(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電圧制御システム、電圧制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20240913BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240913BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240913BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/38 170
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2020191221
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/135822(WO,A1)
【文献】特開2015-070654(JP,A)
【文献】特開2013-135576(JP,A)
【文献】特開2015-171269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアに含まれる複数の施設にそれぞれ設けられた複数の分散型電源を制御する電圧制御システムであって、
前記複数の施設のそれぞれの特性、及び前記対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記複数の施設のそれぞれの前記特性、及び前記制御ポリシー
の双方を用いて、前記複数の分散型電源のそれぞれに対する指令種別を決定する決定部と、
前記複数の分散型電源のそれぞれについて、当該分散型電源に対して前記決定部で決定された指令種別、及び当該分散型電源が設けられた施設で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源に対する電圧制御指令を生成する電圧制御部と、
前記複数の施設のそれぞれに対して、当該施設の分散型電源に対して生成された前記電圧制御指令を出力する出力部と、を備える、
電圧制御システム。
【請求項2】
前記複数の施設のそれぞれに対する前記特性は、当該施設に設けられた分散型電源の電圧制御周期、及び前記分散型電源における有効電力に関する制御情報のうち少なくとも一方を含み、
前記決定部は、前記複数の分散型電源のそれぞれに対して、当該分散型電源の前記電圧制御周期と前記受電点の電圧の変動周期との比較結果と、当該分散型電源の前記制御情報とのうち少なくとも一つを用いて、前記指令種別を決定する
請求項1に記載の電圧制御システム。
【請求項3】
前記指令種別は、前記受電点の電圧を調整するための無効電力指令を含み、
前記電圧制御部は、前記無効電力指令を基に前記複数の分散型電源のそれぞれの電圧制御指令を生成する、
請求項1又は2に記載の電圧制御システム。
【請求項4】
前記指令種別は、前記受電点の電圧を調整するための無効電力に関する無効電力指令、前記受電点の電圧を調整するための有効電力に関する有効電力指令、電圧の制御の基準となる電圧値を表す電圧指令、前記有効電力と前記無効電力との比率を表す力率指令、電圧値ごとの無効電力値を表す電圧無効電力指令、及び電圧値ごとの有効電力値を表す電圧有効電力指令のうち少なくとも1つを含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電圧制御システム。
【請求項5】
前記決定部は、所定の周期ごとに、前記複数の分散型電源のそれぞれに対して指令種別を決定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電圧制御システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記複数の施設のうち一の施設に対して前記電圧制御部が生成した前記電圧制御指令としての第1電圧制御指令が、前記一の施設に対して前記電圧制御部が前回生成した第2電圧制御指令と同一である場合には、前記第1電圧制御指令の出力を抑止する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電圧制御システム。
【請求項7】
前記制御ポリシーは、前記受電点の電圧を調整する無効電力について前記対象エリアに含まれる前記複数の施設に対する公平性を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電圧制御システム。
【請求項8】
対象エリアに含まれる複数の施設にそれぞれ設けられた複数の分散型電源を制御する電圧制御システムで用いられる電圧制御方法であって、
前記複数の施設のそれぞれの特性、及び前記対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記複数の施設のそれぞれの前記特性、及び前記制御ポリシー
の双方を用いて、前記複数の分散型電源のそれぞれに対する指令種別を決定する決定ステップと、
前記複数の分散型電源のそれぞれについて、当該分散型電源に対して前記決定ステップで決定された指令種別、及び当該分散型電源が設けられた施設で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源に対する電圧制御指令を生成する電圧制御ステップと、
前記複数の施設のそれぞれに対して、当該施設の分散型電源に対して生成された前記電圧制御指令を出力する出力ステップと、を含む、
電圧制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項8に記載の電圧制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電圧制御システム、電圧制御方法及びプログラムに関し、より詳細には複数の分散型電源を制御する電圧制御システム、電圧制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の需要家(施設)に対して電圧制御を行い、電圧逸脱を回避するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のシステムでは、複数の需要家によってグループ(対象エリア)を形成し、グループ内の分散型電源に対して電力調整量を均等に割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、グループ全体として一律に制御することになるが、複数の分散型電源をより詳細に制御したいとの要望がある。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、複数の分散型電源をより詳細に制御することができる電圧制御システム、電圧制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電圧制御システムは、対象エリアに含まれる複数の施設にそれぞれ設けられた複数の分散型電源を制御する。前記電圧制御システムは、取得部と、決定部と、電圧制御部と、出力部と、を備える。前記取得部は、前記複数の施設のそれぞれの特性、及び前記対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。前記決定部は、前記取得部が取得した前記複数の施設のそれぞれの前記特性、及び前記制御ポリシーの双方を用いて、前記複数の分散型電源のそれぞれに対する指令種別を決定する。前記電圧制御部は、前記複数の分散型電源のそれぞれについて、当該分散型電源に対して前記決定部で決定された指令種別、及び当該分散型電源が設けられた施設で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源に対する電圧制御指令を生成する。前記出力部は、前記複数の施設のそれぞれに対して、当該施設の分散型電源に対して生成された前記電圧制御指令を出力する。
【0008】
本開示の一態様に係る電圧制御方法は、対象エリアに含まれる複数の施設にそれぞれ設けられた複数の分散型電源を制御する電圧制御システムで用いられる。前記電圧制御方法は、取得ステップと、決定ステップと、電圧制御ステップと、出力ステップと、を含む。前記取得ステップは、前記複数の施設のそれぞれの特性、及び前記対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。前記決定ステップは、前記取得ステップで取得した前記複数の施設のそれぞれの前記特性、及び前記制御ポリシーの双方を用いて、前記複数の分散型電源のそれぞれに対する指令種別を決定する。前記電圧制御ステップは、前記複数の分散型電源のそれぞれについて、当該分散型電源に対して前記決定ステップで決定された指令種別、及び当該分散型電源が設けられた施設で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源に対する電圧制御指令を生成する。前記出力ステップは、前記複数の施設のそれぞれに対して、当該施設の分散型電源に対して生成された前記電圧制御指令を出力する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、前記電圧制御方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、複数の分散型電源をより詳細に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電圧制御システムとしての電圧制御装置の構成及び同上の電圧制御装置の適用例を示す図である。
【
図2】
図2は、同上の電圧制御装置の動作を説明する流れ図である。
【
図3】
図3は、同上の電圧制御装置が行う指令決定処理を説明する流れ図である。
【
図4】
図4は、同上の電圧制御装置が行う出力処理を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。以下の実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る電圧制御システム1について、
図1~
図4を用いて説明する。
【0014】
(1)概要
本実施形態に係る電圧制御システム1としての電圧制御装置10は、
図1に示すように、複数(図示例では、6つ)の施設5にそれぞれ設けられた複数の分散型電源70に対する制御を行う。電圧制御装置10は、制御システム1000に含まれる。制御システム1000は、電圧制御装置10の他、複数の施設5のそれぞれに設けられた複数の分散型電源70及び管理装置50を含む。複数の分散型電源70の各々は、電源部20、パワーコンディショナー(PCS:Power Conditioning System)30を備える。分散型電源70(電源部20)は、例えば太陽光発電設備、蓄電池、燃料電池又は電気自動車用のパワーコンディショナーである。
【0015】
複数の施設5の各々は、
図1に示すように、分散型電源70、分電盤40、管理装置50及び複数(図示例では2つ)の負荷60を備える。本実施形態の施設5は、例えば戸建ての住戸である。ここでいう「施設」は、電力系統2及び分散型電源70(の電源部20)から電力の供給を受ける戸建ての住戸、ビル等の施設を意味している。負荷60は、例えば施設5に設けられ、電力を使用する照明器具、空調機器等の電気機器である。また、
図1に示す複数の施設5は、1つの配電用変電所から供給可能な1つの制御対象エリア5Aに含まれる。電圧制御装置10は、制御対象エリア5Aに含まれる複数の施設5にそれぞれ設けられた複数の分散型電源70に対する制御を行う。また、制御対象エリア5Aは、複数のエリア5Bを含んでもよい。複数のエリア5Bの各々は、柱上変圧器3ごとに形成され、制御対象エリア5Aに含まれる複数の施設5のうち少なくとも1つの施設5を含む。
【0016】
分散型電源70の電源部20は、PCS30を介して分電盤40と電気的に接続されている。PCSは、電源部20から分電盤40へ入出力される電力を制御する。
【0017】
管理装置50は、インターネット等のネットワークNT1を介して電圧制御装置10と通信可能に構成されている。管理装置50は、分散型電源70で計測された計測データを、電圧制御装置10に、ネットワークNT1を介して送信する。具体的には、管理装置50は、有効電力、無効電力、電圧のそれぞれを電圧制御装置10に送信する。管理装置50は、計測データを基に電圧制御装置10で生成された電圧制御指令であって施設5の分散型電源70に対する制御内容を表す制御指令を、ネットワークNT1を介して電圧制御装置10から受け取る。管理装置50は、電圧制御装置10から受け取った電圧制御指令を、PCS30に出力する。管理装置50は、例えば、電圧制御指令を、PCS30に直接出力してもよいし、分電盤40を介してPCS30に出力してもよい。PCS30は、電圧制御指令を基に、分散型電源70の電源部20から供給される電力を制御する。具体的には、PCS30は、受け取った電圧制御指令を基に、入出力する有効電力、無効電力を決定し、制御する。
【0018】
電圧制御装置10は、複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御対象エリア5Aに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。電圧制御装置10は、複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定する。電圧制御装置10は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、当該分散型電源70に対して決定された指令種別、及び当該分散型電源70が設けられた施設5の受電点で計測された計測データに基づき、当該分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御装置10は、複数の施設5のそれぞれに対して、当該施設5の分散型電源70に対して生成された電圧制御指令を出力する。
【0019】
施設5の特性は、施設5に設けられた分散型電源70の電圧制御周期と分散型電源70における有効電力に関する制御情報とのうち少なくとも一方を含む。電圧制御周期とは、有効電力、無効電力の入出力を制御する周期である。また、制御情報は、無効電力を調整する機能の有無を表す情報である。
【0020】
制御ポリシーとは、無効電力又は有効電力について制御対象エリア5Aに含まれる複数の施設5に対する公平性に係る情報を含む。例えば、制御ポリシーは、制御対象エリア5Aにおいて、無効電力に関して公平性を重視するか否かを表す情報である。
【0021】
(2)構成
ここでは、電圧制御システム1としての電圧制御装置10の構成について説明する。
【0022】
電圧制御装置10は、
図1に示すように、通信部11、記憶部12及び制御部13を備える。
【0023】
電圧制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有している。CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、制御部13の機能を実現する。プログラムは、ここではインターネット等の電気通信回線を通じて、あるいはメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されるが、コンピュータのメモリに予め記録されていてもよい。
【0024】
通信部11は、管理装置50と通信するための通信インタフェースである。通信部11は、ネットワークNT1に接続されることで、管理装置50との通信を可能にする。
【0025】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から選択されるデバイスを有している。
【0026】
記憶部12は、管理装置50から受け取ったデータを施設ごと、かつデータの種別ごとに時系列に記憶する。
【0027】
制御部13は、
図1に示すように、取得部101、決定部102、電圧制御部103及び出力部104を有している。
【0028】
取得部101は、複数の分散型電源70のそれぞれの特性、及び制御対象エリア5Aに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。具体的には、取得部101は、複数の分散型電源70のそれぞれの特性を、複数の分散型電源70のそれぞれから通信部11を介して取得する。取得部101は、制御ポリシーを、電圧制御装置10のオペレータの操作により取得する。なお、取得部101は、複数の分散型電源70のそれぞれの特性を、電圧制御装置10のオペレータの操作により取得してもよい。
【0029】
さらに、取得部101は、複数の施設5のそれぞれの受電点で計測された電圧の計測データを取得する。取得部101は、分散型電源70が入出力する有効電力、無効電力の計測データを取得する。
【0030】
決定部102は、複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定する。本実施形態では、決定部102は、複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御ポリシーの双方を用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定する。具体的には、決定部102は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、当該分散型電源70の電圧制御周期と分散型電源70が計測した電圧の変動周期との比較結果と、及び当該分散型電源70の制御情報とのうち少なくとも一つを用いて、指令種別を決定する。ここで、変動周期は、所定の電圧分の増加又は減少に係る周期である。
【0031】
ここで、決定部102は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、複数種類の指令種別のうち少なくとも1つの指令種別を決定する。複数種類の指令種別は、無効電力指令(Q指令)、有効電力指令(P指令)、電圧指令(V指令)、力率指令(P-Q指令)、電圧無効電力指令(V-Q指令)及び電圧有効電力指令(V-P指令)を含む。すなわち、決定部102が複数の分散型電源70のそれぞれに対して決定する指令種別は、Q指令、P指令、V指令、P-Q指令、V-Q指令及びV-P指令のうち少なくとも1つを含む。Q指令は、電圧を調整するための無効電力の指令を表す。P指令は、電圧を調整するための有効電力の指令を表す。V指令は、電圧の制御の基準となる電圧値を表す指令を表す。例えば、V指令が電圧値の上限を表す場合、V指令は106Vといった値とを含み、分散型電源70は受電点の電圧が106Vを逸脱している場合に電圧制御が行う。P-Q指令は、有効電力と無効電力との比率を表す指令を表す。V-Q指令は、電圧値ごとの無効電力値を表す指令を表す。V-P指令は、電圧値ごとの有効電力値を表す指令を表す。
【0032】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のそれぞれについて、当該分散型電源70に対して決定された指令種別、及び当該分散型電源70が設けられた施設5で計測された計測データに基づき、当該分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。
【0033】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてQ指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、目的関数である数1及び制約式である数2を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。数1及び数2はP指令/Q指令を求める最適化問題であり、Q指令のみを算出する場合、ΔPi=0となる。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてP指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、数1及び数2を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。P指令のみを算出する場合、ΔQi=0となる。
【0034】
【0035】
【0036】
ここで、nは分散型電源70の個数を表す。ΔQiは、識別子iの分散型電源70が入出力すべき無効電力の変化分を表す。ΔPiは、識別子iの分散型電源70が入出力すべき有効電力の変化分を表す。αhiは、配電系統のインピーダンス値等から決定される制御感度を表す係数(dVh/dQi)である。βhiは、配電系統のインピーダンス値等から決定される制御感度を表す係数(dVh/dPi)である。ΔVhは、分散型電源70における電圧制御量を表す。また、hは、制御対象の分散型電源70を表す識別子である。ω1、ω2は、重み付け係数である。ΔQi及びΔPiの双方を最小化する場合には、ω1、ω2は、双方とも0.5となる。電圧制御部103は、数1及び数2を用いた最適化問題により、無効電力値の変化分(ΔQ)及び有効電力値の変化分(ΔP)を算出する。
【0037】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、ΔQi又はΔPiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。
【0038】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてP-Q指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、数3を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。なお、力率は固定値(例えば、0.85)としてもよい。
【0039】
【0040】
ここで、電圧制御装置10から電圧制御指令を受信した分散型電源70は、無効電力を調整する場合、(Q+ΔQ)/P=1-sqrt(1-力率2)/力率で入出力すべき無効電力を決定し、入出力する。一方で、有効電力を調整する場合、Q/(P+ΔP)=1-sqrt(1-力率2)/力率で入出力すべき有効電力を決定し、入出力する。sqrt関数は、平方根を求める関数である。
【0041】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV-Q指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、係数αhiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV-P指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、係数βhiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。
【0042】
出力部104は、複数の施設5のそれぞれに対して、当該施設5の分散型電源70に対して生成された電圧制御指令を、通信部11を介して出力する。出力部104は、複数の施設5のうち一の施設5に対して電圧制御部103が生成した電圧制御指令(第1電圧制御指令)が、一の施設5に対して電圧制御部103が前回生成した第2電圧制御指令と同一である場合には、第1電圧制御指令の出力を抑止する。
【0043】
(3)動作
(3.1)電圧制御装置の動作
ここでは、電圧制御装置10の動作について、
図2を用いて説明する。
【0044】
取得部101は、複数の分散型電源70のそれぞれの特性、及び制御対象エリア5Aに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する(ステップS1)。具体的には、取得部101は、複数の分散型電源70のそれぞれの特性を、複数の分散型電源70のそれぞれから通信部11を介して取得する。取得部101は、制御ポリシーを、電圧制御装置10のオペレータの操作により取得する。
【0045】
決定部102は、指令決定処理を行う(ステップS2)。決定部102は、指令決定処理において、複数の分散型電源70のそれぞれの特性、及び制御ポリシーを用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定する。具体的には、決定部102は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、Q指令、P指令、V指令、P-Q指令、V-Q指令及びV-P指令のうち少なくとも1つを含む指令種別を決定する。
【0046】
取得部101は、複数の施設5のそれぞれの受電点で計測された電圧の計測データを取得する(ステップS3)。
【0047】
電圧制御部103は、複数の分散型電源70のそれぞれについて、当該分散型電源70に対して決定された指令種別、及び当該分散型電源70が設けられた施設5で計測された計測データに基づき、当該分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する(ステップS4)。具体的には、電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてQ指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、数1及び数2を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてP指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、数1及び数2を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ及びΔQiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてP-Q指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ及び上述した数3を用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV-Q指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、係数αhiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のうち一の分散型電源70に対して決定部102が指令種別としてV-P指令を決定した場合には、当該一の分散型電源70が設けられた施設5の計測データ、係数βhiを用いて、当該一の分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。
【0048】
出力部104は、出力処理を行う(ステップS5)。複数の施設5のそれぞれに対して、当該施設5の分散型電源70に対して生成された電圧制御指令を出力する。出力部104による出力処理が終了すると、処理は、ステップS3に戻る。
【0049】
(3.2)指令決定処理
ここでは、決定部102が行う指令決定処理について
図3を用いて説明する。
【0050】
決定部102は、複数の分散型電源70のうち、指令決定の対象として未選択である一の分散型電源70(以下、「対象分散型電源」という)を選択する(ステップS101)。
【0051】
決定部102は、対象分散型電源について取得部101が取得した特性としての電圧制御周期と受電点の電圧の変動周期とを比較する(ステップS102)。具体的には、決定部102は、対象分散型電源の電圧制御周期が変動周期よりも小さいか否かを判断する。
【0052】
対象分散型電源に対する電圧制御周期が変動周期よりも小さいと判断する場合(ステップS102における「Yes」)、決定部102は、対象分散型電源に対応する制御情報を用いて、対象分散型電源に対して有効電力のみ制御可能であるか否かを判断する(ステップS103)。ここで、「対象分散型電源に対して有効電力のみ制御可能」とは、対象分散型電源が備えるPCS30が有効電力制御のみ可能であることを意味する。
【0053】
対象分散型電源に対して有効電力のみ制御可能であると判断する場合(ステップS103における「Yes」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてP指令を決定する(ステップS104)。対象分散型電源に対して有効電力及び無効電力の双方の制御可能であると判断する場合(ステップS103における「No」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてP指令/Q指令を決定する(ステップS105)。
【0054】
対象分散型電源に対する電圧制御周期が変動周期よりも小さくないと判断する場合(ステップS102における「No」)、決定部102は、対象分散型電源に対応する制御情報を用いて、対象分散型電源に対して有効電力のみ制御可能であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0055】
対象分散型電源に対して有効電力のみ制御可能であると判断する場合(ステップS106における「Yes」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてV-P指令を決定する(ステップS107)。
【0056】
対象分散型電源に対して有効電力及び無効電力の双方の制御可能であると判断する場合(ステップS106における「No」)、決定部102は、取得部101が取得した制御ポリシーを用いて公平性を重視するか否かを判断する(ステップS108)。
【0057】
公平性を重視すると判断する場合(ステップS108における「Yes」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてP-Q指令を決定する(ステップS109)。
【0058】
公平性を重視しないと判断する場合(ステップS108における「No」)、決定部102は、対象分散型電源に対して高精度な制御が必要であるか否かを判断する(ステップS110)。なお、ステップS110における高精度な制御とは、電圧値ごとに無効電力を制御する、すなわち電圧値ごとの無効電力値を変更する制御を表す。
【0059】
対象分散型電源に対して高精度な制御が必要であると判断する場合(ステップS110における「Yes」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてV-Q指令を決定する(ステップS111)。対象分散型電源に対して高精度な制御が必要でないと判断する場合(ステップS110における「No」)、決定部102は、対象分散型電源に対する指令種別としてV指令を決定する(ステップS112)。
【0060】
対象分散型電源に対する指令種別を決定すると、決定部102は、複数の分散型電源70のうち指令決定の対象として未選択である分散型電源70が存在するか否かを判断する(ステップS113)。すなわち、決定部102は、複数の分散型電源70のうち指令種別を決定していない分散型電源70が存在するか否かを判断する。
【0061】
未選択である分散型電源70が存在すると決定部102が判断すると(ステップS113における「Yes」)、処理は、ステップS101に戻る。未選択である分散型電源70が存在しないと決定部102が判断すると(ステップS113における「No」)、処理は終了する。
【0062】
上述したように、電圧制御部103は、指令決定処理で決定された指令種別及び複数の施設5のそれぞれの計測データを基に、複数の施設5のそれぞれに対する電圧制御指令を定期的に生成する。例えば、電圧制御部103は、対象分散型電源に対する指令種別としてP指令/Q指令が決定された場合、まず、Q指令及びP指令を用いて対象分散型電源に対する電圧制御指令を生成する。その後、電圧制御部103は、各受電点の電圧が第1所定値まで下がる間、Q指令及びP指令を用いて対象分散型電源に対する電圧制御指令を生成する。
【0063】
(3.3)出力処理
ここでは、出力部104が行う出力処理について
図4を用いて説明する。
【0064】
出力部104は、複数の施設5のうち、電圧制御指令の出力対象として未選択である一の施設5(以下、「出力対象施設」という)を選択する(ステップS201)。
【0065】
出力部104は、出力対象施設に出力する電圧制御指令(第1電圧制御指令)は、前回出力した電圧制御指令(第2電圧制御指令)と同一であるか否を判断する(ステップS202)。
【0066】
第1電圧制御指令が第2電圧制御指令と同一でないと判断する場合(ステップS202における「No」)、出力部104は、電圧制御指令を出力対象施設に出力する(ステップS203)。
【0067】
出力部104は、第1電圧制御指令が第2電圧制御指令と同一であると判断した場合(ステップS202における「Yes」)、複数の施設5のうち電圧制御指令の出力の対象として未選択である施設5が存在するか否かを判断する(ステップS204)。または、出力部104は、ステップS203を実行した後、複数の施設5のうち電圧制御指令の出力の対象として未選択である施設5が存在するか否かを判断する(ステップS204)。すなわち、決定部102は、複数の施設5のうち電圧制御指令を出力していない施設5が存在するか否かを判断する。
【0068】
未選択である施設5が存在すると出力部104が判断すると(ステップS204における「Yes」)、処理は、ステップS201に戻る。未選択である施設5が存在しないと出力部104が判断すると(ステップS204における「No」)、処理は終了する。
【0069】
出力処理において、出力部104は、出力対象施設に出力する電圧制御指令は前回出力した電圧制御指令と同一であると判断した場合、複数の施設5のうち電圧制御指令の出力の対象として未選択である施設5が存在するか否かを判断する。すなわち、出力部104は、出力対象施設に出力する電圧制御指令が前回出力した電圧制御指令と同一である場合には、出力部104は、出力対象施設への電圧制御指令の出力を抑止する。
【0070】
(4)利点
以上説明したように、実施形態の電圧制御システム1は、対象エリア(例えば、制御対象エリア5A)に含まれる複数の施設5にそれぞれ設けられた複数の分散型電源70を制御する。電圧制御システム1は、取得部101と、決定部102と、電圧制御部103と、出力部104と、を備える。取得部101は、複数の施設5のそれぞれの特性、及び対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。決定部102は、取得部101が取得した複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対する指令種別を決定する。電圧制御部103は、複数の分散型電源70のそれぞれについて、当該分散型電源70に対して決定部102で決定された指令種別、及び当該分散型電源70が設けられた施設5で計測された電圧の計測データに基づき、当該分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。出力部104は、複数の施設5のそれぞれに対して、当該施設5の分散型電源70に対して生成された電圧制御指令を出力する。
【0071】
この構成によると、電圧制御システム1は、分散型電源70ごとに、指令種別を決定し、決定した指令種別に基づく電圧制御指令を生成する。したがって、電圧制御システム1は、複数の分散型電源70をより詳細に制御することができる。
【0072】
(5)変形例
以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0073】
(5.1)変形例1
上記実施形態において、電圧制御装置10は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定した後、変更を行わない構成としているが、この構成に限定されない。
【0074】
電圧制御装置10(の決定部102)は、所定の周期ごとに、複数の分散型電源70のそれぞれに対する指令種別を決定(変更)してもよい。
【0075】
(5.2)変形例2
上記実施形態では、決定部102は、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、個別の指令種別を決定する構成としたが、この構成に限定されない。
【0076】
変形例2の決定部102は、制御対象エリア5Aに含まれる分散型電源70全体に指令種別をQ指令とする。
【0077】
電圧制御部103は、Q指令を基に複数の分散型電源70のそれぞれの電圧制御指令を生成する。
【0078】
(5.3)変形例3
上記実施形態では、電圧制御システム1(電圧制御装置10)は、制御対象エリア5Aに含まれる複数の施設5のそれぞれに設けられた複数の分散型電源70に対して制御を行う構成としているが、この構成に限定されない。電圧制御システム1(電圧制御装置10)は、柱上変圧器3ごとに、制御してもよい。すなわち、電圧制御システム1(電圧制御装置10)は、エリア5Bごとに、当該エリア5Bに含まれる複数の分散型電源70のそれぞれに対して制御を行ってもよい。具体的には、電圧制御システム1(電圧制御装置10)は、エリア5Bごとに、当該エリア5Bに含まれる複数の分散型電源70のそれぞれに対して電圧制御指令を生成する。
【0079】
(5.4)変形例4
上記実施形態では、PCS30と、管理装置50とは、別体である構成としているが、この構成に限定されない。PCS30と管理装置50とは、一体の装置であってもよい。
【0080】
(5.5)その他の変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、電圧制御システム1と同様の機能は、電圧制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。
【0081】
一態様に係る電圧制御システム1の電圧制御方法は、制御対象エリアの属する複数の施設にそれぞれ設けられた複数の分散型電源70を制御する電圧制御システム1で用いられる。電圧制御方法は、取得ステップと、決定ステップと、電圧制御ステップと、出力ステップと、を含む。取得ステップは、複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御対象エリア5Aに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。決定ステップは、取得ステップで取得した複数の施設5のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源70のそれぞれに対して指令種別を決定する。電圧制御ステップは、複数の分散型電源70のそれぞれに対して、当該分散型電源70に対して決定ステップで決定された指令種別、及び当該分散型電源70が設けられた施設5で計測された計測データに基づき、当該分散型電源70に対する電圧制御指令を生成する。出力ステップは、複数の施設5のそれぞれに対して、当該施設5の分散型電源70に対して生成された電圧制御指令を出力する。一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムを、上述した電圧制御システム1又は電圧制御システム1の電圧制御方法として機能させるためのプログラムである。
【0082】
本開示における電圧制御システム1又は電圧制御システム1の電圧制御方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電圧制御システム1又は電圧制御システム1の電圧制御方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0083】
また、電圧制御システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは電圧制御システム1に必須の構成ではなく、電圧制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、電圧制御システム1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0084】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の電圧制御システム(1)は、対象エリア(例えば、制御対象エリア5A)に含まれる複数の施設(5)にそれぞれ設けられた複数の分散型電源(70)を制御する。電圧制御システム(1)は、取得部(101)と、決定部(102)と、電圧制御部(103)と、出力部(104)と、を備える。取得部(101)は、複数の施設(5)のそれぞれの特性、及び対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。決定部(102)は、取得部(101)が取得した複数の施設(5)のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源(70)のそれぞれに対する指令種別を決定する。電圧制御部(103)は、複数の分散型電源(70)のそれぞれについて、当該分散型電源(70)に対して決定部(102)で決定された指令種別、及び当該分散型電源(70)が設けられた施設(5)で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源(70)に対する電圧制御指令を生成する。出力部(104)は、複数の施設(5)のそれぞれに対して、当該施設(5)の分散型電源(70)に対して生成された電圧制御指令を出力する。
【0085】
この構成によると、電圧制御システム(1)は、分散型電源(70)ごとに、指令種別を決定し、決定した指令種別に基づく電圧制御指令を生成するので、複数の分散型電源(70)をより詳細に制御することができる。
【0086】
第2の態様の電圧制御システム(1)では、第1の態様において、複数の施設(5)のそれぞれに対する特性は、当該施設(5)に設けられた分散型電源(70)の電圧制御周期、及び分散型電源(70)における有効電力に関する制御情報のうち少なくとも一方を含む。決定部(102)は、複数の分散型電源(70)のそれぞれに対して、当該分散型電源(70)の電圧制御周期と受電点の電圧の変動周期との比較結果と、当該分散型電源(70)の制御情報とのうち少なくとも一つを用いて、指令種別を決定する。
【0087】
この構成によると、複数の分散型電源(70)のそれぞれについて、分散型電源(70)ごとの電圧制御周期と受電点の電圧の変動周期との比較結果、及び分散型電源(70)ごとの制御情報のうち少なくとも一つを用いて、指令種別を決定する。したがって、電圧制御システム(1)は、複数の分散型電源(70)をより詳細に制御することができる。
【0088】
第3の態様の電圧制御システム(1)では、第1又は第2の態様において、指令種別は、受電点の電圧を調整するための無効電力指令を含む。電圧制御部(103)は、無効電力指令を基に複数の分散型電源(70)のそれぞれの電圧制御指令を生成する。
【0089】
この構成によると、無効電力指令を基に複数の分散型電源(70)のそれぞれの電圧制御指令を生成することができる。
【0090】
第4の態様の電圧制御システム(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、指令種別は、無効電力指令、有効電力指令、電圧指令、力率指令、電圧無効電力指令、及び電圧有効電力指令のうち少なくとも1つを含む。無効電力指令は、受電点の電圧を調整するための無効電力に関する指令である。有効電力指令は、受電点の電圧を調整するための有効電力に関する指令である。電圧指令は、電圧の制御の基準となる電圧値を表す指令である。力率指令は、有効電力と前記無効電力との比率を表す指令である。電圧無効電力指令は、電圧値ごとの無効電力値を表す指令である。電圧有効電力指令は、電圧値ごとの有効電力値を表す指令である。
【0091】
この構成によると、無効電力指令、有効電力指令、電圧指令、力率指令、電圧無効電力指令、及び電圧有効電力指令のうち少なくとも1つに基づいて電圧制御指令を生成するので、複数の分散型電源(70)をより詳細に制御することができる。
【0092】
第5の態様の電圧制御システム(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、決定部(102)は、所定の周期ごとに、前記複数の分散型電源のそれぞれに対して指令種別を決定する。
【0093】
この構成によると、前記複数の分散型電源(70)のそれぞれに対する指令種別を定期的に更新することができる。
【0094】
第6の態様の電圧制御システム(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、出力部(104)は、複数の施設(5)のうち一の施設(5)に対して電圧制御部(103)が生成した電圧制御指令としての第1電圧制御指令が、一の施設(5)に対して電圧制御部(103)が前回生成した第2電圧制御指令と同一である場合には、第1電圧制御指令の出力を抑止する。
【0095】
この構成によると、一の施設(5)に対して電圧制御部(103)が生成した電圧制御指令としての第1電圧制御指令が、一の施設(5)に対して電圧制御部(103)が前回生成した第2電圧制御指令と同一である場合には、第1電圧制御指令の出力を抑止する。したがって、電圧制御システム(1)は、電圧制御指定を出力する際に、通信トラフィックを軽減することができる。
【0096】
第7の態様の電圧制御システム(1)では、第1~第6のいずれかの態様において、制御ポリシーは、受電点の電圧を調整する無効電力について対象エリアに含まれる複数の施設(5)に対する公平性を含む。
【0097】
この構成によると、無効電力の出力について複数の施設(5)での公平性を保つことができる。
【0098】
第8の態様の電圧制御方法は、対象エリア(例えば、制御対象エリア5A)に含まれる複数の施設(5)にそれぞれ設けられた複数の分散型電源(70)を制御する電圧制御システムで(1)用いられる。電圧制御方法は、取得ステップと、決定ステップと、電圧制御ステップと、出力ステップと、を含む。取得ステップは、複数の施設(5)のそれぞれの特性、及び対象エリアに対する配電事業者の制御ポリシーを取得する。決定ステップは、取得ステップで取得した複数の施設(5)のそれぞれの特性、及び制御ポリシーのうち少なくとも1つを用いて、複数の分散型電源(70)のそれぞれに対して指令種別を決定する。電圧制御ステップは、複数の分散型電源(70)のそれぞれについて、当該分散型電源(70)に対して決定ステップで決定された指令種別、及び当該分散型電源(70)が設けられた施設(5)で計測された受電点の電圧の計測データに基づき、当該分散型電源(70)に対する電圧制御指令を生成する。出力ステップは、複数の施設(5)のそれぞれに対して、当該施設(5)の分散型電源(70)に対して生成された電圧制御指令を出力する。
【0099】
この電圧制御方法によると、分散型電源(70)ごとに、指令種別を決定し、決定した指令種別に基づく電圧制御指令を生成するので、複数の分散型電源(70)をより詳細に制御することができる。
【0100】
第9の態様のプログラムは、コンピュータに、第8の態様の電圧制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0101】
このプログラムによると、分散型電源(70)ごとに、指令種別を決定し、決定した指令種別に基づく電圧制御指令を生成するので、複数の分散型電源(70)をより詳細に制御することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 電圧制御システム
5 施設
5A 制御対象エリア(対象エリア)
5B エリア(対象エリア)
10 電圧制御装置
70 分散型電源
101 取得部
102 決定部
103 電圧制御部
104 出力部