(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H01H39/00 C
(21)【出願番号】P 2020005459
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019013676
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 純久
(72)【発明者】
【氏名】木下 一寿
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
(72)【発明者】
【氏名】金松 健児
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-049300(JP,A)
【文献】特開2016-184516(JP,A)
【文献】特開平11-102633(JP,A)
【文献】特開2010-153371(JP,A)
【文献】特開2012-212543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/58 - 37/74
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電部と、
前記第1導電部に電気的に接続する第2導電部と、
第1の位置から前記第1の位置よりも下方に位置する第2の位置に向かって移動するベース
と、前記ベースの下方に位置するロッドと、を含み、前記第1導電部と前記第2導電部との電気的な接続を遮断する動作ピンと、
前記動作ピンの上方に設けられたガス発生器と、
前記ベースの下方に設けられ、前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動するときに前記ベースとともに下方に向かって移動する消弧部材と、を備え
、
前記動作ピンは、電気絶縁性を有し、
前記ロッドと前記消弧部材とは異なる材料で設けられ、
前記ベースが前記第1の位置にあるとき、前記消弧部材は前記ロッドと接触する、
遮断装置。
【請求項2】
前記ベースが前記第1の位置にいるときには前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続し、
前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動する
ときに前記ベースとともに下方に向かって移動する前記ロッドによって下方へと移動する分離用部位を更に備え、
前記消弧部材は、前記分離用部位の上面と前記ベースとの間の位置に設けられている、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
前記消弧部材は、セラミック及びシリカのうち少なくとも一方を含有する、
請求項1又は2に記載の遮断装置。
【請求項4】
前記消弧部材からは、消弧ガスが生じる、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記消弧ガスは、水素及び水分のうち少なくとも一方を含有する、
請求項4に記載の遮断装置。
【請求項6】
前記ロッドは、前記消弧部材と前記分離用部位との間の位置に設けられ、前記消弧部材よりも電気絶縁性が高い部位を
含む、
請求項2に記載の遮断装置。
【請求項7】
前記
ロッドは、前記ベースと前記消弧部材との間の位置に設けられ、前記ベースと一体に形成された絶縁部を含み、
前記絶縁部は、前記消弧部材よりも電気絶縁性が高い、
請求項
2又は6に記載の遮断装置。
【請求項8】
前記第1導電部と前記第2導電部と前記分離用部位とは導電部材の一部であり、
前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置に向かって移動するときに、前記第1導電部及び前記第2導電部は前記分離用部位から切り離され、
前記ベースが前記第2の位置にあるとき、前記動作ピンは、前記第1導電部の断面と前記第2導電部の断面との間に位置する、
請求項2に記載の遮断装置。
【請求項9】
前記消弧部材と前記分離用部位との間の位置に設けられ、前記消弧部材よりも電気絶縁性が高い前記部位の形状は、円筒状又は円柱状である、
請求項
6に記載の遮断装置。
【請求項10】
前記第1導電部は、第1の接点を有し、
前記第2導電部は、第2の接点を有し、前記第2の接点が前記第1の接点と接触することで前記第1導電部と電気的に接続し、
前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置へと移動することにより、前記第1の接点と前記第2の接点との間に前記動作ピン又は前記消弧部材が入り込み、前記第1導電部と前記第2導電部との電気的な接続は遮断される、
請求項1、3~7のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項11】
前記動作ピンが内部に配置されるハウジングと、
前記ハウジングの内面と接触するように配置される消弧体と、
を更に備え、
前記動作ピンが下方に移動して前記分離用部位が前記第1導電部及び前記第2導電部から切り離された後、前記動作ピンが静止した状態において、
前記分離用部位は、前記消弧体と接触する、
請求項8に記載の遮断装置。
【請求項12】
前記消弧部材は、
前記動作ピンの前記ロッドに埋め込まれている
又は、
前記動作ピンの前記ロッドに貼り付けられている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項13】
前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、前記消弧部材は、前記第1導電部と前記第2導電部との間を通る、
請求項1~12のいずれか一項に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は遮断装置に関し、より詳細には、電路を遮断する遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の回路遮断器(遮断装置)は、電気回路に接続されるように設計された少なくとも1つの導電体と、ハウジングと、マトリクスと、パンチと、火工品を用いたアクチュエータ(動作ピン)と、を備えている。アクチュエータは、点火されたときにパンチを第1の位置から第2の位置に移動させるように設計されている。パンチ及びマトリクスは、パンチが第1の位置から第2の位置に移動するときに、少なくとも1つの導電体を破断して、少なくとも2つの別個の部分にする
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような回路遮断器において、導電体を含む電路の遮断性能の向上を求められることがあった。
【0005】
本開示は、電路の遮断性能を向上させることができる遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遮断装置は、第1導電部と、第2導電部と、動作ピンと、ガス発生器と、消弧部材と、を備える。前記第2導電部は、前記第1導電部に電気的に接続する。前記動作ピンは、第1の位置から前記第1の位置よりも下方に位置する第2の位置に向かって移動するベースと、前記ベースの下方に位置するロッドと、を含み、前記第1導電部と前記第2導電部との電気的な接続を遮断する。前記ガス発生器は、前記動作ピンの上方に設けられる。前記消弧部材は、前記ベースの下方に設けられ、前記ベースが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動するときに前記ベースとともに下方に向かって移動する。前記動作ピンは、電気絶縁性を有する。前記ロッドと前記消弧部材とは異なる材料で設けられる。前記ベースが前記第1の位置にあるとき、前記消弧部材は前記ロッドと接触する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、電路の遮断性能を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る遮断装置の断面斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動される前の状態を示す。
【
図4】
図4は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動された後の状態を示す。
【
図5】
図5は、同上の遮断装置の要部の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例2に係る遮断装置の要部の斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る遮断装置の要部の上方から見た断面図である。
【
図8】
図8は、同上の遮断装置の要部の側方から見た断面図であって、動作ピンが駆動される前の状態を示す。
【
図9】
図9は、同上の遮断装置の動作ピンの斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の遮断装置の要部の側方から見た断面図であって、動作ピンが駆動された後の状態を示す。
【
図11】
図11は、同上の遮断装置の動作ピンの別の構成例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る遮断装置の要部の側方から見た断面図であって、励磁コイルが通電されている状態を示す。
【
図13】
図13は、同上の遮断装置の要部の側方から見た断面図であって、励磁コイルが通電されていない状態を示す。
【
図14】
図14は、実施形態4に係る遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動される前の状態を示す。
【
図15】
図15は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動されて移動している途中の状態を示す。
【
図16】
図16は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが進みきった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る遮断装置について、図面を用いて説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(実施形態1)
本実施形態の遮断装置1は、
図1、2に示すように、導電部材2と、動作ピン8と、を備えている。遮断装置1は、収容空間98を有する収容部9(ハウジング)と、ガス発生器7とを更に備えている。
【0011】
ガス発生器7は、燃料74を含む。燃料74は、例えばニトロセルロース等の火薬である。ガス発生器7は、燃料74を燃焼させることによりガスを発生させる。
【0012】
導電部材2は、電路の一部を構成する分離用部位21と、分離用部位21につながっており電路の一部を構成する2つの端子部22(第1導電部及び第2導電部)と、を有する。2つの端子部22は、分離用部位21を介してつながっており、互いに電気的に接続されている。
【0013】
遮断装置1は、例えば、電動車両等に備えられる。ガス発生器7の動作は、例えば、電動車両に設けられている制御部(ECU:Electronic Control Unit)等により、制御される。
【0014】
導電部材2の両端の2つの端子部22は、例えば、電動車両の電源とモータとの間に電気的に接続される。導電部材2を含む電路に過電流等の異常電流が流れると、制御部がこの異常電流を検知してガス発生器7を通電させ、ガス発生器7で燃料74が燃焼させられてガスが発生する。異常電流は、例えば、その電流値が規定値以上の電流として規定される。動作ピン8は、ガス発生器7で発生したガスの圧力により駆動される。すると、導電部材2における分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23が動作ピン8により破断され、分離用部位21が2つの端子部22から切り離される。これにより、2つの端子部22が電気的に切り離されるので、電路が遮断される。つまり、2つの端子部22は、動作ピン8の移動に連動して電気的に切り離される。動作ピン8は、電気的に切り離された2つの端子部の間に移動する。収容空間98は、2つの端子部22から切り離された分離用部位21を収容する。
【0015】
導電部材2における分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23とは、導電部材2のうち、分離用部位21の一部と端子部22の一部とを含む部分である。
【0016】
分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23の破断強度は、2つの端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度以下である。より望ましくは、分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23の破断強度は、2つの端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度よりも小さい。より詳細には、導電部材2のうち収容部9の内部の空間に面する部位の中で、分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23の破断強度が最も弱いことが望ましい。なお、導電部材2のうち収容部9の内部の空間に面する部位の中で、分離用部位21と2つの端子部22の各々との境界部分23の破断強度と境界部分23以外の部位(例えば、分離用部位21)の破断強度とが同じであってもよい。つまり、導電部材2のうち収容部9の内部の空間に面する各部位の破断強度が互いに同じであってもよい。導電部材2では、分離用部位21が2つの端子部22から切り離されやすい。すなわち、遮断装置1では、境界部分23の破断強度が2つの端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度以下とすることによって、電路の遮断性能が向上している。本実施形態では、境界部分23の破断強度は、2つの端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度よりも小さい。
【0017】
導電部材2は、板状である。より詳細には、導電部材2は、長方形の板状である。導電部材2は、例えば、銅により形成されている。導電部材2の分離用部位21と2つの端子部22とは、一体に形成されている。分離用部位21は、2つの端子部22の間に設けられている。導電部材2の長手方向において、2つの端子部22のうち一方と、分離用部位21と、2つの端子部22のうち他方とが、この順に並んでいる。
【0018】
導電部材2には、2つの溝24が形成されている。2つの溝24により、導電部材2が分離用部位21と2つの端子部22とに区分けされている。すなわち、導電部材2において、境界部分23は、溝24が形成されている部分と一致する。各境界部分23には、溝24が形成されているので、各境界部分23の破断強度が各端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度よりも小さい。溝24は、導電部材2の第1の面F1(
図3参照)及び第1の面F1とは反対側の第2の面F2(
図3参照)とのうち、第1の面F1に形成されている。第1の面F1は、動作ピン8と対向する面であり、第2の面F2は、収容空間98と対向する面である。各溝24の深さ方向は、導電部材2の厚さ方向に沿っている。各溝24の断面形状は、三角形である。すなわち、各溝24の形状は、楔形である。各溝24は、導電部材2の短手方向に沿って形成されている。
【0019】
収容部9は、例えば、樹脂により形成されている。収容部9は、第1ボディ91と、第2ボディ95と、を有している。第1ボディ91は、円筒状の筒状部92と、筒状部92の軸方向の一端から筒状部の径方向に突出した第1フランジ部93と、を含む。第2ボディ95は、角柱状の柱状部96と、柱状部96のうち第1ボディ91側の一端から突出した第2フランジ部97と、を含む。第1フランジ部93及び第2フランジ部97は、互いに平行な板状である。第1ボディ91と第2ボディ95とは、第1フランジ部93及び第2フランジ部97において互いに合わさっている。第1フランジ部93と第2フランジ部97との間には、導電部材2が通されている。導電部材2の2つの端子部22の各々の一端は、収容部9の外部へ突出している。
【0020】
図3に示すように、第2ボディ95のうち、第1ボディ91に対向する表面951には、凹部952が形成されており、凹部952の内側の空間は、2つの端子部22から切り離された分離用部位21を収容する収容空間98である。第2ボディ95の表面951は、平状であって、導電部材2が接している。分離用部位21と収容空間98とは、表面951の法線方向に並んでいる。表面951の法線方向から見て、分離用部位21は、収容空間98よりもわずかに小さい。
【0021】
第1ボディ91の筒状部92の内側には、ガス発生器7及び動作ピン8が配置されている。
【0022】
ガス発生器7は、燃料74に加えて、ケース71と、2つのピン電極72と、発熱素子73と、を含む。ケース71は、中空の円柱状である。遮断装置1は、ケース71の外縁と筒状部92の内面との間に介在する第1のO(オー)リング11を更に備えている。
【0023】
ガス発生器7の2つのピン電極72は、ケース71に収容されている。2つのピン電極72の各々の第1端は、収容部9の外部に露出している。2つのピン電極72の各々の第2端は、発熱素子73に接続されている。発熱素子73は、ケース71のうち、燃料74が収容された空間に配置されている。
【0024】
動作ピン8は、例えば、材料として樹脂を含む。動作ピン8は、ガス発生器7と分離用部位21との間に配置されている。動作ピン8は、ベース81と、ベース81から突出したロッド82と、を有している。
【0025】
ベース81は、有底円筒状である。ベース81の外縁には、ベース81の周方向に沿った円環形の溝811が形成されている。遮断装置1は、溝811に嵌め込まれている第2のOリング12を更に備えている。第2のOリング12の外縁は、筒状部92の内面に接している。溝811の内面及び筒状部92の内面と、第2のOリング12との間の摩擦力により、動作ピン8が筒状部92の内側において筒状部92に保持されている。
【0026】
ロッド82は、直方体状である。ロッド82は、ベース81の外底面からベース81の軸方向に突出している。ロッド82は、ベース81と一体に形成されている。ロッド82の先端86は、分離用部位21に接している。ロッド82の突出方向から見て、分離用部位21は、ロッド82と同程度の大きさである。
【0027】
ロッド82は、消弧部材820と、先端部821と、絶縁部827と、を含む。消弧部材820は、動作ピン8のロッド82の少なくとも一部を構成する。より詳細には、消弧部材820は、ロッド82の外周面822の少なくとも一部を構成する。言い換えると、ロッド82の外周面822は、消弧部材820の外面を含む。先端部821は、ロッド82の先端に位置している。動作ピン8がガス発生器7により駆動される前の時点において、先端部821は、導電部材2の分離用部位21に接する。すなわち、先端部821は、2つの端子部22が電気的に切り離される前に、導電部材2の分離用部位21に接する。ロッド82の先端側から順に、先端部821、消弧部材820、絶縁部827の順に並んでいる。すなわち、消弧部材820は、先端部821と絶縁部827との間に位置している。消弧部材820は、例えば、ロッド82の主構成である樹脂成型部材に埋め込まれている。ここで、樹脂成型部材は、先端部821と絶縁部827とを含む。なお、消弧部材820は、ロッド82の主構成である樹脂成型部材に貼り付けられていてもよい。
【0028】
絶縁部827は、消弧部材820を基準として先端部821側とは反対側に位置しており、消弧部材820よりも電気絶縁性が高い。
【0029】
消弧部材820は、消弧作用を有する。消弧部材820は、例えば、珪砂にエポキシ樹脂と硬化剤とが混ぜられて、エポキシ樹脂が硬化することにより固形状又は半固形状に形成された部材である。すなわち、消弧部材820は、珪砂(シリカ)を含有する。消弧部材820において、珪砂が消弧作用を有する。
【0030】
分離用部位21が2つの端子部22から切り離されると、分離用部位21と2つの端子部22との間でアークが発生することがある。
図5には、分離用部位21が2つの端子部22から切り離されたときに発生するアークの仮想経路R1を図示している。すなわち、アークは、動作ピン8のロッド82と、第2ボディ95の内面(内周面953)との隙間を通る。これによりアークを収容空間98内で消弧することができる。
【0031】
消弧部材820は、電気的に切り離された2つの端子部22の間に移動する。消弧部材820に含まれる珪砂にアークが直接接触又は接近することで、珪砂がアークの熱に晒される。すると、珪砂は、アークの熱を吸収して融解する。つまり、消弧部材820は、消弧部材820に接したアークを冷却する作用を有する。アークが冷却されることにより、アーク電圧が上昇し、アークの消弧が促進される。
【0032】
また、珪砂は、融解してから再凝固することがある。再凝固することで生成された生成物は、シリカを含むため電気絶縁性を有し、アークがその生成物に接することで、アーク電圧が上昇する。また、その生成物により、アークが遮断された後において2つの端子部22の間の電気絶縁性を確保することができる。
【0033】
先端部821は、例えば、合成樹脂を材料として形成されている。先端部821は、消弧部材820よりも電気絶縁性が高い。そのため、動作ピン8がガス発生器7により駆動される前の時点において、先端部821により、導電部材2と消弧部材820との間の電気的絶縁性の向上を図ることができる。
【0034】
ガス発生器7のケース71と動作ピン8のベース81との間には、ガス発生器7で発生したガスが導入される空間である加圧室75が設けられている。
【0035】
発熱素子73は、例えば、ニクロム線である。2つのピン電極72は、例えば、遮断装置1の動作を制御するための制御部に接続される。導電部材2を含む電路に過電流等の異常電流が流れると、制御部は、2つのピン電極72に通電する。ガス発生器7の2つのピン電極72を介して発熱素子73が通電されると、発熱素子73が熱を発生する。発熱素子73で発生した熱により燃料74が点火され、燃料74が燃焼してガスを発生する。ガスは、ケース71において燃料74を収容する空間の圧力を上昇させて、この空間を構成する壁を破断し(
図4参照)、この破断した部分を通して加圧室75に導入されて加圧室75内の圧力を上昇させる。加圧室75内のガスの圧力により、動作ピン8には、分離用部位21を押す向きの力が作用する。動作ピン8は、第2のOリング12における摩擦力に抗して駆動され、動作ピン8のロッド82は分離用部位21を押す。動作ピン8の進行方向は、動作ピン8のロッド82の突出方向と一致する。分離用部位21が2つの端子部22から切り離される前の状態では、分離用部位21は、動作ピン8の進行方向において動作ピン8と収容空間98との間に位置している。分離用部位21が動作ピン8に押されることにより、
図4に示すように、導電部材2は、分離用部位21と2つの端子部22との境界部分23(
図3参照)に形成された2つの溝24において破断され、分離用部位21が2つの端子部22から切り離される。動作ピン8から分離用部位21に作用する力は、分離用部位21を収容空間98に近づける向きに作用する。したがって、2つの端子部22から切り離された分離用部位21は、動作ピン8に押されて収容空間98に入る。
【0036】
遮断装置1は、収容空間98に配置された消弧体13を更に備えている。消弧体13は、消弧作用を有する部材である。消弧体13は、収容空間98における第2ボディ95の内面(内周面953)に埋め込まれている。ここで、消弧体13は、収容空間98における第2ボディ95の内面(内周面953)に貼り付けられていてもよい。消弧体13の具体例は、水素貯蔵合金である。水素貯蔵合金は、水素を放出することでアークを消弧する。
【0037】
消弧体13は、水素貯蔵合金に限定されない。消弧体13として、例えばSiC、SiO2、アルミナ、PA6、PA46、PA66等のポリアミド(ナイロン)、このポリアミドの樹脂に水酸化マグネシウム又はホウ酸マグネシウムを混合した材料を用いることができ、これらの材料を用いて形成された消弧体13の消弧作用により、アーク電圧を高めることができる。
【0038】
図4に示すように、ガス発生器7で発生したガスの圧力により駆動された動作ピン8の外周面822は、分離用部位21が動作ピン8により2つの端子部22から切り離された後、収容部9(第2ボディ95)の収容空間98における内面(内周面953)に接する。これにより、収容部9の内周面953と動作ピン8の外周面822との間では、分離用部位21と2つの端子部22との間に発生するアークの粒子が移動可能な範囲が制限される。例えば、収容部9の内周面953と動作ピン8の外周面822との間に僅かでも隙間がある場合は、アークの粒子が移動可能な範囲は、この隙間に限られる。したがって、アークを構成する粒子の衝突頻度が高まるので、アーク電圧が高まり、遮断装置1の消弧性能が向上する。アークを構成する粒子とは、例えば、電子、金属蒸気及びプラズマ粒子である。
【0039】
また、ガス発生器7で発生したガスの圧力により駆動された動作ピン8は、分離用部位21が動作ピン8により2つの端子部22から切り離された後、動作ピン8の進行方向における先端に位置する先端部821と、収容部9の収容空間98における内面(内底面954)との間に、分離用部位21を挟む。そのため、分離用部位21と2つの端子部22との間に発生するアークは、収容部9の内底面954と分離用部位21との間、又は、分離用部位21と先端部821との間で圧縮される。これにより、アークを構成する粒子の衝突頻度が高まるので、アーク電圧が高まり、遮断装置1の消弧性能が向上する。
【0040】
(実施形態1の変形例1)
次に、実施形態1の変形例1について説明する。
【0041】
消弧部材820の構成は、本実施形態で示した構成に限定されない。消弧部材820として、例えば、SiC、SiO2、アルミナ、PA6、PA46、PA66等のポリアミド(ナイロン)、又は、このポリアミドの樹脂に水酸化マグネシウム又はホウ酸マグネシウムを混合した材料を用いることができる。この場合、消弧部材820がアークの熱により分解され、消弧ガスが生じる。消弧ガスは、消弧作用のあるガスであって、例えば、水素、水分、二酸化炭素及び窒素等のうち少なくとも1つを含有する。消弧ガスは、アーク電圧を上昇させ、アークの消弧を促す。
【0042】
あるいは、消弧部材820として、水素貯蔵合金を用いてもよい。消弧部材820として用いられる水素貯蔵合金は、アークにより熱せられると、消弧ガスとしての水素を生じる。消弧ガスは、アーク電圧を上昇させ、アークの消弧を促す。消弧部材820が消弧ガスを生じる部材の場合は、電気的に切り離された2つの端子部22の間に消弧部材820が移動しなくても、消弧ガスがアークの発生箇所へ拡散することで、アークを消弧する作用が発揮される。
【0043】
あるいは、消弧部材820として、例えば、シリコン又は炭化ケイ素(SiC)を含む部材を用いてもよい。消弧部材820に含まれるシリコン又は炭化ケイ素は、アークの熱を吸収して融解し、これによりアークが冷却されるので、アーク電圧が上昇し、アークの消弧が促進される。
【0044】
また、消弧部材820は、セラミックを含有していてもよい。セラミックは、樹脂等の材料と比較して耐アーク性能が高いので、セラミックにより、消弧部材820の耐アーク性能の向上を図ることができる。
【0045】
(実施形態1の変形例2)
次に、実施形態1の変形例2について、
図6を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図6に示すように、動作ピン8Cのうち分離用部位21Cに接する先端部821Cの形状は、円柱状であってもよい。また、消弧部材820Cの形状も円柱状であってよい。
図6では、動作ピン8Cのロッド82C全体の形状が円柱状である。これにより、ロッド82Cの機械的強度の向上を図ることができる。さらに、
図6に示すように、導電部材2Cの分離用部位21Cが円状に形成されていてもよい。2つの端子部22Cのうち、分離用部位21Cと隣接する部位は、分離用部位21Cに沿った円弧状に形成されている。さらに、2つの端子部22Cから切り離された分離用部位21Cが収容される収容空間98(
図1参照)が、円柱状に形成されていてもよい。
【0047】
なお、
図6では、ロッド82Cを導電部材2Cから離して図示しているが、ロッド82Cは導電部材2Cに接していてもよい。
【0048】
また、ロッド82C(先端部821Cを含む)の形状は、円筒状であってもよい。
【0049】
(実施形態1のその他の変形例)
実施形態1において、導電部材2における2つの溝24は、導電部材2の第1の面F1ではなく第2の面F2に形成されていてもよい。また、第1の面F1と第2の面F2との各々に1つ以上の溝24が形成されていてもよい。この場合に、第1の面F1に形成された溝24と第2の面F2に形成された溝24とは、導電部材2の厚さ方向に並んでいてもよいし、導電部材2の厚さ方向に並んでいなくてもよい。
【0050】
また、導電部材2において、分離用部位21と2つの端子部22との境界部分23には、溝24に代えて、1又は複数の孔が形成されていてもよい。
【0051】
また、分離用部位21につながっており電路の一部を構成する第1導電部及び第2導電部は、端子部22に限定されない。つまり、第1導電部及び第2導電部は、端子としての機能を有していなくてもよい。
【0052】
また、ガス発生器7により動作ピン8が駆動されていないとき、動作ピン8のロッド82の先端86は、分離用部位21と接していなくてもよく、分離用部位21から離れて分離用部位21と対向していてもよい。
【0053】
また、消弧部材820は、動作ピン8の外周面822のうち、2つの端子部22と対向する2つの面(
図3の左右の面)のうち少なくとも一方にのみ設けられていてもよい。
【0054】
また、消弧部材820がアークの熱を吸収する作用(冷却作用)を有する場合は、消弧部材820は、動作ピン8の表面に露出していなくてもよい。この場合でも、消弧部材820は、動作ピン8の表面から伝わる熱を吸収することが可能である。
【0055】
また、導電部材2において、分離用部位21の厚さは、2つの端子部22の厚さよりも小さくてもよい。また、分離用部位21の幅は、2つの端子部22の幅よりも小さくてもよい。これらの場合は、溝24が形成されていない場合であっても、分離用部位21と各端子部22との境界部分23の破断強度を、各端子部22のうち境界部分23以外の部位の破断強度よりも小さくすることができる。
【0056】
また、導電部材2は、分離用部位21を複数有していてもよい。複数の分離用部位21は、例えば、導電部材2の長手方向に並んで配置される。あるいは、複数の分離用部位21は、例えば、導電部材2の短手方向又は厚さ方向に並んで配置される。動作ピン8は、複数の分離用部位21を端子部22から同時に切り離してもよいし、それぞれ異なるタイミングで切り離してもよい。
【0057】
また、導電部材2の表面は、樹脂等の電気絶縁性を有する部材により覆われていてもよい。動作ピン8は、導電部材2の表面を覆う部材ごと導電部材2を破断させてもよい。
【0058】
また、遮断装置1は、2つの端子部22の間に発生したアークを引き延ばすための永久磁石を備えていてもよい。永久磁石は、例えば、収容部9の内部空間に配置されてもよいし、収容部9に埋め込まれていてもよい。
【0059】
(実施形態1のまとめ)
以上説明した実施形態1及び実施形態1の変形例から、以下の態様が開示されている。
【0060】
遮断装置1は、動作ピン8(8B、8C)と、第1導電部(端子部22、22C)と、第2導電部(端子部22、22C)と、を備える。第2導電部は、第1導電部に電気的に接続される。第1導電部と第2導電部とは、動作ピン8(8B、8C)の移動に連動して電気的に切り離される。動作ピン8(8B、8C)は、電気的に切り離された第1導電部と第2導電部との間に移動する。動作ピン8(8B、8C)は、消弧部材820(820C)を含む。消弧部材820(820C)は、動作ピン8(8B、8C)の少なくとも一部を構成する。消弧部材820(820C)は、消弧作用を有する。
【0061】
上記の構成によれば、動作ピン8(8B、8C)の消弧部材820(820C)は、第1導電部と第2導電部との間に移動し、第1導電部と第2導電部との間で発生するアークを消弧することができる。したがって、動作ピン8(8B、8C)が消弧部材820(820C)を含まない場合と比較して、第1導電部と第2導電部とを含む電路の遮断性能を向上させることができる。
【0062】
また、遮断装置1では、消弧部材820(820C)は、冷却作用を有することが好ましい。
【0063】
上記の構成によれば、消弧部材820(820C)がアークを冷却することにより、アーク電圧を上昇させ、アークの消弧を促すことができる。
【0064】
また、遮断装置1では、消弧部材820(820C)は、セラミック及びシリカのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0065】
上記の構成によれば、消弧部材820(820C)がセラミックを含有することにより、消弧部材820(820C)の耐アーク性能の向上を図ることができる。あるいは、消弧部材820(820C)がシリカを含有することにより、シリカにおいてアークの熱を吸収し、アークの消弧を促すことができる。
【0066】
また、遮断装置1では、消弧部材820(820C)からは、消弧ガスが生じることが好ましい。
【0067】
上記の構成によれば、消弧ガスにより、アーク電圧を上昇させ、アークの消弧を促すことができる。
【0068】
また、遮断装置1では、消弧ガスは、水素及び水分のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0069】
上記の構成によれば、消弧ガスが含有する水素及び水分のうち少なくとも一方により、アークの熱的な遮断を図ることができる。
【0070】
また、遮断装置1では、動作ピン8(8B、8C)は、動作ピン8(8B、8C)の進行方向の先端に先端部821(821B、821C)を含むことが好ましい。先端部821(821B、821C)は、消弧部材820(820C)よりも電気絶縁性が高い。
【0071】
上記の構成によれば、第1導電部及び第2導電部(端子部22、22C)を含む電路と消弧部材820(820C)との間の電気的絶縁性の向上を図ることができる。
【0072】
また、遮断装置1では、動作ピン8Bは、絶縁部827を含むことが好ましい。絶縁部827は、消弧部材820を基準として先端部821B側とは反対側に位置する。絶縁部827は、消弧部材820よりも電気絶縁性が高い。
【0073】
上記の構成によれば、動作ピン8Bのうち絶縁部827を第1導電部と第2導電部との間に移動させた際に、第1導電部と第2導電部との間を絶縁部827により電気的に絶縁することができる。
【0074】
また、遮断装置1では、動作ピン8(8B、8C)は、第1導電部と第2導電部とを含む導電部材2を破断させることにより、第1導電部と第2導電部とを電気的に切り離すことが好ましい。
【0075】
上記の構成によれば、動作ピン8(8B、8C)の移動と、第1導電部と第2導電部とを電気的に切り離すこととを容易に連動させられる。
【0076】
また、遮断装置1では、動作ピン8Cのうち、導電部材2Cに接する先端部821Cの形状は、円筒状又は円柱状であることが好ましい。
【0077】
上記の構成によれば、先端部821Cの形状が例えば角柱状である場合と比較して、先端部821Cの機械的強度の向上を図ることができる。
【0078】
また、遮断装置1は、ガス発生器7を更に備えることが好ましい。ガス発生器7は、燃料74を燃焼させることによりガスを発生させ、ガスの圧力により動作ピン8(8B、8C)を移動させる。
【0079】
上記の構成によれば、ガス発生器7で発生したガスの圧力により動作ピン8(8B、8C)が移動させられるので、ガス発生器7を用いない場合と比較して動作ピン8(8B、8C)が高速で移動する。これにより、アークを急速に伸張させることができるので、電路の遮断性能の向上を図ることができる。
【0080】
また、遮断装置1では、消弧部材820(820C)は、動作ピン8(8B、8C)の外周面822の少なくとも一部を構成する。
【0081】
上記の構成によれば、消弧部材820(820C)がアークに対して露出するので、消弧部材820(820C)の消弧作用によりアークを消弧しやすい。
【0082】
また、遮断装置1では、消弧部材820(820C)は、電気的に切り離された第1導電部と第2導電部との間に移動することが好ましい。
【0083】
上記の構成によれば、第1導電部と第2導電部との間に発生したアークに消弧部材820(820C)が接しやすいので、遮断装置1の消弧性能の向上を図ることができる。
【0084】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る遮断装置1Dについて、
図7~10を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
図7は、遮断装置1Dの要部の上方から見た断面図である。
図8は、遮断装置1Dの要部の側方から見た断面図であって、動作ピン8Dの動作前の状態を示す。
図9は、動作ピン8Dの斜視図である。
図10は、遮断装置1Dの要部の側方から見た断面図であって、動作ピン8Dの動作後の状態を示す。
図7、8、10には、上下、左右、前後を表す矢印を図示しているが、この矢印は説明のために図示したものであり、遮断装置1Dの使用方向を限定する趣旨ではない。
【0086】
本実施形態の遮断装置1Dは、収容部9D、ガス発生器7D、ケース76、動作ピン8D、第1固定端子3、第2固定端子4、可動接触子5及び接圧ばね14を備えている。
【0087】
第1固定端子3及び第2固定端子4の各々は、銅等の導電性材料により形成されている。第1固定端子3及び第2固定端子4の各々は、左右方向に長い矩形の板状に形成されている。第1固定端子3と第2固定端子4とは、左右方向に並ぶように配置されている。第1固定端子3は、その先端部(右端部)に、第1固定接点31(固定接点)を有している。第2固定端子4は、その先端部(左端部)に、第2固定接点41を有している。
【0088】
可動接触子5は、銅等の導電性材料により形成されている。可動接触子5は、左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子5は、長手方向の第1端(左端)に第1可動接点51(可動接点)を有し、第2端(右端)に第2可動接点52を有している。第1可動接点51が第1固定接点31と対向し、かつ第2可動接点52が第2固定接点41と対向するように、第1固定端子3、第2固定端子4及び可動接触子5が配置されている。
【0089】
第1固定端子3及び第2固定端子4は、遮断装置1Dの外部の回路に電気的に接続される。第1固定端子3から可動接触子5を経て第2固定端子4に至る経路を含む電路に過電流等の異常電流が流れると、遮断装置1Dに接続された制御部がこの異常電流を検知してガス発生器7Dを通電させ、ガス発生器7Dで燃料74が燃焼させられてガスが発生する。動作ピン8Dは、ガス発生器7Dで発生したガスの圧力により駆動される。すると、可動接触子5は、動作ピン8Dにより移動させられて第1固定端子3及び第2固定端子4から離れ、これにより、電路が遮断される。
【0090】
接圧ばね14は、例えば、圧縮コイルばねである。接圧ばね14は、可動接触子5が、第1固定端子3及び第2固定端子4に向かうように、可動接触子5にばね力を加えている。つまり、接圧ばね14は、第1可動接点51が第1固定接点31と接続され、第2可動接点52が第2固定接点41と接続される向きに、可動接触子5にばね力を加えている。
【0091】
ガス発生器7Dは、ケース76に収容されている。ケース76は、可動接触子5の上方に配置されている。ケース76は、円筒状に形成されている。ケース76の上面には、ガス発生器7Dの2つのピン電極72を露出させるための開口が形成されている。ケース76の下面には、ガス発生器7Dで発生したガスを放出するための孔761が形成されている。ケース76の内部においてガス発生器7Dの下方には、空間(加圧室75)が形成されている。
【0092】
動作ピン8Dは、上下方向において、ケース76(ガス発生器7D)と可動接触子5との間に配置されている。動作ピン8Dは、ベース81Dとロッド82Dとを有している。ベース81Dは、左右方向に長さを有する矩形板状であって、動作ピン8Dの上端に位置する。ロッド82Dは、いわゆる楔形であって、その断面形状が、長方形の下側に直角三角形が繋がった台形状である。ロッド82Dは、ベース81Dの下面の前側の部分から、下方に突出している。ロッド82Dは、前面の下側部分に、後方に傾斜した傾斜面を有している。つまり、ロッド82Dは、下方に向かう程、厚さ(前後方向の寸法)が小さくなる柱状に形成されている。動作ピン8Dの下端(ロッド82Dの先端)は、前後方向において、可動接触子5と第1固定端子3(第2固定端子4)との間に位置している。
【0093】
ロッド82Dは、消弧部材820Dを有している。消弧部材820Dは、珪砂(シリカ)を含有する。消弧部材820Dは、動作ピン8Dのロッド82Dの外周面の少なくとも一部を構成する。具体的には、消弧部材820Dは、ロッド82Dの後面833の一部を構成する。消弧部材820Dは、例えば、ロッド82Dの主構成である樹脂成型部材に埋め込まれている。なお、消弧部材820Dは、ロッド82Dの主構成である樹脂成型部材に貼り付けられていてもよい。
【0094】
収容部9Dは、内部空間(収容室90)を有する矩形箱状に形成されている。収容部9Dの内部空間に、第1固定接点31、第2固定接点41、可動接触子5、接圧ばね14、ケース76、及び動作ピン8Dが収容されている。
【0095】
本実施形態では、ガス発生器7Dでガスが発生すると、加圧室75内の圧力が上昇し、この上昇した圧力によって動作ピン8Dが下方に押される。動作ピン8Dが下方に移動するにつれて、ロッド82Dが第1可動接点51と第1固定接点31との間に入り込み、可動接触子5を前方に押す(
図10参照)。これにより、第1可動接点51が第1固定接点31から引き離され、第2可動接点52が第2固定接点41から引き離される。すなわち、第1固定接点31に接した状態の第1可動接点51は、動作ピン8Dの移動に連動して、第1固定接点31から離れた状態となる。移動後の動作ピン8Dは、可動接触子5と第1固定端子3との間に、物理的に介在することになる。つまり、動作ピン8Dは、電気的に(かつ、物理的に)切り離された第1固定端子3(第1導電部)と可動接触子5(第2導電部)との間に移動する。なお、本実施形態では、可動接触子5が移動する向き(前向き)は、動作ピン8Dが移動する向き(下向き)と直交している。
【0096】
本実施形態においては、動作ピン8Dのベース81Dの上面が、加圧室75内の圧力を受ける第1端831であり、動作ピン8Dのロッド82Dの下端が、可動接触子5を押す第2端832である。
【0097】
ガス発生器7Dで発生したガスの圧力により動作ピン8Dが押されると、消弧部材820Dは、第1固定接点31に対向する。消弧部材820Dの消弧作用により、第1固定接点31と第1可動接点51との間に発生するアークを迅速に消弧することができる。
【0098】
本実施形態では、ガス発生器7Dで発生するガスのエネルギーを用いて、可動接触子5を第1固定端子3に対して移動させることによって、電路を遮断している。したがって、接点間で発生するアークは、可動接触子5の移動速度と同程度の速度で、急速に引き延ばされて消弧される。これにより、遮断装置1Dは、アークを短時間で消弧させることが可能となり、電流の遮断性能を向上させることが可能となる。
【0099】
なお、動作ピン8Dの形状は、
図9に示す形状に限られず、例えばロッド82Dのみを備えた形状でもよい。あるいは、ロッド82Dの前後の両面に、下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する傾斜面を備えていてもよい、また、動作ピン8Dは、三角柱状に形成されていてもよい。もちろん、これらの形状以外の形状であってもよい。
【0100】
また、本実施形態では、消弧部材820Dは、ロッド82Dの左端から右端までに亘って設けられているが、例えば、
図11に示すように、ロッド82Pの左端付近と右端付近とにのみ消弧部材820Pが設けられていてもよい。つまり、
図11の動作ピン8Pのロッド82Pは、消弧部材820Pを2つ有している。消弧部材820D(又は820P)は、第1固定接点31に対向する領域と、第2固定接点41に対向する領域と、第1可動接点51に対向する領域と、第2可動接点52に対向する領域とのうち、少なくとも1つに設けられていればよい。
【0101】
また、遮断装置1Dは、ガス発生器7D及び動作ピン8Dの組を2組備えていてもよい。この場合、2組のうちの一方の組のガス発生器7D及び動作ピン8Dの動作は、実施形態と同様であり、第1可動接点51を駆動する。他方の組のガス発生器7D及び動作ピン8Dは、第2可動接点52を駆動する。すなわち、ガス発生器7Dでガスが発生すると、動作ピン8Dが下方に押され、ロッド82Dが第2可動接点52と第2固定接点41との間に入り込み、可動接触子5を前方に押す。これにより、第2可動接点52が第2固定接点41から引き離される。
【0102】
また、遮断装置1Dにおいて、固定接点と可動接点との組の数は、1組であってもよいし、3組以上であってもよい。
【0103】
(実施形態2のまとめ)
以上説明した実施形態2から、以下の態様が開示されている。
【0104】
遮断装置1Dでは、第1導電部は、固定接点(第1固定接点31及び第2固定接点41)であることが好ましい。第2導電部は、可動接点(第1可動接点51及び第2可動接点52)であることが好ましい。可動接点は、固定接点とは別体に形成される。可動接点は、固定接点に接した状態と固定接点から離れた状態とのうちいずれかの状態を取る。
【0105】
上記の構成によれば、第1導電部と第2導電部とを含む導電部材を破断する場合と比較して、第1導電部と第2導電部とを電気的に切り離すために要する力の大きさを低減できる。
【0106】
また、遮断装置1Dは、固定接点(第1固定接点31及び第2固定接点41)を複数備えることが好ましい。遮断装置1Dは、可動接点(第1可動接点51及び第2可動接点52)を複数備えることが好ましい。複数の可動接点の各々は、複数の固定接点のうち対応する固定接点に接した状態と対応する固定接点から離れた状態とのうちいずれかの状態を取る。動作ピン8Dは、電気的に切り離された複数の可動接点の各々と対応する固定接点との間に移動することが好ましい。
【0107】
上記の構成によれば、複数の固定接点(第1固定接点31及び第2固定接点41)及び複数の可動接点(第1可動接点51及び第2可動接点52)を含む電路に印加される電圧が、複数の固定接点(複数の可動接点)において分圧される。これにより、電路の遮断性能の向上を図ることができる。
【0108】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る遮断装置1Eについて、
図12、13を用いて説明する。実施形態2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0109】
本実施形態の遮断装置1Eは、実施形態2の遮断装置1Dと同様に、第1固定端子3、第2固定端子4及び可動接触子5を備えている。ガス発生器7Eでガスが発生すると、動作ピン8Eが可動接触子5を移動させ、可動接触子5の可動接点は固定接点から離れる。また、ガス発生器7Eでガスが発生していない場合に、電磁石装置6で発生する電磁力により、可動接点は固定接点に接触した状態と、固定接点から離れた状態とに相互に切り替わる。以下、より詳細に説明する。
【0110】
遮断装置1Eは、電磁石装置6(駆動部)と、保持部15と、シャフト16と、を備えている。
【0111】
電磁石装置6は、励磁コイル61と、コイルボビン62と、可動鉄心63と、継鉄64と、復帰ばね65と、円筒部材66と、固定鉄心67と、を備えている。
【0112】
コイルボビン62は、樹脂等の非磁性の材料から形成されている。コイルボビン62は、2つの鍔部621、622と、巻胴部623と、を有している。巻胴部623は、中空の筒状である。巻胴部623の軸方向は、前後方向に沿っている。巻胴部623には、励磁コイル61が巻かれている。励磁コイル61は、通電により磁束を発生させる。鍔部621は、巻胴部623の後端から、巻胴部623の径方向における外向きに延びている。鍔部622は、巻胴部623の前端から、巻胴部623の径方向における外向きに延びている。
【0113】
円筒部材66は、後端が開口した有底円筒状の筒部661と、筒部661の後端から径方向の外向きに延びる鍔部662と、を有している。円筒部材66は、コイルボビン62の巻胴部623内に収容されている。鍔部662は、コイルボビン62の鍔部621の後面上に配置されている。
【0114】
可動鉄心63は、磁性材料により形成されている。可動鉄心63の形状は、円柱状である。可動鉄心63は、円筒部材66の筒部661内に収容されている。本実施形態では、可動鉄心63の中心に貫通孔が形成されており、貫通孔にシャフト16が通されている。可動鉄心63とシャフト16とは、連結されている。なお、可動鉄心63は、貫通孔を備える代わりに、その後面に、シャフト16の前端が挿入されて結合される凹所を備えていてもよい。可動鉄心63は、励磁コイル61が通電されると、固定鉄心67との間に生じる磁気吸引力によって固定鉄心67に引かれて、後方へ移動する。一方、可動鉄心63は、励磁コイル61への通電が停止されると、復帰ばね65のばね力によって前方へ移動する。
【0115】
継鉄64は、磁性材料により形成されている。継鉄64は、固定鉄心67及び可動鉄心63とともに、励磁コイル61の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。継鉄64は、第1の継鉄板641と、第2の継鉄板642とを備えている。
【0116】
第1の継鉄板641の形状は、前後に沿った厚さを有する矩形板状である。第1の継鉄板641は、可動接触子5と励磁コイル61との間に配置されている。第1の継鉄板641の略中央には、挿通孔644が形成されている。挿通孔644には固定鉄心67が通されており、固定鉄心67は第1の継鉄板641に固定されている。
【0117】
第2の継鉄板642の形状は、前後に沿った厚さを有する矩形板状である。第2の継鉄板642は、励磁コイル61の前側に配置されている。第2の継鉄板642の略中央には、貫通孔645が形成されている。貫通孔645には、円筒部材66が通されている。
【0118】
固定鉄心67は、磁性材料から形成されている。固定鉄心67は、後端に鍔部671を有する円筒状である。固定鉄心67は、軸方向に貫通する貫通孔672を有している。固定鉄心67の貫通孔672に、シャフト16が通されている。固定鉄心67は、その前面の中央に、後方へ凹んだ凹所673を有している。固定鉄心67の後端は、第1の継鉄板641の略中央の挿通孔644内に配置されている。固定鉄心67の残りの部分は、円筒部材66の筒部661内に配置されている。固定鉄心67の鍔部671は、例えばろう付けによって、第1の継鉄板641に接合されている。
【0119】
復帰ばね65は、例えば、圧縮コイルばねである。復帰ばね65の中に、シャフト16が通されている。復帰ばね65は、前後軸に沿って伸縮可能に、固定鉄心67の凹所673の中に配置されている。復帰ばね65の伸縮方向の第1端(後端)は、固定鉄心67の凹所673の底面に接触しており、第2端(前端)は、可動鉄心63の後面に接触している。復帰ばね65は、所定方向(前後方向)に沿って、可動鉄心63に対して前向きの力を与える。
【0120】
保持部15は、ホルダ151と、接圧ばね152と、を備えている。
【0121】
ホルダ151は、上下の両面が開口した矩形筒状であって、可動接触子5が後板1511と前板1512との間に位置するように可動接触子5と組み合わされている。ホルダ151の前板1512の前面には、シャフト16の後端部が固定されている。ホルダ151の前板1512の後面の中央には、円柱状の突部1513が形成されている。
【0122】
接圧ばね152は、例えば圧縮コイルばねである。接圧ばね152は、ホルダ151の前板1512の後面と可動接触子5の前端との間に配置されている。接圧ばね152の後端は、可動接触子5の前面に形成された円柱状の突部に嵌まっている。接圧ばね152の前端は、ホルダ151の前板1512に形成された突部1513に嵌まっている。接圧ばね152は、可動接触子5に対して後向きの力を与える。
【0123】
シャフト16の形状は、丸棒状である。シャフト16は、所定方向(前後方向)に沿って延びている。シャフト16の前端は、電磁石装置6の可動鉄心63に結合されている。シャフト16の後端は、保持部15におけるホルダ151の前板1512に結合されている。
【0124】
シャフト16は、電磁石装置6によって、軸方向に沿って(前後方向に)動かされる。シャフト16は、電磁石装置6と保持部15とを連結する。シャフト16は、電磁石装置6における可動鉄心63の動きを、保持部15に伝達する。
【0125】
ガス発生器7Eの構成は、実施形態2のガス発生器7Dと同じである。動作ピン8Eの構成は、実施形態2の動作ピン8Dと同じである。すなわち、実施形態2と同様に、ガス発生器7Eが通電されると、動作ピン8Eは、第1固定端子3(第1導電部)と可動接触子5(第2導電部)との間に移動する。これにより、可動接触子5は、第1固定接点31及び第2固定接点41から離れた位置へ移動する。
【0126】
次に、電磁石装置6で発生する電磁力により可動接触子5が移動する場合について説明する。ここでは、ガス発生器7Eは通電されていないとする。
図13は、電磁石装置6の励磁コイル61に通電されていない場合における遮断装置1Eの状態(以下、「オフ状態」という)を示している。オフ状態では、可動鉄心63と固定鉄心67との間に磁気吸引力が生じないため、可動鉄心63は、復帰ばね65からの前向きの力によって押されて、固定鉄心67から離れた非励磁位置に位置している。このとき、シャフト16は、可動鉄心63の移動に連動して前方に移動し、シャフト16に結合された保持部15も、前方に移動している。可動接触子5は、シャフト16に結合されている保持部15(ホルダ151の後板1511)によって、前方へ移動し、かつ、後方への移動が規制されている。これにより、第1可動接点51が第1固定接点31から離れて位置し、第2可動接点52(
図10参照)が第2固定接点32(
図10参照)から離れて位置する。このオフ状態では、第1固定接点31と第2固定接点41との間は非導通となる。すなわち、第1固定接点31と第2固定接点41とが電気的に切り離される。可動鉄心63の位置は、例えば、復帰ばね65が伸びきったときの位置に保たれる。
【0127】
図12は、電磁石装置6の励磁コイル61が通電されている場合における遮断装置1Eの状態(以下、「オン状態」という)を示している。オン状態では、可動鉄心63と固定鉄心67との間に磁気吸引力が生じるため、可動鉄心63は、復帰ばね65のばね力に抗して後方に引き寄せられ、固定鉄心67に接する励磁位置に位置する。このとき、可動鉄心63の移動に連動して、シャフト16及び保持部15が後方に移動する。そのため、可動接触子5では、保持部15(ホルダ151の後板1511)による後方への移動規制が解除される。可動接触子5は、接圧ばね152のばね力によって後方に移動する。その結果、第1可動接点51が第1固定接点31に接触し、第2可動接点52(
図10参照)が第2固定接点32(
図10参照)に接触する。このオン状態では、第1固定接点31と第2固定接点41とが可動接触子5を介して導通する。
【0128】
ガス発生器7Eで発生するガスの圧力により可動接触子5が移動する場合は、電磁石装置6で発生する電磁力により可動接触子5が移動する場合と比較して、可動接触子5の移動速度が速い。そのため、ガス発生器7Eがガスを発生させると、可動接触子5は第1固定接点31及び第2固定接点41から比較的高速で離れ、第1固定接点31及び第2固定接点41の間の電路が遮断される。つまり、遮断装置1Eの状態がオフ状態とオン状態とのいずれの状態であっても、ガス発生器7Eに通電して動作ピン8Eを第1固定接点31及び第1可動接点51の間に移動させることができる。そのため、遮断装置1Eは、電路に大きな電流が流れている場合であっても、速やかに電路を遮断することが可能となる。
【0129】
なお、可動接触子5を移動させる駆動部として、電磁石装置6に代えて、作業者の手動操作に応じて可動接触子5を駆動させる機構(レバー等のアクチュエータ)を用いてもよい。
【0130】
(実施形態3のまとめ)
以上説明した実施形態3から、以下の態様が開示されている。
【0131】
遮断装置1Eは、駆動部(電磁石装置6)を更に備えることが好ましい。駆動部は、動作ピン8Eとは別体に形成される。駆動部は、可動接点(第1可動接点51及び第2可動接点52)を固定接点(第1固定接点31及び第2固定接点41)に接した状態と固定接点から離れた状態との間で移動させる。
【0132】
上記の構成によれば、動作ピン8Eを固定接点と可動接点との間に移動させていない場合に、遮断装置1Eを、固定接点及び可動接点が開極及び閉極するリレーとして用いることができる。
【0133】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る遮断装置1Fについて、
図14~16を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0134】
本実施形態の遮断装置1Fは、接点装置2Fと、動作ピン8Fと、ガス発生器7と、を備えている。遮断装置1Fは、収容部9F(ハウジング)を更に備えている。
【0135】
接点装置2Fは、導電性の固定部材3Fと、導電性の可動部材5Fと、を備えている。固定部材3Fは、固定接点31F(第1導電部)を有する。可動部材5Fは、固定接点31Fに接触する可動接点51F(第2導電部)を有する。可動部材5Fは、固定部材3Fとは別体に形成される。固定部材3F及び可動部材5Fは、電路の一部を構成する。固定部材3F及び可動部材5Fを含む電路に過電流等の異常電流が流れると、遮断装置1Fに接続された制御部がこの異常電流を検知し、ガス発生器7のピン電極72に通電して、ガス発生器7で燃料74が燃焼させられてガスが発生する。動作ピン8Fは、ガス発生器7で発生したガスの圧力により駆動される。すると、可動部材5Fが動作ピン8Fにより移動させられて、固定部材3Fから離れる。これにより、電路が遮断される。
【0136】
接点装置2Fは、第1のマスク4Fと第2のマスク6Fとを備えている。第1のマスク4Fと第2のマスク6Fとはそれぞれ、電気絶縁性を有している。接点装置2Fは、第1のマスク4Fと第2のマスク6Fとの両方を備えていることに限定されず、第2のマスク6Fのみを備えていてもよい。
【0137】
第1のマスク4F及び第2のマスク6Fは、例えば、樹脂により形成されている。第1のマスク4Fは、固定部材3Fの一部を覆っている。第2のマスク6Fは、可動部材5Fの一部を覆っている。後述するように、第1のマスク4F及び第2のマスク6Fは、固定部材3Fと可動部材5Fとの間のアークを構成する粒子の放出及び生成を制限する。アークを構成する粒子とは、例えば、電子、金属蒸気及びプラズマ粒子である。また、第2のマスク6Fは、中間部材として機能する。ここでの中間部材は、第2状態(後述する)を生じるように、ガス発生器7に駆動された動作ピン8Fに押されて可動部材5Fを移動させる部材である。また、第1のマスク4Fは、固定部材3Fに固定される。ただし、第1のマスク4Fは、固定部材3Fではなく収容部9Fに固定されてもよい。第2のマスク6Fは、可動部材5Fに固定される。
【0138】
接点装置2Fは、規制部(保持力生成部)20Fを更に備えている。規制部(保持力生成部)20Fは、固定部材3Fから離れる向きの可動部材5Fの移動を規制する。本実施形態では、規制部20Fは、可動接点51Fが固定接点31Fに接触する状態を維持する保持力を提供する。ここでの規制部20Fは、可動接点51Fが固定接点31Fに接触する向きに可動部材5Fに弾性力を与える弾性部としての接圧ばね21Fを、備えている。言い換えれば、接圧ばね21Fの弾性力は、可動接点51Fが固定接点31Fに接触する状態を維持する保持力である。第1のマスク4F、第2のマスク6F及び接圧ばね21Fは、収容部9Fに収容されている。
【0139】
固定部材3Fは、固定接点31Fと、固定片32Fと、を有している。固定接点31Fと固定片32Fとは、収容部9Fに収容されている。固定接点31Fは、例えば、銅又は銀等を材料として形成されている。固定接点31Fは、リベット状である。固定接点31Fは、円盤状の頭部311Fと、頭部311Fから突出した軸部312Fとを含む。固定片32Fは、板状である。固定接点31Fは、固定片32Fに設けられている。より詳細には、固定接点31Fは、固定片32Fにかしめにより取り付けられている。すなわち、固定片32Fに形成された貫通孔に固定接点31Fの軸部312Fが通された状態で、軸部312Fの先端が潰されることで、固定接点31Fが固定片32Fに取り付けられている。
【0140】
可動部材5Fは、固定部材3Fとは別体に形成されている。可動部材5Fは、可動接点51Fと、可動片52Fと、を有している。収容部9Fは、可動接点51Fと可動片52Fとを収容している。可動接点51Fは、例えば、銅又は銀等を材料として形成されている。可動接点51Fは、リベット状である。可動接点51Fは、半球状の頭部511Fと、頭部511Fから突出した軸部512Fとを含む。可動片52Fは、板状である。可動接点51Fは、可動片52Fに設けられている。より詳細には、可動接点51Fは、可動片52Fにかしめにより取り付けられている。すなわち、可動片52Fに形成された貫通孔に可動接点51Fの軸部512Fが通された状態で、軸部512Fの先端がかしめられることで、可動接点51Fが可動片52Fに取り付けられている。
【0141】
可動接点51Fは、固定接点31Fに接した状態と固定接点31Fから離れた状態とのうちいずれかの状態を取る。
【0142】
なお、固定接点31Fと固定部材3Fとは一体の部材として構成されてもよいし、固定接点31Fは固定部材3Fの一部で構成されてもよい。可動接点51Fと可動部材5Fとは一体の部材として構成されてもよいし、可動接点51Fは可動部材5Fの一部で構成されてもよい。
【0143】
また、固定接点31F及び可動接点51Fはそれぞれ、単数であってもよいし、複数であってもよい。固定接点31Fが複数の場合に、複数の固定接点31Fは、動作ピン8Fの進行方向に並んで設けられてもよいし、動作ピン8Fの進行方向と、固定片32Fと可動片52Fとの対向方向と、に対して直交する方向に並んで設けられてもよい。可動接点51Fが複数の場合に、複数の可動接点51Fは、動作ピン8Fの進行方向に並んで設けられてもよいし、動作ピン8Fの進行方向と、固定片32Fと可動片52Fとの対向方向と、に対して直交する方向に並んで設けられてもよい。
【0144】
ガス発生器7は、動作ピン8Fを駆動し、動作ピン8Fを固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入する。これにより、
図15、16に示すように、可動接点51Fが固定接点31Fから離れる。可動接点51Fの進行方向は、動作ピン8Fの進行方向と交差する。より詳細には、可動接点51Fの進行方向(固定接点31Fからの開離方向)は、動作ピン8Fの進行方向と直交する。
【0145】
なお、動作ピン8Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入されていない状態では、接圧ばね21Fの弾性力により、可動接点51Fが固定接点31Fに接した状態が保たれる(
図14参照)。
【0146】
第1のマスク4Fは、固定部材3Fの表面の領域のうち、可動部材5Fに対向する領域の少なくとも一部に設けられている。つまり、第1のマスク4Fは、固定部材3Fの一部を覆っている。本実施形態では、第1のマスク4Fは、第1の開口部410Fを有しており、固定接点31Fの頭部311Fは、第1の開口部410Fの内側に配置されている。また、第1のマスク4Fは、固定部材3Fに接している。
【0147】
第2のマスク6Fは、可動部材5Fの表面の領域のうち、固定部材3Fに対向する領域の少なくとも一部に設けられている。つまり、第2のマスク6Fは、可動部材5Fの一部を覆っている。本実施形態では、第2のマスク6Fは、第2の開口部610Fを有しており、可動接点51Fの頭部511Fは、第2の開口部610Fの内側に配置されている。
【0148】
図14に示すように、接点装置2Fは、端子部22Fと、編組線23Fと、を更に備えている。固定部材3Fは、端子部33Fを更に有している。
【0149】
端子部22F、33Fは、板状である。端子部22F、33Fは、収容部9Fの第1ボディ91と第2ボディ95Fとの間に通されており、収容部9Fの外部へ突出している。端子部22Fは、編組線23Fを介して可動片52Fに電気的に接続されている。端子部33Fは、固定片32Fと一体に形成されている。
【0150】
端子部33Fから固定片32F、固定接点31F、可動接点51F、可動片52F、編組線23F及び端子部22Fに至る経路は、電路の一部を構成する。可動接点51Fが固定接点31Fから離れることで、電路が遮断される。
【0151】
可動接点51Fが固定接点31Fに接して電路が構成されており、かつ電路に電流が流れているとき、固定接点31Fと可動接点51Fとの間には、電磁反発力が作用する。電磁反発力は、可動接点51Fが固定接点31Fから開離するように作用する。電路に流れる電流が大きいほど電磁反発力は大きくなる。
【0152】
上記のように、本実施形態の遮断装置1Fは、規制部20Fとしての接圧ばね21Fを備えている。規制部20Fは、可動接点51Fが固定接点31Fに接触する状態を維持する保持力を可動部材5Fに与えて、固定部材3Fから離れる向きの可動部材5Fの移動を規制する。
【0153】
接圧ばね21Fは、圧縮ばねである。より詳細には、接圧ばね21Fは、圧縮コイルばねである。接圧ばね21Fは、端子部22Fと可動片52Fとの間に配置されている。接圧ばね21Fの両端は、端子部22Fと可動片52Fとに接触している。動作ピン8Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入されていない状態では、接圧ばね21Fは、固定接点31Fと可動接点51Fとの間の電磁反発力に抗して、可動接点51Fが固定接点31Fに接した状態を保つ。固定接点31Fと可動接点51Fとの間に動作ピン8Fが挿入され、可動接点51Fが固定接点31Fから離れるように移動するとき、可動片52Fは、接圧ばね21Fを圧縮しながら端子部22Fに近づくように移動する。
【0154】
動作ピン8Fのロッド82Fは、ベース81の外底面からベース81の軸方向に突出している。ロッド82Fは、ベース81と一体に形成されている。ガス発生器7でガスが発生すると、動作ピン8Fは、ロッド82Fの突出方向に進行する。ロッド82Fは、動作ピン8Fの進行方向における先端を含む部分がテーパ状となった角柱状である。すなわち、動作ピン8Fは、進行方向における先端に傾斜面821Fを含む。また、ロッド82Fの外周面822Fは、動作ピン8Fの進行方向に沿った第1の面823Fと、動作ピン8Fの進行方向に沿っており第1の面823Fとは反対側の第2の面824Fと、を含む。
【0155】
動作ピン8Fのロッド82Fは、消弧部材820Fを有している。消弧部材820Fは、珪砂(シリカ)を含有する。消弧部材820Fは、動作ピン8Fのロッド82Fの外周面822Fの少なくとも一部を構成する。消弧部材820Fは、例えば、ロッド82Fの主構成である樹脂成型部材に埋め込まれている。なお、消弧部材820Fは、ロッド82Fの主構成である樹脂成型部材に貼り付けられていてもよい。
【0156】
図14に示すように、動作ピン8Fの傾斜面821Fは、第2のマスク6Fに接している。第2のマスク6Fにおいて、傾斜面821Fと接する面は、傾斜面601Fとなっている。傾斜面601Fは、第2のマスク6Fのうち、固定部材3F側の端に形成されている。傾斜面601Fの法線方向は、傾斜面821Fの法線方向と交差する。ガス発生器7に駆動された動作ピン8Fは、傾斜面821Fにおいて第2のマスク6Fを押しながら、第2のマスク6Fと第1のマスク4Fとの間に挿入される。動作ピン8Fが傾斜面821Fにおいて第2のマスク6Fを押すことで、第2のマスク6Fを介して可動部材5Fが押される。すなわち、このとき可動部材5Fには、第2のマスク6Fから、規制部20Fによる保持力(接圧ばね21Fによる弾性力)に抗する向きの力が作用する。そして、この力の作用により可動部材5Fが固定部材3Fから離れる向きに移動することで、固定接点31Fに接した状態の可動接点51Fは、固定接点31Fから離れた状態となる、又は可動接点51Fと固定接点31Fとの接触領域(接触面積)が小さくなる。これにより、この後にロッド82Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入されて、動作ピン8Fが可動接点51Fに衝突する場合に動作ピン8Fに作用する力を減少させることができ、動作ピン8Fの破損等の不具合が発生する可能性を低減できる。そのため、電路の遮断性能に関する信頼性が向上する。
【0157】
動作ピン8Fの移動に伴い、固定接点31Fと可動接点51Fとの間には、ロッド82Fを挿入可能な隙間が生じる(
図15参照)。ロッド82F(動作ピン8F)は、固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入され、固定接点31Fと可動接点51Fとの間に発生するアークを引き延ばす。そして、
図16に示すように、ロッド82Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入されることにより、固定接点31Fと可動接点51Fとの間の隙間の大きさは、ロッド82Fの厚さと同じ大きさ以上となる。
【0158】
要するに、本実施形態の遮断装置1Fは、第1状態と第2状態と第3状態を取り得る。
【0159】
第1状態は、動作ピン8Fがガス発生器7により駆動される前であって、規制部20Fによって可動部材5Fの移動が規制されて、可動接点51Fと固定接点31Fとが接触している状態(
図14参照)である。ここでは、規制部20Fは、保持力(接圧ばね21Fによる弾性力)によって、可動部材5Fの移動を規制している。
【0160】
ここでの第2状態は、規制部20Fの保持力に抗して、可動部材5Fが固定部材3Fから離れる向きに移動した状態(以下、「第1中間状態」ともいう)である。特に、本実施形態における第2状態(第1中間状態)は、保持力に抗する向きの力(第2のマスク6Fが可動部材5Fを押す力)が可動部材5Fに作用して、可動接点51Fと固定接点31Fとの間に隙間が生じた状態である。なお、第2状態(第1中間状態)は、可動接点51Fと固定接点31Fとの間に隙間が生じた状態に限らず、保持力に抗する向きの力が可動部材5Fに作用して、可動接点51Fと固定接点31Fとの接触領域が第1状態よりも減少した状態であってもよい。
【0161】
第3状態は、動作ピン8Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入され、動作ピン8Fにより固定接点31Fと可動接点51F間を電気的に絶縁した状態である。遮断装置1Fは、第1状態、第2状態、第3状態の順に動作する。
【0162】
このように、本実施形態の遮断装置1Fは、第1状態から第2状態に移行した後に、第3状態となる(動作ピン8Fが固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入される)。そのため、動作ピン8F(ロッド82F)が固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入される際に、第1状態において固定接点31Fと可動接点51Fとの間に動作ピン8Fが挿入される場合に比べて、動作ピン8Fの進行方向とは反対の向きに動作ピン8Fに作用する力を、減少させることができる。可動接点51Fと固定接点31Fとの間に隙間が生じている場合には、動作ピン8Fが受ける力がより小さくなる。これにより、動作ピン8Fの破損等の不具合が発生する可能性が低減し、遮断動作がより確実となり、電路の遮断性能に関する信頼性が向上する。
【0163】
また、動作ピン8F(ロッド82F)が隙間に挿入されるときには、可動接点51Fが固定接点31Fから離れて隙間が生じており、可動接点51Fと固定接点31Fとの間にアークが発生している可能性がある。アークが発生している場合には、動作ピン8Fがアークに直接挿入されることになるので、動作ピン8Fによってアークを遮断しやすくなり、遮断装置1Fの消弧性能が向上する。しかも、動作ピン8Fは、消弧作用を有する消弧部材820Fを含んでいるので、遮断装置1Fの消弧性能が更に向上する。
【0164】
なお、本実施形態の遮断装置1Fでは、動作ピン8Fは、可動部材5Fに直接接触して可動部材5Fを移動させるのではなく、第2のマスク6Fを押すことで、間接的に可動部材5Fを移動させている。言い換えれば、遮断装置1Fは、可動部材5F及び固定部材3Fとは別体の中間部材(第2のマスク6F)を備えている。中間部材は、ガス発生器7に駆動された動作ピン8Fに押されて、固定部材3Fから離れる向きに可動部材5Fを移動させる。そのため、第1状態において動作ピン8Fが可動部材5Fと固定部材3Fとの接触部分に接触して可動接点51Fと固定接点31Fとの間に隙間を空けさせる場合に比べて、第2状態では動作ピン8Fが受ける力が小さくなる。第2状態において可動接点51Fと固定接点31Fとの間に隙間が生じている場合には、動作ピン8Fが受ける力がより小さくなる。これにより、動作ピン8Fの破損等の不具合が発生する可能性が低減し、遮断動作がより確実となり、電路の遮断性能に関する信頼性が向上する。
【0165】
また、ガス発生器7により動作ピン8Fが駆動されていないとき、動作ピン8Fのロッド82Fは、第2のマスク6Fに接していなくてもよく、第2のマスク6Fから離れていてもよい。
【0166】
図14に示すように、動作ピン8Fがガス発生器7により駆動される前は、固定接点31Fは、第1の開口部410Fにおいて第1のマスク4Fの外へ露出している。動作ピン8Fがガス発生器7により駆動され、固定接点31Fと可動接点51Fとの間に挿入されると、
図16に示すように、動作ピン8Fのロッド82Fの外周面822Fは、固定接点31Fと可動接点51Fとのうち少なくとも一方に接する。本実施形態では、外周面822Fのうち、第1の面823Fが固定接点31Fに接する。また、ロッド82Fの外周面822Fのうち第1の面823Fは、第1のマスク4Fの第1の開口部410Fを覆う。つまり、固定接点31Fは、動作ピン8Fがガス発生器7により駆動された後に、ロッド82Fにより覆われる。
【0167】
なお、遮断装置1Fが第1のマスク4F及び第2のマスク6Fを備えていることは必須ではない。動作ピン8Fは、可動部材5Fに直接接して可動部材5Fを固定部材3Fから離れるように移動させてもよい。
【0168】
上述した各実施形態は、変形例も含めて、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【符号の説明】
【0169】
1、1D、1E、1F 遮断装置
2、2C 導電部材
22、22C 端子部(第1導電部、第2導電部)
31 第1固定接点(固定接点)
31F 固定接点
41 第2固定接点(固定接点)
51 第1可動接点(可動接点)
51F 可動接点
52 第2可動接点(可動接点)
6 電磁石装置(駆動部)
7、7D、7E ガス発生器
74 燃料
8、8B~8F 動作ピン
820、820C、820D、820F 消弧部材
821、821B、821C 先端部
822、822F 外周面
826 中間部
827 絶縁部