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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】徘徊見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20240913BHJP
【FI】
G06Q50/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020179727
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070587
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】303066965
【氏名又は名称】株式会社ミューチュアル
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】十河 和明
(72)【発明者】
【氏名】真田 明
(72)【発明者】
【氏名】金井 宣雄
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-146545(JP,A)
【文献】特開2005-042291(JP,A)
【文献】特開2003-233877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自治体又はそれに準ずる所属地域を識別する地区コードと、当該所属地域に所属し徘徊する可能性がある個人を識別する個人情報と関連付けた個人コードとを記録する見守管理サーバは、
前記個人コードごとに前記個人情報の登録を受け付ける個人情報受付手段を実行し、
カメラ機能を有するスマートフォンが、
前記個人コードを含む文字列である文字列コードと、少なくとも前記地区コード及び前記個人コードを判別可能な情報として含む前記見守管理サーバ宛のアドレスである発見通知アドレスを復号可能である二次元コードと、を記載した識別シートを読み取り、前記発見通知アドレスを復号し、前記発見通知アドレスへアクセスし、
前記見守管理サーバは、
前記発見通知アドレスへのアクセスに対して、当該個人が所属する団体に固有の地域連絡先電話番号を含む連絡依頼案内情報を含む発見ページ情報を返信するページ送信手段を実行する
徘徊者見守り方法。
【請求項2】
前記見守管理サーバは、
前記個人情報として、当該個人の関係者へ通じる連絡先アドレス情報を有し、
前記発見ページ情報が、前記連絡依頼案内情報とともに表示されるボタンを表示可能であり、前記ボタンを押下した際には前記見守管理サーバへの連絡通知送信コマンドが送信されるものであり、
前記連絡通知送信コマンドを受信したら、前記連絡先アドレス情報へ当該個人が発見された旨の情報を含む発見通知を送信する第一発見通知手段を実行する
請求項1に記載の徘徊者見守り方法。
【請求項3】
前記見守管理サーバは、
前記団体に対して発行される、当該団体に属する前記個人情報へのアクセスを許容するアカウントである団体用アカウントを有し、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスに対して、前記個人情報の少なくとも一部を返信する個人情報照会手段と、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスから、当該個人コードの連絡先アドレス情報へ当該個人の発見場所の情報を含む居場所通知を送信する第二発見通知手段と、
を実行する
請求項2に記載の徘徊者見守り方法。
【請求項4】
自治体又はそれに準ずる所属地域を識別する地区コードと、当該所属地域に所属し徘徊する可能性がある個人を識別する個人情報と関連付けた個人コードとを記録する個人情報データベースと、
自身への前記地区コード及び前記個人コードを含むアクセスに対して、当該個人が所属する団体に固有の地域連絡先電話番号を含む連絡依頼案内情報を含む発見ページ情報を返信するページ送信手段を実行する
見守管理サーバ。
【請求項5】
前記個人情報として、当該個人の関係者へ通じる連絡先アドレス情報を有し、
前記発見ページ情報が、前記連絡依頼案内情報とともに表示されるボタンを表示可能であり、前記ボタンを押下した際には前記見守管理サーバへの連絡通知送信コマンドが送信されるものであり、
前記連絡通知送信コマンドを受信したら、前記連絡先アドレス情報へ当該個人が発見された旨の情報を含む発見通知を送信する第一発見通知手段を実行する
請求項4に記載の見守管理サーバ。
【請求項6】
前記団体に対して発行される、当該団体に属する前記個人情報へのアクセスを許容するアカウントである団体用アカウントを有し、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスに対して、前記個人情報の少なくとも一部を返信する個人情報照会手段と、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスから、当該個人コードの連絡先アドレス情報へ当該個人の発見場所の情報を含む居場所通知を送信する第二発見通知手段と、
を実行する
請求項5に記載の見守管理サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、徘徊する可能性がある高齢者の見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知症などが原因で徘徊する高齢者が増加する一方で、捜索する家族のリソースは限界があり、自治体や公共団体等によるサポートもできる限りの効率化が求められている。このため、徘徊者の発見、保護を効率的に行うための方策が検討されている。
【0003】
徘徊する可能性のある高齢者に、個人名や連絡先が書かれたワッペンやバッジ、名札などを身につけさせ、発見した第三者からの連絡を待つという手段が一般的に行われている。しかし、氏名や電話番号を名札等にそのまま記載してしまうと、身代金目的での誘拐を容易にしてしまうという問題もあり、現代においてはできるだけ個人情報を直接記載しないことが望ましい。そこで、連絡先などをQRコード(登録商標)などの二次元コードにコード化して名札等に記録したり、あるいは、二次元コードには連絡先として用いる入力フォームが表示されるアドレスを記載するといった手法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、徘徊者が身に着ける個別QRコードを読み取ると、伝言板サイトのトップ画面を表示させ、発見者が識別番号と現在状況の入力を行うことが可能なシステムが提案されている。入力されるとシステム利用者や保護者にメールを自動発信する。
【0005】
また、GPSと移動体通信網とに対応した見守り用端末を高齢者に持たせることも提案されている。このような見守り用端末は、GPSで取得した位置情報を、移動体通信網を通じて保護者の端末に送信することで、現時点での居場所をリアルタイムで取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-076238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、個人情報を二次元コードにコード化して記録しただけでは、スマートフォンによるQRコードの読み取りが一般化した現代では事実上そのまま個人情報をオープンに記載しているのとセキュリティ上は大差ないのが現状である。
【0008】
かといって、何も個人情報に繋がる情報がなければ、警察や福祉施設等の関係者であってもその徘徊者がどこの誰であるかを明確に判別することができず、仮に発見できても素性不明の尋ね人として扱われてしまうおそれがあった。ましてや、善意の一般人が徘徊者を発見したとしても、その場でどうすればよいのかわからず途方に暮れることになってしまう。したがって、何らかの形で個人情報へ繋がる手立てを持たせることが必要であった。
【0009】
特許文献1に記載のシステムでは、個人情報そのものを発見者の端末に表示させないという点でセキュリティ上は優れている。だが、スマートフォンのブラウザ上でフォームへの入力を行うことは、パソコン上で行う入力に比べてミスが生じやすく、修正も難しくなるため、発見者に掛ける負担が大きい。せっかく徘徊者を発見した発見者が連絡しようとしても、作業負荷や作業時間が多すぎて連絡を断念されてしまうというおそれがあった。
【0010】
また、GPS搭載の見守り用端末は、本人が機械に監視されることを嫌がって携帯することを拒否したり、どこかに置き忘れて手放してしまったりする恐れもあり、現実に携帯してもらうことが難しかった。また、GPSと移動体通信網に対応した端末が必要であるため個々の導入コストが高く、かつ常時監視と通信が必要であるため維持コストも高いという問題があった。
【0011】
そこでこの発明は、見守りに必要となる識別符号を有する固有の対象識別物を徘徊者が無理なく常時携帯可能であるようにし、なおかつ徘徊者が身に着ける識別対象物から個人情報が容易に漏れることがないように個人情報保護を確保しながら、発見者が容易に連絡が取れるような環境を安価かつ大規模に導入できるようにして、もって徘徊者の更なる安全を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、
自治体又はそれに準ずる所属地域を識別する地区コードと、当該所属地域に所属し徘徊する可能性がある個人を識別する個人情報と関連付けた個人コードとを記録する見守管理サーバを設けるステップ、
前記個人コードを含む文字列である文字列コードと、少なくとも前記地区コード及び前記個人コードを判別可能な情報として含む前記見守管理サーバ宛のアドレスである発見通知アドレスを復号可能である二次元コードと、を記載した識別シートを、当該個人の関係者に配布するステップ、
を順不同に行う準備の後、
前記見守管理サーバは、
前記発見通知アドレスへのアクセスに対して、当該個人が所属する団体に固有の地域連絡先電話番号を含む連絡依頼案内情報を含む発見ページ情報を返信するページ送信手段を実行する、
徘徊者見守り方法により、上記の課題を解決したのである。
【0013】
上記の二次元コードに含まれるのは地区コードと個人コードであり、文字列コードを見ても直接に個人を識別できる状態とはならない。もちろん、識別シートには名前等の直接個人を特定できる個人情報を記載しないのが前提である。二次元コードをデコードして表示されるのは、個々人の電話番号ではなく、徘徊者が所属する団体に繋がる地域連絡先電話番号である。ここで、所属する団体とは、住民である自治体やそれに準ずる公共団体や、顧客としてケアの対象となっている社会福祉法人などである。つまり、発見者は細かくフォームを入力するまでもなく、単に表示される電話番号に電話すればよく、手間は大きく省ける。繋がる先は公共団体や社会福祉法人などの団体であるため、その繋がり先そのものから直接に個人情報が明らかになることはない。また、所属地域から電車などに乗って遠く離れた地域に徘徊者が到達していたとしても、元の所属地域の団体に繋がるので、発見地域では把握していない徘徊者であっても問題なく元の所属地域に連絡を繋げることができる。この団体側が個人コードと個人情報を関連付けて把握しておくことで、電話を掛けてきた発見者に文字列コードを読み上げてもらえば、誰が発見されたのかを把握することができるとともに、発見者から発見場所を口頭で容易に伝えてもらうことができる。
【0014】
また、前記見守管理サーバは、
前記個人情報として、当該個人の関係者へ通じる連絡先アドレス情報を有し、
前記発見ページ情報が、前記連絡依頼案内情報とともに表示されるボタンを表示可能であり、前記ボタンを押下した際には前記見守管理サーバへの連絡通知送信コマンドが送信されるものであり、
前記連絡通知送信コマンドを受信したら、前記連絡先アドレス情報へ当該個人が発見された旨の情報を含む発見通知を送信する第一発見通知手段を実行する
実施形態を採用することができる。
【0015】
発見者はブラウザに表示されるボタンを押すだけで発見の第一報を通知することができる。フォームの入力を必要としないため速やかな通報が実現できる。これを受けた前記見守管理サーバが連絡先アドレス情報へ通知することで、該当者を捜索中の保護者等にまずは発見したとの第一報を速やかに伝えることができる。
【0016】
さらに、前記見守管理サーバは、
前記団体に対して発行される、当該団体に属する前記個人情報へのアクセスを許容するアカウントである団体用アカウントを有し、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスに対して、前記個人情報の少なくとも一部を返信する個人情報照会手段と、
前記団体用アカウントからの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスから、当該個人コードの連絡先アドレス情報へ当該個人の発見場所の情報を含む居場所通知を送信する第二発見通知手段と、
を実行する実施形態を採用することができる。
【0017】
前記のボタンが押されなくても、電話連絡を受けた団体の担当者が前記団体用アカウントで見守管理サーバにログインして操作することで、発見された徘徊者の関係者への連絡を速やかに行うことができる。また、担当者が発見者から電話にて口頭で個人の発見場所である居場所を聞き取っておけば、その居場所も通知することで、保護者は速やかに発見場所である居場所へ向かい、保護を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明により、徘徊者を発見した発見者に個人情報を開示することなく、かつ発見者に作業の手間をほとんど掛けさせることなく、誰がどこで見つかったのかを団体が速やかに把握することができ、保護者等が速やかに発見の連絡を受けることができる。警察や福祉関係者が捜索する場合も、一般人が発見する場合も、速やかな照会と通知が可能になる。これらにより、高齢者の安全をより高いレベルで実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明にかかる見守管理サーバを含む徘徊者見守り方法の概念図
図2】この発明にかかる見守管理サーバの機能ブロック図
図3】この発明にかかる徘徊者見守り方法の一の実行例を示すシーケンス図
図4】ページ送信手段が送信する発見ページ情報の例を示す図
図5】第一発見通知手段が通知する発見通知の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を具体的に説明する。この発明は、徘徊する可能性のある個人を速やかに発見し保護するための徘徊者見守り方法、およびその実行に用いる見守管理サーバである。
【0021】
この発明にかかる徘徊者見守り方法を実行する状況の概念図を図1に示す。徘徊者1を発見した発見者2が、徘徊者1が身に着けている識別シート13に記載された二次元コードをスマートフォン15で読み取る(S1)。識別シート13には二次元コードの他に、後述する地区コードと個人コードを組み合わせた文字列である文字列コードが記載されている。また、自治体を示すマーク・ロゴ・キャラクター、福祉団体などのマーク・ロゴ・キャラクター、サービス名、サービス団体名などそれら以外の情報が記載されていてもよい。ただし、個人を直接確認できる情報は記載されていないことが望ましい。スマートフォン15で読み取った二次元コードからアドレスがデコードされて、見守管理サーバ11への個人コードを伴ったアクセスができる(S2)。見守管理サーバ11は、スマートフォン15からのアクセスに対して、徘徊者1が所属する団体4に固有の地域連絡先電話番号を含む連絡依頼案内情報を含む発見ページ情報を返信する。このアクセス、又は発見ページ情報に基づくさらなるアクセスを確認したら、見守管理サーバ11は団体4、徘徊者1の関係者である保護者6、又はその両方への通知を行う(S3)。また、前記連絡依頼案内情報を見た発見者2は、前記地域連絡先電話番号への電話発信を行い(S4)、どこで徘徊者1を見つけたかと、識別シート13に記載された個人コードを口頭で伝える。なお、電話発信の宛先は、団体4の代わりに各地方の警察5でもよい。夜間や緊急時などは警察5が担当するといった運用が可能である。電話を受けた団体4または警察5は、直接に、又は見守管理サーバ11の機能を通じて、保護者6に発見場所を伝える(S5)。保護者6は伝えられた発見場所へ向かい、徘徊者1を保護する(S6)。
【0022】
この徘徊者見守り方法を実行するための見守管理サーバ11の構成例を、図2を用いて説明する。見守管理サーバ11は、自治体又はそれに準ずる所属地域を識別する地区コードと、当該所属地域に所属し徘徊する可能性がある個人を識別する個人情報と関連付けた個人コードとを記録する個人情報データベース21を有する。ここで、自治体又はそれに準ずる所属地域とは、都道府県、行政区、特別区、市町村、離島などが挙げられるがこれらに限定されない。基本的には複数の世帯を抱えて生活圏が成立している地域である。ただし、この所属地域の区分が大きすぎると、その区分に含まれる登録者が増えすぎて運用しにくくなる。このため、区や市町村以下の単位で所属地域を識別できるように地区コードを設定すると好ましい。中核市のように人口の多い市では自治体の内部をさらにいくつかの地域に区切って地区コードを設定してもよい。また、特定の所属地域の中にある特定の社会福祉法人などの顧客に対して、当該所属地域の自治体向けに発行する一般向けの地区コードとは別の地区コードを割り当ててもよい。個人情報として登録するのは、当該所属地域に所属し徘徊する可能性がある個人とそれに関する関係者の情報である。サービス業者3は、自治体又は警察その他の前記所属地域に属する公共団体を通じて、徘徊する可能性のある個人の関係者からの依頼をうけて、その個人の情報を自ら登録するか、又は団体4、警察5からアカウントに許可した範囲の権限で登録できるように設定する。このように設定する場合、見守管理サーバ11は、団体4や警察5向けに発行した団体用アカウントを管理する団体データベース22を有し、その団体用アカウントでの団体用端末17からのログインを受け付ける団体管理手段32、団体用アカウントでの団体用端末17からの個人情報の登録を受け付ける個人情報受付手段34を実行可能であるとよい。
【0023】
その他、見守管理サーバ11は、上記の及び後述する各データベースを有し、各手段を実行可能であるサーバである。図では単一の物理サーバとして記載しているが、複数のサーバでこれらの機能を分担していてもよいし、クラウド上のサーバとして機能するものでもよい。インターネットに接続され、移動体通信網を介してのwebサーバとしてのアクセスを許容し、団体4や警察5に対してはセキュリティの高いアクセスを許容する。
【0024】
見守管理サーバ11への個人情報の登録を受け付けるサービス業者3は、前記個人コードを含む文字列である文字列コードと、少なくとも前記地区コード及び前記個人コードを判別可能な情報として含む前記見守管理サーバ宛のアドレスである発見通知アドレスを復号可能である二次元コードと、を記載した識別シート13を発行する。識別シート13には、氏名住所などの個人情報そのもの又は個人情報を直接に特定できる情報以外であれば、所属地域の団体名やマーク、ロゴその他の情報を記載してあってもよい。当然に、1つの識別シート13において、文字列コードに含まれる個人コードと、二次元コードから復号可能である発見通知アドレスに含まれる個人コードは同一のものである。識別シート13としては、ワッペン、ラベル、名札など形態は特に限定されないが、徘徊する可能性が高い認知症の高齢者が容易に身体から離すことができないように、また濡れても容易に破れないように、服に縫い付けたり強固に貼りつけたりできる布地であると好ましい。貼り付ける場合はただの糊付けではなく、強固なアイロンプリントなどが可能であると好ましい。また、洗濯しても容易には削れたり剥がれたり薄れたりしないものであることが好ましい。
【0025】
サービス業者3は、識別シート13をあらかじめ発行しておいてもよいし、必要に応じて追加で発行してもよい。ただし、サービス業者3は、団体4の所属地域にあたる地区コードと、その地区コードに属する予定となる個人コードとを記載した識別シート13を、同一のものを多数、かつ個人コードの違うものを多種類、あらかじめ大量に発行しておくと望ましい。発行した識別シート13は、団体4がサービス業者3のサービスを受けるにあたって、サービス業者3から団体4へまとめて引き渡す。これを受け取った団体4は、識別シート13を保管しておき、団体4に属する個人を個人情報データベース21に登録する際に、当該個人の関係者(保護者6)にその個人に付与する個人コードが記載された識別シート13をまとめて配布する。団体4に属する個人とは、例えば団体4が自治体やそれに準ずる公共団体である場合、個人はその自治体の住民が対象となる。また、例えば団体4が特定の地域で活動する社会福祉法人である場合、個人はその特定の地域の近隣に在住しその社会福祉法人の顧客としてケアされる高齢者等が対象となる。関係者(保護者6)は受け取った識別シート13を、徘徊者1になりうるその個人の服や持ち物に一通り縫い付けたり貼りつけたりして固定し、当該個人がどの時点でも少なくとも一枚は識別シート13を身に着けているようにする。なお、団体4が社会福祉法人などである場合、顧客向けに対象者向けのユニフォームなどに一括で貼りつけたりしてもよい。このため、識別シート13は多数の服に取り付ける必要があり、少なくとも同一の識別シート13が10枚以上はあることが好ましく、20枚以上あるとより好ましい。そして、個人コードの異なる識別シート13を、団体4は見守りすべき個人として登録が想定される人数分の種類だけ用意しておくとよい。
【0026】
団体4は前記団体用アカウントで認証された団体用端末17から、団体4が管轄する所属地域で、徘徊する可能性がある個人の関係者(保護者6)からの依頼に従って、徘徊者1となりうる個人の情報を個人情報データベース21に登録する。見守管理サーバ11側でこの登録を受け付ける個人情報受付手段34の具体的内容としては、その団体用アカウントでログインした団体用端末17のブラウザからのアクセスに対して、その団体4の属する所属地域の地区コード(団体4が特定の社会福祉法人である場合にはその所属地域における当該団体専用の地区コードでもよい)に紐づけて、個人コードごとに個人情報を入力できるようにした入力フォーム付きのwebページを送信し、当該入力フォームからの入力を受け付けて個人情報を地区コード及び個人コードに紐づけて登録する。なお、団体用アカウントのユーザーIDの一部を地区コードと同一にしておくと、利用する団体4の担当者が地区コードを認識しやすくなるので好ましい。
【0027】
この登録のとき個人情報データベース21に登録する個人情報としては、当該個人自身の住所、氏名、生年月日、性別の他に、当該個人が行方不明となったときに、消息を通知すべき関係者(保護者6)へ通じる連絡先アドレス情報を登録しておくことが望ましい。ここで連絡先アドレス情報とは、メールアドレス、固定電話番号、携帯電話番号、ソーシャルネットワークサービスにおける連絡可能なIDなどが挙げられる。以下の説明ではメールアドレスが登録されている実施形態を主に想定して記載するが、その他の手段で関係者に連絡を取ってもよい。なお、ソーシャルネットワークサービスを通じて連絡可能にする場合、見守管理サーバ11は当該ソーシャルネットワークサービスにログインしてメッセージを送信できる連絡手段を有することが必要となる。メールアドレスの場合はメールサーバとしての機能が必要となる。後述する第一発見通知手段41、第二発見通知手段42は、これらの連絡手段やメールサーバとしての機能により送信を行う。
【0028】
識別シート13を身に着けた個人が徘徊者1として行方不明になった後、発見者2により発見される以降の手順を、図3に示すシーケンス図を用いて説明する。発見者2としては、一般的なスマートフォン15を有し電話を介した口頭での伝達が可能であればよく、システム上必要な要件は特段ない。発見者2としては、警察関係者、福祉関係者といった直接的な捜索者である場合や、通りがかった一般人である場合もあるが、所属については特に限定されない。直接的な捜索者であっても、普段は個々の個人情報に関する資料等を携帯していない場合もあり、本発明を利用して徘徊者の確認と通知ができる効果を好適に享受できる。徘徊者を発見した発見者2は、識別シート13に記載された二次元コードを、二次元コードのデコード機能とカメラ機能とを有するスマートフォン15で読み取る(S1,S101)。読み取った二次元コードをスマートフォンでデコードし、前記地区コード及び前記個人コードを判別可能な情報として含む見守管理サーバ11宛のアドレスである発見通知アドレスがスマートフォン15で復号される。なお、ここで判別可能な情報であるとは、人が見て判別可能である必要はなく、見守管理サーバ11が判別可能であればよい。見守管理サーバ11のアドレスが示すサーバアドレスは、ドメイン名を含む一般的なインターネットアドレスでもよいし、IPアドレスでもよく、そのサーバ宛のURLに引数として前記地区コード及び前記個人コードを判別可能な情報が指定されていればよい。ただし、ドメイン名を含むアドレスである方が、アクセスしようとする発見者2にとって安心感があるため好ましい。発見者2はスマートフォン15のインターネットブラウザを介して、サーバアドレスと引数を含む前記発見通知アドレスへアクセスする(S2,S102)。
【0029】
前記発見通知アドレスとして指定されたアドレスへのアクセスを受け取った見守管理サーバ11は、当該個人が所属する所属地域の公共団体に固有の地域連絡先電話番号を含む連絡依頼案内情報を含む発見ページ情報を返信する(S103)ページ送信手段33を実行する。発見ページ情報は、HTML又はXMLで記述されたテキストであり、スマートフォン15のブラウザで読み込むと地域連絡先電話番号を含むメッセージが表示される。表示される内容の例を図4に示す。このメッセージ内容は地区コードで分類される所属地区ごとに個別に設定しておくとよい。ここで地域連絡先電話番号が繋がる団体4としては、市区町村等の単位の各自治体役所や各自治体警察、各自治体の社会福祉協議会、各自治体の民生委員、さらにはデイケアサービスを行う福祉・医療関係施設、老人ホームなどといった、徘徊者の捜索、保護に関連する団体が挙げられる。図では団体4と警察5とを分けた例を示すが、地域によっては警察を団体4の一部としてサービスを運用してもよい。だいたいの場合の運用上は、徘徊者とのつながりが深い団体4を主とし、警察5は団体4への連絡が繋がりにくい夜間や緊急時に対応したり、団体4と並行して活動したりするとよい。これらの団体4の担当部署に繋がる電話番号が地域連絡先電話番号となる。表示される電話番号は1件だけでなく複数件でもよい。ただし、どこに繋がっても保護に繋がる通知が可能である体制が整っている部署であることが必要となる。これらの仕組みにより、仮に自治体をまたいで徘徊者1が徘徊してしまった場合でも、身元の確認ができない徘徊先の警察等に連絡がいくのではなく、身元の分かる所属地域への紹介が実現される。
【0030】
上記の発見ページ情報は、前記連絡依頼案内情報とともに表示されるボタンを表示可能であり、前記ボタンを押下した際には見守管理サーバ11への連絡通知送信コマンドが送信されるものであると好ましい。電話番号よりも上に「確認」ボタンを表示させておくと、画面をスクロールすることなく速やかにボタンを押下しやすいので好ましい。スマートフォン15のブラウザ上でタップ、又はクリックといった押下の操作により、ボタンのフォーム機能が発揮されて、見守管理サーバ11へのアクセスが発生する。電話を掛けて詳細を伝える前に、まず発見した旨を伝える第一報を送信することができる(S104)。S102におけるアクセスとS103の返信まででは、保護者6等やその他の関係者が内容を確認するために読み取るケースもあり、徘徊した状態から送られたリクエストではないことがある。このため、徘徊した徘徊者1らしき人を発見し、通知しなければならない状態であることを確認した状態でボタンを押された操作を確認動作として、連絡通知送信コマンドを発生させるトリガーとして扱うと好ましい。
【0031】
見守管理サーバ11は、前記連絡通知送信コマンドを受信したら、前記連絡先アドレス情報へ当該個人(徘徊者1)が発見された旨の情報を含む発見通知を送信する第一発見通知手段41を実行する(S3,S106)。また、このとき併せて当該個人の所属地域にある団体4(警察5)へも同様の発見通知を送信するとよい(S3,S105)。団体4が徘徊者1の捜索に直接参加している可能性があり、速やかな通知がされると好ましいためである。このS106における発見通知は、メールアドレス宛のメールによる通知、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のIDへの通知、携帯電話番号宛のSMS(ショートメッセージサービス)による通知、固定電話番号へのFAXによる通知など、登録されている前記連絡先アドレス情報の中で、優先して送信するように設定された項目に対して行うとよい。基本的には保護者6が持っている携帯電話19で受信できるものであると、捜索中で外出していても連絡が受け取れるため好ましい。この発見通知の例を図5に示す。この通知内容も、地区コードで分類される所属地区ごとに個別に設定しておくとよい。図中識別コードの欄は上記の個人コードを記載したり、場合によっては登録している当該個人名などを記載してもよい。一方、S105における団体4への通知は、数が多数になる可能性が高いため、SMSやFAXではなくメールなどの管理しやすい情報であると好ましい。
【0032】
発見者2のスマートフォン15から、上記の発見ページ情報に記載された地域連絡先電話番号への発信がされたら(S4,S107)、団体4の担当者は発見者2から口頭で徘徊者1が身に着けている識別シート13に記載された個人コードを読み上げてもらい、かつ、状況及び居場所を聞き取る。団体4の担当者は、上記の団体用アカウントで見守管理サーバ11へアクセス可能である団体用端末17を介して口頭で聞いたそれらの情報を入力する。団体用端末17には一般的なパーソナルコンピュータを用いてよい。これらの情報はスマートフォン15から発見者2が入力するには手間がかかるが、フルキーボードを有するパーソナルコンピュータからであれば、速やかな入力が可能である。
【0033】
見守管理サーバ11は、前記団体用アカウントでログインした団体用端末17からの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスに対して、前記個人情報の少なくとも一部を返信する個人情報照会手段35を実行する。すなわち、団体4の担当者は口頭で発見者2から聞いた個人コードを、団体用端末17を介して入力して見守管理サーバ11へ問い合わせ、その返信として、個人コードに対応する氏名、住所等を表示するwebページを受け取り、どこの誰が見つかったのかを確認できる。また、見守管理サーバ11は、この表示するwebページを送信する際に、当該個人コードの個人についての現状やその他の情報を記載するオプション欄となるフォームを設けて、このオプション欄のフォームから入力された情報を受け付けて個人情報データベース21の当該個人コードについての備考欄や現況欄の項目として登録する追加情報登録手段を実行可能にしておくと、後日その情報を参照できる。
【0034】
団体4は、自身が運用する団体用アカウントを、所属地域の警察などに伝えておいてもよい。夜間など団体4が活動できないタイミングでの電話を警察が受け取る場合に、警察5が上記の団体4と同様の作業ができる。すなわち、警察5の担当者が発見者2から口頭で聞き取った個人コードを、警察が保有する団体用端末(図示せず)からアクセスして見守管理サーバ11へ送信して、以後同様の処理を行う。
【0035】
なお、見守管理サーバ11は、団体用アカウントとは別に、当該地域の警察向けに、所属地域に属する公共団体や法人などである団体の団体用アカウントが管理する情報の一部を、警察が把握できるようにする警察用アカウントを設定しておいてもよい。サービス提供業者は、地域向けサービスの一環としてこの警察用アカウントをあらかじめ警察に伝えておいてもよい。
【0036】
また、見守管理サーバ11は、前記団体用アカウントでログインした団体用端末17からの、少なくとも前記個人コードを含むアクセスから、当該個人コードの連絡先アドレス情報へ当該個人の発見場所の情報を含む居場所通知を送信する第二発見通知手段42を実行する。このとき、個人コードとして先に一度入力した値をブラウザがcookieで保存して、その後の操作でも引き続き見守管理サーバ11へ送信する情報に個人コードが含まれるようにすると、手間が省けてよい。この個人コードを含むアクセスとしては、例えば上記のwebページにフォームとして、上記連絡先アドレス情報への居場所通知を送信するコマンドを送るボタンを設けておき、それを担当者にクリックさせるといった方式が挙げられる。
【0037】
第二発見通知手段42が実行して送信される居場所通知(S5,S108,S109)は、当該個人名に加えて、団体4の担当者が発見者2から口頭で聞き取った状況及び居場所が送信されるとよい。警察5が捜索している場合もあるため、地域の警察5の連絡先へも通知がされると好ましい(S108)。通知される状況によっては、事件性のある状況だったり、救急への連絡が必要な場合もあり、そのような場合は警察が出動したり、救急へ連絡したりする処理が行われる。また、併せて登録された関係者(保護者6)の携帯電話19宛に通知がされる。通知方法はS106と同様の形式が考えられる。ただし、今度の通知には居場所などのより詳細な情報が含まれるので、保護者6はその居場所へ向かい、徘徊者1を保護することができる(S6,S110)。
【符号の説明】
【0038】
1 徘徊者
2 発見者
3 サービス業者
4 団体
5 警察
6 保護者
11 見守管理サーバ
13 識別シート
15 スマートフォン
17 団体用端末
19 携帯電話
21 個人情報データベース
22 団体データベース
32 団体管理手段
33 ページ送信手段
34 個人情報受付手段
35 個人情報照会手段
41 第一発見通知手段
42 第二発見通知手段
図1
図2
図3
図4
図5