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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】積層バリスタ
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/18 20060101AFI20240913BHJP
   H01C 7/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01C7/18
H01C7/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021555930
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020036012
(87)【国際公開番号】W WO2021095368
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2019204344
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020019475
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 沙也佳
(72)【発明者】
【氏名】矢内 剣
(72)【発明者】
【氏名】高村 真史
(72)【発明者】
【氏名】服部 将也
(72)【発明者】
【氏名】村石 智光
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-266072(JP,A)
【文献】国際公開第2011/28551(WO,A2)
【文献】国際公開第2007/29615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/18
H01C 7/02
H01C 7/04
H01C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、下面、前記上面からみて反時計回りに第1の端面、第1の側面、第2の端面および第2の側面を順次配置した直方体の形状を有する焼結体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第3の外部電極と、第1の内部電極と、第2の内部電極と、第3の内部電極と、を備えた積層バリスタであって、
前記焼結体は、それぞれ主面と裏面と4つの側面とを有する複数のバリスタ層を、隣接する2つの前記バリスタ層のうち一方の前記主面ともう一方の前記裏面とが接合し、かつ前記複数のバリスタ層のそれぞれの前記4つの側面が前記焼結体の前記第1の端面、前記第1の側面、前記第2の端面および前記第2の側面となるように、積層して形成され、
前記複数のバリスタ層のうち1つのバリスタ層は、第3の内部電極を有し、前記複数のバリスタ層のうち他の少なくとも1層のバリスタ層は、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極との少なくともいずれかを有し、
前記第1の外部電極は前記焼結体の前記第1の端面に設けられ、前記第2の外部電極は前記焼結体の前記第2の端面に設けられ、前記第3の外部電極は前記焼結体の前記第1の側面に設けられ、
前記第1の内部電極は前記第1の外部電極に電気的に接続され、前記第2の内部電極は前記第2の外部電極に電気的に接続され、前記第3の内部電極は前記第3の外部電極に電気的に接続され、
前記焼結体の前記上面から見て前記第1の内部電極と前記第3の内部電極とは第1の重なりを有し、前記第1の重なりにより第1のバリスタ領域が形成され、
前記焼結体の前記上面から見て前記第2の内部電極と前記第3の内部電極とは第2の重なりを有し、前記第2の重なりにより第2のバリスタ領域が形成され、
前記第1のバリスタ領域および前記第2のバリスタ領域は前記第1の側面よりも前記第2の側面に近い位置に配置されている、積層バリスタ。
【請求項2】
前記第1の内部電極は前記第3の内部電極よりも前記焼結体の前記第2の側面に近い位置で前記第1の外部電極と接続して前記焼結体の前記第2の端面に向かって延伸し、かつ前記第3の内部電極よりも前記焼結体の前記第2の側面に近い別の位置で屈曲して前記第1の側面に向かって延伸して前記第1の重なりを有する、請求項1記載の積層バリスタ。
【請求項3】
前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とは、異なる前記バリスタ層に設けられ、前記焼結体の上面から見て前記第1のバリスタ領域と前記第2のバリスタ領域とは異なる位置に配置された、請求項1記載の積層バリスタ。
【請求項4】
前記第3の内部電極は2つの異なる前記バリスタ層に設けられ、
一方の前記バリスタ層における前記第3の内部電極は、前記焼結体の上面から見て前記第1の内部電極に重なることで前記第1のバリスタ領域を形成し、
他方の前記バリスタ層における前記第3の内部電極は、前記焼結体の上面から見て前記第2の内部電極に重なることで前記第2のバリスタ領域を形成し、
前記焼結体の上面から見て前記第1のバリスタ領域と前記第2のバリスタ領域とは異なる位置に配置された、請求項1記載の積層バリスタ。
【請求項5】
前記第1の側面に凸部を設け、前記凸部に前記第3の外部電極を設けた、請求項1記載の積層バリスタ。
【請求項6】
前記第1の側面に凹部を設け、前記凹部の内側に前記第3の外部電極を設けた、請求項1記載の積層バリスタ。
【請求項7】
前記第2の側面は平坦である、請求項6記載の積層バリスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種電子機器に用いられる積層バリスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や車載電子機器において小型化が進んでいる。これら家電製品や車載電子機器の部品であるバリスタも小型化が求められている。また高周波化が進むとバリスタの静電容量が、家電製品や車載電子機器を駆動する回路の性能に影響を与える。そのため、所定のバリスタ電圧を確保しながら、静電容量が小さく、かつ静電容量のばらつきも小さいバリスタが求められている。また2つのバリスタをペアで使う場合、当該2つのバリスタの間の静電容量の差を小さくするために、2個のバリスタを組み合わせて1つの素子として形成することが提案されている。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例として、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-277601号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら従来の積層バリスタでは、バリスタ性能を発揮する互いに対向する2つの内部電極間の静電容量だけではなく、内部電極と他の外部電極との間に浮遊容量が発生する。特に外部電極の厚さや形状のばらつきにより浮遊容量がばらつくことになり、結果としてバリスタの静電容量のばらつきが発生しやすくなる。なお、浮遊容量とは、バリスタが備える内部電極間の静電容量以外の、内部電極と外部電極との間、外部電極間等に発生する静電容量のことをいう。
【0005】
本開示はこの問題に対して、以下に示す積層バリスタを開示する。
【0006】
すなわち、本開示にかかる積層バリスタは、焼結体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第3の外部電極と、第1の内部電極と、第2の内部電極と、第3の内部電極と、を備える。焼結体は、上面、下面、前記上面からみて反時計回りに第1の端面、第1の側面、第2の端面および第2の側面を順次配置した直方体の形状を有する。また、焼結体は、複数のバリスタ層が積層されて形成されている。複数のバリスタ層のそれぞれは、主面と裏面と4つの端面とを有する。隣接する2つのバリスタ層のうち一方の主面ともう一方の裏面とが接合している。複数のバリスタ層のそれぞれの4つの側面は、焼結体の第1の端面、第1の側面、第2の端面および第2の側面となる。また、複数のバリスタ層のうち1つのバリスタ層は、第3の内部電極を有する。複数のバリスタ層のうち他の少なくとも1層のバリスタ層は、第1の内部電極と第2の内部電極との少なくともいずれかを有する。第1の外部電極は焼結体の第1の端面に設けられる。第2の外部電極は焼結体の第2の端面に設けられる。第3の外部電極は焼結体の第1の側面に設けられる。第1の内部電極は第1の外部電極に電気的に接続される。第2の内部電極は第2の外部電極に電気的に接続される。第3の内部電極は第3の外部電極に電気的に接続される。焼結体の上面から見て第1の内部電極と第3の内部電極とは第1の重なりを有する。第1の重なりにより第1のバリスタ領域が形成される。焼結体の上面から見て第2の内部電極と第3の内部電極とは第2の重なりを有する。第2の重なりにより第2のバリスタ領域が形成される。第1のバリスタ領域および第2のバリスタ領域は第1の側面よりも第2の側面に近い位置に配置されている。
【0007】
以上のように構成することにより、内部電極と外部電極との間に発生する浮遊容量を小さくできる。それとともに、外部電極の面の幅や面形状のばらつきによる浮遊容量のばらつきも小さくすることができる。その結果、2つの積層バリスタをペアで用いた場合に2つの積層バリスタの間の静電容量のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一の実施形態における積層バリスタの斜視図
図2】同第一の実施形態における積層バリスタの透視図
図3】同積層バリスタの断面図
図4】同積層バリスタを構成する焼結体の各層ごとの分解斜視図
図5】本開示の第二の実施形態における積層バリスタの断面図
図6】本開示の第三の実施形態における積層バリスタの断面図
図7】本開示の第四の実施形態における積層バリスタの斜視図
図8】同第四の実施形態における積層バリスタの透視図
図9】本開示の第五の実施形態における積層バリスタの斜視図
図10】同第五の実施形態における積層バリスタの透視図
図11】同積層バリスタの切断前の透視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態における積層バリスタについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(第一の実施形態)
図1は本開示の第一の実施形態における積層バリスタの斜視図である。図2はこの積層バリスタの上方からの透視図である。図3図2にかかる積層バリスタのIII-III断面図である。図4は、本開示の第一の実施形態における積層バリスタを構成する焼結体の各層ごとの分解斜視図である。この積層バリスタの外部電極を除いた焼結体は長さ1.6mm、幅0.8mm、高さ0.6mmの直方体の形状を有している。
【0011】
この焼結体11はZnOを主成分とし、副成分としてBi、Co、MnO、Sb等または、Pr11、Co3、CaCO、Cr等を含み、ZnOが焼結し、その粒界にその他の副成分が析出した形になる。また、焼結体11を構成する複数のバリスタ層に内部電極が形成されている。
【0012】
焼結体11は、上面28、下面29、上面28からみて反時計回りに順次配置された第1の端面13、第1の側面19、第2の端面16および第2の側面21を有している。
【0013】
なお、第1の端面13に垂直な方向をX軸とする。第1の端面13から第2の端面16へ向かう方向をX軸の正の方向とする。第1の側面19に垂直な方向をY軸とする。第1の側面19から第2の側面21へ向かう方向をY軸の正の方向とする。また、下面29に垂直な方向をZ軸とする。下面29から上面28へ向かう方向をZ軸の正の方向とする。
【0014】
焼結体11の第1の端面13には第1の外部電極12が設けられている。焼結体11の第2の端面16には第2の外部電極15が設けられている。焼結体11の第1の側面19には第3の外部電極18が設けられている。焼結体11の第2の側面21には外部電極を設けない。
【0015】
焼結体11は、図3および図4に示すように第1のバリスタ層11a、第2のバリスタ層11b、第3のバリスタ層11cよりなる。第1のバリスタ層11a、第2のバリスタ層11bおよび第3のバリスタ層11cは、それぞれZnOを主成分とし、副成分としてBi,Co,MnO,Sb等または、Pr11、Co3、CaCO、Cr等を含む層よりなる。第1のバリスタ層11aは主面28aと裏面29aを有する。主面28aには第3の内部電極20が形成されている。第2のバリスタ層11bは主面28bと裏面29bを有する。主面28bには第1の内部電極14および第2の内部電極17が形成されている。第3のバリスタ層11cは主面28cと裏面29cとを有する。第1のバリスタ層11aの主面28aと第2のバリスタ層11bの裏面29bとが接するように、また第2のバリスタ層11bの主面28bと第3のバリスタ層11cの裏面29cとが接するように、第1のバリスタ層11a、第2のバリスタ層11bおよび第3のバリスタ層11cを重ね合わせる。このようにして重ね合わせられた第1のバリスタ層11a、第2のバリスタ層および第3のバリスタ層11cを焼結して、焼結体11が形成される。なお、第1の裏面29aは焼結体11の下面29と一致する。また、第3の主面28cは焼結体11の上面28と一致する。第1のバリスタ層11a、第2のバリスタ層および第3のバリスタ層11cの各々が有する4つの側面は、それぞれ焼結体11の第1の端面13、第1の側面19、第2の端面16および第2の側面21となる。
【0016】
第1の外部電極12は、第1の内部電極14と電気的に接続されている。第2の外部電極15は、第2の内部電極17と電気的に接続されている。第3の外部電極18は、第3の内部電極20と電気的に接続されている。
【0017】
焼結体11の上面28から見て、第1の内部電極14の一部と第3の内部電極20の一部とが重なることにより第1のバリスタ領域22が形成される。また、焼結体11の上面28から見て、第2の内部電極17の一部と第3の内部電極20の一部とが重なることにより第2のバリスタ領域23が形成される。このような構成により、積層バリスタを効率的に生産することができる。
【0018】
第1の内部電極14は、第1の側面19よりも第2の側面21に近い位置で第1の外部電極12に接続する。第1の内部電極14は、第1の端面13から第2の端面16に向かって延伸され、ほぼ直角に屈曲されて第1の側面19に向かって延伸される。第1の内部電極14は、この屈曲されて第1の側面19に向かって延伸された部分で、焼結体11の上面28から見て第3の内部電極20と重なることにより第1のバリスタ領域22が形成される。第1の内部電極14が屈曲する位置は、第3の内部電極20と比べて第2の側面21に近い位置にある。
【0019】
同様に第2の内部電極17は、第1の側面19よりも第2の側面21に近い位置で第2の外部電極15に接続する。第2の内部電極17は、第2の端面16から第1の端面13に向かって延伸され、ほぼ直角に屈曲されて第1の側面19に向かって延伸される。この屈曲されて第1の側面19に向かって延伸された部分で、焼結体11の上面28から見て第3の内部電極20と重なることにより第2のバリスタ領域23が形成される。第2の内部電極17が屈曲する位置は、第3の内部電極20と比べて第2の側面21に近い位置にある。
【0020】
ここで第1の内部電極14と第3の内部電極20との積層方向(Z軸方向)の間隔(バリスタ領域の厚み)を約35μmとしている。
【0021】
第1のバリスタ領域22および第2のバリスタ領域23は、第1の側面19よりも第2の側面21に近い位置に形成されている。このようにすることにより、第3の外部電極18と第1の内部電極14または第2の内部電極17との間の浮遊容量をほとんど発生させないようにすることができる。それにより積層バリスタが有する内部電極と外部電極との間に発生する浮遊容量を小さくするとともに、外部電極の形状や寸法のばらつきによる浮遊容量のばらつきも小さくすることができる。さらに第1のバリスタ領域22および第2のバリスタ領域23全体を、第1の側面19と第2の側面21との中間位置よりも第2の側面21に近い位置に設けることがより望ましい。
【0022】
また第1の内部電極14の先端部は第1のバリスタ領域22から約50μm突出している。さらに第2の内部電極17の先端部も第2のバリスタ領域23から約50μm突出している。同様に第3の内部電極20の先端部も第1のバリスタ領域22および第2のバリスタ領域23から約50μm突出している。このように内部電極の先端部を内部電極どうしが重なるバリスタ領域から突出させることにより、内部電極のずれに対して静電容量の変動を抑えることができる。突出させる長さは、バリスタ領域の厚み以上、5倍以下とすることが望ましい。突出させる長さがバリスタ領域の厚みよりも小さくなると内部電極のずれに対して静電容量の変動を十分に抑えることができず、5倍よりも大きくなると、浮遊容量が大きくなりやすくなるためである。
【0023】
(第二の実施形態)
図5は本開示の第二の実施形態における積層バリスタの断面図である。積層バリスタの外観は、図1と同じである。図3に示す積層バリスタは第1の内部電極14と第2の内部電極17とは同じ層に設けられている。一方、図5に示す積層バリスタでは、第1のバリスタ層11aと第2のバリスタ層11bとの間に第4のバリスタ層11dが設けられている。第1の内部電極14は第2のバリスタ層11bの主面に形成されている。第2の内部電極17は第1のバリスタ層11aの主面に形成されている。第3の内部電極20は第4のバリスタ層11dの主面に形成されている。第1のバリスタ領域22と第2のバリスタ領域23とは、焼結体11の上面からみて重ならないように設けられている。このような構成により第1の内部電極14と第2の内部電極17との間の相互作用を低減することができる。
【0024】
(第三の実施形態)
図6は本開示の第三の実施形態における積層バリスタの断面図である。積層バリスタの外観は、図1と同じである。この第三の実施形態における積層バリスタでは、第1のバリスタ層11aと第2のバリスタ層11bとの間に第4のバリスタ層11dと第5のバリスタ層11eとが順に設けられている。また、第3の内部電極20a、20bが第3の外部電極に電気的に接続している。第1の内部電極14は第2のバリスタ層11bの主面に形成されている。第2の内部電極17は第1のバリスタ層11aの主面に形成されている。一方の第3の内部電極20aは第5のバリスタ層11eの主面に形成されている。他方の第3の内部電極20bは第4のバリスタ層11dの主面に形成されている。第1のバリスタ層11aの上面28から見て第3の内部電極20aが第1の内部電極14に重なることで第1のバリスタ領域22を形成している。第1のバリスタ層11aの上面28から見て第3の内部電極20bが第2の内部電極17に重なることで第2のバリスタ領域23を形成している。また第1のバリスタ層11aの上面28から見て第1のバリスタ領域22と第2のバリスタ領域23とは重ならないように設けられている。このように構成することにより第1の内部電極と第2の内部電極との間の相互作用をさらに低減することができる。
【0025】
なお、第1のバリスタ領域22および第2のバリスタ領域23を構成する層とそれ以外の層とで異なる材料を用いても良い。この場合バリスタ領域を構成しない層の比誘電率を、バリスタ領域を構成する層の比誘電率よりも小さくする。このようにすることにより、さらに浮遊容量を低減することができ、積層バリスタの静電容量のばらつきも低減することができる。
【0026】
(第四の実施形態)
図7は本開示の第四の実施形態におけるさらに別の積層バリスタの斜視図である。図8はこの積層バリスタの上方からの透視図である。図7の積層バリスタが図1の積層バリスタと異なるのは、第1の側面19に凸部24が設けられ、凸部24の上に第3の外部電極18が設けられている点である。
【0027】
凸部24は第1の側面19の中央部に、底面から上面にわたって設けられ、その高さ(第1の側面から突出している高さ)を約50から200μmとしている。
【0028】
通常積層バリスタは、内部電極となる電極パターンを印刷したバリスタのグリーンシートを積層した後、個片に切断して、焼成し、外部電極を形成して得られる。個片に切断するときに側面となる領域に凸部となる形状を設けた刃で切断することにより、第1の側面に凸部を形成することができる。このように第1の側面19に凸部24を設け、この凸部24の上に第3の外部電極18を設けることにより、第1の内部電極14および第2の内部電極17と第3の外部電極18との距離を大きくすることができる。その結果、浮遊容量を低減することができる。
【0029】
また、凸部24の上に第3の外部電極18を設けることにより、第3の外部電極18の形状を安定させることができ、静電容量のばらつきを低減することができる。
【0030】
また、凸部24を設けることにより、第3の外部電極18を設ける面が容易に認識できる。
【0031】
さらに凸部24のみを電極ペーストにディップすることにより第3の外部電極18を形成する。このことにより、第3の外部電極18の形状を安定させることができる。その結果、静電容量のばらつきをさらに低減することができる。このように凸部24のみを電極ペーストにディップすることにより第3の外部電極18を形成するためには、凸部24の高さを約50μm以上200μm以下とすることが望ましい。この高さが小さい場合、ばらつき抑制の効果が少なくなり、一方で大きい場合は、はんだ塗布高さ以上になると、端子電極の接続が困難になる。
【0032】
(第五の実施形態)
図9は本開示の第五の実施形態における積層バリスタの斜視図である。図10はこの積層バリスタの上方からの透視図である。この積層バリスタは、第1の側面19に凹部25が設けられ、凹部25の内側に第3の外部電極18が設けられている。凹部25は上面から見たときに凹部長さ約300μm、アール寸法約50μmの長円形状となっている。この時、凹部25の長さは全長に対して10~30%程度が望ましく、アール寸法は50~200μm程度が望ましい。このように第1の側面19に凹部25を設け、凹部25の内側に第3の外部電極18を設けることで、第3の外部電極18の形状を安定させることができる。その結果、浮遊容量等のばらつきの小さい積層バリスタを得ることができる。なお、凹部の形状は長円形状に限らず、楕円形状、半円形状等であっても良い。
【0033】
また第2の側面21には凹部を設けないことがより望ましい。このようにすることにより、内部電極の面積を有効に使えるとともに、方向性が外観で識別しやすくなるため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0034】
第1の側面19のみに凹部25を設ける方法としては、以下の方法がある、まず、図11のように第1の側面となる面どうしが向き合うように内部電極を構成してバリスタ層を積層する。後、パンチング等により貫通孔26を形成し、貫通孔26の中に第3の外部電極となる電極ペーストを塗布し、貫通孔26を通る切断ライン27で切断して個片化することによって実現することができる。
【0035】
(態様)
上記実施形態から明らかなように、本開示は、以下の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するために、符号を括弧付きで付している。
【0036】
本開示の第1の態様にかかる積層バリスタは、焼結体(11)と、第1の外部電極(12)と、第2の外部電極(15)と、第3の外部電極(18)と、第1の内部電極(14)と、第2の内部電極(17)と、第3の内部電極(20)と、を備える。焼結体(11)は、上面(28)、下面(29)、前記上面(28)からみて反時計回りに第1の端面(13)、第1の側面(19)、第2の端面(16)および第2の側面(21)を順次配置した直方体の形状を有する。また、焼結体(11)は、複数のバリスタ層(11a、11b、11c)が積層されて形成されている。複数のバリスタ層(11a、11b、11c)のそれぞれは、主面(11a)と裏面(11b)と4つの側面とを有する。隣接する2つのバリスタ層(11a、11b)のうち一方の主面(28a、28b)ともう一方の裏面(29a、29b)とが接合している。複数のバリスタ層(11a、11b、11c)のそれぞれの4つの側面は、焼結体(11)の第1の端面(13)、第1の側面(19)、第2の端面(16)および第2の側面(21)となる。また、複数のバリスタ層(11a、11b、11c)のうち1つのバリスタ層(11a)は、第3の内部電極(20)を有する。複数のバリスタ層(11a、11b、11c)のうち他の少なくとも1層のバリスタ層(11b)は、第1の内部電極(14)と第2の内部電極(17)との少なくともいずれかを有する。第1の外部電極(12)は焼結体(11)の第1の端面(13)に設けられる。第2の外部電極(15)は焼結体(11)の第2の端面(16)に設けられる。第3の外部電極(19)は焼結体(11)の第1の側面(19)に設けられる。第1の内部電極(14)は第1の外部電極(12)に電気的に接続される。第2の内部電極(17)は第2の外部電極(15)に電気的に接続される。第3の内部電極(20)は第3の外部電極(18)に電気的に接続される。焼結体(11)の上面(28)から見て第1の内部電極(14)と第3の内部電極(18)とは第1の重なりを有する。第1の重なりにより第1のバリスタ領域(22)が形成される。焼結体(11)の上面から見て第2の内部電極(17)と第3の内部電極(18)とは第2の重なりを有する。第2の重なりにより第2のバリスタ領域(23)が形成される。第1のバリスタ領域(22)および第2のバリスタ領域(23)は第1の側面(19)よりも第2の側面(21)に近い位置に配置されている。
【0037】
第1の態様の積層バリスタによれば、第3の外部電極(18)と第1の内部電極(14)または第2の内部電極(17)との間の浮遊容量をほとんど発生させないようにすることができる。それにより第1の内部電極(14)または第2の内部電極(17)と第3の外部電極(18)との間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。それとともに、第3の外部電極(18)のばらつきによる浮遊容量のばらつきも小さくすることができる。
【0038】
本開示の第2の態様にかかる積層バリスタは、第1の態様の積層バリスタにおいて、第1の内部電極(14)は第3の内部電極(20)よりも焼結体(11)の第2の側面(21)に近い位置で第1の外部電極(12)と接続する。また、第1の内部電極(14)は焼結体(11)の第2の端面(16)に向かって延伸する。第1の内部電極(14)は第3の内部電極(20)よりも焼結体(11)の第2の側面(21)に近い別の位置で屈曲して第1の側面(19)に向かって延伸し、第1の重なりを有する。
【0039】
本開示の第3の態様にかかる積層バリスタは、第1の態様の積層バリスタにおいて、第1の内部電極(14)と第2の内部電極(17)とは、異なるバリスタ層(11a、11b)に設けられる。焼結体(11)の上面(28)から見て第1のバリスタ領域(22)と第2のバリスタ領域(23)とは異なる位置に配置されている。
【0040】
第3の態様にかかる積層バリスタによれば、第1の内部電極(14)と第2の内部電極(17)との間の相互作用を低減することができる。
【0041】
本開示の第4の態様にかかる積層バリスタは、第1の態様の積層バリスタにおいて、第3の内部電極(20a、20b)は2つの異なるバリスタ層(11d、11e)に設けられる一方のバリスタ層(11e)における第3の内部電極(20a)は、焼結体(11)の上面(28)から見て第1の内部電極(14)に重なることで第1のバリスタ領域(22)を形成する。他方のバリスタ層(11d)における第3の内部電極(20b)は、焼結体(11)の上面(28)から見て第2の内部電極(17)に重なることで第2のバリスタ領域(23)を形成する。焼結体(11)の上面から見て第1のバリスタ領域(22)と第2のバリスタ領域(23)とは異なる位置に配置されている。
【0042】
第4の態様にかかる積層バリスタによれば、第1の内部電極(14)と第2の内部電極(17)との間の相互作用をさらに低減することができる。
【0043】
本開示の第5の態様にかかる積層バリスタは、第1の態様の積層バリスタにおいて、第1の側面(19)に凸部(24)を設けている。この凸部(24)に第3の外部電極(18)を設けている。
【0044】
第5の態様にかかる積層バリスタによれば、第1の内部電極(14)および第2の内部電極(17)と第3の外部電極(18)との距離を大きくすることができる。その結果、浮遊容量を低減することができる。また、凸部(24)の上に第3の外部電極(18)を設けることにより、第3の外部電極(18)の形状を安定させることができ、積層バリスタの静電容量のばらつきを低減することができる。また、凸部(24)を設けることにより、第3の外部電極18を設ける面を容易に認識できる。
【0045】
本開示の第6の態様にかかる積層バリスタは、第1の態様の積層バリスタにおいて、第1の側面(19)に凹部(25)を設けている。この凹部(25)の内側に第3の外部電極(18)を設けている。
【0046】
第6の態様にかかる積層バリスタによれば、第1の側面(19)に凹部(25)を設け、凹部(25)の内側に第3の外部電極(18)を設けることで、第3の外部電極(18)の形状を安定させることができる。その結果、浮遊容量等のばらつきの小さい積層バリスタを得ることができる。
【0047】
本開示の第7の態様にかかる積層バリスタは、第6の態様の積層バリスタにおいて、第2の側面(21)は平坦である。
【0048】
第7の態様にかかる積層バリスタによれば、内部電極(14、17、18)の面積を有効に使えるとともに、方向性が外観で識別しやすくなるため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示に係る積層バリスタは、内部電極と外部電極との間に発生する浮遊容量を小さくすることができるとともに、外部電極のばらつきによる浮遊容量のばらつきも小さくすることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0050】
11 焼結体
11a 第1のバリスタ層
11b 第2のバリスタ層
11c 第3のバリスタ層
11d 第4のバリスタ層
11e 第5のバリスタ層
12 第1の外部電極
13 第1の端面
14 第1の内部電極
15 第2の外部電極
16 第2の端面
17 第2の内部電極
18 第3の外部電極
19 第1の側面
20、20a、20b 第3の内部電極
21 第2の側面
22 第1のバリスタ領域
23 第2のバリスタ領域
24 凸部
25 凹部
26 貫通孔
27 切断ライン
28 上面
28a、28b、28c 主面
29 下面
29a、29b、29c 裏面
図1
図2
図3
図4
図5
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図11