(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】救急車用防振架台
(51)【国際特許分類】
A61G 1/06 20060101AFI20240913BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61G1/06
B60P3/00 N
(21)【出願番号】P 2020119654
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】597033133
【氏名又は名称】株式会社赤尾
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】内尾 公治
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150131(WO,A1)
【文献】特開2013-099399(JP,A)
【文献】特開2000-126233(JP,A)
【文献】特開平11-019130(JP,A)
【文献】特開平04-371151(JP,A)
【文献】特開2010-035627(JP,A)
【文献】特開2006-075203(JP,A)
【文献】実開昭61-159922(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 7/16
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救急車の患者室の床に設置されるベース部(2)と、前記ベース部(2)に支持されてストレッチャーが載せられる載置部(3)とからなり、
前記載置部(3)は、前記ベース部(2)に対してスライド可能とされ、前記ベース部(2)と前記載置部(3)との間に緩衝機構が介在する救急車用防振架台(1)において、
前記載置部(3)
の前記ベース部(2)に対するスライド
は、救急車の患者室への設置状態で患者室の右後方寄りとなる標準位置を始点とし、その標準位置から左前方に離れた位置を終点とする往復移動であって、そのスライド方向は、前記始点と前記終点との間にわたる斜め方向とされており、
前記ベース部(2)は、救急車の患者室の床に沿う敷板(21)と、その上面に設置されるガイドユニット(22)とを備えた構成とされ、
前記ガイドユニット(22)には、前記載置部(3)の下方に位置して、低摩擦スライドを可能とするガイド体(23)が設けられ、
前記載置部(3)には、内部に斜め方向のガイドレール(33)が設けられ、
前記ガイド体(23)が前記ガイドレール(33)に案内されつつ、前記載置部(3)が前記ベース部(2)に対してスライドすることを特徴とする救急車用防振架台。
【請求項2】
前記ガイドユニット(22)には、前記載置部(3)の前部又は後部側からの操作により進退動するブレーキシュー(24)が設けられ、
前記載置部(3)には、前記ガイドレール(33)に沿うブレーキレール(34)が設けられ、
前記ブレーキシュー(24)の前記ブレーキレール(34)に対する進退に伴って、前記載置部(3)が前記ベース部(2)に対して固定され、又は、スライド可能となることを特徴とする
請求項1に記載の救急車用防振架台。
【請求項3】
前記ベース部(2)の敷板(21)は、前記載置部(3)が標準位置にある状態でその下方に位置する基板部(21a)と、前記基板部(21a)から櫛歯状に斜め方向に延びる斜路部(21b)とからなる形状とされ、
前記載置部(3)は、前記敷板(21)の上面を転動するキャスター(3a)を有し、前記キャスター(3a)は、前記敷板(21)の斜路部(21b)が延びる方向へ向けられていることを特徴とする
請求項1又は2に記載の救急車用防振架台。
【請求項4】
前記緩衝機構として、前記載置部(3)には、ストレッチャーを受ける上載部(31)とその下方の下部枠(32)の間に、前後方向に並べて複数個のばね(41)が配置され、
前記ばね(41)のばね定数は、前方に位置するものの方が後方に位置するものよりも大きくなっていることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれかに記載の救急車用防振架台。
【請求項5】
前記緩衝機構のばね(41)は、コイルばねであって、鉛直方向に対して上部が後方に、下部が前方となるように、軸線が傾けられていることを特徴とする
請求項4に記載の救急車用防振架台。
【請求項6】
前記載置部(3)が標準位置にある状態と、標準位置からずれている状態とを識別するための位置確認インジケータ(36)を備え、
前記位置確認インジケータ(36)は、テールゲートを開けた状態の救急車の後方から視認可能なように、前記載置部(3)の後部側に位置していることを特徴とする
請求項1乃至5のいずれかに記載の救急車用防振架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、救急車の患者室に装備されてストレッチャーを載せる防振架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、救急車の車内は、
図5に示すように、運転室51の後方が患者室52とされ、患者室52の内部には、搬送する患者が仰臥したストレッチャーが載せられる防振架台53、防振架台53の前端に対向する後向き1人掛けのメディカルシート54、防振架台53の左前方に位置する前向き1人掛けのサイドハイバックシート55、防振架台53の左側方に位置する横向き3人掛けのサイドベンチシート56、防振架台53の右側方に位置する各種医療機器の設備ラック57などが配置されている。
【0003】
防振架台53は、患者室52の床61の上方において、設備ラック57に寄せて設置されている。そして、救急隊員は、メディカルシート54及びサイドハイバックシート55にそれぞれ着座しており、患者への応急処置は、防振架台53の左側のサイドハイバックシート55及びサイドベンチシート56との隙間に移動して行う。また、メディカルシート54側から応急処置を行うこともある。
【0004】
このとき、患者は頭を救急車の前方へ向け、足を救急車の後方へ向けて仰臥しており、応急処置は、防振架台53の左側から行うため、患者の右側胸部に対しては手が届きやすいものの、左側胸部に対しては手が届きにくく、処置を行うことが困難な場合がある。
【0005】
その対策として、防振架台53のストレッチャーが載せられる載置部58を患者室52の幅方向にスライド可能とし、必要に応じて載置部58を左方向へスライドさせ、防振架台53の載置部58の右側と設備ラック57の拡大した隙間に救急隊員が入って、患者の左側胸部の応急処置を行えるようにしたものが特許文献1,2に記載されている。
【0006】
ところで、防振架台53にストレッチャーを搬入する際には、
図6に示すように、救急車のテールゲート62を開けた状態で、ストレッチャー10を押して防振架台53の載置部58に送り込み、これに伴い、ストレッチャー10のベッド部11から脚部12が折り畳まれるようにする。載置部58に載り上げたストレッチャー10は、ロック機構により載置部58に固定される。
【0007】
防振架台53としては、載置部58の下面側にばね59が設けられ、ばね59の下端のベース部60が救急車の患者室52の床61に固定されて、救急車の走行中に載置部58に伝わる振動を、ばね59により緩和するものが多用されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-35627号公報
【文献】特開2006-263288号公報
【文献】特開平8-47510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図5に示すように、防振架台53が載置部58を患者室52の幅方向にスライドさせる機能を有するものであっても、防振架台53の後端と救急車のテールゲート62の間隔B
2は僅かであるため、救急隊員が防振架台53の後方を回って防振架台53の右側と設備ラック57の隙間に入ることは難しく、防振架台53の前方にはメディカルシート54の着座者がいるため、防振架台53の前方を回ることもできず、患者の左側胸部の応急処置を行うには、患者を跨がなければならない場合もある。
【0010】
また、防振架台53の前端とメディカルシート54の間隔F2は比較的大きいため、メディカルシート54に着座した救急隊員が患者の頭部側から人工呼吸や聴診等を行う際には、身を乗り出すようにしなければ、患者に手が届きにくく、安定した姿勢で応急処置を行いにくい場合がある。
【0011】
そのほか、
図6に示すように、ばね59を有する緩衝機構を備えていても、救急車が走行中に路面の凸凹を通過したり、強くブレーキを掛けたりして、防振架台53の載置部58の前部が後部よりも沈んだ状態になると、患者の体が前方へずれたり、頭部が足側より低くなったりするため、患者が不快感や不安感を抱く恐れがある。
【0012】
そこで、この発明は、救急隊員が防振架台の後方を回ってストレッチャーの右側へ入ることができ、防振架台の右側や前方からの処置を容易に行えるようにするとともに、救急車の走行中に患者が抱く不快感や不安感を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明は、救急車の患者室の床に設置されるベース部と、前記ベース部に支持されてストレッチャーが載せられる載置部とからなり、
前記載置部は、前記ベース部に対してスライド可能とされ、前記ベース部と前記載置部との間に緩衝機構が介在する救急車用防振架台において、
前記載置部が前記ベース部に対してスライドする方向は、患者室の右後方寄りの標準位置と、その標準位置から左前方に離れた位置との間にわたる斜め方向としたのである。
【0014】
また、前記ベース部は、救急車の患者室の床に沿う敷板と、その上面に設置されるガイドユニットとを備えた構成とされ、
前記ガイドユニットには、前記載置部の下方に位置して、低摩擦スライドを可能とするガイド体が設けられ、
前記載置部は、内部に斜め方向のガイドレールが設けられ、
前記ガイド体が前記ガイドレールに案内されつつ、前記載置部が前記ベース部に対してスライドするものとしたのである。
【0015】
さらに、前記ガイドユニットには、前記載置部の前部又は後部側からの操作により進退動するブレーキシューが設けられ、
前記載置部には、前記ガイドレールに沿うブレーキレールが設けられ、
前記ブレーキシューの前記ブレーキレールに対する進退に伴って、前記載置部が前記ベース部に対して固定され、又は、スライド可能となるものとしたのである。
【0016】
また、前記ベース部の敷板は、前記載置部が標準位置にある状態でその下方に位置する基板部と、前記基板部から櫛歯状に斜め方向に延びる斜路部とからなる形状とされ、
前記載置部は、前記敷板の上面を転動するキャスターを有し、前記キャスターは、前記敷板の斜路部が延びる方向へ向けられているものとしたのである。
【0017】
そのほか、前記緩衝機構として、前記載置部には、ストレッチャーを受ける上載部とその下方の下部枠の間に、前後方向に並べて複数個のばねが配置され、
前記ばねのばね定数は、前方に位置するものの方が後方に位置するものよりも大きくなっているものとしたのである。
【0018】
また、前記緩衝機構のばねは、コイルばねであって、鉛直方向に対して上部が後方に、下部が前方となるように、軸線が傾けられているものとしたのである。
【0019】
さらに、前記載置部が標準位置にある状態と、標準位置からずれている状態とを識別するための位置確認インジケータを備え、
前記位置確認インジケータは、テールゲートを開けた状態の救急車の後方から視認可能なように、載置部の後部側に位置しているものとしたのである。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る救急車用防振架台では、ストレッチャーを載せる載置部がベース部に対して患者室の右後方寄りの標準位置と、その標準位置から左前方に離れた位置との間にわたる斜め方向へスライドするので、載置部を標準位置から左前方の位置へ斜め方向にスライドさせた状態にしておくと、救急隊員が載置部の後方の拡大された隙間を回って右側へ入り、患者の左側胸部の応急処置を容易に行うことができる。また、患者が左側臥位の体勢をとっている場合にも、応急処置を容易に行うことができる。
【0021】
また、載置部がその前方のメディカルシートに接近するので、救急隊員がメディカルシートから身を乗り出すことなく、安定した姿勢で人工呼吸等の処置や聴診を行うことができ、患者に対する応急処置の正確性を高めることができる。
【0022】
また、救急隊員の移動に際し、載置部のスライド機構やブレーキ機構に関係する部分が載置部及びその下方に内蔵されているので、つまづく原因にならず、敷板の斜路部が櫛歯状となっているので、敷板が著しく重くなることもなく、全体として軽量でありながら、載置部は敷板の斜路部により安定した状態でスライド自在に支持される。
【0023】
そのほか、緩衝機構のばねのばね定数が、前方に位置するものほど、後方に位置するものよりも大きくなるようにしているので、救急車が走行中に路面の凸凹を通過したり、強くブレーキを掛けたりした場合でも、載置部の前部が後部よりも沈んだ状態にならず、患者の体が前方へずれたり、頭部が足側より低くなったりする現象が防止され、患者が抱く不快感や不安感が軽減される。
【0024】
また、緩衝機構のばねの軸線を、鉛直方向に対して上部が後方に、下部が前方となるように傾けているので、載置部の緩衝ストロークを確保しつつ、上面の高さを抑制することができ、ストレッチャーの搬入出作業の負荷が軽減される。
【0025】
さらに、載置部が標準位置にあるか否かを識別する位置確認インジケータを、テールゲートを開けた救急車の後方から視認できるように備えているので、載置部が左前方へスライドした位置からストレッチャーを搬出しようとして、ストレッチャーの後側の脚部が十分に展開されず路面に着地し、患者を路面に落下させてしまう事故が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明に係る救急車用防振架台の実施形態の外観を示す左側後方斜視図
【
図2】同上の患者室での配置及び載置部のスライド方向を示す概略平面図
【
図3】同上の載置部が(3A)標準位置、(3B)斜めスライド位置にそれぞれある状態を示す平面図
【
図4】同上の載置部が(4A)沈み込んでいない状態、(4B)後部が前部よりも大きく沈み込んだ状態をそれぞれを示す左側面図
【
図5】従来の幅方向スライド機能を備えた防振架台を示す概略平面図
【
図6】同上の緩衝機構を備えた防振架台を示す概略左側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、この防振架台1は、救急車の患者室52の床61に設置されるベース部2と、ベース部2に支持されてストレッチャーが載せられる載置部3とから構成されている。載置部3は、ベース部2に対してスライド可能とされ、載置部3がベース部2に対してスライドする方向は、患者室52の右後方寄りの標準位置と、その標準位置から左前方に離れた位置との間にわたる斜め方向とされている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、ベース部2は、患者室52の床61に沿う敷板21と、その上面に設置されるガイドユニット22とを備えている。
【0030】
敷板21は、載置部3が標準位置にある状態でその下方に位置する基板部21aと、基板部21aから櫛歯状に斜め方向に延びる斜路部21bとからなる形状とされている。
【0031】
ガイドユニット22は、載置部3の下方に位置して、ベース部2に対する載置部3の低摩擦スライドを可能とするガイド体23を備えている。ガイド体23は、ローラー又は多数のボールを内蔵したブロックとされている。
【0032】
載置部3は、天板が取り付けられてストレッチャーを受ける上載部31と、その下方の下部枠32とが主要構造部材とされている。下部枠32の長さ方向に延びる左右の枠材間には、中央に斜梁32aが渡されるとともに、ガイド体23を案内する斜め方向のガイドレール33が前後に2本渡されている。
【0033】
下部枠32には、敷板21の上面を転動する複数個のキャスター3aが設けられ、キャスター3aは、敷板21の斜路部21bが延びる方向へ向けられている。
【0034】
そして、ガイド体23がガイドレール33に案内されつつ、載置部3がベース部2に対してスライドするように構成されている。
【0035】
また、ベース部2のガイドユニット22には、波状の噛合歯を有するブレーキシュー24が設けられ、載置部3には、下部枠32の左右の枠材間に、噛合歯を有するブレーキレール34がガイドレール33に並行して延びるように渡されている。
【0036】
載置部3の前端部及び後端部には、それぞれブレーキレバー35が設けられ、ブレーキシュー24は、いずれかのブレーキレバー35の操作によりブレーキレール34に対して進退動し、ブレーキレール34に向けて付勢されている。
【0037】
そして、ブレーキシュー24がブレーキレール34に噛合した状態では、載置部3がベース部2に対して固定され、ブレーキシュー24とブレーキレール34の噛合が解除された状態では、載置部3がベース部2に対してスライド可能となる。
【0038】
また、載置部3の上載部31と下部枠32の間には、揺動可能な連結部材として、前部及び後部にリンクプレート4a,4bが介在するとともに、緩衝機構として、前後方向に並べて複数個のばね41が配置されている。ばね41は、通常の圧縮コイルばねとされている。また、走行中の振動を減衰させるダンパー42も配置されている。
【0039】
ばね41のばね定数は、前方に位置するものの方が後方に位置するものよりも大きくなっている。また、個々のばね41は、鉛直方向に対して上部が後方に、下部が前方となるように、軸線が傾けられている。
【0040】
そのほか、載置部3の後部には、載置部3が標準位置にある状態で緑色に点灯し、標準位置からずれていれば赤色に点灯する位置確認インジケータ36が設けられている。位置確認インジケータ36は、ストレッチャーの後部留め具の直近に位置し、テールゲートを開けた状態の救急車の後方から視認できるようになっている。
【0041】
また、
図1に示すように、載置部3の後部には、上載部31の後端に連続して、ストレッチャーの搬入出時に昇降路となるスロープ37が揺動自在に設けられ、その後端には、ストレッチャーの搬出時の万一の落下を防止する落下防止フック38が仕様により設けられる場合がある。さらに、載置部3の前部には、ヘッドレスト39が設けられている。
【0042】
上記のような防振架台1では、
図2に示すように、載置部3がベース部2に対して設備ラック57に接近した右後方寄りの標準位置と、その標準位置から左前方に離れた位置との間にわたる斜め方向へスライドするので、載置部3の後端と救急車のテールゲート62の間隔を、載置部3が標準位置にある状態での狭い間隔B
11から、載置部3が左前方へスライドした位置での広い間隔B
12に拡大することができる。
【0043】
このため、救急隊員が載置部3の後方を回って設備ラック57との間の右側へ入り、患者の左側胸部の応急処置を容易に行うことができる。また、患者が左側臥位の体勢をとっている場合にも、応急処置を容易に行うことができる。
【0044】
また、載置部3の前端とその前方のメディカルシート54の間隔を、載置部3が標準位置にある状態での広い間隔F11から、載置部3が左前方へスライドした位置での狭い間隔F12に縮小することができる。
【0045】
このため、メディカルシート54に着座した救急隊員が身を乗り出すことなく、安定した姿勢で人工呼吸等の処置や聴診を行うことができる。
【0046】
また、救急隊員の移動に際し、
図3に示すように、載置部3のスライド機構やブレーキ機構に関係する部分が載置部3及びその下方に内蔵されているので、つまづく原因にならず、敷板21の斜路部21bも櫛歯状となっているので、敷板21が著しく重くなることもなく、全体として軽量でありながら、載置部3は敷板21の斜路部21bにより安定した状態でスライド自在に支持される。
【0047】
そのほか、緩衝機構のばね41のばね定数が、前方に位置するものほど、後方に位置するものよりも大きくなるようにしているので、救急車の走行中のブレーキ操作等に伴い、載置部3の前部が後部よりも沈んだ状態にならず、患者の体が前方へずれたり、頭部が足側より低くなったりする現象が防止され、患者が抱く不快感や不安感が軽減される。
【0048】
また、緩衝機構のばね41の軸線を、鉛直方向に対して上部が後方に、下部が前方となるように傾けているので、載置部3の緩衝ストロークを確保しつつ、上面の高さを抑制することができ、ストレッチャーの搬入出作業の負荷が軽減される。
【0049】
さらに、載置部3が標準位置にあるか否かを識別する位置確認インジケータ36を、テールゲート62を開けた救急車の後方から視認できるように備えているので、載置部3が左前方へスライドした位置からストレッチャーを搬出しようとして、ストレッチャーの後側の脚部が十分に展開されずロックが掛からない状態で路面に着地し、患者を路面に落下させてしまう事故が防止される。なお、その場合でも、落下防止フック38があれば、ストレッチャーが引っ掛かって、路面への落下が防止される。
【0050】
このように、上記防振架台1は、構造を複雑化することなく、救急車の患者室52の内部における救急隊員の行動の制約を除去することにより、応急処置の質を向上させ、搬送時の安全性や患者の安心感を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 防振架台
2 ベース部
3 載置部
3a キャスター
4a,4b リンクプレート
21 敷板
21a 基板部
21b 斜路部
22 ガイドユニット
23 ガイド体
24 ブレーキシュー
31 上載部
32 下部枠
32a 斜梁
33 ガイドレール
34 ブレーキレール
35 ブレーキレバー
36 位置確認インジケータ
37 スロープ
38 落下防止フック
39 ヘッドレスト
41 ばね
42 ダンパー
51 運転室
52 患者室
54 メディカルシート
55 サイドハイバックシート
56 サイドベンチシート
57 設備ラック
61 床
62 テールゲート