(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】磁性異物除去装置
(51)【国際特許分類】
B03C 1/247 20060101AFI20240913BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B03C1/247
B03C1/00 B
B03C1/00 A
B03C1/00 C
(21)【出願番号】P 2024009608
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524034165
【氏名又は名称】日本永磁株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅人
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-312293(JP,A)
【文献】特開2002-113387(JP,A)
【文献】特開2007-160169(JP,A)
【文献】特開平09-076093(JP,A)
【文献】特開平11-290834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性異物を含む粉粒体又は流体から、前記磁性異物を磁場によって吸着除去する、磁性異物除去装置であって、
前記粉粒体又は流体を導入する導入口、及び、前記粉粒体又は流体を排出する排出口を有するケーシングと、
環状をなすと共に、前記ケーシングの内部空間において回転軸を介して回転可能に支持されて、回転手段により所定方向に回転して、前記磁性異物を吸着除去する環状磁性部材と、
前記環状磁性部材が吸着除去した前記磁性異物を、前記環状磁性部材から吸引して除去する、吸引構造とを有
しており、
前記吸引構造は、前記環状磁性部材の径方向所定箇所を覆うフードと、該フード内の空気を吸引する吸引手段とを有していることを特徴とする磁性異物除去装置。
【請求項2】
前記フードは、
前記吸引手段に連結された筒状のダクトと、
該ダクトの先端部に設けられた吸引部と、
前記吸引部の先端面から前記ダクト側に向けて凹溝状に形成された吸引口とを有しており、
前記環状磁性部材は、少なくとも外周部分が前記吸引口に収容されて、前記環状磁性部材の径方向所定箇所が覆われる請求項1記載の磁性異物除去装置。
【請求項3】
前記環状磁性部材は、前記回転軸に複数の支持アームを介して固定されており、
前記フードは、
前記吸引手段に連結された筒状の基部と、
該基部から延びる筒状の延出部と、
該延出部の先端部に、延出方向に対して交差する方向に開口して形成された磁性部材用開口と、
該延出部の先端部に、延出方向に交差する方向に且つ開口し前記回転軸側が開口するようにスリット溝状に形成されたアーム用隙間とを有しており、
前記環状磁性部材が前記延出部の先端部の内部に収容されて、前記環状磁性部材の径方向所定箇所が覆われると共に、前記支持アームが前記アーム用隙間から挿出される請求項
1記載の磁性異物除去装置。
【請求項4】
前記環状磁性部材は、前記回転軸の軸方向に複数配置されており、
前記フードは、各環状磁性部材の径方向所定箇所をそれぞれ覆う複数のものからなる請求項
1~3のいずれか1つに記載の磁性異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性異物を含む粉粒体や流体から磁性異物を磁場によって吸着除去するための、磁性異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、小麦粉等の食品原料や、電池に用いられる複合酸化物等となる粉粒体や流体には、異物の混入は厳密に排除されなければならない。このような粉粒体から磁性異物を除去する装置として、例えば、粉粒体が投入されるケーシングと、その内部に配置されるマグネットとを有するものが知られている。また、磁性異物の吸着効率を高めるため、ケーシング内でマグネットを回転させる装置(ロータリーマグネット装置)も実用化されている。
【0003】
上記のロータリーマグネット装置では、使用に伴ってマグネット表面に磁性異物が付着するので、吸着効率が低下する。そのため、定期的にマグネット表面から磁性異物を除去して、マグネットを清掃する必要がある。この場合、ロータリーマグネット構造の動作を一旦停止した後、ケーシング内からマグネットを取り出して、マグネット表面が磁性異物を除去して清掃する。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ジョイントケーシングと、該ジョイントケーシング内に、支持円板を介してその円周上等配に配置され、駆動源により回転動作する複数のマグネットバーと、ジョイントケーシングに連通接続されたダストボックスと、ダストボックスへマグネットバーを引き込むエアシリンダーと、マグネットバー表面から磁性粉を掻き取るスクレーパとを備える、磁性粉の除去装置が記載されている。
【0005】
そして、マグネットバー表面の磁性粉を取り除く際には、駆動源をOFFにしてマグネットバーの回転を停止した後、エアシリンダーを動作させて、ダストボックス内にマグネットバーを引き込む過程において、スクレーパがマグネットバー表面に付着した磁性粉を掻き取るようになっている(特許文献1の段落0034,0035参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の除去装置では、マグネットバー表面の磁性粉を取り除く際には、駆動源をOFFにして、マグネットバーの回転を一旦停止している。そのため、マグネットバー表面からの、磁性粉の取り除き作業の度に、マグネットバーによる磁性粉の除去作業が中断してしまっていた。このような場合、粉粒体等から磁性異物を連続的に長期に亘って除去しなければならない際に(例えば、EV車両用電池等の分野等)、対応することが困難となる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、磁性異物を含む粉粒体又は流体から、磁性異物を連続的に且つ長期に亘って除去することができる。磁性異物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、磁性異物を含む粉粒体又は流体から、前記磁性異物を磁場によって吸着除去する、磁性異物除去装置であって、前記粉粒体又は流体を導入する導入口、及び、前記粉粒体又は流体を排出する排出口を有するケーシングと、環状をなすと共に、前記ケーシングの内部空間において回転軸を介して回転可能に支持されて、回転手段により所定方向に回転して、前記磁性異物を吸着除去する環状磁性部材と、前記環状磁性部材が吸着除去した前記磁性異物を、前記環状磁性部材から吸引して除去する、吸引構造とを有しており、前記吸引構造は、前記環状磁性部材の径方向所定箇所を覆うフードと、該フード内の空気を吸引する吸引手段とを有していることを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、導入口からケーシング内に粉粒体又は流体が導入されると、環状磁性部材が回転手段により回転しながら、粉粒体又は流体から磁性異物を吸着除去すると共に、吸引構造が環状磁性部材から磁性異物を吸引して除去するので、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去と、環状磁性部材の清掃とが同時に行われる。
【0011】
その結果、磁性異物の含有量が多い粉粒体又は流体であっても、環状磁性部材の清掃のために、環状磁性部材の吸着除去作業を中断する必要がなく、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去を連続的に且つ長期に亘って行うことができる。
【0012】
また、前記吸引構造は、前記環状磁性部材の径方向所定箇所を覆うフードと、該フード内の空気を吸引する吸引手段とを有している。
【0013】
上記のように、環状磁性部材の径方向所定箇所がフードで覆われることで、環状磁性部材に吸着除去された磁性異物が飛散することを抑制しながら、フード内の空気を吸引する吸引手段によって、環状磁性部材から磁性異物を効率的に吸引することができ、環状磁性部材の清掃作業を、迅速且つ清掃漏れが少なくなるように適切に行うことができる。
本発明の磁性異物除去装置においては、前記フードは、前記吸引手段に連結された筒状のダクトと、該ダクトの先端部に設けられた吸引部と、前記吸引部の先端面から前記ダクト側に向けて凹溝状に形成された吸引口とを有しており、前記環状磁性部材は、少なくとも外周部分が前記吸引口に収容されて、前記環状磁性部材の径方向所定箇所が覆われることが好ましい。
本発明の磁性異物除去装置においては、前記環状磁性部材は、前記回転軸に複数の支持アームを介して固定されており、前記フードは、前記吸引手段に連結された筒状の基部と、該基部から延びる筒状の延出部と、該延出部の先端部に、延出方向に対して交差する方向に開口して形成された磁性部材用開口と、該延出部の先端部に、延出方向に交差する方向に且つ開口し前記回転軸側が開口するようにスリット溝状に形成されたアーム用隙間とを有しており、前記環状磁性部材が前記延出部の先端部の内部に収容されて、前記環状磁性部材の径方向所定箇所が覆われると共に、前記支持アームが前記アーム用隙間から挿出されることが好ましい。
【0014】
本発明の磁性異物除去装置においては、前記環状磁性部材は、前記回転軸の軸方向に複数配置されており、前記フードは、各環状磁性部材の径方向所定箇所をそれぞれ覆う複数のものからなることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、環状磁性部材は、回転軸の軸方向に複数配置されているので、ケーシング内に導入された粉粒体又は流体の量が多い場合でも、粉粒体又は流体から磁性異物を適切に吸着除去して、粉粒体又は流体からの磁性異物の吸着漏れをより少なくすることができる。また、フードは、各環状磁性部材の径方向所定箇所をそれぞれ覆う複数のものからなるので、各環状磁性部材からの磁性異物の飛散を抑制しつつ吸引除去して、各環状磁性部材の清掃作業を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁性異物の含有量が多い粉粒体又は流体であっても、環状磁性部材の清掃のために、環状磁性部材の吸着除去作業を中断する必要がなく、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去を連続的に且つ長期に亘って行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る磁性異物除去装置の一実施形態を示しており、その概略構成を表す斜視図である。
【
図2】同磁性異物除去装置の概略構成を表す正面説明図である。
【
図3】同磁性異物除去装置の要部拡大平面図である。
【
図4】同磁性異物除去装置を構成する環状磁性部材の分解斜視図である。
【
図7】本発明に係る磁性異物除去装置の、他の実施形態を示しており、その概略構成を表す正面説明図である。
【
図9】同磁性異物除去装置に用いられる磁性部材の一態様を示しており、その断面図である。
【
図10】
図9のA-A矢視線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(磁性異物除去装置の一実施形態)
以下、
図1~6を参照して、本発明に係る磁性異物除去装置の一実施形態について説明する。
【0019】
図1や
図2に示すように、この実施形態における磁性異物除去装置10(以下、単に「除去装置10」ともいう)は、磁性異物を含む粉粒体又は流体(以下、単に「粉粒体等」ともいう)から、磁性異物を磁場によって吸着除去するものであって、粉粒体又は流体を導入する導入口21、及び、粉粒体又は流体を排出する排出口23を有するケーシング20と、環状をなすと共に、ケーシング20の内部空間R1において回転軸40を介して回転可能に支持されて、図示しない回転手段により所定方向に回転して、磁性異物を吸着除去する環状磁性部材30と、環状磁性部材30が吸着除去した磁性異物を、環状磁性部材30から吸引して除去する、吸引構造とを有している。
【0020】
図1及び
図3に示すように、環状磁性部材30は、回転軸40の軸方向に複数配置されている。
【0021】
まず、ケーシング20について詳述すると、この実施形態におけるケーシング20は、内部空間R1を有する有底の箱状をなしており、その上方の天井面側に導入口21が設けられており、下方の底面側に排出口23が設けられている。なお、ケーシング20は、互いに平行な一対の内側面20a,20aを有している。
【0022】
また、ケーシング20の導入口21側には、複数のカバー45,46が、ケーシング内方に向けて突設されている。この実施形態におけるカバー45,46は、ケーシング20の内側面20aに対して直交配置された底面47と、ケーシング上方から斜め下方に向けてカバー45,46を次第に低くするテーパ面48とを有する、略三角形状となっている。
【0023】
上記カバー45,46は、ケーシング20の一対の内側面20a,20aと、環状磁性部材30の外周部分との間の、環状磁性部材30の磁場が届きにくく磁性異物の吸着漏れが生じやすいデッドスペースを、上方からカバーして、環状磁性部材30の上方に粉粒体等を適切に供給する部材となっている。なお、カバー45,46のテーパ面48,48にしょって、粉粒体等を環状磁性部材30の上方にガイド(誘導)しやすくしている。
【0024】
次に環状磁性部材30について詳述する。
【0025】
図4及び
図5に示すように、各環状磁性部材30は、幅広の略略円環状(円形リング状)をなした磁石ケース33と、該磁石ケース33内にヨーク37を介して同極どうしを対向した状態で収納される複数の磁石34とを有している。
【0026】
また、
図4に示すように、磁石ケース33は、一対の分割ケース38,38から構成されている。
【0027】
各分割ケース38は、回転軸40の軸方向(回転軸40の軸心Cに沿った方向)から見たときに、回転軸40の最大外径よりも大きく、且つ、内周の全範囲(内周全周)及び外周の全範囲(外周全周)が共に円形状をなした、略円環状の板形状を呈する環状板部38aを有している。なお、上記の「環状」とは、周方向に切れ目のない形状、すなわち、周方向に分断されたり切断されたりした箇所がなく、周方向に連続して延びる形状を意味する。
【0028】
また、環状板部38aの径方向中央部(内周縁部)に、回転軸40が挿通配置される軸挿通孔38bが形成されている。更に、各環状板部38aは、軸挿通孔38bの周縁部(内周縁部)から相手側の分割ケース38に向けて突出した内周リブ38cと、外周縁部から相手側の分割ケース38に向けて突出した外周リブ38dとを有している。
【0029】
そして、一対の分割ケース38,38の内周リブ38c,38cどうし及び外周リブ38d,38dどうしを互いに重ね合わせて固着することで、2個の分割ケース38,38からなる1個の磁石ケース33が構成されるようになっている。
【0030】
また、環状磁性部材30の磁石ケース33は、例えば、SUS304やSUS316等のステンレス(オーステナイト系ステンレス)や、アルミニウム合金、チタン合金、合成樹脂等の非磁性材料から形成されている。
【0031】
また、上記磁石34は複数であって、これらの複数の磁石34が、磁石ケース33内にヨーク37を介して同極どうしを対向した状態で収納されて、複数の磁石34が環状をなすように配置されている。
【0032】
より具体的には、この実施形態における各磁石34は、
図4や
図6に示すように、幅広の円環板状をなした環状板部38aに対応して、所定長さで延びる棒状をなした永久磁石となっている。
図6に示すように、各磁石34は、長さ方向の両端部が、側方から見た場合に丸みを帯びたR形状となっていると共に、
図4に示すように、長さ方向に直交する幅方向が、環状板部38aの径方向外方において幅広で径方向外方に向けて次第に幅狭となる略扇形状をなした細長い棒状となっている。
【0033】
また、磁石34の延出方向の一端部がN極35をなし、延出方向の他端部がS極36をなしている。なお、磁石としては、例えば、側方から見た場合に長軸及び短軸を有する略楕円形状等となっていてもよく、特に限定はされない。
【0034】
更に、この実施形態におけるヨーク37は、磁石34に適合する形状及び長さとされた、長さ方向の両端部が丸みを帯びたR形状を呈する長板状となっており、例えば、純鉄や低炭素鋼等の金属からなる形成されている。
【0035】
そして、
図4や
図5に示すように、隣接する磁石34,34のN極35,35どうしを対向配置すると共に、N極35,35の間にヨーク37を介在させるか、又は、隣接する磁石34,34のS極36,36どうしを対向して配置すると共に、S極36,36の間にヨーク37を介在させた状態で、磁石ケース33内に複数の磁石34が収納配置される。その結果、磁石ケース33内に、複数の磁石34が環状をなすように配置されるようになっている。
【0036】
また、隣接する磁石34,34の同極どうしの間にヨーク37が配置されることで、磁石34の磁力がヨーク37に作用することになり、ヨーク37が磁性異物の吸着部分となる。
【0037】
なお、各磁石34としては、本出願人が出願した特願2018-20490号(特許第6446631号)に記載された棒状磁石を採用してもよい。これは既に公知であるので詳述はしないが、この棒状磁石は、長軸及び短軸を有し所定長さで棒状に伸びており、その軸方向に直交する断面で見たときに、互いに平行となるように所定長さで伸びる一対の吸着面を設けた吸着部と、該吸着部の一端側に設けられると共に、長軸の一端側から他端側に向けて次第に幅広となる一対の斜面を有し、磁性異物を吸着部へ案内するガイド部とを有するものとなっている。
【0038】
また、この実施形態における環状磁性部材30は、断面視において(断面方向から見たときに)、磁石ケース33及び磁石34の、径方向の内側端部と径方向の外側端部とが、共に略円弧状をなした曲面形状となっている。
【0039】
ただし、環状磁性部材としては、この態様に限定されず、例えば、断面視において、(1)径方向の内側端部が略円弧状の曲面形状で、径方向の外側端部が略三角状の角形状としたり、(2)径方向の内側端部と径方向の外側端部とが、共に略三角状の角形状としたり、(3)径方向の内側端部が厚さ方向に沿った垂直面状で、径方向の外側端部が略三角状の角形状としたり、(4)径方向の内側端部が厚さ方向に沿った垂直面状で、径方向の外側端部が略円弧状の曲面形状としたり、(5)径方向の内側端部が略三角形の角形状で、径方向の外側端部が略円弧状の曲面形状としたりしてもよい。
【0040】
次に、上記構造をなした環状磁性部材30の、ケーシング20に対する支持構造等について説明する。
【0041】
すなわち、
図1に示すように、ケーシング20の対向する壁部には図示しない軸受け部が配置されており、該軸受け部に回転軸40が回転可能に軸支されている。この実施形態における回転軸40は、水平となるように配置されている。つまり、回転軸40は、ケーシング20の内部空間R1に対する、非処理物である粉粒体等の導入方向(
図2の下向き矢印参照)に対して、垂直となるように(直交するように)配置されている。また、回転軸40は、モータ等の図示しない回転手段によって、所定方向に回転するようになっている。
【0042】
更に上記回転軸40に、各環状磁性部材30が複数の支持アーム43(スポークとも言える)を介して固定されるようになっている。
【0043】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、回転軸40の外周の軸方向所定箇所から、軸心Cに対して放射状に均等な間隔を空けて、8本の支持アーム43が延出している。
【0044】
そして、8本の支持アーム43が、環状磁性部材30の内周に固定されている。その結果、各環状磁性部材30が、回転軸40の軸方向に複数配置されることとなる(
図2参照)。
【0045】
また、回転手段が駆動して回転軸40が回転すると、支持アーム43を介して、全ての環状磁性部材30が同一方向に同時に回転するようになっている。
【0046】
次に、環状磁性部材30が吸着除去した磁性異物を、環状磁性部材30から吸引して除去する、吸引構造(集塵構造とも言える)について詳述する。
【0047】
この吸引構造は、環状磁性部材30の径方向所定箇所を覆うフード50と、該フード50内の空気を吸引する吸引手段53とを有している。
【0048】
図1に示すように、フード50は、複数の環状磁性部材30の全てをカバー可能な長さで形成された略箱状をなしており、その内部に内部空間R2を有している。
図3を併せて参照すると、フード50は、吸引手段53に連結される筒状のダクト51と、該ダクト51の先端部からフード先端に向けて次第に幅広となり、且つ、最大幅広部分から一定幅で延びる形状をなした吸引部52とを有している。なお、ダクト51と吸引部52との内部空間は互いに連通している。
【0049】
また、吸引部52の先端部には、その先端面からダクト側に向けて所定深さの凹溝状をなした吸引口52aが、フード50の幅方向(回転軸40の軸方向と同一方向)に沿って、複数個並列して形成されている。そして、各吸引口52aに、対応する環状磁性部材30が収容配置されるようになっている。
【0050】
更に、フード50の基部側、すなわち、フード50のダクト51の基端部側には、吸引ファン等からなる吸引手段53が連結されている。また、吸引手段53には、吸引構造により吸引した磁性異物を収集する、図示しない収集ボックスが配置されている
そして、吸引手段53が動作すると、フード50の各吸引口52aから、フード50の内部空間R2内に吸引力が作用する(
図2の矢印F参照)。
【0051】
すると、環状磁性部材30の磁石ケース33の外面に吸着された磁性異物に、フード50を介して、吸引手段53からの吸引力が作用する。その結果、環状磁性部材30から磁性異物が吸引されて除去されると共に、吸引除去された磁性異物は、フード50の内部空間R2(吸引部52及びダクト51の内部空間)内を流通した後、吸引手段53を介して図示しない収集ボックスに収集される。
【0052】
なお、吸引手段53は、回転軸40が回転動作すると、それに伴って動作がОNとなって、上述のような吸引動作をし、一方、回転軸40の回転動作が停止すると、それに伴って動作がOFFとなり、吸引動作が停止するように設定されている。すなわち、回転軸40のON・OFFに連動して、吸引手段53がОN・OFFとなる。ただし、吸引構造の吸引動作は、回転軸40の回転動作に連動させなくても、一定のタイミングで行うように設定しても勿論よい。
【0053】
(磁性異物除去装置の作用効果)
次に、上記構造からなる除去装置10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0054】
すなわち、回転手段及び吸引手段53の動作をONにして、複数の環状磁性部材30を所定方向に回転させると共に、各環状磁性部材30に吸引構造からの吸引力を付与した状態とした後、ケーシング20の導入口21を通して、磁性異物を含む粉粒体又は流体(粉粒体等)を、ケーシング20の内部空間R1内に導入する。
【0055】
すると、回転動作する複数の環状磁性部材30の磁場によって、粉粒体等から磁性異物が吸着されて除去される。すなわち、磁石ケース33内にて隣接配置された磁石34,34の磁力がヨーク37に作用して、ヨーク37が吸着部分となり、磁石ケース33の、ヨーク37が位置する部分が吸着面となって、当該吸着面によって磁性異物が吸着される。
【0056】
また、環状磁性部材30の磁石ケース33の外面に吸着された磁性異物に、フード50を介して、吸引手段53からの吸引力が作用して、環状磁性部材30の磁石ケース33の表面から磁性異物が吸引されて除去される。
【0057】
そして、本発明においては、上記のように、環状磁性部材30が回転手段により回転しながら、粉粒体等から磁性異物を吸着除去すると共に、吸引構造が環状磁性部材30から磁性異物を吸引して除去するので、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去と、環状磁性部材の清掃とが同時に行われることになる。
【0058】
その結果、磁性異物の含有量が多い粉粒体又は流体であっても、環状磁性部材30,31の清掃のために、環状磁性部材30の吸着除去作業を中断する必要がなく、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去を連続的に且つ長期に亘って行うことができる。
【0059】
また、この実施形態においては、吸引構造は、環状磁性部材30の径方向所定箇所を覆うフード50と、該フード50内の空気を吸引する吸引手段53とを有している。
【0060】
上記態様によれば、環状磁性部材30の径方向所定箇所がフード50で覆われることで、環状磁性部材30に吸着除去された磁性異物が飛散することを抑制しながら、フード50内の空気を吸引する吸引手段53によって、環状磁性部材30から磁性異物を効率的に吸引することができ、環状磁性部材30の清掃作業を、迅速且つ清掃漏れが少なくなるように適切に行うことができる。
【0061】
なお、この実施形態における回転軸40は水平に配置されているが、例えば、回転軸を、粉粒体等の導入方向に対して斜めに傾けて(ケーシング20の底面に対して斜めに傾けて)配置したり、或いは、回転軸を、ケーシング20の平面方向から見て斜めに傾けて配置したりしてもよい。このように回転軸を斜めに傾けて配置した場合には、複数の環状磁性部材のうち、所定の一又は複数の環状磁性部材を、ケーシング20の導入口21に近づけて配置できるようになるので、当該環状磁性部材30と粉粒体等との接触効率を高めることができる。
【0062】
(磁性異物除去装置の、他の実施形態)
図7~10には、本発明に係る磁性異物除去装置の、他の実施形態について説明する。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この実施形態における磁性異物除去装置10A(以下、単に「除去装置10A」ともいう)は、前記除去装置10と同様に、ケーシング20と、磁性異物を吸着除去する環状磁性部材と、環状磁性部材が吸着除去した磁性異物を、環状磁性部材から吸引して除去する、吸引構造とを有している。
【0064】
この実施形態の場合、
図7に示すように、この実施形態における環状磁性部材30Aは、円環状(円形リング状)をなしている。また、
図9には、環状磁性部材30Aの、環状部分の開口方向に直交する断面が図示されているが、同
図9に示すように、各環状磁性部材30Aは、磁石ケース33と、該磁石ケース33内にヨーク37を介して同極どうしを対向した状態で収納される複数の磁石34とを有している。
【0065】
図10には、
図9のA-A矢視線における断面(環状磁性部材30Aの環状部分の延出方向に直交する断面)が図示されているが、磁石ケース33は、一定厚さとされた円筒状断面の壁部を有している。この磁石ケース33の壁部は、内周の全範囲(内周全周)及び外周の全範囲(外周全周)が共に円形状をなしている。すなわち、磁石ケース33の壁部が周方向に切れ目のない環状をなしている。
【0066】
なお、環状の磁石ケース33は、例えば、筒状に延びる1個の壁部構成体の延出方向の一端部と他端部とを互いに接合したり、或いは、略円弧状をなす壁部構成体を複数個用意して、各壁部構成体を環状に並べたうえで周方向に隣接する端部どうしを互いに接合したりすることで構成される。
【0067】
また、上記磁石34は複数であって、これらの複数の磁石34が、磁石ケース33内にヨーク37を介して同極どうしを対向した状態で収納されて、複数の磁石34が環状をなすように配置されている。
【0068】
より具体的には、この実施形態における各磁石34は、一定外径で且つ所定長さで延びた円柱状(中実の丸棒状)をなした永久磁石となっている。磁石34の延出方向の一端部がN極35をなし、延出方向の他端部がS極36をなしている。また、この実施形態におけるヨーク37は、例えば、純鉄や低炭素鋼等の金属からなる板状体となっている。
【0069】
そして、
図9に示すように、隣接する磁石34,34のN極35,35どうしを対向配置すると共に、N極35,35の間にヨーク37を介在させるか、又は、隣接する磁石34,34のS極36,36どうしを対向して配置すると共に、S極36,36の間にヨーク37を介在させた状態で、磁石ケース33内に複数の磁石34が収納配置される。その結果、磁石ケース33内に、複数の磁石34が環状をなすように配置されるようになっている。
【0070】
また、隣接する磁石34,34の同極どうしの間にヨーク37が配置されることで、磁石34の磁力がヨーク37に作用することになり、ヨーク37が磁性異物の吸着部分となる。
【0071】
次に、この実施形態における吸引構造について詳述する。
【0072】
図7に示すように、この吸引構造におけるフード50Aは、回転軸40の軸方向に複数配置された環状磁性部材30Aのそれぞれについて、各環状磁性部材30Aの径方向所定箇所を各々覆う複数のものから構成されている。具体的には、各フード50Aは、所定長さで延びる基部55と、該基部55の延出方向先端から斜めに屈曲して延びる延出部56とを有しており、内部空間R2を有する筒状をなしている。
【0073】
また、フード50Aは、全体として周方向が壁で囲まれた筒状をなしているが、
図8に示すように、延出部56の延出方向の先端部には、延出部56の延出方向に対して交差する方向に開口した、上下一対の磁性部材用開口56a,56aと、延出部56の延出方向に交差する方向に開口し且つ回転軸40側が開口するスリット溝状をなしたアーム用隙間56bとが設けられている。
【0074】
磁性部材用開口56a,56aからは、環状磁性部材30Aの周方向延出部分が挿出され、アーム用隙間56bからは、環状磁性部材30Aの支持アーム43が挿出される。その結果、環状磁性部材30Aの回転動作に、フード50Aの延出部56が干渉しないようになっている。
【0075】
なお、磁性部材用開口56aやアーム用隙間56bの形状や、幅、隙間、レイアウト等は、ケーシング20内の、環状磁性部材30Aによる磁性異物吸着前の粉粒体や流体を吸引しない又は吸引しにくい構成とすることが好ましい。
【0076】
そして、吸引手段53が動作すると、フード50Aの延出部56の先端から、基部55の基端に向けてフード50Aの内部空間R2内に吸引力が作用する(
図7,8の矢印F参照)。
【0077】
すると、環状磁性部材30Aの磁石ケース33の外面に吸着された磁性異物に、フード50Aを介して、吸引手段53からの吸引力が作用する。その結果、環状磁性部材30Aから磁性異物が吸引されて除去されると共に、吸引除去された磁性異物は、フード50Aの延出部56及び基部55を流通した後、吸引手段53を介して図示しない収集ボックスに収集される。
【0078】
したがって、この実施形態においても、環状磁性部材30Aが回転手段41により回転しながら、粉粒体等から磁性異物を吸着除去すると共に、吸引構造が環状磁性部材30,31から磁性異物を吸引して除去するので、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去と、環状磁性部材の清掃とが同時に行われることになる。その結果、磁性異物の含有量が多い粉粒体又は流体であっても、環状磁性部材30,31の清掃のために、環状磁性部材30,31の吸着除去作業を中断する必要がなく、磁性異物を含む粉粒体又は流体からの、磁性異物の吸着除去を連続的に且つ長期に亘って行うことができる。
【0079】
また、この実施形態においては、環状磁性部材30Aは、回転軸40の軸方向に複数配置されており、フード50は、各環状磁性部材30Aの径方向所定箇所をそれぞれ覆う複数のものからなる。
【0080】
上記態様によれば、環状磁性部材30Aは、回転軸40の軸方向に複数配置されているので、ケーシング20内に導入された粉粒体等の量が多い場合でも、粉粒体等から磁性異物を適切に吸着除去して、粉粒体等からの磁性異物の吸着漏れを少なくすることができる。また、フード50は、各環状磁性部材30Aの径方向所定箇所をそれぞれ覆う複数のものからなるので、各環状磁性部材30Aからの磁性異物の飛散を抑制しつつ吸引除去して、各環状磁性部材30Aの清掃作業を確実に行うことができる。
【0081】
ところで、環状磁性部材のレイアウトとしては、例えば、環状磁性部を外径の異なる2種類のものを採用して、これらの環状磁性部材が、回転軸40の軸方向から見たときに多重環状(二重環状)をなすように配置されると共に(
図5参照)、回転軸40の軸方向に複数配置された構成としてもよい。
【0082】
上記態様の場合、ケーシング20の内部空間R1に配置される環状磁性部材の個数を更に増大させることができるので、ケーシング20内に導入された粉粒体等の量が多い場合でも、粉粒体等から磁性異物を適切に吸着除去して、粉粒体等からの磁性異物の吸着漏れを更に効果的に少なくすることができる。
【0083】
(磁性異物除去装置の変形例)
本発明における磁性異物除去装置の構造や形状、磁性異物除去装置を構成するケーシングや磁性部材の形状や構造等は、上記態様に限定されるものではない。
【0084】
例えば、環状磁性部材を径の異なる3種類として、軸方向から見たときに三重環状となるように配置したり、或いは、環状磁性部材を4種以上として多重環状となるように配置したりしてもよい。
【0085】
また、環状磁性部材の軸方向に対する配置個数は、2個や、3個、或いは、3個以上配置したり、また、1個のみ配置したりしてもよい。
【0086】
更に、
図1~6に示す実施形態における環状磁性部材30の支持アーム43は8本、
図7~10に示す実施形態における環状磁性部材30Aの支持アーム43は4本となっているが、支持アームとしては、例えば、2本や、3本、5本以上であってもよい。
【0087】
更に、吸引構造の配置箇所は、各環状磁性部材の径方向一箇所のみならず、環状磁性部材の径方向の、複数個所であってもよい。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10,10A 磁性異物除去装置(除去装置)
20 ケーシング
21 導入口
23 排出口
30,30A 環状磁性部材
40 回転軸
41 回転手段
43 支持アーム
50,50A フード
53 吸引手段
【要約】
【課題】磁性異物を含む粉粒体又は流体から、磁性異物を連続的に且つ長期に亘って除去できる、磁性粉体除去装置を提供する。
【解決手段】この磁性異物除去装置10は、磁性異物を含む粉粒体又は流体から、磁性異物を磁場によって吸着除去するものであって、粉粒体又は流体を導入する導入口21及び粉粒体又は流体を排出する排出口23を有するケーシング20と、環状をなすと共に、ケーシング20の内部空間R1において回転軸40を介して回転可能に支持されて、回転手段により所定方向に回転して、磁性異物を吸着除去する環状磁性部材30と、環状磁性部材30が吸着除去した磁性異物を、環状磁性部材30から吸引して除去する、吸引構造とを有する。
【選択図】
図2