(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】抗力型タービン装置、前記抗力型タービン装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、並びに、前記抗力型タービン装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機
(51)【国際特許分類】
F03D 7/06 20060101AFI20240913BHJP
F03B 13/26 20060101ALI20240913BHJP
F03B 3/14 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F03D7/06 A
F03B13/26
F03B3/14
(21)【出願番号】P 2023129083
(22)【出願日】2023-08-08
【審査請求日】2024-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515043772
【氏名又は名称】株式会社チャレナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦史
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-183640(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106677991(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/06
F03B 13/26
F03B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に軸支される支持軸と、
前記支持軸の軸方向に対して所定の間隔を空けて配置されて、少なくとも1つが前記支持軸に固定される複数の支持部材と、
隣り合う前記支持部材の間に前記支持軸の回転中心軸に対して対称的に配置されて、前記支持部材により支持される複数の受圧部材と、
複数の前記受圧部材にフラップ開閉機構を介してそれぞれ連結される複数のフラップ部材と、を備え、
複数の前記受圧部材の各々は、
前記軸方向に垂直な平面視において、外側端と、前記回転中心軸に対して前記外側端の反対側で前記外側端よりも前記径方向内側に配置される内側端との間に延設される受圧壁面部を有し、
複数の前記フラップ部材の各々は、
前記平面視において、前記受圧壁面部に対して前記内側端寄りに配置される基端と、前記受圧壁面部に対して前記径方向外側に配置される先端との間に延設されるフラップ壁面部を有するとともに、前記フラップ壁面部が前記受圧壁面部に沿って配置される閉位置と、前記フラップ壁面部が前記受圧壁面部に対して所定の角度をなす開位置との間を移動可能に前記フラップ開閉機構を介して前記受圧部材に連結され
て、
前記フラップ壁面部が前記閉位置に移動された状態において、前記受圧部材が所定の流体速を超える流体による流体圧を受けて前記支持軸が回転することにより前記フラップ壁面部に対して所定の力が作用したとき、前記フラップ壁面部が前記開位置に移動されることで、前記支持軸の回転数を低下させる、
抗力型タービン装置。
【請求項2】
複数の前記フラップ部材の各々は、
前記基端が前記フラップ開閉機構を介して前記内側端に連結されて、前記基端を回動中心軸として回動される、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項3】
前記フラップ開閉機構は、
ヒンジ機構で構成される、
請求項2に記載の抗力型タービン装置。
【請求項4】
前記角度は、
40度以上120度以下の範囲である、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項5】
前記フラップ開閉機構は、
前記受圧壁面部に対して前記フラップ壁面部を前記閉位置に保持する閉位置保持機構を有する、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項6】
前記閉位置保持機構は、
前記受圧部材が前記流体圧を受けて前記支持軸が回転することにより前記フラップ壁面部に対して所定の力が作用したときに、前記フラップ壁面部を前記閉位置に保持した保持状態を解除する、
請求項5に記載の抗力型タービン装置。
【請求項7】
前記閉位置保持機構は、
前記受圧壁面部に対して前記フラップ壁面部を磁力で前記閉位置に保持するマグネット部材で構成される、
請求項6に記載の抗力型タービン装置。
【請求項8】
前記フラップ開閉機構は、
前記フラップ壁面部が前記開位置を越えて移動しないように規制する開位置規制機構を有する、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項9】
複数の前記受圧部材の各々は、
前記内側端寄りに配置される前記受圧壁面部の一部として、平面状に形成された内側壁面部を有し、
複数の前記フラップ部材の各々は、
平面状に形成された前記フラップ壁面部を有するとともに、前記フラップ壁面部が前記内側壁面部に沿って配置される前記閉位置と、前記フラップ壁面部が前記内側壁面部に対して前記角度をなす前記開位置との間を移動可能に前記フラップ開閉機構を介して前記受圧部材に連結される、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項10】
前記支持軸、複数の前記支持部材及び複数の前記受圧部材を1つの抗力型タービンユニットとして、複数の前記抗力型タービンユニットを備え、
前記支持部材及び前記支持軸の少なくとも一方は、
複数の前記抗力型タービンユニットがそれぞれ備える前記支持軸が同軸上に配置されたときに隣接される前記支持部材同士及び前記支持軸同士の少なくとも一方を着脱可能に連結する連結機構部を備える、
請求項1に記載の抗力型タービン装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の抗力型タービン装置を用いた、
風力回転装置、水力回転装置又は潮力回転装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の抗力型タービン装置を用いた、
風力発電機、水力発電機又は潮力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗力型タービン装置、前記抗力型タービン装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、並びに、前記抗力型タービン装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗力型タービン装置を用いた回転装置や発電機が知られている。例えば、抗力型風力発電機として、横断面がC字状(円弧状)の受圧部材(ブレードやバケットとも呼ばれる)を有するサボニウス型風車や、横断面がJ字状の受圧部材を有するバッハ型風車が知られている。抗力型風力発電機は、回転中の受圧部材を停止させるために、受圧部材が連結された回転軸に対して制動力を付与するブレーキ装置を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキ装置を備える抗力型風力発電機では、所定の風速を超えるような強風(例えば、台風や暴風等)を受けた場合、ブレーキ装置に過大な荷重がかかり、ブレーキ装置が破損する恐れがあった。その結果として、抗力型風力発電機において受圧部材の過回転が発生し、抗力型風力発電機自体が破損する恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、受圧部材の過回転を防止することを可能とする抗力型タービン装置、前記抗力型タービン装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、並びに、前記抗力型タービン装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る抗力型タービン装置は、
回転可能に軸支される支持軸と、
前記支持軸の軸方向に対して所定の間隔を空けて配置されて、少なくとも1つが前記支持軸に固定される複数の支持部材と、
隣り合う前記支持部材の間に前記支持軸の回転中心軸に対して対称的に配置されて、前記支持部材により支持される複数の受圧部材と、
複数の前記受圧部材にフラップ開閉機構を介してそれぞれ連結される複数のフラップ部材と、を備え、
複数の前記受圧部材の各々は、
前記軸方向に垂直な平面視において、外側端と、前記回転中心軸に対して前記外側端の反対側で前記外側端よりも前記径方向内側に配置される内側端との間に延設される受圧壁面部を有し、
複数の前記フラップ部材の各々は、
前記平面視において、前記受圧壁面部に対して前記内側端寄りに配置される基端と、前記受圧壁面部に対して前記径方向外側に配置される先端との間に延設されるフラップ壁面部を有するとともに、前記フラップ壁面部が前記受圧壁面部に沿って配置される閉位置と、前記フラップ壁面部が前記受圧壁面部に対して所定の角度をなす開位置との間を移動可能に前記フラップ開閉機構を介して前記受圧部材に連結される。
【0007】
本発明の一実施形態に係る風力回転装置、水力回転装置又は潮力回転装置は、前記抗力型タービン装置を用いたものである。本発明の一実施形態に係る風力発電機、水力発電機又は潮力発電機は、前記抗力型タービン装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る抗力型タービン装置によれば、複数のフラップ部材の各々が、受圧壁面部に沿って配置される閉位置と、受圧壁面部に対して所定の角度をなす開位置との間を移動可能にフラップ開閉機構を介して受圧部材にそれぞれ連結される。これにより、フラップ部材は、受圧部材に対して閉位置と開位置との間を移動することができる。そのため、フラップ部材の位置に応じて、受圧部材に発生する回転力の大きさが変更される。
【0009】
具体的には、フラップ部材が、受圧部材に沿って配置される閉位置にある場合には、受圧部材が風を受けることで、受圧部材に回転力が発生し、支持軸が回転する。一方、フラップ部材が、受圧部材に対して所定の角度をなす開位置にある場合には、受圧部材が風を受けたとしても、受圧部材に回転力が発生することが抑制されるので、フェザリング状態となり、支持軸の回転が停止される。したがって、所定の風速を超えるような強風時に、フラップ部材が開位置に移動されることで空力的ブレーキとして機能するため、受圧部材の過回転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す全体斜視図である。
【
図2】フラップ部材6が閉位置P1に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す部分分解斜視図である。
【
図3】フラップ部材6が開位置P2に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す部分分解斜視図である。
【
図4】フラップ部材6が閉位置P1に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す横断面図である。
【
図5】フラップ部材6が開位置P2に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す横断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Aの配置例と各パラメータを示す概要図である。
【
図7】フラップ部材6の角度θ1を変化させたときの出力係数Cpのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】第2の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Bの一例を示す全体斜視図である。
【
図9】フラップ部材6が開位置P3に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Bの一例を示す横断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Cの一例を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の具体的な実施形態を示す。実施形態はあくまで一例であり、この例に限定されるものではない。なお、以下の実施形態では、抗力型タービン装置の適用例の1つとして、抗力型タービン装置を用いた垂直軸抗力型風力発電機1(1A~1C)について説明する。また、実施形態の説明において、「平行」とは、完全に平行な場合だけでなく、垂直軸抗力型風力発電機1の機能が損なわれない程度のずれを許容した略平行な場合も含む。同様に、「垂直」とは、完全に垂直な場合でだけでなく、垂直軸抗力型風力発電機1の機能が損なわれない程度のずれを許容した略垂直な場合も含む。さらに、実施形態の説明において、「円弧」とは、完全に真円状の円弧である場合だけでなく、垂直軸抗力型風力発電機1の機能が損なわれない程度のずれを許容した略円弧である場合も含む。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す全体斜視図である。
図2は、フラップ部材6が閉位置P1に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す部分分解斜視図である。
図3は、フラップ部材6が開位置P2に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す部分分解斜視図である。
図4は、フラップ部材6が閉位置P1に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す横断面図である。
図5は、フラップ部材6が開位置P2に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Aの一例を示す横断面図である。
【0013】
垂直軸抗力型風力発電機1Aは、設置面(不図示)に設置される支持筐体2と、支持筐体2に回転可能に軸支される支持軸3と、支持軸3の軸方向Daに対して所定の間隔L1を空けて配置されて、少なくとも1つが支持軸3に固定される複数の支持部材4と、複数の支持部材4の間に配置されて、複数の支持部材4により支持される複数の受圧部材5と、複数の受圧部材5にフラップ開閉機構7を介してそれぞれ連結される複数のフラップ部材6とを備える。垂直軸抗力型風力発電機1Aは、受圧部材5が所定の方向から流れる風(空気流)による風圧(流体圧)を受けることで、支持軸3が進行方向Dt(本実施形態では、時計回り(
図4参照))に回転するものであり、抗力型の風力タービンとして機能する。
【0014】
垂直軸抗力型風力発電機1Aの各構成部材(支持筐体2、支持軸3、支持部材4、受圧部材5、フラップ部材6、フラップ開閉機構7)は、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタニウム、鉄鋼等の金属材料(合金を含む)、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂材料、ポリカーボネイトや塩化ビニル等の樹脂材料、又は、これらの複合材料を用いて製作される。なお、各構成部材は、上記のような各種の材料を適宜組み合わせて製作されてもよく、例えば、構成部材毎に異なる材料を用いて製作されてもよいし、構成部材の一部又は全てが、共通の材料を用いて製作されてもよい。
【0015】
本実施形態では、垂直軸抗力型風力発電機1Aは、
図1に示すように、複数の支持部材4として、4つの支持部材4を備える。また、垂直軸抗力型風力発電機1Aは、複数の受圧部材5として、4つの支持部材4の各間において、すなわち、隣り合う支持部材4の間に、支持軸3の回転中心軸O1に対して対称的に一対配置される複数の受圧部材5を備える。すなわち、全体では6つの受圧部材5を備える。
【0016】
支持筐体2は、支持軸3と同軸状に配置される円筒状の筐体である。支持筐体2は、その上部に、支持軸3を軸支するとともに、支持軸3が回転する際の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電ユニット20を備える。なお、支持筐体2は、
図1に示すように、支持軸3の下端側だけを支持するものでもよいし、支持軸3の下端側に加えて支持軸3の上端側(支持軸3の上端でもよいし、支持軸3の上端に連結されたシャフト部材でもよい)をさらに支持するものでもよい。また、支持筐体2は、トラス状の筐体としてもよい。
【0017】
発電ユニット20は、例えば、アウターロータ型の発電機で構成される。なお、発電ユニット20は、インナーロータ型の発電機で構成されてもよい。また、支持軸3と、発電ユニット20とは、直接連結されてもよいし、増速機を介して連結されてもよい。
【0018】
支持軸3は、円筒状又は円柱状のシャフト部材で構成され、回転中心軸O1を中心に発電ユニット20により軸支される。なお、支持軸3は、
図2に示すように、1本のシャフト部材で構成されてもよいし、間隔L1と同程度の長さを有する複数本(本実施形態では、3本)のシャフト部材を連結することで構成されてもよい。
【0019】
複数の支持部材4の各々は、板状であり、例えば、平板材でそれぞれ構成される。本実施形態では、支持部材4は、支持軸3がその中央付近を貫通するようにして、支持軸3に対して任意の固定方法(溶接、接着、ねじ固定、圧入、リベット、ピン結合、継手等)により固定される。その際、支持部材4は、例えば、リング状又はフランジ状に形成された連結固定部材30(
図2では不図示)を介して支持軸3に固定される。また、支持部材4は、任意の固定方法(詳細は後述)により受圧部材5に固定されて、受圧部材5を支持する。
【0020】
なお、複数の支持部材4のうち、少なくとも1つの支持部材4が支持軸3に固定されていればよい。例えば、支持軸3の両端に配置された支持部材4(
図1の例では、下から1つ目及び4つ目の支持部材4)が、連結固定部材30を介して支持軸3に固定されていてもよい。その際、両端の間に配置された中間の支持部材4の一部又は全て(
図1の例では、下から2つ目及び3つ目の支持部材4)は、連結固定部材30を介して支持軸3に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。支持軸3に固定されていない中間の支持部材4は、受圧部材5同士を軸方向Daに連結するとともに、受圧部材5を補強する連結補強部材として機能し、例えば、支持軸3が支持部材4に形成された貫通孔を通過するようにしてもよいし、支持軸3と支持部材4の貫通孔との間の隙間を塞ぐように、例えば、ゴム等の弾性材料でリング状に形成された連結弾性部材が配置されていてもよい。
【0021】
支持部材4は、軸方向Daに垂直な平面視(
図4参照)における形状(平面視形状)として、一対の受圧部材5がそれぞれ有する外側壁面部50(詳細は後述)に沿って曲線状に形成された一対の曲線外形部40と、一対の受圧部材5がそれぞれ有する中間壁面部51及び内側壁面部52(詳細は後述)に沿って一対の曲線外形部40同士を結ぶように直線状に形成された一対の直線外形部41とを備える。したがって、支持部材4は、平面視において、平行に配置された2つの直線部分と、それら2つの直線部分の両端を曲線状に接続する2つの曲線部分とで形成される。
【0022】
一対の受圧部材5の各々は、隣り合う支持部材4の間を軸方向Daに沿って、かつ、支持軸3の径方向Dr1,Dr2に離間した状態で支持軸3の周囲に配置される。受圧部材5は、軸方向Daに垂直な平面視(
図4参照)において、径方向外側Dr1に配置される外側端53と、回転中心軸O1に対して外側端53の反対側で外側端53よりも径方向内側Dr2に配置される内側端54との間に延設される受圧壁面部50~52を有する。
【0023】
本実施形態では、受圧部材5は、受圧壁面部50~52として、外側端53寄りに配置される外側壁面部50と、内側端54寄りに配置される内側壁面部52と、外側壁面部50及び内側壁面部52の間に配置される中間壁面部51とを有する。また、受圧部材5は、外側壁面部50及び中間壁面部51の境界部分に配置される外側境界部55と、中間壁面部51及び内側壁面部52の境界部分に配置される内側境界部56とを有する。外側境界部55は、外側端53に対して受圧部材5の進行方向Dt側かつ回転中心軸O1寄りに配置される。内側境界部56は、外側境界部55に対して受圧部材5の進行方向Dt側かつ回転中心軸O1寄りに配置される。さらに、受圧部材5は、受圧部材5の軸方向Daの両端を支持部材4にそれぞれ取り付けるための取付部57~59として、外側取付部57と、中間取付部58と、内側取付部59とを有する。
【0024】
外側壁面部50は、外側端53から進行方向側Dtかつ支持軸3寄りに延設されて、径方向外側Dr1に膨出する凸面状に形成された壁面部である。外側壁面部50は、風の流れを阻害しない凸面状であればよく、例えば、平面視形状が円弧、楕円弧、その他の曲線等となる曲面状でもよいし、平面視形状が内角が鈍角の多角形等となる多角面状でもよいし、曲面状及び多角面状を組み合わせたものでもよい。なお、外側壁面部50が円弧の曲面状である場合、その円弧の中心角は、例えば、75度から135度の範囲が好ましく、さらに、90度から120度の範囲がより好ましい。また、外側壁面部50が円弧以外の平面視形状である場合には、円弧の場合と同程度の範囲に延設されるようにすればよい。
【0025】
中間壁面部51は、外側壁面部50から外側境界部55を介して進行方向側Dtかつ支持軸3寄りに延設されて、外側壁面部50よりも緩やかに径方向外側Dr1に膨出する凸面状又は平面状に形成された壁面部である。中間壁面部51は、外側壁面部50とは異なる平面視形状を有するものであればよく、例えば、凸面状として、平面視形状が円弧、楕円弧、その他の曲線等となる曲面状でもよいし、平面視形状が内角が鈍角の多角形等となる多角面状でもよいし、曲面状及び多角面状を組み合わせたものでもよい。また、中間壁面部51は、平面視形状が直線となる平面状でもよい。なお、外側壁面部50の平面視形状が円弧又は楕円弧のような曲面状である場合、中間壁面部51は、その外側壁面部50の外側境界部55側の端部から延長された接線上に配置される平面状とし、外側境界部55は、その外側壁面部50(円弧又は楕円弧)と、その中間壁面部51(円弧又は楕円弧に対する接線)との境界に位置するようにしてもよい。これにより、外側壁面部50から中間壁面部51に向かう風の流れを円滑にすることができる。
【0026】
内側壁面部52は、中間壁面部51から内側境界部56を介して中間壁面部51よりも進行方向側Dtに配置された内側端54に延設されて、径方向外側Dr1に膨出する凸面状又は平面状に形成された壁面部である。内側壁面部52は、例えば、凸面状として、平面視形状が円弧、楕円弧、その他の曲線等となる曲面状でもよいし、平面視形状が内角が鈍角の多角形等となる多角面状でもよい。また、内側壁面部52は、平面視形状が直線となる平面状でもよい。
【0027】
中間壁面部51と、内側壁面部52とは、平面視において、内側境界部56を介して径方向外側Dr1に凸状となるように配置されることで、中間壁面部51と内側壁面部52とは、支持軸3側に鈍角を形成する。なお、外側壁面部50と、中間壁面部51とについても、平面視において、外側境界部55を介して径方向外側Dr1に凸状となるように配置されることで、外側壁面部50と、中間壁面部51とは、支持軸3側に鈍角を形成するようにしてもよい。
【0028】
外側境界部55及び内側境界部56は、湾曲状又は屈曲状に形成される。なお、外側境界部55及び内側境界部56の形状は、同一でもよいし、異なっていてもよい。また、外側境界部55が湾曲状とする場合には、外側壁面部50又は中間壁面部51と同一の曲面状として形成されてもよいし、内側境界部56が湾曲状とする場合には、中間壁面部51と同一の曲面状として形成されてもよい。
【0029】
受圧壁面部50~52は、各部分(外側壁面部50、外側境界部55、中間壁面部51、内側境界部56及び内側壁面部52)のうち隣接する各部分の一部又は全体が一体的に形成されてもよいし、複数の部品を接合することで形成されてもよい。例えば、受圧壁面部50~52の全体(外側壁面部50、外側境界部55、中間壁面部51、内側境界部56及び内側壁面部52)が一体的に形成される場合には、平板状の金属板や樹脂板等に対して、各部分に相当する範囲に曲げ加工を施すことで受圧部材5が製作されるようにすればよい。これにより、受圧壁面部50~52に継ぎ目や留め具がなくなるため、受圧部材5の流体抵抗を低減することができる。
【0030】
また、受圧壁面部50~52が、別々の部品として形成される場合には、外側境界部55及び内側境界部56で分割されたような3つの部品で構成されてもよいし、中間壁面部51の中間付近で分割されたような2つの部品で構成されてもよい。各部品が、上記のような任意の固定方法による固定部を介して固定することで受圧部材5が製作されるようにすればよい。
【0031】
本実施形態では、受圧部材5は、
図4に示すように、受圧壁面部50~52の全体が一体的に形成されたものである。その際、外側壁面部50は、平面視形状が曲率半径Rの円弧となる曲面状に形成され、中間壁面部51及び内側壁面部52は、平面視形状が直線の平面状にそれぞれ形成され、外側境界部55及び内側境界部56は、平面視形状が円弧の曲面状に形成されたものである。
【0032】
また、一対の受圧部材5は、支持軸3の径方向Dr1,Dr2に離間した状態で支持軸3の周囲にて180度ずらした状態で対称的に配置される。そのため、一方の受圧部材5の中間壁面部51と、他方の受圧部材5の内側壁面部52とが対向する位置に配置されるとともに、一対の受圧部材5の各々の内側境界部56と支持軸3の外周面との間に、間隙がそれぞれ形成される。また、一対の受圧部材5の各々は、中間壁面部51と、内側壁面部52とは、内側境界部56を介して径方向外側Dr1に凸状となるように配置されることで、平面視における一対の受圧部材5同士の間隔として、内側端54側では相対的に狭く、内側境界部56側では相対的に広くなるように配置される。したがって、一対の受圧部材5は、支持軸3側に近づくほど一対の受圧部材5同士の間隔が広くなる。
【0033】
さらに、一対の受圧部材5が対称的に配置される際、一方の受圧部材5の内側端54は、平面視において、他方の受圧部材5の外側端53と支持軸3の回転中心軸O1とを結ぶ線に対して進行方向側Dtに配置されるのが好ましく、他方の受圧部材5の外側端53と内側境界部56とを結ぶ線(後述の
図4における破線)に対して進行方向側Dtに配置されるのがより好ましい。これにより、一対の受圧部材5の間に形成される通路の幅を適切に設定することができる。
【0034】
外側取付部57、中間取付部58及び内側取付部59は、外側壁面部50、中間壁面部51及び内側壁面部52に対して垂直に径方向外側Dr1に向かうようにそれぞれ形成されて、支持部材4の平板面と面接触し、上記のような任意の固定方法により支持部材4に固定される。なお、取付部57~59は、受圧壁面部50~52に対して、例えば、曲げ加工を施すことで一体的に形成されてもよいし、受圧壁面部50~52とは別々の部品として形成されてもよい。また、外側取付部57は外側壁面部50に対して垂直に径方向内側Dr2に向かうように形成してもよい。本実施形態では、受圧部材5は、外側取付部57が、外側壁面部50とは別々の部品として形成されるとともに、中間取付部58及び内側取付部59が、中間取付部58及び内側取付部59と一体的に形成されたものである。
【0035】
複数のフラップ部材6の各々は、軸方向Daに垂直な平面視(
図4参照)において、受圧壁面部50~52に対して内側端54寄りに配置される基端61と、受圧壁面部50~52に対して径方向外側Dr1に配置される先端62との間に延設されるフラップ壁面部60を有する。フラップ部材6は、フラップ壁面部60が受圧壁面部50~52に沿って配置される閉位置P1と、フラップ壁面部60が受圧壁面部50~52(本実施形態では、内側壁面部52)に対して所定の角度θ1をなす開位置P2との間を移動可能にフラップ開閉機構7を介して受圧部材5に連結される。
図2及び
図4では、閉位置P1に配置されたときのフラップ部材6を図示し、
図3及び
図5では、開位置P2に配置されたときのフラップ部材6を図示している。
【0036】
本実施形態では、フラップ壁面部60は、内側壁面部52と同様に、平面状に形成されて、閉位置P1に配置されたときに内側壁面部52に沿って配置される。また、フラップ部材6は、基端61がフラップ開閉機構7を介して内側端54に連結されて、基端61を回動中心軸O2として回動される。その際、軸方向Daにおけるフラップ部材6の長さは、
図2に示すように、軸方向Daにおける内側壁面部52の長さよりも短く設定される。また、平面視におけるフラップ部材6の幅は、
図4に示すように、平面視における内側壁面部52の幅よりも短く設定される。
【0037】
開位置P2に配置されたときのフラップ部材6と受圧壁面部50~52(本実施形態では、内側壁面部52)とのなす角度θ1は、40度以上120度以下の範囲であるのが好ましく、さらに、80度以上100度以下の範囲であるのがより好ましい。本実施形態では、角度θ1が直角になる位置に、フラップ部材6の開位置P2が設定されている。
【0038】
フラップ開閉機構7は、受圧部材5に対してフラップ部材6を移動可能に連結するための連結機構である。フラップ開閉機構7は、例えば、フラップ部材6の基端61に取り付けられたヒンジ機構70で構成される。ヒンジ機構70は、基端61を回動中心軸O2としてフラップ部材6を回動させることで、フラップ部材6を閉位置P1と開位置P2との間で移動可能に受圧部材5に連結する。本実施形態では、
図3に示すように、1つのフラップ部材6に対して3つのヒンジ機構70が用いられる。3つのヒンジ機構70は、軸方向Daに対して所定の間隔を空けて配置されるが、ヒンジ機構70の数や配置は適宜変更してもよい。
【0039】
フラップ開閉機構7は、受圧壁面部50~52(本実施形態では、内側壁面部52)に対してフラップ壁面部60を閉位置P1に保持する閉位置保持機構71を有する。閉位置保持機構71は、垂直軸抗力型風力発電機1Aが回転したときに、フラップ壁面部60に対して所定の力(遠心力)が作用したときに、フラップ壁面部60を閉位置P1に保持した保持状態を解除する。すなわち、閉位置保持機構71がフラップ部材6を閉位置P1に保持する保持力よりもフラップ部材6に作用する遠心力が大きくなったときに、フラップ部材6の保持状態が解除されて、開位置P2への移動が可能になる。なお、フラップ開閉機構7は、フラップ部材6に作用する遠心力を調整するために、フラップ壁面部60の先端62寄りにウェイト部材(錘)を備えていてもよい。
【0040】
本実施形態では、閉位置保持機構71は、受圧壁面部50~52(本実施形態では、内側壁面部52)に対してフラップ壁面部60をマグネット(磁石)の磁力で閉位置P1に保持するマグネット部材で構成される。内側壁面部52に磁性材料が用いられている場合には、マグネット部材は、フラップ壁面部60に取り付けられる。フラップ壁面部60に磁性材料が用いられている場合には、マグネット部材は、内側壁面部52に取り付けられる。内側壁面部52及びフラップ壁面部60に磁性材料が用いられていない場合には、マグネット部材が、内側壁面部52及びフラップ壁面部60の一方に取り付けられるとともに、磁性体が、内側壁面部52及びフラップ壁面部60の他方に取り付けられる。
【0041】
また、本実施形態では、
図3に示すように、1つのフラップ部材6に対して3つのマグネット部材が用いられる。3つのマグネット部材は、軸方向Daに対して所定の間隔を空けてフラップ壁面部60に配置されるが、マグネット部材の数や配置は適宜変更してもよい。なお、閉位置保持機構71は、マグネット部材に代えて又は加えて、フラップ部材6を閉位置P1に付勢する付勢部材(付勢部材を含むヒンジ機構70)で構成されてもよいし、所定の接続強度を有する接続部材で構成されてもよい。
【0042】
フラップ開閉機構7は、フラップ壁面部60が開位置P2を越えて移動しないように規制する開位置規制機構72を有する。本実施形態では、開位置規制機構72は、ストッパ部材で構成される。開位置規制機構72は、例えば、支持部材4に取り付けられて、
図5に示すように、開位置P2に配置されたフラップ部材6に接触する位置に配置される。なお、開位置規制機構72は、ストッパ部材に代えて又は加えて、開閉角度が規制されたヒンジ機構70で構成されてもよいし、複数のアームを連結したリンク機構で構成されてもよい。また、開位置規制機構72は、フラップ部材6の基端61を、平面視において直角に折り曲げた形状にすることで構成されてもよい。さらに、ストッパ部材は、受圧壁面部50~52(本実施形態では、内側壁面部52)に対してフラップ壁面部60を開位置P2に保持する開位置保持機構として機能してもよい。例えば、ストッパ部材で構成される開位置規制機構72をマグネット部材又は磁性体で構成することで、開位置保持機構として機能するようにすればよい。
【0043】
なお、フラップ開閉機構7は、モータやシリンダ等のアクチュエータや付勢部材を備え、フラップ部材6の位置を自動で調整するものでよい。その際、閉位置P1から開位置P2に自動で移動するようにしてもよい。また、開位置P2に移動した後に、所定の自動復帰条件(風速の低下等)が満たされたとき、閉位置P1に自動で移動するようにしてもよい。また、フラップ開閉機構7は、フラップ部材6の位置を手動で調節可能に構成されてもよく、例えば、閉位置P1及び開位置P2のいずれかに固定されるものでもよいし、閉位置P1と開位置P2との間の任意の位置に固定されるものでもよい。
【0044】
図6は、第1の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Aの配置例と各パラメータを示す概要図である。
【0045】
支持軸3の軸方向Daに垂直な平面視において、垂直軸抗力型風力発電機1Aの各部の配置や形状を特定するための各パラメータを以下のように定義する。
【0046】
D:支持軸3の回転中心軸O1を中心とする外側端53の外接円の直径(外側端直径)、
d:支持軸3の直径(支持軸直径)、
R:外側壁面部50の曲率半径、
s:一方の受圧部材5の中間壁面部51と、他方の受圧部材5の内側端54との最短距離(第1の最短距離)、
t:受圧部材5と、支持軸3の外周面との最短距離(第2の最短距離)、
θ2:中間壁面部51と内側壁面部52とがなす角度
【0047】
上記の各パラメータは、各部の寸法に相当するため、正の値を取り得るものである。なお、曲率半径Rは、外側壁面部50が円弧の曲面状である場合には、外側壁面部50の曲率半径に対応するパラメータであるが、外側壁面部50が多角面状である場合には、外側壁面部50の外接円弧の曲率半径に対応するパラメータとして扱うようにしてもよい。
【0048】
図7は、フラップ部材6の角度θ1を変化させたときの出力係数Cpのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0049】
垂直軸抗力型風力発電機1Aの出力係数Cpは、以下のように定義する。
【0050】
Cp=P/(0.5×ρ×U3×D)
ただし、
Pは、垂直軸抗力型風力発電機1Aの高さ方向の単位幅あたりの出力、
ρは、空気密度、
Uは、風速である。
【0051】
垂直軸抗力型風力発電機1Aの周速比λは、以下のように定義する。
【0052】
λ=V/U
ただし、Vは、外側端53の回転速度(周速)である。
【0053】
図7に示す出力係数Cpのグラフは、周速比λが0.8である場合の出力係数Cpをシミュレーションによりそれぞれ算出したものである。シミュレーションの実施条件として、外側端直径D、支持軸直径d及び曲率半径Rの比率(D:d:R)が、
D=1、d/D=0.07、R/D=0.20
を満たす場合において、フラップ部材6の角度θ1を変化させたときの出力係数Cpを算出したものである。フラップ部材6の角度θ1は、16度、27度、40度、50度、60度、70度、80度、90度、100度、110度、120度にそれぞれ設定した。
【0054】
図7に示すグラフは、横軸に支持軸3の回転角度(0度から180度までの範囲)を取り、縦軸に出力係数Cpを取ったものである。出力係数Cpが負の値を取る場合、受圧部材5は、支持軸3を回転するための回転力を発生するのではなく、支持軸3にブレーキを作用させるように、支持軸3の回転を抑制する。また、出力係数Cpが負の値を取るときの支持軸3の回転角度の範囲が広いほど、支持軸3の回転を確実に抑制することができる。したがって、
図7を参照すると、フラップ部材6の角度θ1が、40度以上120度以下の範囲であるのが好ましく、さらに、80度以上100度以下の範囲であるのがより好ましい。
【0055】
上記の構成を有する垂直軸抗力型風力発電機1Aは、所定の方向(風上)からの風を風下側の受圧部材5の外側壁面部50で受けると、その風が、風下側の受圧部材5には、進行方向側Dtに回転させるように回転力(抗力)が作用する。このとき、フラップ部材6は、閉位置保持機構71により閉位置P1に保持された保持状態である。
【0056】
そして、その風が、風下側の受圧部材5の外側壁面部50に沿って一対の受圧部材5の間に流れ込むと、風下側の受圧部材5の中間壁面部51と風上側の受圧部材5の内側壁面部52との間、風上側及び風下側の受圧部材5の内側境界部56と支持軸3の外周面との間、風下側の受圧部材5の内側壁面部52と風上側の受圧部材5の中間壁面部51との間を順に通過し、その後、風上側の受圧部材5の外側壁面部50に沿って流れ出る。また、風上側の受圧部材5が、風上からの風を直接受けることで、その受圧部材5の外側壁面部50及び中間壁面部51を風下方向(進行方向反対側)に押圧するような回転力が発生する。一方、一対の受圧部材5の間に流れ込んだ風が風上側の受圧部材5の外側壁面部50に沿って流れ出るときに、その風を風上側の受圧部材5の外側壁面部50が受けることで、その受圧部材5の外側壁面部50を風上方向(進行方向側Dt)に押圧するような回転力が発生するため、進行方向反対側に作用する回転力の一部が、進行方向側Dtに作用する回転力により相殺される。
【0057】
このようにして、風下側の受圧部材5に対して進行方向側Dtに回転させるような回転力が作用し、その回転力(回転エネルギー)が支持部材4を介して支持軸3に伝達されて、支持軸3が回転される。そして、一対の受圧部材5は、風下側と風上側とを交互に入れ替えながら、一連の動作を繰り返し行うことで、支持軸3が連続的に回転されて、支持軸3に連結された発電ユニット20にて発電運転が行われる。
【0058】
風速が高くなるにつれて、支持軸3の回転数は速くなるが、所定の風速を超えるような強風(例えば、台風や暴風等)を受けた場合、フラップ部材6に作用する遠心力が、閉位置保持機構71によりフラップ部材6を閉位置P1に保持する保持力よりも大きくなるため、フラップ部材6の保持状態が解除される。その結果、フラップ部材6が、閉位置P1から開位置P2に移動すると、受圧部材5に回転力が発生することが抑制されるので、支持軸3の回転数が低下し、支持軸3の回転を停止させることができる。そして、支持軸3の回転を停止させた状態、すなわち、フェザリング状態を維持することができるので、垂直軸抗力型風力発電機1Aの過回転を防止することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Aによれば、複数のフラップ部材6の各々が、受圧部材5(本実施形態では、内側壁面部52)に沿って配置される閉位置P1と、受圧部材5(本実施形態では、内側壁面部52)に対して所定の角度θ1をなす開位置P2との間を移動可能にフラップ開閉機構7を介して受圧部材5にそれぞれ連結される。これにより、フラップ部材6は、受圧部材5に対して閉位置P1と開位置P2との間を移動することができる。そのため、フラップ部材6の位置に応じて、受圧部材5に発生する回転力の大きさが変更される。
【0060】
具体的には、フラップ部材6が、受圧部材5に沿って配置される閉位置P1にある場合には、一対の受圧部材5が風を受けることで、受圧部材5に回転力が発生し、支持軸3が回転するので、垂直軸抗力型風力発電機1Aによる発電運転が行われる。一方、フラップ部材6が、受圧部材5に対して所定の角度θ1をなす開位置P2にある場合には、一対の受圧部材5が風を受けたとしても、受圧部材5に回転力が発生することが抑制されるので、フェザリング状態となり、垂直軸抗力型風力発電機1Aによる発電運転が停止される。したがって、例えば、所定の風速を超えるような強風時において、フラップ部材6が開位置P2に移動されることで、垂直軸抗力型風力発電機1Aの空力的ブレーキとして機能し、垂直軸抗力型風力発電機1Aの過回転を防止することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Bの一例を示す全体斜視図である。
図9は、フラップ部材6が開位置P3に配置されたときの垂直軸抗力型風力発電機1Bの一例を示す横断面図である。
【0062】
本実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Bは、フラップ部材6の開位置P3を変更した点で第1の実施形態と相違し、その他の基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。以下では、本実施形態の特徴を中心に説明する。
【0063】
フラップ部材6が開位置P3に配置されたときに、フラップ部材6が連結された一方の受圧部材5とは異なる他方の受圧部材5の外側端53又は外側端53よりも進行方向側Dtの位置に、フラップ部材6の開位置P3が設定されている。フラップ部材6が開位置P3に配置されたときに、平面視において、一方の受圧部材5の内側端54と、他方の受圧部材5の外側端53とを結ぶ線に対して進行方向側Dtに配置されるのが好ましい。そのため、平面視におけるフラップ部材6の幅は、
図9に示すように、平面視における一方の受圧部材5の内側端54と、他方の受圧部材5の外側端53との距離よりも短く設定されるのが好ましい。これにより、フラップ部材6が、外側壁面部50に対して進行方向側Dtに入り込むことで、フラップ部材6に風が当たることが抑制されて、フラップ部材6が閉位置P1に戻ることを防止することができる。
【0064】
閉位置保持機構71は、例えば、マグネット部材及び磁性体で構成されて、フラップ壁面部60及び受圧部材5の内側壁面部52にそれぞれ取り付けられる。開位置規制機構72は、例えば、マグネット部材及び磁性体で構成されて、フラップ壁面部60及び受圧部材5の外側壁面部50にそれぞれ取り付けられる。これにより、開位置規制機構72は、開位置保持機構としても機能する。なお、受圧部材5の外側端53が、開位置P3に配置されたときのフラップ壁面部60に接触することにより、開位置規制機構72として機能するようにしてもよい。また、受圧部材5の外側壁面部50に対して外側端53から2つのスリットを入れて、その2つのスリットの間の外側端53を径方向内側Dr2に折り曲げて、折り曲げ部分を形成する。そして、その折り曲げ部分が、開位置P3に配置されたときのフラップ壁面部60に接触することにより、開位置規制機構72として機能するようにしてもよい。その際、外側端53や折り曲げ部分が、開位置保持機構として機能するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Bによれば、第1の実施形態と同様に、例えば、所定の風速を超えるような強風時において、フラップ部材6が開位置P3に移動されることで、垂直軸抗力型風力発電機1Bの空力的ブレーキとして機能し、垂直軸抗力型風力発電機1Bの過回転を防止することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Cの一例を示す全体斜視図である。
【0067】
本実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Cは、支持軸3、複数の支持部材4(本実施形態では、3つ)及び複数の受圧部材5(本実施形態では、4つ(二対))を1つの抗力型タービンユニット10として、複数の抗力型タービンユニット10を備えることで、タンデム構造を有する点で第1の実施形態と相違し、その他の基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。以下では、本実施形態の特徴を中心に説明する。
【0068】
支持軸3は、複数の抗力型タービンユニット10がそれぞれ備える支持軸3が同軸上に配置されたときに隣接される支持軸3同士を着脱可能に連結する連結機構部31を備える。また、支持部材4は、複数の抗力型タービンユニット10がそれぞれ備える支持軸3が同軸上に配置されたときに隣接される支持部材4同士を着脱可能に連結する連結機構部42を備える。支持軸3の連結機構部31及び支持部材4の連結機構部42は、例えば、任意の連結方法(ねじ固定、リベット、ピン結合、継手等)により支持軸3同士又は支持部材4同士を連結するものであり、例えば、工具により着脱可能とするものでもよいし、工具が不要なワンタッチで着脱可能とするものでもよい。なお、支持軸3の連結機構部31及び支持部材4の連結機構部42の一方は省略されてもよい。
【0069】
なお、本実施形態では、垂直軸抗力型風力発電機1Cは、
図10に示すように、2組の抗力型タービンユニット10を備える場合について説明するが、抗力型タービンユニット10の組数は、3組以上でもよい。また、複数の抗力型タービンユニット10が、支持軸3の連結機構部31及び支持部材4の連結機構部42の少なくとも一方を介して連結されたとき、複数の抗力型タービンユニット10がそれぞれ備える受圧部材5は、
図10に示すように、同一の向きに配置されるようにしてもよいし、異なる向きに配置されてもよく、その場合、例えば、90度ずつずらすようにしてもよいし、螺旋状にずらすようにしてもよい。また、抗力型タービンユニット10を構成する支持部材4及び受圧部材5の数は適宜変更してもよい。例えば、抗力型タービンユニット10を、2つの支持部材4と、2つ(一対)の受圧部材5とで構成するようにしてもよい。さらに、支持部材4及び受圧部材5の少なくとも一方の数が異なるような複数種類の抗力型タービンユニット10を連結するようにしてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Cによれば、複数の抗力型タービンユニット10が連結することで、1つの垂直軸抗力型風力発電機1Cが構成されるので、抗力型タービンユニット10のユニット数に応じて、垂直軸抗力型風力発電機1Cとしての発電出力を変更することができる。
【0071】
(他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0072】
上記実施形態では、複数の支持部材4として、3つ又は4つの支持部材4を備える場合について説明したが、支持部材4の数は、2つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0073】
上記実施形態では、受圧部材5が、回転中心軸O1を中心として時計回りに回転する場合について説明したが、反時計回りに回転するようにしてもよく、その場合には、支持部材4及び受圧部材5の形状を反転させればよい。
【0074】
上記実施形態では、複数の受圧部材5として、一対(2つ)の受圧部材5を備える場合について説明したが、受圧部材5の数は、3つ以上でもよく、その場合には、支持軸3の周囲に等間隔に、かつ、支持軸3に対して対称的に配置すればよい。
【0075】
上記実施形態では、複数の受圧部材5は、
図2、
図4等に示すような形状である場合について説明したが、受圧部材5の形状は、適宜変更してもよい。例えば、受圧部材5の形状は、サボニウス型風車で用いられるような横断面がC字状(円弧状)でもよいし、バッハ型風車で用いられるような横断面がJ字状でもよい。その場合には、フラップ部材6の形状についても適宜変更すればよい。
【0076】
上記実施形態では、支持部材4は、例えば、平板材で構成される場合について説明したが、支持部材4は、その一部を貫通するような任意の形状の貫通孔を備えるものでもよい。貫通孔の数は、複数でもよく、その場合には、支持軸3に対して対称的に配置されるようにすればよい。これにより、装置の軽量化を図るとともに、支持部材4への積雪を小さくすることができ、積雪による破損の防止を図ることができる。
【0077】
上記実施形態では、支持軸3(回転中心軸O1)を、設置面に対して垂直(鉛直)に配置した、すなわち、鉛直方向に対して平行に配置したものとして説明したが、鉛直方向に対して斜めに配置してもよいし、鉛直方向に対して直角に、すなわち、水平方向に配置してもよい。
【0078】
上記実施形態では、フラップ部材6は、複数の受圧部材5の各々に対して連結されている場合について説明したが、垂直軸抗力型風力発電機1A~1Cが備える複数の受圧部材5のうち、一部の受圧部材5にだけフラップ部材6が連結されるようにしてもよい。例えば、第1又は第2の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1A、1Bでは、受圧部材5が3段で配置されているが、下から1段目の受圧部材5と、下から3段目の受圧部材5とに対してフラップ部材6が連結されるようにしてもよい。また、第3の実施形態に係る垂直軸抗力型風力発電機1Cでは、複数の抗力型タービンユニット10が連結されるが、一部の抗力型タービンユニット10が備える受圧部材5にだけフラップ部材6が連結されるようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、抗力型タービン装置の適用例の1つとして、抗力型タービン装置を用いた垂直軸抗力型風力発電機1A~1Cについて説明したが、支持軸3を発電ユニット20に連結することに代えて、支持軸3をポンプ等の回転機械に連結することにより、抗力型タービン装置を用いた風力回転装置としてもよい。
【0080】
上記実施形態では、抗力型タービン装置の適用例の1つとして、抗力型タービン装置を用いた垂直軸抗力型風力発電機1A~1Cについて説明したが、エネルギー源として、風(空気流)を用いることに代えて、水流、波、潮流等を用いることにより、抗力型タービン装置を用いた水力発電機又は潮力発電機としてもよいし、さらに支持軸3を発電ユニット20に連結することに代えて、支持軸3をポンプ等の回転機械に連結することにより、抗力型タービン装置を用いた水力回転装置又は潮力回転装置としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1A~1C…垂直軸抗力型風力発電機(抗力型タービン装置)、2…支持筐体、
3…支持軸、4…支持部材、5…受圧部材、6…フラップ部材、7…フラップ開閉機構、
10…抗力型タービンユニット、20…発電ユニット、
30…連結固定部材、31…連結機構部、
40…曲線外形部、41…直線外形部、42…連結機構部、
50~52…受圧壁面部、50…外側壁面部、51…中間壁面部、52…内側壁面部、
53…外側端、54…内側端、55…外側境界部、56…内側境界部、
57…外側取付部、58…中間取付部、59…内側取付部、
60…フラップ壁面部、61…基端、62…先端、
70…ヒンジ機構、71…閉位置保持機構、72…開位置規制機構
【要約】
【課題】受圧部材の過回転を防止することを可能とする抗力型タービン装置を提供する。
【解決手段】抗力型タービン装置(垂直軸抗力型風力発電機1A)は、支持軸3と、複数の支持部材4と、隣り合う支持部材4の間に配置されて、支持部材4により支持される複数の受圧部材5と、複数の受圧部材5にフラップ開閉機構7を介してそれぞれ連結される複数のフラップ部材6とを備える。複数のフラップ部材6の各々は、軸方向に垂直な平面視において、受圧壁面部50~52に対して内側端54寄りに配置される基端61と、受圧壁面部50~52に対して径方向外側に配置される先端62との間に延設されるフラップ壁面部60を有するとともに、フラップ壁面部60が受圧壁面部50~52に沿って配置される閉位置P1と、フラップ壁面部60が受圧壁面部50~52に対して所定の角度θ1をなす開位置P2との間を移動可能にフラップ開閉機構7を介して受圧部材6に連結される。
【選択図】
図3