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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】外壁材上端換気装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20240913BHJP
   E04D 13/15 20060101ALI20240913BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20240913BHJP
   E04D 13/16 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04D13/15 301Z
E04B1/684 B
E04D13/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020201532
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089268
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祥希
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133265(JP,A)
【文献】特開2011-157696(JP,A)
【文献】特開2014-156772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04D 13/15,13/16
E04B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外壁材の上方で、前記外壁材より外方に配置される垂下部材より内方に配置される外壁材上端換気装置であって、
前記外壁材の上端を覆う見切縁と、
前記見切縁の上方に配置される換気部材と
を備え、
前記見切縁は、
前記外壁材の前記上端を覆う見切縁上面板と、
前記見切縁上面板の前端から垂下させた見切縁前面板と、
前記見切縁上面板の後端から垂下させた見切縁後面板と
からなり、
前記換気部材は、
前記見切縁上面板の上面に対向して配置される換気部材底面板と、
前記換気部材底面板の前端から立ち上げた換気部材前面板と、
前記換気部材前面板の上端から後方に延出させた換気部材天面板と
からなり、
前記換気部材前面板には、換気孔が形成され、
前記換気部材底面板と前記換気部材天面板との間で、前記換気部材前面板の後方に換気通路が形成され、
前記見切縁上面板と前記換気部材底面板との間に配置される第1防水パッキンと、
前記見切縁後面板の前面と前記外壁材との間に配置される第2防水パッキンと
を備え、
前記見切縁上面板の奥行寸法を前記外壁材の厚さよりも大きくして、前記見切縁前面板と前記外壁材との間に水切空間を形成する
ことを特徴とする外壁材上端換気装置。
【請求項2】
前記見切縁前面板と前記垂下部材との間には、見切縁側通気路が形成され、
前記換気部材前面板と前記垂下部材との間には、換気部材側通気路が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の外壁材上端換気装置。
【請求項3】
前記換気部材側通気路と前記見切縁側通気路との通気路奥行き寸法を異ならせた
ことを特徴とする請求項2に記載の外壁材上端換気装置。
【請求項4】
前記換気部材は、前記換気通路を形成する換気部材後面板を有し、
前記換気部材前面板は前記外壁材より前方に位置し、
前記換気部材後面板は前記外壁材より後方に位置する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外壁材上端換気装置。
【請求項5】
前記換気通路には内部防水壁を設け、
前記内部防水壁を、前記換気部材天面板の後端から垂下させ、
前記換気部材後面板を、前記換気部材底面板の後端から立ち上げ、
前記換気孔から前記換気通路に流入する空気は、前記換気部材前面板と前記内部防水壁との間では下方に向けた流れとなり、前記内部防水壁と前記換気部材後面板との間では上方に向けた流れとなる
ことを特徴とする請求項4に記載の外壁材上端換気装置。
【請求項6】
前記換気部材底面板の前記前端を、前記見切縁上面板の前記前端より前方に突出させた
ことを特徴とする請求項5に記載の外壁材上端換気装置。
【請求項7】
前記換気通路には、前記換気部材底面板の後端から立ち上げた内部防水壁を設け、
前記内部防水壁の上端を前記内部防水壁の下端よりも前記換気部材前面板に近接させた
ことを特徴とする請求項4に記載の外壁材上端換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の外壁材の上方に設置される外壁材上端換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、外壁材と軒天材との境界部分で用いる見切縁を提案している。
特許文献1の見切縁は、上板と、上板の両縁から垂下される外板と内板とからなり、外板と内板の端縁には折り返しが設けられ、内板の中間にはリブが形成され、更に上板の上端部外側角部は凹角部となっており、見切縁の内側には板材の嵌合溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実願平02-99597号(実開平04-55946号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示される見切縁では、外壁材に強く吹き付け、軒天材と見切縁との間または外壁材と見切縁との間から壁通気層内へ浸入しようとする雨水に対する抵抗が少なく、防水性能に問題がある。また、軒天材表面や外壁材表面に、デザインとしての凹凸がある場合や、嵌合溝への外壁材の飲み込み代が短い場合には、壁通気層内への雨水の浸入リスクがさらに高まる。
なお、外壁材と換気部材との間などでの部材間での防水処理には、シーリング材が用いられることが多いが、シーリング材は固化に時間を要することから施工手間になりがちである。
【0005】
本発明は、外壁材の上端と換気部材との間での防水性能を確保でき、外壁材に沿って上昇する雨水に対する防水性能に優れる外壁材上端換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の外壁材上端換気装置は、建造物の外壁材99、84の上方で、前記外壁材99、84より外方に配置される垂下部材97、85bより内方に配置される外壁材上端換気装置であって、前記外壁材99、84の上端を覆う見切縁10と、前記見切縁10の上方に配置される換気部材20とを備え、前記見切縁10は、前記外壁材99、84の前記上端を覆う見切縁上面板11と、前記見切縁上面板11の前端から垂下させた見切縁前面板12と、前記見切縁上面板11の後端から垂下させた見切縁後面板13とからなり、前記換気部材20は、前記見切縁上面板11の上面に対向して配置される換気部材底面板21と、前記換気部材底面板21の前端から立ち上げた換気部材前面板22と、前記換気部材前面板22の上端から後方に延出させた換気部材天面板23とからなり、前記換気部材前面板22には、換気孔27が形成され、前記換気部材底面板21と前記換気部材天面板23との間で、前記換気部材前面板22の後方に換気通路Aが形成され、前記見切縁上面板11と前記換気部材底面板21との間に配置される第1防水パッキン31と、前記見切縁後面板13の前面と前記外壁材99、84との間に配置される第2防水パッキン32とを備え、前記見切縁上面板11の奥行寸法L1を前記外壁材99、84の厚さL2よりも大きくして、前記見切縁前面板12と前記外壁材99、84との間に水切空間Bを形成することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の外壁材上端換気装置において、前記見切縁前面板12と前記垂下部材97、85bとの間には、見切縁側通気路Cが形成され、前記換気部材前面板22と前記垂下部材97、85bとの間には、換気部材側通気路Dが形成されることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の外壁材上端換気装置において、前記換気部材側通気路Dと前記見切縁側通気路Cとの通気路奥行寸法を異ならせたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外壁材上端換気装置において、前記換気部材20は、前記換気通路Aを形成する換気部材後面板24を有し、前記換気部材前面板22は前記外壁材99、84より前方に位置し、前記換気部材後面板24は前記外壁材99、84より後方に位置することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の外壁材上端換気装置において、前記換気通路Aには内部防水壁25を設け、前記内部防水壁25を、前記換気部材天面板23の後端から垂下させ、前記換気部材後面板24を、前記換気部材底面板21の後端から立ち上げ、前記換気孔27から前記換気通路Aに流入する空気は、前記換気部材前面板22と前記内部防水壁25との間A1では下方に向けた流れとなり、前記内部防水壁25と前記換気部材後面板24との間A2では上方に向けた流れとなることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の外壁材上端換気装置において、前記換気部材底面板21の前記前端を、前記見切縁上面板11の前記前端より前方に突出させたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項4に記載の外壁材上端換気装置において、前記換気通路Aには、前記換気部材底面板21の後端から立ち上げた内部防水壁25を設け、前記内部防水壁25の上端を前記内部防水壁25の下端よりも前記換気部材前面板22に近接させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の外壁材上端換気装置によれば、第1防水パッキンにより見切縁上面板と換気部材底面板との間の防水を行い、第2防水パッキンにより見切縁後面板の前面と外壁材との間の防水を行うため、外壁材の上端と換気部材との間での防水性能を確保でき、外壁材に沿って上昇する雨水は、水切空間に導かれ、見切縁前面板に沿って落下するために、換気部材前面板には導かれず、換気孔から換気通路に流入しないので防水性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による外壁材上端換気装置の断面図及び同外壁材上端換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図
図2図1(b)の要部拡大断面図
図3】本発明の他の実施例による外壁材上端換気装置の断面図及び同外壁材上端換気装置を建造物の屋上やベランダの外壁として用いられるパラペットに設置した状態を示す断面図
図4図3(b)の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による外壁材上端換気装置は、外壁材の上端を覆う見切縁と、見切縁の上方に配置される換気部材とを備え、見切縁は、外壁材の上端を覆う見切縁上面板と、見切縁上面板の前端から垂下させた見切縁前面板と、見切縁上面板の後端から垂下させた見切縁後面板とからなり、換気部材は、見切縁上面板の上面に対向して配置される換気部材底面板と、換気部材底面板の前端から立ち上げた換気部材前面板と、換気部材前面板の上端から後方に延出させた換気部材天面板とからなり、換気部材前面板には、換気孔が形成され、換気部材底面板と換気部材天面板との間で、換気部材前面板の後方に換気通路が形成され、見切縁上面板と換気部材底面板との間に配置される第1防水パッキンと、見切縁後面板の前面と外壁材との間に配置される第2防水パッキンとを備え、見切縁上面板の奥行寸法を外壁材の厚さよりも大きくして、見切縁前面板と外壁材との間に水切空間を形成するものである。本実施の形態によれば、第1防水パッキンにより見切縁上面板と換気部材底面板との間の防水を行い、第2防水パッキンにより見切縁後面板の前面と外壁材との間の防水を行うため、外壁材の上端と換気部材との間での防水性能を確保でき、外壁材に沿って上昇する雨水は、水切空間に導かれ、見切縁前面板に沿って落下するために、換気部材前面板には導かれず、換気孔から換気通路に流入しないので防水性能に優れる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による外壁材上端換気装置において、見切縁前面板と垂下部材との間には、見切縁側通気路が形成され、換気部材前面板と垂下部材との間には、換気部材側通気路が形成されるものである。本実施の形態によれば、雨水は、見切縁側通気路及び換気部材側通気路を上昇しなければ換気孔に至らないため、換気通路に流入しにくく、更に防水性に優れる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による外壁材上端換気装置において、換気部材側通気路と見切縁側通気路との通気路奥行寸法を異ならせたものである。本実施の形態によれば、換気部材側通気路と見切縁側通気路との通気路奥行寸法を異ならせることで、雨水の流速が変化するため乱流が発生し、雨水は換気通路に流入しにくい。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による外壁材上端換気装置において、換気部材は、換気通路を形成する換気部材後面板を有し、換気部材前面板は外壁材より前方に位置し、換気部材後面板は外壁材より後方に位置するものである。本実施の形態によれば、換気通路の奥行寸法を大きくできることで、換気通路に流入した雨水を換気通路に留めることができ、屋内に雨水が侵入することはない。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による外壁材上端換気装置において、換気通路には内部防水壁を設け、内部防水壁を、換気部材天面板の後端から垂下させ、換気部材後面板を、換気部材底面板の後端から立ち上げ、換気孔から換気通路に流入する空気は、換気部材前面板と内部防水壁との間では下方に向けた流れとなり、内部防水壁と換気部材後面板との間では上方に向けた流れとなるものである。本実施の形態によれば、雨水は、内部防水壁によって下方に向けた流れの後に上方に向けた流れとなるために、屋内に侵入することはない。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による外壁材上端換気装置において、換気部材底面板の前端を、見切縁上面板の前端より前方に突出させたものである。本実施の形態によれば、見切縁側通気路を上昇する雨水を換気部材底面板に衝突させることができ、雨水は換気通路に流入しにくい。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第4の実施の形態による外壁材上端換気装置において、換気通路には、換気部材底面板の後端から立ち上げた内部防水壁を設け、内部防水壁の上端を内部防水壁の下端よりも換気部材前面板に近接させたものである。本実施の形態によれば、換気孔から流入する雨水を換気部材後面板に至ることを防止できる。
【実施例
【0016】
以下本発明の一実施例による外壁材上端換気装置について説明する。
図1は本実施例による外壁材上端換気装置の断面図及び同外壁材上端換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図である。
図1(a)は同外壁材上端換気装置の断面図、図1(b)は同外壁材上端換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図を示している。
【0017】
図1(b)に示す建造物は、柱91の上端に軒桁92を設け、軒桁92の上部には垂木93を傾斜して設けている。垂木93の上面には野地板95が敷設されている。垂木93の端面には鼻隠し下地96を設けている。鼻隠し下地96の屋外側面には、鼻隠し(垂下部材)97が配置される。柱91には外壁下地98を設けている。外壁下地98の屋外側面には、通気胴縁94と外壁材99が配置される。
本実施例による外壁材上端換気装置は、建造物の外壁材99の上方で、外壁材99より外方に配置される鼻隠し97より内方に配置される。
【0018】
本実施例による外壁材上端換気装置は、外壁材99の上端を覆う見切縁10と、見切縁10の上方に配置される換気部材20とを備えている。
見切縁10は、外壁材99の上端を覆う見切縁上面板11と、見切縁上面板11の前端から垂下させた見切縁前面板12と、見切縁上面板11の後端から垂下させた見切縁後面板13とからなる。見切縁後面板13の鉛直方向長さは、見切縁前面板12の鉛直方向長さより長く、見切縁前面板12の鉛直方向長さの1.5倍から3倍の長さが好ましい。見切縁前面板12の下部には後方側に折り曲げられて折返し部12aを形成し、見切縁後面板13の下部には前方側に折り曲げられて折返し部13aを形成している。
見切縁10は、ビス41によって通気胴縁94や外壁下地98に固定する。
【0019】
換気部材20は、見切縁上面板11の上面に対向して配置される換気部材底面板21と、換気部材底面板21の前端から立ち上げた換気部材前面板22と、換気部材前面板22の上端から後方に延出させた換気部材天面板23と、換気部材底面板21の後端から立ち上げた換気部材後面板24と、換気部材天面板23の後端から垂下させた内部防水壁25と、鼻隠し97に至る換気部材前方板26とからなる。
換気部材前面板22には、換気孔27が形成されている。換気孔27は、高さ方向が幅方向より長い長孔であり、幅方向に複数形成されている。換気孔27は、ブリッジ材27aで覆っている。ブリッジ材27aは、換気孔27の切り起こしによって形成している。換気孔27をブリッジ材27aで覆うことで、換気孔27に吹き付けられる雨水を、ブリッジ材27aで遮ることができる。
換気部材底面板21より上方であって換気部材天面板23より下方で、換気部材前面板22の後方であって換気部材後面板24の前方に換気通路Aが形成される。
内部防水壁25は、換気通路Aに設けている。
換気部材前方板26にはビス孔26aを設けることが好ましい。ビス孔26aを設けることで、換気部材前方板26を、ビス42を用いて鼻隠し下地96又は破風板を取り付ける破風板下地に取り付けることができ、施工性に優れる。
【0020】
第1防水パッキン31は、見切縁上面板11の上面に配置され、第2防水パッキン32は、見切縁後面板13の前面に配置される。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、発泡性のゴム又は樹脂素材であり、防水性能と耐久性能が高いEPDMゴムや熱可塑性エラストマーが好ましい。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、見切縁10の幅方向長さと同じ長さで帯状に成形されており、粘着剤によって見切縁10に固定される。
第1防水パッキン31は、見切縁上面板11の奥行方向の中央部に配置することが好ましい。
第2防水パッキン32は、見切縁前面板12の下端以下の位置に配置することが好ましい。
第1防水パッキン31は、図1(b)に示す施工時には、見切縁上面板11と換気部材底面板21との間で圧縮されて施工される。
また、第2防水パッキン32は、図1(b)に示す施工時には、見切縁後面板13の前面と外壁材99との間で圧縮されて施工される。
【0021】
なお、換気部材後面板24の上端には、換気部材前面板22の方向に延出させた折返し部24aを設けることが好ましい。仮に換気部材後面板24に到達する雨水があったとしても、雨水は折返し部24aによって換気通路Aに折り返されるため、小屋裏に侵入することはない。
また、換気部材前面板22の下方には水抜き孔22aを設けることが好ましい。水抜き孔22aを設けることで、雨水が換気孔27から侵入したとしても、侵入した雨水は換気通路Aにおいて水抜き孔22aから排出される。
【0022】
図2図1(b)の要部拡大断面図である。
本実施例による外壁材上端換気装置は、見切縁上面板11の奥行寸法L1を外壁材99の厚さL2よりも大きくすることで、見切縁前面板12と外壁材99との間に水切空間Bを形成している。
また、本実施例による外壁材上端換気装置は、換気部材底面板21の前端は、見切縁上面板11の前端より前方に突出させている。そして、見切縁前面板12と鼻隠し97との間には、見切縁側通気路Cが形成され、換気部材前面板22と鼻隠し97との間には、換気部材側通気路Dが形成される。
従って、見切縁側通気路Cは、換気部材側通気路Dよりも、通気路奥行寸法が大きく、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行寸法を異ならせている。
【0023】
本実施例によれば、第1防水パッキン31により見切縁上面板11と換気部材底面板21との間の防水を行い、第2防水パッキン32により見切縁後面板13の前面と外壁材99との間の防水を行うため、外壁材99の上端と換気部材20との間での防水性能を確保でき、外壁材99に沿って上昇する雨水は、水切空間Bに導かれ、見切縁前面板12に沿って落下するために、換気部材前面板22には導かれず、換気孔27から換気通路Aに流入しないので防水性能に優れる。
【0024】
また、本実施例によれば、雨水は、見切縁側通気路C及び換気部材側通気路Dを上昇しなければ換気孔27に至らないため、換気通路Aに流入しにくく、更に防水性に優れる。
また、本実施例によれば、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行寸法を異ならせることで、雨水の流速が変化するため乱流が発生し、雨水は換気通路Aに流入しにくい。
また、本実施例によれば、見切縁側通気路Cを上昇する雨水を換気部材底面板21に衝突させることができ、雨水は換気通路Aに流入しにくい。
【0025】
本実施例による外壁材上端換気装置は、換気部材前面板22は外壁材99より前方に位置させ、換気部材後面板24は外壁材99より後方に位置させている。
従って、換気通路Aの奥行寸法を大きくでき、換気通路Aに流入した雨水を換気通路Aに留めることができ、屋内に雨水が侵入することはない。
【0026】
また、本実施例による外壁材上端換気装置は、内部防水壁25を、換気部材天面板23の後端から垂下させ、換気部材後面板24を、換気部材底面板21の後端から立ち上げており、換気孔27から換気通路Aに流入する空気は、換気部材前面板22と内部防水壁25との間A1では下方に向けた流れとなり、内部防水壁25と換気部材後面板24との間A2では上方に向けた流れとなる。
このように、雨水は、内部防水壁25によって下方に向けた流れの後に上方に向けた流れとなるために、屋内に侵入することはない。
なお、本実施例による外壁材上端換気装置では、外気は、換気部材側通気路Dから換気通路Aを通って建造物の内部に給気される。
【0027】
図3は本発明の他の実施例による外壁材上端換気装置の断面図及び同外壁材上端換気装置を建造物の屋上やベランダの外壁として用いられるパラペットに設置した状態を示す断面図である。
図3(a)は同外壁材上端換気装置の断面図、図3(b)は同外壁材上端換気装置を建造物の屋上やベランダの外壁として用いられるパラペットに設置した状態を示す断面図を示している。
【0028】
図3(b)に示す建造物のパラペット80は、構造用合板81の上部に配置される上枠材82と、構造用合板81の外面に配置される通気胴縁83と、通気胴縁83の外面に配置される外壁材84と、上枠材82及び外壁材84の上方を覆う笠木85とを有している。
笠木85は、上枠材82及び外壁材84の上部を覆う天面部85aと、天面部85aから垂下して外壁材84の側方に配置される垂下部材85bとを有している。
本実施例による外壁材上端換気装置は、建造物の外壁材84の上方で、外壁材84より外方に配置される垂下部材85bより内方に配置される。
【0029】
本実施例による外壁材上端換気装置は、外壁材84の上端を覆う見切縁10と、見切縁10の上方に配置される換気部材20とを備えている。
見切縁10は、外壁材84の上端を覆う見切縁上面板11と、見切縁上面板11の前端から垂下させた見切縁前面板12と、見切縁上面板11の後端から垂下させた見切縁後面板13とからなる。見切縁後面板13の鉛直方向長さは、見切縁前面板12の鉛直方向長さより長く、見切縁前面板12の鉛直方向長さの1.5倍から3倍の長さが好ましい。見切縁前面板12の下部には後方側に折り曲げられて折返し部12aを形成し、見切縁後面板13の下部には前方側に折り曲げられて折返し部13aを形成している。
【0030】
換気部材20は、見切縁上面板11の上面に対向して配置される換気部材底面板21と、換気部材底面板21の前端から立ち上げた換気部材前面板22と、換気部材前面板22の上端から後方に延出させた換気部材天面板23と、換気部材天面板23の後端から垂下させた換気部材後面板24と、換気部材底面板21の後端から立ち上げた内部防水壁25とからなる。
換気部材前面板22には、換気孔27が形成されている。換気孔27は、高さ方向が幅方向より短い長孔であり、幅方向に複数形成されている。
換気部材底面板21より上方であって換気部材天面板23より下方で、換気部材前面板22の後方であって換気部材後面板24の前方に換気通路Aが形成される。
内部防水壁25は、換気通路Aに設けている。
【0031】
第1防水パッキン31は、見切縁上面板11の上面に配置され、第2防水パッキン32は、見切縁後面板13の前面に配置される。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、発泡性のゴム又は樹脂素材であり、防水性能と耐久性能が高いEPDMゴムや熱可塑性エラストマーが好ましい。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、見切縁10の幅方向長さと同じ長さで帯状に成形されており、粘着剤によって見切縁10に固定される。
第1防水パッキン31は、見切縁上面板11の奥行方向の中央部に配置することが好ましい。
第2防水パッキン32は、見切縁前面板12の下端以下の位置に配置することが好ましい。
第1防水パッキン31は、図3(b)に示す施工時には、見切縁上面板11と換気部材底面板21との間で圧縮されて施工される。
また、第2防水パッキン32は、図3(b)に示す施工時には、見切縁後面板13の前面と外壁材84との間で圧縮されて施工される。
【0032】
図4図3(b)の要部拡大断面図である。
本実施例による外壁材上端換気装置は、見切縁上面板11の奥行寸法L1を外壁材84の厚さL2よりも大きくすることで、見切縁前面板12と外壁材84との間に水切空間Bを形成している。
また、本実施例による外壁材上端換気装置は、見切縁上面板11の前端は、換気部材底面板21の前端より前方に突出させている。そして、見切縁前面板12と垂下部材85bとの間には、見切縁側通気路Cが形成され、換気部材前面板22と垂下部材85bとの間には、換気部材側通気路Dが形成される。
従って、換気部材側通気路Dは、見切縁側通気路Cよりも、通気路奥行き寸法が大きく、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行き寸法を異ならせている。
【0033】
本実施例によれば、第1防水パッキン31により見切縁上面板11と換気部材底面板21との間の防水を行い、第2防水パッキン32により見切縁後面板13の前面と外壁材84との間の防水を行うため、外壁材84の上端と換気部材20との間での防水性能を確保でき、外壁材84に沿って上昇する雨水は、水切空間Bに導かれ、見切縁前面板12に沿って落下するために、換気部材前面板22には導かれず、換気孔27から換気通路Aに流入しないので防水性能に優れる。
【0034】
また、本実施例によれば、雨水は、見切縁側通気路C及び換気部材側通気路Dを上昇しなければ換気孔27に至らないため、換気通路Aに流入しにくく、更に防水性に優れる。
また、本実施例によれば、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行き寸法を異ならせることで、雨水の流速が変化するため乱流が発生し、雨水は換気通路Aに流入しにくい。
【0035】
本実施例による外壁材上端換気装置は、換気部材前面板22は外壁材84より前方に位置させ、換気部材後面板24は外壁材84より後方に位置させている。
従って、換気通路Aの奥行寸法を大きくでき、換気通路Aに流入した雨水を換気通路Aに留めることができ、屋内に雨水が侵入することはない。
【0036】
また、本実施例による外壁材上端換気装置は、内部防水壁25の上端を内部防水壁25の下端よりも換気部材前面板22に近接させており、換気孔27から流入する雨水を換気部材後面板24に至ることを防止できる。
なお、本実施例による外壁材上端換気装置では、通気胴縁83を上昇した空気は、換気通路Aを通過して換気孔27から排出される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、特に漏水リスクの高い軒ゼロ建造物に用いる換気装置に適している。
【符号の説明】
【0038】
10 見切縁
11 見切縁上面板
12 見切縁前面板
12a 折返し部
13 見切縁後面板
13a 折返し部
20 換気部材
21 換気部材底面板
22 換気部材前面板
22a 水抜き孔
23 換気部材天面板
24 換気部材後面板
24a 折返し部
25 内部防水壁
26 換気部材前方板
26a ビス孔
27 換気孔
27a ブリッジ材
31 第1防水パッキン
32 第2防水パッキン
41 ビス
80 パラペット
81 構造用合板
82 上枠材
83 通気胴縁
84 外壁材
85 笠木
85a 天面部
85b 垂下部材
91 柱
92 軒桁
93 垂木
94 通気胴縁
95 野地板
96 鼻隠し下地
97 鼻隠し(垂下部材)
98 外壁下地
99 外壁材
A 換気通路
B 水切空間
C 見切縁側通気路
D 換気部材側通気路
A1 間
A2 間
L1 奥行寸法
L2 厚さ
図1
図2
図3
図4