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特許7555163橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 11/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
E01D11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024082602
(22)【出願日】2024-05-21
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320007321
【氏名又は名称】株式会社ブリッジワン
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100207549
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 慎也
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】日越 忠男
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252368(JP,A)
【文献】特開平8-105013(JP,A)
【文献】中国実用新案第211113185(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続ピンを用いて吊橋用ケーブルもしくは橋梁構造物を支える橋梁用固定ベースであって、
前記接続ピンを保持するピン孔を備えたピン定着板と、
前記ピン定着板を略平行に複数固定する基台板と、を有し、
前記ピン定着板の基台板固定面には高さ方向に突出した略直方体のホゾ突起を備えるとともに、前記基台板には前記ホゾ突起と対応した方形のホゾ受貫通孔を有し、前記ホゾ受貫通孔に前記ホゾ突起が嵌入して溶接されたことを特徴とする橋梁用固定ベース。
【請求項2】
ホゾ突起の高さがホゾ受貫通孔よりも短く、前記ホゾ突起の嵌入により形成されるホゾ受貫通孔の凹み部分で裏面側の溶接がなされ、かつ前記凹み部分から裏面側の溶接ビードが基台板の裏面側に突出しないことを特徴とする請求項1記載の橋梁用固定ベース。
【請求項3】
ピン定着板と基台板とを有し、接続ピンを用いて吊橋用ケーブルもしくは橋梁構造物を支える橋梁用固定ベースの製造方法であって、
前記接続ピンを保持するピン孔を備えるとともに、前記基台板が固定する側の基台板固定面に前記基台板側に突出した略直方体のホゾ突起を有するピン定着板を取得するピン定着板取得工程と、
前記ホゾ突起と対応した方形のホゾ受貫通孔が複数略平行に形成された基台板を取得する基台板取得工程と、
前記ホゾ受貫通孔に前記ホゾ突起を嵌入して表面側と裏面側の双方から溶接し前記ピン定着板を前記基台板に固定する溶接工程と、
を有することを特徴とする橋梁用固定ベースの製造方法。
【請求項4】
ピン定着板取得工程において、ホゾ突起の高さをホゾ受貫通孔よりも短く形成し、
溶接工程において、前記ホゾ突起の嵌入により形成されるホゾ受貫通孔の凹み部分で裏面側の溶接を行い、かつ裏面側の溶接ビードを前記凹み部分から基台板の裏面側に突出させないことを特徴とする請求項3記載の橋梁用固定ベースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ピンを用いて吊橋用ケーブルもしくは橋梁構造物を支える橋梁用固定ベース及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な吊橋は、両岸に立設した主索塔間に主索を張り亘し、この主索から垂下した複数のハンガーケーブルによって橋桁(橋板)を吊って保持する。そして、主索の両端は地中や崖壁面と固定したアンカーによって保持される。ここで、下記[特許文献1]には小規模吊橋のアンカー構造に関する発明が開示されている。
【0003】
そして、アンカーと主索との接続方法としては、ケーブル固定ベース(橋梁用固定ベース)を介したピン定着が多く使用されている。このピン定着用のケーブル固定ベースでは、基台板にピン孔を備えたピン定着板を略平行に複数固定する。また、主索の端部に例えばアイエンド金具等のリング状部材を設置して輪状端とする。そして、主索の輪状端にピン孔にて保持される接続ピンを通すことで、主索とケーブル固定ベースとを固定する。尚、このときのピン定着板と基台板との固定は、溶接により行うのが一般的である。そして、これらのピン定着板には大きな荷重が掛かるため基台板に対して強固に溶接する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-105013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のケーブル固定ベースの基台板30とピン定着板20との溶接状態の模式図を図9に示す。尚、図中の符号Aは溶接ビードAを示す。前述のように、ピン定着板20と基台板30とは強固に溶接する必要がある。このため、溶接には時間を要し溶接部分が高温となる。これにより、基台板30は熱膨張し、また冷却時に収縮して、図9(a)に示すような反りや歪みが生じる。このため、ピン孔22が平行にならず接続ピン24を通すことができない。このため、再度、加熱しながら物理的に力を加えるなどして、基台板30の歪みを矯正する必要がある。この作業は主に手作業によるものであり、非効率で時間を要することに加え作業者にとっても負担が大きいという問題点がある。また、基台板30が平坦に戻ることは難しく、多くは図9(b)に示すように波打った状態となる。このような基台板30が波打ったケーブル固定ベースの使用は施工上、好ましいものではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基台板30を歪めることなくピン定着板20を強固に固定することが可能な橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)接続ピン24を用いて吊橋用ケーブルもしくは橋梁構造物を支える橋梁用固定ベースであって、
前記接続ピン24を保持するピン孔22を備えたピン定着板20と、前記ピン定着板20を略平行に複数固定する基台板30と、を有し、
前記ピン定着板20の基台板固定面には高さ方向に突出した略直方体のホゾ突起26を備えるとともに、前記基台板30には前記ホゾ突起26と対応した方形のホゾ受貫通孔32を有し、前記ホゾ受貫通孔32に前記ホゾ突起26が嵌入して溶接されたことを特徴とする橋梁用固定ベースを提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ホゾ突起26の高さがホゾ受貫通孔32よりも短く、前記ホゾ突起26の嵌入により形成されるホゾ受貫通孔32の凹み部分で裏面側の溶接がなされ、かつ前記凹み部分から裏面側の溶接ビードAが基台板30の裏面側に突出しないことを特徴とする上記(1)記載の橋梁用固定ベースを提供することにより、上記課題を解決する。
(3)ピン定着板20と基台板30とを有し、接続ピン24を用いて吊橋用ケーブルもしくは橋梁構造物を支える橋梁用固定ベースの製造方法であって、
前記接続ピン24を保持するピン孔22を備えるとともに、前記基台板30が固定する側の基台板固定面に前記基台板30側に突出した略直方体のホゾ突起26を有するピン定着板20を取得するピン定着板取得工程と、
前記ホゾ突起26と対応した方形のホゾ受貫通孔32が複数略平行に形成された基台板30を取得する基台板取得工程と、
前記ホゾ受貫通孔32に前記ホゾ突起26を嵌入して表面側と裏面側の双方から溶接し前記ピン定着板20を前記基台板30に固定する溶接工程と、を有することを特徴とする橋梁用固定ベースの製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)ピン定着板取得工程において、ホゾ突起26の高さをホゾ受貫通孔32よりも短く形成し、
溶接工程において、前記ホゾ突起26の嵌入により形成されるホゾ受貫通孔32の凹み部分で裏面側の溶接を行い、かつ裏面側の溶接ビードAを前記凹み部分から基台板30の裏面側に突出させないことを特徴とする上記(3)記載の橋梁用固定ベースの製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法では、ピン定着板のホゾ突起を基台板のホゾ受貫通孔に嵌入した上で、基台板の両面から溶接を行う。このため、従来よりも短時間且つ少量の溶接材で強固な溶接を行うことができる。これにより、基台板の反りや歪みを防止することができる。このため、歪みの矯正作業が不要となり、作業の効率化と時間短縮、作業者への負担軽減、コスト削減を図ることができる。また、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
また、ホゾ突起をホゾ受貫通孔よりも短く形成することで、基台板の裏面側にホゾ突起との寸法差による凹みが生じる。そして、裏面側からの溶接はこの凹み部分で行うことで、基台板の裏面に溶接ビードの盛り上がりを形成することなくピン定着板の溶接を行うことができる。これにより、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る橋梁用固定ベースとしてのケーブル固定ベースを示す図である。
図2】本発明に係る橋梁用固定ベースとしてのピン支承の上沓及び下沓を示す図である。
図3】本発明に係る橋梁用固定ベースのピン定着板と基台板を示す図である。
図4】本発明に係るケーブル固定ベースの基台板とピン定着板の固定状態の模式断面図である。
図5】本発明に係るケーブル固定ベースの溶接部分の拡大図である。
図6】本発明に係るケーブル固定ベースの製造方法を説明する図である。
図7】本発明に係るケーブル固定ベースの設置方法を説明する図である。
図8】本発明に係るケーブル固定ベースの設置方法を説明する図である。
図9】従来のケーブル固定ベースの溶接部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る橋梁用固定ベースとしてのケーブル固定ベース80aを示す図であり、図2(a)、(b)は本発明に係る橋梁用固定ベースとしてのピン支承90の上沓80b及び下沓80cを示す図である。また、図3は本発明のケーブル固定ベース80a、上沓80b、下沓80cのピン定着板20と基台板30を示す図である。
【0011】
先ず、本発明に係る橋梁用固定ベースは接続ピン24を用いて吊橋用ケーブルや橋梁構造物を支えるものであり、具体例としてはケーブル固定ベース80aや橋梁構造物を支えるピン支承90の上沓80b、下沓80cなどが挙げられる。尚、ここでの吊橋用ケーブルとは主索3はもとより、副索や耐風索など、岸や地面、コンクリート構造物等と固定する全ての吊橋用ケーブルを意味する。また、ここでの橋梁構造物とは一般的な橋梁の他、吊橋の主塔や側塔など、ピン支承90にて支えられる全ての橋梁構造物を意味する。
【0012】
そして、本発明に係る橋梁用固定ベースは、図3(a)、(b)、(c)に示す、少なくとも接続ピン24を保持するためのピン孔22を備えたピン定着板20と、図3(d)、(e)、(f)に示す、このピン定着板20を略平行に複数固定する基台板30とを主な構成部材としている。尚、ここで図3(a)、(d)がケーブル固定ベース80a用のピン定着板20及び基台板30を示し、図3(b)、(e)がピン支承90の上沓80bのピン定着板20及び基台板30を示し、図3(c)、(f)が下沓80c用のピン定着板20及び基台板30の例を示している。
【0013】
また、本発明に係る橋梁用固定ベースのピン定着板20は、ピン孔22を略中央部に備えるとともに、本発明の特徴的な構成として基台板30が固定する基台板固定面にピン定着板20の高さ方向に突出した複数のホゾ突起26を有する。このホゾ突起26は主に木工の技法であるホゾ継ぎにおけるホゾと同等の機能を有するものであり、ピン定着板20の厚みと同じ幅で、高さが基台板30の厚みから若干短い略直方体とすることが好ましい。尚、ホゾ突起26の数は強度の観点から複数が好ましいが、個数及び寸法に関しては特に限定は無く、ピン定着板20及び基台板30の大きさ等により適切に設計すれば良い。
【0014】
また、特に橋梁用固定ベースがケーブル固定ベース80aの場合、ピン定着板20は、図3(a)に示すように、上方に突出しピン孔22を備えたピン孔部22aと、このピン孔部22aの前後に設けられた受部28とを有している。尚、この受部28の方向はアンカー12の方向に準じ、アンカー12が例えば広角で形成される場合には、このアンカー12の方向に対応して内側(ピン孔部22a側)が下がった傾斜面となる。
【0015】
また、基台板30は上記のピン定着板20を固定するものであり、図3(d)、(e)、(f)に示すように、ピン定着板20のホゾ突起26と対応する位置にホゾ受貫通孔32を有している。このホゾ受貫通孔32はホゾ継ぎにおけるホゾ穴と同等の機能を有するものであり、内寸がホゾ突起26の外寸と略同等の方形を呈し、また基台板30の裏面側からの溶接が可能なように貫通して形成する。また、橋梁用固定ベースがケーブル固定ベース80aの場合、基台板30には、図3(d)に示すように、アンカー12が通る下部アンカー孔12aが設けられる。尚、橋梁用固定ベースがピン支承90の上沓80b及び下沓80cの場合、基台板30には、図3(e)、(f)に示すように、固定対象と接続するための接続孔34が設けられる。
【0016】
ここで図4(a)にケーブル固定ベース80aの基台板30とピン定着板20との固定状態の模式的なY-Y断面図を示し、図4(b)に模式的なX-X断面図を示す。図4(a)、(b)の模式断面図に示すように、本発明に係る橋梁用固定ベースは、基台板30のホゾ受貫通孔32にピン定着板20のホゾ突起26が嵌入され表面側及び裏面側から溶接により固定される。これにより、橋梁用固定ベースの基本構成部分が形成される。このとき、ホゾ突起26の高さをホゾ受貫通孔32よりも短いものとすることが好ましい。ここで、図5図4(b)のB部分の拡大図を示す。上記のように、ホゾ突起26の高さをホゾ受貫通孔32の長さ、即ち基台板30の厚みよりも短く形成した場合、図5に示すように、ホゾ突起26を嵌入したときにホゾ受貫通孔32には両者の寸法差による凹みが生じる。そして、裏面側からの溶接はこの凹み部分行うとともに、溶接ビードAが基台板30の裏面から突出しないようにする。この構成によれば、裏面側から溶接を行ったとしても基台板30の裏面に溶接ビードAが突出せず、無用な出っ張りの発生を防止することができる。そして、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【0017】
そして、橋梁用固定ベースがケーブル固定ベース80aの場合には、図1(a)、(b)に示すように、上面板29が略平行に固定された複数のピン定着板20の前後の受部28上に架け渡すように固定される。尚、上面板29の所定の位置には上部アンカー孔12bが設けられており、上部アンカー孔12bと基台板30の下部アンカー孔12aとは、現場に設置されるアンカー12の方向に沿って略一直線状に位置する。そして、基台板30と上面板29との間を囲うように側板27が固定される。尚、側板27は基台板30とピン定着板20との固定をより強固にするとともに、ピン定着板20の傾きや倒伏を防止する役割を有する。そしてこれにより、橋梁用固定ベースとしてのケーブル固定ベース80aが完成する。
【0018】
また、橋梁用固定ベースがピン支承90の上沓80b及び下沓80cの場合も同様に、基台板30のホゾ受貫通孔32にピン定着板20のホゾ突起26が嵌入され表面側及び裏面側から溶接により固定される。この際も、ホゾ突起26の高さをホゾ受貫通孔32よりも短くし、両者の寸法差による凹み部分で裏面側の溶接を行うことが好ましい。そして、これら上沓80b及び下沓80cには図2(a)、(b)に示すようにピン定着板20をサポートする側板27が固定され、これにより橋梁用固定ベースとしての上沓80b及び下沓80cが完成する。
【0019】
尚、完成した下沓80cは橋脚や基礎等に固定される。そして、例えば下沓80cのピン定着板20の間に上沓80bのピン定着板20を挿入して、下沓80c及び上沓80bのピン孔22の位置を一致させ、接続ピン24を挿入する。そして、接続ピン24が抜けないように固定することで、ピン支承90が完成する。このようにして完成したピン支承90の上沓80bには橋梁などの橋梁構造物が固定され、これによりピン支承90によって橋梁構造物が支持される。
【0020】
次に、本発明に係る橋梁用固定ベースの製造方法に関してケーブル固定ベース80aを例に説明を行う。ここで、図6図7図8は本発明に係る橋梁用固定ベースの製造方法及び設置方法をケーブル固定ベース80aを例に説明する図である。
【0021】
先ず、予め設計された位置にピン孔22とホゾ突起26とが形成された、図3(a)に示すピン定着板20を製造し取得する(ピン定着板取得工程)。また、対応するピン定着板20のホゾ突起26の位置にホゾ受貫通孔32が形成された、図3(d)に示す基台板30を製造し取得する(基台板取得工程)。
【0022】
次に、基台板30のホゾ受貫通孔32にピン定着板20のホゾ突起26を嵌入して、図6(a)、(b)に示すように、ピン定着板20を基台板30に対し略垂直に保持する。このとき、ピン定着板20同士は互いに略平行とする。そして、基台板30とピン定着板20の接触部分、即ちホゾ受貫通孔32とホゾ突起26の接触部分を基台板30の表面側と裏面側とから溶接により固定する(溶接工程)。これにより、橋梁用固定ベースの基本構成部分が完成する。尚、ピン定着板20は、ホゾ突起26が基台板30のホゾ受貫通孔32に嵌入して固定しているため溶接時にずれが発生し難く高い位置精度で固定を行うことができる。また、ホゾ突起26がホゾ受貫通孔32に嵌入することで固定後も捻じれや曲げに対して強いことに加え、ホゾ突起26とホゾ受貫通孔32との間の摩擦も両者の固定強度の向上に寄与する。
【0023】
またさらに、ホゾ孔が貫通孔となっているため、前述のように基台板30の裏側からもピン定着板20と基台板30との溶接が行え、従来の表面側からのみの溶接よりも高い強度での固定を行うことができる。このとき、ホゾ突起26をホゾ受貫通孔32よりも短く形成することで、ホゾ受貫通孔32の裏面側にはホゾ突起26との寸法差による凹みが生じる。そして、裏面側からの溶接はこの凹み部分で溶接ビードAが基台板30の裏面から突出しないように行う。これにより、基台板30の裏面に溶接ビードAの盛り上がりを形成することなくピン定着板20の溶接を行うことができる。これにより、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【0024】
次に、橋梁用固定ベースがケーブル固定ベース80aの場合には、図6(c)、(d)に示すように、上面板29をピン定着板20の前後の受部28上に架け渡すように固定する。また、基台板30と上面板29との間を囲うように側板27を固定する。これにより、橋梁用固定ベースとしてのケーブル固定ベース80aが完成する。
【0025】
このようにして作製されたケーブル固定ベース80aは、例えば次のようにして設置される。先ず、図7(a)、(b)に示すように、地中深くに固定されたアンカー12を有する鉄筋コンクリート製の基礎50を構築する。この際、アンカー12の上端は基礎50から突出させる。
【0026】
次に、図7(c)、(d)に示すように、ケーブル固定ベース80aの下部アンカー孔12a及び上部アンカー孔12bに基礎50から突出したアンカー12の突出部分を挿し入れてケーブル固定ベース80aを設置する。このとき、基台板30には従来のように歪みや波打ちが存在しないため寸法誤差が少なく、アンカー12の突出部分をアンカー孔12a、12bに挿入しながら、ケーブル固定ベース80aを基礎50に容易に設置することができる。次に、上部アンカー孔12bから突出したアンカー12に固定キャップ14を被せて上面板29と固定する。これにより、アンカー12とケーブル固定ベース80aとが固定する。
【0027】
次に、図8(a)、(b)に示すように、少なくともピン孔部22aが露出するようにケーブル固定ベース80aの下部をコンクリート50aで埋設する。
【0028】
次に、主索3の輪状端5をピン定着板20のピン孔22の間に位置させる。次に、複数のピン孔22と輪状端5とに接続ピン24を通した後、接続ピン24がピン孔22から抜けないように固定する。これにより、図8(c)、(d)に示すように、ケーブル固定ベース80aを介してアンカー12と主索3とが接続する。
【0029】
以上のように、本発明に係る橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法では、ピン定着板20のホゾ突起26を基台板30のホゾ受貫通孔32に嵌入した上で、基台板30の裏表の両面から溶接を行う。このため、従来よりも短時間且つ少量の溶接材で強固な溶接を行うことができる。これにより、基台板30が必要以上に高温とならず熱膨張及び冷却時の収縮による反りや歪みの発生を防止することができる。このため、特に矯正作業を行わずとも複数のピン定着板20のピン孔22に接続ピン24を通すことができる。これにより、歪みの矯正作業が不要となり、作業の効率化と時間短縮、作業者への負担軽減、コスト削減を図ることができる。また、基台板30に歪みや矯正作業による波打ちが発生せず、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【0030】
また、ホゾ突起26をホゾ受貫通孔32よりも短く形成することで、ホゾ突起26をホゾ受貫通孔32に嵌入した際にホゾ受貫通孔32の裏面側にホゾ突起26との寸法差による凹みが生じる。そして、裏面側からの溶接はこの凹み部分で行うことで、溶接ビードAが基台板30の裏面から突出しないように溶接を行うことができる。これにより、基台板30の裏面に溶接ビードAの盛り上がりを形成することなくピン定着板20の溶接を行うことができる。これにより、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【0031】
尚、本例で示した橋梁用固定ベース(ケーブル固定ベース80a、上沓80b、下沓80c、ピン支承90)等の各部の構成は一例であり、形状、寸法、機構、デザイン等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、本例で示した橋梁用固定ベースの製造方法の各工程の内容、手順、順序等は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
20 ピン定着板
22 ピン孔
24 接続ピン
26 ホゾ突起
30 基台板
32 ホゾ受貫通孔
80a ケーブル固定ベース(橋梁用固定ベース)
80b 上沓(橋梁用固定ベース)
80c 下沓(橋梁用固定ベース)
【要約】
【課題】基台板30を歪めることなくピン定着板20を強固に固定することが可能な橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法を提供する。
【解決手段】この橋梁用固定ベース及び橋梁用固定ベースの製造方法では、ピン定着板20のホゾ突起26を基台板30のホゾ受貫通孔32に嵌入した上で、基台板の両面から溶接を行う。このため、従来よりも短時間且つ少量の溶接材で強固な溶接を行うことができ、基台板30の反りや歪みの発生を防止することができる。これにより、歪みの矯正作業が不要となり、作業の効率化と時間短縮、作業者への負担軽減、コスト削減を図ることができる。また、基台板30に歪みや矯正作業による波打ちが発生せず、橋梁用固定ベースをガタつきなく対象物に設置することができる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9