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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】白色有機発光デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/852 20230101AFI20240913BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240913BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240913BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 50/80 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 59/80 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240913BHJP
【FI】
H10K50/852
G02B5/26
G02B5/28
H10K50/17
H10K50/17 171
H10K50/18
H10K50/80
H10K59/38
H10K59/80
H10K71/16 166
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021559168
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 FI2020050214
(87)【国際公開番号】W WO2020201633
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】20195269
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】513317138
【氏名又は名称】トゥルク ユリオピスト
【氏名又は名称原語表記】Turun yliopisto
【住所又は居所原語表記】Yliopistonmaki, Turun yliopisto, 20014 Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダスカラキス、コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】トルマ、パイヴィ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0241005(US,A1)
【文献】中国特許第100463244(CN,C)
【文献】中国特許出願公開第108987609(CN,A)
【文献】CHRISTOPHER R. GUBBIN; ET AL,LOW-VOLTAGE POLARITON ELECTROLUMINESCENCE FROM AN ULTRASTRONGLY COUPLED ORGANIC LIGHT-EMITTING DIODE,APPLIED PHYSICS LETTERS,米国,AIP PUBLISHING LLC,2014年06月09日,VOL:104, NR:23,PAGE(S):233302(1-4),https://doi.org/10.1063/1.4871271
【文献】JIANHUA ZHANG; ET AL,SUNLIGHT-LIKE WHITE ORGANIC LIGHT-EMITTING DIODES WITH INORGANIC/ORGANIC NANOLAMINATE 以下備考,ORGANIC ELECTRONICS,NL,2016年06月,VOL:33,PAGE(S):88-94,https://doi.org/10.1016/j.orgel.2016.03.010,DISTRIBUTED BRAGG REFLECTOR (DBR) ANODE MICROCAVITY BY USING ATOMIC LAYER DEPOSITION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
G02B 5/28
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.エレクトロルミネセンス媒体を含む有機発光デバイスと、
b.前記有機発光デバイスに隣接して配置された、交互に積層された高屈折率材料の層及び低屈折率材料の層の対を含むブラッグ変換器と、
を備え、
前記エレクトロルミネセンス媒体が、その発光の一部が紫外及び青色波長に位置する範囲の光を放出する単一の有機発光層を含み、
前記ブラッグ変換器が、前記ブラッグ変換器のストップバンドによってUV照射を抑制し、ブラッグモードを介して赤色にシフトした発光の取り出しを強化することにより、前記有機発光デバイスからの光を異なる色に変換する、
白色有機発光デバイス。
【請求項2】
前記エレクトロルミネセンス媒体が、前記有機発光層の一方の面に配置された反射層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項3】
前記ブラッグ変換器が、前記エレクトロルミネセンス媒体の、前記反射層とは反対側の面に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項4】
前記有機発光デバイスの発光部が、アノード、電子注入層、発光層、正孔ブロック層、正孔注入層、及びカソードを含むことを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項5】
前記ブラッグ変換器が、シリコン、タンタル、チタン、ハフニウム、又はこれらの混合物の酸化物を含む誘電体材料の透明な酸化物を含むことを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項6】
前記ブラッグ変換器が、シリカ及び五酸化タンタルを含むシリコン又はタンタルの酸化物を含む、請求項5に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項7】
前記白色有機発光デバイスが、前記反射層の下に配置された基板の上に置されていることを特徴とする、請求項2に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項8】
前記基板は、前記反射層を前記基板の上に成膜可能な学的に平坦な固体材料であることを特徴とする、請求項7に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項9】
前記基板が、前記有機発光デバイスの、前記ブラッグ変換器とは反対側の面に取り付けられている、請求項7又は請求項8に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項10】
アルミニウムのアノードと、三酸化モリブデンの正孔注入層と、TDAF(2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン)の発光層と、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の正孔ブロック層と、フッ化リチウムの電子注入層と、アルミニウムのカソードと、シリカ及び五酸化タンタルを交互に積層した層を含むブラッグ変換器と、を備える、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイスの製造方法であって、
a.パターニングされたシャドウマスクを介して、アノードの層及び正孔注入層を順次成膜すること、
b.パターニングされたシャドウマスクを介して、発光層、正孔ブロック層、電子注入層、及びカソードの層を順次成膜すること、及び
c.パターニングされたシャドウマスクを介して、ブラッグ変換器の層を前記カソードの表面に直接スパッタリングすること、
を含む、白色有機発光デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイスを含むデバイスを用いて白色光を生成する方法。
【請求項13】
白色光を生成するための、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の白色有機発光デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス媒体(ELM:electroluminescent medium)と、ELMに隣接して配置されたブラッグ変換器とを備える白色有機発光デバイス(WOLED:white organic light emitting device)に関する。さらに、本発明は、前記WOLEDを用いて白色光を生成する方法、白色光を生成するためのWOLEDの使用、及び前記WOLEDを製造する製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去30年間、発光ダイオード(LED:light emitting diodes)は、多数のオプトエレクトロニクス用途において利用され、現代の研究における主要なトレンドの1つとなっている。LEDは省エネルギーに大きく貢献することから、汎用性が高く、高効率な一般照明システムとして確立されている。特に、有機発光デバイス(OLED:organic light emitting device)における発光は、有機分子又は有機金属分子からのエレクトロルミネセンスに依存し、有機分子又は有機金属分子は、それらの無機の対応物と比較して実質的に低いコストを有する。OLEDの製造コストが低いことに加えて、大面積やフレキシブル基板への集積が容易であるため、グレアフリー(glare-free)の照明として特に魅力的であり、複雑な照明デザインのアーキテクチャにも統合可能である。
【0003】
一般的な照明装置の重要な要件の一つは、高強度かつ高品質の白色光を、任意の所与の電力入力で安定して発光させることである。一般に、白色で発光する有機発光デバイス(WOLED)の製造方法は、以下の3つの主要な設計に分類することができる。
【0004】
1)マトリクス材料(単一分子又はポリマー)と複数の不純物エミッタ(例えば、青-緑-赤)との間の近分子エネルギー移動(フェルスター又はデクスター)によって白色光が達成される、単一発光層(s-EML:single emitting layer)構造に基づくWOLED。これらの構造は、特にWOLEDの研究のために、製造上の柔軟性(真空蒸着又は溶液プロセス)を提供する一方で、不純物濃度の正確な制御が主要な課題の1つである。
【0005】
2) 複数の発光層を有するWOLEDでは、安定したエレクトロルミネセンスと高いデバイス歩留まりが達成できる。このWOLEDでは、垂直方向に積層されたマルチEML(multi-EML)構造又はストライプ構造から得られる赤-緑-青(RGB)光を混合することで、白色光を得る。しかしながら、それらの製造方法は複雑であり、活性領域が厚いため、通常、動作電流が大きくなる。さらに、複数の発色層からの色の組み合わせを制御するために、電子的な駆動回路が必要となる。
【0006】
3) 広帯域の発光スペクトルを有する単一のエミッタ(ドープされている場合もある)からなる厚い活性媒体に、複数のキャビティモードを組み込む。RGB波長に位置するキャビティモード共振は、RGBでのパーセル効果による発光(Purcell-enhance emission)を可能とする。これらのフォトニックなマルチ共振構造における利点は、先に述べたカテゴリーのいずれからもEMLを利用するように設計できることである。ここでの主な課題は、キャビティの長さが長くなることであり、通常380nmよりも厚くなる。これにより、追加の損失導波モード(lossy waveguided modes)が導入され、OLEDにおける電子-正孔の効率的な再結合が阻害される(効率ロールオフ(efficiency roll-off))。
【0007】
米国特許出願公開第2008/0137008号は、3つの積層された層を有するデバイスを教示しており、各層は複数の画素を有し、そのうちの1/3は選択された色に対して放射的に活性であるが、3つの層を適切に整列させると、1つの層の色画素が他の層の非活性画素と垂直方向に整列する。層は、独立にアドレスされて、約5500K~約6500K、又は約2800K~約5500Kの色温度を提供する。
【0008】
米国特許出願公開第2012/0153320号は、異なる色のエレクトロルミネセンスOLEDの2つ又は3つの交互のストライプが、マイクロキャビティ効果のために構築され、デバイスが強化された光出力を有することができる発光デバイスを教示する。
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、誘電体分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)のフォトニックなブラッグモードに結合させた単一発光層(s-EML)を含む上面発光型のOLED(TOLED:top-emitting OLED)から白色光が生成され得ることが分かった。また、白色光の主要な色である赤-緑-青(RGB)に共振するブラッグモードが、s-EMLのスペクトルを変化させ、広帯域の白色発光を生成し得ることも分かった。
【0010】
本発明の利点は、白色発光OLEDの構造の単純化と、前記WOLEDを工業規模で容易かつコスト効率よく製造できることと、を含む。
【0011】
本発明の第1の態様は、白色有機発光デバイス(WOLED)である。本発明によれば、WOLEDは、エレクトロルミネセンス媒体(ELM)と、ELMに直接隣接して配置されたブラッグ変換器とを含む。前記WOLEDは、白色光を生成するために使用することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記WOLEDの製造方法である。本発明によれば、前記方法は、
a. パターニングされたシャドウマスクを介して、アノード及び正孔注入層を順次成膜すること、
b. パターニングされたシャドウマスクを介して、発光層、正孔ブロック層、電子注入層、及びカソード層を順次成膜すること、
及び、
c. パターンニングされたシャドウマスクを介して、ブラッグ変換層をカソードの表面に直接スパッタリングすること、を含む。
【0013】
本発明の第3の態様は、本明細書に記載のWOLEDを使用して白色光を生成する方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、白色光の生成のための本明細書に記載されるWOLEDの使用である。
【0015】
本発明の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とする装置、製造方法、方法、及び使用によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明によるWOLEDの原理を説明する概略図である。
図2図2は、WOLEDのシミュレートされた反射率と、WOLEDの実験的に測定された発光スペクトルとを示す。
図3図3は、OLEDの実験的に測定された発光スペクトルと、2つの異なるWOLEDからの実験的に測定された発光スペクトルとを示す。
図4図4は、本発明によるWOLEDの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態では、本発明の目標は、単色光を生成する単一のエレクトロルミネセンス層と、1色のエレクトロルミネセンスを多色のエレクトロルミネセンス出力に変換するブラッグ変換器とに基づく、新規な白色有機発光デバイス(WOLED)を開発することであった。OLEDベースのデバイスを照明に使用する特定の用途において、白色光が望まれている。
【0018】
本発明の一実施形態では、驚くべきことに、誘電体分布ブラッグ反射器(DBR)のフォトニックなブラッグモードに結合されたサブ100nmの厚さ(sub-100 nm-thick)の青色単一発光層(s-EML)からなる上面発光型のOLED(TOLED)から、白色光を生成できることが分かった。ブラッグモードとは、DBRのストップバンドの外側に位置するモードであり、その波長は、周期的な層構造の方向のDBRの長さで定義される。また、白色光の主要な色である赤-緑-青(RGB)で共振するブラッグモードは、DBRのフォトニックバンドの外側に位置するにもかかわらず、光学遷移の状態密度を変更し、広帯域の白色光を生成できることが分かった。
【0019】
本発明によるWOLEDの一実施形態では、DBRのストップバンドは、従来のキャビティミラーとして使用されず、代わりに、赤色にシフトした発光の取り出し(out-coupling)を強化しながら、UV放射を抑制する。さらに、OLEDの上にDBRを成膜することによって、有機層の保護を実現することが可能となり、最終製品の寿命を延ばすことにつながる。
【0020】
本明細書で使用される「ブラッグ変換器(Bragg converter)」という表現は、OLEDから放出される光を異なる色の光に変換する周期構造を指す。一実施形態では、ブラッグ変換器は、そのストップバンドによって放射の一部を遮断し、ブラッグモードを介して選択された色に必要な波長を取り出すことによって、OLEDからの光を異なる色に変換する。本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器は、そのストップバンド(紫外線放射など)によって放射の一部を遮断し、ブラッグモードを介して選択された色に必要な波長を取り出すために使用される分布ブラッグ反射器(DBR)を指す。一実施形態では、ブラッグ変換器は、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層した層を含む。本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器は、高屈折率及び低屈折率を交互に有する2つの材料の透明層を含み、可視スペクトル(400nm~700nm)における複数の透明ブラッグモードをサポートする。
【0021】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器を含むWOLEDからの所望の出射光は多色光である。本発明の別の実施形態では、ブラッグ変換器を含むWOLEDからの所望の出射光は白色光である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「白色光」という表現は、2700K(ケルビン)~6500Kの範囲の色温度を有する光を指す。
【0023】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、有機発光デバイス(OLED)と、OLEDに直接隣接して配置されたブラッグ変換器とを含む。
【0024】
一実施形態では、WOLEDは、エレクトロルミネッセンス媒体(ELM)を含む有機発光デバイス(OLED)と、交互に積層された高屈折率材料の層及び低屈折率材料の層の対(pairs of alternating layers)を含み、OLEDに直接隣接して配置されたブラッグ変換器と、を備え、ELMは単一の有機発光層(EML)を含み、ブラッグ変換器はそのストップバンドによって放射の一部を遮断し、ブラッグモードを介して選択された色に必要な波長を取り出すこと(out-coupling)によって、OLEDからの光を異なる色に変換する。
【0025】
図1は、本発明によるWOLEDの概略図である。本発明によるWOLEDは、エレクトロルミネセンス提供媒体(electroluminescent medium、ELM)を備える。本発明の一実施形態では、ELMは、アノードとカソードとの間に挟まれている。WOLEDは、デバイスのカソードが配置された側の面に配置されたブラッグ変換器をさらに備える。任意選択で、本発明によるWOLEDは、光学的に平坦な適切な固体基板上に配置されてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態では、ELMは有機発光層(EML)を含む。本発明の別の実施形態では、ELMは、発光層(EML)、正孔注入層、正孔ブロック層、及び電子注入層を備える。本発明の一実施形態では、発光層と正孔ブロック層とが一緒になって二層有機スタックを形成する。
【0027】
エレクトロルミネセンスの方向(図1及び図4の矢印で示される)に関して、本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器は、上面、すなわちOLEDの光出射面に配置される。本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器は、OLEDに直接隣接して配置される。本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器はOLEDと接触している。
【0028】
本発明の一実施形態では、OLEDは、少なくとも2層の有機成分を含む二層有機スタックを含む。本発明の特定の実施形態では、有機層は、正孔ブロック層(HBL:hole blocking layer)と発光層(EML)とである。本発明の一実施形態では、発光層(EML)は、不純物及び他の添加剤を含まない。
【0029】
本発明の一実施形態では、OLEDは、カソード、電子注入層、二層有機スタック、正孔注入層、及びアノードを備える。
【0030】
本発明の一実施形態では、OLEDは、カソード、電子注入層、正孔ブロック層、発光層、正孔注入層、及びアノードを備える。
【0031】
本発明の一実施形態では、エレクトロルミネセンス媒体(ELM)は、電子注入層、二層有機スタック、及び正孔注入層を備える。
【0032】
本発明によるOLED及びWOLEDの色は、CIE(Commission Internationale de l'Eclaraige)によって定義された座標の組として、CIE 1931 XYZ色空間に従って定義される。
【0033】
本発明の一実施形態では、二層有機スタックは、発光層と正孔ブロック層とを備える。本発明の特定の実施形態では、二層有機スタックは、発光層としてのオリゴフルオレンと、正孔ブロック層としてのフェナントロリンとを含む。本発明の非常に具体的な実施形態では、二層有機スタックは、活性有機層として2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン(TDAF)の層を含み、正孔ブロック層として4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)の層を含む。
【0034】
本発明の一実施形態では、二層有機スタックは、不純物及び他の添加剤を本質的に含まない。
【0035】
本発明の一実施形態では、発光層は、1nm~100nm、10nm~90nm、20nm~80nm、30nm~70nm、40nm~60nm、又は45nm~55nmの厚さを有する。
【0036】
本発明の一実施形態では、発光層は、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、又は55nm未満の厚さを有する。
【0037】
本発明の一実施形態では、発光層は、1nmより大きい、10nmより大きい、20nmより大きい、30nmより大きい、40nmより大きい、又は45nmより大きい厚さを有する。
【0038】
本発明の一実施形態では、正孔ブロック層は、1nm~70nm、1nm~60nm、2nm~50nm、5nm~40nm、10nm~30nm、又は15nm~25nmの厚さを有する。
【0039】
本発明の一実施形態では、正孔ブロック層は、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、又は25nm未満の厚さを有する。
【0040】
本発明の一実施形態では、正孔ブロック層は、1nmより大きい、2nmより大きい、5nmより大きい、10nmより大きい、又は15nmより大きい厚さを有する。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、発光層は50nmの厚さを有し、正孔ブロック層は20nmの厚さを有する。
【0042】
本発明の一実施形態では、TDAF及びBPhenを含むTOLEDは、1931 CIE(Comission Internationale de l'Eclairage)による座標(0.19、0.15)で、442nmにピーク発光を有する青色光を放出する。
【0043】
本発明の一実施形態では、発光層(EML)は、その発光の一部が紫外及び青色波長に位置する広い範囲の光を放出する。
【0044】
エレクトロルミネセンス媒体(ELM)はまた、二重層有機スタックに加えて、アノード及びカソードを含み、アノードとカソードとの間には二重層有機スタックが挟まれている。アノード及びカソードは、任意の適切な導電性材料から選択されている。
【0045】
エレクトロルミネセンス媒体(ELM)は、電流が印加されると発光する材料の任意の適切な組み合わせから構成することができる。当業者には容易に理解されるように、ELM用の材料の選択は、WOLEDの発光(luminescence)から得たい光の色温度に依存する。
【0046】
本発明の一実施形態では、カソードは、0.1nm~70nm、1nm~60nm、2nm~50nm、5nm~40nm、10nm~30nm、又は10nm~20nmの厚さを有する。
【0047】
本発明の一実施形態では、カソードは、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、又は20nm未満の厚さを有する。
【0048】
本発明の一実施形態では、カソードは、0.1nmより大きい、1nmより大きい、2nmより大きい、5nmより大きい、又は10nmより大きい厚さを有する。
【0049】
本発明の一実施形態では、アノードは、10nm~130nm、20nm~120nm、30nm~110nm、40nm~100nm、50nm~90nm、又は60nm~80nmの厚さを有する。
【0050】
本発明の一実施形態では、アノードは、130nm未満、120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、又は80nm未満の厚さを有する。
【0051】
本発明の一実施形態では、アノードは、10nmより大きい、20nmより大きい、30nmより大きい、40nmより大きい、50nmより大きい、又は60nmより大きい厚さを有する。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、カソードの材料はアルミニウムであり、カソードの厚さは10nmである。本発明の特定の実施形態では、アノードの材料はアルミニウムであり、アノードの厚さは70nmである。
【0053】
当業者には容易に理解されるように、金属アノードは、エレクトロルミネセンス媒体(ELM)から放出された光をOLED又はWOLEDの表面に向けて反射する反射器としても機能するであろう。本発明の一実施形態では、OLEDは、ELMの片面に配置された反射層を備える。本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器は、ELMの、反射材料とは反対側の面に配置される。本発明の別の特定の実施形態では、アノードは反射材料を含む。
【0054】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、アノードと二層有機スタックとの間に挟まれた正孔注入層を備える。正孔注入層は、MoO(三酸化モリブデン)を含み、約5nmの厚さを有する。
【0055】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、0.1nm~70nm、1nm~60nm、2nm~50nm、5nm~40nm、10nm~30nm、又は15nm~25nmの厚さを有する。
【0056】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、又は25nm未満の厚さを有する。
【0057】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、1nmより大きい、2nmより大きい、5nmより大きい、10nmより大きい、又は15nmより大きい厚さを有する。
【0058】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、カソードと二層有機スタックとの間に挟まれた電子注入層を備える。本発明の特定の実施形態では、電子注入層は、LiF(フッ化リチウム)を含み、約0.5nmの厚さを有する。
【0059】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、0.1nm~7nm、0.2nm~6nm、0.3nm~5nm、0.4nm~4nm、0.3nm~3nm、又は0.2nm~2nmの厚さを有する。
【0060】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、7nm未満、5nm未満、4nm未満、3nm未満、2nm未満、又は1nm未満の厚さを有する。
【0061】
本発明の一実施形態では、正孔注入層は、0.1nmより大きい、0.2nmより大きい、0.3nmより大きい、0.4nmより大きい、又は0.45nmより大きい厚さを有する。
【0062】
本発明の一実施形態では、二層有機スタック、アノード、カソード、電子注入層、及び正孔注入層を備えるELMの合計の厚さは、約160nmである。
【0063】
本発明の一実施形態では、二層有機スタック、アノード、カソード、電子注入層、及び正孔注入層を備えるELMの合計の厚さは、50~500nm、75~450nm、100~350nm、125~250nm、130~200nm、又は140~190nmである。
【0064】
本発明の一実施形態では、二層有機スタック、アノード、カソード、電子注入層、及び正孔注入層を備えるELMの合計の厚さは、500nm未満、450nm未満、350nm未満、250nm未満、200nm未満、又は190nm未満である。
【0065】
本発明の一実施形態では、二層有機スタック、アノード、カソード、電子注入層、及び正孔注入層を備えるELMの合計の厚さは、50nmより大きい、75nmより大きい、100nmより大きい、125nmより大きい、130nmより大きい、又は140nmより大きい。
【0066】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、基板を備える。基板は、隣接する層と化学的に適合性があり、隣接する層を支持するのに十分な光学的平坦性と堅牢性とを有する任意の材料とすることができる。特定の用途に応じて、基板は、柔軟又は非柔軟であってもよく、透明、半透明又は不透明であってもよく、シリコン技術と適合性があり、集積回路を有することができる。本発明の特定の実施形態では、基板は反射器としても機能することができる。基板として使用され得る材料の非限定的な例は、金属、プラスチック、半導体、及び誘電体(ガラス、石英、又はサファイアなど)である。適切な基板の非限定的な例は、金属コーティングされたガラス又はシリコンである。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「ガラス」という用語は、ガラスとして特徴付けられるか、又は特徴付けることが可能な任意の材料をいう。これには、ソーダ石灰ガラス、ソーダ石灰石英ガラス、溶融石英、溶融石英ガラス、ガラス質シリカガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、パイレックス(登録商標)、酸化鉛ガラス、クリスタルガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、酸化ゲルマニウムガラス、サファイアガラス、及びこれらの混合物などの材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の一実施形態では、基板は、OLEDの、ブラッグ変換器とは反対側の面に取り付けられる。
【0069】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器は、交互に積層された高屈折率材料の層及び低屈折率材料の層の対を備える。使用する材料の選択は、必要とされる波長の変換の正確な性質に依存する。高屈折率材料及び低屈折率材料の層は、高屈折率層を低屈折率層の上に配置するか、又は低屈折率層を高屈折率層の上に配置するかのいずれかの順序で配置することができる。
【0070】
図2は、WOLEDの反射率の計算値とWOLEDの発光スペクトルとを示す。
本明細書で使用される場合、「低屈折率材料」という用語は、可視波長に対する屈折率が1.65以下の材料を指し、「高屈折率材料」という用語は、可視波長に対する屈折率が1.7以上の材料を指す。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器は、シリコン、タンタル、チタン、又はハフニウムの透明な酸化物を含む群から選択された複数の誘電体化合物が交互に積層された層を含む。好適な酸化物の非限定的な例としては、シリカ(二酸化ケイ素、SiO)などのケイ素の酸化物、五酸化タンタル(Ta)などのタンタルの酸化物、チタニア(TiO)などのチタンの酸化物、及び二酸化ハフニウム(HfO)などのハフニウムの酸化物が挙げられる。
【0072】
本発明の一実施形態では、低屈折率材料の個々の層の厚さは、1nm~100nm、10nm~90nm、20nm~80nm、30nm~70nm、35nm~65nm、又は40nm~60nmである。
【0073】
本発明の一実施形態では、低屈折率材料の個々の層の厚さは、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、65nm未満、又は60nm未満である。
【0074】
本発明の一実施形態では、低屈折率材料の個々の層の厚さは、1nmより大きい、10nmより大きい、20nmより大きい、30nmより大きい、35nmより大きい、又は40nmより大きい。
【0075】
本発明の一実施形態では、低屈折率材料の個々の層の厚さは、それぞれ約42nmである。本発明の別の実施形態では、低屈折率材料の個々の層の厚さは、それぞれ約53nmである。
【0076】
本発明の一実施形態では、低屈折率材料は、シリコンの透明酸化物を含む群から選択される。特定の実施形態では、低屈折率物質は、シリカ(SiO)である。
【0077】
本発明の一実施形態では、高屈折率材料の個々の層の厚さは、10nm~200nm、40nm~150nm、50nm~130nm、60nm~120nm、70nm~110nm、又は80nm~100nmである。
【0078】
本発明の一実施形態では、高屈折率材料の個々の層の厚さは、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、又は25nm未満である。
【0079】
本発明の一実施形態では、高屈折率材料の個々の層の厚さは、1nmより大きい、2nmより大きい、5nmより大きい、10nmより大きい、又は15nmより大きい。
【0080】
本発明の一実施形態では、高屈折率材料の個々の層の厚さは、それぞれ41nmである。本発明の別の実施形態では、高屈折率材料の個々の層の厚さは、それぞれ42nmである。
【0081】
本発明の一実施形態では、高屈折率材料は、タンタル、チタン、及びハフニウムの透明酸化物を含む群から選択される。本発明の特定の実施形態では、高屈折率材料は、タンタルの透明酸化物を含有する群から選択される。本発明の非常に具体的な実施形態では、高屈折率物質は、五酸化タンタル(Ta)である。
【0082】
本発明の一実施形態では、一対の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、30nm~300nm、45nm~275nm、50nm~260nm、60nm~200nm、70nm~180nm、又は80nm~110nmである。
【0083】
本発明の一実施形態では、一対の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、300nm未満、200nm未満、160nm未満、100nm未満、120nm未満、又は100nm未満である。
【0084】
本発明の一実施形態では、一対の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、10nmより大きい、35nmより大きい、50nmより大きい、60nmより大きい、70nmより大きい、又は80nmより大きい。
本発明の特定の実施形態では、一対の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、83nmである。本発明の別の特定の実施形態では、一対の高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、96nmである。
【0085】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器は、互いに重ねて配置された、高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ含む少なくとも1つの対(layers)、少なくとも2つの対、少なくとも3つの対、少なくとも4つの対、又は少なくとも5つの対を備える。本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器は、各々が高屈折率層と低屈折率層とを含み、互いに重ねて配置された少なくとも6つの対を含む。
【0086】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器の全体の厚さは、20nm~2000nm、30nm~1000nm、40nm~800nm、50nm~700nm、400nm~650nm、又は500nm~600nmである。
【0087】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器の全体の厚さは、2000nm未満、1000nm未満、800nm未満、700nm未満、650nm未満、又は600nm未満である。
【0088】
本発明の一実施形態では、ブラッグ変換器の全体の厚さは、20nmより大きい、100nmより大きい、200nmより大きい、300nmより大きい、400nmより大きい、又は500nmより大きい。
【0089】
本発明の特定の実施形態では、ブラッグ変換器の全体の厚さは、約498nmである。本発明の別の特定の実施形態では、ブラッグ変換器の全体の厚さは、約576nmである。使用される厚さの選択は、必要とされる波長の変換の正確な性質に依存するであろう。
【0090】
WOLEDによって放出される光の色は、OLEDによって放出される色とブラッグ変換器の構造の、両方に依存することが当業者には理解されよう。
【0091】
非限定的な例として、本発明の一実施形態では、1931 CIEの座標(0.19、0.15)を有する光を放出する本開示の青色OLEDを備え、各々が高屈折率層及び低屈折率層を含み、互いに重ねて配置された少なくとも6つの層からなり、合計498nmの厚さを有するブラッグ変換器によって青色OLEDが封止されたWOLEDは、1931 CIEの座標(0.32、0.36)を有する均一な白色光を放出することが、本出願人によって提示される。
【0092】
別の非限定的な例として、本発明の一実施形態では、1931 CIEの座標(0.19、0.15)を有する光を放出する本開示の青色OLEDを備え、各々が高屈折率層及び低屈折率層を含み、互いに重ねて配置された少なくとも6つの層からなり、合計576nmの厚さを有するブラッグ変換器によって青色OLEDが封止されたWOLEDは、1931 CIEの座標(0.36、0.35)を有する均一な白色光を放出することが、本出願人によって提示される。
【0093】
図3は、OLEDの実験的に測定された発光スペクトルと、2つの異なるWOLEDからの実験的に測定された発光スペクトルとを示す。図3Aは、全体の厚さが498nmのブラッグ変換器を含むWOLEDの発光スペクトルを示し、図3Bは全体の厚さが576nmのブラッグ変換器を含むWOLEDの発光スペクトルを示す。いずれの場合も、WOLEDは、1931 CIEの座標(0.19、0.15)を有し青色光を発光するOLEDを備える。
【0094】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、OLEDとブラッグ変換器とを備える。さらなる実施形態では、WOLEDは、OLED、ブラッグ変換器、及び基板を備える。
【0095】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、OLEDとブラッグ変換器とを備え、OLEDは、アルミニウムのアノード、MoOの正孔注入層と、オリゴフルオレンの発光層と、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の正孔ブロック層と、LiFの電子注入層と、アルミニウムのカソードとを備える。
【0096】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、OLEDとブラッグ変換器とを備え、OLEDは、アルミニウムのアノードと、MoOの正孔注入層と、TDAF(2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン)の発光層と、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の正孔ブロック層と、LiFの電子注入層と、アルミニウムのカソードとを備える。
【0097】
本発明の一実施形態において、WOLEDは、アルミニウムのアノードと、MoOの正孔注入層と、TDAF(2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン)の発光層と、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の正孔ブロック層と、LiFの電子注入層と、アルミニウムのカソードと、図4による交互に積層されたSiOの層及びTaの層を含むブラッグ変換器と、を備える。
【0098】
本発明の一実施形態において、WOLEDは、アルミニウムのアノードと、MoOの正孔注入層と、TDAF(2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン)の発光層と、BPhen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)の正孔ブロック層と、LiFの電子注入層と、アルミニウムのカソードと、基材上に配置された図4による交互に積層されたSiOの層及びTaの層を含むブラッグ変換器と、を備える。
【0099】
図4は、本発明によるWOLEDの概略説明図である。
本発明の一実施形態では、本発明によるWOLEDの厚さは、150nm~1350nm、250nm~1250nm、350nm~1150nm、450nm~1050nm、550nm~950nm、又は650nm~850nmである。
【0100】
本発明の一実施形態では、本発明によるWOLEDの厚さは、1350nm未満、1250nm未満、1150nm未満、1050nm未満、950nm未満、又は850nm未満である。
【0101】
本発明の一実施形態では、本発明によるWOLEDの厚さは、150nmより大きい、250nmより大きい、350nmより大きい、450nmより大きい、550nmより大きい、又は650nmより大きい。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、発光層、カソード、アノード、正孔注入層、電子注入層、及びブラッグ変換器を含むWOLEDの全体の厚さは、約750nmである。
【0103】
当業者には理解されるように、本発明によるWOLEDは、多数の異なる方法のうちの1つで製造することができる。本発明によるWOLEDを製造するための技術の非限定的な例は、真空蒸着及びスピンコーティングである。
【0104】
本発明の一実施形態では、WOLEDは、適切な基板又は表面にマスクを適用した後、アノード及び正孔注入層のための材料を順次真空蒸着することによって構築することができる。蒸着後、真空が解除され、マスキングが除去され、第1のマスクの方向に垂直な第2のマスクが追加される。最後に、有機二重層、電子注入層及びカソード層が追加されて、OLEDが完成する。蒸着チャンバが大気圧までベントされ、マスキング層が除去された後、真空中でのスパッタリングによりブラッグ変換器の層が追加されて、WOLEDが完成する。
【0105】
本発明の一実施形態では、OLEDデバイスは、ブラッグ変換器と組み合わせたときに、LEDの色とは異なる色の出射光を生じる有色の無機半導体(colored inorganic semiconductor)である無機LEDと置き換えることができる。例えば、デバイスに含めるのに適した有色の無機半導体としては、InGaN/GaN、ZnS、GaP:N、AllnGaP、GaAsP、GaAsP:N、InGaP、AlGaAs、及びGaAsが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明のWOLEDは、誘電体DBRを使用することで、OLEDの効率的な封止を提供し、OLED内への水分及び酸素の拡散を防ぐことで、デバイスの寿命を大幅に延ばすという追加の利点を提供する。これは、例えばエポキシ樹脂によるデバイスの封止が必要ではないことを意味する。
【0107】
本発明の一実施形態は、WOLEDに電気を印加することによって、本発明によるWOLEDを用いて白色光を生成する方法である。本発明の一実施形態では、WOLEDは白色光を生成するために使用される。
【実施例
【0108】
以下、本発明を、実施例を用いて説明する。実施例は、説明を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0109】
実施例1:WOLEDの製造方法
複数の蒸着源を有する標準的な真空蒸発装置(Edwards E306)を用いて、OLEDの製造を実現した。蒸着基準圧は約10-6mbar(ミリバール)であり、蒸着速度は2Ås-1(オングストローム/秒)であった。OLEDは、厚さ1mmの石英基板上に成膜された。OLEDは、基板と直接接触するシャドウマスクを用いて正方形にパターニングされた。最初にAlの下部アノードとMoOの正孔注入層とを成膜し、反応器を周囲大気までベントしてマスクを交換した。TDAF、Bphen、LiF、及びAlからなるOLEDの上部を成膜し、その後、マスクを除去する前に大気雰囲気までベントした。ブラッグ変換器は、OLED上に直接スパッタリングされた。
【0110】
実施例2:特性評価
エリプソメトリ(J.A. Woollam M2000)とプロフィロメトリ(Bruker DektakXT)とを組み合わせて、薄膜の厚さを決定し、光学定数を求めた。すべてのデバイスは、ケースレー社のソースメータユニット(2602B)を用いて電気的特性を評価した。分光計(Acton SpectrPro 2500)に結合した絶対較正済みの2次元CCDカメラ(Pixis 400)を用いて、電流を増加させたときの前方分光放射輝度(forward spectral radiance)を測定した。分光計のスリット上の画素は、角度絞り±15度、倍率2.5倍で直接撮像した。
【0111】
対物レンズ(10倍、0.3NA)で発光光を集光し、ゴニオメータでWOLED(OLED)を光軸方向に回転させることにより、デバイスの角度依存エレクトロルミネセンスを得た。その後、後焦点面(back-focal plane)の対物画像を、200μmの分光計の入射スリットに集光させた。デバイスの回転を可能にする真空マイクロチャンバは自社で開発した。すべての測定は、8×10-2mbarの基準圧で実施された。外部量子効率(EQE)を決定するために、測定された光子数を補正する既知の角度分解ELと前方分光放射輝度をパラメータ化した。この場合、外部量子効率(EQE)は、放出された光子と注入された電子との比率である。
【0112】
測定の結果、実施例1に開示の方法に従って製造された厚さ約160nmのOLEDは、ブラッグ変換器で封止する前に、1931 CIEの座標(0.19、0.15)を有する光を放出することが示された。
【0113】
青色OLEDをブラッグ変換器で封止して全体の厚さが498nmのWOLEDを製造したところ、1931 CIEの座標(0.32、0.36)を有する白色光の発光を生じた。一方、全体の厚さが576nmのWOLEDでは、1931 CIEの座標(0.36、0.35)の白色光の発光が生じた。
図1
図2
図3
図4