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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/091 20060101AFI20240913BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F16L37/091
F16L21/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117604
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015021
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-090503(JP,A)
【文献】特開2016-223544(JP,A)
【文献】特開平04-362392(JP,A)
【文献】米国特許第03995897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/091
F16L 21/08
F16L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側奥部に管体の最奥端面と当接する段付面を有する筒状の継手本体と、該継手本体の開口部にねじ締結により組付けられる筒状のキャップ部材とを備え、前記継手本体および前記キャップ部材が組付けられた状態で、前記管体が挿込まれる挿入空間が形成される管継手であって、
挿込まれた前記管体の外周面に係止して該管体の引抜きを規制するロックリングと、
前記管体の挿込み方向を基準として前記ロックリングの手前側に位置し、挿込まれた前記管体の外周面と前記挿入空間に面する周面に接触して、前記管体の最奥端面と前記段付面との隙間から漏洩した流体が前記管継手の外部へ漏洩することを抑制するシールリングと、
前記ロックリングと前記シールリングとの間に位置し、前記ロックリングに当接することで前記ロックリングの移動を規制する、前記キャップ部材とは別体であるスペーサと、を備え
前記キャップ部材は、軸心に面した内周面と、軸心方向に対する垂直面である端面とにより構成された段差を備え、前記段差に嵌まるように前記スペーサが位置することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記挿入空間に面し、前記キャップ部材の前記内周面及び前記端面が含まれるスペーサ当接面を備え、
前記スペーサは、前記継手本体および前記キャップ部材の組付けの際、前記スペーサ当接面によって位置決めされる、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記継手本体と前記キャップ部材とに亘って、前記挿入空間に連通した空間を有するスペーサ配置凹部が形成されており、
前記スペーサ当接面は、前記スペーサ配置凹部が有する面である、請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記管継手における一次側、二次側の片側領域当たりで、前記シールリングが複数設けられ、
複数の前記シールリングを収容する一つのシールリング収容凹部と、
前記シールリング収容凹部に収容され、複数の前記シールリングで軸心方向に隣り合う一方と他方との間に挟まれるバックアップリングと、を備える、請求項1~3のいずれかに記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関し、特に、挿込まれた管体の引抜きを規制するロックリングを備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管継手として、特許文献1に記載のものが提案されている。この管継手は、内側奥部に管体の最奥端面と当接する段付面を有する筒状の継手本体と、継手本体の開口部にねじ締結により組付けられる筒状のキャップ部材とを備える。この管継手では、継手本体とキャップ部材とが組付けられた状態で、管体が挿込まれる。
【0003】
また、管継手は、挿込まれた管体の最奥端面と段付面との隙間から漏洩した流体が、管継手の外部へ漏洩することを抑制するシールリングと、管体の挿込み方向でシールリングの手前側に位置し、挿込まれた管体の引抜きを規制するロックリングとを備える。
【0004】
シールリングは、例えばOリングであって、継手本体の内周面に形成されたシール収容部に装着されている。ロックリングは、キャップ部材の内周面に形成されたロックリング収容部に装着されている。ロックリングは、環状板の中心孔の周囲に形成された複数の爪を有している。
【0005】
前記構成の管継手によれば、管体の挿込み時にロックリングの爪が管体の外周面に押されて弾性的に拡径することで、管体を、その最奥端面が段付面に当接するまで挿込むことができる。管体の挿込み後に、管体に引抜き方向の力が働けば、ロックリングの爪の先端が管体の外表面に食い込み、管体が引抜かれることを規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6568405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが前記構成では、管体の挿込み時にロックリングの爪に押されることで、管体の外周面に傷が生じることがある。この傷によって、挿込み後の管体とシールリングとの間に微細な隙間ができて流体が漏洩してしまうことがあった。そして、この漏洩した流体が、継手本体とキャップ部材との隙間を通り、管継手の外部へ漏洩することがある。
【0008】
そして更に、大径の管継手に比べて小径である管継手の場合、シールリングを変形させにくいことから、管継手にシールリングを組付けることが困難であった。
【0009】
そこで本発明は、流体の外部への漏洩を抑制し得るものであって、且つ、管継手にシールリングを組付けることが容易な構造である管継手の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内側奥部に管体の最奥端面と当接する段付面を有する筒状の継手本体と、該継手本体の開口部にねじ締結により組付けられる筒状のキャップ部材とを備え、前記継手本体および前記キャップ部材が組付けられた状態で、前記管体が挿込まれる挿入空間が形成される管継手であって、挿込まれた前記管体の外周面に係止して該管体の引抜きを規制するロックリングと、前記管体の挿込み方向を基準として前記ロックリングの手前側に位置し、挿込まれた前記管体の外周面と前記挿入空間に面する周面に接触して、前記管体の最奥端面と前記段付面との隙間から漏洩した流体が前記管継手の外部へ漏洩することを抑制するシールリングと、前記ロックリングと前記シールリングとの間に位置し、前記ロックリングに当接することで前記ロックリングの移動を規制するスペーサ と、を備えたことを特徴とする管継手である。
【0011】
前記構成によると、シールリングが管体の挿込み方向を基準としてロックリングの手前側に位置する。このため、管体の挿込み時にロックリングの爪に押されることで、管体の外周面に傷が生じたとしても、この傷はシールリングよりも奥側に位置することから、シールリングに阻止されることで流体の漏洩が生じない。そして、ロックリングとシールリングとの間にスペーサが設けられるので、組付け時には継手本体またはキャップ部材に対してロックリング、スペーサ、シールリングを順次配置していけばよい。このため、シールリングを変形させずに組付けできる。
【0012】
また、前記挿入空間に面したスペーサ当接面を備え、前記スペーサは、前記継手本体および前記キャップ部材の組付けの際、前記スペーサ当接面によって位置決めされることができる。
【0013】
前記構成によると、スペーサはスペーサ当接面によって位置決めされる。このため、スペーサの組付けが容易である。そして、スペーサが位置決めされることにより、ロックリングの抜止め規制を確実にすることができ、また、スペーサがシールリングの配置されたスペースを干渉しないため、シールリングの歪を抑えることができる。
【0014】
また、前記継手本体と前記キャップ部材とに亘って、前記挿入空間に連通した空間を有するスペーサ配置凹部が形成されており、前記スペーサ当接面は、前記スペーサ配置凹部が有する面であるものとできる。
【0015】
前記構成によると、継手本体とキャップ部材とに亘って、スペーサ当接面を有するスペーサ配置凹部が形成されている。このため、継手本体およびキャップ部材が組付けられるに伴いスペーサが位置決めされる。
【0016】
また、前記管継手における一次側、二次側の片側領域当たりで、前記シールリングが複数設けられ、複数の前記シールリングを収容する一つのシールリング収容凹部と、前記シールリング収容凹部に収容され、複数の前記シールリングで軸心方向に隣り合う一方と他方との間に挟まれるバックアップリングと、を備えることができる。
【0017】
前記構成によると、一つのシールリング収容凹部に複数の前記シールリングとバックアップリングを収容することができるので、複数のシールリングの組付けが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、管体の挿込み時に管体の外周面に傷が生じたとしても、流体の漏洩が生じない。そして、シールリングを変形させずに組付けできる。よって、流体の外部への漏洩を抑制し得るものであって、且つ、管継手にシールリングを組付けることが容易な構造である管継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の一部破断側面図である。
図2】(a)は図1の部分的な拡大図、(b)は(a)の更に部分的な拡大図である。
図3】同ロックリングの単体図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る管継手1を、図面を示しつつ説明する。本実施形態に係る管継手1は、管体2A,2Bの一例である医療用ガス銅管どうし、冷媒用銅管どうし等を継ぐために好適に用いられる。なお、これら、医療用ガス、冷媒(ガス、液体の双方を含む)等は、例えば水道水の水圧に比べ、一般的に高圧であることが知られている。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る管継手1は、継手本体3と、キャップ部材4と、複数種のシールリング11,26,35と、複数のロックリング5,5とを備える。管継手1は、接続される管体2A,2Bどうしを継ぐために、管体2A,2Bの軸心方向(長手方向、図1における左右方向)に沿う方向の中心位置において、対称(左右対称)構造である一方側(図示左側)管継手部6Aおよび他方側(図示右側)管継手部6Bの一対が一体で構成されている。このため、以下の説明において、前記中心位置に対し一方側の管継手部6Aの構成の説明をもって、他方側の管継手部6Bの構成の説明を兼用する。
【0022】
なお、一体に構成された一方側の管継手部6Aおよび他方側の管継手部6Bは、左右対称構成とし一体とした継手本体3を有するが、以下の説明において、左右対称構成とし一体とした継手本体3であっても、一方側の管継手部6Aの構成の説明において継手本体3とした場合は、一方側の管継手部6Aが占める領域での継手本体3(一体である継手本体3のうち図1における左側部分)を表す。
【0023】
以下、一方側の管継手部6Aの構成を説明する。管継手部6Aは、継手本体3と、複数のロックリング5,5と、キャップ部材4と、複数種のシールリング11,26,35とを備える。継手本体3は金属製(具体的には黄銅製)であり、内部に本体側挿入空間7を有した筒状に形成されている。継手本体3は、管体2Aを挿込み始める端側(便宜上、以下、流れの上流側に対応する「一次側」と称する)である本体大径部8と、管体2Aの挿込み終える奥側(便宜上、以下、流れの下流側に対応する「二次側」と称する)である本体小径部9とを一体的に備える。本体大径部8は本体小径部9に比べて大径に形成されている。
【0024】
継手本体3の本体大径部8(一次側端部)の内部は、空間を有した開口部10とされている。本体大径部8の内周面の一部である、二次側寄りの軸心方向に沿う領域に、雌ねじが形成されている。本体大径部8の一次側端の内周面に、外側シールリングとしての大径シールリング11を外径側部分で収容するための、環状の本体側大径シール収容凹部12が形成されている。本体大径部8の一次側端面は、キャップ部材4のキャップ側第一当接面13と当接する、本体側第一当接面14である。大径シールリング11は、例えば合成ゴム製であって、継手本体3とキャップ部材4との間に介在し、挿込まれた管体2Aの最奥端面15と段付面16との隙間から漏洩した流体が管継手1の外部へ漏洩することを抑制する。
【0025】
開口部10は、キャップ部材4の二次側領域を挿入させる円柱状の空間を有する部分である。この開口部10の有する空間の二次側に、本体側挿入空間7が連通して形成されている。継手本体3の本体側挿入空間7は二次側で縮径されている。これに対応して継手本体3には、挿込まれる管体2Aの最奥端面15と当接する環状の段付面16が形成されている。段付面16は、管継手1の継手本体3の軸心方向に沿う方向の中心位置に、縮径されるよう形成された段付壁17の一方側の側面であり、軸心方向に直交する平面内に配置されている。
【0026】
継手本体3は、ロックリング収容部18を有する。ロックリング収容部18は、本体大径部8と本体小径部9との間に配置されている。ロックリング収容部18は、継手本体3における、本体側挿入空間7における開口部10側の端位置に形成されている。ロックリング収容部18は、本体側挿入空間7より大径で開口部10よりも小径に形成されている。ロックリング収容部18の径は、ロックリング5の外径に比べてわずかに大きく設定されることで、ロックリング収容部18にロックリング5が収容可能とされている。ロックリング収容部18の軸心方向に沿う長さは、複数(この場合、2個)のロックリング5,5を軸心方向に並んで収容可能に設定されている。
【0027】
ロックリング収容部18における二次側の端面は、ロックリング5が二次側へ移動することを阻止する係止面19である。この係止面19は、段付面16に対し一次側に配置され、環状に形成されている。係止面19は、軸心方向に直交する平面内に配置されている。ちなみに、ロックリング5が一次側へ移動することは、後述するスペーサ38によって阻止される。
【0028】
ここで、ロックリング5の構成について説明する。本実施形態における複数(本実施形態では管継手部6Aにおいて2個、管継手1の全体で4個)のロックリング5,5のそれぞれは同様の構成であるので、一方のロックリング5の構成の説明を他方のロックリング5の説明に兼用する。なお、複数のロックリング5,5がそれぞれ異なる構成であってもよい。
【0029】
ロックリング5は金属製である。本実施形態ではステンレス板が加工されて形成されている。図1図3(a)(b)に示すように、ロックリング5は、軸心方向に沿う環状のフランジ20と、フランジ20の端部から中心側へ折曲して形成された環状の爪保持部21と、爪保持部21の内周面に折曲して形成された複数の爪22とを備えている。
【0030】
特に、各爪22は、図3(b)に示すように、爪保持部21の内周面に、周方向に等間隔を置いて配置され、管体2Aの挿通方向(一次側から二次側へ向かう方向)に向かって傾斜するように折曲げ加工されている。爪22の縁部は、円弧状に形成されている。爪22は、その径内側の先端どうしを結ぶ仮想円C(図面上の二点鎖線)を、管体2Aの外径よりもわずかに小径とするよう形成されている。このロックリング5が、ロックリング収容部18に軸心方向で接触するよう並べて配置されている。
【0031】
ロックリング収容部18(本体側挿入空間7)と開口部10との間は、軸心方向に直交し、段付面16、係止面19と平行な環状の本体側第二当接面23とされている。本体側第二当接面23は、キャップ部材4のキャップ側第二当接面24と当接して、当接シール面の一例であるメタルタッチシール面を構成する一方側の面である。このため、本体側第二当接面23は、平滑面に加工されている。本体側第二当接面23は、雌ねじに対し二次側で、且つ径方向内方に配置されている。
【0032】
次に、キャップ部材4の構成を説明する。キャップ部材4は、継手本体3の開口部10に、ねじ締結により組付けられる。キャップ部材4は金属製である。キャップ部材4は、内部をキャップ側挿入空間25とした筒状に形成されている。キャップ側挿入空間25は、継手本体3にキャップ部材4を組付けた状態で本体側挿入空間7に連通する。キャップ部材4は、補助シールリング26を装着する補助シール収容部27を有する縮径部28と、縮径部28の二次側に一体的に形成されたキャップ大径部29と、キャップ大径部29の二次側に一体的に形成されたキャップ小径部30とを備える。
【0033】
縮径部28の外周面は、二次側から一次側へ向けて縮径されていることで円錐状に形成されている。縮径部28の内周面に、補助シールリング26を装着する補助シール収容部27が形成されている。補助シールリング26は、例えば合成ゴム製であって、管体2Aの外周面に接触して、管体2Aのうち、管継手1の外部においてその外周面に発生する結露を、管継手1の内部に浸入させないよう補助する。
【0034】
キャップ大径部29は、レンチ等の工具で把持される部分であり、キャップ部材4は、キャップ大径部29を工具で把持して回転させられることで、継手本体3に螺着される。
【0035】
キャップ小径部30は、キャップ大径部29に比べて小径に形成されている。キャップ大径部29とキャップ小径部30とは、キャップ側第一当接面13を介して一体的に形成されている。キャップ側第一当接面13は、軸心方向に直交する平面内にあって環状に形成されている。キャップ小径部30の外周面の一次側端寄り、すなわちキャップ側第一当接面13寄りに、大径シールリング11を内径側部分で収容するための、環状のキャップ側大径シール収容凹部31が形成されている。キャップ小径部30の外周面のうち、キャップ側大径シール収容凹部31に対し二次側に、開口部10の雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。
【0036】
キャップ小径部30における二次側の端面である小径部二次側端面32は、環状に形成された面である。小径部二次側端面32は、本体側第二当接面23に軸心方向で当接するキャップ側第二当接面24を備えている。
【0037】
キャップ側第二当接面24は、メタルタッチシール面を構成する他方側の面である。このため、キャップ側第二当接面24は、平滑面に加工されている。キャップ側第二当接面24は、雄ねじに対し二次側で、且つ径方向内方に配置されている。キャップ側第二当接面24の径方向外方部、径方向内方部には面取り(湾曲面)が施されている。
【0038】
キャップ部材4の内周面に、小径シールリング35,35の収容凹部(シールリング収容凹部)34が配置されている。収容凹部34は一つ形成されている。この収容凹部34に複数(本実施形態では2個)の小径シールリング35,35が装着されている。小径シールリング35,35は、例えば合成ゴム製であって、管体2Aの挿込み方向を基準としてロックリング5の手前側に位置し、挿込まれた管体2Aの外周面とキャップ側挿入空間25に面する周面(内周面)に接触して、管体2Aの最奥端面15と継手本体3における段付面16との隙間から漏洩した流体が管継手1の外部へ漏洩することを抑制する。二次側に配置されている小径シールリング35と小径部二次側端面32とは軸心方向に離間して配置されている。収容凹部34にはバックアップリング37も装着されている。このバックアップリング37は、軸心方向で隣り合う小径シールリング35,35の間に挟まれる。本実施形態では2個の小径シールリング35,35が用いられるため、用いられるバックアップリング37は1個である。
【0039】
バックアップリング37は金属製であって、周方向に一体とされたリング状である。本実施形態では径方向断面形状が台形状とされており、径方向断面形状が周方向で一定とされている。しかしこれに限定されず、周方向で一定でない形状であってもよい。バックアップリング37の外径寸法は収容凹部34の径寸法に略等しく、内径寸法はキャップ側挿入空間25の径寸法に略等しい。バックアップリング37の軸心方向における二次側端面は、軸心方向に直交する平面である垂直面とされている。バックアップリング37の軸心方向における一次側端面は、径外から径内に向かうにつれ二次側に位置する傾斜面371とされている。本実施形態では傾斜平面とされている。この傾斜面371により、図2(a)に示すように、管体2Aの挿込みに伴い圧縮される複数(2個)の小径シールリング35,35のうちバックアップリング37の一次側(図示左側)に隣接する小径シールリング35に対し、圧縮変形により生じた力を径内方向、つまり、管体2Aの軸心に向かうようにできる。小径シールリング35は、例えば、傾斜面371と管体2Aの外周面との間の空間に食い込むように変形する。この傾斜面371による前記力の向きの変換により、管体2Aと小径シールリング35との間での流体の漏れを有効に防止できる。
【0040】
本実施形態における管継手1では、上記構成の管継手部6A,6Bが対称(左右対称)として一対・一体構造として構成されている。管継手1では、継手本体3のロックリング収容部18に複数のロックリング5,5が、軸心方向に並べて装着される。キャップ部材4では、スペーサ配置凹部39(本実施形態では、スペーサ配置凹部39が継手本体3に亘っても形成されている)にスペーサ38が装着され、収容凹部34に小径シールリング35,35およびバックアップリング37が装着され、補助シール収容部27に補助シールリング26が装着され、キャップ側大径シール収容凹部31に、大径シールリング11がその内径側部分で装着される。このように継手本体3、キャップ部材4にそれぞれ各部材を装着した状態で、継手本体3の開口部10にキャップ部材4のキャップ小径部30を挿入し、雄ねじと雌ねじのねじ締結により組付ける。これにより、継手本体3とキャップ部材4とが一体化され、本体側挿入空間7とキャップ側挿入空間25とが連通して、管体2Aの挿入空間が形成される。
【0041】
スペーサ38は、ロックリング5と小径シールリング35との間に位置し、継手本体3およびキャップ部材4が組付けられて管体2Aが挿込まれた状態で、ロックリング5と小径シールリング35とに当接可能に位置する。本実施形態では径方向断面形状が長方形状とされており、径方向断面形状が周方向で一定とされている。しかしこれに限定されず、一定でない形状であってもよい。スペーサ38に当接することにより、ロックリング5の軸心方向への移動(ずれ)が規制される。したがって、管継手1への管体2Aの挿通後に、管体2Aに引抜き方向の力が働いた場合、ロックリング5における爪22の先端が、引抜かれようとする管体2Aの外表面に食い込むことで、管体2Aが引抜かれることを阻止する。この際、ロックリング5の引抜き方向への移動がスペーサ38により規制されているから、管体2Aの引抜き阻止が有効になされる。スペーサ38は金属製であって、周方向に一体とされたリング状である。
【0042】
スペーサ38を装着するため、継手本体3とキャップ部材4とに亘って、挿入空間(本体側挿入空間7、キャップ側挿入空間25)に連通した空間を有するスペーサ配置凹部39が形成されている。このため、継手本体3とキャップ部材4の組付け前では、スペーサ配置凹部39は軸心方向に開放されている。よって、このスペーサ配置凹部39の開放部分を介して、キャップ部材4に、小径シールリング35,35、バックアップリング37、スペーサ38を順次装着していくことが容易である。ただし、スペーサ配置凹部39は、継手本体3またはキャップ部材4にのみ形成されていてもよい。スペーサ配置凹部39は、ロックリング収容部18と小径シールリング35,35の収容凹部34との間に、それぞれに連通するように位置し、円柱状または円盤状の空間を有する。スペーサ配置凹部39は、ロックリング収容部18及び収容凹部34よりも大径に形成されている。
【0043】
スペーサ配置凹部39を区画する面として、周方向に湾曲した面である継手本体側内周面391及びキャップ部材側内周面392、そして、軸心方向に対する垂直面である継手本体側端面393及びキャップ部材側端面394を備える。継手本体側内周面391とキャップ部材側内周面392とは同一の径寸法に形成されていて、継手本体3およびキャップ部材4を組付けた際には、継手本体側内周面391とキャップ部材側内周面392とは軸心方向に並ぶ。継手本体側内周面391及び継手本体側端面393は継手本体3に形成されていて、キャップ部材側内周面392及びキャップ部材側端面394はキャップ部材4に形成されている。これらのスペーサ配置凹部39が有する面がスペーサ当接面391~394であり、管体2Aの挿入空間に面している。スペーサ38は、継手本体3およびキャップ部材4の組付けの際、スペーサ当接面391~394によって位置が規制されることにより、継手本体3およびキャップ部材4に対して位置決めされる。スペーサ38が位置決めされることにより、ロックリング5の抜止め規制を確実にすることができ、また、スペーサ38が小径シールリング35,35の配置されたスペースである収容凹部34を干渉しないため、小径シールリング35,35の歪を抑えることができる。ちなみに、図2(b)に拡大して示すように、組付け後の状態において、継手本体側端面393とキャップ部材側端面394との面間寸法はスペーサ38の厚み寸法よりも若干大きく設定されている(スペーサ38が配置されたスペーサ配置凹部39において、図示したような隙間が生じる)。その理由は、組付け時にスペーサ38が干渉することなく、本体側第二当接面23とキャップ側第二当接面24とを確実に当接させ、メタルタッチシール面を形成させるためである。
【0044】
スペーサ当接面391~394によるスペーサ38の位置決めのうち、継手本体側内周面391及びキャップ部材側内周面392は、組付け時における径方向の「芯出し」の役割を担っている。そして、継手本体側端面393は、管体2Aの差込みに伴うスペーサ38の二次側への移動を当接により阻止する。そして、キャップ部材側端面394は、管体2Aの引抜きに伴うスペーサ38の一次側への移動を当接により阻止する。
【0045】
本実施形態では、複数の小径シールリング35,35分がまとめて形成された収容凹部34とスペーサ配置凹部39とが軸心方向に連通して形成されている。このため、キャップ部材4における、小径シールリング35,35、バックアップリング37、スペーサ38の装着は、各部を順次キャップ部材4に差込んでいくだけで可能である。この差込み作業は、例えばキャップ部材4の軸線方向が上下を向くように、つまり、キャップ部材4を縦向きにして行う。一方、継手本体3にはロックリング5,5が差込まれる。この状態で継手本体3にキャップ部材4を組付けることで、スペーサ38とロックリング5とが軸心方向で隣り合うようにできる。
【0046】
ここで、例えば各小径シールリング35に対応した収容凹部が別々に形成されていた場合、特に小径の管継手では、各小径シールリング35を変形させにくいことから、各収容凹部に各小径シールリング35を装着することが困難であり、無理に装着しようとすると各小径シールリング35を傷つけることがあった。これに対し、本実施形態では一つの収容凹部34に小径シールリング35,35とバックアップリング37を差込んでいけば装着可能であることから、各小径シールリング35をキャップ部材4における径方向にわずかに圧縮するだけで装着できる。本実施形態では、収容凹部34の二次側端縁に面取り部40が形成されている。この面取り部40により、各小径シールリング35を傷つけることなく収容凹部34に差込むことができる。
【0047】
継手本体3の開口部10にキャップ部材4を、雄ねじと雌ねじのねじ締結により組付ける際には、キャップ大径部29を工具で把持するようにし、キャップ部材4を回転させて、継手本体3にキャップ部材4を締付ける。そうすると、大径シールリング11の外径側部分が本体側大径シール収容凹部12に収容される。
【0048】
また、大径シールリング11は、キャップ側大径シール収容凹部31の外周面および本体側大径シール収容凹部12の内周面の間で挟持されて、圧縮される。これにより、雄ねじと雌ねじの螺合部分であるねじ締結部分36に対し、軸心方向外方において本体大径部8の内周面とキャップ小径部30の外周面との隙間がシールされる。軸心方向外方とは、一方側の管継手部6Aにおいては一次側(管体2Aを流れる流体が流入する側)であり、他方側の管継手部6Aにおいては、一方側の管継手部6Aと左右対称構造であることから、二次側(管体2Aを流れる流体が流出する側)である。
【0049】
以下の作用の説明は、一方側の管継手部6Aにおいて行う。上記のように、継手本体3およびキャップ部材4を組付けて管継手1とし、管継手1のキャップ側挿入空間25から本体側挿入空間7へ(一次側から二次側へ)、管体2Aを挿込む。管体2Aをキャップ側挿入空間25へ挿込むと、管体2Aの外周面と、補助シール収容部27の外周面との間で補助シールリング26が弾性的に圧縮される。管体2Aをさらに挿込むと、管体2Aの外周面と収容凹部34,34の外周面との間で小径シールリング35,35が圧縮される。
【0050】
二次側に配置されている収容凹部34と小径部二次側端面32とは軸心方向に離間して配置されているから、管体2Aをさらに挿込むと、管体2Aの先端側部分は、キャップ小径部30における収容凹部34と小径部二次側端面32との間の内周面に案内されて、ロックリング5,5に至る。
【0051】
ロックリング5,5では、爪22が管体2Aの外周面により弾性的に径方向外方へ押されて管体2Aの挿通が許容されるから、管体2Aの最奥端面15が段付面16に当接するまで、管体2Aを挿入空間(本体側挿入空間7)に挿入させることができる。管体2Aの挿通後は、管体2Aに引抜き方向の力が働くと、爪22の先端が管体2Aの外表面に食い込んで、管体2Aが引抜かれることを阻止する。そして、ロックリング5,5の一次側への移動は、爪保持部21の一次側面にスペーサ38が当接することで阻止される。
【0052】
本実施形態の管継手1は、継手本体3およびキャップ部材4を組付けておいて、管体2Aを所定長だけ差込む操作だけで引抜きを規制できる。このような管継手1は、ワンタッチ継手とも称される。なお、他方側の管継手部6Bにも、一方側の管継手部6Aと同様に、管体2Bが挿込まれる。なお、他方側の管継手部6Bにおいても、位置関係が一方側の管継手部6Aと左右逆になるだけで、作用は一方側の管継手部6Aにおけるものと同じである。
【0053】
本実施形態における管継手1では、挿入空間に管体2Aを挿込む際に、補助シールリング26、小径シールリング35,35は、管体2Aの外周面および挿入空間の周面との間で押圧されて、管継手1における径方向に圧縮される。
【0054】
管体2Aを管継手1の挿入空間に挿込んだ後の使用状態において、流体が管体2A内に供給されて流れ、管体2Aの最奥端面15と継手本体3の段付面16との隙間から流体が漏洩する場合、管体2Aの外周面と挿入空間の周面に接触して圧縮されている補助シールリング26、小径シールリング35,35により、管体2Aの外周面と挿入空間の周面の間からの、管継手1の外部への流体の漏洩が抑制できる。
【0055】
本実施形態に係る管継手1では、ロックリング5,5に対し一次側に小径シールリング35,35が配置されている。すなわち、管継手1に管体2Aを挿込み終えた際に、管体2Aの外周面において小径シールリング35,35が接触する部分には、ロックリング5,5の爪22との接触による傷がない。このため、キャップ部材4の内側と管体2Aの外周面との隙間は、小径シールリング35,35により確実にシールされる。
【0056】
ところで、本実施形態における管継手1は、継手本体3およびキャップ部材4という別部材どうしが軸心方向で組付けられる。この際、キャップ側第一当接面13と本体側第一当接面14とが軸心方向で当接する。また、キャップ側第二当接面24と本体側第二当接面23とが軸心方向で当接する。そして、キャップ側第二当接面24および本体側第二当接面23は、当接シール面であるメタルタッチシール面を構成する。
【0057】
このため、継手本体3およびキャップ部材4の隙間は、ねじ締結部分36に対し径方向内方位置で、且つ挿入空間の径方向外方位置において、メタルタッチシール面により確実にシールされる。よって、管体2Aの最奥端面15と継手本体3の段付面16との隙間から流体が漏洩する場合でも、継手本体3およびキャップ部材4の隙間からの、管継手1の外部への流体の漏洩が抑制できる。なお、仮にメタルタッチシール面から流体が漏洩した場合であっても、大径シールリング11により漏洩が抑制されることから、十分な漏洩抑制が可能である。
【0058】
以上、本発明の実施形態について、いくつかの例を挙げて説明したが、本発明は前記各例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0059】
他の実施形態として、大径シールリング11を省略することも可能である。この場合、継手本体3には、本体側大径シール収容凹部12は形成されておらず、キャップ部材4には、キャップ側大径シール収容凹部31は形成されない。
【0060】
この構成において、例えば上記実施形態の管継手1では、キャップ側第二当接面24と本体側第二当接面23とが軸心方向で当接することでメタルタッチシール面とされ、管体2Aの最奥端面15と継手本体3の段付面16との隙間から流体が漏洩する場合でも、継手本体3およびキャップ部材4の隙間からの、管継手1の外部への流体の漏洩が抑制できる。
【0061】
上記実施形態では、管継手1は一対の管継手部6Aを一体に備えた場合を例示した。しかしながら、管継手部のうちの少なくとも一方が本発明の管継手部6Aであればよく、他方の管継手部は本発明の管継手部6Aでなくてもよい。
【0062】
上記実施形態では、当接シール面の一例として、金属材料製の部材どうしの当接面であるメタルタッチシール面を挙げた。しかしながら、当接シール面により継手本体3およびキャップ部材4の隙間が確実にシールされる構成であれば、金属材料製の部材どうしの当接面に特定されず、樹脂材料どうしの当接、樹脂材料と金属材料の当接構造とすることもできる。
【0063】
なお、補助シールリング26は必ずしも必要ではなく、結露が生じないような管体2A,2Bを接続する場合には不要である。この場合では、補助シール収容部27は不要である。また、管継手1により継がれる管体2A,2Bは金属製に限定されず、金属と樹脂の複合管体であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…管継手、2A,2B…管体、3…継手本体、4…キャップ部材、5…ロックリング、6A…管継手部、7…本体側挿入空間、10…開口部、13…キャップ側第一当接面、14…本体側第一当接面、15…最奥端面、16…段付面、18…ロックリング収容部、19…係止面、23…本体側第二当接面、24…キャップ側第二当接面、25…キャップ側挿入空間、32…小径部二次側端面、34…(シールリング)収容凹部、35…小径シールリング、36…締結部分、37…バックアップリング、38…スペーサ、39…スペーサ配置凹部、391~394…スペーサ当接面
図1
図2
図3