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特許7555126S-およびO-ジアセチル化γ-グルタミルシステアミンプロドラッグの製造方法
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  • 特許-S-およびO-ジアセチル化γ-グルタミルシステアミンプロドラッグの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】S-およびO-ジアセチル化γ-グルタミルシステアミンプロドラッグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 327/30 20060101AFI20240913BHJP
   C07B 31/00 20060101ALI20240913BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20240913BHJP
   A61K 31/223 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
C07C327/30
C07B31/00
C07B53/00 G
A61K31/223
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547585
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 GB2020050347
(87)【国際公開番号】W WO2020165601
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】1902018.9
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521358545
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・サンダーランド
【氏名又は名称原語表記】University of Sunderland
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ロザリーン ジョイ
(72)【発明者】
【氏名】フロスト,リサ
(72)【発明者】
【氏名】バーンウェル,ニール
(72)【発明者】
【氏名】レビック,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイルズ,アイバン
(72)【発明者】
【氏名】ダン,マイケル
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】LISA FROST; ET AL,Synthesis of diacylated γ-glutamyl-cysteamine prodrugs, and in vitro evaluation of their cytotoxicity and intracellular delivery of cysteamine,EUROPEAN JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2016年02月,VOL:109,PAGE(S):206-215,https://doi.org/10.1016/j.ejmech.2015.12.027
【文献】誘導体試薬と誘導体化反応の基礎,TCI[online],2014年05月30日,<URL: http://www.jsac.or.jp/group/GC/pdf/330/330_06.pdf>,[2023/11/28検索]
【文献】カルボン酸の保護,Chem-Station[online],2010年01月29日,<URL: https://www.chem-station.com/odos/2010/01/-protection-of-carboxylic-acid.html>,[2023/11/28検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の化合物と式(V)の化合物を反応させ、式(VI)の化合物を形成させること:
【化1】
および
酸を用いて式(VI)化合物R-オキシカルボニルアミドを開裂させ、式(X)の化合物を形成させること:
【化2】
〔式中、
は-C(CH)であり;
は-H、-C-C-アルキル、-C-C-アルケニルおよびC-C-アルキル-アリールから選択され;
は-C(O)Hおよび-C(O)C-C-アルキルから選択され;
Xはハライドであり;
Aはハライドまたは他の強酸の対イオンである〕
を含む、式(X)の化合物の製造方法であって、
前記式(III)の化合物と式(V)の化合物との反応が、水中で9未満のpKaを有する塩基の存在下で実施されるものである、方法。
【請求項2】
式(III)の化合物が式(IIIa):
【化3】
の化合物であり、式(VI)の化合物が式(VIa):
【化4】
の化合物であり、式(X)の化合物が式(Xa):
【化5】
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が-C-C-アルキルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
が-C-C-アルキル-アリールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
が-C-C-アルキル-フェニルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
が-C(O)C-C-アルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
が-C(O)CHである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
酸がインサイチュで形成されるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸がアシルハライドとアルコールの反応により形成されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Aがクロライドまたはブロマイドから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(V)の化合物が、式-Rの保護基を式(IV)のチオール基に付加させることにより形成されるものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【化6】
【請求項12】
式(III)の化合物が、式(II)の化合物を還元することにより形成されるものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【化7】
【請求項13】
式(II)の化合物が式(IIa):
【化8】
の化合物であり、式(III)の化合物が式(IIIa):
【化9】
の化合物である、請求項12に記載の方法
【請求項14】
式(II)の化合物が、(i)式(I)の化合物を式ハロ-Rのアルキル化試薬と反応させることにより形成されるものである、請求項12または13に記載の方法。
【化10】
【請求項15】
式(I)の化合物が式(Ia):
【化11】
の化合物であり、式(II)の化合物が式(IIa):
【化12】
の化合物である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システアミンのプロドラッグ誘導体の合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
システアミンは、希少遺伝子疾患シスチノーチスの処置剤である。しかしながら処置用量としてのシステアミンの使用は、患者におけるノンコンプライアンスをもたらすいくつかの不利益を有する。いくつかのシステアミンのプロドラッグがこれらの不利益を克服するために開発されてきた。例えば、ジアシル化γ-グルタミル-システアミンプロドラッグの合成は、L. Frost et al., Eur. J. Med. Chem., 2016, 109, 206-215により示される。ここに、彼らは、いくつかのシステアミンプロドラッグの治療効果およびシスチノーチスの処置におけるそれらの有用性を研究し、小規模でのシステアミンプロドラッグの合成法を提供する。これらの方法は、中程度の収率のようないくつかの不利益を有する。さらに、我々は、刺激臭を有するチオール副生成物を生成するチオエステル保護基の加水分解により、最終生成物の汚染のリスクが存在することを確認した。
【0003】
従って、代替のおよび/または改善されたシステアミンプロドラッグの合成法を見出すことが好ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、システアミン誘導体、例えば、式(X)の化合物の合成法を提供する。式(X)の化合物は、対応する遊離塩基(式(IX)の化合物)より長期の保存期間を有すると予想されるため、典型的に、塩として提供される。
【0005】
本発明の第一の態様によると、式(VI)の化合物を還元して式(IX)の化合物を得ること:
【化1】
および
式(IX)の化合物を式HAの酸と反応させて式(X)の化合物を得ること:
【化2】
を含む、式(X)の化合物を形成する方法が提供される。Rは-CHPhである。Rは-H、-C-C-アルキル、-C-C-アルケニルおよび-C-C-アルキル-アリールから選択される。アリールは、フェニル(Ph)であり得る。Rは、-C(O)Hおよび-C(O)C-C-アルキルから選択される。Aは薬学的に許容されるアニオンである。この方法は、遊離塩基形態(化合物(IX))の形成と塩形態(X)の形成が別々である。この方法の利点は、適切な酸HAを選択することにより、当業者は、性質、例えば、化合物安定性、結晶性、純度、化学的特性、吸湿性、溶液中での匂い、溶解度および溶解プロファイルの1以上の調整を可能にし得る式(X)の種々の塩を容易に製造することができる。
【0006】
本発明の第二の態様によると、式(III)の化合物と式(V)の化合物を反応させて式(VI)の化合物を形成させること:
【化3】
および
酸(例えば、式HAの酸)を用いて式(VI)の化合物R-オキシカルボニルアミドを開裂させて式(X)の化合物を形成させること:
【化4】
を含む、式(X)の化合物を形成する方法が提供される。Rは-C(CH)である。Rは-H、-C-C-アルキル、-C-C-アルケニルおよび-C-C-アルキル-アリールから選択される。アリールはフェニル(Ph)であり得る。Rは-C(O)Hおよび-C(O)C-C-アルキルから選択される。Aはハライドまたは他の強酸の対イオンである。
【0007】
本発明の第三の態様は、
【化5】
から選択される化合物を提供する。Rは-H、-C-C-アルキル、-C-C-アルケニルおよび-C-C-アルキル-アリールから選択される。アリールはフェニル(Ph)であり得る。Rは-C(O)Hおよび-C(O)C-C-アルキルから選択される。これらの化合物は、システアミンのプロドラッグ誘導体の合成における中間体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施態様は、添付の図面を参照し、以下でさらに記載される。
図1】式(X)の化合物の合成についての反応スキーム1。
図2】式(X)の化合物の合成についての反応スキーム2。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本明細書で使用される略語は、化学および生物学分野における従来の意味を有する。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、用語「含む(comprise)」および「含む(contain)」およびそれらの変形は、「限定されないが、含む」を意味し、他の部分、添加物、成分、数値または工程を排除することを意図しない(および排除しない)。本明細書および特許請求の範囲全体を通して、文脈から他の解釈が必要とされない限り、単数形は複数形を含む。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈から他の解釈が必要とされない限り、本明細書は単数形だけでなく複数形も企図するとして理解されるべきである。
【0011】
本発明の特定の態様、実施態様または実施例に関連して記載される特徴、数値、特性、化合物、化学的部分または基は、互いに矛盾しない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施態様または例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示される全ての特徴および/またはそのように開示される方法もしくは工程の全ての段階は、このような特徴および/または段階の少なくともいくつかが互いに排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組合せで組み合わせられ得る。本発明はいずれかの前記実施態様の詳細まで制限されない。本発明は本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示される新規な特徴または任意の新規な特徴の組合せ、またはそのように開示されるいずれかの方法または工程の新規な段階または任意の新規な段階の組合せに及ぶ。
【0012】
置換基が、左から右に書くそれらの従来の化学式で特定される場合、それらは右から左へ構造を記載することにより生じる化学的に同一の置換基を同等に包含する。例えば、-CHO-は-OCH-と等価である。
【0013】
単独でのまたは別の置換基の一部としての用語「アルキル」は、特に断らない限り、完全飽和、モノまたは多不飽和であり得る直鎖(すなわち、非分岐)または分岐鎖またはその組合せが指定された数の炭素原子を有する二価および多価部分を含み得ることを意味する(すなわち、C-C10は1~10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素部分の例は、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ホモログおよび、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの異性体のような基を含む。不飽和アルキル基は、1以上の二重結合または三重結合を含むものである。不飽和アルキル基の例は、限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニルおよびより高級のホモログおよび異性体を含む。
【0014】
単独でのまたは別の置換基の一部としての用語「アルキレン」は、限定されないが、-CHCHCHCH-により例示されるアルキルに由来する二価の部分を意味する。典型的に、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子、6個以下(または4個以下)の炭素原子を有するより短鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0015】
単独でのまたは別の置換基の一部としての用語「ハロ」または「ハロゲン」は、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語「ハロ(C-C)アルキル」は、限定されないが、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0016】
用語「アリール」は、特に断らない限り、単環または互いに縮合したもしくは共有結合した複数の環(好ましくは、1~3個の環)であり得る多不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」とは、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)をいい、ここで窒素および硫黄原子は場合により酸化されていてよく、窒素原子は場合により四級化されていてよい。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りと結合し得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルを含む。上記アリールおよびヘテロアリール環系の各々についての置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」とは、それぞれアリールおよびヘテロアリールに由来する二価の部分をいう。
【0017】
本明細書で使用される用語「オキソ」は、炭素原子に二重結合した酸素を意味する。
【0018】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて比較的非毒性の酸または塩基を用いて製造される活性化合物の塩を含むことを意味する。典型的な薬学的に許容される塩は、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2011, Wiley, 2nd Edition, ISBN 9783906390512において提供される。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基(例えば、1以上のアミン基)を含むとき、中性形態のこのような化合物を十分な量の所望の酸と無溶媒でまたは適切な不活性溶媒中で接触させることにより、酸付加塩が得られ得る。所望の酸は、強酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メシル酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ノシル酸など)または弱酸(例えば、酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、乳酸など)であり得る。薬学的に許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸またはリン酸などのような無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の酸に由来する塩を含む。アルギニン酸などのアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩もまた、含まれる(例えば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19を参照)。これらの酸から1以上の水素イオンを除去することにより提供されるアニオンは、典型的な薬学的に許容されるアニオンを提供する。本明細書に記載の式(IX)の化合物はアミンを含み、酸付加塩、例えば式(X)の化合物に変換され得る。
【0019】
このように、化合物は薬学的に許容される酸との塩として存在し得る。本発明はこのような塩を含む。このような塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩またはラセミ混合物を含むこれらの混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩およびグルタミン酸のようなアミノ酸との塩を含む。これらの塩は当業者に既知の方法により、例えば、化合物のアミン遊離塩基から(例えば、式(IX)の化合物から)製造され得る。
【0020】
中性形態の化合物は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させ、そして従来の方法で親化合物を単離することにより再生成される。親形態の化合物は、特定の物理的性質、例えば、極性溶媒中での溶解度において種々の塩と相違する。しかしながら、この方法は式(IX)の化合物の酸付加塩を代表する式(X)の化合物についてはうまくいかない。この理由は、我々は式(IX)の化合物は塩基中での安定性が制限されると決定づけた。したがって、式(X)の化合物を塩基と反応させることにより、式(IX)の化合物の種々の分解生成物が形成される。
【0021】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物および化合物そのものの製造方法を提供する。プロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学的変換を受け、システアミンのような本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグはエクスビボ環境で化学的または生化学的方法により活性化合物に変換され得る。
【0022】
本開示または本発明の特定の化合物は、非溶媒和物形態、および水和物形態を含む溶媒和物形態で存在し得る。一般に、溶媒和物形態は非溶媒和物形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。特定の化合物は、複数の結晶または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明により企図される使用に関して同等である。
【0023】
本明細書に開示される特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオ異性体、互変異性体、幾何異性体および個々の異性体は、本発明および本明細書に開示される方法の範囲内に包含される。本発明の化合物は、極めて不安定で合成および/または単離できないことが当分野において知られている化合物を含まない。
【0024】
本明細書で使用される用語「保護基」は、当業者に容易に理解可能な、その通常の意味を有する。それは、窒素またはチオールを保護するために適切な基をいうために使用される。窒素を保護するために適切な典型的な保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル基(BOC基)およびベンジルメタノエート基(PhCHOC(O)-)を含む。チオールを保護するために適切な典型的な保護基は、アルカナール、例えば、-C(O)Hまたは-C(O)C-C-アルキルを含む。
【0025】
典型的に、別の部分を保護するために使用される保護基にオルソゴナルである保護基を有する1つの部分を初めに保護することにより、保護された化合物を製造することが必要である(すなわち、第一の保護基は、第二の保護基もまた除去することなく、除去され得る)。
【0026】
用語「CF10」は、化合物4-{[2-(S)-(アセチルスルファニル)エチル]カルバモイル}-1-エトキシ-1-オキソブタン-2-アミニウムクロライドの省略形として本明細書で使用される使用される。状況に応じて、CF10は、本化合物の塩基形態、すなわち、化合物4-{[2-(S)-(アセチルスルファニル)エチル]カルバモイル}-1-エトキシ-1-オキソブタン-2-アミンおよび/または薬学的に許容される塩もまた、示し得る。
【0027】
読み手の注意は、本願に関連する本明細書と同時にまたはそれより前に提出され、本明細書とともに公開された全ての刊行物および文書に向けられ、このような刊行物および文書の全ては、参照により本明細書に包含させる。
【0028】
本発明は、式(X)の化合物の合成法を提供する。式(X)の化合物は、例えば反応スキーム1または反応スキーム2に従って合成され得る。
【0029】
反応スキーム1(図1)において、工程(i)は、式(I)の化合物を塩基および式ハロ-Rのアルキル化剤と反応させ、式(II)の化合物を形成させることを含む。工程(ii)は、式(II)の化合物を還元し、式(III)の化合物を形成させることを含む。工程(iii)は、式-Rの保護基を式(IV)の化合物のチオール基に付加させ、式(V)の化合物を形成させることを含む。工程(iv)は、式(III)の化合物を式(V)の化合物と反応させ、式(VI)の化合物を形成させることを含む。工程(v)は、式(VI)の化合物のR-オキシカルボニルアミドを開裂させ、式(X)の化合物を形成させることを含む。Rは-C(CH)であり、Aはハライドである。R、R、XおよびYは本明細書で定義されるとおりである。
【0030】
工程(iv)の反応は典型的に、カップリング剤、塩基および溶媒の存在下で実施される。驚くべきことに、我々は、工程(iv)において、カップリング反応を実施するときに使用されるカップリング剤、塩基および溶媒の相対量が形成される生成物に顕著な影響を与えることを特定した。例えば、トリエチルアミン(pK 10.75)を1モル当量で用いると、化合物(V)のN/S-アミド異性化生成物として特定された不純物が形成された。弱塩基であるN-メチルモルホリン(pK 7.38)を0.8モル当量で用いると、高収率および顕著に低いレベルのN/S-アミド異性化生成物不純物がもたらされた。理論に縛られることを望まないが、比較的強い酸を化学量論以上のレベルで使用すると、次の望ましくない反応が起こりやすい(式中、RはHまたはアルキル、例えば、メチルである)と考えられる。
【化6】
したがって、水中で約9未満のpK(例えば、約7.2~約9のpK)を有する塩基を使用することが、工程(iv)において有利であり得る。したがって、塩基を準化学量論量で使用することが、工程(iv)において有利であり得る。例えば、塩基は式(III)および式(V)の化合物と比較して、0.9モル当量以下(0.5~0.9モル当量、例えば、約0.8モル当量)の量で提供され得る。
【0031】
反応スキーム2(図2)において、工程(i)は、式R-OC(O)-の保護基を式(VIII)の化合物のアミン基に付加させ、式(III)の化合物を形成させることを含む。工程(ia)は、式-Rの保護基を化合物システアミンのチオール基に付加させ、式(VII)の化合物を形成させることを含む。工程(ii)は、式(III)の化合物を工程(ia)で形成された保護されたシステアミンと反応させ、式(VI)の化合物を形成させることを含む。工程(iii)は、式(VI)の化合物を還元し、式(IX)の化合物を形成させることを含む。工程(iv)は、式(IX)の化合物を酸と反応させ、式(X)の化合物を形成させることを含む。Rは-CHPhである。R、R、AおよびZは本明細書で定義されるとおりである。
【0032】
当業者により理解されるように、反応スキーム1および反応スキーム2は適切な出発物質の選択を伴う立体特異的なものである。例えば、式(I)の化合物は、反応スキーム1において(S)-異性体として提供され得て、この立体化学は式(II)、式(III)、式(VI)および式(X)の化合物において維持され得る。例えば、式(VII)の化合物は(反応スキーム2において(S)-異性体として提供され得て、この立体化学は式(III)、式(VI)、式(IX)および式(X)の化合物において維持され得る。
【0033】
ある実施態様において、本発明は、式(VI)の化合物を還元して式(IX)の化合物を得ること:
【化7】
および
式(IX)の化合物を式HAの酸と反応させて式(X)の化合物を提供すること:
【化8】
を含む、式(X)の化合物の製造方法を提供する。Rは-CHPhである。Rは-H、-C-C-アルキル、-C-C-アルケニルおよび-C-C-アルキル-アリールから選択される。アリールはフェニル(Ph)であり得る。Rは-C(O)Hおよび-C(O)C-C-アルキルから選択される。Aは薬学的に許容されるアニオンである。
【0034】
は-Hおよび-C-C-アルキルから選択され得る。Rは-Hであり得る。Rは-C-C-アルキルであり得る。Rは-CHであり得る。Rは-CHCHであり得る。Rは-C-C-アルキル-アリールであり、例えば、Rは-C-C-アルキル-Phであり得る。Rは-CHCH-Phまたは-CH-Phであり得る。
【0035】
は-C(O)C-C-アルキルであり得る。例えば、Rは-C(O)CHであり得る。
【0036】
Aは式(X)において便宜上一価のアニオンとして示されるが、Aは二価または三価のアニオンであり得て、これは式(X)が式(Xα)または式(Xβ):
【化9】
により表される場合である。文脈から他のことが指示されない限り、式(X)の化合物への言及は、式(Xα)および/または(Xβ)の化合物への言及を含む。
【0037】
Aはハライド(例えば、クロライド、ブロマイド)、スルフェート、メタンスルホネート、ナイトレート、マレート、アセテート、シトレート、フマレート、タートレート、スクシネート、ベンゾエート、グルタメートおよびアスパルテートから選択され得る。クロライドまたはブロマイド、例えば、クロライドから選択され得る。Aは、タートレートまたはフマレートであり得る。
【0038】
式(VI)の化合物の還元は、式(VI)の化合物を適切な溶媒に溶解すること、および触媒の存在下でHを用いて溶解した化合物を還元することを含み得る。溶媒は、アルコールまたはエステル、例えば、C-CアルコールまたはC-Cエステルであり得る。例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、メチルエタノエートおよびエチルエタノエートから選択され得る。触媒は不溶性金属水素化触媒、例えば、Pd-C、PtOまたはRa-Niであり得る。Hは1atm以上で提供され得る。還元は、少なくとも1時間にわたり実施され得る。
【0039】
式(IX)の化合物と式HAの酸の反応は、式HAの酸を含む溶液に式(IX)の化合物を溶解させることを含み得る。溶液はアルコール、例えば、C-Cアルコールであるか、またはこれを含む溶媒を含み得る。例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オールまたはブタン-2-オールから選択される。式(X)の化合物は、従来の方法を用いて溶液から単離され得る。
【0040】
式(VI)の化合物は、式(III)の化合物を式(VII)の化合物と反応させることにより形成される。
【化10】
アミド結合は、式(III)および式(VII)の化合物を適切な溶媒系に溶解し、式(III)の化合物のカルボキシル基を活性化させ、活性化されたカルボキシルと式(VII)の化合物のアミン基を反応させることにより形成され得る。あるいは、式(III)の化合物は適切な溶媒系に溶解され得て、そのカルボキシル基が活性化され得て、その後式(VII)の化合物が添加され、それにより、活性化されたカルボキシルが式(VII)の化合物のアミン基と反応し得る。適切な活性化剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)である。適切な溶媒系は、少なくとも1種のエステル(例えば、エチルエタノエート)またはエーテル(例えば、テトラヒドロフラン)を含んでよいか、またはこれらから成るものであってよい。
【0041】
式(VII)の化合物は、システアミンのチオールをアルキル化またはアシル化することにより形成され得る。アルキル化は、システアミンと塩基の存在下、式R-ハライドの化合物と反応させることにより、またはR-O-Rでアシル化することにより実施され得る。
【0042】
式(III)の化合物は、式R-OC(O)-の保護基を式(VIII):
【化11】
〔式中、
Zはハライドであり、ここで場合により、Zはクロライドであってよい〕
の化合物のアミン基に付加させることにより形成され得る。
【0043】
ある実施態様において、本発明は、式(III)の化合物を式(V)の化合物と反応させ、式(VI)の化合物を形成させること:
【化12】
および
酸HAを用いて式(VI)の化合物のR-オキシカルボニルアミドを開裂させ、式(X)の化合物の化合物を形成させること:
【化13】
を含む、式(X)の化合物の製造方法を提供する。Rは-C(CH)であり;R、RおよびAは本明細書で定義されるとおりである。Xはハライドである。
【0044】
酸HAは、式(VI)の化合物に添加され得る。酸HAはインサイチュで形成され得る。例えば、酸HAアシルハライドおよびアルコールを含む溶媒系からインサイチュで形成され得る;例えば、塩化アセチルをイソプロピルアルコールと反応させ、HClを形成させる。インサイチュでの酸の形成は、物質の取り扱いに有利であり得て、より容易に拡大可能な方法を提供し得る。
【0045】
式(III)の化合物と式(V)の化合物の反応によりアミド結合が形成される。アミド結合は、式(III)および式(V)の化合物を適切な溶媒系に溶解し、式(III)の化合物のカルボキシル基を活性化させ、活性化されたカルボキシルを式(V)の化合物のアミン基と反応させることにより形成され得る。あるいは、式(III)の化合物は適切な溶媒系に溶解され得て、そのカルボキシル基が活性化され得て、その後式(V)の化合物が添加され、それにより、活性化されたカルボキシルが式(V)の化合物のアミン基と反応し得る。適切な活性化剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドまたはジシクロヘキシルカルボジイミドのようなカルボジイミドであり得る。適切な活性化剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。適切な活性化剤は、ジシクロヘキシルカルボジイミドである。適切な溶媒系は、ハロ炭素(例えば、ジクロロメタン)を含む。適切な溶媒系は、塩基、例えば、有機塩基を含み得る。式(VI)の化合物の形成中の望ましくない異性化を最小限にするために、穏和な塩基および/または準化学量論の塩基が使用される。穏和な塩基は、水中で約9未満のpK(例えば、約7.2~約9のpK)を有する有機塩基であり得る。典型的な穏和な有機塩基は、N-アルキルモルホリン(例えば、N-メチルまたはN-エチルモルホリン)、N-アシルピペラジン、1-アルキルスルホニルピペリジン、1-トシルピペラジン;例えば、N-メチルモルホリンを含む。準化学量論(1モル当量未満)の塩基は、式(III)および式(V)の化合物と比較して0.9モル当量以下(例えば、0.5~0.9モル当量、例えば、約0.8モル当量)の量で提供される塩基であり得る。
【0046】
酸を用いた式(VI)の化合物のR-オキシカルボニルアミドの開裂は、式HAの酸を含む溶液式(VI)の化合物を溶解させ、式(X)の化合物を形成させることを含み得る。溶媒は有機溶媒であり得る。溶媒は、少なくとも1種のC-Cエーテル(例えば、ジエチルエーテル)を含んでよいか、またはこれから成るものであってよい。
【0047】
式(V)の化合物は、式-Rの保護基を式(IV)のチオール基に付加させることにより形成され得る。
【化14】
Yはハライドである。式(IV)の化合物のチオール基への式-Rの保護基の付加は、化合物を式R-O-Rの無水物を反応させることを含み得る。式(IV)の化合物のチオール基への式-Rの保護基の付加は、化合物を式R-Yのアシルハライド(例えば、塩化アシル)と反応させることを含み得る。
【0048】
式(III)の化合物は、式(II)の化合物を還元することにより形成され得る。
【化15】
【0049】
式(II)の化合物の還元は、式(II)の化合物を適切な溶媒に溶解すること、および触媒の存在下でHを用いて溶解した化合物を還元することを含み得る。溶媒は、アルコールまたはエステル、例えば、C-CアルコールまたはC-Cエステルであり得る。例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、メチルエタノエートおよびエチルエタノエートから選択され得る;例えば、溶媒はメタノールまたはエタノールであり得る。溶媒は式R-OHのアルコールであり得る。式R-OHのアルコールの使用は、式(II)の化合物の還元中に可能性があるエステル交換副反応に関する不純物を回避し得る。触媒は、不溶性金属水素化触媒、例えば、Pd-C、PtOまたはRa-Niであり得る。Hは1atm以上で提供され得る。還元は、少なくとも1時間にわたり実施され得る。
【0050】
式(II)の化合物は、(i)式(I)の化合物を式ハロ-Rのアルキル化試薬と反応させることにより形成され得る。
【化16】
【0051】
(i)による式(I)の化合物の式(II)の化合物への変換は、式(I)の化合物を適切な溶媒系に溶解させること、およびpHが約7(例えば、6.5~7.5のpH)になるまで塩基を添加することを含み得る。適切な溶媒系は、ハロ炭素(例えば、ジクロロメタン)を含むかまたはこれらから成るものであり得る。適切な塩基は、水性炭酸塩(例えば、CsCO)を含み得る。その後、混合物はハロ-Rのアルキル化試薬で処理され得る。
【0052】
は-Hおよび-C-C-アルキルから選択され得る。Rは-Hであり得る。Rは-C-C-アルキルであり得る。Rは-CHであり得る。Rは-CHCHであり得る。Rは-C-C-アルキル-アリール、例えば、Rは-C-C-アルキル-Phであり得る。Rは-CHCH-Phまたは-CH-Phであり得る。
【0053】
は-C(O)C-C-アルキルであり得る。例えば、Rは-C(O)CHであり得る。
【0054】
Aは式(X)において便宜上一価のアニオンとして示されるが、Aは二価または三価のアニオンであり得て、これは式(X)が式(Xα)または式(Xβ):
【化17】
により表される場合である。文脈から他のことが指示されない限り、式(X)の化合物への言及は、式(Xα)および/または式(Xβ)の化合物への言及を含む。
【0055】
Aは、クロライド、ブロマイド、スルフェート、メタンスルホネート、ベンゾエート、トシレートまたはノシレートから選択され得る。Aはハライドであり得て、例えば、Aはクロライドまたは臭化物、例えば、クロライドから選択され得る。Aは、非ハライド強酸の対イオンであり得て、例えば、Aはスルフェート、モノ水素スルフェート、ホスフェート、モノ水素ホスフェート、ジ水素ホスフェート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、トシレートまたはノシレートから選択され得る。
【0056】
Xはクロライドまたはブロマイドであり得る。Xはクロライドであり得る。
【0057】
Yはクロライドまたはブロマイドであり得る。Yはクロライドであり得る。
【0058】
Zはクロライドまたはブロマイドであり得る。Zはクロライドであり得る。
【0059】
式(I)、式(II)、式(III)、式(VI)、式(VIII)、式(IX)および式(X)の化合物はそれぞれ、不斉(キラル)炭素を含む。したがって、開示された方法は、これらの化合物のラセミ体および光学異性体を含む。特に、当該方法によれば、式(I)の化合物は式(Ia):
【化18】
の化合物であり得る;および/または
式(II)の化合物は式(IIa):
【化19】
の化合物であり得る;および/または
式(III)の化合物は式(IIIa):
【化20】
の化合物であり得る;および/または
式(VI)の化合物は式(VIa):
【化21】
の化合物であり得る;および/または
式(IX)の化合物は式(IXa):
【化22】
の化合物であり得る;および/または
式(X)の化合物は式(Xa):
【化23】
の化合物であり得る;および/または
式(VIII)の化合物は式(VIIIa):
【化24】
の化合物であり得る。
【0060】
Aは式(Xa)において便宜上一価のアニオンとして示されるが、Aは二価または三価のアニオンであり得て、これは式(Xa)が式(Xaα)または式(Xaβ):
【化25】
により表される場合である。文脈から他のことが指示されない限り、式(X)の化合物への言及は、式(Xaα)または式(Xaβ)の化合物への言及を含む。
【実施例
【0061】
次の実施例は、システアミンプロドラッグ誘導体への合成経路を示す。
実施例1-CF10への合成経路:
【化26】
【0062】
2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 5-ベンジルエステル 1-エチルエステル(2)の合成:
【化27】
5℃で、冷却したBoc-Glu(OBzl)-OH(1モル当量)のDMF(3.5mL中に1g)溶液にKCO(1.1モル当量)を添加した。混合物を10分間撹拌した後、臭化エチル(1.5モル当量)を添加し、5℃でさらに30分間撹拌した。反応混合物を室温まで昇温させ、さらに4時間撹拌した。その後混合物をEtOAcで希釈し、水、塩水で順次洗浄し、真空下で濃縮し、粗生成物(2)(収率約97%)を得て、これをさらに精製することなく次の工程に進めた。
【0063】
2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-エチルエステル(3)の合成:
【化28】
化合物2(1モル当量)のMeOH(8mL中に1g)溶液に、10% Pd/C(50% HO、0.012モル当量)を添加した。その後、20~25℃で、混合物を4バールで6時間水素化した。反応の完了後、ろ過により触媒を除去した後、真空下、40℃で溶液を濃縮し、粗生成物(3)(収率約100%)を得て、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0064】
1-[(2-アミノエチル)スルファニル]エタン-1-オン塩酸塩(5)の合成:
【化29】
システアミン塩酸塩(化合物4、1モル当量)をCHCl(5mL中に1g)に懸濁した。その後、塩化アセチル(2.0モル当量)を15分間かけて滴下した。その後、混合物を還流(40℃)温度で3時間加熱した後、室温まで冷却した。得られた固体をろ過により回収し、その後CHClで洗浄し、真空下で乾燥させ、白色結晶固体を得た。粗製の物質をイソプロピルアルコールおよびHOから再結晶し、ろ過により単離し、その後5℃のイソプロピルアルコールで洗浄した。真空下、50℃で乾燥させた後、白色結晶固体(5)を得た(収率約64%);融点146~148℃。
【0065】
4-(2-アセチルスルファニル-エチルカルバモイル)-2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸エチルエステル(6)の合成:
【化30】
化合物3(1モル当量)を乾燥DCM(20mL中に1g)に溶解し、これにHOBt(1.2モル当量)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(1.2モル当量)を添加した。混合物を5分間撹拌し、N-メチルモルホリン(0.8モル当量)を添加し、0℃でさらに15分間撹拌した。その後、化合物5(1モル当量)を添加し、混合物を0℃でさらに45分間撹拌した後、徐々に室温まで昇温させ、そのまま18時間撹拌した。その後、溶液を水性重炭酸ナトリウム(5% w/v)、水性クエン酸(10% w/v)および塩水で順次洗浄し、真空下で、30℃で乾燥させ、生成物(6)を白色固体(収率約64%)として得た。
【0066】
4-{[2-(S)-(アセチルスルファニル)エチル]カルバモイル}-1-エトキシ-1-オキソブタン-2-アミニウムクロライド[CF10]の合成:
【化31】
化合物6(1モル当量)を、HCl(2M)ジエチルエーテル溶液(8.66mL中に1g)中で一晩撹拌した。スラリーを18時間撹拌し、ろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、粗生成物をジエチルエーテルで洗浄し、白色微粉末として得た。粗生成物をイソプロピルアルコール中、40℃でスラリー化した後、再び0~5℃に冷却した。その後、生成物をろ過により回収し、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下、35℃で乾燥させ、CF10を白色微粉末(収率約76%)として得た。
【0067】
実施例2-CF10および関連する塩への別の合成経路:
次の反応スキームに示されるように、方法は、CF10の遊離塩基を形成させた後、塩形態へ変換することを含む。
【化32】
【0068】
本反応スキームにおいて、システアミン(NHCHCHSH)出発物質は、上記のとおり塩基として提供され得るか、またはシステアミン塩酸塩のような薬学的に許容される塩形態で提供され得る。実施例2の方法は、数多くの利益を提供し得る。例えば、塩形成の前に遊離塩基が形成るため、適切なアニオン、例えば、薬学的に許容されるアニオンを提供する任意の酸が最終工程に使用され得る。これは、多様な所望のアニオンを有するCF10の塩形態を得るための方法を提供する。さらに、典型的には塩形態が望ましいが、塩形態は、通常、遊離アミン塩基よりも長い貯蔵寿命を有するため、遊離アミン塩基が望ましいならば、CF10遊離塩基を単離することもまた、可能である。実施例2の方法はまた、L. Frost et al., Eur. J. Med. Chem., 2016, 109, 206-215に開示される方法を越える他の改善、例えば、収率、純度および/または取り扱いやすさなどを提供し得る。
【0069】
実施例3-CF10および関連する塩のさらなる合成:
2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 5-ベンジルエステル 1-エチルエステル(2)の合成
【化33】
5℃で、冷却したBoc-Glu(OBzl)-OH(1当量)のDMF(1.14L)溶液にKCO(1.1当量)を添加した。混合物を10分間撹拌した後、臭化エチル(1.5モル当量)を添加し、5℃でさらに30分間撹拌した。反応混合物を室温まで昇温させ、さらに4時間撹拌した。その後混合物をEtOAcで希釈し、水(2×1.14L)、塩水(1.14L)で洗浄し、真空下で濃縮し、粗生成物(2)(収率約97%)を得て、これをさらに精製することなく使用した。
【0070】
2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-エチルエステル(3)の合成
【化34】
2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 5-ベンジルエステル 1-エチルエステル(2)(90g、0.25mol)および10% Pd/C(50% HO、6.0g、0.003mol)をMeOH(700mL)に添加した。混合物を20~25℃で、4バールで6時間水素化した。反応の完了後、ろ過により触媒を除去し、得られた溶液を真空下、40℃で濃縮し、粗生成物(3)(収率約100%)を得て、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0071】
1-[(2-アミノエチル)スルファニル]エタン-1-オン塩酸塩(5)の合成
【化35】
システアミン塩酸塩(化合物4、1モル当量)をCHCl(5体積当量)に懸濁し、還流温度で30分間、塩化アセチルで処理した。混合物を還流温度でさらに4時間加熱した後、室温まで冷却した。その後、得られた固体をろ過により回収し、CHCl(2.5体積当量)で洗浄した。湿潤したケーキを還流温度で30分間、CHCl(5体積当量)で処理し、その後室温まで冷却した。得られた固体をろ過により回収し、その後CHCl(2.5体積当量)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを還流温度で30分間、CHCl(5体積当量)でさらに処理し、その後室温まで冷却した。得られた固体をろ過により回収し、その後CHCl(2.5体積当量)で洗浄した。真空下で乾燥させた後、白色固体(5)(収率約96.4%)を得た。
【0072】
4-(2-アセチルスルファニル-エチルカルバモイル)-2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸エチルエステル(6)の合成
【化36】
窒素下、2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-エチルエステル(3)(1モル当量)の乾燥ジクロロメタン(175mL)を0℃に冷却した。ジクロロメタン(125mL)に溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド(1.25モル当量)の溶液を2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-エチルエステル溶液に添加し、0℃の温度に維持し、15分間撹拌した。その後、反応混合物に1-[(2-アミノエチル)スルファニル]エタン-1-オン塩酸塩(5)(1モル当量)およびN-メチルモルホリン(1モル当量)を添加し、これを0℃の温度に維持した。反応混合物を室温まで昇温させながら一晩撹拌した、スラリーをろ過し、ジクロロメタンで洗浄し、合わせたろ液を水性クエン酸(10% w/v)、水性重炭酸ナトリウム溶液(5% w/v)、塩水で順次洗浄した後、濃縮した。物質を酢酸イソプロピル(100mL)で磨砕し、ろ過した。ろ液にn-ヘプタンを添加し、-5℃~5℃に冷却し、種晶を添加した。バッチを0℃で1~2時間撹拌し、その後ろ過した。得られた固体を酢酸イソプロピル:n-ヘプタン(1:2 v/v)の混合物で洗浄し、真空下、35~40℃で乾燥させ、所望の生成物(6)(収率約62%)を得た。
【0073】
エチル 4-{[2-(アセチルスルファニル)エチル]カルバモイル}-(2S)-アミノブタノエート塩酸塩(CF10)の合成
【化37】
スラリーが形成されるまで、4-(2-アセチルスルファニル-エチルカルバモイル)-2-(S)-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸エチルエステル(6)(25g、0.06mol)を塩化アセチル/イソプロピルアルコール/酢酸イソプロピル混合物中、環境温度で一晩撹拌した、スラリーをろ過し、酢酸イソプロピル(30mL)で洗浄し、その後加温した酢酸イソプロピル中で再スラリー化し、冷却し、ろ過した。ろ過ケーキを酢酸イソプロピルで洗浄し、得られた固体を真空下で乾燥させ、白色固体CF10(収率約79%)を得た。
【0074】
実施例3の方法は、数多くの利益を提供し得る。例えば、この合成は、容易に拡大可能なCF10への経路を提供し、かつ良好な不純物プロファイルを有する。さらに、この合成において使用される反応剤および中間体は、改善された取り扱い特性を提供する。
図1
図2