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特許7555123有機溶媒不含かつ劣化剤不含のトランスフェクション・コンピテント・ベシクルを含む組成物及びシステム並びにそれらに関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】有機溶媒不含かつ劣化剤不含のトランスフェクション・コンピテント・ベシクルを含む組成物及びシステム並びにそれらに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20240913BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240913BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240913BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240913BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
A61K9/127
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/712
A61K31/713
A61K38/00
A61K38/43
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/28
A61K48/00
A61P21/00
A61P25/02
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61K49/00
C12N15/09 100
C12N15/09 110
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2021517982
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019055472
(87)【国際公開番号】W WO2020077007
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】62/743,116
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502087932
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リービット,ブレア
(72)【発明者】
【氏名】カリス,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ペトカウ,テリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,パメラ
(72)【発明者】
【氏名】クルカーニ,ジェイッシュ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-513151(JP,A)
【文献】特表2014-523411(JP,A)
【文献】特表2018-509387(JP,A)
【文献】特表2016-528890(JP,A)
【文献】特表2018-511588(JP,A)
【文献】特表2016-539916(JP,A)
【文献】特表2011-507534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/88
A61K 9/127
A61K 47/00
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 31/712
A61K 31/713
A61K 31/7105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含む治療用及び/又は診断用カーゴを、脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)に封入する方法であって、前記方法が、
(a)有機溶媒及び界面活性剤を含まず、且つ脂質ベースのTCVを含む水性溶液を提供すること;及び
(b)前記治療用及び/又は診断用カーゴを前記水性溶液中で混合すること;
を含み、
前記脂質ベースのTCVは、20モル%~30モル%のカチオン性脂質を含み、前記カチオン性脂質が、1以上のイオン化可能なカチオン性脂質からなり、
前記混合は、有機溶媒又は界面活性剤の不在下で行われる、方法。
【請求項2】
前記脂質ベースのTCVは、20モル%又は30モル%のカチオン性脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上のイオン化可能なカチオン性脂質は、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)を含むか、又はDODMAからなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質ベースのTCVが、ポリエチレングリコール(PEG)又はコレステロールの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質ベースのTCVが、1モル%のPEG-脂質を含むか、又はPEG-脂質を含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質ベースのTCVが、1以上のイオン化可能なカチオン性脂質、1以上のリン脂質、及びコレステロールの混合物;又は1以上のイオン化可能なカチオン性脂質、1以上のリン脂質、コレステロール、及びPEG-脂質の混合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1以上のリン脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)及び/又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質ベースのTCVが、
(i)20/30/10/40モル%のDODMA/DOPE/DSPC/コレステロールの混合物;又は
(ii)20/30/10/39/1モル%のDODMA/DOPE/DSPC/コレステロール/PEG-脂質の混合物;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質が、
(i)酵素、ヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、Cas9、Cas10、Cas11、Cas12、若しくはCpf1を含む:並びに/又は
(ii)リボ核タンパク質(RNP)及び/若しくは核酸タンパク質複合体(PNA)の一部である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用及び/又は診断用カーゴが、
(A)Cas9タンパク質及びガイドRNAを含むRNP:又は、
(B)(i)Cas9タンパク質及びガイドRNAを含むRNP並びに(ii)一本鎖DNA(ssDNA)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療用及び/又は診断用カーゴが更に核酸を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が、
(i)デオキシリボ核酸(DNA);
(ii)リボ核酸(RNA);
(iii)二本鎖DNA、一本鎖DNA、プラスミドDNA、相補的DNA(cDNA)及び/若しくはプライマー;並びに/又は
(iv)低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA、マイクロRNA(miRNA)、及び/若しくはメッセンジャーRNA(mRNA)
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水性溶液が、25mM~100mMの酢酸緩衝液を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(A)前記混合が、
(i-1)千鳥型ヘリンボーンマイクロ混合;及び/若しくは
(i-2)T分岐ミキサ混合;
を用いて、並びに/又は
(ii)ピペットの往復動;
によって行われ、
(B)前記混合が、10~30秒間又は10~15秒間、室温で行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
治療用及び/又は診断用カーゴが封入された脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)を含む水性溶液を含む組成物であって、
(a)前記組成物は、有機溶媒及び界面活性剤を含まず;
(b)前記脂質ベースのTCVは、20モル%~30モル%のカチオン性脂質を含み、及び前記カチオン性脂質は、1以上のイオン化可能なカチオン性脂質からなる;並びに
(c)前記治療用及び/又は診断用カーゴがタンパク質を含む、組成物。
【請求項16】
前記脂質ベースのTCVは、20モル%又は30モル%のカチオン性脂質を含む、請求項15に記載の組成物
【請求項17】
前記1以上のイオン化可能なカチオン性脂質は、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)を含むか、又はDODMAからなる、請求項15又は16に記載の組成物
【請求項18】
前記脂質ベースのTCVが、PEG又はコレステロールの少なくとも1つを含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の組成物
【請求項19】
前記脂質ベースのTCVが、1モル%のPEG-脂質を含むか、又はPEG-脂質を含まない、請求項15~18のいずれか1項に記載の組成物
【請求項20】
前記脂質ベースのTCVが、1以上のイオン化可能なカチオン性脂質、1以上のリン脂質、及びコレステロールの混合物;又は1以上のイオン化可能なカチオン性脂質、1以上のリン脂質、コレステロール、及びPEG-脂質の混合物を含む、請求項15~19のいずれか1項に記載の組成物
【請求項21】
前記1以上のリン脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)及び/又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)を含む、請求項20に記載の組成物
【請求項22】
前記脂質ベースのTCVが、
(i)20/30/10/40モル%のDODMA/DOPE/DSPC/コレステロールの混合物;又は
(ii)20/30/10/39/1モル%のDODMA/DOPE/DSPC/コレステロール/PEG-脂質の混合物;
を含む、請求項15に記載の組成物
【請求項23】
前記タンパク質が、
(i)酵素、ヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、Cas9、Cas10、Cas11、Cas12、若しくはCpf1を含む:並びに/又は
(ii)リボ核タンパク質(RNP)及び/若しくは核酸タンパク質複合体(PNA)の一部である、請求項15~22のいずれか1項に記載の組成物
【請求項24】
前記治療用及び/又は診断用カーゴが、
(A)Cas9タンパク質及びガイドRNAを含むRNP:又は、
(B)(i)Cas9タンパク及びガイドRNAを含むRN並びに(ii)一本鎖DNA(ssDNA)を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記治療用及び/又は診断用カーゴが更に核酸を含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の組成物
【請求項26】
前記核酸が、
(i)デオキシリボ核酸(DNA);
(ii)リボ核酸(RNA);
(iii)二本鎖DNA、一本鎖DNA、プラスミドDNA、相補的DNA(cDNA)及び/若しくはプライマー;並びに/又は
(iv)低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA、マイクロRNA(miRNA)、及び/若しくはメッセンジャーRNA(mRNA)
を含む、請求項25に記載の組成物
【請求項27】
前記水性溶液が、25mM~100mMの酢酸緩衝液を含む、請求項15~26のいずれか1項に記載の組成物
【請求項28】
医薬品で用いるため:
遺伝子治療で用いるため:及び/又は
ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、若しくは脊髄性筋萎縮症の治療で用いるための、請求項15~27に記載の組成物。
【請求項29】
(I)患者の疾患若しくは状態を治療するための医薬品の製造のため;並びに/又は
II)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、若しくは脊髄性筋萎縮症を治療するための医薬品の製造のため;
の、請求項15~27のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項30】
(a)容器内の請求項15~27のいずれか一項に記載の組成物;及び
(b)治療用又は診断用の使用のための前記組成物の説明書;
を含む、キット。
【請求項31】
前記使用は、
(I)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、若しくは脊髄性筋萎縮症の治療のため;
(II)患者の疾患若しくは状態を治療するための医薬品の製造のため;並びに/又は
(III)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、若しくは脊髄性筋萎縮症を治療するための医薬品の製造のため;
の使用である、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
インビトロで、請求項15~27のいずれか一項に記載の組成物で単離された標的細胞をトランスフェクトすることを含む、トランスフェクション方法。
【請求項33】
前記標的細胞が哺乳動物細胞である、請求項32に記載のトランスフェクション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月9日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/743,116号の利益を主張し、この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
科学的研究及び医学的治療の重要な領域の1つに、RNA、DNA、他の核酸及び/又はタンパク質カーゴを特定の標的細胞などの標的部位に選択的かつ効率的に送達したいという要望がある。これは、遺伝子治療などの改善された患者治療、並びに癌及び他の状態の治療を含む様々な理由に役立ち得る。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など、ヒトが罹患し得る古典的な最悪の神経障害のいくつかを治療するために、脳及び中枢神経系全体で遺伝子治療を使用することができる可能性がある。現在の遺伝子治療アプローチには、例えば治療用核酸を患者内に運び入れるパッケージングを反復的に投与する必要性及びその毒性のために、特にヒト患者への広範な使用にいくつかの問題がある。本明細書の組成物、方法などは、これら又は他のそのような問題の1つ以上を改善するのに役立つ。
【0003】
脳内の疾患細胞などの標的部位へのDNA及び他の核酸の送達のより科学的な議論に目を向けると、そのような送達のための既存の方法には、場合によっては脂質ナノ粒子(「LNP」)又はリポソームと呼ばれる脂質粒子が含まれる。脂質ナノ粒子又は「LNP」という用語は、典型的には核酸を含有し、電子密度の高いコアを有する、ほぼ中性pHの脂質ベースの粒子を説明するために使用される。ベシクルとしても知られるリポソームは、単一の二重層と水性コアとを有する脂質ベースの構造である。LNP形成の典型的な確立されたプロセスは、最初のベシクル形成時にベシクルに特定のカーゴをロードする。これらのプロセスは、特殊な器具、有機溶媒及び/又は界面活性剤をさらに使用し、大量の材料を必要とし、処理時間が日単位であり、これらすべてが有用性、利用のしやすさ及び治療の容易さを著しく妨げる。
【0004】
LNP及び他の脂質粒子は、典型的には、イオン化可能なカチオン性脂質、1つ以上のリン脂質、コレステロール(Chol)、及びポリエチレングリコール脂質(PEG-脂質)(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)を含む。(特定のシステム、装置、方法、及び他の情報を説明する様々な参考文献が本明細書に記載されている。そのような参考文献はすべて、その全体が、並びにその教示及び開示のすべてについて、その参考文献が本出願のどこに現れるかにかかわらず、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における参照への引用は、そのような参照が本出願に対する先行技術を構成することを認めるものではない。)LNP組成物の例は、50/10/38.5/1.5mol%(それぞれ)の比のイオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール及びポリエチレングリコール(PEG)-脂質の組み合わせである。この組成物は、静脈内投与後に強力な肝細胞遺伝子サイレンシング(siRNA)又は発現(mRNA)を示すことが示されている(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。他の参考文献は、初代神経細胞の培養におけるsiRNA送達として、及び脳への送達のために、イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール及びポリエチレングリコール(PEG)-脂質を50/10/38.5/1.5モル%の比で含むLNP組成物を記載している(非特許文献11)。
【0005】
LNP配合物は、エタノールに溶解した脂質成分を核酸カーゴからなる酸性水相と迅速に混合することによって生成することができる(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。LNP製造のための確立された迅速混合プロセスには、千鳥型ヘリンボーンマイクロミキサ(staggered herringbone micromixer:SHM)(非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)によるマイクロ流体混合、又は特殊なポンプによるT字型混合(非特許文献18)、又は予め形成されたベシクルのエタノール/界面活性剤不安定化ロードのより最新のアプローチ(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22)が含まれる。3つの方法すべてにおいて、エタノール溶液(又は界面活性剤)は、脂質の再編成及び捕捉が起こるのに十分な膜流動性を提供するために必要であり、SHM及びT字型法の場合、エタノール溶液を水相に希釈すると粒子形成も起こる(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)。しかしながら、得られた懸濁液は、有機溶媒及び酸性pHのために「すぐに使用できる」ものではなく、したがって、得られた懸濁液は、かなりの下流処理を必要とする。材料コスト及び時間の観点から、これらのアプローチは、インビトロ用途のために実験室規模で、又は直接投与のために治療レベルでトランスフェクションコンピテントな配合物を実現することを著しく妨げる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Maurer,Wongら、2001
【文献】Semple,Klimukら、2001
【文献】Semple,Akincら、2010
【文献】Belliveau,Huftら、2012
【文献】Leung,Hafezら、2012
【文献】Suhr,Coelhoら、2015
【文献】Semple,Akincら、2010
【文献】Jayaraman,Ansellら、2012
【文献】Pardi,Tuyishimeら、2015
【文献】Suhr,Coelhoら、2015
【文献】Rungta,Choiら、2013
【文献】Jeffs,Palmerら、2005
【文献】Belliveau,Huftら、2012
【文献】Leung,Hafezら、2012
【文献】Belliveau,Huftら、2012
【文献】Rungta,Choiら、2013
【文献】Leung,Tamら、2015
【文献】Jeffs,Palmerら、2005
【文献】Wheeler,Palmerら、1999
【文献】Tam,Monckら、2000
【文献】Maurer,Wongら、2001
【文献】Semple,Klimukら、2001
【文献】Belliveau,Huftら、2012
【文献】Zhigaltsev,Belliveauら、2012
【文献】Zhigaltsev,Tamら、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養された哺乳動物初代細胞(一般に、初代細胞は、標的組織から直接得られる非形質転換非不死化細胞である)を含む哺乳動物細胞に、毒性のない方法で核酸及びタンパク質カーゴを効果的に送達するトランスフェクション試薬が依然として必要とされている。初代細胞を使用することの重要性及び細胞株の使用を上回るそれらの利点は十分に理解されているが、そのような細胞をトランスフェクトする際に遭遇する困難は、選択的遺伝子ノックダウンを必要とするいかなる種類の発見又は検証研究においても、それらの使用をほぼ完全に不可能としている。さらに、個別化医療への移行により、初代患者細胞で機能的ゲノムスクリーニング及び検証を行うことが求められており、これらのトランスフェクト困難な細胞型のための堅牢で毒性のないトランスフェクション方法の必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本システム及び方法などは、これらの困難の1つ以上に対する解決策を提供し、及び/又は他の利点を提供する。
【0009】
発明の概要
本明細書におけるシステム、組成物、装置及び方法などは、タンパク質、リボ核タンパク質(RNP)、RNA、DNA及び他の核酸カーゴ及び他の選択カーゴを標的細胞に安全かつ効率的に送達するように構成された、本明細書において典型的にはトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(transfection competent vesicle:TCV)と呼ばれる脂質ベースのベシクルを提供する。安全性及び効率はそれぞれ、及び両方とも、TCVローディングプロセス(すなわち、選択カーゴをTCVに挿入する)、TCV貯蔵プロセス、及び/又はTCV送達プロセスから、エタノールなどの有機溶媒及びドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤などの不安定化剤を除去することによって部分的に達成される。したがって、TCVは、例えば、不安定化剤不含の懸濁液として、不安定化剤不含の溶液中に維持される。
【0010】
本明細書で使用される場合、TCVは、脂質ベースであり、不安定化剤を含まず、かつ選択カーゴを内包せずに生成及び/又は貯蔵される、リポソーム又は他のベシクルの一種である。そのようなTCVの利点の1つは、それらが不安定化剤の不在下で溶液中に又は懸濁液として保存可能であり、不安定化剤の不在下で選択カーゴを捕捉することができ、不安定化剤の不在下でそのような選択カーゴを標的細胞に送達することができることである。選択カーゴは、選択カーゴを含有するTCVでトランスフェクトされた標的細胞及び/又は標的患者に対して所望の効果をもたらすRNP、RNA、DNA、タンパク質などを示す。したがって、文脈から明らかでない限り、本明細書のTCVは、最終選択カーゴを欠いており、いくつかの実施形態では、周囲溶液などを除いて空である。そのようなTCVは、有機溶媒又は他の不安定化剤を使用せずに、核酸及びタンパク質カーゴなどを哺乳動物細胞に安全かつ効率的に送達するように構成されている。
【0011】
TCV送達プロセスは、初代細胞などの哺乳動物細胞の選択カーゴによるトランスフェクションを含み得る。カーゴはまた、リボ核タンパク質(RNP)などのタンパク質と複合体化した核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書のシステム、組成物、装置及び方法などは、空のTCV又はロードされたTCVを提供することができる。
【0012】
いくつかの態様では、本明細書のシステム、組成物、装置及び方法などは、脂質ベシクル又はリポソームにカーゴを捕捉(又はロード)するため及び/又はそのようなベシクルを貯蔵するために従来必要とされていた有機溶媒及び他の不安定化剤を含まないトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)を提供する。本明細書の組成物、方法などは、専用の機器を使用せずに使用又は実施することができ、例えば、本明細書の予め形成されたTCVは、ピペットの往復動によって空のTCV含有懸濁液を様々な種類の選択カーゴと穏やかに混合することによってロードすることができる。本明細書の組成物、方法などは、「ベンチトップローディング」に特に有用であり得、少量又は大量の選択カーゴ材料と共に使用することができる。さらに、空のTCVの単一のバッチに、複数の異なる選択カーゴを並列にベンチトップローディングすることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書のシステム、組成物、装置及び方法などは、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVを提供する。エタノール又は界面活性剤又は他の不安定化剤がTCV生成に使用されている場合は、透析又は他の適切な方法で除去して、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV組成物を提供する。TCVは、ピペット内でのTCV生成流体の反復手動往復動、SHM、T字型混合もしくは押出方法、又は必要に応じて他のTCV混合方法などの穏やかな混合を使用してロードすることができる。
【0014】
一態様では、脂質ベースのTCVは、イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール及びPEG-脂質の混合物から構成され、TCV含有組成物は、有機溶媒及び/又は界面活性剤不含であり、この用語は、その通常の使用において、そのような有機溶媒及び界面活性剤が本質的に存在せず、極めて少量が組成物中に残存している可能性はあるが、有機溶媒及び/又は界面活性剤によって有意な有害作用が引き起こされることはないことを示すために使用される。
【0015】
いくつかの態様では、イオン化可能なカチオン性脂質は、TCVの脂質成分の20~50%を構成する。一態様では、空の脂質ベースのTCVは、20/30/10/39/1mol%のDODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質の比で脂質成分を含有する。別の一態様では、空の脂質ベースのTCVは、20/30/10/40mol%のDODMA/DOPE/DSPC/Cholの比で脂質成分を含有する。別の一態様では、空の脂質ベースのTCVは、50/10/39/1mol%のDODMA/DSPC/Chol/PEG-脂質の比で脂質成分を含有する。別の一態様では、空の脂質ベースのTCVは、50/10/39/1mol%のDODMA/DOPE/DSPC/Cholの比で脂質成分を含有する。必要に応じて、さらなる範囲の成分を使用することもできる。いくつかの態様では、イオン化可能なカチオン性脂質の比が減少される。例えば、イオン化可能なカチオン性脂質の比は、約10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%又は60mol%であり得る。
【0016】
一態様では、空の脂質ベースのTCVを、例えば10~30秒間など、必要に応じて5秒間、10秒間、15秒間、20秒間、30秒間、45秒間、1分間又は2分間、核酸選択カーゴと混合する。次いで、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の環境で保存し、及び/又は有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の環境で、再び哺乳動物細胞などの標的細胞に投与することができる。
【0017】
いくつかの態様では、核酸選択カーゴは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、RNA、低分子干渉RNA、短ヘアピンRNA、メッセンジャーRNA、相補的DNA、マイクロRNA、プラスミドDNA、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、核酸選択カーゴは、例えば選択カーゴの安定性を改善するために、合成又は化学修飾オリゴヌクレオチドを含み得る。選択カーゴは、核酸と複合体化したタンパク質(PNA)であり得る。タンパク質選択カーゴは、遺伝子編集に関与するタンパク質又は細胞標識のレポータとして機能するタンパク質(蛍光マーカなど)であり得る。いくつかの実施形態では、核酸と複合体化したタンパク質ベースの選択カーゴは、リボ核タンパク質である。
【0018】
いくつかの態様では、本システム、装置及び方法などは、選択カーゴを脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)に封入する方法であって、
脂質ベースのTCVを含む水性溶液を提供することであって、水性溶液は不安定化剤不含であり得ることと、
選択カーゴを脂質ベースのTCV内に封入して、脂質ベースのTCV封入選択カーゴを提供するのに適した条件下で十分な時間、選択カーゴを溶液中に混合することであって、混合は、有機溶媒又は界面活性剤の不在下で行うことができることと、
を含む方法を提供する。
【0019】
不安定化剤は、有機溶媒又は界面活性剤のうちの少なくとも1つであり得る。有機溶媒は、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はアセトニトリル(ACN)であり得る。界面活性剤は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり得る。不安定化剤は、温度であり得る。水性溶液は、25mM~100mMの酢酸緩衝液であり得る。
【0020】
脂質ベースのTCVが封入の前に空であってもよく、本方法は、
溶媒及び界面活性剤を実質的に含まない水性溶液中で脂質ベースのTCV封入選択カーゴを得ること
をさらに含むことができる。
【0021】
脂質ベースのTCVは、例えばイオン化可能なカチオン性脂質などのカチオン性脂質を含むことができる。脂質ベースのTCVは、約20mol%~50mol%のカチオン性脂質を含むことができる。イオン化可能なカチオン性脂質は、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)を含むことができる。脂質ベースのTCVは、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)の混合物を含むことができる。混合物は、ポリエチレングリコール(PEG)又はコレステロールのうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0022】
脂質ベースのTCVは、DODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質の混合物を約20/30/10/39/1mol%含むことができ、DODMA/DOPE/DSPC/Cholの混合物を約20/30/10/40mol%含むことができ、DODMA/DSPC/Cholの混合物を約50/10/40mol%含むことができ、DODMA/DSPC/Chol/PEG-脂質の混合物を約50/10/39/1mol%含むことができ、又はDODMA/DSPC/Chol/PEGの混合物を約50/10/39/1mol%含むことができる。
【0023】
選択カーゴは、修飾核酸などの核酸であり得る。修飾核酸は、例えば、2’-O-メチル化(2’-O-ME)、ホスホロチオエート又はモルホリノ、ロックド核酸のうちの少なくとも1つを含み得る。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)であり得る。DNAは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、相補的DNA(cDNA)又はプラスミドDNAを含むことができる。核酸は、リボ核酸(RNA)を含むことができる。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)を含むことができる。選択カーゴはタンパク質を含むことができる。タンパク質は、機能性リボ核タンパク質であり得るリボ核タンパク質(RNP)の一部であり得る。RNPは、Cas9タンパク質又はガイドRNAの少なくとも1つ、Cas9タンパク質及びガイドRNAの両方、あるいはCas9タンパク質、ガイドRNA及び一本鎖DNA(ssDNA)を含むことができる。
【0024】
カーゴは、酵素、ヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つ、又はプライマを含むことができる。カーゴは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、Cas9、Cas10、Cas11、Cas12、又はCpf1のうちの少なくとも1つを含むことができる。カーゴは、酵素、ヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つ、又はプライマを含むことができる。カーゴは、ヌクレアーゼ又は抗原をコードするmRNAを含むことができる。
【0025】
方法は、脂質ベースのTCVを選択カーゴと混合することをさらに含むことができ、選択カーゴは、カチオン性脂質1μモル当たり選択カーゴ約0.022~0.058mgの比で存在し得る核酸であり得る。方法は、脂質ベースのTCVを選択カーゴと混合することをさらに含むことができ、選択カーゴは、カチオン性脂質1μモル当たり選択カーゴ約0.029~0.116mgの比で存在し得る核酸であり得る。脂質ベースのTCV及び選択カーゴを、約467モル比の脂質ベースのTCV:選択カーゴで混合することができる。選択カーゴは、リボ核タンパク質(RNP)であり得る。脂質ベースのTCV及び選択カーゴは、約400~1200モル比の脂質ベースのTCV:選択カーゴで混合され得る。脂質ベースのTCV及び選択カーゴは、約473~1173モル比の脂質ベースのTCV:選択カーゴで混合され得る。脂質ベースのTCV及び選択カーゴは、約3000~5000モルまでの比の脂質ベースのTCV:選択カーゴで混合され得る。
【0026】
脂質ベースのTCV及び選択カーゴは、約10~15秒間、又は約10~30秒間、ほぼ室温で混合することができる。混合は、千鳥型ヘリンボーンマイクロ混合又はT字型混合を使用して行うことができる。混合は、ピペット内での往復動によって行うことができる。
【0027】
いくつかの態様では、本システム、装置及び方法などは、水性溶液中に脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)を含む組成物を提供する。組成物は、不安定化剤不含、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含であってもよい。組成物及び/又は脂質ベースのTCVは、概要、図面、詳細な説明又は特許請求の範囲で論じられるようにさらに構成することができる。本システム、装置及び方法などは、有機溶媒及び界面活性剤などの不安定化剤を実質的に含まない水性溶液中に脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)封入選択カーゴを含む組成物を提供する。本明細書で論じられる脂質ベースのTCV封入選択カーゴ。
【0028】
本システム、装置及び方法などはまた、トランスフェクション方法であって、本明細書中で論じられるような脂質ベースのトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)封入選択カーゴで標的細胞をトランスフェクトすることを含む方法を提供する。標的細胞は、例えば哺乳動物初代細胞、哺乳動物初代神経細胞、培養哺乳動物細胞、又は哺乳動物患者由来の細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
【0029】
本明細書の方法は、例えばベンチトップローディングのために実験室で実施することができる。本方法は、商業量のトランスフェクト細胞を作製するために工場で実施することができる。本方法は、インビボ手順、医療手順、治療手順又は遺伝子治療手順の一部として実施することができる。本方法は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、又は脊髄性筋萎縮症の治療の一部として実施することができる。本方法はさらに、脂質ベースのTCV封入選択カーゴを患者の脳に送達することを含み得る。
【0030】
いくつかのさらなる態様では、本システム、装置及び方法などは、本明細書の組成物を含むキットを提供する。組成物は容器に入っていてもよく、キットは組成物の使用説明書を含んでもよい。説明書は、本明細書の方法のいずれかによる組成物の使用を指示してもよい。容器は、少なくとも一用量の組成物を哺乳動物に投与するように構成することができ、キットは、投与のための説明書を含む少なくとも1つのラベルをさらに含む。
【0031】
いくつかの態様では、本システム、装置及び方法などは、哺乳動物であり得る患者の疾患又は状態を阻害、予防、又は治療するための医薬品の製造に使用するための本明細書の単離及び精製組成物を提供する。
【0032】
これら及び他の態様、特徴及び実施形態は、以下の詳細な説明及び添付の図面を含む本出願に記載されている。特に明記しない限り、すべての実施形態、態様、特徴などは、任意の所望の方法で混合及び適合され、組み合わせ及び置換され得る。さらに、特定のシステム、装置、方法、及び他の情報を説明する関連出願の相互参照を含む様々な参考文献が本明細書に記載されている。そのような参考文献はすべて、その全体が、並びにその教示及び開示のすべてについて、その参考文献が本出願のどこに現れるかにかかわらず、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1A図1Dは、本明細書の方法に従って作製されたトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)は、不死化細胞及び初代ニューロンにおけるノックダウンを示す。図1Aは、50%のイオン化可能なカチオン性脂質で構成された、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVによるトランスフェクション後のHEK-Luc細胞における相対的ルシフェラーゼ発現を示す。図1Bは、対照(細胞のみ)ウェルの%としての、図1Aと同じトランスフェクションセットからの細胞生存率を示す。図1Cは、ニューロンへのsiRNA選択カーゴの有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV媒介トランスフェクション後の初代皮質ニューロンにおけるhdh mRNAの相対的発現を示す。siRNA標的hdh及びTCVを、図1Aと同じイオン化可能なカチオン性脂質パネルを使用して生成した。図1Dは、オフターゲット(ルシフェラーゼ)siRNAを送達するための、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを使用した初代皮質ニューロンにおける同等のトランスフェクションのセットのMTT減少によって測定される細胞生存率を示す。HEK-Luc細胞については条件ごとにN=4、初代ニューロンについては条件ごとにN=3ウェル。データは平均±SEMを表す。対照(細胞のみ)条件と比較した各条件での一方向ANOVA後のBonforroni事後分析によるp<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2図2A図2Dは、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVの効力は、空のTCVを生成するために使用される混合方法に依存しない。図2Aは、50%のイオン化可能な脂質で構成され、T字型混合(DODMA-50%)又は押出(DODMA-50%-X)のいずれかによって形成されたTCVによるトランスフェクション後のHEK-Luc細胞における相対的ルシフェラーゼ発現を示す。図2Bは、対照(細胞のみ)ウェルの%としての、図2Aと同じトランスフェクションセットからの細胞生存率を示す。図2Cは、図2Aと同じTCVパネルを使用したhdhを標的とするsiRNAの有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV媒介トランスフェクション後の初代皮質ニューロンにおけるhdh mRNAの相対的発現を示す。図2Dは、オフターゲット(ルシフェラーゼ)siRNAを送達するための、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを使用した初代皮質ニューロンへの同等のトランスフェクションセットのMTT減少によって測定される細胞生存率を示す。HEK-Luc細胞については条件ごとにN=4、初代ニューロンについては条件ごとにN=3ウェル。データは平均±SEMを表す。対照(細胞のみ)条件と比較した各条件での一方向ANOVA後のBonforroni事後分析によるp<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3図3A図3Dは、イオン化可能な脂質の含有量が減少した有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVは、低毒性の強力なsiRNA送達を促進する。図3Aは、20%又は50%のイオン化可能な脂質1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)で構成されたTCVによるトランスフェクション後のHEK-Luc細胞における相対的ルシフェラーゼ発現を支示す。図3Bは、対照(細胞のみ)ウェルの%としての、図3Aと同じトランスフェクションセットからの細胞生存率を示す。図3Cは、図3Aと同じTCVパネルを使用したhdhを標的とするsiRNAの有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV媒介トランスフェクション後の初代皮質ニューロンにおけるhdh mRNAの相対的発現を示す。図3Dは、オフターゲット(ルシフェラーゼ)siRNAを送達するための、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを使用した初代皮質ニューロンにおける同等のトランスフェクションのセットのMTT減少によって測定される細胞生存率を示す。HEK-Luc細胞については条件ごとにN=4、初代ニューロンについては条件ごとにN=3ウェル。データは平均±SEMを表す。対照(細胞のみ)条件と比較した各条件での一方向ANOVA後のBonforroni事後分析による*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4図4A図4Bは、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVにDOPEを組み込んでも、TCVの形態は変化しない。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVにDOPEを組み込んでも、TCVの形態は変化しない。Cryo-TEM分析を、(A)20/30/10/39/1mol%のDODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質(DOPE=1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン;DSPC=1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;PEG=ポリエチレングリコール)及び(B)DODMA/DSPC/Chol/PEG-脂質(50/10/39/1mol%)のTCVについて実施した。スケールバー=100nm。
図5】本明細書の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVは、機能性リボ核タンパク質(RNP)を送達するために使用することができる。HEK293細胞をCas9 RNP及び一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)修復鋳型でトランスフェクトし、双方を、本明細書の方法に従って作製した有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVによって送達した。Cas9タンパク質を、GRN遺伝子を標的とするガイドに複合体化した。トランスフェクションの48時間後に細胞からDNAを抽出した。野生型(WT)GRN対立遺伝子又は、送達されたssODNがCas9によって生じたDNA二本鎖切断に相同組換え修復(HDR)によって組み込まれた場合にのみ存在する変異型GRN対立遺伝子を、PCRを使用して特異的に検出した。変異型GRN対立遺伝子は、Cas9 RMPのTCV媒介送達後に検出することができるが、対照(Ctrl)細胞には存在しない。
図6】初代ニューロン内に位置するCas9の顕微鏡写真である。本明細書に記載の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるRNPは、赤色で示されるCas9タンパク質に対する蛍光抗体を使用して検出することができる。未処理対照は、そのような赤色蛍光シグナルを有さない。青色シグナル=核酸(DAPI染色)、緑色シグナル=ファロイジン(F-アクチン染色)。
図7】HEK細胞における空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのRNPのベンチトップローディングによって送達されるRNPによる転写ノックダウンを示すグラフである。HEK293細胞を、ルシフェラーゼを標的とするCas9 RNPでトランスフェクトした。(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))の配合率のTCVをベンチでロードした。qPCRによって測定したHEK細胞におけるルシフェラーゼmRNAの相対レベルは、対照(図中では「ctrl」)と比較して有意なノックダウンを示している。群あたりN=3。データは平均±SEMを表す。スチューデントのt検定によりp=0.0018。
図8】HEK細胞における空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのRNPのベンチトップローディングによって送達されるRNPによるタンパク質ノックダウンを示すグラフである。HEK293細胞を、ルシフェラーゼを標的とするCas9 RNPでトランスフェクトした。(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))の配合率のTCVをベンチでロードした。ONE-Gloによって測定したHEK細胞におけるルシフェラーゼタンパク質の相対レベルは、対照(図中では「ctrl」)と比較して有意なノックダウンを示している。群あたりN=3。データは平均±SEMを表す。スチューデントのt検定によりp=0.0003。
図9】初代皮質ニューロンにおける空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのRNPのベンチトップローディングによって送達されるRNPによる転写ノックダウンを示すグラフである。初代皮質ニューロンを、ヒトハンチンチン(HTT)を標的とするCas9 RNPでトランスフェクトした。(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))の配合率のTCVをベンチでロードした。qPCRによって測定した初代ニューロンにおけるHTT mRNAの相対レベルは、対照(図中では「gLuc」)と比較して有意なノックダウンを示している。群あたりN=3。データは平均±SEMを表す。スチューデントのt検定によりp=0.0039。
図10】HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるmRNAについてのmRNA発現を示すグラフである。ルシフェラーゼmRNAを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、様々な比率、すなわち、低=0.029mgのmRNA/μmol脂質、中=0.058mgのmRNA/μmol脂質、高=0.116mgのmRNA/μmol脂質でHEK細胞に送達した。すべての比率が対照と比較して有意な発現を示し、最も低い比率が最も高い発現を示した。mRNA発現をONE-Glo+Toxキット(Promega)によって測定した(条件あたりN=3)。
図11】初代皮質ニューロンにおける有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるmRNAについてのmRNA発現を示すグラフである。ルシフェラーゼmRNAを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、異なる投与量で初代皮質ニューロンに送達した。すべての投与量が対照と比較して有意な発現を示した。mRNA発現をONE-Glo+Toxキット(Promega)によって測定した(条件あたりN=3)。
図12】HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVにおけるRNPについての細胞生存率を示すグラフである。RNPを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、又は細胞毒性評価のためにRNAiMax(図中の「Rmax」;ThermoFisher Scientific社)を使用してHEK細胞に送達した。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、RNAiMaxと比較して有意に毒性が低かった(p=0.0002)。ONE-Glo+Toxキット(Promega)を群あたりN=3で用いて毒性を評価した。
図13】初代ニューロンにおける空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのsiRNAのベンチトップローディングについての細胞生存率を示す顕微鏡写真である。siRNAを、有機溶媒非含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質(20/30/10/39/1))を介して、又は市販のMirus TKOシステム(Mirus Bio)を使用して、細胞毒性評価のために初代ニューロンに送達した。顕微鏡写真によって示されるように、ベンチトップローディングによって空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVに送達されたsiRNAは、Mirus TKOシステムと比較して有意に毒性が低かった。
図14】HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVのノックダウンを示すグラフである。siRNAを、50%(「D-50%」、T字型混合によって作製)、50%(「D-50% Ex」、押出によって作製)の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV DODMAレベルで、市販のMirus TKOシステム(Mirus Bio)を使用して送達した。本発明の50%DODMA配合物は約50%のノックダウンを示したが、Mirus TKOシステムの性能はより劣っていた。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書におけるシステム、組成物、装置及び方法などは、DNA及び他の核酸選択カーゴを標的細胞に安全かつ効率的に送達するように構成された、本明細書において典型的にはトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)と呼ばれる脂質ベースのベシクルを提供する。安全性及び効率はそれぞれ、及び両方とも、TCVローディング及び貯蔵プロセス(すなわち、選択カーゴをTCVに挿入する)及び/又はTCV送達プロセスから、例えばエタノールなどの有機溶媒及びドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤などの破壊剤を除去することによって部分的に達成される。TCV送達プロセスは、初代細胞などの哺乳動物細胞の選択カーゴによるトランスフェクションを含み得る。選択カーゴはまた、リボ核タンパク質(RNP)などのタンパク質と複合体化した核酸を含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書のシステム、組成物、装置及び方法などは、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空の脂質ベースのTCVを提供する。ロードされたTCVは、ピペット内のTCV生成流体の反復手動往復動、SHM、T字型混合もしくは押出方法、又は必要に応じて他のTCV混合方法などの穏やかな混合を使用して生成することができる。
【0036】
一態様では、脂質ベースのTCVは、イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール及びPEG-脂質の混合物から構成され、TCV含有組成物は、有機溶媒及び/又は界面活性剤不含である。
【0037】
本明細書で論じる有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、例えば遺伝子治療を介して、適切な疾患及び状態の治療に使用することができる。本明細書で論じる有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、ヒト患者へのRNA、DNA及びRNP遺伝子治療製品の送達を改善する。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、遺伝子治療(mRNA、siRNA及びRNPを含むがこれらに限定されない)製品を脳細胞又は他の標的細胞に効果的に送達する。多くのヒト障害の根底にある原因は、必要なタンパク質の機能喪失又は変異タンパク質の毒性機能獲得である。これらの原因は、本明細書の有機溶媒不含界面活性剤不含TCVを使用して治療可能であり、さらには可逆化可能である。
【0038】
そのような治療のいくつかの例には、神経障害(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症などのいくつかの症例)を治療するための中枢神経系における遺伝子治療が含まれる。
【0039】
本明細書で論じる有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVはまた、例えばsiRNAもしくはRNPの標的化された安全な送達、mRNAによる遺伝子置換療法、又はRNP媒介遺伝子編集による原因となる天然のDNA突然変異の修正を介して、突然変異遺伝子/遺伝子産物を遺伝学的に「ノックダウン」することもできる。この方法で標的とすることができるヒト疾患の2つの具体例は、ハンチントン病(HD)及び前頭側頭型認知症(FTD)である。
【0040】
ハンチントン病は、優性遺伝パターンを有する進行性の不治の神経変性疾患である。ハンチンチン(HTT)遺伝子内の伸長したCAGヌクレオチド反復配列がこの疾患の原因である。変異HTT遺伝子によってコードされるハンチンチンタンパク質(HTT)は、遺伝子産物に毒性機能獲得をもたらす伸長したポリグルタミン反復を含有する。変異ハンチンチンタンパク質の脳レベルを低下させることは、HDにおける疾患進行を遅らせるため又は停止させるために現在追求されている主要な治療戦略であり、本明細書中で論じられるように、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを使用して達成及び改善することができる。HTT発現を標的とするsiRNA又はハンチンチン発現もしくは毒性を減少させるように設計されたRNP選択カーゴをロードしたTCVはHDの有効な治療法となる。前頭側頭型認知症には多くの原因があるが、タンパク質プログラニュリン(潜在的脳生存因子)の喪失は1つのよく説明された原因である。本明細書で論じられる有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、プログラニュリンmRNAを送達することができるか、又はプログラニュリンを発現するかもしくはプログラニュリン喪失を引き起こす根底にあるDNA突然変異を修正するように設計されたRNP(それぞれ)は、プログラニュリンの脳レベルを増加させ、FTDの有効な治療法となる。プログラニュリンmRNAを発現するTCVでプログラニュリンを増加させることはまた、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び筋萎縮性側索硬化症などの多くの一般的な神経疾患の神経保護戦略となり得る。
【0041】
材料及び方法の例
【0042】
材料
1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノ-プロパン(DODMA)は、Cayman Chemical(ミシガン州アナーバー)から購入した。1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)は、Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から購入した。コレステロールは、Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。PEG-DMGを、以前に記載されているように(Akinc,Zumbuehlら、2008)合成した。すべての脂質をエタノールストックとして維持した。ホタルルシフェラーゼ(siLuc)を標的とするsiRNA(Basha,Ordobadiら、2016)を、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)から購入した。マウスhdhに対するsiRNAは、Ambionから購入した(Silencer(登録商標)Select Pre-designed siRNA、Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)。
【0043】
トランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)の調製
脂質成分(イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質、コレステロール及びPEG-脂質)を適切な比でエタノールに溶解して、20~35mMの総脂質の最終濃度を達成した。pH4の25mM酢酸ナトリウム緩衝液を含有する水相を調製した。2つの確立されたナノ粒子作製技術:高速混合及び押出を使用して、2つの溶液を混合した。
【0044】
高速混合:
脂質を含有する有機相を、PEEK Low Pressure Tee Assembly(1/16インチ、貫通孔0.02インチ、部品番号P-712)の仕様を満たすように製造されたT分岐ミキサにより、20mL/分の最終流速で1:3の有機:水性比(v/v)で水相と混合した(Jeffs,Palmerら、2005;Kulkarni,Tamら、2017;Kulkarni,Darjuanら、2018)。得られた懸濁液を1000倍の体積の25mM酢酸ナトリウムpH4緩衝液で透析してエタノールを除去した。
【0045】
押出:
脂質をエタノールに溶解して最終濃度を35mMとした。他の文献に記載されているように(Maurer,Wongら、2001)、エタノール溶液にpH4の25mM酢酸ナトリウムを迅速に添加して、エタノールの最終濃度(v/v)を30%とすることによって、粒子を生成した。得られたナノ粒子懸濁液を、周囲温度で2×80nmのポリカーボネート膜を通して3回押し出した。押出後、粒子を緩衝液交換してエタノールを除去した。
【0046】
トランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)の分析
T-Cholesterol Assay Kit(Wako Chemicals、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用してコレステロール含有量についてアッセイし、他の文献に記載されているように(Chen,Tamら、2014)総脂質濃度を外挿することによって、脂質濃度を求めた。核酸捕捉を、以前に記載されているように(Chen,Tamら、2014;Leung,Tamら、2015)RiboGreenアッセイを使用して求めた。
【0047】
極低温透過型電子顕微鏡法
Cryo-TEMを、以前に記載されているように(Kulkarni,Darjuanら、2018)実施した。簡潔には、Amicon遠心濃縮ユニット(10kDa NWCO)を使用して、TCVを約20mg/mLの総脂質濃度に濃縮した。少量(3~5uL)の材料をグロー放電銅グリッドに塗布し、FEI Mark IV Vitrobot(オレゴン州ヒルズボロ)を使用してプランジャ凍結させた。グリッドをイメージングまで液体窒素下で保存した。すべてのイメージングは、低線量モードで200kVで動作するFEI Tecnai G2装置を使用して実施した。FEI Eagle 4k CCDボトムマウント検出器を使用してイメージをキャプチャした。すべての試料調製及びイメージングは、UBC BioImaging Facility(ブリティッシュコロンビア州バンクーバー、カナダ)で行った。
【0048】
細胞培養及び試薬:
すべてのベース細胞培養培地及びB27神経細胞サプリメントは、Gibco(Thermo Fisher、マサチューセッツ州ウォルサム)から購入した。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ペニシリン-ストレプトマイシン、L-グルタミン及びトリプシン溶液をHyclone(ユタ州ローガン)から入手した。HEK293細胞をCorning(ニューヨーク州コーニング)製の透明底白色壁プレートに播種した。初代皮質細胞を、ポリ-D-リシン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)でコーティングした組織培養処理プレート(Fisher)上に播種した。ハイグロマイシンBをIn vitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から入手した。組換えApoE 4をPeprotech(ニュージャージー州ロッキーヒル)から得た。
【0049】
HEK293細胞における細胞生存率及びルシフェラーゼレベルを測定するために、Promega(ウィスコンシン州マディソン)製のONE-Glo+Toxキットを使用した。初代ニューロンにおける細胞生存率を、Sigma(ミズーリ州セントルイス)製のMTT in vitro毒性キットによって測定した。
ルシフェラーゼレポータHEK293細胞:
【0050】
安定に組み込まれたルシフェラーゼレポータ構築物を有するHEK293細胞株(HEK-Luc細胞)の作製は以前に記載されている(De Souza、Islam他、2016)。細胞を、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン及び125μg/mLのハイグロマイシンBを補充したDMEM高グルコース中に、95%の空気、5%のCOの加湿雰囲気中、37℃で維持した。細胞を12,000~20,000細胞/ウェルの密度で白色壁96ウェルプレートに播種した。
【0051】
初代細胞培養:
皮質培養物を、胚性のE17.5日目のC57BL/6Jマウス及びFVB.YAC128マウスから調製した。簡潔には、氷冷HBSS中で皮質を切開し、0.05%トリプシン(Hyclone)溶液を用いて37℃で10分間組織を消化した。次いで、皮質を5mLのピペットで5回トリチュレートし、200μLのピペットチップを加えてさらに5~7回トリチュレートした。細胞を800rpmで5分間の遠心分離によってペレット化し、HBSSで洗浄し、次いで、B27、2mMのL-グルタミン(Hyclone)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)を補充した温かい神経基礎培地に再懸濁した。皮質ニューロン培養物を、1.5×10細胞/ウェルの密度でポリ-Dリシン被覆24ウェルプレートに播種した。細胞を、95%の空気、5%のCOの加湿雰囲気中、37℃で維持した。
【0052】
トランスフェクション:
すべての試薬をベンチトップ上で混合した。50%のカチオン性脂質を含有する空のTCVを、脂質μモル当たり0.058mgのsiRNAの比でsiRNAと混合した。20%のカチオン性脂質を含有するTCVを、脂質μモル当たり0.022mgのsiRNAで混合した。TCV懸濁液をピペットによってsiRNAと短時間混合し、室温で10分間インキュベートした。
【0053】
HEK293細胞をトランスフェクションの24時間前に播種した。TCV:siRNA混合物に、siRNAの最終濃度が3.3μg/mLとなるように完全DMEM培地を添加し、トランスフェクション時に培地を完全に交換した。
【0054】
初代神経細胞をトランスフェクション前に7日間インビトロで増殖させた。2~6μg/mLの組換えApoE4を含む完全な神経基底培地をTCV:siRNA懸濁液に加え、培地の半分を各ウェルから交換した。
ルシフェラーゼアッセイ:
【0055】
トランスフェクションの48~72時間後に、ONE-Glo+Toxキット(Promega)を製造者の説明書に従って使用して、HEK293細胞の細胞生存率及び発光をアッセイした。簡潔には、生細胞試薬を各ウェルに添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。プレートをプレートリーダ(POLARstar Omegaプレートリーダ、BMG LABTECH)で400nmの励起でアッセイし、510nmの発光波長で読み取った。次いで、ONE-Glo試薬を加え、プレートを室温で3分間インキュベートした。発光を、同じプレートリーダのレンズを通した光出力によって測定した。値は%対照として示され、条件ごとにN=4ウェルを表す。
【0056】
MTTアッセイ:
初代皮質ニューロンの細胞生存率を、24ウェルプレートでのトランスフェクションの72時間後にMTTアッセイによってアッセイした。MTT試薬(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、又はMTT)をHBSS中で最終濃度5mg/mLに再構成し、10%v/vで各ウェルに添加した。細胞を37度で4時間インキュベートした。培地を除去し、250μLの可溶化溶液を各ウェルに添加した。吸光度を570nmで測定した。値は対照%として示され、条件ごとにN=3ウェルを表す。
【0057】
定量RT-PCR
接着性初代皮質細胞を滅菌PBS中で一回洗浄した後、1%の2-メルカプトエタノールを含有する600μLの溶解緩衝液中でプレートから掻き取り、直ちに-80℃で凍結した。続いて、製造者の説明書に従って実施したPureLink RNAミニキット(Invitrogen)を使用して全RNAを抽出した。すべてのサンプルの逆転写を、Superscript VILOキット(Invitrogen)を製造者の説明書に従って使用し、cDNA合成のためのインプットとして250ηgの全RNA及び定量PCR反応のための5ηgの希釈RNAを使用して行った。hdh mRNAレベルの定量化を、標的mRNA及び対照遺伝子を別個のウェルで増幅する標準曲線法で、FastSybr(Applied Biosystems)を使用し、Step-One ABI System(Applied Biosystems)で実施した。各サンプルをデュプリケートで実行した。各ウェル中のmRNAの相対量を、hdh mRNAと対照遺伝子Csnk2a2との比として計算した。値は対照%として示され、条件ごとにN=3ウェルを表す。
【0058】
リボ核タンパク質(RNP)複合体の材料及び生成
ガイドRNA(gRNA)、tracrRNA、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、及び組換えCas9タンパク質を含むRNP配合物のすべての材料を、IDT(カリフォルニア州サンノゼ)から入手した。ルシフェラーゼを標的化するために使用されるgRNA配列は、IDT(カリフォルニア州サンノゼ)によって提供された。ヒトプログラニュリン(GRN)を標的とするgRNA配列は、遺伝子のエクソン5に結合する。相同組換え修復(HDR)に使用されるssODN配列を、GRNのエクソン5に4bp欠失を導入するように操作した。
【0059】
RNPの組み立てを、製造業者の仕様に従って行った。簡潔には、例えば1μMのtracrRNAと1μMのgRNAなどの等モル比のcrRNA:tracrRNAを95℃で5分間インキュベートすることによって、ガイドRNA(gRNA)複合体を形成した。次いで、混合物を室温で20~30分間冷却した。続いて、gRNA二重鎖を等モル比でCas9タンパク質と混合し、混合物を使用前に室温で5分間放置することによってRNPを形成した。
【0060】
核酸による哺乳動物細胞のトランスフェクション:
本明細書で論じられるような、空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV及び、比較のための市販の試薬を、ベンチトップ上で選択カーゴと混合した。TCVを、脂質1μモル当たり核酸0.01~0.2mgの比の範囲で核酸選択カーゴと混合した。TCV懸濁液をピペットによってsiRNAと短時間混合し、室温で10分間インキュベートした。
【0061】
HEK293細胞をトランスフェクションの24時間前に播種した。TCV:核酸混合物に、siRNAの最終濃度が0.33~3.3μg/mL、又はmRNAが0.1~1μg/mLとなるように完全DMEM培地を添加し、トランスフェクション時に培地を完全に交換した。初代神経細胞をトランスフェクション前に7日間インビトロで増殖させた。2~6μg/mLの組換えApoE4を含む完全な神経基底培地をTCV:核酸懸濁液に加え、培地の半分を各ウェルから交換した。
【0062】
細胞を、製造者の説明書に従ってMirus TransIT-TKOで処理した。簡潔には、Mirus TransIT-TKOを5μLのMirus/100μLの無血清培地の濃度で無血清培地に添加した。次いで、siRNAをチューブに添加し、穏やかにピペットで混合し、室温で15~30分間インキュベートした。次いで、溶液を細胞上に移し、Mirusの最終濃度は5μL/1mLの完全培地であった。siRNAの最終濃度は25nMであった。
【0063】
RNPによる哺乳動物細胞のトランスフェクション:
0.5~20mMのTCV及び0.5~20μMのRNPを、467~5000のモル比で混合し、室温で10分間インキュベートした。別途、ssODNの1~10μM溶液をTCVと混合し、この混合物を室温で5~15分間インキュベートした。場合によっては、等モル量のssODNをTCVの添加前にRNP複合体溶液に添加した。
【0064】
RNPを含有するTCVとssODN混合物とを混合し、完全培地を添加してRNP及びssODNそれぞれの最終濃度を10~200nMとした。24時間前に播種したHEK細胞に対して完全培地交換を行った。初代神経細胞をトランスフェクション前に5~7日間インビトロで増殖させた。2~6μg/mLの組換えApoE4を含む完全な神経基底培地をTCV:RNP混合物に加え、培地の半分を各ウェルから交換した。
【0065】
細胞を、製造者の説明書に従ってLipofectamine RNAiMAX試薬で処理した。簡潔には、RNP複合体を調製し、無血清培地とRNAiMAXとの混合物に添加し、室温で5分間インキュベートし、播種した細胞に添加した。
【0066】
相同組換え修復の検出のためのPCR
野生型(WT)又は変異型GRN対立遺伝子のいずれかに特異的なフォワードプライマ及び共通のリバースプライマを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、トランスフェクトHEK293培養物から抽出されたゲノムDNAからGRNエクソン5を増幅した。MyTaq(Bioline、米国)を製造者の説明書に従って使用してPCRを行った。PCR産物を、SybrSafeで染色した1.5%アガロースゲル上でのゲル電気泳動によって分離し、UV光下で画像化した。
【0067】
細胞を、3~4%のパラホルムアルデヒド溶液を使用して15分間固定した。細胞を、0.1%のTriton-X(PBST)を含有するPBS中で15分間透過処理した。細胞を、抗Cas9(Invitrogen)抗体の1:1000混合物を含有するPBSTと共に4℃で一晩インキュベートした。細胞をPBSで三度洗浄し、各Alexa Fluor 594蛍光二次抗体(Invitrogen)及びPhalloidin-iFluor 488 CytoPainter抗体(Abcam)の1:1000混合物と共に室温で1時間インキュベートし、再び洗浄し、DAPIを含有する溶液と共に5分間インキュベートして核を可視化した。
【0068】
統計
すべての統計的比較を、一元配置分散分析(ANOVA)としてボンフェローニ事後分析と共に行って、個々の平均を対照処理細胞と比較し、多重比較を補正した(Prism 6、Graphpad Software Inc.)。スチューデントのt検定を使用して、2つの群のみの場合の個々の平均を比較した。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0069】
結果関連実施例
実施例1:空のトランスフェクション・コンピテント・ベシクル(TCV)は有機溶媒なしで核酸を効率的に捕捉する
【0070】
T字型又はSHM混合によって生成された空のTCV配合物は、約85%以上の捕捉効率を示した。本発明者らは、最初に、イオン化可能なカチオン性脂質で構成されたTCVが有機溶媒又は界面活性剤の助けを借りずに核酸を捕捉する、観察されたインビボ遺伝子サイレンシング効力(DODMA>>DLinDAP>DODAP)(「DLinDAP」は、1,2-ジリノイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパンである)の範囲にわたる能力を試験した。注目すべきことに、これらのいずれもが存在しない場合に、イオン化可能な脂質/DSPC/Chol/PEG-脂質(50/10/39/1mol%)で構成される配合物は、0.058mgのsiRNA/μmol脂質の比でpH4で混合し、続いてPBSで中和すると、siRNAをほぼ完全に(>85%)捕捉する(表1)。捕捉判定アッセイは、脂質成分による核酸からのRNA結合色素の排除に基づく。したがって、捕捉は、一過性の方法以上に外部培地からRNAを捕捉する(すなわち、安定して捕捉する)と考えられる。製造プロセスに有機溶媒又は界面活性剤がないにもかかわらず、得られたTCV配合物は、驚くべきことに、有機溶媒を使用した迅速混合技術によって生成されたLNP-siRNAについて他の文献(Belliveau、Huftら、2012;Chen,Tamら、2014;Leung,Tamら、2015;Chen,Tamら、2016)で報告されたものと同様の捕捉効率を示した。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例2:有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCV中のsiRNAは、不死化細胞及び初代ニューロンにおいてロバストなノックダウンを示す
【0073】
核酸を捕捉し、続いてこれを毒性のない方法で送達する能力には、2つの別個の課題が存在する。上記の非有機溶媒/非界面活性剤脂質ベースのTCVが核酸を効率的に捕捉したと判定した場合に、これらの遺伝子サイレンシング能力及びこれらが細胞生存率に及ぼす効果を、図1A図1Dに示す2つのシナリオで試験した。最初に、空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを、ベンチトップローディングによりsiLucと混合し、HEK-Luc細胞の処理に使用した。驚くべきことに、DODMAベースのTCVは約50%のノックダウンを示し、ノックダウンの徴候を示さなかったDLinDAP及びDODAPよりも良好に機能した(図1A)。未処理細胞と比較した細胞生存率によって測定した場合、いずれの配合物も毒性を示さなかった(図1B)。次に、siRNAを送達するTCVの有効性及び毒性を、初代マウス皮質ニューロンにおけるhdh遺伝子で試験した。この場合にも(図1C)、DODMA-TCVは約50%の遺伝子ノックダウン有効性を示したが、DLinDAP-TCVはより低いノックダウンを示し、DODAP-TCVは未処理細胞との差を示さなかった。一次ニューロンは、現在市販されているものなどの有害なトランスフェクション試薬の毒性影響を非常に受けやすいことに留意すべきである。図13は、生存率に対する効果の違いを強調している。
【0074】
実施例3:多重混合プロセスは、強力な有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVを生成することができる
【0075】
図1に示す効力を達成するための製造プロセスにおいて混合局面が果たす役割及び得られた粒径を判定するために、DODMAなどのイオン化可能な脂質を含有する有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の脂質ベースの空のTCVを、T字型混合及び押出の両方によって製造した。図2Aに示すように、siRNAを空のTCVにベンチトップでロードした後に両方のプロセスを使用することで、HEK-Luc細胞においてルシフェラーゼが有意にノックダウンされた。T字型又は押出によって生成された粒子で処理した細胞の生存率に有意な差はなかった(図2B)。次に、初代皮質ニューロンを同じ溶媒不含かつ界面活性剤不含の脂質ベースのTCV配合物で処理し、両方のプロセスが同様の効力(図2C)及び同様の細胞生存率(図2D)を有する粒子をもたらすことが判明した。対照的に、初代培養物における本発明のトランスフェクション方法の毒性(図13)は、非毒性かつ強力な配合物という目標を損なうものであった。
【0076】
実施例4:イオン化可能な脂質の含有量が減少した有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVは、低毒性の強力なsiRNA送達を促進する
【0077】
現在の臨床配合物に使用されている確立された脂質組成物(Patisiranを参照)は、かなりの量のイオン化可能なカチオン性脂質(50mol%)を含む(Jayaraman,Ansellら、2012;Suhr,Coelhoら、2015)。そのような多量の含有は、インビボで50%の遺伝子サイレンシング(ED50)を達成するための有効用量の改善を可能にするが(Jayaraman,Ansellら、2012)、投与後の脂質代謝産物の持続性(Maier,Jayaramanら、2013;Sabnis,Kumarasingheら、2018)及びそれらの分子に関連する毒性のために、高用量のレジメンかつ反復的な(又は感受性細胞型に対する)投与では、配合物が毒性となる。本発明の組成物、TCVなどは、生分解性であるか又は排出を促進する材料から構成することができる。ここで、本発明の組成物、TCVなどは、トランスフェクション効力を維持する毒性成分の量を減少させる。
【0078】
HEK-Luc細胞においてルシフェラーゼをサイレンシングするためのDODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質(それぞれ20/30/10/39/1mol%)から構成される配合物のトランスフェクション能を試験した。ルシフェラーゼ発現の40%のノックダウンが観察され(図3A)、有意な毒性は認められなかった(図3B)。次に、本発明者らは、50mol%のDODMA-TCVと比較した、20mol%のイオン化可能な脂質を有するTCVがsiRNAを初代ニューロンに送達する能力を試験した。すべての配合物がhdhの60%以下のノックダウンを示し(図3C)、一方、T字型混合によって生成されたDODMA配合物は有意に改善された細胞生存率を示した(図3C)。
【0079】
実施例5:DOPEの組み込みは、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCV形態を変化させない
【0080】
核酸送達ビヒクルにおけるHII相形成能力の改善は、エンドソームにおける膜融合を促進するための重要な因子であり得る(Hafez,Maurerら、2001)。本アプローチでは、HII相を採用することができる2つの例示的な脂質は、DOPE(単独)及びDODMA(プロトン化され、アニオン性脂質と組み合わされる場合)である。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのDOPEの組み込みが早期のHII相形成をもたらしたかどうかを判定するために、20mol%のDODMA-TCV及び50mol%のDODMAで構成される等価な配合物に対してCryo-TEMを実施した。得られた構造(図4A図4B)は、HII相を示さない二重層構造として視覚化されている。
【0081】
他者による以前の研究(Leung,Hafezら、2012;Leung,Tamら、2015)は、siRNA含有量にかかわらずコアLNP配合物内にHII様の内部構造が存在することを示唆している。LNP-siRNAは、そのような構造を含有せず、むしろ密接に隣接した脂質層(Kulkarni,Darjuanら、2018)の間に固定されたsiRNAを有し、粒子全体に多層又はタマネギ様の形態を与えることが示されている。siRNAが存在しない場合、LNP配合物は、油相脂質を含有する電子密度の高いコアを採用する。したがって、本明細書の実施例は、TCV形態がLNP系とは劇的に異なるが、依然として非常に効率的なトランスフェクション効力を有することを示す。
【0082】
実施例6:機能性リボ核タンパク質(RNP)を送達するために、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVを使用することができる。
【0083】
図5に示すように、本明細書の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVが核酸と複合体化したタンパク質選択カーゴを哺乳動物細胞に送達する能力についても試験した。簡潔には、組換えCas9タンパク質及びプログラニュリン遺伝子のエクソン5を標的とするガイドRNAからなるリボ核タンパク質複合体を構築し、467:1(TCV:RNP複合体)のモル比でベンチトップローディング(DODMA/DOPE/DSPC/Chol/(それぞれ20/30/10/40mol%)によって空のTCVと組み合わせた。別途、プログラニュリン遺伝子のエクソン5に4bp欠失を導入するように設計された一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドを、4275:1(TCV:核酸)のモル比でTCVと組み合わせた。それぞれの選択カーゴを含有するTCVの2つの調製物を組み合わせて、最終濃度を10nMのRNP及び10nMのssODNとし、次いでHEK細胞に添加した。48時間後、野生型又は変異対立遺伝子のいずれかに特異的なフォワードプライマを使用したPCRにより、相同組換え修復がプログラニュリン遺伝子標的で起こったか否かを判定した。図5に示すように、リボ核タンパク質複合体のそれぞれを含有するTCVとssODNとの組み合わせにさらされた細胞は、相同組換え修復(図5の第2のレーン、標識突然変異体)を介して4bp欠失の挿入をもたらしたが、未処理対照細胞は、プログラニュリン遺伝子のエクソン5部位での遺伝的変化を何らもたらさなかった(図5の第3及び第4レーン)。
【0084】
実施例7:機能性リボ核タンパク質(RNP)を送達するために使用される、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVのさらなる例。
【0085】
有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVを使用して、上記の方法で機能性リボ核タンパク質(RNP)を送達した。
【0086】
図6は、初代ニューロン内に位置するCas9の顕微鏡写真である。本明細書で論じられる有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるRNPは、蛍光シグナルとして一次ニューロン内で見ることができるが、未処理対照はそのような蛍光シグナルを有さない。より具体的には、初代神経細胞の免疫細胞化学は、マウス由来の皮質ニューロンの核(青色)内でのCas9タンパク質(赤色)の局在化を示した。細胞形態を示すために、細胞をファロイジン(緑色)に染色した。
【0087】
図7は、HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるRNPによる遺伝子ノックダウンを示すグラフである。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介してHEK細胞に送達されたRNPは、対照(図中では「ctrl」)と比較してルシフェラーゼ転写物の有意なノックダウンを示している。図8は、HEK細胞において、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるRNPによるタンパク質ノックダウンを示すグラフである。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介してHEK細胞に送達されたRNPは、対照(図中では「対照」)と比較してルシフェラーゼタンパク質の有意なノックダウンを示している、p=0.0003。
【0088】
図9は、初代ニューロンにおける有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるRNPによる遺伝子ノックダウンを示すグラフである。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して初代皮質ニューロンに送達されたRNPは、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)アッセイによる有意なmRNAノックダウンを示している、p=0.0039。
【0089】
これらの図のいくつかのさらなる考察に目を向けると、図7及び図8は、本明細書における空のTCVのベンチトップローディングによって送達されたRNPが、HEK細胞におけるレポータ遺伝子、ルシフェラーゼのロバストなノックダウンを示すことを示す。これは、ルシフェラーゼ出力(機能性タンパク質)並びにルシフェラーゼmRNAのmRNAレベルをqRT-PCRによって測定することによって実証された。RNP送達のこの同じアプローチを使用して、疾患変異を有する全長ヒトハンチンチン遺伝子を発現するFVB.YAC128マウスに由来する皮質ニューロンにおけるハンチンチン遺伝子の発現を破壊した(図9)。ハンチンチンのmRNAレベルを、TCV:RNP混合物とのインキュベーションの72時間後にqRT-PCRを使用して初代皮質ニューロンから定量した。
【0090】
実施例8:有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるmRNAの例
【0091】
上記の方法を使用してmRNAを送達するために使用される、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVのベンチトップローディング。
【0092】
図10は、HEK細胞における、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを介して送達されるmRNAの発現を示すグラフである。mRNAを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、様々な比率、すなわち、低=0.029mgのmRNA/μmol脂質、中=0.058mgのmRNA/μmol脂質、高=0.116mgのmRNA/μmol脂質でHEK細胞に送達した。すべての比率が対照と比較して有意な発現を示し、最も低い比率が最も高い発現を示した。
【0093】
図11は、初代皮質ニューロンにおける、空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVのベンチトップローディングによって送達されたmRNAの発現を示すグラフである。mRNAを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、様々な投与量で初代皮質ニューロンに送達した。すべての投与量が対照と比較して有意な発現を示した。
【0094】
これらの図のいくつかのさらなる考察に目を向けると、図10は、本明細書で論じられるような有機溶媒不含かつ界面活性剤不含の空のTCVのベンチトップローディングを使用して、機能性タンパク質をコードするmRNAを細胞に送達することができることを実証している。簡潔には、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVを、0.029~0.116mgの核酸:1μモルの脂質の比の範囲で、ホタルルシフェラーゼmRNAをコードするmRNAとピペットを用いて穏やかに混合した。この混合物を室温で5~20分間インキュベートした後、完全培養培地を添加し、次いで、HEK細胞(図10参照)又は初代皮質ニューロン(図11)を含むウェルに移した。Promega製のONE-Gloルシフェラーゼアッセイキットを製造者の説明書に従って使用して、ルシフェラーゼ出力を測定した。結果は、選択カーゴ:TCV濃度及び用量の範囲にわたって、これらの細胞型内でのルシフェラーゼタンパク質の産生を示す。
【0095】
実施例9:有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVと市販製品との比較
【0096】
空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVのベンチトップローディングを使用して、上記の方法によりsiRNA又はRNPをHEK細胞又は初代ニューロンに送達し、次いで、市販のシステムを使用した同等のトランスフェクションと対比した。本明細書の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、市販のシステムよりも優れていた。
【0097】
図12は、HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVについての細胞生存率を示すグラフである。RNPを、有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol(20/30/10/40))を介して、又は細胞毒性評価のためにRNAiMax(図中の「Rmax」;ThermoFisher Scientific社)を使用してHEK細胞に送達した。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、RNAiMaxと比較して有意に毒性が低かった(p=0.0002)。
【0098】
図13は、初代ニューロンにおける空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのsiRNAのベンチトップローディングについての細胞生存率を示す顕微鏡写真である。siRNAを、有機溶媒非含かつ界面活性剤不含のTCV(DODMA/DOPE/DSPC/Chol/PEG-脂質(20/30/10/39/1))を介して、又は市販のMirus TKOシステム(Mirus Bioを使用して、細胞毒性評価のために初代ニューロンに送達した。有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVは、顕微鏡写真によって示されるように、Mirus TKOシステムと比較して有意に毒性が低かった。
【0099】
図14は、HEK細胞における有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVのノックダウンを示すグラフである。siRNAを、50%(「D-50%」、T字型混合によって作製)、50%(「D-50% Ex」、押出によって作製)の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCV DODMAレベルで、市販のMirus TKOシステム(Mirus Bio)を使用して送達した。本発明の50%DODMA配合物は約50%のノックダウンを示したが、Mirus TKOシステムは著しく劣っていた。
【0100】
これらの図のいくつかのさらなる議論に目を向けると、図12は、本明細書中で論じられるような空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVへのsiRNAのベンチトップローディングが、マウス及びHEK細胞株に由来する初代神経細胞において低毒性特性及び効率的な発現ノックダウンを有することを示す。初代皮質ニューロンの処理のために、TCVをsiRNAと約0.022~0.058mgの核酸:1μmolの脂質の比で混合し、初代神経細胞を含むウェルに移した。図13の光学顕微鏡写真は、すべて同じ倍率で撮影されたものであり、対照ウェル及びTCV処理ウェルでは、細胞は、プロセスが無傷で死細胞が非常に少ない、健康な状態のままであることを示している。Mirus TransIT-TKO処理ウェルでは、細胞は、細胞プロセスが破壊され、小さく縮んだ(死)細胞の量が多い、かなり不健康な状態であるように見受けられる。
【0101】
図12では、HEK細胞を、リポフェクタミンRNAiMAX及びRNP選択カーゴを含有するTCVで処理した。HEK細胞を、最終濃度5~50nMのRNP及びTCV試薬又はRNAiMAX試薬のいずれかで処理した。Promega ONE-Glo+Toxキットを用いて細胞生存率を評価し、未処理対照細胞と比較した。RNAiMAXで処理したHEK培養物は、対照ウェル及びTCV処理ウェルの両方と比較して、全体的な健康状態が有意に低いことを示す。
【0102】
図14は、siRNA選択カーゴを送達する際の、市販の製品Mirus LT-TKOと比較した本明細書で論じられる空の有機溶媒不含かつ界面活性剤不含のTCVのベンチトップローディングの有効性を示している。TCVを、ルシフェラーゼ遺伝子を標的とするsiRNAと、室温で5~10分間、約0.022~0.058mgの核酸:1μモルの脂質の比でインキュベートした。HEK細胞を、製造者の説明書に従ってMirus LT-TKOで処理した。処理時に、ウェル中の培地を、siRNA:TCV又はsiRNA:Mirus LT-TKO混合物のいずれかを含有する新鮮な増殖培地で完全に置換した。処理の72時間後、HEK細胞を、Promega ONE-Glo+Toxキットを使用して細胞生存率及びルシフェラーゼ産生についてアッセイし、すべての細胞を未処理対照ウェルと比較した。
【0103】
本明細書で使用されるすべての用語は、文脈又は定義が明らかにそうでないことを示さない限り、それらの通常の意味に従って使用される。また、特に明記しない限り、本明細書では、「又は」の使用は「及び」を含み、逆もまた同様である。非限定的な用語は、明示的に述べられていない限り、又は文脈が明らかに示していない限り、限定的であると解釈されるべきではない(例えば、「を含み、」、「を有し、」及び「を備え、」は、典型的には「限定されないが、」を示す。)。「a」、「an」、及び「the」などの特許請求の範囲を含む単数形は、明示的に述べられていない限り、又は文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形への言及を含む。
【0104】
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【0105】
特に明記しない限り、実施形態の1つ又は複数の特徴の条件又は関係特性を修飾する「実質的に」及び「約」などの本明細書における形容詞は、条件又は特性が、それが意図される用途のための実施形態の動作に許容される許容範囲内で定義されることを示す。
【0106】
本装置、システム及び方法などの範囲は、ミーンズプラスファンクション及びステッププラスファンクションの両方の概念を含む。しかしながら、請求項は、「手段」という語が請求項に具体的に記載されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の関係を示すと解釈されるべきではなく、「手段」という語が請求項に具体的に記載されている場合、「ミーンズプラスファンクション」の関係を示すと解釈されるべきである。同様に、請求項は、「ステップ」という語が請求項に具体的に記載されていない限り、「ステッププラスファンクション」の関係を示すと解釈されるべきではなく、「ステップ」という語が請求項に具体的に記載されている場合、「ステッププラスファンクション」の関係を示すと解釈されるべきである。
【0107】
以上から、例示の目的で特定の実施形態を本明細書で説明したが、本明細書の説明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることが理解されよう。したがって、システム及び方法などは、そのような修正、並びに本明細書に記載の主題のすべての置換及び組み合わせを含み、添付の特許請求の範囲又は本明細書の説明及び図において十分な裏付けを有する他の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14