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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】シート裁断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20240913BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020142121
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037797
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(72)【発明者】
【氏名】前中 秀介
(72)【発明者】
【氏名】西川 政輝
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-192798(JP,A)
【文献】特開平06-008192(JP,A)
【文献】米国特許第06050164(US,A)
【文献】特開2001-295570(JP,A)
【文献】実開昭60-191691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材が積層された被裁断シート体を裁断するシート裁断装置において、
進退可能に設けた裁断テーブルと、
裁断刃を有する裁断ヘッドと、
被裁断シート体を被覆し、裁断前まで真空吸引するための第1の空気不透過性シートと、
裁断後に真空吸引するための第2の空気不透過性シートと、
第1 の空気不透過性シートおよび第2の空気不透過性シートが裁断テーブル上で被裁断シート体を押さえるために、シートを吸引する真空吸引機構と、
裁断ヘッドと同期して進退移動し、ゴムの付勢力で余分な第2の空気不透過性シートを巻き取ることができ、上下移動可能な高強度の軽量材料からなる第1のローラと、
裁断テーブルの上方であって、前記第1のローラより下流側に固定され、ゴムの付勢力で余分な第2の空気不透過性シートを巻き取ることができ、高強度の軽量材料からなる第2のローラと、前記第2のローラの回転をロックする回転ロック機構とを備え、
第1のローラと第2のローラは、所定の付勢力を有し、
前記回転ロック機構は、前記第1のローラの位置により前記第2のローラのロックを作動または解除し、
第1のローラは、第2のローラからの距離Xが所定の値Aよりも狭くなる(X<A)と、
第1のローラが上昇することで第1のローラと第2のローラの間の第2 の空気不透過性シートが、裁断テーブル上の被裁断シート体に載置された第1の空気不透過性シートから浮上し、前記回転ロック機構はロックを解除し、余分な第2の空気不透過性シートを第1のローラおよび第2のローラが巻き取ることによってたるみを解消することを特徴とするシート裁断装置。
【請求項2】
前記裁断テーブルは、該裁断テーブル上の中央部に上流側および下流側に移動自在であるコンベアと、前記裁断テーブル上の端部に上流側および下流側に移動自在である2つの移動キャリッジと備え、
前記裁断ヘッドは、2つの移動キャリッジの間に配設されたレール上にあるため、2つの移動キャリッジの間を移動自在、且つ、コンベアの上流側および下流側を移動自在であり、
前記第1のローラは、2つの移動キャリッジの下流側に配設することによって、前記裁断ヘッドの上流側および下流側への移動と同期することを特徴とする請求項1に記載のシート裁断装置。
【請求項3】
前記第1のローラと前記第2のローラの材料は、FRP、または、アルミ合金であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート裁断装置。
【請求項4】
前記第2のローラは、吸引ボックス、または、フレームに回転自在に固定され、移動しないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシート裁断装置。
【請求項5】
第1のローラおよび第2のローラは、略均等に第2の空気不透過性シートが巻かれた状態において付勢力がつり合うように調整されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシート裁断装置。
【請求項6】
前記第1のローラの付勢力および前記第2のローラの付勢力は、各々が内蔵する丸ゴムを予め捩じっておくことによって作り出し、第1のローラと第2のローラとにおける付勢力のつり合いは、前記丸ゴムの捩じり回数によって調整することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシート裁断装置。
【請求項7】
前記距離Xが、A≦X<B(A<B)において、第2のローラの回転をロックした状態で第2の空気不透過性シートを第1のローラが距離X=Aの位置から引っ張り出すために十分な位置となるように値Bを設定し、
前記距離Xが、A≦X<B(A<B)において、第1のローラは下降位置にあり、第2のローラは回転をロックした状態となり、
前記距離Xが、X<Aにおいて、第1のローラは上昇位置にあり、第2のローラは回転ロックを解除した状態となることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシート裁断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材の裁断装置に関する。さらに詳しくは、積層されたシート材に空気不透過性シートを被せてテーブル下からの真空吸引しながら加工するシート裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、布、紙、樹脂、ナイロン素材等からなる積層されたシート材(以後、被裁断シート体という)を裁断テーブル上で真空吸引し、裁断刃を有する裁断ヘッドをテーブルの平面に沿って水平方向(X軸方向、Y軸方向) に走行させながら、前記裁断刃の上下往復動によって所望の形状に前記被裁断シート体を裁断するシート裁断装置1が知られている。
【0003】
前記テーブルは、シート材搬入側より、搬入側テーブル16、裁断テーブル12、搬出側テーブル15で構成される。前記搬入側テーブル16上の両端部には支持枠が立設され、その上方に懸架された供給ロール8から、ビニールシート等の非通気性の空気不透過性シート11が繰り出され、前記空気不透過性シート11は裁断テーブル12に繰り出される。
【0004】
前記裁断テーブル12上には、被裁断シート体6が載置されており、その上を前記空気不透過性シート11で覆いながら、前記被裁断シート体6を裁断刃で裁断していく。前記裁断テーブル12で裁断された前記被裁断シート体6は搬出側テーブル15で回収される。前記裁断テーブル12は、コンベアで構成されており、その表面には、合成樹脂などを素材とした剛毛7が敷設されている。裁断テーブル12には通気性があり、裁断テーブル12下方から真空吸引されると、空気不透過性シート11と共にシート材は裁断テーブル上12に固定される(図5参照)。
【0005】
図5に記載のシート裁断装置1では、被裁断シート体を細かな形状に加工する際に、負圧が低下し、空気不透過性シート11が被裁断シート体6を固定できなくなって、裁断精度を悪化させる問題がある。さらに、近年、シート裁断装置の大型化が進み、被裁断シート体に使用されるスポンジ等で厚みが増すことによって裁断済みの被裁断シート体6が裁断時に膨らみ、被裁断シート体6が位置ズレを起こし、裁断精度を低下させていた。これらの問題は、裁断済み部分から空気が入ったり、裁断済み部分が大きく浮上したためである。
【0006】
特許文献1は、上記の問題を解決するために、裁断後の被裁断シート体上に別の空気不透過性シート(第2の空気不透過性シート)を被せている。別の空気不透過性シート(第2の空気不透過性シート)を供給および回収するめに、従動子ローラ(第1のローラ)と戻しローラ(第2のローラ)の両方が空気不透過性シートの押圧を行って、各々のローラが押圧を解除できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-8192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被裁断シート体を固定するために用いる負圧が低下する問題に対して、裁断後に別の空気不透過性シートを使って、被裁断シート体を押えることにした。当初は、先行技術である特許文献1に記載の技術を参考にして作製しようとした。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の技術は、裁断済み部分を押さえ込むことができているが、開示されていない部分があり、且つ、従動子ローラと戻しローラの両方を使って別の空気不透性シートを押圧および押圧解除の機構が必要となり、装置の複雑化が避けられずコストがかかるとの課題がある。
【0010】
本発明は、コストアップを抑えるため、複雑な機構を採用しないで被裁断シート体の位置ズレが抑えられるようにし、裁断精度を良好に保つことができるシート裁断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシート裁断装置は、シート材が積層された被裁断シート体を裁断するシート裁断装置において、進退可能に設けた裁断テーブルと、裁断刃を有する裁断ヘッドと、被裁断シート体を被覆し、裁断前まで真空吸引するための第1の空気不透過性シートと、裁断後に真空吸引するための第2の空気不透過性シートと、第1の空気不透過性シートおよび第2の空気不透過性シートが裁断テーブル上で被裁断シート体を押さえるために、シートを吸引する真空吸引機構と、裁断ヘッドと同期して進退移動し、ゴムの付勢力で余分な第2の空気不透過性シートを巻き取ることができ、上下移動可能な高強度の軽量材料からなる第1のローラと、裁断テーブルの上方であって、前記第1のローラより下流側に固定され、ゴムの付勢力で余分な第2の空気不透過性シートを巻き取ることができ、高強度の軽量材料からなる第2のローラと、前記第2のローラの回転をロックする回転ロック機構とを備え、第1のローラと第2のローラは、所定の付勢力を有し、前記回転ロック機構は、前記第1のローラの位置により前記第2のローラのロックを作動または解除し、第1のローラは、第2のローラからの距離Xが所定の値Aよりも狭くなる(X<A)と、第1のローラが上昇することで第1のローラおよび第2のローラの間の第2の空気不透過性シートが、裁断テーブル上の被裁断シート体に載置された第1の空気不透過性シートから浮上し、前記回転ロック機構はロックを解除し、余分な第2の空気不透過性シートを第1のローラおよび第2のローラが巻き取ることによってたるみを解消することを特徴としている。第1のローラで繰り出した第2の空気不透過性シートは、第2のローラにより、下流側で回収している。第1のローラおよび第2のローラは、外部の駆動力を使わずに第2の空気不透過性シートの巻き取りを行っている。
【0012】
本発明のシート裁断装置においては、前記裁断テーブルは、該裁断テーブル上の中央部に上流側および下流側に移動自在であるコンベアと、前記裁断テーブル上の端部に上流側および下流側に移動自在である2つの移動キャリッジと備え、前記裁断ヘッドは、2つの移動キャリッジの間に配設されたレール上にあるため、2つの移動キャリッジの間を移動自在、且つ、コンベアの上流側および下流側を移動自在であり、前記第1のローラは、2つの移動キャリッジの下流側に配設することによって、前記裁断ヘッドの上流側および下流側への移動と同期するように、構成することができる。
【0013】
本発明のシート裁断装置においては、前記第1のローラと前記第2のローラの材料は、FRP、または、アルミ合金であるように、構成することができる。また、本発明のシート裁断装置においては、前記第2のローラは、吸引ボックス、または、フレーム(例えば、裁断テーブルのフレーム、搬出側テーブルのフレーム)に回転自在に固定され、移動しないように構成することができる。
【0014】
本発明のシート裁断装置においては、第1のローラおよび第2のローラは、略均等に第2の空気不透過性シートが巻かれた状態において付勢力がつり合うように調整されているように、構成することができる。
【0015】
本発明のシート裁断装置においては、前記第1のローラの付勢力および前記第2のローラの付勢力は、各々が内蔵する丸ゴムを予め捩じっておくことによって作り出し、第1のローラと第2のローラとにおける付勢力のつり合いは、前記丸ゴムの捩じり回数によって調整するように、構成することができる。また、本発明のシート裁断装置においては、前記距離Xが、A≦X<B(A<B)において、第2のローラの回転をロックした状態で第2の空気不透過性シートを第1のローラが距離X=Aの位置から引っ張り出すために十分な位置となるように値Bを設定し、前記距離Xが、A≦X<B(A<B)において、第1のローラは下降位置にあり、第2のローラは回転をロックした状態となり、前記距離Xが、X<Aにおいて、第1のローラは上昇位置にあり、第2のローラは回転ロックを解除した状態となるように、構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2の空気不透過性シートを追加することによって、負圧が低下する問題を解消し、被裁断シート体の位置ズレがなく、裁断精度の低下を防ぐことができる。
【0017】
加えて、本発明の第1のローラおよび第2のローラによって、第2の空気不透過性シートが精度よく巻き取れるようになり、裁断精度を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のシート裁断装置の平面図である。
図2】本発明のシート裁断装置の正面図である。
図3】本発明のシート裁断装置の第1のローラと第2のローラの動作説明図である。
図4】本発明のシート裁断装置の第1のローラと第2のローラの動作説明図である。
図5】従来のシート裁断装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される符号を付して言及する場合がある。また、各図において各部材は、理解が容易なように寸法を変更して描いてあることに留意されたい。
【0020】
図1は、本発明のシート裁断装置21の平面図、図2は、本発明のシート裁断装置21の正面図であり、本実施形態である。
図5は、従来のシート裁断装置1の平面図である。なお、従来のシート裁断装置1は、第2の空気不透過性シートとそれを繰り出し、回収するローラ(第1のローラ、第2のローラ)を備えていないが、基本動作に係る内容は、本発明と共通している。
以下は、本発明の実施形態における基本動作を図1図2、および、図5に基づいて説明する。
【0021】
シート材裁断装置21は、中央部に、剛毛27がブロック状で敷設されたコンベア式の裁断テーブル32を有する。前記裁断テーブル32上には、シート材を積層した被裁断シート体26が載置される。
【0022】
前記裁断テーブル32のコンベア上流側には、搬入側テーブル36が敷設され、前記支持枠上方には、非通気性のビニール等の第1の空気不透過性シート31を繰り出す供給ロール28が、幅方向(Y軸方向)に沿って懸架されている。
【0023】
また、前記裁断テーブル32と前記搬入側テーブル36の境目に、ガイド爪30を設け、前記裁断テーブル32側端部のY軸方向に、前後方向2列の千鳥配列に配された、複数の貫通した円形孔を有する。
【0024】
前記裁断テーブル32の延反方向(以後、X軸方向という) に沿った両端上には、図示しない駆動源でX軸方向に沿って駆動される2つの移動キャリッジ23が設けられ、両移動キャリッジ23にYビーム24が懸架される。
【0025】
前記Yビーム24上にはレールが敷設され、前記レール上には裁断ヘッド22が設けられている。この裁断ヘッド22の下方にはY軸方向に移動自在となるスライダーが設けられ、前記スライダーがレールに嵌合し、図示しない駆動源により、前記裁断ヘッド22は、Y軸方向に走行可能となる。この裁断ヘッド22は裁断刃45を有している。裁断テーブル32に真空吸引された被裁断シート体26を、図示しないコンピューターシステムで予め設定されたパターンに従って、裁断ヘッド22が駆動されることで所望の形状に裁断していく。
【0026】
裁断テーブル32上で裁断された被裁断シート体26は、搬出側テーブル35を介して排出される。前記搬出側テーブル35は、表面にコンベアを有し、図示しない駆動源により前記コンベアは下流方向に駆動する。
【0027】
前記裁断テーブル32と前記搬出側テーブル35の境目には、被裁断シート体26を前記搬出側テーブル35よりスムーズに回収し易いように、裁断テーブル32側に傾斜したガイド爪34を設け、ガイド爪34の先端は、剛毛27に差し込まれている。
【0028】
図2に示すように、本発明の実施形態は、載置台の上方に吸引ボックス43、裁断テーブル等が配置される構造である。また、裁断ヘッド以降において、真空吸着を維持するために、第1の空気不透過性シート31の上に第2の空気不透過性シート42を被せている。
【0029】
供給ロール28から繰り出された第1の空気不透過性被覆シート31は、負圧発生による真空吸着を維持し、シート材が重ねられて束になっている被裁断シート体26を保護する役割を持つ。さらに、真空吸引機構によって、シート材が積層されて束になっている被裁断シート体26を上から押さえ込み、シート材の位置ズレを防ぐ作用もある。
【0030】
裁断ヘッド22が裁断刃45によって、被裁断シート体26を所望の形状に裁断した後は、第1の空気不透過性シート31も切断されて、真空吸引ができなくなるため、裁断ヘッド22の後方側に設けた第1のローラ40から第2の空気不透過性シート42を繰り出す。繰り出された第2の空気不透過性シート42を、裁断テーブル32の上方であり且つ第1のローラ40のさらに後方側に設けた第2のローラ41によって、自動的に巻き取り回収する。
第1のローラ40は、移動キャリッジ23に接続して設けているため、裁断ヘッド22と同期して動く。第1のローラ40より繰り出された第2の空気不透過性シート42は、コンベアの流れに従って第1のローラ40からの供給量が可変する。
【0031】
第1のローラ40は、裁断ヘッド22に同期して進退移動し、上下移動可能に、中空の高強度の軽量材料で作製されている。中空の内部には、ゴムが付勢された状態で配設されており、第2の空気不透過性シート42がコンベアの流れに従って下流側に繰り出された後、コンベアの逆の流れに従って上流側に戻された際に、余った第2の空気不透過性シート42を前記ゴムの付勢力によって巻き取る仕組みになっている。
【0032】
第2のローラ41は、回転ロック機構46を有し、中空の高強度の軽量材料で作製されていて、中空の内部には、ゴムが付勢した状態で配設されている。
【0033】
第1のローラ40の位置が第2のローラ41の位置に近づき、その距離Xが所定の値Aより狭くなると、第1のローラ40が、裁断テーブル32上で上昇し、第2の空気不透過性シート42が被裁断シート体26上の第1の空気不透過性シート31から浮き上がる。
【0034】
第1のローラ40に設けた付勢力は、上記の浮き上がった第2の空気不透過性シート42における余剰分を巻き取る仕組みになっている。
【0035】
なお、上記のように第2の空気不透性シート42が浮き上がると、第1のローラ40と第2のローラ41の両方が巻き取る。
【0036】
予め第1のローラ40と第2のローラ41の付勢力のつり合いを調節することによって、第1のローラ40と第2のローラ41における第2の空気不透過性シート42の分配の比率を維持することができる。
【0037】
ここでの分配の比率は、厳密なものである必要はなく、どちらか一方のローラに偏ることで第2の空気不透過性シート42が繰り出せなくなるような事態を避けることができればよく、本発明のシート裁断装置における連続動作が実現できればよい。なお、永久的な連続動作を求めるものではなく、実用レベルの連続動作が可能となればよい。
【0038】
図3図4は、第1のローラ40と第2のローラ41の動作説明図であり、第1のローラ40と第2のローラ41により、第2の空気不透過性シート42を繰り出し、巻き取る動作を説明する。
【0039】
図3(1)は、初期状態であり、被裁断シート体26を供給している。供給が進むと、第2の空気不透過性シート42は、被裁断シート体26の上方に第1の空気不透過性シート31を間に挟んで載置されている状態となる。なお、第1のローラ40と第2のローラ41における、第2の空気不透過性シート42の分配比率は予め同じぐらいにしている。
【0040】
このとき、第1のローラ40は、第2のローラ41からの距離Xが、X<Aの位置にあり、裁断テーブルから上昇しているため、第2の空気不透過性シートも上昇している。
【0041】
図3(2)は、裁断開始であり、図3(1)記載の初期状態から裁断ヘッド22が右側(上流側)へ動いたため、第1のローラ40も右側(上流側)へ移動し、第2のローラ41からの距離Xが、X=Aとなっている。距離Xが、X=Aの位置にあり、且つ、被裁断シート体26の端部が、第1のローラ40の真下まで移動したときに、第1のローラを下降させる。裁断開始後は、裁断ヘッド22が、被裁断シート体26の所定の形状に合わせて切断するために、裁断ヘッド22においてコンベア上流および下流側への動きが発生し、この動きに第1のローラ40も同期して動く。なお、距離Xが、A≦X<Bにおいて、回転ロック機構46が作動する。
【0042】
図4(3)は、裁断中であり、第2のローラ41からの距離Xが、X≧Aとなっている。このとき、裁断ヘッド22の動きに従って、第1ローラ40は、時計回りに回転しながら第2の空気不透過性シート42を繰り出したり、反時計回りに回転しながら第2の空気不透過性シート42を回収したりする。なお、第2のローラ41は、回転ロック機構46は、距離Xが、A≦X<Bにおいてロックを作動し、距離Xが、X≧Bにおいてロックを解除している。なお、距離X=Bの位置は、ロックを作動させた状態で第2の空気不透過性シート42を第1のローラ40が距離X=Aの位置から引っ張り出すために十分な位置である。
【0043】
図4(4)は、吸引搬送であり、コンベアが被裁断シート体26を左側(下流側)へ移動させることにより、裁断済みの被裁断シート体26を搬出しながら裁断する。例えば、裁断ヘッド22が左側(下流側)へ動けば、第1のローラ40も左側(下流側)へ移動する。このとき、第1のローラ40は反時計回りに回転しながら第2の空気不透過性シート42を巻き取る。さらに、距離Xが、X≧Bの時点では、第2のローラ41は、回転ロック機構46のロックが解除された状態であり、時計回りで回転しながら余った第2の空気不透過性シートを巻き取っている。なお、裁断ヘッド22は、右側(上流側)へ動かしてもよい。
【0044】
吸引搬送では、第2のローラ41からの距離Xが、X≧Aで第1のローラ40が下降位置にあり、裁断ヘッド22および裁断テーブル12の動きに追従させている。第2のローラ41の回転ロック機構の動作は、図4(3)記載の裁断中と同じであるが、第2の空気不透過性シート42を繰り出しながら回収するようにしたので、吸引搬送中においても、常に第2の空気不透過性シートのたるみを解消できる。

【0045】
被裁断シート体の排出が終わる頃には、裁断ヘッド22がさらに左側(下流側)に移動し、前記距離Xが、X<Aになる。
【0046】
被裁断シート体の排出が完全に終わると、図3(1)記載の被裁断シート体供給を開始する。このとき、前記距離Xが、X<Aの地点にあるため、第1のローラ40が上昇しており、第2の空気不透過性シート22も上昇している。
【0047】
また、第1のローラ40と第2のローラ41が、第2の空気不透過性シート42を回収し、第1のローラ40と第2のローラ41における第2の空気不透過性シート42の分配が同じぐらいになるように調整している。
【0048】
上記実施形態の、第1のローラのおける第2ローラからの距離Xの値に対する、第2のローラの回転ロック機構および第1のローラの高さ位置の例をまとめると表1の通りである。
なお、上記のローラの回転方向(時計回り、反時計回り)は、図3および図4上の方向である。また、図3図4は、動作の一例であり、実際は、裁断ヘッド22の動きとコンベアの動きとの組み合わせで様々な動作が発生する。
【0049】
【表1】
【0050】
特許文献1に記載のシート裁断装置では、第1のローラと第2のローラが等しい予荷重(付勢力に相当)をもつようにして均衡を維持している。巻き取りを繰り返すうちに、被裁断シート体が位置ズレを起こす問題が生じても、ある程度は、駆動モータによって解消できる。
【0051】
特許文献1に記載のシート裁断装置は、連続動作に対応する必要があるため、第2の空気不透過性シートの巻き数を把握した上で、バランスをとっていると思われ、設計が複雑になり、コストが増えメンテナンス性が悪くなるという課題がある。
【0052】
本発明では、ローラには、中空の高強度の軽量材を採用し、内部に配置した丸ゴムを捩じって付勢力をつくったことで、軽量でありながら大きな付勢力を実現し、上記課題を解決している。丸ゴムとは、日用品である輪ゴムを大型化したものであり、ゴム自体が太いため、強い付勢力が得られる。
【0053】
本発明では、第2のローラ41は、回転を止める回転ロック機構46を有するので、回転ロック機構46を積極的に用いて、第1のローラ40と第2のローラ41における第2の空気不透過性シート42の分配比率を調節できるようにしてもよい。
【0054】
本発明では、第2のローラ41は裁断テーブル32から離れた位置に固定されており、特許文献1に記載の技術のように裁断テーブル32の上方の被裁断シート体26上の第1の空気不透過性シート31に接する構成になっていない。つまり、本発明は、構造の簡易化を実現しており、第2のローラ41が裁断テーブル32に追従せず、独立しているため、動作安定性をもたらし、故障も起き難くなった。
【0055】
本願発明では、第1のローラ40および第2のローラ41に高強度の軽量化材料を採用することによって、ゴムを用いても必要な付勢力が得られるようになり、第1のローラと第2のローラの予荷重(付勢力)を維持し易くなった。
【0056】
さらに、第1のローラ自体を直接上下動させることにより、特許文献1に記載の傾斜面が不要となるため、当然コストで有利であるが、動作位置の微調整が可能となるため、所望の条件に適合しやすくなり、対応性においても有利である(汎用性に優れる)。
【0057】
以上のように、本実施形態のシート裁断装置によれば、第1のローラ40および第2のローラ41が第2の空気不透過性シート42を繰り出し、巻き取ることにより、被裁断シート体26の位置ズレを抑えることができ、裁断の形状精度を維持することができる。つまり、第1のローラおよび第2のローラを、簡易な機構で軽量化したことによって、軽快な動作が可能となり、その結果として裁断精度を良好に保つことができたと言える。
【0058】
加えて、特許文献1では、従動子ローラ(本発明における第1のローラに相当)と戻しローラ(本発明における第2のローラに相当)の両方が、上張りシート(本発明における第2の空気不透過性シートに相当)への押圧を行っているのに対し、本発明は、第2のローラ41の上下移動機構が不要であり、コストを低減することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0060】
変形例として、上記実施形態では、第2のローラ41は位置固定であるが、位置移動させるようにしてもよく、第1のローラと第2のローラの各付勢力の差異を利用していればよいのであって、第2ローラが固定されている場合に限定されない。
【0061】
また、第1のローラおよび第2のローラの中空の内部に配設するゴムは、所定の付勢力を得るために用いており、ゴムと同等の性能を有する弾性材料があれば、ゴムに代用して用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 シート裁断装置
2 裁断ヘッド
3 移動キャリッジ
4 Yビーム
5 レール
6 被裁断シート体
7 剛毛
8 供給ロール
9 スライダー
10 円形孔
11 空気不透過性シート
12 裁断テーブル
13 蓋材
14 ガイド爪
15 搬出側テーブル
16 搬入側テーブル
17 蓋材
18 端部
19 中央部
21 シート裁断装置
22 裁断ヘッド
23 移動キャリッジ
24 Yビーム
26 被裁断シート体
27 剛毛
28 供給ロール
30 ガイド爪
31 第1の空気不透過性シート
32 裁断テーブル
34 ガイド爪
35 搬出側テーブル
36 搬入側テーブル
40 第1のローラ
41 第2のローラ
42 第2の空気不透過性シート
43 吸引ボックス
45 裁断刃
46 回転ロック機構
図1
図2
図3
図4
図5