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  • 特許-意匠糸製造装置 図1
  • 特許-意匠糸製造装置 図2
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  • 特許-意匠糸製造装置 図4
  • 特許-意匠糸製造装置 図5A
  • 特許-意匠糸製造装置 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】意匠糸製造装置
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/34 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
D02G3/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022561224
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2020042483
(87)【国際公開番号】W WO2022102094
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】510028914
【氏名又は名称】株式会社AIKIリオテック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松本 一
(72)【発明者】
【氏名】脇田 光博
(72)【発明者】
【氏名】市川 智章
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/044493(WO,A1)
【文献】特開昭57-29618(JP,A)
【文献】特開昭58-4831(JP,A)
【文献】特開2012-132131(JP,A)
【文献】特開2008-138350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の糸条と、前記糸条に絡んだ飾り繊維と、を少なくとも含む意匠糸の製造装置であって、
軸周りに回転して前記第1の糸条を旋回させながら送り出す第1のボビンと、
前記第1の糸条が旋回する範囲の何れかに、前記飾り繊維を供給するイジェクションノズルと、
前記飾り繊維を伴う前記第1の糸条が通過する中空スピンドルを備え、軸周りに回転して前記第2の糸条を旋回させながら送り出して前記飾り繊維を伴う前記第1の糸条に巻き付ける第2のボビンと、
を備えた製造装置。
【請求項2】
前記第1のボビンと前記第2のボビンとの間に配置され、空洞を有し、前記第1の糸条を前記空洞を通して前記中空スピンドルへ案内するガイドをさらに備え、
前記イジェクションノズルは前記空洞中に前記飾り繊維を供給するよう向けられている、請求項1の製造装置。
【請求項3】
前記イジェクションノズルは、前記第1の糸条の旋回軸に直交するように前記飾り繊維を供給するよう向けられている、請求項1の製造装置。
【請求項4】
前記第1のボビンは前記飾り繊維が通過する空芯を備え、前記イジェクションノズルは前記第1のボビンの前記空芯を通して前記飾り繊維を供給するよう配置されている、請求項1の製造装置。
【請求項5】
前記イジェクションノズルは飾り糸条を切断して前記飾り繊維とするカッタを備え、空気流を噴出し、前記飾り繊維を前記空気流に乗せるべく構成されている、請求項1ないし4の何れか1項の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、主糸条と、前記主糸条に交絡した飾り繊維と、よりなる意匠糸を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織物あるいは編物に装飾効果をもたらす等の目的で、糸に予めループやスラブ等の周期的または非周期的な変化を与えることがある。かかる変化の与えられた糸はしばしば意匠糸と呼ばれる。これまでにも数多くの意匠糸が提案されている。
【0003】
意匠糸の製造方法は一定でなく、紡績工程の段階で変化が与えられることもあれば、紡績を経て糸にされた後に、これを加工して変化が与えられることもある。加工による場合でも、一の糸条を加工する場合もあれば、一の糸条に他の糸条を交絡せしめる場合もある。
【0004】
特許文献1は、関連する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際特許出願公開WO2020/044493A1
【発明の概要】
【0006】
特許文献1が開示する技術によれば、走行する主糸条に側方から飾り糸条を供給し、次いで副糸条を絡ませることにより、3者が互いに絡んだ意匠糸を製造する。かかる技術によれば簡便な装置により効率よく意匠糸を製造することができるが、糸条同士は仮撚り等の加工がもたらす集束作用により絡んでいるに過ぎないので、集束性にはなお改良の余地がある。
【0007】
以下に開示する装置は、上述の問題に鑑みて創出されたものである。
【0008】
一の局面によれば、第1および第2の糸条と、前記糸条に絡んだ飾り繊維と、を少なくとも含む意匠糸の製造装置は、軸周りに回転して前記第1の糸条を旋回させながら送り出す第1のボビンと、前記第1の糸条が旋回する範囲の何れかに、前記飾り繊維を供給するイジェクションノズルと、前記飾り繊維を伴う前記第1の糸条が通過する中空スピンドルを備え、軸周りに回転して前記第2の糸条を旋回させながら送り出して前記飾り繊維を伴う前記第1の糸条に巻き付ける第2のボビンと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一の実施形態による意匠糸を製造する装置の模式的な立面図である。
図2図2は、糸条に飾り繊維が絡むプロセスを表す模式的な立面図である。
図3図3は、ガイドを利用して糸条に飾り繊維を絡ませる様子を表す模式的な断面立面図である。
図4図4は、他の実施形態による意匠糸を製造する装置の模式的な立面図である。
図5A図5Aは、絡んだ直後の糸条と飾り繊維との態様を示す模式図である。
図5B図5Bは、加撚された後の意匠糸の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照して以下に幾つかの例示的な実施形態を説明する。各図においては糸条は概ね下から上へ、あるいは右から左へ走行するように描かれているが、これらの向きは例示に過ぎず、上下あるいは左右を適宜に入れ替えて実施することができる。あるいは全体的にまたは部分的に斜めに傾けた態様も可能だろう。
【0011】
本実施形態による装置は、図5Bに示すごとく、主糸条1,3と、間歇的に切断されてこれらに交絡した飾り繊維5cと、を少なくとも含む意匠糸10を製造する用途に好適に利用することができる。かかる意匠糸10は、例えば織物あるいは編物に利用されてこれらに装飾効果をもたらす。
【0012】
主に図1を参照するに、かかる装置は概して、第1の糸条1を送り出す第1のボビン11と、第1の糸条1へ飾り繊維5cを供給するアセンブリと、第2の糸条3を送り出す第2のボビン13と、製造された意匠糸10を巻き取るワインダ31とを備える。その他、図示のように糸条1,3,5を導くべく、リングやローラのごとき糸条ガイドを適宜に配置することができる。
【0013】
第1,第2のボビン11,13にはそれぞれ第1の糸条1,第2の糸条3が巻かれており、それぞれ軸周りに回転することにより糸条を送り出すよう構成されている。これらのボビン11,13には、例えば、周知のカバーリング機に利用されるボビンであって中空スピンドルと組み合わせて使用されるもの、を利用することができる。中空スピンドルは、後に述べるように、糸条を軸方向に通せるように構成されている。ただし図1に示す態様において、第1のボビン11には中空スピンドルは必須ではなく、ボビンと共に回転する中実軸に代えられていてもよい。何れにせよ、中空スピンドルないし中実軸は、その回転をボビンに伝えるようになっている。モータに連結したベルトによるベルトドライブ、あるいはモータに直結したダイレクトドライブにより、中空スピンドルないし軸が回転し、これと共に第1,第2のボビン11,13が回転することにより、第1,第2の糸条1,3がそれぞれの軸周りに旋回しながら送り出される。
【0014】
第2のボビン13は、第1のボビン11から引き出された第1の糸条1をその中空スピンドルに受け入れるべく配置されている。第2のボビン13は、第1のボビン11から軸方向にやや離れ、例えば同一の軸上に配置されていてもよく、あるいは適宜にオフセットしていてもよい。またボビン11,13の間には、第1の糸条1を中央に導くべくセンタリングガイドが配置されていてもよい。同様に第2のボビン13に対しても、第2の糸条3を中央に導くべくセンタリングガイドが配置されていてもよい。
【0015】
飾り繊維5cを供給するアセンブリは、例えば、飾り糸条5を送り出す給糸クリール15と、空気流A1をガイドするイジェクションノズル19と、カッタ21と、を備える。かかる供給アセンブリは、第1の糸条1の旋回する範囲に飾り糸条5cを供給するように配置される。より好ましくは、飾り糸条5cは、第1の糸条1が旋回する頂点の近くに、センタリングガイドを設置する場合には例えばその直上または直下に、供給される。給糸クリール15から送り出された飾り糸条5は、イジェクションノズル19に通され、またカッタ21により間歇的に切断されて飾り繊維5cとなり、空気流A1に乗せられて吐出され、第1の糸条1に合流する。
【0016】
イジェクションノズル19は例えば細長い中空管であり、例えばその一端はブロワのごとき送風装置に接続され、他端は旋回する第1の糸条1に向けられて開口している。装置の稼働時において原則的に常時、送風装置による空気流A1がイジェクションノズル19内を一端から他端に向けて流れる。飾り糸条5は、飾り糸条クリール15から引き出され、例えばイジェクションノズル19の側面に開けられた開口からその内部に導入され、空気流A1に乗って他端から吐出される。
【0017】
カッタ21は、例えばイジェクションノズル19よりも下流に配置される。より詳しくは、カッタ21は、第1のボビン11から引き出されて第2のボビン13に向かう糸条1、あるいは後述のノズル17を利用する場合にはノズル17と、イジェクションノズル19との間に配置される。カッタ21は例えば刃のついた鎌である。カッタ21はイジェクションノズル19外に設置されるように描かれているが、あるいはイジェクションノズル19内であってもよい。飾り糸条5には空気流A1によるテンションがかかっており、カッタ21に触れることにより容易に切断される。
【0018】
切断を促すべく、飾り糸条5は間歇的に給糸することができ、その目的のために例えば飾り糸条クリール15はサーボモータを備えることができる。あるいは飾り糸条5をガイドするローラがサーボモータを備えてもよい。さらにあるいは、間歇動作するクランプを利用してもよい。クランプはイジェクションノズル19外に設置されていてもよく、あるいはイジェクションノズル19に内蔵されていてもよい。走行する飾り糸条5がこれらの手段により停止すると、カッタ21に触れ、切断される。
【0019】
あるいはカッタ21は、鎌に代えて、鋏あるいはバリカンであってもよく、またその駆動のためにモータ機構、ソレノイド機構等の駆動装置を備えてもよい。さらにあるいは、熱的な手段やレーザを利用して飾り糸条5を切断してもよい。
【0020】
またカッタ21よりも第1の糸条1寄りに、飾り繊維5cを一旦保持するべく、装置はクランプを備えてもよい。かかる構成によれば、予め切断された飾り繊維5cが準備されてクランプに保持され、クランプがこれを解放することにより飾り繊維5cが順次第1の糸条1に供給される。
【0021】
さらにあるいは、飾り糸条5を切断する装置は給糸クリール15とイジェクションノズル19との間であってもよい。
【0022】
図1に組み合わせて図2を参照するに、切断された飾り繊維5cは、空気流A1に乗って、旋回する第1の糸条1に向けて飛翔する。イジェクションノズル19の向き、すなわち空気流A1の向きは、第1の糸条1が旋回する軸に直交していてもよいが、これは必須ではなく、斜めであってもよい。例えばボビン11,13が鉛直に並ぶ場合には、イジェクションノズル19の向きは水平だが、あるいは斜めであってもよい。第1の糸条1は軸方向に走行するだけでなく、軸の周りに旋回しているので、飛翔する飾り繊維5cを捕獲してこれと絡み合う。第1の糸条1は、飾り繊維5cを伴って第2のボビン13へ走行する。
【0023】
供給アセンブリが単一の組である例を上に説明したが、装置は複数組の供給アセンブリを備えてもよい。装置が複数組の供給アセンブリを備える場合、これらの供給アセンブリからは、色、太さ、あるいはその他の属性の点で、互いに異なる種類の糸条を供給してもよい。
【0024】
飾り繊維5cは開放された空間において第1の糸条1に絡むことができるが、図3に例示するように、飾り繊維5cが第1の糸条1に絡むのをより確実にするべく、ガイド17を利用することができる。
【0025】
ガイド17は、例えば概して中空の筒であって、内部は軸方向に延びた空洞17hになっている。例えばその上側および下側の側面には開口17tが開けられ、開口17tを通って第1の糸条1が第2のボビン13へ案内される。また空洞17hはイジェクションノズル19から供給された飾り繊維5cが通過できるようになっている。ガイド17はイジェクションノズル19に連結され、または一体であってもよい。
【0026】
空洞17hは、その内部において第1の糸条1が軸周りに旋回をすることができるように寸法づけられている。ガイド17の直下において旋回していた第1の糸条1は、下側の開口17tを通過した後もなお空洞17h内において旋回することができる。かかる旋回に巻き込まれることにより、飾り繊維5cは確実にこれに絡む。
【0027】
上述の実施形態においては、装置は、第1の糸条1の側方から飾り繊維5cを供給するように構成されていたが、飾り繊維5cは第1の糸条1と同方向に供給されてもよい。図4はそのような構成の装置の一例である。かかる例では、第1のボビン11も中空スピンドルを備え、これを利用して飾り繊維5cを供給する。
【0028】
すなわち、飾り繊維5cを供給する供給アセンブリは、向きを除いて既に述べた構成と同一であり、イジェクションノズル19は、第1のボビン11の中空スピンドルに向けられている。供給アセンブリから供給された飾り繊維5cは、中空スピンドルを通過して旋回する第1の糸条1に到達する。好ましくは旋回の頂点付近に、また旋回軸の中心付近に、到達するよう各要素を調整する。飾り繊維5cを旋回の頂点付近に届けるべく、中空スピンドルを貫いて伸びる細長いガイドチューブを利用してもよい。飾り繊維5cは、かかる位置において第1の糸条1に絡み、第1の糸条1と共に第2のボビン13に送られる。
【0029】
何れの装置においても、第1の糸条1は飾り繊維5cを伴って第2のボビン13の中空スピンドルを通過する。このとき、おそらくは図5Aに示すごとく、飾り繊維5cは第1の糸条1に絡んでいるに留まる。第2のボビン13からは、軸周りに旋回しながら第2の糸条3が送り出されている。第2の糸条3は、旋回しながら、飾り繊維5cを伴う第1の糸条1に合流し、巻き付き、これらは実撚りされた一体の撚糸を構成する。このとき飾り繊維5cは、図5Bに示すごとく、第1,第2の糸条1,3による実撚り構造の中に巻き込まれて固定され、その全体は一の意匠糸10を構成する。飾り繊維5cは意匠糸10中にしっかりと固定されているので、毛羽として脱落することはない。飾り繊維5cを伴う意匠糸10は、ワインダ31に巻き取られる。
【0030】
飾り繊維が形作る構造の大きさは、飾り糸条を切断する長さにより自由に変えることができるし、また隣り合う構造間の間隔も、飾り糸条を切断する間隔により自由に変えることができる。言うまでもなく、各構造毎に大きさと間隔とを変えることもできる。さらに、既に述べた通り、2以上の飾り糸条を利用することもできるので、例えば構造毎に異なる色にすることもできる。
【0031】
本実施形態によれば、飾り繊維は実撚りされた糸条に固く取り込まれているので、意匠糸の構造的な安定性が向上する。
【0032】
幾つかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正ないし変形をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
意匠糸の技術に新たな選択肢を提供する製造装置が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B