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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240913BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001483
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106465
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】坂野 聖治
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-230096(JP,A)
【文献】特開2005-073452(JP,A)
【文献】特開2004-270451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃貸借契約の目的物であって、賃貸人が賃借人に使用及び収益させるポンプ装置と、
賃貸人が利用する外部機器であって、前記ポンプ装置と通信可能な外部機器と、
前記ポンプ装置に設けられ、賃借人の使用収益に伴う賃料を決定するために必要な情報(以下、使用基礎情報という。)を検出する基礎情報検出器と、
前記外部機器に設けられ、前記ポンプ装置から送信されてきた前記使用基礎情報を利用して予め決められたルールに従った処理を実行する処理部とを備え
前記ポンプ装置は複数の電動ポンプを有し、前記使用基礎情報には、少なくとも前記電動ポンプの稼働台数が含まれており、
2台以上の前記電動ポンプが同時に稼働する場合において、同時稼働可能な前記電動ポンプの台数を並列稼働可能台数としたとき、
前記ポンプ装置は、必要とする送水量の増減に応じて、前記電動ポンプの稼働台数を、並列稼働可能台数以下の範囲内で増減させる増減台制御が実行可能であるポンプシステム。
【請求項2】
台以上の前記電動ポンプが同時に稼働した場合において、最も稼働台数が大きいときの台数を最大稼働台数としたとき、
並列稼働可能台数を変更する稼働可能台数変更機能を実行可能なポンプ制御部を備える請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記稼働可能台数変更機能は、前記使用基礎情報を利用して最大稼働台数を把握するとともに、当該最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合に、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更する機能である請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記ポンプ装置は、電動式のポンプを有しており、
前記使用基礎情報には、少なくとも前記ポンプ装置の消費電力及び前記ポンプ装置の送水量が含まれている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記ポンプ装置は、少なくとも1台の電動ポンプを有しており、
前記使用基礎情報には、少なくとも、当該ポンプ装置を設置した時からの前記電動ポンプの積算起動回数及び前記電動ポンプの積算稼働時間が含まれている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記使用基礎情報には、少なくとも前記ポンプ装置の故障箇所を示す情報が含まれている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記ポンプ装置は、少なくとも1台の電動ポンプを有しており、
前記処理部は、賃料の支払いが滞っている旨の信号を受信したときに、前記電動ポンプの稼働を禁止する機能を実行可能である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給水装置等のポンプ装置を備えるポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のポンプシステムでは、ポンプ装置と管理装置とが無線通信可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-070786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規なポンプシステムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポンプシステムは、例えば、貸借契約の目的物であって、賃貸人が賃借人に使用及び収益させるポンプ装置(3)と、賃貸人が利用する外部機器(20)であって、ポンプ装置(3)と通信可能な外部機器(20)と、ポンプ装置(3)に設けられ、賃借人の使用収益に伴う賃料を決定するために必要な情報(以下、使用基礎情報という。)を検出する基礎情報検出器(11、12、Fs1~Fs3)と、外部機器(20)に設けられ、ポンプ装置(3)から送信されてきた使用基礎情報を利用して予め決められたルールに従った処理を実行する処理部(22)とを備えることが望ましい。
【0006】
これにより、当該ポンプシステムに係るポンプ装置(3)は、いわゆる「リース契約」にて賃借人が占有的に使用及び収益をすることが可能となる。そして、賃貸人は、使用基礎情報を利用して賃料を決定し、当該賃料を賃借人から受領する。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るポンプシステムを示す図である。
図2】ポンプ装置の送信制御を示すフローチャートである。
図3】遠隔管理装置の賃料算出処理制御を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る稼働可能台数変更機能制御を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る稼働可能台数変更機能制御を示すフローチャートである。
図6】第3実施形態に係る稼働可能台数変更機能制御を示すフローチャートである。
図7】稼働禁止機制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0010】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0011】
(第1実施形態)
<1.ポンプシステムの構成>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水システムに本開示に係るポンプシステムの一例が適用されたものである。図1に示されるように、本実施形態に係るポンプシステム1は、少なくとも1つポンプ装置3、及び少なくとも1つの遠隔管理装置20等を備えて構成される。
【0012】
本実施形態に係るポンプ装置3は、建物内に送水する給水装置である。当該ポンプ装置3は賃貸借契約の目的物である。つまり、賃貸人は、当該ポンプ装置3を賃借人に使用及び収益させる。
【0013】
遠隔管理装置20は、賃貸人が管理・運営する外部機器の一例であって、ポンプ装置3と有線通信又は無線通信にて通信可能な機器である。具体的には、遠隔管理装置20は、ポンプ装置3に設けられた通信部14と遠隔管理装置20に設けられた通信部21とを介して通信を行う。
【0014】
つまり、本実施形態に係るポンプシステム1では、賃貸人がポンプ装置3の所有権を有するとともに、賃借人が当該ポンプ装置3の占有権を有することにより、賃借人が当該ポンプ装置3を占有して使用・収益する。
【0015】
本実施形態では、賃貸人は、ポンプ装置3の製造者又は販売者が運営する管理会社である。賃借人は、建物の所有者又は管理組合等である。賃料及び賃貸借期間等は、当該賃貸借契約によって適宜決定される。
【0016】
本実施形態では、管理会社は、ポンプ装置3に関する電気料金及び水道料金を電力会社及び水道局それぞれに支払うとともに、その支払った電気料金及び水道料金に、ポンプ装置3の使用料金を加算した額を賃料として、賃借人に請求する。
【0017】
ポンプ装置3に関する電気料金とは、ポンプ装置3が消費した電力量の電気料金をいう。ポンプ装置3に関する水道料金とは、ポンプ装置3にて送水した送水量に相当する水道料金をいう。
【0018】
なお、本実施形態に係る賃貸借契約では、賃貸人は、賃借人に対してポンプ装置3を使用・収益させる義務(債務)を負わない。つまり、ポンプ装置3の修理・維持管理等に関する費用負担は、賃貸借契約による。
【0019】
<1.1 ポンプ装置>
ポンプ装置3は、少なくとも1台(本実施形態では、2台以上)の電動ポンプ31~33、蓄圧装置5及び制御装置10等を少なくとも有する。各電動ポンプ31~33は、同一の仕様のポンプである。
【0020】
各電動ポンプ31~33の吐出し側は、連結管(図示せず。)に接続されている。当該連結管は建物の配水管側に接続されている。そして、各電動ポンプ31~33は、例えば受水槽7に貯留された水を配水管に供給する。
【0021】
蓄圧装置5は、ポンプ装置3の吐出し側(本実施形態では、連結管)に接続されて当該ポンプ装置3が停止しているときに給水圧を保持する。蓄圧装置5は、不活性ガスが充填されたガス室5Aの内圧により、電動ポンプが停止しているときの給水圧を保持する。
【0022】
<1.2 制御装置>
制御装置10は、制御部11、駆動部12及び通信部14等を少なくとも備える。本実施形態に係る制御部11は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。
【0023】
制御部11は、少なくとも各電動ポンプ31~33の作動を制御可能である。具体的には、当該制御部11は、駆動部12を介して各電動ポンプ31~33の停止及び稼働を制御する。本実施形態に係る駆動部12は、インバータ方式の駆動回路である。
【0024】
駆動部12は、制御部11から出力される指令周波数に応じた周波数(以下、駆動周波数という。)を有する駆動電流を各電動ポンプ31~33に供給する。これにより、各電動ポンプ31~33は制御部11により可変制御される。
【0025】
制御部11には、圧力センサPs1の検出値及び流量センサFs1~Fs3の検出値等が入力されている。圧力センサPs1は、ポンプ装置3の吐出し側の圧力、つまり給水圧を検出する。
【0026】
流量センサFs1は、電動ポンプ31の吐出し流量を検出する。流量センサFs2は、電動ポンプ32の吐出し流量を検出する。流量センサFs3は、電動ポンプ33の吐出し流量を検出する。
【0027】
<ポンプ制御>
制御部11は、電動ポンプ31~33の制御(以下、ポンプ制御という。)として、小水量停止制御、起動制御、目標圧力制御、増台制御及び減台制御を実行可能である。なお、これらの制御を実行するためのソフトウェアは、予めROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に記憶されている。
【0028】
小水量停止制御は、吐出し流量が予め決められた流量(以下、停止流量という。)以下となったときに、対応する電動ポンプを停止させる制御である。例えば、電動ポンプ31の吐出し流量が停止流量以下となると、制御部11は、電動ポンプ31を停止させる。
【0029】
起動制御は、全ての電動ポンプ31~33が停止している状態において、給水圧が予め決められた値以下となったときに、少なくとも1台(本実施形態では、1台)の電動ポンプを起動させる制御である。
【0030】
本実施形態に係る制御部11は、起動制御時に最初に起動させる電動ポンプ(以下、先発ポンプという。)を予め決められたルールに従って変更する制御(以下、先発ローテション制御という。)が実行可能である。
【0031】
本実施形態に係る先発ローテション制御では、電動ポンプ31→電動ポンプ32→電動ポンプ32→電動ポンプ31→電動ポンプ32→電動ポンプ32→電動ポンプ31・・・・・・の順に先発ポンプが変更される。
【0032】
目標圧力制御は、給水圧が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように、稼働中の電動ポンプの駆動周波数を調整する制御である。なお、目標圧力は、例えば、予め決められた値、又は吐出し流量等の関数として決定される値である。
【0033】
増台制御は、例えば、電動ポンプ31のみで給水している状態において、当該電動ポンプ31による給水量が不足した場合に、停止している電動ポンプ32を稼働させる制御である。
【0034】
具体的には、電動ポンプ31のみが稼働している状態において、必要な給水量が増加すると、吐出し圧力が低下する。このため、制御部11は、目標圧力を維持すべく、電動ポンプ31の駆動周波数を大きくする。
【0035】
そして、駆動周波数が予め決められた上限周波数に到達した状態においても、吐出し圧力が目標圧力に到達しない場合に、制御部11は、停止している電動ポンプ32を起動し、複数の電動ポンプ31、32を同時に稼働させる。以下、複数の電動ポンプを同時に稼働させる状態を並列稼働状態という。
【0036】
減台制御は、増台制御の逆である。つまり、複数台の電動ポンプが稼働している状態において、必要な給水量が低下した場合に、稼働中の電動ポンプを1台ずつ順次停止させていく制御である。
【0037】
<1.3 遠隔管理装置>
遠隔管理装置20は、複数のポンプ装置と通信することにより、各ポンプ装置の運転状況を監視又は把握するととともに、各ポンプ装置の遠隔制御することが可能である。なお、遠隔管理装置20は、賃貸人である管理会社が維持・管理するコンピュータである。
【0038】
遠隔管理装置20には処理部22が設けられている。処理部22は、ポンプ装置3から送信されてきた使用基礎情報を利用して予め決められたルールに従った処理(以下、賃料算出処理という。)を実行する。使用基礎情報とは、賃料を決定するために必要な情報を少なくとも含む情報である。
【0039】
なお、本実施形態に係る処理部22は、ソフトウェアが遠隔管理装置20(CPU)にて実行されることにより実現される。当該ソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0040】
<2.ポンプシステムの作動>
<作動の概要>
ポンプ装置3の制御部11は、駆動部12及び流量センサFs1~Fs3と協働して使用基礎情報を検出する。つま、制御部11、駆動部12及び流量センサFs1~Fs3は、使用基礎情報を検出する基礎情報検出器として機能する。
【0041】
制御部11は、使用基礎情報を連続的又は予め決められた間隔で検出するとともに、検出した使用基礎情報を、制御装置10に設けられた記憶部(図示せず。)に記憶させる。制御部11は、当該記憶部に記憶されている使用基礎情報を遠隔管理装置20に送信する。なお、制御部11は、使用基礎情報を送信したときに、送信した使用基礎情報を当該記憶部から削除する。
【0042】
遠隔管理装置20、つまり処理部22は、ポンプ装置3から送信されてきた使用基礎情報を利用して賃料算出処理を実行するとともに、少なくとも予め決められた期間、当該使用基礎情報を保持する。
【0043】
なお、制御部11は、使用基礎情報を送信する際には、当該使用基礎情報に加えて、発信元を特定するための情報(例えば、ポンプ装置3の製造番号)も併せて送信する。処理部22は、発信元を特定するための情報と賃料算出処理の結果及び使用基礎情報とを関連付けた状態で当該処理結果及び使用基礎情報を保持する。
【0044】
ポンプ装置3から遠隔管理装置20への使用基礎情報の送信制御は、予め決められたタイミングにて定期的に実行される。なお、制御部11が使用基礎情報を定期的に検出する間隔(以下、検出間隔という。)は、送信制御が定期的に実行される際の間隔(以下、送信間隔という。)に比べて小さい時間(本実施形態では、約24時間)である。
【0045】
<使用基礎情報の詳細>
本実施形態に係る使用基礎情報には、(1)ポンプ装置3の消費電力及び(2)ポンプ装置3の送水量が少なくとも含まれる。ポンプ装置3の消費電力は、各電動ポンプ及び制御装置等の消費電力の和である。ポンプ装置3の送水量は、各電動ポンプの吐出し流量の和である。
【0046】
本実施形態では、定期的に使用基礎情報が送信される。このため、制御部11は、消費電力及び送水量を予め決められた期間内の積算値として送信する。具体的には、制御部11は、前回送信した時から今回送信する時まで(以下、積算期間という。)の消費電力及び送水量の積算値を使用基礎情報として送信する。
【0047】
そして、遠隔管理装置20は、送信されてきた消費電力及び送水量の積算値を、送信元のポンプ装置及び積算期間と関連付けて記憶するとともに、送信元のポンプ装置毎に賃料算出処理を実行する。
【0048】
本実施形態では、(3)積算期間内における各電動ポンプの運転状態の履歴も使用基礎情報に含まれる。運転状態の履歴とは、積算期間内における任意の時刻における各電動ポンプの稼働状態を示す情報(例えば、駆動周波数や吐出し流量等)の履歴をいう。
【0049】
つまり、積算期間内における各電動ポンプの運転状態の履歴は、(a)積算期間内における各電動ポンプの起動回数、(b)積算期間内における各電動ポンプの積算稼働時間、(c)積算期間内において並列稼働状態となったときの稼働台数、及び最も稼働台数が大きいときの台数(以下、最大稼働台数という。)、並びに(d)並列稼働状態にて稼働したときに時間等を示す情報となる。
【0050】
なお、制御部11は、ポンプ装置3に異常(故障)が発生した場合には、ポンプ装置3に異常(故障)が発生した旨の情報、及び異常箇所を示す情報を遠隔管理装置20に送信する(図2参照)。なお、当該情報の送信タイミングは、制御部11が当該異常を検知した時、又は使用基礎情報の送信時である。
【0051】
<賃料算出処理の詳細(図3参照)>
遠隔管理装置20の処理部22は、賃料算出処理として、少なくとも以下の処理を実行する。
【0052】
(1)処理部22は、ポンプ装置3から使用基礎情報として、当該ポンプ装置3の消費電力を受信したときに、当該受信した消費電力を利用してポンプ装置3が消費した電力量の電気料金を算出する(S4)。
【0053】
(2)処理部22は、ポンプ装置3から使用基礎情報として、当該ポンプ装置3の送水量を受信したときに、当該受信した送水量を利用してポンプ装置3にて送水した送水量に相当する水道料金を算出する(S5)。
【0054】
(3)処理部22は、ポンプ装置3から使用基礎情報として、当該ポンプ装置3の各電動ポンプの積算稼働時間を利用してポンプ装置3の使用料金を算出する(S6)。
【0055】
(4)処理部22は、上記(1)~(3)にて算出された料金の合算値に消費税分を加算した値を請求額とした請求書データを作成するとともに(S7)、当該請求書データを電子メール等の送付手段により賃借人に送付する(S8)。
【0056】
<2.1 稼働可能台数変更機能>
本実施形態に係るポンプシステム1は、稼働可能台数変更機能を実行可能である。
【0057】
稼働可能台数変更機能は、使用基礎情報を利用して最大稼働台数を把握するとともに、当該最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合に、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更する機能である。
【0058】
並列稼働可能台数とは、2台以上の電動ポンプが同時に稼働する場合において、同時稼働可能な電動ポンプの台数をいう。本実施形態では、3台の電動ポンプ31~33を有する。このため、本実施形態に係る並列稼働可能台数の初期値は3台である。
【0059】
並列稼働可能台数は、物理的な電動ポンプの台数以下の値である。すなわち、本実施形態では、物理的な電動ポンプの台数が3台であるので、並列稼働可能台数の最大値は3である。このため、本実施形態に係る制御部11は、「3、2、1」の中から並列稼働可能台数を選択決定する。
【0060】
つまり、並列稼働可能台数の値が3である場合には、増台制御によって最大3台の電動ポンプが稼働可能となる。並列稼働可能台数の値が2である場合には、物理的な電動ポンプの台数が3台であっても、増台制御によって最大2台の電動ポンプが稼働可能となる。
【0061】
並列稼働可能台数の値が1である場合には、物理的な電動ポンプの台数が3台であっても、実質的に増台制御が実行されない。つまり、並列稼働可能台数の値が1である場合には、稼働可能な電動ポンプは1台だからである。
【0062】
なお、本実施形態では、物理的な電動ポンプの台数が3台である。このため、仮に、並列稼働可能台数として2が選択された場合には、先発ローテション制御において、先発ポンプに選択された電動ポンプと、先発ポンプの次に起動する電動ポンプ(以下、次発ポンプという。)が並列稼働する電動ポンプとなる。
【0063】
したがって、並列稼働可能台数が2であっても、現実に稼働する電動ポンプは、先発ポンプの変更と共に変更される。つまり、並列稼働可能台数の値が物理的な電動ポンプの台数より小さい場合には、現実に稼働する電動ポンプが先発ローテション制御と共に変化する。
【0064】
換言すれば、並列稼働可能台数が物理的な電動ポンプの台数より小さい場合には、待機状態となる電動ポンプが先発ローテション制御と共に変化する。なお、待機状態となる電動ポンプは、稼働可能な電動ポンプに故障が発生したときの予備機となる。
【0065】
<稼働可能台数変更機能の詳細>
本実施形態に係る稼働可能台数変更機能は、主に遠隔管理装置20(処理部22)で実行される。このため、現時の並列稼働可能台数は、使用基礎情報と共にポンプ装置3から遠隔管理装置20に送信される。
【0066】
図4は、遠隔管理装置20にて実行される稼働可能台数変更機能を示すフローチャートの一例である。当該稼働可能台数変更は、送信間隔より十分に大きな間隔(以下、変更調査期間という。)で実行される。なお、本実施形態に係る変更調査期間は、例えば、1~3年である。
【0067】
稼働可能台数変更機能が起動されると、処理部22は、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さいか否かを判断する(S10)。最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さいと判断された場合には(S10:YES)、処理部22は、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更する(S11)。
【0068】
なお、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さくないと判断された場合には(S10:NO)、稼働可能台数変更機能が終了する。
【0069】
<3.本実施形態に係るポンプシステムの特徴>
本実施形態に係るポンプシステムに係るポンプ装置3は、いわゆる「リース契約」にて賃借人が占有的に使用及び収益をすることが可能となる。そして、賃貸人は、使用基礎情報を利用して賃料を決定し、当該賃料を賃借人から受領する。
【0070】
当該ポンプシステム1は、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合に、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更することが可能である。これにより、電力会社との契約アンペア数を小さくすることが可能となり得る。
【0071】
すなわち、契約アンペア数は、並列稼働可能台数に応じた値とする必要がある。したがって、並列稼働可能台数が大きくなるほど、契約アンペア数を大きくせざるを得ないので、電気料金の基本料金が高くなる。
【0072】
これに対して、本実施形態では、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合に、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更することが可能であるので、並列稼働可能台数を小さくすることが可能となる。したがって、契約アンペア数を小さくでき得るので、基本料金を下げることが可能となり得る。
【0073】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る稼働可能台数変更機能では、最大稼働台数を直接的に検出する構成であった。これに対して、本実施形態は、最大稼働台数を間接的に検出する構成である。以下の説明は、上述の実施形態との相違点に関する説明である。
【0074】
すなわち、処理部22は、「現時の並列稼働可能台数によるポンプ装置の定格最大流量」に対する「変更調査期間内における最大給水量」の割合を利用して最大稼働台数を間接的に検出する。
【0075】
具体的には、例えば、現時の並列稼働可能台数値が3台であるときのポンプ装置3の定格最大流量をQRmaxとし、更調査期間内における最大給水量をQmaxとした場合において、(QRmax×1/3)<Qmax<(QRmax×2/3)ならば、最大稼働台数は2となる。同様に、Qmax<(QRmax×1/3)ならば、最大稼働台数は1となる。
【0076】
そこで、本実施形態では、例えば、図5に示されるように、稼働可能台数変更機能が起動されると、処理部22は、(QRmax×1/3)<Qmax<(QRmax×2/3)が成立するか否かを判断する(S12)。
【0077】
(QRmax×1/3)<Qmax<(QRmax×2/3)が成立すると判断された場合には(S12:YES)、処理部22は、並列稼働可能台数を2に変更する(S11)。なお、図5は、変更前の並列稼働可能台数が3である場合の例である。
【0078】
上記において、「ポンプ装置の定格最大流量」とは、予め決められた送水負荷時におけるポンプ装置の製造者が保証する送水可能な最大流量である。そして、「ポンプ装置の定格最大流量」は、通常、ポンプ装置に設けられた銘板やサービスマニュアル等に記載されている。
【0079】
上記の説明は、電動ポンプ31~33が同一仕様であるとした場合の説明である。したがって、電動ポンプ31~33の仕様がそれぞれ異なる場合には、2/3や1/3等の比率は、当然に異なる値となる。
【0080】
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る稼働可能台数変更機能では、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合には、必ず、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更した。
【0081】
これに対して、本実施形態に係る稼働可能台数変更機能では、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さい場合であって、かつ、最大稼働台数にて稼働した時間が変更調査期間に対して予め決められた割合(例えば、40%)より小さい場合に、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更すされる。
【0082】
つまり、図6に示されるように、最大稼働台数が現時の並列稼働可能台数より小さいと判断された場合には(S10:YES)、処理部22は、最大稼働台数にて稼働した時間が変更調査期間の40%未満であるか否かを判断する(S14)。
【0083】
そして、最大稼働台数にて稼働した時間が変更調査期間の40%未満であると判断された場合(S14:YES)、処理部22は、並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数から当該最大稼働台数に変更する(S11)。なお、図6は、変更前の並列稼働可能台数が3である場合の例である。
【0084】
これにより、変更後の並列稼働可能台数にて給水した場合であっても、給水能力が不足してしまうことが未然に防止され得る。
【0085】
なお、図6は、第1実施形態に本実施形態を適用したものであった。しかし、本実施形態はこれに限定されない。つまり、本実施形態は、第2実施形態にも適用可能である。
【0086】
(第4実施形態)
本実施形態に係るポンプシステムは、稼働禁止機能を発揮可能である。
【0087】
稼働禁止機能は、処理部22にて実行される機能であって、図7に示されるように、賃料の支払いが滞っている旨の信号を受信したときに(S15:YES)、電動ポンプの稼働を禁止する旨の信号(以下、禁止指令という。)をポンプ装置3に送信する(S16)。
【0088】
これにより、本実施形態に係るポンプシステムを用いれば、賃料の支払いの滞ることが未然に抑止され得る。なお、本実施形態では、賃貸人若しくは賃貸人の代理人、又は賃貸人が管理する賃料管理装置(図示せず。)が、賃料の支払いが滞っていか否かの判断をする。
【0089】
また、禁止指令を受信したポンプ装置3は、遠隔管理装置20による遠隔操作、又は権限のある者(例えば、賃貸人)の操作によらなければ、当該電動ポンプの禁止状態を解除できない。つまり、賃借人は、当該電動ポンプの禁止状態を解除できない。
【0090】
なお、ポンプ装置3が既に停止状態にあるとき、又は電動ポンプ31~33が既に稼働不可な状態にあるとき、ポンプ装置3の電源が遮断されているとき、ポンプ装置3と通信ができないとき等には、遠隔管理装置20は、禁止指令を送信しない。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、電気料金及、水道料金及びポンプ装置3の使用料金を利用して賃料を決定する例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0092】
すなわち、当該開示は、例えば、(a)賃料がポンプ装置3の使用料金のみに基づいて決定される構成、又は(b)ポンプ装置3に異常(故障)が発生した旨の情報、及び異常箇所を示す情報も利用して賃料(特に、使用料金)を決定する構成であってもよい。
【0093】
上述の実施形態では、使用基礎情報を定期的に遠隔管理装置20に送信した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、使用基礎情報を連続的又は短い間隔で遠隔管理装置20に送信してよい。なお、遠隔管理装置20にて使用基礎情報を記憶する構成であれば、ポンプ装置3にて必要とされる記憶容量が小さくなる。
【0094】
上述の実施形態では、外部機器として遠隔管理装置20を用いた例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、携帯型コンピュータを外部機器として利用してもよい。この場合、携帯型コンピュータとポンプ装置3とが有線又は近距離無線通信にて接続される構成であってもよい。
【0095】
上述の実施形態に係るポンプ装置3は、上水の給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、下水等の汚水を送水するポンプ装置、海水を供給するポンプ装置、井戸水を供給するポンプ装置等にも適用可能である。
【0096】
上述の実施形態に係るポンプ装置3は、受水槽7に貯留された水を配水管に供給する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、受水槽が無く、電動ポンプの吸入側が水道に接続された構成であってもよい。
【0097】
上述の実施形態では、3台の電動ポンプを備える給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1台又は2台の電動ポンプを備える構成であってもよい。
【0098】
上述の実施形態では、稼働可能台数変更機能が実行可能であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、稼働可能台数変更機能が廃止された構成であってもよい。
【0099】
上述の実施形態では、建物の建築と同時に設置されるポンプ装置を例にしたものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、老朽化したポンプ装置を入れ替える場合にも適用可能である。なお、当該場合においては、賃料に入れ替え工事費用が含まれる構成であってもよい。
【0100】
上述の第4実施形態に係る遠隔管理装置20は、賃料の支払いが滞っている旨の信号を受信したときに、禁止指令をポンプ装置3に送信した。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0101】
すなわち、当該開示は、例えば、配水管に損傷が発生している場合、又は配水管に損傷が発生するおそれがあるとき(例えば、地震発生時等)に、遠隔管理装置20が禁止指令をポンプ装置に送信してもよい。
【0102】
上述の実施形態に係る稼働可能台数変更機能は、並列稼働可能台数が現時の並列稼働可能台数より小さくなるように、変更するものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、稼働可能台数変更機能にて並列稼働可能台数を大きくする構成であってもよい。
【0103】
すなわち、当該開示では、所定の要件を満たすとき、(a)並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数より大きくする機能、又は(b)並列稼働可能台数を現時の並列稼働可能台数より大きくする必要がある旨を賃貸人に通知する機能を実行する構成であってもよい。
【0104】
上記の「所定の要件を満たす」とは、例えば、並列稼働状態にある電動ポンプの台数が並列稼働可能台数となり、かつ、それら電動ポンプの駆動周波数が予め決められた駆動周波数(例えば、上限周波数の90%)以上となる状態が、変更調査期間に対して予め決められた割合(例えば、80%)より大きい場合等である。
【0105】
なお、上記(b)の通知機能においては、賃貸人が処理部22を介して手動操作にて並列稼働可能台数を現時より大きくする構成、又は賃貸人が許可することにより処理部22が並列稼働可能台数を現時より大きくする構成等であってもよい。
【0106】
上述の実施形態に係る処理部22は、予め決められたルールに従った処理として、電気料金、水道料金及び使用料の算出処理を実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、当該算出以外の処理(例えば、ポンプ装置の運転状態解析や故障解析等の処理)を実行するものであってもよい。
【0107】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1… ポンプシステム 3… ポンプ装置 5… 蓄圧装置
10… 制御装置 11… 制御部 12… 駆動部
14… 通信部 20… 遠隔管理装置 21… 通信部
22… 処理部 31~33… 電動ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7