の動作を制御する。制御部80は、例えば、把持部20のハウジング20aの内部に設置される。
【0035】
制御部80は、まず、髪特性認識部81と、テーブル生成部82と、付与量演算部83と、成分量制御部84と、熱量制御部85とを有する。髪特性認識部81、テーブル生成部82、付与量演算部83、成分量制御部84および熱量制御部85は、使用者の髪特性に基づいて成分付与量や熱付与量を決定するためのブロック群である。
【0036】
髪特性認識部81は、測定部50から得られた髪測定値に基づいて、使用者の髪特性を分類する。
【0037】
テーブル生成部82は、成分生成部40で生成される成分の成分量と、熱付与部30から付与される熱量とを設定し、これらの設定値をテーブルとして管理する。テーブル生成部82では、成分量や熱量は、髪特性認識部81で分類された髪特性ごとに設定される。
【0038】
付与量演算部83は、テーブル生成部82で設定された成分量または熱量に基づいて、成分生成部40が毛髪に与える成分付与量、または、熱付与部30が毛髪に与える熱付与量を算出する。本実施形態では、付与量演算部83は、以下の2種類の演算を実行し得る。第1に、付与量演算部83は、髪特性認識部81で分類された毛髪の全体の髪特性と、テーブル生成部82で設定された成分量とに基づいて、使用者ごとに成分付与量を算出する。第2に、付与量演算部83は、髪特性認識部81で分類された毛髪の部位ごとの髪特性と、テーブル生成部82で設定された成分量とに基づいて、毛髪の部位ごとに成分付与量または熱付与量を算出する。
【0039】
成分量制御部84は、付与量演算部83から送信された成分付与量に基づいて、成分生成部40の動作、すなわち、成分生成部40で生成される成分の成分量を制御する。
【0040】
熱量制御部85は、付与量演算部83から送信された熱付与量に基づいて、熱付与部30の動作、すなわち、熱付与部30から付与される熱量を制御する。
【0041】
また、制御部80は、濡れ演算部86と、乾燥推定演算部87とを有する。濡れ演算部86および乾燥推定演算部87は、使用者の毛髪の乾燥状態を成分付与量や熱付与量に反映させるためのブロック群である。
【0042】
濡れ演算部86は、測定部50から得られた髪測定値に基づいて、使用者の毛髪の濡れに関する濡れ情報を算出する。ここで、濡れ情報は、例えば、測定部50における濡れ検知部60が濡れ検知センサ60aである場合、濡れ検知センサ60aからの信号強度に基づいて算出される吸光度である。
【0043】
乾燥推定演算部87は、濡れ演算部86が算出した濡れ情報に基づいて、使用者の毛髪の乾燥度を推定する。濡れ情報が吸光度である場合、乾燥推定演算部87は、吸光度の変化に基づいて乾燥度を推定する。乾燥推定演算部87では、吸光度の変化に応じて、例えば、毛髪へ成分や熱を付与した累積時間(時間減算)、毛髪がなびき状態となっている累積時間(時間加算)、または、肌(顔)へ成分や熱を付与した累積時間(時間加算)などが適宜参照される。乾燥推定演算部87で推定された乾燥度は、付与量演算部83を介して成分量制御部84での成分付与量または熱量制御部85での熱付与量に反映される。つまり、各種の累積時間が反映された乾燥度ごとに、成分付与量または熱付与量が補正される。
【0044】
また、制御部80は、部位演算部91と、初期位置決定部92と、累積演算部88とを有する。部位演算部91、初期位置決定部92および累積演算部88は、成分や熱が付与される使用者の毛髪の部位を特定するためのブロック群である。
【0045】
部位演算部91は、部位検知部64が検出した情報と、初期位置決定部92が決定した初期位置とに基づいて、熱付与部30からの熱が付与されている、または、成分生成部40からの成分が付与されている毛髪もしくは肌の部位を推定する。
【0046】
初期位置決定部92は、ヘアドライヤ1の初期位置を決定し、部位演算部91に送信する。
【0047】
累積演算部88は、部位検知部64により検出された部位ごとに、熱付与部30により付与されて毛髪に累積された累積熱量、または、成分生成部40により付与されて毛髪に累積された累積成分量を演算する。この場合、熱量制御部85は、累積演算部88で算出された累積熱量に基づいて、熱付与部30に熱量を調整させる。具体的には、熱量制御部85は、累積演算部88で算出された累積熱量に係るデータを用いて熱付与量を補正し、熱付与部30の動作を制御する。一方、成分量制御部84は、累積演算部88で演算された累積成分量に基づいて成分生成部40に成分量を調整させる。具体的には、成分量制御部84は、累積演算部88で算出された累積成分量に係るデータを用いて成分付与量を補正し、成分生成部40の動作を制御する。
【0048】
さらに、制御部80は、測定部50に含まれる信号処理部90と電気的に接続される。信号処理部90は、照明部72による光の照射を制御するとともに、濡れ検知センサ60aである濡れ検知部60の出力を処理し、濡れ演算部86に信号強度として送信する。また、信号処理部90は、髪特性認識部81に、濡れ検知部60の出力を信号強度として送信してもよい。この場合、髪特性認識部81は、信号処理部90から送信された信号強度に基づいて使用者の髪特性を分類することができる。
【0049】
また、ヘアドライヤ1は、電源スイッチ76を備える。電源スイッチ76は、例えば、把持部20のハウジング20aに設置される。使用者が電源スイッチ76を操作して電源をONにすると、把持部20の端部から延びる電源コード2を介してヘアドライヤ1の各部に給電される。また、電源スイッチ76は、熱付与部30による温風と冷風との切り替えや風量の切り替えなども操作することができる。
【0050】
さらに、ヘアドライヤ1は、送受信部74と、記憶部75とを備えてもよい。
【0051】
送受信部74は、制御部80からの指令に従い、ヘアドライヤ1の外部にある通信機器に対して信号を送信する、または、ヘアドライヤ1の外部にある通信機器から送信された信号を受信する。ここで、外部の通信機器は、例えば、
図2に示すような携帯端末装置100であってもよい。携帯端末装置100は、端末表示部101と、端末撮影部102と、端末通信部103とを備える。端末表示部101は、画像101aを表示するタッチパネル式の画面である。端末表示部101は、使用者に対して情報を表示する出力画面であるとともに、使用者が触れることで情報を指示または入力する入力画面である。端末通信部103は、少なくとも、ヘアドライヤ1の送受信部74との間で送受信を行う。
【0052】
記憶部75は、制御部80との間で各種のデータの受け渡しを行い、それらのデータを記憶する情報記憶媒体である。情報記憶媒体の種類は、特に限定されるものではない。
【0053】
次に、ヘアドライヤ1の動作について説明する。
【0054】
ヘアドライヤ1の基本動作として、使用者が把持部20を把持しながら電源スイッチ76を操作して電源をONにすると、熱付与部30が動作する。具体的には、給電によってモータ32が駆動してファン31が回転することで、吸引口10aから送風流路4内に空気が取り込まれる。併せて、加熱部33が発熱することで、ファン31から送られてくる空気が加熱される。加熱された空気は、温風となって吐出口10bから吐出される。また、ヘアドライヤ1は、使用者が入力部71を適宜操作することで、成分生成部40に毛髪に有効な成分を生成させ、成分吐出口10fから吐出させる。
【0055】
さらに、ヘアドライヤ1は、使用者の髪特性に合わせて、毛髪に付与する成分付与量を自動で最適化する。以下、この成分付与量の最適化について具体的に説明する。
【0056】
まず、本実施形態において想定されている髪特性の例について説明する。
【0057】
図6は、使用者Uの髪特性が毛髪Hの長さである場合の毛髪Hを例示する概略図である。
図6(a)は、毛髪Hの長さがショートである場合の毛髪Hを示す。ショートとは、例えば、毛先があごの下まで到達していない場合の長さをいう。
図6(b)は、毛髪Hの長さがミディアムである場合の毛髪Hを示す。ミディアムとは、例えば、毛先が肩から鎖骨までの範囲にある場合の長さをいう。
図6(c)は、使用者Uの毛髪Hの長さがロングである場合の毛髪Hを示す。ロングとは、例えば、毛先が鎖骨よりも長く伸びている場合の長さをいう。
【0058】
図7は、使用者Uの髪特性が髪型である場合の毛髪Hを例示する概略図である。
図7(a)は、髪型がロングのストレートである場合の毛髪Hを示す。
図7(b)は、髪型がショートのストレートである場合の毛髪Hを示す。
図7(c)は、髪型が毛先パーマである場合の毛髪Hを示す。
図7(d)は、髪型が全体としてパーマである場合の毛髪Hを示す。
【0059】
図8は、使用者Uの髪特性が毛髪Hのボリュームである場合の毛髪Hを例示する概略図である。
図8(a)は、毛髪Hのボリュームが多い場合の毛髪Hを示す。
図8(b)は、毛髪Hのボリュームが普通である場合の毛髪Hを示す。
図8(c)は、毛髪Hのボリュームが少ない場合の毛髪Hを示す。
【0060】
図9は、使用者Uの髪特性が毛髪Hの太さである場合の毛髪Hを例示する概略図である。
図9(a)は、毛髪Hの太さが細い場合の毛髪Hを示す。毛髪Hが細い場合、一般に、毛髪Hの硬さは柔らかい。
図9(b)は、毛髪Hの太さが太い場合の毛髪Hを示す。毛髪Hが太い場合、一般に、毛髪Hの硬さは硬い。
【0061】
図10は、使用者Uの髪特性が毛髪Hの艶である場合の毛髪Hを例示する概略図である。
図10(a)は、毛髪Hに艶が多い場合の毛髪Hを示す。毛髪Hに艶が多い場合、一般に毛髪Hのダメージが少ない。
図10(b)は、毛髪Hの艶が少ない場合の毛髪Hを示す。毛髪Hの艶が少ない場合、一般に毛髪Hのダメージが多い。
【0062】
図11は、毛髪Hのボリュームのレベルを判定するに際して利用する判定項目の第1例を示す概略図である。第1例における判定項目は、毛髪Hの分け目の角度θ
Bである。
図11(a)は、角度θ
Bが例えば120°である場合の毛髪Hを示す。
図11(b)は、角度θ
Bが例えば128°である場合の毛髪Hを示す。
図11(c)は、角度θ
Bが例えば135°である場合の毛髪Hを示す。
図11(d)は、角度θ
Bが例えば145°である場合の毛髪Hを示す。
図11の各図に示す毛髪H同士を比較すると、角度θ
Bが最も狭い
図11(a)に示す毛髪Hについては、分け目がはっきりと現れており、ボリュームが多いと判定してよい。角度θ
Bが中程度である
図11(b)および
図11(c)に示す各々の毛髪Hについては、ボリュームは普通であると判定してよい。角度θ
Bが最も広い
図11(d)に示す毛髪Hについては、分け目がはっきりと現れないため、ボリュームが少ないと判定してよい。
【0063】
図12は、毛髪Hのボリュームのレベルを判定するに際して利用する判定項目の第2例を示す概略図である。第2例における判定項目は、毛髪Hの全体幅W
hと顔の幅W
fとの比率である。ここで、顔の幅W
fは、例えば15cmで一定であるものとする。
図12(a)は、全体幅W
hが17cmである場合の毛髪Hを示す。この場合、比率は1.13である。
図12(b)は、全体幅W
hが20cmである場合の毛髪Hを示す。この場合、比率は1.33である。
図12(c)は、全体幅W
hが25cmである場合の毛髪Hを示す。この場合、比率は1.66である。
図12の各図に示す毛髪H同士を比較すると、比率が最も小さい
図12(a)に示す毛髪Hについては、ボリュームが少ないと判定してよい。比率が中程度である
図12(b)に示す毛髪Hについては、ボリュームは普通であると判定してよい。比率が最も大きい
図12(c)に示す毛髪Hについては、ボリュームが多いと判定してよい。
【0064】
髪特性認識部81は、例えば、測定部50における濡れ検知部60を用いて
図6から
図12までに例示した各々のレベルを判別することで、使用者Uの髪特性を分類することができる。
【0065】
次に、髪特性認識部81で分類された髪特性ごとにテーブル生成部82が設定する成分量の例について説明する。
【0066】
図13は、使用者ごとの髪特性、すなわち、使用者の毛髪全体についての髪特性ごとに設定される成分量の例を示す表である。
【0067】
図13(a)は、髪特性が毛髪のボリュームである場合についての表である。例えば、作用させる成分(美容成分)が帯電微粒子水である場合を考える。まず、使用者は、毛髪ボリューム入力部71cより、髪特性を毛髪のボリュームとする旨を選択する。制御部80は、例えば、テーブル生成部82を介して測定部50に使用者の毛髪のボリュームを判定するのに必要な測定を実施させる。そして、髪特性認識部81は、信号処理部90からの信号を受信し、現在の使用者の毛髪のボリュームを分類する。ここで、髪特性認識部81が、毛髪のボリュームが普通であると判定した場合、テーブル生成部82は、デフォルトとして設定されている成分量を変更しなくてもよい。髪特性認識部81が、毛髪のボリュームが多いと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。髪特性認識部81が、毛髪のボリュームが少ないと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。
【0068】
一方、作用させる成分をマイナスイオン等とする場合や剤・有機物とする場合も同様の考え方で成分量の調整が実施される。作用させる成分がマイナスイオンであるとすると、毛髪のボリュームが普通である場合、テーブル生成部82は、デフォルトの成分量を変更しなくてもよい。毛髪のボリュームが多い場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。毛髪のボリュームが少ない場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。また、作用させる成分が剤・有機物であるとすると、毛髪のボリュームが普通である場合、テーブル生成部82は、成分を付与させなくてもよい。毛髪のボリュームが多い場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。毛髪のボリュームが少ない場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。
【0069】
図13(b)は、髪特性が毛髪の硬さ(太さ)である場合についての表である。例えば、作用させる成分が帯電微粒子水である場合を考える。まず、使用者は、髪質入力部71aより、髪特性を毛髪の硬さとする旨を選択する。制御部80は、例えば、テーブル生成部82を介して測定部50に使用者の毛髪の硬さを判定するのに必要な測定を実施させる。そして、髪特性認識部81は、信号処理部90からの信号を受信し、現在の使用者の毛髪の硬さを分類する。ここで、髪特性認識部81が、毛髪の硬さまたは太さが普通であると判定した場合、テーブル生成部82は、デフォルトとして設定されている成分量を変更しなくてもよい。髪特性認識部81が、毛髪の硬さが硬い、または、毛髪の太さが太いと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。髪特性認識部81が、毛髪の硬さが柔らかい、または、毛髪の太さが細いと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。
【0070】
一方、作用させる成分をマイナスイオン等とする場合や剤・有機物とする場合も同様の考え方で成分量の調整が実施される。作用させる成分がマイナスイオンであるとすると、毛髪の硬さまたは太さが普通である場合、テーブル生成部82は、デフォルトの成分量を変更しなくてもよい。毛髪の硬さが硬い、または、毛髪の太さが太い場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。毛髪の硬さが柔らかい、または、毛髪の太さが細い場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。また、作用させる成分が剤・有機物であるとすると、毛髪の硬さまたは太さが普通である場合、テーブル生成部82は、成分を付与させなくてもよい。毛髪の硬さが硬い、または、毛髪の太さが太い場合、テーブル生成部82は、さらに保湿成分を付与させてもよい。毛髪の硬さが柔らかい、または、毛髪の太さが細い場合、テーブル生成部82は、さらにコーティング成分を付与させてもよい。
【0071】
図13(c)は、髪特性が毛髪のダメージ(艶)である場合についての表である。例えば、作用させる成分が帯電微粒子水である場合を考える。まず、使用者は、髪質入力部71aより、髪特性を毛髪のダメージとする旨を選択する。制御部80は、例えば、テーブル生成部82を介して測定部50に使用者の毛髪のダメージを判定するのに必要な測定を実施させる。そして、髪特性認識部81は、信号処理部90からの信号を受信し、現在の使用者の毛髪のダメージを分類する。ここで、髪特性認識部81が、毛髪のダメージまたは艶が普通であると判定した場合、テーブル生成部82は、デフォルトとして設定されている成分量を変更しなくてもよい。髪特性認識部81が、毛髪のダメージが多い、または、毛髪の艶が少ないと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。髪特性認識部81が、毛髪のダメージが少ない、または、毛髪の艶が多いと判定した場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。
【0072】
一方、作用させる成分をマイナスイオン等とする場合や剤・有機物とする場合も同様の考え方で成分量の調整が実施される。作用させる成分がマイナスイオンであるとすると、毛髪のダメージまたは艶が普通である場合、テーブル生成部82は、デフォルトの成分量を変更しなくてもよい。毛髪のダメージが多い、または、毛髪の艶が少ない場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも減少させてもよい。毛髪のダメージが少ない、または、毛髪の艶が多い場合、テーブル生成部82は、成分量をデフォルトよりも増加させてもよい。また、作用させる成分が剤・有機物であるとすると、毛髪のダメージまたは艶が普通である場合、テーブル生成部82は、デフォルトとして設定されている補修成分やコーティング成分等の成分を変更しなくてもよい。毛髪のダメージが多い、または、毛髪の艶が少ない場合、テーブル生成部82は、デフォルトの成分を増加させてもよい。毛髪のダメージが少ない、または、毛髪の艶が多い場合、テーブル生成部82は、デフォルトの成分を減少させてもよい。
【0073】
図14は、使用者の毛髪の部位ごと、かつ、毛髪状態ごとに設定される成分量の例を示す表である。ここで、使用者の毛髪の部位は、一例として、根元、中間および毛先の3つの部位に分類されるものとする。また、毛髪状態とは、毛髪の部位ごとに検知された状態としての髪質であり、具体的には、毛髪ダメージ、アルカリ性毛髪、キューティクル剥がれ、毛髪が濡れたときの吸水量の増加、および、毛髪が乾燥した後の保水量の低下である。
【0074】
図14(a)は、毛髪状態が毛髪ダメージ、アルカリ性毛髪、キューティクル剥がれ、または、濡れたときの吸水量の増加である場合についての表である。まず、ヘアドライヤ1が、使用者の毛髪ダメージを修復するための成分として補修剤を付与することができ、かつ、制御部80は、毛髪にダメージが多いと判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、補修剤をデフォルトの成分量よりも減少させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対しては、補修剤をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対しては、補修剤をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0075】
また、ヘアドライヤ1が、使用者のアルカリ性毛髪を修復するための成分として帯電微粒子水を付与することができ、かつ、制御部80は、使用者の毛髪がアルカリ性毛髪であると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量よりも減少させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0076】
また、ヘアドライヤ1が、使用者の毛髪に生じたキューティクル剥がれを修復するための成分として亜鉛微粒子(金属微粒子)を付与することができ、かつ、制御部80は、キューティクル剥がれが生じていると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、亜鉛微粒子をデフォルトの成分量よりも減少させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対しては、亜鉛微粒子をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対しては、亜鉛微粒子をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0077】
さらに、ヘアドライヤ1が、帯電微粒子水を付与することができ、かつ、制御部80は、使用者の毛髪が濡れたときの吸水量が増加したと判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間および毛先に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0078】
図14(b)は、毛髪状態が、毛髪が乾燥した後の保水量の低下である場合についての表である。まず、ヘアドライヤ1が、保水量の低下を補うための成分としてトリートメント剤を付与することができ、かつ、制御部80は、毛髪が乾燥した後の保水量が低下していると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、トリートメント剤をデフォルトの成分量よりも減少させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対しては、トリートメント剤をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対しては、トリートメント剤をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0079】
また、ヘアドライヤ1が、保水量の低下を補うための成分として保湿成分を付与することができ、かつ、制御部80は、毛髪が乾燥した後の保水量が低下していると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、保湿成分をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間および毛先に対しては、保湿成分をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0080】
また、ヘアドライヤ1が、保水量の低下を補うための成分としてコーティング剤を付与することができ、かつ、制御部80は、毛髪が乾燥した後の保水量が低下していると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元および中間に対しては、コーティング剤をデフォルトの成分量よりも減少させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の毛先に対しては、コーティング剤をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0081】
さらに、ヘアドライヤ1が、保水量の低下を補うための成分として帯電微粒子水を付与することができ、かつ、制御部80は、毛髪が乾燥した後の保水量が低下していると判断した場合を想定する。このとき、制御部80は、毛髪の根元に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量を変更させずに付与するよう、成分生成部40を制御させる。また、制御部80は、毛髪の中間および毛先に対しては、帯電微粒子水をデフォルトの成分量よりも増加させて付与するよう、成分生成部40を制御させる。
【0082】
次に、乾燥時間を時系列とした、成分生成部40が付与する成分または熱付与部30が付与する熱に関するタイミングの例について説明する。
【0083】
図15は、化粧料の付与量と使用者の毛髪の検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料の付与量(mg)を示す。以下、化粧料は、剤・有機物として上記例示した各種成分の総称として表記する。ここでは、一例として、化粧料が付与されるときの付与量は、4mgで一定である。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪検知の有無を示す。
図15において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば毛髪検知部63の出力信号に基づいて毛髪の有無を判断する。ここで、毛髪がある場合とは、ヘアドライヤ1からの送風が使用者の毛髪に当たる場合を意味する。一方、毛髪がない場合とは、ヘアドライヤ1からの送風が使用者の毛髪に当たらない場合を意味する。つまり、制御部80は、毛髪があると判断した場合のみ、成分生成部40に、化粧料を付与させてもよい。
【0084】
図16は、帯電微粒子の付与量と使用者の毛髪の部位検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する帯電微粒子の付与量(mg)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪の部位検知を示す。
図16において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば部位検知部64の出力信号に基づいて、ヘアドライヤ1から放出された帯電微粒子水が当たる部位を判断する。ここで、制御部80は、毛髪がないと判断している間は、成分生成部40に帯電微粒子水を生成させない。一方、制御部80は、毛髪の根元に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば2mgの帯電微粒子を含む帯電微粒子水を付与させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば3mgの帯電微粒子を含む帯電微粒子水を付与させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば4mgの帯電微粒子を含む帯電微粒子水を付与させる。つまり、制御部80は、毛髪の根元の側への帯電微粒子水の付与量を少なくし、毛髪の毛先の側への帯電微粒子水の付与量を多くしてもよい。
【0085】
図17は、化粧料の付与量と使用者の毛髪の部位検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料の付与量(mg)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪の部位検知を示す。
図17において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば部位検知部64の出力信号に基づいて、ヘアドライヤ1から放出された化粧料が当たる部位を判断する。ここで、制御部80は、毛髪がないと判断している間は、成分生成部40に化粧料を生成させない。一方、制御部80は、毛髪の根元に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば2mgの化粧料を付与させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば3mgの化粧料を付与させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料を付与させる。つまり、制御部80は、毛髪の根元の側への化粧料の付与量を少なくし、毛髪の毛先の側への化粧料の付与量を多くしてもよい。
【0086】
図18は、2種類の化粧料の付与量と使用者の毛髪の部位検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Aの付与量(mg)を示す。中図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Bの付与量(mg)を示す。化粧料Aと化粧料Bとは、互いに異なる成分である。化粧料Aは、毛髪の特に根元の髪特性に対して有効に作用する成分である。化粧料Bは、毛髪の特に毛先の髪特性に対して有効に作用する成分である。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪の部位検知を示す。
図18において、上図、中図または下図の横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば部位検知部64の出力信号に基づいて、ヘアドライヤ1から放出された化粧料Aまたは化粧料Bが当たる部位を判断する。ここで、制御部80は、毛髪がないと判断している間は、成分生成部40に化粧料Aおよび化粧料Bのいずれも生成させない。一方、制御部80は、毛髪の根元に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Aのみを付与させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば、2mgの化粧料Aと2mgの化粧料Bとを付与させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対して送風して乾燥させている間は、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Bを付与させる。つまり、制御部80は、毛髪の根元には、当該根元に対して有効な化粧料Aを特に付与し、毛髪の毛先には、当該毛先に対して有効な化粧料Bを特に付与してもよい。
【0087】
図19は、使用者の髪型が部分パーマである場合に採用される、帯電微粒子の付与量とパーマ部分の検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する帯電微粒子の付与量(mg)を示す。ここでは、一例として、帯電微粒子水が付与されるときの付与量は、4mgで一定である。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪検知の結果としてのパーマ部分か非パーマ部分かを示す。
図19において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば濡れ検知部60の出力信号に基づいて、送風される毛髪の部位がパーマ部分か非パーマ部分かを判断する。制御部80は、送風される毛髪の部位が非パーマ部分であると判断したときのみ、成分生成部40に、帯電微粒子水を付与させてもよい。これにより、水分によるパーマ部分の伸びを予め抑制させることができる。
【0088】
図20は、風量と使用者の毛髪の部位検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する風量(m
3/s)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する毛髪の部位検知を示す。
図20において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、例えば部位検知部64の出力信号に基づいて、ヘアドライヤ1からの送風が当たる部位を判断する。ここで、制御部80は、毛髪がないと判断している間は、熱付与部30に送風させない。一方、制御部80は、毛髪の根元に対して送風して乾燥させている間は、熱付与部30に、例えば10(m
3/s)の風量で送風させる。また、制御部80は、毛髪の中間に対して送風して乾燥させている間は、熱付与部30に、例えば8(m
3/s)の風量で送風させる。さらに、制御部80は、毛髪の毛先に対して送風して乾燥させている間は、熱付与部30に、例えば6(m
3/s)の風量で送風させる。つまり、制御部80は、毛髪の根元の側への風量を強めとし、毛髪の毛先の側への風量を弱めとしてもよい。
【0089】
次に、使用者が情報を入力する入力画面、および、使用者に対して情報を表示する出力画面について説明する。本実施形態では、本体部10のハウジング3に表示部73が設置されている。したがって、入力画面および出力画面は、表示部73に表示されてもよい。一方で、ヘアドライヤ1が携帯端末装置100との間で各種情報を送受信する送受信部74を備える場合には、表示部73に代えて、携帯端末装置100の端末表示部101に入力画面および出力画面を表示してもよい。つまり、ヘアドライヤ1は、送受信部74を備えるならば、表示部73を備えなくてもよい場合もあり得る。以下の説明では、携帯端末装置100の端末表示部101に入力画面および出力画面が表示される場合を例示する。
【0090】
図21は、端末表示部101(または表示部73)に表示される入力画面の第1例を示す概略図である。
図21(a)は、第1例に係る第1入力画面を示す。第1入力画面に表示される画像101aは、使用者の前面の髪型の略図であって、かつ、上下および左右に分割された分割画像である。第1入力画面では、使用者の後面の髪型の略図も併せて表示されている。
図21(b)は、第1例の第2入力画面を示す。第2入力画面に表示される画像101aは、使用者の側面の髪型の略図であって、かつ、前後に分割された分割画像である。
図21(c)は、第1例の第3入力画面を示す。第3入力画面では、第1および第2入力画面に表示された分割画面の各々の領域ごとに、何らかの項目の設定を使用者が変更するためのレベル調整画面が表示されている。
【0091】
図22は、端末表示部101(または表示部73)に表示される出力画面の第1例を示す概略図である。第1例の出力画面は、ヘアドライヤ1が毛髪を乾燥させている間または毛髪に成分を付与させている間に関するリアルタイムでの各種状態を表示する。
図22(a)は、毛髪の中間を乾燥させている時点での出力画面である。
図22(b)は、毛髪の根元を乾燥させている時点での出力画面である。第1例の出力画面での表示項目は、例えば、それぞれ現時点での、乾燥させている毛髪の部位、乾燥中の部位の温度(ドライ中の部分の温度)、毛髪中の水分量、および、付与されている成分量である。ここでの例では、成分量として、帯電微粒子水およびマイナスイオンが表示されている。
図22に示すように、乾燥させている毛髪の部位は、毛髪の略図に対してヘアドライヤの略図を表示することで、使用者に対して視覚的に部位を明示してもよい。また、水分量や成分量についても、数値に加えて例えば円グラフを表示することで、使用者に対して視覚的に部位を明示してもよい。
【0092】
図23は、端末表示部101(または表示部73)に表示される出力画面の第2例を示す概略図である。第2例の出力画面は、ヘアドライヤ1が毛髪の少なくとも一部を乾燥させた後または毛髪の少なくとも一部に成分を付与させた後に関する非リアルタイムでの各種状態を表示する。
図23に示すように、使用者がヘアドライヤ1を使用した結果として、その使用者の毛髪に対して有効な成分量を表示してもよい。ここでの例では、帯電微粒子水およびマイナスイオンの成分量を表示している。
【0093】
図24は、端末表示部101(または表示部73)に表示される出力画面の第3例を示す概略図である。第3例の出力画面は、第2例の出力画面と同様に、非リアルタイムでの各種状態を表示する。また、第3例の出力画面は、使用者の毛髪の部位ごとの成分量を表示するとともに、毛髪の部位と当該部位ごとの成分量とを、使用者が変更することができるように表示する。第3例の出力画面では、まず、3種類のタップ領域を付した使用者の毛髪の略図が表示される。第1タップ領域101bは、毛髪の根元の部位に対応している。第2タップ領域101cは、毛髪の中間の部位に対応している。第3タップ領域101dは、毛髪の毛先の部位に対応している。また、第3例の出力画面では、現時点での成分量が、数値に加えて例えば円グラフで表示される。例えば、第1円グラフ101eは、帯電微粒子水の成分量を示す。第2円グラフ101fは、マイナスイオンの成分量を示す。
図24(a)は、一例として、使用者が以後のヘアドライヤ1の動作により成分量を変更したい毛髪の部位として中間を選択した状態を示す。この場合、使用者は、第3の出力画面において第2タップ領域101cをタップすることで、中間を選択することができる。
図24(b)は、一例として、使用者が以後のヘアドライヤ1の動作により成分量を変更したいときに新たに設定する成分量を入力した状態を示す。使用者は、第3の出力画面において第1円グラフ101eおよび第2円グラフ101fをタップしながら表示値を変更することで、所望の成分量を設定することができる。
【0094】
図25は、端末表示部101(または表示部73)に表示される出力画面の第4例を示す概略図である。第4例の出力画面は、第3例の出力画面と同様に、非リアルタイムでの各種状態を表示する。
図24に示した第3例の出力画面では、第1タップ領域101b、第2タップ領域101cまたは第3タップ領域101dのいずれかの領域がタップされたときに、その領域に対応した部位での成分量が表示される。これに対して、第4例の出力画面では、毛髪の部位ごとの成分量が一括して表示され、かつ、使用者がヘアドライヤ1により熱または成分を付与すべき部位の順番を数字で表示する。使用者は、第1タップ領域101b、第2タップ領域101cおよび第3タップ領域101dの各々に付された数字の順番に沿って熱または成分を付与するようにヘアドライヤ1を動かすことで、所望の成分を効率よく付与させることができる。
【0095】
図26は、端末表示部101(または表示部73)に表示される入力画面の第2例を示す概略図である。第2例の入力画面は、使用者に対して毛髪の部位ごとに付与させる成分を変更させる場合に対応している。
図26(a)は、第2例の第1入力画面を示す。第1入力画面に表示される画像101aは、使用者の前面の髪型の略図であって、かつ、上下に根元、中間および毛先と3つに分割された分割画像である。第1入力画面では、使用者の後面の髪型の略図も併せて表示されている。
図26(b)は、第2例の第2入力画面を示す。第2入力画面では、第1入力画面に表示された分割画面の各々の領域ごとに、帯電微粒子水の設定を使用者が変更するためのレベル調整画面が表示されている。使用者は、帯電微粒子水について、制御部80が設定した成分量ではなく、自身の所望の成分量に変更したい場合、まず、第1入力画面には、画像101aとして、毛髪中で成分量を変更することができる3つの部位が提示される。次に、使用者は、第2入力画面を表示させ、部位ごとに帯電微粒子水の成分量が所望の成分量となるように複数のレベルで変更することができる。
【0096】
図27は、
図26に示した第2例の入力画面を用いて毛髪の部位ごとに成分量を変更する場合の設定例を示す表である。
図26で例示された、変更すべき成分が帯電微粒子水である場合、例えば、毛髪の根元に付与される帯電微粒子水の変更前のレベルが「2」であった場合、使用者は、自身の好みにより、第2例の入力画面を用いてレベルを「3」に上げてもよい。使用者は、毛髪のその他の部位である中間や毛先においても、同様にレベルを変更することで、帯電微粒子水についての成分量を所望の成分量に変更することができる。また、使用者は、帯電微粒子水のみならず、その他の成分、例えばマイナスイオンや剤・有機物に関しても、同様に第2例の入力画面を用いて成分量を変更することができる。
【0097】
次に、使用者の毛髪を乾燥させているときに、制御部80が毛髪の乾燥度をどのように推定するかについて説明する。
【0098】
図28は、毛髪が濡れている状態にあるかまたは乾いている状態にあるかを判定するのに用いることができるいくつかの原理を説明する表である。まず、本実施形態では、毛髪の乾燥度は、濡れ演算部86が算出した濡れ情報に基づいて、乾燥推定演算部87によって推定される。また、本実施形態では、濡れ検知部60は、具体的にはフォトダイオードである濡れ検知センサ60aである。濡れ情報は、濡れ検知センサ60aからの信号強度に基づいて濡れ演算部86により算出される吸光度である。
図28中の上欄に示すように、毛髪が濡れている場合、照明部72から光が照射されたときに、毛髪で吸収される光が多いため、濡れ検知センサ60aが受光する反射光が減少する。一方、毛髪が乾いている場合、照明部72から光が照射されたときに、毛髪で吸収される光が少ないため、濡れ検知センサ60aが受光する反射光が減少しない。つまり、乾燥推定演算部87は、吸光度の変化に基づいて、乾燥度、換言すれば、毛髪が濡れているか乾いているかを推定することができる。
【0099】
また、その他の原理として、毛髪の乾燥度は、毛髪の束状態を濡れ情報として、機械学習により算出されてもよい。この場合、濡れ検知部60は、毛髪を撮影するカメラ等の撮影部である。濡れ演算部86は、濡れ検知部60が撮影した髪画像に基づいて毛髪の束状態を判別する機械学習演算部である。
図28中の中欄に示すように、毛髪が濡れている場合、毛髪同士はくっついて束になっている。一方、毛髪が乾いている場合、毛髪同士がバラけて互いに独立している。つまり、乾燥推定演算部87は、機械学習演算部が判別した毛髪の束状態に基づいて乾燥度を推定することができる。
【0100】
さらに、毛髪の乾燥度は、毛髪の温度を濡れ情報として、濡れ演算部86により算出されてもよい。この場合、濡れ検知部60は、温度センサである。温度センサは、例えば赤外線温度計(赤外線センサ)であってもよい。濡れ演算部86は、濡れ検知部60が測定した髪測定値に基づいて、濡れ情報としての温度を算出する。
図28中の下欄に示すように、毛髪が濡れている場合、吐出口10bから毛髪に向けて温風が送られると、毛髪の表面では、温度が上がりにくく冷めやすいため、温度変化が小さい。一方、毛髪が乾いている場合、吐出口10bから毛髪に向けて温風が送られると、毛髪の表面では、温度が上がりやすく冷めにくいため、温度変化が大きい。つまり、乾燥推定演算部87は、毛髪の温度の変化に基づいて、乾燥度を推定することができる。
【0101】
図29は、
図28に対応した、毛髪が濡れている状態にあるかまたは乾いている状態にあるかを判定するときの具体的な基準を説明する表である。まず、本実施形態のように、吸光度の変化に基づいて判定する場合には、
図29の上欄に示すとおり、吸光度が70~30%のときに毛髪が濡れていると判定し、一方、吸光度が29~10%のときに毛髪が乾いていると判定してよい。また、毛髪の束状態に基づいて判定する場合は、
図28および
図29のそれぞれの中欄に示すとおり、機械学習の結果に従ってよい。さらに、温度の変化に基づいて判定する場合には、
図29の下欄に示すとおり、毛髪に温風を当てたときの温度変化の勾配が、緩やかであるときに毛髪が濡れていると判定し、一方、急であるときに毛髪が乾いていると判定してよい。
【0102】
図30は、濡れ演算部86において濡れ検知センサ60aからの信号強度に基づいて算出された吸光度ごとの、乾燥推定演算部87および付与量演算部83に引き渡されるパラメータを示す表である。
【0103】
まず、吸光度が0%である場合、温風が毛髪に到達しないほどヘアドライヤ1が毛髪から離れていると考えられる(温風が大気にしか当たっていない、いわゆる大気レベル)。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪の乾燥に寄与していないとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分の付与を停止させる、または、成分の付与時間としてカウントしないとの情報である。
【0104】
また、吸光度が0~9%である場合、温風が毛髪に到達しており、毛髪がほぼ乾いた状態でなびいていると考えられる。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪の乾燥に寄与しないとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分の付与を停止させる、または、成分の付与時間としてカウントしないとの情報である。
【0105】
また、吸光度が10~29%である場合、温風が毛髪に到達しており、毛髪が乾燥していると考えられる。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪を乾燥させているとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分を付与させるとの情報である。
【0106】
また、吸光度が30~70%である場合、温風が毛髪に到達しているが、毛髪が未だ濡れていると考えられる。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪を乾燥させているとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分を付与させるとの情報である。
【0107】
また、吸光度が71~90%である場合、温風が毛髪ではなく肌(顔)に到達していると考えられる(肌レベル)。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪の乾燥に寄与しないとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分を付与させるとの情報である。
【0108】
さらに、吸光度が100%である場合、温風が毛髪に到達しているが、毛髪全体が大幅に濡れている(温風がほぼ水に当たっている)と考えられる。この場合、濡れ演算部86から乾燥推定演算部87へ引き渡されるパラメータは、現時点での温風が毛髪の乾燥に寄与しないとの情報である。一方、濡れ演算部86から付与量演算部83へ引き渡されるパラメータは、成分の付与を停止させる、または、成分の付与時間としてカウントしないとの情報である。
【0109】
次に、吸光度を判定基準とした場合の乾燥終了の判断方法について説明する。
【0110】
図31は、吸光度を判定基準とした場合の乾燥終了の判断工程を示すフローチャートである。まず、制御部80は、毛髪検知部63に使用者の毛髪を検知させる(ステップS101)。次に、制御部80は、毛髪検知部63による検知結果に基づいて毛髪があるかどうかを判断する(ステップS102)。ここで、制御部80は、毛髪がないと判定した場合(NO)、ステップS101に戻り、毛髪の検知を繰り返させる。一方、制御部80は、毛髪があると判定した場合(YES)、次に、照明部72に、毛髪に向けて赤外光を照射させる(ステップS103)。次に、制御部80は、濡れ検知センサ60aに、赤外光の照射に伴って毛髪で反射した反射光を計測させる(ステップS104)。次に、制御部80は、反射率の測定が成功したかどうかを判断する(ステップS105)。ここで、制御部80は、反射率の測定が成功しなかったと判定した場合(NO)、ステップS103に戻り、反射光の再測定を実施させる。一方、制御部80は、反射率の測定が成功したと判定した場合(YES)、次に、乾燥推定演算部87に乾燥度を推定させる(ステップS106)。次に、制御部80は、ステップS104での反射光計測の結果に基づいて特定された反射率が80%以上かどうかを判断する(ステップS107)。ここで、制御部80は、反射率が80%未満であると判定した場合(NO)、ステップS101に戻り、再度乾燥を繰り返させる。一方、制御部80は、反射率が80%以上であると判定した場合(YES)、乾燥を終了させる。
【0111】
次に、吸光度に基づいて乾燥度を推定するに際して、使用者の頭部の形状を考慮する点について説明する。
【0112】
図32は、測定部50を用いて測定する、使用者の頭部での光の反射の度合いについて説明する概略図である。
図32(a)は、測定部50を用いて使用者の毛髪Hを測定している状態を示す概略図である。本実施形態では、測定部50は、濡れ検知部60としての濡れ検知センサ60a(フォトダイオード)と、照明部72とを備える。
図32(b)は、使用者の頭頂部を測定部50が測定している場合を示す概略図である。一方、
図32(c)は、使用者の側頭部を測定部50が測定している場合を示す概略図である。ここでは、一例として、2つの照明部72がx方向(
図32(c)参照)に沿って、濡れ検知センサ60aを挟んで対向する位置に配置されている。例えば、ヘアドライヤ1を
図32(b)に示す位置からx方向に沿って
図32(c)に示す位置に移動させると仮定する。このとき、ヘアドライヤ1が頭頂部の側から側頭部の側に移動するにつれて、毛髪Hから濡れ検知センサ60aまでの距離yが長くなる。また、2つの照明部72から照射される光は、照射される毛髪H上の接線に対して反射角θ1およびθ2で発散する。つまり、測定位置が頭頂部の側から側頭部の側に移動するにつれて、光の反射の度合いが変化し、反射率が減少する。
【0113】
図33は、
図32に示したように使用者の頭部を測定したときの反射率の変化を示すグラフである。
図33(a)は、使用者の頭部(毛髪H)から濡れ検知センサ60aまでの距離y(mm)に対する、使用者の頭部からの反射率(%)を示すグラフである。このように、使用者の頭部から濡れ検知センサ60aから離れるにつれて、反射率は減少する。
図33(b)は、乾燥時間(s)に対する、乾燥動作中の頭部からの反射率(%)を示すグラフである。乾燥動作中は、ヘアドライヤ1が小刻みに移動するため反射率も小刻みに変動するが、乾燥時間が進むにつれて反射率の上昇にも一定の傾向が見られる。
【0114】
このように、
図32および
図33を用いて説明した反射率の変化を考慮し、乾燥推定演算部87は、使用者の頭部の曲がり形状に合わせて、照明部72からの光の反射の度合いを均等化して、乾燥度を推定してもよい。
【0115】
次に、温風が当たる対象部分ごとの温度および成分の調整について説明する。
【0116】
図34は、温風が当たる対象部分ごとの温度および成分の調整を説明するための図である。
図34(a)は、対象部分を説明する概略図である。ここで想定されている対象部分とは、大気、毛髪および肌(顔)である。
図34(a)中に示されている3つのヘアドライヤ1のうち、第1ヘアドライヤ1aは、温風が毛髪に到達しないほど毛髪Hから離れているため、温風が大気を対象部分としていると考えることができる。第2ヘアドライヤ1bは、毛髪を温風が当たる対象部分としている。第3ヘアドライヤ1cは、肌Fを温風が当たる対象部分としている。
【0117】
図34(b)は、対象部分がいずれであるかを判断する条件と、対象部分ごとの温度の設定および成分の調整の一例を示す表である。
【0118】
まず、例えば濡れ演算部86は、照明部72が光を照射しているにもかかわらず濡れ検知センサ60aが何ら検出しないと判断した場合には、対象部分が大気と同等(大気レベル)であると判定してよい。この場合、熱量制御部85は、熱付与部30に温度を変更させない。成分生成部40が帯電微粒子水またはマイナスイオンを生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に成分量を変更させない。成分生成部40が剤または高分子を生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に成分の付与を停止させる。
【0119】
また、例えば濡れ演算部86は、濡れ検知センサ60aによる測定から、対象部分が風で移動すると判断した場合には、対象部分が毛髪であると判定してよい。この場合、熱量制御部85は、熱付与部30に温度を変更させない。成分生成部40が帯電微粒子水またはマイナスイオンを生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に成分量を変更させない。成分生成部40が剤または高分子を生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に毛髪用の成分を付与させる。
【0120】
さらに、例えば濡れ演算部86は、濡れ検知センサ60aによる測定から、対象部分が風で移動しないと判断した場合には、対象部分が肌であると判定してよい。この場合、熱量制御部85は、熱付与部30に温度を低下させる。成分生成部40が帯電微粒子水を生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に成分量を変更させない。成分生成部40がマイナスイオンを生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に成分の付与を停止させる。成分生成部40が剤または高分子を生成する場合には、成分量制御部84は、成分生成部40に肌用の成分を付与させる。
【0121】
図35は、2種類の化粧料の付与量と対象部分の部位検知との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Aの付与量(mg)を示す。中図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Bの付与量(mg)を示す。化粧料Aと化粧料Bとは、互いに異なる成分である。化粧料Aは、特に毛髪に対して有効に作用する成分である。化粧料Bは、特に肌に対して有効に作用する成分である。下図は、乾燥時間(s)に対する対象部分の部位検知を示す。
図35において、上図、中図または下図の横軸である乾燥時間は、互いに対応している。ここで、制御部80は、対象部分が大気と同等であると判断している間は、成分生成部40に化粧料Aおよび化粧料Bのいずれも生成させない。一方、制御部80は、対象部分が毛髪であると判断している間は、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Aのみを付与させる。また、制御部80は、対象部分が肌であると判断している間は、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Bのみを付与させる。つまり、制御部80は、毛髪には、当該毛髪に対して有効な化粧料Aを特に付与し、肌には、当該肌に対して有効な化粧料Bを特に付与してもよい。
【0122】
次に、乾燥時間を時系列とした、毛髪の乾燥度と、成分生成部40が付与する成分または熱付与部30が付与する熱とに関するタイミングの例について説明する。
【0123】
図36は、帯電微粒子の付与量と毛髪の乾燥度との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する帯電微粒子の付与量(mg)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する乾燥度(%)を示す。
図36において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、帯電微粒子水の付与量を毛髪の乾燥度に合わせて調整してもよい。具体的には、制御部80は、毛髪が濡れているとき、すなわち、乾燥度が低いときに、帯電微粒子水の付与量を増加させ、毛髪が乾いているとき、すなわち、乾燥度が高いときに、帯電微粒子水の付与量を減少させてもよい。
【0124】
図37は、化粧料の付与量と毛髪の乾燥度との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料の付与量(mg)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する乾燥度(%)を示す。
図37において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、乾燥度が、予め設定された閾値を超えていないときにのみ化粧料を付与させるように、化粧料の付与量を調整してもよい。
図37に示す例では、制御部80は、乾燥度が閾値の60%を超えていない間に、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料を付与させる。換言すれば、制御部80は、乾燥度が閾値の60%を超えたときには、成分生成部40に、化粧料の付与を停止させる。つまり、制御部80は、毛髪が比較的濡れているときにのみ、化粧料を付与してもよい。
【0125】
図38は、2種類の化粧料の付与量と毛髪の乾燥度との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Aの付与量(mg)を示す。中図は、乾燥時間(s)に対する化粧料Bの付与量(mg)を示す。化粧料Aと化粧料Bとは、互いに異なる成分である。化粧料Aは、毛髪に浸透させたい剤である。化粧料Bは、コーティング剤である。下図は、乾燥時間(s)に対する乾燥度(%)を示す。
図38において、上図、中図または下図の横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、乾燥度が、予め設定された閾値を超えていないときにのみ、すなわち、毛髪が比較的濡れている間に、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Aのみを付与させる。一方、制御部80は、乾燥度が、予め設定された閾値を超えているときにのみ、すなわち、毛髪が比較的乾いている間に、成分生成部40に、例えば4mgの化粧料Bのみを付与させる。つまり、制御部80は、毛髪が濡れている間には、浸透させたい剤である化粧料Aを特に付与し、毛髪が乾いている間には、コーティング剤である化粧料Bを特に付与してもよい。
【0126】
図39は、風量と毛髪の乾燥度との関係を示すタイミングチャートである。上図は、乾燥時間(s)に対する風量(m
3/s)を示す。下図は、乾燥時間(s)に対する乾燥度を示す。
図39において、上図と下図との横軸である乾燥時間は、互いに対応している。制御部80は、風量を毛髪の乾燥度に合わせて調整してもよい。具体的には、制御部80は、毛髪が乾燥してきたら、風量を減少させていき、一方、温度を増加させていってもよい。毛髪が乾燥してくると、ガラス転移点が上がる。そこで、毛髪の乾燥に伴って風量を減少させることで、毛髪のクセを伸ばすことができる。
【0127】
次に、乾燥時間と毛髪の部位ごとの乾燥度との関係について説明する。
【0128】
図40は、乾燥時間と毛髪Hの部位ごとの乾燥度との関係を説明する図である。
図40(a)は、以下の
図40(b)で例示する毛髪H中の部位を示す概略図である。ここでは、根元表面、根元内側、毛先表面および毛先内側の4つの部位を比較対象としている。
図40(b)は、乾燥時間(s)に対する毛髪Hの乾燥度(%)を示すグラフである。毛髪Hは、根元表面、根元内側、毛先表面、毛先内側の順で乾きやすいことがわかる。
【0129】
次に、ヘアドライヤ1の効果について説明する。
【0130】
ヘアケア装置としてのヘアドライヤ1は、使用者の毛髪に熱を付与する熱付与部30と、毛髪に作用させる成分を生成する成分生成部40と、毛髪を測定する測定部50とを備える。また、ヘアドライヤ1は、測定部50から得られた髪測定値に基づいて熱付与部30および成分生成部40の動作を制御する制御部80を備える。制御部80は、髪特性認識部81と、テーブル生成部82と、付与量演算部83とを有する。髪特性認識部81は、髪測定値に基づいて使用者の髪特性を分類する。テーブル生成部82は、髪特性認識部81で分類された髪特性ごとに、成分生成部40で生成される成分の成分量を設定する。付与量演算部83は、髪特性認識部81で分類された毛髪の全体の髪特性と、テーブル生成部82で設定された成分量とに基づいて、使用者ごとに成分量を調整する。または、付与量演算部83は、髪特性認識部81で分類された毛髪の部位ごとの髪特性と、テーブル生成部で設定された成分量とに基づいて、部位ごとに成分生成部が与える成分付与量もしくは熱付与部が与える熱付与量を算出する。
【0131】
本実施形態では、制御部80は、使用者の毛髪に熱または成分を付与するとき、使用者の髪特性を参照する。そして、制御部80は、使用者ごとに、または、使用者の毛髪の部位ごとに、使用者の髪特性を反映させて、熱付与部30または成分生成部40を制御する。具体的には、第1に、毛髪全体を単位とした使用者ごとに関しては、使用者の髪特性に適した成分量を予め設定し、成分生成部40は、設定された最適な成分量で、成分を毛髪に付与することができる。第2に、ある使用者の部位ごとに関しては、テーブル生成部82において設定されている成分量または熱量を、さらに部位ごとに調整した最適な成分付与量または熱付与量で、成分または熱を毛髪に付与することができる。つまり、制御部80は、ヘアドライヤ1を使用している使用者にとって最適な、きめ細かい制御を実行することができる。
【0132】
このように、本実施形態によれば、使用者が望む髪の仕上がりに導きやすいヘアケア装置を提供することができる。
【0133】
また、ヘアドライヤ1では、髪特性は、使用者の髪型、毛髪の長さ、毛髪のボリューム、および、毛髪の太さまたは艶に関する髪質のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0134】
このようなヘアドライヤ1によれば、制御部80が参照し得る髪特性にバリエーションを多く持たせることができ、結果として、より使用者が望む髪の仕上がりに導きやすくすることができる。
【0135】
また、ヘアドライヤ1は、毛髪の前後、左右または上下方向に少なくとも2分割された分割画像を少なくとも表示する表示部73を備える。制御部80は、使用者が表示部73の分割画像において選択した分割部分に基づいて、成分量を使用者の所望の量に変更してもよい。
【0136】
このようなヘアドライヤ1によれば、制御部80が設定した成分量を、分割画面を用いて使用者が好みの成分量に変更することができるので、より使用者が望む髪の仕上がりに導きやすくすることができる。
【0137】
また、ヘアドライヤ1では、制御部80は、髪測定値に基づいて毛髪の濡れに関する濡れ情報を算出する濡れ演算部86を有する。濡れ演算部86が、使用者が洗髪前であるまたは毛髪が濡れていないと判断した場合、髪特性認識部81に髪特性の分類を実行させてもよい。一方、濡れ演算部86が、毛髪が濡れていると判断した場合、テーブル生成部82に、髪特性認識部81が前回までに分類した髪特性に基づいて成分量を設定させてもよい。
【0138】
このようなヘアドライヤ1によれば、制御部80は、使用者の髪特性を、毛髪が通常時の状態のときの髪測定値から取得することができるので、より最適な付与すべき成分量を設定することができる。
【0139】
また、ヘアドライヤ1では、制御部80は、髪測定値に基づいて毛髪の乾燥度を推定する乾燥推定演算部87を有する。付与量演算部83は、さらに、乾燥推定演算部87で推定された乾燥度に基づいて成分量を調整させてもよい。
【0140】
このようなヘアドライヤ1によれば、制御部80は、乾燥動作中、毛髪の乾燥度を参照しながら成分量を調整するので、より最適な成分量に調整された成分を毛髪に付与させることができる。
【0141】
また、ヘアドライヤ1では、測定部50は、少なくとも水の吸収波長を髪測定値とする濡れ検知センサを有する。濡れ演算部86は、濡れ検知センサ60aが検知した髪測定値から吸光度を算出する。乾燥推定演算部87は、濡れ演算部86が算出した吸光度の変化に基づいて乾燥度を推定してもよい。
【0142】
このようなヘアドライヤ1によれば、制御部80は、より簡易的な構成で、または、より簡易的な制御で、乾燥度を推定することができる。
【0143】
また、ヘアドライヤ1では、測定部50は、少なくとも水の吸収波長の光を照射する照明部72を有する。濡れ検知センサ60aは、フォトダイオードである。乾燥推定演算部87は、使用者の頭部の曲がり形状に合わせて、照明部72からの光の反射の度合いを均等化して、乾燥度を推定してもよい。
【0144】
このようなヘアドライヤ1によれば、使用者の頭部の形状に合わせて乾燥度を推定することができるので、より使用者が望む髪の仕上がりに導きやすくすることができる。
【0145】
また、ヘアドライヤ1では、乾燥推定演算部87が、乾燥度が大気レベルであると判断した場合、制御部80は、以下のうちの少なくとも1つの動作を実施させる。すなわち、制御部80は、熱付与部30に熱を付与させない、成分生成部40に成分の付与を停止させる、および、成分生成部40が成分を付与しても付与時間としてカウントしない、とのうちの少なくとも1つの動作を実施させてもよい。
【0146】
このようなヘアドライヤ1によれば、熱付与部30または成分生成部40において、使用者の毛髪に対して有効とはならないような無駄な動作を極力減らすことができる。
【0147】
また、ヘアドライヤ1では、乾燥推定演算部87が、乾燥度が使用者の肌レベルであると判断した場合、制御部80は、以下のうちの少なくとも1つの動作を実施させる。すなわち、制御部80は、熱付与部30に熱を付与させない、および、成分生成部40に使用者の肌に有効な成分を付与させる、とのうちの少なくとも1つの動作を実施させてもよい。
【0148】
このようなヘアドライヤ1によれば、使用者の特に肌にとって有効な動作を増やすことができる。
【0149】
また、ヘアドライヤ1は、外部の通信機器としての携帯端末装置100に備わる端末通信部103との間で送受信を行う送受信部74を備える。ここで、携帯端末装置100に備わる端末表示部101に、毛髪の前後、左右または上下方向に少なくとも2分割された分割画像が少なくとも表示されたと仮定する。このとき、送受信部74は、使用者が端末表示部101の分割画像において選択した分割部分に係る情報を端末通信部103から受信してもよい。また、制御部80は、送受信部74が端末通信部103から受信した分割部分に係る情報に基づいて、成分量を使用者の所望の量に変更してもよい。
【0150】
このようなヘアドライヤ1によれば、使用者は、携帯端末装置100上からヘアドライヤ1での設定を調整することができるので、使用者の利便性を向上させることができる。
【0151】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、濡れ検知部60として濡れ検知センサ60a(フォトダイオード)を採用する場合を例示した。これに対して、本実施形態では、濡れ検知部60として、濡れ検知センサ60aに代えて、以下に示す2通りの撮影部のいずれかを採用する。
【0152】
図41は、第2実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアドライヤ1の第1例を示す概略斜視図である。本実施形態の第1例に係るヘアドライヤ1は、第1実施形態における濡れ検知センサ60aに代えて設置される撮影部60bと、吐出口10bの一部を囲むように設置される照明部72とを備える。なお、ここでのヘアドライヤ1では、撮影部60bおよび照明部72以外の構成は、第1実施形態における構成(制御部80および信号処理部90等の制御に関する構成を除く)と同一であるので、同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0153】
図42は、第2実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアドライヤ1の第2例を示す概略斜視図である。本実施形態の第2例に係るヘアドライヤ1は、送受信部74を備え、外部の通信機器である携帯端末装置100(端末通信部103)との間で送受信を行う。ここでのヘアドライヤ1は、携帯端末装置100に備わる端末撮影部102を、濡れ検知部60としての撮影部として利用する。また、本実施形態の第2例に係るヘアドライヤ1は、第1実施形態における濡れ検知センサ60aに代えて設置される温度センサ60c(赤外線センサ)を備えてもよい。この場合、照明部72は不要となる。なお、濡れ検知部60として温度センサ60cを用いる場合、すでに
図28および
図29を用いて説明したとおり、乾燥推定演算部87は、乾燥時間に対する毛髪の温度変化に基づいて乾燥度を推定することができる。また、ここでのヘアドライヤ1では、上記説明した構成以外は、第1実施形態における構成(制御部80および信号処理部90等の制御に関する構成を除く)と同一であるので、同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0154】
まず、濡れ検知部60として撮影部60bまたは端末撮影部102を用いる場合、すでに
図28および
図29を用いて説明したとおり、乾燥推定演算部87は、髪画像に基づいた機械学習により、乾燥度を推定することができる。この場合、第1実施形態に係るヘアドライヤ1の説明において「髪測定値」と表現した点については、本実施形態では「髪画像」と置き換えることができる。以下、
図43~
図45を用いて、より具体的に機械学習について説明する。
【0155】
本実施形態では、乾燥推定演算部87は、撮影部60b等が乾燥時間ごとに撮影した二次元画像(髪画像)の教師データに基づく機械学習により、乾燥度を乾燥時間ごとに推定する。
【0156】
図43は、濡れ検知部60が撮影部60bである場合に、乾燥時間ごとに取得された二次元画像の例を示す概略図である。
図43(a)は、乾燥時間ごとに二次元画像を取得している状態を示す図である。
図43(b)は、毛髪Hが乾燥していくにつれての二次元画像の変化を示す図である。
図43に示すように、使用者が乾燥中にヘアドライヤ1の位置を第1ヘアドライヤ1aに示す位置や第2ヘアドライヤ1bに示す位置に変化させている間、撮影部60bは、乾燥時間ごとに二次元画像を取得する。取得された二次元画像は、記憶部75に累積される。
【0157】
図44は、二次元画像から推定された毛髪全体の乾燥度の結果を表示するまでを説明する図である。
図44(a)は、累積された乾燥時間に対する乾燥度(%)の推移を示すグラフである。取得された二次元画像のときの乾燥度から、
図44(a)に示すような相関を得ることができる。そして、
図44(b)に示すように、取得したすべての二次元画像を参照して、
図44(a)中の全体平均の近似曲線から、ある乾燥時間での乾燥度を推定することができる。
図44(c)は、携帯端末装置100の端末表示部101に全体の乾燥度を表示している例を示す概略図である。使用者は、このような表示により、現時点での毛髪の乾燥度を認識することができる。
【0158】
図45は、二次元画像から推定された頭部平均および毛先平均の乾燥度の結果を表示するまでを説明する図である。
図45(a)は、
図44(a)と同様に、累積された乾燥時間に対する乾燥度(%)の推移を示すグラフである。この場合、
図45(b)に示すように、取得した二次元画像を、比較的濡れている部位Xや比較的乾いている部位Yのように、部位ごとに分類することができる。そして、
図45(a)中の頭部平均の近似曲線や毛先平均の近似曲線から、ある乾燥時間での部位ごとの乾燥度を推定することができる。
図45(c)は、携帯端末装置100の端末表示部101に部位ごとの乾燥度を表示している例を示す概略図である。使用者は、このような表示により、現時点での毛髪の部位ごとの乾燥度を認識することができる。
【0159】
以上のように、第2実施形態に係るヘアドライヤ1では、例えば、測定部50は、二次元画像を髪画像とする撮影部60bを有する。乾燥推定演算部87は、撮影部60bが乾燥時間ごとに撮影した二次元画像の教師データに基づく機械学習により、乾燥度を乾燥時間ごとに推定してもよい。また、第2実施形態に係るヘアドライヤ1では、乾燥推定演算部87は、毛髪の部位ごとに乾燥度を推定させてもよい。
【0160】
このようなヘアドライヤ1によっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0161】
(第3実施形態)
濡れ検知部60は、さらに、使用者の毛髪に接触することで直接的に毛髪の水分量を測定する水分量センサであってもよい。
【0162】
図46は、第3実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアドライヤ1を示す概略斜視図である。本実施形態に係るヘアドライヤ1は、第1実施形態におけるヘアドライヤ1が備えていた濡れ検知センサ60aおよび照明部72を備えない。一方、本実施形態に係るヘアドライヤ1は、吐出口10bに取り付けられるブラシ部22と、ブラシ部22に設置される水分量センサ60dとを備える。ここでも、ヘアドライヤ1のその他の構成は、第1実施形態における構成(制御部80および信号処理部90等の制御に関する構成を除く)と同一であるので、同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0163】
この場合、髪測定値は、毛髪の水分量である。水分量センサ60dは、使用者がブラシ部22を毛髪に当てながら乾燥させている間、毛髪の水分量を測定することができる。そして、乾燥推定演算部87は、取得された水分量に基づいて、乾燥度を推定することができる。
【0164】
(第4実施形態)
上記の各実施形態では、本開示に係るヘアケア装置としてヘアドライヤ1を例示した。本開示に係るヘアケア装置は、上記のようなヘアドライヤに限定されるものではなく、例えばヘアアイロンであってもよい。
【0165】
図47は、第4実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアアイロン200を示す概略斜視図である。ヘアアイロン200は、互いに対向して使用者の毛髪を挟み込む第1本体部201と第2本体部202とを備える。第1本体部201または第2本体部202の少なくとも一方の対向面には、ヘアドライヤ1での熱付与部30に代わる熱付与部としてヒータープレート203が設置されている。この場合、第1実施形態に係るヘアドライヤ1の説明において「乾燥する」と表現した点については、本実施形態では「髪型を整える(または髪型を形成する)」と置き換えることができる。
【0166】
例えば、第1本体部201は、内部に、上記各実施形態において説明したような成分生成部40および制御部80等を備えてもよい。第1本体部201は、ヘアドライヤ1での成分吐出口10fに対応する成分吐出口210fをヒータープレート203の近傍に設置してもよい。さらに、第1本体部201は、ヘアドライヤ1での入力部71に対応する入力部271を備えてもよい。この場合、入力部271は、髪質入力部271a、毛髪長さ入力部271bおよび毛髪ボリューム入力部271cの3つの入力ボタンである。
【0167】
一方、例えば、第2本体部202は、ヘアドライヤ1での濡れ検知センサ60aに対応する濡れ検知センサ260aと、ヘアドライヤ1での照明部72に対応する照明部272とを備えてもよい。濡れ検知センサ260aおよび照明部272は、それぞれヒータープレート203と対向する位置の近傍に設置されてもよい。
【0168】
このようなヘアアイロン200によれば、上記例示したヘアドライヤ1と同等の効果を奏する。
【0169】
(第5実施形態)
本開示に係るヘアケア装置は、上記のようなヘアドライヤやヘアアイロンに限定されるものではなく、例えばヘアブラシであってもよい。
【0170】
図48は、第5実施形態に係るヘアケア装置としてのヘアブラシ300を示す概略斜視図である。ヘアブラシ300は、一方の先端部をブラシヘッド301aとする本体部301を備える。ブラシヘッド301aは、クシ部322と、ヘアドライヤ1での吐出口10bに対応する吐出口310bとを備える。
【0171】
例えば、本体部301は、内部に、上記各実施形態において説明したような熱付与部30、成分生成部40および制御部80等を備えてもよい。ブラシヘッド301aは、ヘアドライヤ1での成分吐出口10fに対応する成分吐出口310fを、吐出口310bの近傍に設置してもよい。同様に、ブラシヘッド301aは、ヘアドライヤ1での濡れ検知センサ60aに対応する濡れ検知センサ360aと、ヘアドライヤ1での照明部72に対応する照明部372とを、吐出口310bの近傍に設置してもよい。さらに、本体部301は、ヘアドライヤ1での入力部71に対応する入力部371や、ヘアドライヤ1での電源スイッチ76に対応する電源スイッチ376を備えてもよい。この場合、入力部371は、髪質入力部371a、毛髪長さ入力部371bおよび毛髪ボリューム入力部371cの3つの入力ボタンである。
【0172】
このようなヘアブラシ300によれば、上記例示したヘアドライヤ1と同等の効果を奏する。
【0173】
(ヘアケアシステム)
上記の各実施形態に係るヘアケア装置は、
図2等で例示した携帯端末装置100とでヘアケアシステムを構築することで、使用者ごとに毛髪に付与する成分付与量を、外部で管理される各種情報に基づいて最適化されてもよい。
【0174】
図49は、本実施形態に係るヘアケアシステム110を含むシステム構成図である。まず、ヘアケアシステム110は、上記の各実施形態に係るヘアケア装置と、携帯端末装置100とを備える。
図49の例では、ヘアケア装置として第1実施形態に係るヘアドライヤ1を採用している。また、
図49では、入力装置と出力装置として2つの携帯端末装置100が描画されているが、情報の入出力経路を示すための便宜上の措置であり、これらの携帯端末装置100は、同一物である。
【0175】
また、ヘアケアシステム110の外部には、各種情報を管理するサーバ120が存在する。ヘアケアシステム110は、Webアプリケーション121を介してサーバ120と情報のやり取りを行うことができる。また、サーバ120は、例えばデータ管理業者が保持するデータ分析アプリケーション122とも情報のやり取りを行うことができる。
【0176】
まず、ヘアドライヤ1内の制御部80は、携帯端末装置100に対して、使用者Uの毛髪情報や乾燥操作情報を送信することができる。携帯端末装置100は、ヘアドライヤ1側から受け取った毛髪情報等を、Webアプリケーション121を介してサーバ120に送信する。サーバ120は、これらの情報を管理する。サーバ120で管理されている情報は、データ分析アプリケーション122によって分析される。Webアプリケーション121は、分析結果をサーバ120から取得し、使用者分析情報や機器制御情報として携帯端末装置100に送信する。使用者分析情報は、携帯端末装置100の端末表示部101に表示され、機器制御情報は、ヘアドライヤ1に送信される。一方、使用者は、個人情報やアンケートなどの使用者情報を、携帯端末装置100からWebアプリケーション121に送信することができる。また、使用者は、携帯端末装置100を介して、Webアプリケーション121から毛髪診断情報等を取得し、閲覧することができる。
【0177】
このようなヘアケアシステム110によれば、ヘアドライヤ1によって取得された、使用者にとって最適な成分量等の情報を分析し、使用者に対してフィードバックすることができるので、使用者の利便性をより向上させることができる。
【0178】
(他の実施形態)
本開示の他の実施形態に係るヘアケア装置は、髪型判別部と、髪型認識部と、剤成分量判定部と、剤噴出部とを有するものであってもよい。髪型判別部は、使用者の髪型を判別する。髪型認識部は、髪型判別部で判別された髪型判別データから使用者の髪型を分類する。剤成分量判定部は、髪型認識部で認識された各々の髪型の髪の長さ、髪のボリュームまたは髪のクセ度合いに応じて髪に作用させる剤の成分量を判定する。剤噴出部は、剤成分量判定部で判定された剤の成分量にて使用者の髪に剤を噴出する。ここで、髪型判別部や髪型認識部は、例えば、上記の各実施形態における髪特性認識部81の代替となり得る。また、剤成分量判定部は、例えば、上記の各実施形態におけるテーブル生成部82の代替となり得る。
【0179】
髪型判別部は、使用者の髪型を撮影する撮像部を有してもよい。撮像部は、例えば、第2実施形態における撮影部60bの代替となり得る。
【0180】
一方、髪型判別部は、生体情報をセンシングする生体センシング機能部を有してもよい。ここで、生体情報とは、使用者の生体、すなわち、使用者の毛髪や肌等に関する情報であり、例えば、毛髪や肌の水分量や温度をいう。生体センシング機能部は、上記の各実施形態において説明した各種センサの少なくともいずれかの代替となり得る。
【0181】
剤噴出部は、髪の形状を整える熱付与部を有してもよい。ここでいう熱付与部は、例えば、第1実施形態における熱付与部30、または、第2実施形態におけるヒータープレート203の代替となり得る。
【0182】
一方、剤噴出部は、髪の形状を整えるブラシ状部を有してもよい。ブラシ状部は、例えば、第3実施形態におけるブラシ部22の代替となり得る。
【0183】
また、髪型判別部は、髪の状態を表示する髪型状態表示部を有してもよい。髪型状態表示部は、上記の各実施形態における表示部73の代替となり得る。
【0184】
髪型状態表示部は、髪の状態を分割表示することができる髪状態分割表示部を有してもよい。髪状態分割表示部は、第1実施形態において
図21(a)等を用いて説明したような分割画像としての画像101aを表示する表示部73の代替となり得る。
【0185】
剤成分量判定部は、髪状態分割表示部での分割表示ごとに所望の量に剤成分量を変化させる剤成分量変更部を有してもよい。剤成分量変更部は、例えば、上記の各実施形態における付与量演算部83、成分量制御部84および累積演算部88のうちの少なくとも1つの代替となり得る。
【0186】
髪型判別部の生体センシング機能部は、使用者の髪の濡れ具合を検知する毛髪濡れ状況検知部を有してもよい。毛髪濡れ状況検知部は、例えば、第1実施形態における濡れ検知部60を含み得る。
【0187】
毛髪濡れ状況検知部は、機械学習により、乾燥度を推定してもよい。毛髪濡れ状況検知部は、例えば、第2実施形態における乾燥推定演算部87の代替となり得る。
【0188】
また、剤成分量判定部は、毛髪濡れ状況検知部で検知された使用者の髪の濡れ具合により、髪に作用させる剤の成分量を判定してもよい。
【0189】
さらに、髪型判別部は、毛髪濡れ状況検知部で検知された使用者の髪の濡れ具合により、髪の測定タイミングを決定する髪測定タイミング決定部を有してもよい。
【0190】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本開示は、使用者の毛髪を乾燥させたり、使用者の髪型を整えたりする、家庭用または業務用のヘアケア装置全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0192】
1 ヘアドライヤ
30 熱付与部
40 成分生成部
50 測定部
60a 濡れ検知センサ
60b 撮影部
60c 温度センサ
60d 水分量センサ
72 照明部
73 表示部
74 送受信部
80 制御部
81 髪特性認識部
82 テーブル生成部
83 付与量演算部
86 濡れ演算部
87 乾燥推定演算部
200 ヘアアイロン
203 ヒータープレート
210f 成分吐出口
260a 濡れ検知センサ
272 照明部
300 ヘアブラシ
310b 吐出口
310f 成分吐出口
360a 濡れ検知センサ
372 照明部