IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 関西大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】磁化制御デバイス及び磁気メモリ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20240913BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20240913BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20240913BHJP
   H10N 50/20 20230101ALI20240913BHJP
   H01F 10/12 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L29/82 Z
H10B61/00
H10N50/10 Z
H10N50/20
H01F10/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021063692
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158651
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本多 周太
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0145575(US,A1)
【文献】特開2010-062531(JP,A)
【文献】特開2018-074140(JP,A)
【文献】特開2020-188138(JP,A)
【文献】特表2012-501037(JP,A)
【文献】国際公開第2020/208674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/82
H10B 61/00
H10N 50/10
H10N 50/20
H01F 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁から前記第1の非磁性金属のスピン拡散長以上の寸法分、前記第1の非磁性金属に重なり、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁化制御デバイス。
【請求項2】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁から1nm以上、3nm以下、前記第1の非磁性金属に重なり、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁化制御デバイス。
【請求項3】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の非磁性金属が、前記第1方向に延伸する第1方向延伸部と、前記第1方向延伸部から、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延伸する第3方向延伸部と、前記第3方向延伸部から、前記第1方向と略平行の第4方向に延伸する第4方向延伸部とを有し、
前記第1の強磁性体が、前記第1方向延伸部の第1の縁と、前記第3方向延伸部の第3の縁と、前記第4方向延伸部の第4の縁とに重なる位置に配置され、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁化制御デバイス。
【請求項4】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
前記第1の非磁性金属を前記第1方向に向かって電流が流れ、
前記第1の非磁性金属と略平行に配置されて前記第1方向と逆方向に向かって電流が流れる第2の非磁性金属と
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁に重なる強磁性体エッジと、前記強磁性体エッジに対向する対向エッジとを有し、
前記対向エッジは、前記第2の非磁性金属の縁に重なっており、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁化制御デバイス。
【請求項5】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の非磁性金属が、前記第1方向に延伸する第1方向延伸部と、前記第1方向延伸部の一端から、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に突出する第1突出部と、前記第1方向延伸部の他端から、前記第3方向に突出する第2突出部とを有し、
前記第1の強磁性体が、前記第1方向に延伸し、前記第1方向延伸部の外側の縁に重なり、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁化制御デバイス。
【請求項6】
前記第1の強磁性体が、互いに対向する縁を有し、
前記第1の非磁性金属が、2個設けられ、
前記第1の非磁性金属の一方の第1方向延伸部の外側の縁が、前記第1の強磁性体の一方の縁に重なり、
前記第1の非磁性金属の他方の第1方向延伸部の外側の縁が、前記第1の強磁性体の他方の縁に重なる請求項5に記載の磁化制御デバイス。
【請求項7】
前記第1の非磁性金属が重金属を含む請求項1に記載の磁化制御デバイス。
【請求項8】
第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、
第1の強磁性体と、
前記第1の強磁性体の、前記第1の非磁性金属と接する面の反対側の面に形成された絶縁体と、
前記絶縁体の、前記第1の強磁性体と接する面の反対側の面に形成された第2の強磁性体と、
を備え、
前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、
前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁から前記第1の非磁性金属のスピン拡散長以上の寸法分、前記第1の非磁性金属に重なり、
前記第1の非磁性金属の前記第2方向又は前記第2方向に反平行なスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体の磁化の向きが変化する磁気メモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性金属の表面に交差する方向に磁化された強磁性体の磁化を反転させる磁化制御デバイス及び磁気メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピン軌道トルク(SOT、Spin orbit torque)により磁化の向きを制御させる方法に基づく磁化制御デバイスが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の磁化制御デバイスは、強磁性金属層と、強磁性金属層の積層方向に交差する第1方向に延在し、強磁性金属層に接合するスピン軌道トルク配線とを備える。そして、この強磁性金属層の磁化は、上記積層方向に配向している。
【0004】
スピン軌道トルク配線から強磁性金属層に注入されるスピンの向きは、強磁性金属層の磁化の向きに対して交差する。強磁性金属層は形状異方性を有すると共に、形状異方性に伴う反磁場の分布を有する。この反磁場の分布は強磁性金属層の磁化が最も磁化反転しやすい磁化反転容易方向を生み出す。磁化反転容易方向は、積層方向からの平面視で上記第1方向と交差している。
【0005】
この磁化制御デバイスによれば、外部磁場や電圧などを強磁性金属層に与えること無く、スピン軌道トルク磁化反転に基づいて垂直磁化膜の磁化を反転させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/061435号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような特許文献1に記載の従来技術は、強磁性金属層の非磁性金属(スピン軌道トルク配線)に垂直な方向の磁化を反転させるために、強磁性金属層が形状異方性を有することが必須であるとしている。
【0008】
本発明の一態様は、簡素な構成により、外部磁場や電圧などを用いること無く、スピン軌道トルク磁化反転に基づいて強磁性金属層の磁化を反転させ、トルクを与え続けても磁化を片方の向きに留まらせることができる磁化制御デバイス及び磁気メモリ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、第1の強磁性体と、を備え、前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、前記第1の非磁性金属の前記第2方向のスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体のスピンの向きが変化する。
【0010】
この特徴によれば、第1方向に沿って第1の非磁性金属に電流を流すと、第2方向を向いたスピンがスピン軌道相互作用により第1の非磁性金属の第1方向及び第2方向に交差する第3方向側の縁に蓄積される。そして、第2方向の反対方向を向いたスピンがスピン軌道相互作用により第1の非磁性金属の第3方向の反対方向側の縁に蓄積される。次に、第1の非磁性金属の第3方向の反対方向側の縁に蓄積された第2方向の反対方向のスピンが、第1の強磁性体に注入される。そして、注入された第2方向の反対方向のスピンが第1の強磁性体で拡散されることで、第1の強磁性体の磁化が第2方向から第2方向の反対方向に反転する。この結果、簡素な構成により、外部磁場や電圧などを用いること無く、スピン軌道トルク磁化反転に基づいて強磁性金属層の磁化を反転させ、トルクを与え続けても磁化を片方の向きに留まらせることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁から前記第1の非磁性金属のスピン拡散長に対応する寸法分、前記第1の非磁性金属に重なることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1の強磁性体は、第1の非磁性金属の縁から第1の非磁性金属のスピン拡散長に対応する寸法分しか第1の非磁性金属に重ならないので、スピン軌道相互作用によって第1の非磁性金属の縁の方に曲がったスピンが第1の非磁性金属の縁に十分集積される。
【0013】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁から1nm、以上3nm以下、前記第1の非磁性金属に重なることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、第1の強磁性体は、第1の非磁性金属の縁から1nm以上3nm以下だけしか第1の非磁性金属に重ならないので、スピン軌道相互作用によって第1の非磁性金属の縁の方に曲がったスピンが第1の非磁性金属の縁に十分集積される。
【0015】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の非磁性金属が、前記第1方向に延伸する第1方向延伸部と、前記第1方向延伸部から、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延伸する第3方向延伸部と、前記第3方向延伸部から、前記第1方向と略平行の第4方向に延伸する第4方向延伸部とを有し、前記第1の強磁性体が、前記第1方向延伸部の第1の縁と、前記第3方向延伸部の第3の縁と、前記第4方向延伸部の第4の縁とに重なる位置に配置されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、第1の強磁性体が三辺の縁で第1の非磁性金属に重なるので、スピンの注入面積が増大し、第1の強磁性体の磁化の反転速度が増大する。
【0017】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の非磁性金属を前記第1方向に向かって電流が流れ、前記第1の非磁性金属と略平行に配置されて前記第1方向と逆方向に向かって電流が流れる第2の非磁性金属をさらに備え、前記第1の強磁性体が、前記第1の非磁性金属の前記縁に重なる強磁性体エッジと、前記強磁性体エッジに対向する対向エッジとを有し、前記対向エッジは、前記第2の非磁性金属の縁に重なっていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第1の強磁性体が二辺の縁で第1の非磁性金属に重なるので、スピンの注入面積が増大し、第1の強磁性体の磁化の反転速度が増大する。
【0019】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の非磁性金属が、前記第1方向に延伸する第1方向延伸部と、前記第1方向延伸部の一端から、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に突出する第1突出部と、前記第1方向延伸部の他端から、前記第3方向に突出する第2突出部とを有し、前記第1の強磁性体が、前記第1方向に延伸し、前記第1方向延伸部の外側の縁に重なることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、レーストラックメモリの磁化書込みに磁化制御デバイスを適用することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記第1の強磁性体が、互いに対向する縁を有し、前記第1の非磁性金属が、2個設けられ、前記第1の非磁性金属の一方の第1方向延伸部の外側の縁が、前記第1の強磁性体の一方の縁に重なり、前記第1の非磁性金属の他方の第1方向延伸部の外側の縁が、前記第1の強磁性体の他方の縁に重なることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、第1の強磁性体が二辺の縁で第1の非磁性金属に重なるので、スピンの注入面積が増大し、レーストラックメモリの磁化の反転速度が増大する。
【0023】
本発明の一態様に係る磁化制御デバイスは、前記非磁性金属が重金属を含むことが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、非磁性金属を構成する重金属により、スピン軌道相互作用が増大する。
【0025】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る磁気メモリ装置は、第1方向に延伸する第1の非磁性金属と、第1の強磁性体と、前記第1の強磁性体の、前記第1の非磁性金属と接する面の反対側の面に形成された絶縁体と、前記絶縁体の、前記第1の強磁性体と接する面の反対側の面に形成された第2の強磁性体と、を備え、前記第1の強磁性体の少なくとも一部は、前記第1の非磁性金属の少なくとも一つの縁と、第2方向に積層され、前記第1の非磁性金属の前記第2方向のスピンが、前記第1の強磁性体に注入されることにより、前記第1の強磁性体のスピンの向きが変化する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、簡素な構成により、外部磁場や電圧などを用いること無く、スピン軌道トルク磁化反転に基づいて強磁性金属層の磁化を反転させ、トルクを与え続けても磁化を片方の向きに留まらせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態1に係る磁化制御デバイスの平面図である。
図2】上記磁化制御デバイスを有する磁気メモリ装置の側面図である。
図3】上記磁化制御デバイスの動作を説明するための平面図である。
図4】上記磁化制御デバイスの他の動作を説明するための平面図である。
図5図4に示される線AAに沿った断面図である。
図6】上記磁化制御デバイスに設けられた第1の強磁性体の磁化方向とz方向のスピンとの間の関係を説明するための概念図である。
図7】上記第1の強磁性体の磁化方向と-z方向のスピンとの間の関係を説明するための概念図である。
図8】比較例に係る磁化制御デバイスを有する磁気メモリ装置の斜視図である。
図9】上記磁化制御デバイスに設けられた第1の非磁性金属に電流が流れたときのスピンホール効果を説明するための概念図である。
図10】上記磁化制御デバイスの動作を説明するための平面図である。
図11】上記磁化制御デバイスの他の動作を説明するための平面図である。
図12】上記磁化制御デバイスの反転時間のシミュレーションの条件を説明するための図である。
図13】上記磁化制御デバイスの反転時間のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図14】実施形態2に係る磁化制御デバイスの平面図である。
図15】上記磁化制御デバイスの変形例の平面図である。
図16】上記磁化制御デバイスの他の変形例の平面図である。
図17】上記磁化制御デバイスのさらに他の変形例の平面図である。
図18】上記さらに他の変形例の動作を説明するための平面図である。
図19】実施形態3に係る磁化制御デバイスの平面図である。
図20】上記磁化制御デバイスに設けられるレーストラックメモリの斜視図である。
図21】上記レーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
図22】上記レーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
図23】上記レーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
図24】上記レーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
図25】上記レーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔実施形態1〕
(磁化制御デバイス1の構成)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は実施形態1に係る磁化制御デバイス1の平面図である。図2は磁化制御デバイス1を有する磁気メモリ装置24の側面図である。
【0029】
磁化制御デバイス1は、x方向(第1方向)に延伸する第1の非磁性金属2と、第1の非磁性金属2の表面に垂直なz方向(第2方向)に磁化された第1の強磁性体3とを備える。第1の強磁性体3は、z方向から見て第1の非磁性金属2のエッジ4(縁)に重なる位置に配置される。
【0030】
このように、第1の強磁性体3の少なくとも一部は、第1の非磁性金属2のエッジ4と、z方向に積層される。そして、第1の非磁性金属2のz方向のスピンが、第1の強磁性体3に注入されることにより、第1の強磁性体3のスピンの向きが変化する。
【0031】
第1の強磁性体3は、第1の非磁性金属2のエッジ4から第1の非磁性金属2のスピン拡散長に基づく寸法分、第1の非磁性金属2に重なることが好ましい。ここで、スピン拡散長とは、スピンが逆方向のスピンに変わるまでのスピンの移動距離の平均値を意味する。
【0032】
そして、第1の強磁性体3は、第1の非磁性金属2のエッジ4から1nm以上、3nm以下、第1の非磁性金属2に重なることがより好ましい。第1の非磁性金属2のy方向に沿った幅寸法は5nm以上であることが好ましい。
【0033】
第1の非磁性金属2は重金属を含むことが好ましい。この重金属は例えばPt、Ph、W、及びTaを使用することができる。また、第1の非磁性金属3は、トポロジカル絶縁体でもよい。トポロジカル絶縁体は、物質の内部は絶縁体で表面は電気を通す物質である。例えば、トポロジカル絶縁体は、半金属ビスマス及びビスマス化合物がある。特にBiTeSbまたはBiSbがトポロジカル絶縁体として好適である。また、トポロジカル絶縁体は、組成変化により内部が導電性を有するようにしてもよい。
【0034】
第1の強磁性体3は、例えば、Co/Ni多層膜、CoNi系合金、Co/Pd多層膜、CoPd合金、Co/Pt多層膜、CoPt合金、Tb/FeCo多層膜、TbFeCo合金、CoFe合金、CoFeB合金、Fe/Ni多層膜、及びFeNi合金のうちの少なくとも一つで構成されることが好適である。
【0035】
磁気メモリ装置24は、第1の強磁性体3の、第1の非磁性金属2と接する面の反対側の面に形成された絶縁体22と、絶縁体22の、第1の強磁性体3と接する面の反対側の面に形成された第2の強磁性体23とを備える。第1の非磁性金属2と第1の強磁性体3と絶縁体22と第2の強磁性体23とは、SOT注入型の磁気メモリ装置24を構成する。第2の強磁性体23は、磁化の向きが固定された固定層を構成する。第1の強磁性体3は磁化の向きを変更可能な自由層を構成する。磁気メモリ装置24は、磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)等に利用することができる。
【0036】
第2の強磁性体23は、例えば、Co/Ni多層膜、CoNi系合金、Co/Pd多層膜、CoPd合金、Co/Pt多層膜、CoPt合金、Tb/FeCo多層膜、TbFeCo合金、CoFe合金、CoFeB合金、Fe/Ni多層膜、及びFeNi合金のうちの少なくとも一つで構成されることが好適である。第2の強磁性体23は、第1の強磁性体3と同じ素材で構成される必要はない。
【0037】
絶縁体22は、絶縁物質を主成分とする。絶縁体22は、MgO等の絶縁膜から構成されている。なお、絶縁体22を構成する材料としては、NaCl構造を有する酸化物が好ましく、前述したMgOの他、CaO、SrO、TiO、VO、NbO等が挙げられるが、絶縁体22としての機能に支障をきたさない限り、特に限定されるものではない。当該材料として、たとえば、Al、スピネル型MgAlなどを用いてもよい。本実施形態では、第1の強磁性体3、絶縁体22、及び第2の強磁性体23でTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子を構成している。しかし、絶縁体22の代わりにCuなどの金属を用いてGMR(Giant Magnetic Resistance)素子を構成してもよい。
【0038】
なお、理解の容易化のために、図1では絶縁体22及び第2の強磁性体23を省略して示している。図2よりも後の図面も理解の容易化のために絶縁体22及び第2の強磁性体23を省略して示している場合がある。
【0039】
(磁化制御デバイス1の動作)
図3は磁化制御デバイス1の動作を説明するための平面図である。図4は磁化制御デバイス1の他の動作を説明するための平面図である。図5図4に示される線AAに沿った断面図である。図6は磁化制御デバイス1に設けられた第1の強磁性体3の磁化方向とz方向のスピンとの間の関係を説明するための概念図である。図7は第1の強磁性体3の磁化方向と-z方向のスピンとの間の関係を説明するための概念図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0040】
このように構成された磁化制御デバイス1の第1の非磁性金属2に、図3に示すように、電流をx方向に沿って流すと、伝導電子は-x方向に向かって第1の非磁性金属2の中を移動する。この伝導電子は、スピン軌道相互作用によって、スピンに依存した方向に曲がる。例えば、z方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2の-y方向側のエッジ25に蓄積される。そして、-z方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2のy方向側のエッジ4に蓄積される。また、y方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2の第1の強磁性体3側の面13に蓄積される。そして、-y方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2の第1の強磁性体3とは反対側の面14に蓄積される。
【0041】
エッジ4に蓄積された-z方向のスピンは、第1の強磁性体3の-y方向側のエッジ26に注入される。エッジ25に蓄積されたz方向のスピンは、第1の強磁性体3が第1の非磁性金属2のエッジ25と重なっていないので、第1の強磁性体3に注入されない。従って、第1の強磁性体3には-z方向のスピンのみが注入される。そして、注入された-z方向のスピンが第1の強磁性体3で拡散されることで、図7に示すように、第1の強磁性体3の磁化がz方向から-z方向へ反転する。なお、通常、スピンの向きと磁気モーメントの向きは逆符号であるが、本明細書では、向きの説明を分り易くするためにスピンの向きと磁気モーメントの向きを同じ向きとして説明している。
【0042】
一方、図4に示すように-x方向に沿って電流を流すと、伝導電子はx方向に向かって第1の非磁性金属2の中を移動する。z方向を向いたスピンは、図4及び図5に示すように、スピン軌道相互作用によって第1の非磁性金属2のエッジ4に蓄積される。そして、-z方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2のエッジ25に蓄積される。ただし、スピンが蓄積される方向の符号は第1の非磁性金属2のスピンホール角の符号に依存するため、蓄積されるスピンの符号(z方向と-z方向)が非磁性金属2の材料によっては逆になる。その場合、第1の強磁性体3の磁化の向きを制御するために第1の非磁性金属2に流す電流の向きは逆になる。
【0043】
エッジ4に蓄積されたz方向のスピンは、第1の強磁性体3のエッジ26に注入される。エッジ25に蓄積された-z方向のスピンは、第1の強磁性体3が第1の非磁性金属2のエッジ25と重なっていないので、第1の強磁性体3に注入されない。従って、第1の強磁性体3にはz方向のスピンのみが注入される。そして、注入されたz方向のスピンが第1の強磁性体3で拡散されることで、図6に示すように、第1の強磁性体3の磁化が-z方向からz方向へ反転する。
【0044】
このように、第1の強磁性体3が、z方向から見て第1の非磁性金属2のエッジ4に重なる位置に配置されると、第1の非磁性金属2の表面に垂直な方向のスピンが第1の強磁性体3に注入され、第1の強磁性体3の磁化を反転させることができる。
【0045】
そして、第1の非磁性金属2に流れる電流の向きを逆にすることで、第1の強磁性体3に注入されるスピンの向きを逆にすることができる。すなわち、第1の非磁性金属2の第2方向(±z方向)のスピンが、第1の強磁性体3に注入されることにより、第1の強磁性体3のスピンの向きが変化する。
【0046】
(比較例)
図8は比較例に係る磁化制御デバイス91を有する磁気メモリ装置94の斜視図である。図9は磁化制御デバイス91に設けられた第1の非磁性金属2に電流が流れたときのスピンホール効果を説明するための概念図である。図10は磁化制御デバイス91の動作を説明するための平面図である。図11は磁化制御デバイス91の他の動作を説明するための平面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0047】
磁化制御デバイス91は、非磁性金属2と、z方向から見て第1の非磁性金属2の幅方向(y方向)の全幅と重なる位置に配置される第1の強磁性体93を備える。そして、磁気メモリ装置94は、磁化制御デバイス91と、第1の強磁性体93の、第1の非磁性金属2と接する面の反対側の面に形成された絶縁体72と、絶縁体72の、第1の強磁性体93と接する面の反対側の面に形成された第2の強磁性体73とを備える。
【0048】
このように構成された磁化制御デバイス91の第1の非磁性金属2に、図8に示すように、電流を-x方向に沿って流すと、伝導電子はx方向に向かって第1の非磁性金属2の中を移動する。この伝導電子は、スピン軌道相互作用によって、スピンに依存した方向に曲がる。例えば、z方向のスピンは、第1の非磁性金属2のエッジ25に蓄積される。そして、-z方向のスピンは、第1の非磁性金属2のエッジ4に蓄積される。また、y方向のスピンは、第1の非磁性金属2の面13に蓄積される。そして、-y方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2の面14に蓄積される。
【0049】
第1の強磁性体93には、第1の非磁性金属2のエッジ4に蓄積された-z方向のスピンと、エッジ25に蓄積されたz方向のスピンとの双方が注入される。このため、z方向のトータルの注入スピンは零になり、第1の非磁性金属2の磁化に反転のためのトルクを与えることができない。
【0050】
(反転時間のシミュレーション)
図12は磁化制御デバイス1の反転時間のシミュレーションの条件を説明するための図である。図13は磁化制御デバイス1の反転時間のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0051】
第1の強磁性体3のy方向の寸法5nm、x方向の寸法5nm、z方向の寸法2nmとし、強磁性体3を1nm、1nm、1nmの微小な立方体に分割してSOT磁化反転のシミュレーションを行なった。第1の強磁性体3が、第1の非磁性金属2のエッジ4から1nmだけ第1の非磁性金属2に重なるときの、第1の非磁性金属2への電流印加時間と第1の強磁性体3の磁化のz方向成分との間の関係をシミュレーションした。図13の横軸は第1の非磁性金属2への電流印加時間を示し、縦軸は第1の強磁性体3の磁化のz方向成分を示す。約1ナノ秒間電流を印加すると、第1の強磁性体3の磁化の反転が完了した。反転後も電流を流し続けているが、磁化が-zの向きに留まっている。このように、磁化制御デバイス1の構成により、第1の強磁性体3のz方向に係る磁化の反転が可能である。
【0052】
以上のように磁化制御デバイス1によれば、簡素な構成により、外部磁場や電圧などを用いること無く、スピン軌道トルク磁化反転に基づいて第1の強磁性体3のz方向の磁化を反転し留まらせることができる。
【0053】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0054】
図14は実施形態2に係る磁化制御デバイス1Aの平面図である。磁化制御デバイス1Aは、略U字形状に延伸する第1の非磁性金属2Aと、z方向に磁化された第1の強磁性体3とを備える。
【0055】
第1の非磁性金属2Aは、-x方向に延伸する延伸部5(第1方向延伸部)と、延伸部5からy方向(第3方向)に延伸する延伸部6(第3方向延伸部)と、延伸部6からx方向(第4方向)に延伸する延伸部7(第4方向延伸部)とを有する。
【0056】
第1の強磁性体3は、延伸部5のエッジ8(第1の縁)と、延伸部6のエッジ9(第3の縁)と、延伸部7のエッジ10(第4の縁)とに重なる位置に配置される。
【0057】
このように構成された磁化制御デバイス1Aの第1の非磁性金属2Aに、図14に示すように、延伸部7、6、及び5に沿って電流を流すと、伝導電子は、延伸部5、6、及び7に沿って移動する。-z方向のスピンは、スピン軌道相互作用によって、第1の非磁性金属2Aの延伸部5のエッジ8、延伸部6のエッジ9、及び延伸部7のエッジ10に蓄積され、第1の強磁性体3の三辺のエッジに注入される。そして、注入された-z方向のスピンが第1の強磁性体3で拡散されることで、第1の強磁性体3の磁化がz方向から-z方向へ反転する。
【0058】
このように、屈曲形状の非磁性金属2Aを設けてもよい。磁化制御デバイス1Aでは第1の強磁性体3の注入面積が図1の構成よりも増加するので、第1の強磁性体3の磁化の反転速度の増加が期待される。
【0059】
図15は変形例に係る磁化制御デバイス1Bの平面図である。第1の強磁性体3の四辺のエッジに-z方向のスピンが注入されるように構成してもよい。
【0060】
磁化制御デバイス1Bは、第1の非磁性金属2Bと、z方向に磁化された第1の強磁性体3とを備える。
【0061】
第1の非磁性金属2Bは、-x方向に延伸する延伸部5と、延伸部5からy方向に延伸する延伸部6と、延伸部6からx方向に延伸する延伸部7と、延伸部7から-y方向に延伸する延伸部11(第5方向延伸部)とを有する。
【0062】
第1の強磁性体3は、延伸部5のエッジ8と、延伸部6のエッジ9と、延伸部7のエッジ10と延伸部11のエッジ12(第5の縁)とに重なる位置に配置される。
【0063】
磁化制御デバイス1Bでは第1の強磁性体3の注入面積が図1の構成よりも一層増加するので、第1の強磁性体3の磁化の反転速度の一層の増加が期待される。
【0064】
図16は他の変形例に係る磁化制御デバイス1Cの平面図である。磁化制御デバイス1Cは、x方向に電流が流れる第1の非磁性金属2と、第1の非磁性金属2と平行に配置されて-x方向に電流が流れる第2の非磁性金属13とを備える。
【0065】
第1の強磁性体3は、第1の非磁性金属2のエッジ25(縁)に重なる強磁性体エッジ14と、強磁性体エッジ14に対向する対向エッジ15とを有する。第1の強磁性体3は、対向エッジ15が第2の非磁性金属13のエッジ16(縁)に重なる位置に配置される。
【0066】
第1の非磁性金属2に電流をx方向に沿って流すと、伝導電子は-x方向に向かって第1の非磁性金属2の中を移動する。そして、z方向を向いたスピンは、スピン軌道相互作用によって、第1の非磁性金属2の-y方向側のエッジ25に蓄積される。また、-z方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2のy方向側のエッジ4に蓄積される。
【0067】
第2の非磁性金属13に電流を-x方向に沿って流すと、伝導電子はx方向に向かって第2の非磁性金属13の中を移動する。そして、z方向を向いたスピンは、スピン軌道相互作用によって、第2の非磁性金属13のy方向側のエッジ16に蓄積される。また、-z方向を向いたスピンは、第2の非磁性金属13の-y方向側のエッジ27に蓄積される。
【0068】
この結果、z方向のスピンが、第1の非磁性金属2のエッジ25から第1の強磁性体3の強磁性体エッジ14に注入されるとともに、第2の非磁性金属13のエッジ16から第1の強磁性体3の対向エッジ15に注入される。そして、第1の強磁性体3の強磁性体エッジ14及び対向エッジ15に注入されたz方向のスピンが第1の強磁性体3で拡散されることで、第1の強磁性体3の磁化が-z方向からz方向へ反転する。
【0069】
このように、互いに平行に延伸する2本の非磁性金属2・13のエッジ25・16が第1の強磁性体3と重なるように構成してもよい。
【0070】
磁化制御デバイス1Cでは第1の強磁性体3の注入面積が図1の構成よりも増加するので、第1の強磁性体3の磁化の反転速度の増加が期待される。
【0071】
図17はさらに他の変形例に係る磁化制御デバイス1Dの平面図である。図18はさらに他の変形例に係る磁化制御デバイス1Dの動作を説明するための平面図である。
【0072】
磁化制御デバイス1Dは、x方向に延伸する第1の非磁性金属2と、z方向に磁化された第1の強磁性体3Dとを備える。第1の強磁性体3Dは、第1の非磁性金属2のエッジ4から第1の非磁性金属2のスピン拡散長に基づく寸法よりも長い寸法分、第1の非磁性金属2のエッジ4に重なっている。
【0073】
第1の非磁性金属2に電流を-x方向に沿って流すと、伝導電子はx方向に向かって第1の非磁性金属2の中を移動する。そして、-z方向を向いたスピンは、スピン軌道相互作用によって、第1の非磁性金属2のエッジ25に蓄積される。また、z方向を向いたスピンは、第1の非磁性金属2のエッジ4に蓄積される。
【0074】
ここで、第1の強磁性体3Dが第1の非磁性金属2に重なる寸法がスピン拡散長に基づく寸法よりも長いので、スピン軌道相互作用によって曲がったスピンは、エッジ4に到達する前に第1の強磁性体3Dと重なり、エッジ4に十分集積されない。このため、注入効率(磁化制御効率)は、図1に示す磁化制御デバイス1よりも低くなるが、第1の強磁性体3Dのz方向の磁化を反転させることができる。そして、磁化制御デバイス1Dの方が構造上磁化制御デバイス1よりも作成が容易である。
【0075】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
図19は実施形態3に係る磁化制御デバイス1Eの平面図である。磁化制御デバイス1Eは、一対の第1の非磁性金属20と、z方向に磁化された第1の強磁性体21とを備える。
【0077】
図20は磁化制御デバイス1Eに設けられるレーストラックメモリの斜視図である。図21図25はレーストラックメモリの動作を説明するための模式図である。
【0078】
第1の強磁性体21は、レーストラックメモリにより構成される。図20及び図21に示すように、第1の強磁性体21は、ナノ細線30を備える。ナノ細線30の長手方向に沿って複数の磁区Jが形成される。各磁区Jは垂直方向又は水平方向に磁化される。第1の強磁性体21の各磁区Jは、垂直方向(Z方向)に磁化されるものとする。
【0079】
図21及び図22に示すように、ナノ細線21に電流を流すことで、ナノ細線30に形成された複数の磁区Jが長手方向に沿って移動する。そして、図23に示すように、磁区Jのうちの一つを読出ヘッド28まで移動させて、当該磁区Jに記録された情報を読出ヘッド28が読み出す。次に、図24及び図25に示すように、書込ヘッド29の下側に移動した磁区に情報「0」又は「1」が書込ヘッド29により書き込まれる。
【0080】
図19に示す第1の非磁性金属20は、図21図25に示される書込ヘッド29に相当する。
【0081】
一対の第1の非磁性金属20のそれぞれは、x方向に延伸する延伸部17(第1方向延伸部)と、延伸部17の一端からy方向又は-y方向(第3方向)に突出する第1突出部18と、延伸部17の他端からy方向又は-y方向(第3方向)に突出する第2突出部19とを有する。
【0082】
第1の強磁性体21は、x方向に延伸し、一対の延伸部17の外側のエッジ31(縁)に重なる。
【0083】
第1の強磁性体21は、互いに対向するエッジ32・33(縁)を有する。第1の非磁性金属20は、第1の強磁性体21の両側に2個設けられる。一対の第1の非磁性金属20の一方の延伸部17の外側のエッジ31(縁)は、第1の強磁性体21の一方のエッジ32(縁)に重なる。一対の第1の非磁性金属20の他方の延伸部17の外側のエッジ31(縁)は、第1の強磁性体21の他方のエッジ33(縁)に重なる。
【0084】
このように構成された磁化制御デバイス1Eの第1の非磁性金属20の一方に、図19に示すように、第2突出部19、延伸部17、及び第1突出部18に沿って電流を流すと、伝導電子は、第1突出部18、延伸部17、及び第2突出部19に沿って移動する。z方向のスピンは、スピン軌道相互作用によって、第1の非磁性金属20の第1突出部18の外側のエッジ、延伸部17の外側のエッジ31、及び第2突出部19の外側のエッジに蓄積され、延伸部17の外側のエッジ31から第1の強磁性体21のエッジ32に注入される。
【0085】
第1の非磁性金属20の他方に、第1突出部18、延伸部17、及び第2突出部19に沿って電流を流すと、伝導電子は、第2突出部19、延伸部17、及び第1突出部18に沿って移動する。z方向のスピンは、スピン軌道相互作用によって、第1の非磁性金属20の第2突出部19の外側のエッジ、延伸部17の外側のエッジ31、及び第1突出部18の外側のエッジに蓄積され、延伸部17の外側のエッジ31から第1の強磁性体21のエッジ33に注入される。
【0086】
そして、注入されたz方向のスピンが第1の強磁性体21の対応する磁区で拡散されることで、第1の強磁性体21の対応する磁区の磁化が-z方向からz方向へ反転する。
【0087】
このように、磁化制御デバイス1Eは、レーストラックメモリの磁化書込みに適用することができる。
【0088】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。尚、各実施形態において、「垂直」とは、熱のゆらぎ等を考慮しない理論的な場合における表現であり、実際のスピンは揺らぎを有しており、完全に「垂直」でない場合も含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 磁化制御デバイス
2 第1の非磁性金属
3 第1の強磁性体
4 エッジ(縁)
5 延伸部(第1方向延伸部)
6 延伸部(第3方向延伸部)
7 延伸部(第4方向延伸部)
8 エッジ(第1の縁)
9 エッジ(第3の縁)
10 エッジ(第4の縁)
11 延伸部(第5方向延伸部)
12 エッジ(第5の縁)
13 第2の非磁性金属
14 強磁性体エッジ
15 対向エッジ
16 エッジ(縁)
17 延伸部(第1方向延伸部)
18 第1突出部
19 第2突出部
20 第1の非磁性金属
21 第1の強磁性体
24 磁気メモリ装置
25 エッジ(縁)
31 エッジ(縁)
32 エッジ(縁)
33 エッジ(縁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25