IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-医療機器 図1
  • 特許-医療機器 図2
  • 特許-医療機器 図3
  • 特許-医療機器 図4
  • 特許-医療機器 図5
  • 特許-医療機器 図6
  • 特許-医療機器 図7
  • 特許-医療機器 図8
  • 特許-医療機器 図9
  • 特許-医療機器 図10
  • 特許-医療機器 図11
  • 特許-医療機器 図12
  • 特許-医療機器 図13
  • 特許-医療機器 図14
  • 特許-医療機器 図15
  • 特許-医療機器 図16
  • 特許-医療機器 図17
  • 特許-医療機器 図18
  • 特許-医療機器 図19
  • 特許-医療機器 図20
  • 特許-医療機器 図21
  • 特許-医療機器 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/092 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018015535
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019025298
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017150210
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 偉師
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】栗山 卓也
【審判官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0059288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記第1操作線及び前記第2操作線は前記医療機器本体の軸方向の中間部および基端部では前記医療機器本体の周方向において互いに対向する位置に配置されており、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作線における当該第1操作線の最先端を含む前記軸方向における一部の区間である先端部と、前記第2操作線における当該第2操作線の最先端を含む前記軸方向における一部の区間である先端部と、の当該医療機器本体の周方向における離間距離は、前記第1操作線及び前記第2操作線の各々の前記先端部の全体に亘って各々の前記最先端まで、先端側に向けて徐々に縮小しており、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第1操作線と前記第2操作線とが一度に牽引され、
前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する操作受付部と、
を備え、
前記操作受付部の動力が前記移動機構を介して前記回転部材に伝達されることで、前記回転部材が、前記医療機器本体の基端部に対して相対的に前記牽引方向及び前記反対方向に移動し、
前記移動機構が前記回転部材を前記牽引方向に移動させることによって、当該回転部材は、前記第1操作線および前記第2操作線を一度に牽引し、前記第1操作線および前記第2操作線の双方が前記医療機器本体の前記先端部を牽引して屈曲させ、
前記回転部材は、前記移動機構に対して回転可能に軸支されており、当該回転部材は、前記第1操作線の張力と前記第2操作線の張力とが均衡する角度に自律的に回転可能となっている医療機器。
【請求項2】
前記屈曲操作部は、筐体を備え、
前記回転部材の全体が前記筐体に収容されている請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記回転部材は、前記第1操作線及び前記第2操作線が係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記回転部材の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記操作受付部は、回転操作可能に軸支されており、
前記移動機構は、
前記操作受付部と一体且つ同軸に設けられたピニオンと、
前記ピニオンの回転に連動して進退するラック部材と、
を備え、
前記ラック部材に前記回転部材が軸支されている請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線と、
前記第3操作線及び前記第4操作線の牽引により、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向への前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための第2屈曲操作部と、
を備え、
前記第2屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線と前記第4操作線とが一度に牽引され、
前記第2屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている第2回転部材であって、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されている第2回転部材と、
前記第2回転部材を前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引する第2牽引方向、及び、前記第2牽引方向に対する反対方向に移動させる第2移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する第2操作受付部と、
を備え、
前記第2操作受付部の動力が前記第2移動機構を介して前記第2回転部材に伝達されることで、前記第2回転部材が、前記医療機器本体の基端部に対して相対的に前記第2牽引方向及び前記第2牽引方向に対する反対方向に移動する請求項1から4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項6】
前記屈曲操作部は、筐体を備え、
前記回転部材の全体、及び、前記第2回転部材の全体が、前記筐体に収容されている請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記第2回転部材は、前記第3操作線及び前記第4操作線が係合する第2係合部を有し、
前記第2係合部は、前記第2回転部材の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている請求項5又は6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記第2操作受付部は、回転操作可能に軸支されており、
前記第2移動機構は、
前記第2操作受付部と一体且つ同軸に設けられた第2ピニオンと、
前記第2ピニオンの回転に連動して進退する第2ラック部材と、
を備え、
前記第2ラック部材に前記第2回転部材が軸支されている請求項5から7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項9】
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線を備え、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引し、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ前記医療機器本体の先端部を屈曲させることが可能である請求項1に記載の医療機器。
【請求項10】
長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記第1操作線及び前記第2操作線は前記医療機器本体の軸方向の中間部および基端部では前記医療機器本体の周方向において互いに対向する位置に配置されており、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作線と前記第2操作線との当該医療機器本体の周方向における離間距離は、先端側に向けて徐々に縮小しており、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第1操作線と前記第2操作線とが一度に牽引され、
前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する操作受付部と、
を備え、
前記操作受付部の動力が前記移動機構を介して前記回転部材に伝達されることで、前記回転部材が、前記医療機器本体の基端部に対して相対的に前記牽引方向及び前記反対方向に移動し、
前記移動機構が前記回転部材を前記牽引方向に移動させることによって、当該回転部材は、前記第1操作線および前記第2操作線を一度に牽引し、前記第1操作線および前記第2操作線の双方が前記医療機器本体の前記先端部を牽引して屈曲させ、
前記回転部材は、前記移動機構に対して回転可能に軸支されており、当該回転部材は、前記第1操作線の張力と前記第2操作線の張力とが均衡する角度に自律的に回転可能となっており、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線を備え、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引し、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ前記医療機器本体の先端部を屈曲させることが可能であり、
前記屈曲操作部は、
それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材及び第3回転部材を更に備え、
前記回転部材の回転軸は、前記第3回転部材における第1連結部位に連結されており、
前記第2回転部材の回転軸は、前記第3回転部材における第2連結部位に連結されており、
前記回転部材には、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されており、
前記第2回転部材には、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されており、
前記第3回転部材が一方向に回転することで、前記回転部材が牽引されるとともに、前記第1操作線及び前記第2操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が屈曲し、
前記第3回転部材が前記一方向に対する反対方向に回転することで、前記第2回転部材が牽引されるとともに、前記第3操作線及び前記第4操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ屈曲する医療機器。
【請求項11】
長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記第1操作線及び前記第2操作線は前記医療機器本体の軸方向の中間部および基端部では前記医療機器本体の周方向において互いに対向する位置に配置されており、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作線と前記第2操作線との当該医療機器本体の周方向における離間距離は、先端側に向けて徐々に縮小しており、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第1操作線と前記第2操作線とが一度に牽引され、
前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する操作受付部と、
を備え、
前記操作受付部の動力が前記移動機構を介して前記回転部材に伝達されることで、前記回転部材が、前記医療機器本体の基端部に対して相対的に前記牽引方向及び前記反対方向に移動し、
前記移動機構が前記回転部材を前記牽引方向に移動させることによって、当該回転部材は、前記第1操作線および前記第2操作線を一度に牽引し、前記第1操作線および前記第2操作線の双方が前記医療機器本体の前記先端部を牽引して屈曲させ、
前記回転部材は、前記移動機構に対して回転可能に軸支されており、当該回転部材は、前記第1操作線の張力と前記第2操作線の張力とが均衡する角度に自律的に回転可能となっており、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線を備え、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引し、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ前記医療機器本体の先端部を屈曲させることが可能であり、
前記屈曲操作部は、
それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材及び第3回転部材と、
前記第3回転部材と一体且つ同軸に設けられたピニオンと、
前記回転部材の回転軸が連結されているとともに、前記ピニオンの回転に連動して進退する第1ラック部材と、
前記第2回転部材の回転軸が連結されているとともに、前記ピニオンの回転に連動して前記第1ラック部材の進退方向とは常に逆方向に進退する第2ラック部材と、
を備え、
前記回転部材には、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されており、
前記第2回転部材には、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されており、
前記第3回転部材が一方向に回転することで、前記第1ラック部材を介して前記回転部材が牽引されるとともに、前記第1操作線及び前記第2操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が屈曲し、
前記第3回転部材が前記一方向に対する反対方向に回転することで、前記第2ラック部材を介して前記第2回転部材が牽引されるとともに、前記第3操作線及び前記第4操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ屈曲する医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部の屈曲操作が可能なカテーテル等の長尺な医療機器としては、操作線を有するタイプのものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のカテーテルにおいては、中央のルーメンの周囲に複数の中空管が配置されており、中央のルーメンを介して対向する2本の中空管の内部にそれぞれ操作線が挿通されている。同文献のカテーテルにおいては、操作線の先端は、当該カテーテルの先端部に固定されている。同文献のカテーテルは、操作線の後端を牽引操作することが可能に構成されている。これにより、操作線を選択して牽引することでカテーテルの先端部を屈曲させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-48711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテーテル等の医療機器においては、多様なニーズに応じた操作性が求められており、この観点で特許文献1の技術にはなお改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、多様なニーズに応じた操作性を好適に実現することが可能な構造のカテーテル等の医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する操作受付部と、
を備え、
前記操作受付部の動力が前記移動機構を介して前記回転部材に伝達されることで、前記回転部材が前記牽引方向及び前記反対方向に移動する医療機器を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多様なニーズに応じた操作性を好適に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る医療機器の医療機器本体における先端側の部分を示す縦断面図である。
図2図1のA-A線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図3図1のB-B線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図4図1のC-C線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は第1実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態に係る医療機器の屈曲操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
図7】第1実施形態に係る医療機器の屈曲操作部及びその近傍の部分を示す側面図である。
図8図8(a)は第1実施形態に係る医療機器の全体図であり、図8(b)は第1実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部が一方側に屈曲した状態の全体図である。
図9】第2実施形態に係る医療機器の医療機器本体における先端側の部分を示す縦断面図である。
図10図9のA-A線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図11図11(a)及び図11(b)は第2実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
図12】第3実施形態に係る医療機器の医療機器本体における先端側の部分を示す縦断面図である。
図13図12のA-A線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図14図12のB-B線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図15図12のC-C線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図16図16(a)、図16(b)、図16(c)及び図16(d)は第3実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
図17】第3実施形態に係る医療機器の屈曲操作部及びその近傍の部分を示す側面図である。
図18図18(a)は第3実施形態に係る医療機器の全体図であり、図18(b)は第3実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部が一方側に屈曲した状態の全体図であり、図18(c)は第3実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部が他方側に屈曲した状態の全体図である。
図19図19(a)及び図19(b)は第4実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部の模式的であり、このうち図19(a)は平面図、図19(b)は側面図である。
図20図20(a)及び図20(b)は第5実施形態に係る医療機器の医療機器本体の先端部の模式的であり、このうち図20(a)は平面図、図20(b)は側面図である。
図21】第6実施形態に係る医療機器の屈曲操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
図22】第7実施形態に係る医療機器の屈曲操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
本実施形態に係る医療機器の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0011】
本発明の実施形態を説明する際に用いられる用語は、特段の断りがない限り、以下のとおり定義される。
実施形態の説明において、先端部および基端部という用語を使用する場合がある。先端部とは、医療機器の各部において、医療機器の挿入先端側の端(遠位端)を含む所定の長さ領域をいう。また基端部とは、医療機器の各部において、医療機器の基端側の端(近位端)を含む所定の長さ領域をいう。
また、軸心とは、医療機器本体の長手方向に沿った中心軸を意味する。
医療機器の縦断面とは、医療機器を軸心に沿って切断した断面をいう。
医療機器の横断面とは、医療機器を軸心に対して直交する平面で切断した断面をいう。
【0012】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図8(b)を用いて第1実施形態を説明する。
なお、図1図2のA-A線に沿った断面図である。
図5(a)及び図5(b)は医療機器本体10の先端部11を図4の矢印A方向に視たときの屈曲動作を説明するための模式図であり、図5(a)は屈曲前の状態を示し、図5(b)は屈曲した状態を示す。
図7においては、部分的に屈曲操作部80の筐体86を破断して筐体86の内部の構造を示している。
図8(a)、図8(b)においては、医療機器本体10の長手方向における途中部分を破断して省略している。図8(a)及び図8(b)に示す医療機器本体10において、省略部分よりも基端側の部分と先端側の部分とでは、医療機器本体10の軸周りにおける回転位相が90度異なっている。
【0013】
図1から図8(b)のいずれかに示すように、本実施形態に係る医療機器100は、長尺な医療機器本体10と、医療機器本体10の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線41及び第2操作線42と、第1操作線41及び第2操作線42の牽引により医療機器本体10の先端部11の屈曲操作を行うための屈曲操作部80(図6図7)と、を備えている。
屈曲操作部80は、回転可能に軸支されている回転部材81であって第1操作線41の基端部と第2操作線42の基端部とが固定されている回転部材81と、回転部材81を第1操作線41及び第2操作線42を牽引する牽引方向及び当該牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、ユーザ(操作者)の操作を受け付けて動作する操作受付部(例えば、ダイヤル操作部84)と、を備えている。そして、操作受付部の動力が移動機構を介して回転部材81に伝達されることで、回転部材81が上記牽引方向及び上記牽引方向に対する反対方向に移動するようになっている。
【0014】
本実施形態によれば、回転部材81を上記牽引方向に移動させる操作をユーザが操作受付部に対して行うことにより、それぞれ回転部材81に固定されている第1操作線41と第2操作線42との双方を牽引することができる。
これにより、操作線の配置(本実施形態では第1操作線41及び第2操作線42)の配置に応じた範囲内で、多様なニーズに応じた操作性を好適に実現することができる。
【0015】
本実施形態の場合、第1操作線41と第2操作線42との双方を牽引することによって、図5(a)及び図5(b)に示すように、医療機器本体10の先端部11を屈曲させることができる。この際に、医療機器本体10の先端部11を第1操作線41により牽引する荷重と第2操作線42により牽引する荷重のバランスがとれるため、第1操作線41又は第2操作線42が近道をしようとして医療機器本体10が軸周りに回転する現象の発生を抑制できる。
よって、医療機器本体10が湾曲した血管等の体腔を通過した後で更に先端部11を屈曲させる際においても、より確実に先端部11を所望の向きに屈曲させることが可能である。
【0016】
より詳細には、本実施形態の場合、医療機器本体10の軸方向における中間部12及び基端部13(図6図7)では、第1操作線41と第2操作線42とが医療機器本体10の周方向において互いに離間して並列に延在している。
医療機器本体10の軸方向における先端部11では、第1操作線41と第2操作線42とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲し合流している。
ここで、第1操作線41と第2操作線42とが合流しているとは、第1操作線41の先端41aと第2操作線42の先端42aとが互いに近接していることをいう。第1操作線41の先端41aと第2操作線42の先端42aとは、後述する樹脂管20の肉厚よりも小さい距離で近接していることが好ましい。
【0017】
なお、本実施形態の場合のように、医療機器100が備える操作線の数が2であり、これら操作線が合流している場合、操作線の牽引により先端部11を屈曲させることができる方向は一方向となる。
【0018】
ここで、特許文献1のカテーテルでは、湾曲した血管等の体腔を通過した後で更に先端部を屈曲させる際には、湾曲の内側方向には容易に屈曲させることができるが、外側方向に屈曲させにくい。
なぜなら、湾曲のアウトコース側に位置する操作線を牽引してカテーテルの先端を外側方向に屈曲させようとすると、牽引される操作線の経路が短くなる方向へと、湾曲した血管内でカテーテルが当該カテーテルの軸周りに回転してしまうためである。
これに対し、本実施形態によれば、上述のように、より確実に先端部11を所望の向きに屈曲させることが可能である。
【0019】
医療機器100は、典型的にはカテーテルである。
【0020】
医療機器本体10は、内腔がルーメン21となっている樹脂管20を備えている。
本実施形態の場合、樹脂管20は、内腔がルーメン21となっている中空管形状の内層22と、内層22と同軸で内層22の外周囲に形成されている中空管形状の外層23と、を含む層構造となっている。内層22及び外層23は、それぞれ樹脂材料により構成されている。外層23の内周面は内層22の外周面に対して接合している。
内層22を構成する樹脂材料と外層23を構成する樹脂材料とは互いに異なっていてもよいし、互いに等しくてもよい。
医療機器本体10の外表層には、必要に応じて、親水性コートが形成されていてもよい。
ルーメン21は、医療機器本体10の先端から基端に亘って連続的に形成されており、医療機器本体10の先端と基端においてそれぞれ開口している。
【0021】
医療機器本体10は、更に、樹脂管20に埋設されている第1中空管31及び第2中空管32を備えている。第1中空管31には第1操作線41が挿通されており、第2中空管32には第2操作線42が挿通されている。
第1中空管31及び第2中空管32は、それぞれサブルーメンチューブであり、これらサブルーメンチューブの内腔はサブルーメンである。すなわち、各操作線(第1操作線41、第2操作線42)は、サブルーメンに挿通されている。
第1中空管31及び第2中空管32の内径は、ルーメン21の内径よりも小さい。
第1操作線41及び第2操作線42は、それぞれ金属又は樹脂などの細線により構成されている。
【0022】
なお、本実施形態の場合、医療機器本体10の先端部11の屈曲時にインコース側となる位置を避けて第1中空管31及び第2中空管32が配置されているため、先端部11の屈曲を容易に行うことができる。特に先端部11における基端側ほど、第1中空管31及び第2中空管32がインコース側から離間しているため、屈曲が容易になる。
【0023】
医療機器本体10の先端部11では、第1中空管31と第2中空管32とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。これにより、第1中空管31内の第1操作線41と第2中空管32内の第2操作線42とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。
なお、第1中空管31と第2中空管32とは互いに交差はしていない。また、第1操作線41と第2操作線42とは互いに交差はしていない。
【0024】
このように、医療機器本体10は、ルーメン21を有する樹脂管20と、樹脂管20に埋設されているとともに第1操作線41及び第2操作線42がそれぞれ挿通されている第1中空管31及び第2中空管32と、を含んで構成されており、医療機器本体10の軸方向における先端部11では、第1中空管31と第2中空管32とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。
【0025】
なお、医療機器本体10の軸方向において、第1操作線41と第2操作線42とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している領域を、湾曲領域15と称する。湾曲領域15の基端位置15aは、第1操作線41及び第2操作線42が互いの方向に向けて湾曲し始めている位置であり、湾曲領域15の先端位置15bは、第1操作線41及び第2操作線42が互いの方向に向けて湾曲し終わった位置である。
本実施形態の場合、湾曲領域15の先端位置15bは、第1操作線41及び第2操作線42の先端41a、42aが配置されている位置、又は、その近傍の位置である。
【0026】
第1操作線41の先端41aは、第1中空管31の先端31aから突出している。同様に、第2操作線42の先端42aは、第2中空管32の先端32aから突出している。
例えば、先端41aは先端31aの近傍に位置しており、先端42aは先端32aの近傍に位置している。
【0027】
医療機器本体10は、例えば、樹脂管20に埋設されているブレード層51を備えている。これにより、医療機器本体10がブレード層51によって補強されている。ブレード層51は複数本のワイヤを編組することにより構成されている。ブレード層51は、例えば、内層22の周囲に配置されている。
なお、第1中空管31及び第2中空管32は、例えば、ブレード層51よりも医療機器本体10の径方向外方(医療機器本体10の軸心から遠い位置)に配置されている。
【0028】
医療機器本体10は、更に、樹脂管20に埋設されている巻回ワイヤ52を備えている。巻回ワイヤ52は、ブレード層51、第1中空管31及び第2中空管32よりも医療機器本体10の径方向外方において巻回されている。巻回ワイヤ52は、例えば、第1中空管31及び第2中空管32をブレード層51に対して拘束している。
【0029】
湾曲領域15において、第1中空管31及び第2中空管32は、それぞれブレード層51の外周に沿って配置されている(図3図4参照)。
湾曲領域15において、医療機器本体10の周方向における第1中空管31と第2中空管32との距離が、先端側に向けて徐々に縮小しているとともに、医療機器本体10の周方向における第1操作線41と第2操作線42との距離が、先端側に向けて徐々に縮小している。
なお、第1中空管31及び第2中空管32は、例えば、湾曲領域15の基端位置15aよりも先端側において、それぞれ湾曲形状に癖付けされている。湾曲領域15の基端位置15aにおいて、第1中空管31及び第2中空管32がそれぞれブレード層51又は内層22の少なくとも一方に対して固定されていてもよいし、巻回ワイヤ52の先端が湾曲領域15の基端位置15aに配置されていて、基端位置15aよりも先端側では第1中空管31及び第2中空管32が巻回ワイヤ52により拘束されていなくてもよい。
【0030】
医療機器本体10の軸方向における中間部12及び基端部13では、第1操作線41と第2操作線42とが医療機器本体10の周方向において互いに対向する位置に配置されている。
本実施形態の場合、例えば、図2に示すように、医療機器本体10の中間部12においては、第1操作線41と第2操作線42とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、医療機器本体10の周方向において、互いに180度対向している。同様に、医療機器本体10の基端部13、及び、湾曲領域15の基端位置15aでも、医療機器本体10の周方向において、第1操作線41と第2操作線42とが互いに180度対向している。すなわち、中間部12、基端部13及び湾曲領域15の基端位置15aにおいて、医療機器本体10の周方向における第1操作線41と第2操作線42との位相差が180度である。
医療機器本体10の周方向における第1操作線41と第2操作線42との位相差は、湾曲領域15において先端側に向けて徐々に縮小しており、湾曲領域15の先端位置15bでは、例えば、当該位相差がほぼ零となっている。本実施形態の場合、第1操作線41及び第2操作線42は、湾曲領域15にて、それぞれ医療機器本体10の周方向において90度回転している。
ただし、第1操作線41と第2操作線42とが医療機器本体10の周方向において互いに対向する位置に配置されているとは、この例に限らず、第1操作線41と第2操作線42とが医療機器本体10の周方向において互いに120度以上離間していることを意味する。
【0031】
また、本実施形態の場合、医療機器本体10の中間部12、基端部13及び湾曲領域15の基端位置15aにおいて、第1中空管31と第2中空管32とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、医療機器本体10の周方向において、互いに180度対向している。すなわち、中間部12、基端部13及び湾曲領域15の基端位置15aにおいて、医療機器本体10の周方向における第1中空管31と第2中空管32との位相差が180度である。当該位相差は、湾曲領域15において先端側に向けて徐々に縮小している。
【0032】
医療機器本体10の先端部11には、放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカー70が設けられている。
マーカー70は、ルーメン21と同軸に、且つ、ルーメン21の周囲に配置されている。
マーカー70は、例えば、ブレード層51の周囲に配置されている。
【0033】
第1操作線41の先端41aは、例えば、スポット状の半田である第1固定部71によりマーカー70に対して固定されている。
同様に、第2操作線42の先端42aは、例えば、スポット状の半田である第1固定部71によりマーカー70に対して固定されている。
第1固定部71及び第2固定部72は、例えば、マーカー70における基端側の端部に配置されている。
【0034】
本実施形態の場合、第1操作線41の先端41aと第2操作線42の先端42aとが相互に連結されている。すなわち、第1操作線41と第2操作線42との先端どうしが連結されている。
より詳細には、第1固定部71と第2固定部72とが互いに隣り合って接している。つまり、第1固定部71と第2固定部72とが一体化している。
なお、先端41aと先端42aとが一の固定部によりマーカー70に対して固定されていてもよい。
【0035】
次に、図6及び図7を用いて、医療機器本体10の基端部に設けられたハブ90について説明する。
ハブ90は、当該ハブ90の基端から図示しない注入器(シリンジ)を挿入するための連結部93を有している。連結部93の外周には、シリンジを着脱可能に固定できるようにねじ溝が形成されている。
ハブ90の外周には、ハブ90の軸心を介して互いに対向する2枚の羽部92を有している。
ハブ90の先端部には、医療機器本体10の基端部が差し込み固定されている。これにより、医療機器本体10の内側のルーメン21と、ハブ90の内部空間とが相互に連通している。
ハブ90の軸心を中心として羽部92を回転させることにより、医療機器本体10の全体を軸回転させるトルク操作が可能である。
ハブ90の先端側には、後述する屈曲操作部80の筐体86が連接固定されている。
【0036】
次に、図6及び図7を用いて、医療機器100が備える屈曲操作部80について説明する。
【0037】
医療機器100は、第1操作線41及び第2操作線42の牽引により医療機器本体10の先端部11の屈曲操作を行うための屈曲操作部80を備えている。
【0038】
屈曲操作部80は、回転可能に軸支されている回転部材81であって第1操作線41及び第2操作線42が係合しているとともに第1操作線41の基端部と第2操作線42の基端部とが固定されている回転部材81と、回転部材81を第1操作線41及び第2操作線42を牽引する牽引方向、及び、当該牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、を備えて構成されている。
回転部材81は、例えば、プーリである。
ここで、本明細書において、ある部材が回転可能とは、360度以上回転可能な態様に限らず、360度未満の所定の角度範囲での揺動のみが可能な態様も含む。
【0039】
図6に示すように、回転部材81は、当該回転部材81の回転中心を中心とする円形状に形成された係合部を有し、この係合部に第1操作線41及び第2操作線42が係合している。なお、回転部材81の係合部は、円形状に限らず、円弧状であってもよい。
このように、回転部材81は、第1操作線41及び前記第2操作線が係合する係合部を有し、係合部は、回転部材81の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている。
【0040】
移動機構は、進退部材82とピニオン83とを含んで構成されている。
進退部材82は、回転部材81を回転可能に保持している保持部82aと、保持部82aから医療機器本体10の基端側に延出している棒状部82bと、を備えている。
棒状部82bには、ラック部82cが形成されている。
【0041】
屈曲操作部80は、更に、屈曲操作部80の本体部である筐体86と、筐体86に対して回転可能に軸支されているダイヤル操作部84と、ダイヤル操作部84と一体に設けられているピニオン83、筐体86の内面に設けられていて棒状部82bを当該棒状部82bの長手方向にガイドするガイド85(例えば前後一対のガイド85)と、を備えている。
医療機器本体10の基端部13は、筐体86の内部を通して、筐体86の基端側に導かれており、ハブ90の先端部に差し込み固定されている。
ダイヤル操作部84の回転軸は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に対して直交する方向に延在している。
ピニオン83は、ダイヤル操作部84の一方の面側に、ダイヤル操作部84と一体に形成されており、ダイヤル操作部84の回転軸と同軸に配置されている。
ピニオン83の外周の歯車は、進退部材82のラック部82cの歯車と噛み合っている。
ダイヤル操作部84は、少なくとも一部分が筐体86の外部に露出しており、医療機器100の操作を行う操作者がダイヤル操作部84を回転させる操作を筐体86の外部から行うことができるようになっている。
【0042】
筐体86には、回転部材81の全体が収容されている。すなわち、屈曲操作部80は、筐体86を備え、回転部材81の全体が筐体86に収容されている。
【0043】
第1操作線41及び第2操作線42は、筐体86内においてそれぞれ医療機器本体10から導出されている。
第1操作線41の基端部は、例えば、回転部材81に対して1周半巻回されて、当該第1操作線41の基端が第1固定部81a(図6)にて回転部材81に固定されている。
同様に、第2操作線42は、例えば、回転部材81に対して1周半巻回されて、当該第2操作線42の基端が第2固定部81b(図6)にて回転部材81に固定されている。
回転部材81に対する第1操作線41の巻回方向と第2操作線42の巻回方向とは互いに反対方向となっている。このため、回転部材81の回転角度は、第1操作線41の張力と第2操作線42の張力とが均衡する角度に自律的に調整されるようになっている。
【0044】
医療機器100の操作を行う操作者が筐体86又はハブ90を把持してダイヤル操作部84を回転させることにより、ダイヤル操作部84と一体のピニオン83が軸回転し、これに伴い、ラック部82cを有する進退部材82が、筐体86に対して相対的に、医療機器本体10の軸方向に前進(医療機器本体10の先端側に移動)又は後退(医療機器本体10の基端側に移動)する。
図6において、ダイヤル操作部84を時計回りに回転させることにより、進退部材82及び回転部材81が後退し、第1操作線41及び第2操作線42の双方が医療機器本体10の基端側に牽引される。
【0045】
このように、操作受付部(ダイヤル操作部84)は、回転操作可能に軸支されており、移動機構は、操作受付部と一体且つ同軸に設けられたピニオン83と、ピニオン83の回転に連動して進退するラック部材(進退部材82)と、を備え、ラック部材に回転部材81が軸支されている。
【0046】
このように、屈曲操作部80に対する操作により、第1操作線41と第2操作線42とが一度に牽引される。
ここで、第1操作線41と第2操作線42とが一度に牽引されるとは、第1操作線41と第2操作線42の双方がともに牽引されるタイミングが存在することを意味し、第1操作線41と第2操作線42とで牽引され始めのタイミングが同じになることに限らず、また、第1操作線41と第2操作線42とで牽引され終わりのタイミングが同じになることに限らない。
【0047】
例えば図8(a)に示すように医療機器本体10の先端部11が直線状の形状のときに、図8(b)においてダイヤル操作部84を時計回りに回転させると、第1操作線41及び第2操作線42の双方が医療機器本体10の基端側に牽引されるため、医療機器本体10の先端部11が一方向に屈曲する。
なお、図8(b)の状態からダイヤル操作部84を反時計回り回転させると、進退部材82及び回転部材81が前進し、第1操作線41及び第2操作線42の張力が緩められるため、医療機器本体10の先端部11が直線状に復帰することが許容される。
このように、本実施形態の場合、屈曲操作部80は、使用者による操作を回転機構(ダイヤル操作部84)で受け、この操作により回転機構に与えられた力を、ピニオン83及びラック(ラック部82c)により構成された変換機構によって、医療機器本体10の軸方向における進退運動に変換するように構成されている。
【0048】
次に、医療機器100の各部の材料の例を説明する。
内層22の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等の樹脂材料を用いることができる。
外層23の材料としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)等の樹脂材料を用いることができる。
第1中空管31及び第2中空管32の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等の樹脂材料を用いることができる。
ブレード層51を構成するワイヤの材料は、例えば、ステンレスやタングステンなどの金属材料が好ましいが、樹脂材料であってもよい。
巻回ワイヤ52を構成するワイヤの材料は、例えば、ステンレスやタングステンなどの金属材料が好ましいが、樹脂材料であってもよい。
【0049】
以上のような第1実施形態に係る医療機器100によれば、第1操作線41と第2操作線42との双方を牽引することによって医療機器本体10の先端部11を屈曲させることができ、その際に、医療機器本体10の先端部11を第1操作線41により牽引する荷重と第2操作線42により牽引する荷重のバランスがとれるため、第1操作線41又は第2操作線42が近道をしようとして医療機器本体10が軸周りに回転する現象の発生を抑制できる。
よって、より確実に医療機器本体10の先端部11を所望の向きに屈曲させることが可能である。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、図9から図11(b)を用いて第2実施形態に係る医療機器100を説明する。
図11(a)及び図11(b)は医療機器本体10の先端部11を図10の矢印A方向に視たときの屈曲動作を説明するための模式図であり、図11(a)は屈曲前の状態を示し、図11(b)は屈曲した状態を示す。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0051】
本実施形態の場合、湾曲領域15の先端(先端位置15b)と、第1操作線41及び第2操作線42の先端41a、42aとの間には、第1操作線41と第2操作線42とが互いに近接して並列に延在している並列領域16が形成されている。
【0052】
すなわち、医療機器本体10は、ルーメン21を有する樹脂管20を含んで構成されており、樹脂管20のルーメン21の周囲に第1操作線41及び第2操作線42が挿通されており、第1操作線41と第2操作線42とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している湾曲領域15の先端(先端位置15b)において、第1操作線41と第2操作線42とが樹脂管20の肉厚よりも小さい距離で近接しており、湾曲領域15の先端(先端位置15b)と、第1操作線41及び第2操作線42の先端41a、42aとの間には、第1操作線41と第2操作線42とが互いに近接して並列に延在している並列領域16が形成されている。
並列領域16においては、第1中空管31と第2中空管32とは互いに当接又は近接して並列に延在している。
【0053】
より詳細には、本実施形態の場合、医療機器100は、湾曲領域15の先端部において樹脂管20に埋設されている環状部材60を更に備えている。
環状部材60は、樹脂管20よりも高剛性に構成されていて樹脂管20の肉厚よりも小さい外径に形成されている(図10参照)。
そして、環状部材60に第1操作線41と第2操作線42とが挿通されている。
これにより、第1操作線41及び第2操作線42の経路の変動をより確実に抑制することができる。
【0054】
より詳細には、本実施形態の場合、環状部材60に第1中空管31と第2中空管32とが挿通されている。
すなわち、医療機器本体10は、樹脂管20に埋設されているとともに第1操作線41及び第2操作線42がそれぞれ挿通されている第1中空管31及び第2中空管32を含んで構成されており、環状部材60に第1中空管31と第2中空管32とが挿通されており、湾曲領域15では、第1中空管31と第2中空管32とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。
【0055】
環状部材60の材料は特に限定されないが、環状部材60は、例えば、金属又は硬質樹脂などにより構成することができる。
【0056】
本実施形態の場合も、第1操作線41と第2操作線42との双方を牽引することによって、図11(a)及び図11(b)に示すように、医療機器本体10の先端部11を屈曲させることができる。
このとき、湾曲領域15での屈曲角度よりも、並列領域16での屈曲角度の方がより急峻となる。
【0057】
一例として、医療機器本体10の軸方向において、湾曲領域15の基端(基端位置15a)から先端(先端位置15b)までの距離(図9に示す距離L1)よりも、湾曲領域15の先端(先端位置15b)から第1操作線41及び第2操作線42の先端41a、42aまでの距離(図9に示す距離L2)の方が長い。
このような構成によって、先端部11がより屈曲しやすいようにできる。
また、先端部11の屈曲は、主として並列領域16において生じるようにできる。このため、先端部11の屈曲角度にかかわらず、湾曲領域15における第1操作線41と第1中空管31との摩擦、及び第2操作線42と第2中空管32との摩擦を略一定に維持させることができるため、先端部11の屈曲角度にかかわらず、第1操作線41及び第2操作線42の牽引に要する力の大きさを略一定に維持させることができる。
【0058】
また、他の一例として、医療機器本体10の軸方向において、湾曲領域15の基端(基端位置15a)から先端(先端位置15b)までの距離(図9に示す距離L1)の方が、湾曲領域15の先端(先端位置15b)から第1操作線41及び第2操作線42の先端41a、42aまでの距離(図9に示す距離L2)よりも長い。
このような構成により、先端部11の屈曲性をある程度抑制することができる。
また、湾曲領域15における第1操作線41及び第2操作線42並びに第1中空管31及び第2中空管32の湾曲を緩やかにできるため、湾曲領域15における第1操作線41と第1中空管31との摩擦、及び第2操作線42と第2中空管32との摩擦を低減できる。
また、医療機器本体10の先端部11において第1中空管31と第2中空管32とが互いに近接して並進する長さ領域、つまり剛性が高い長さ領域が短くなるため、医療機器本体10の先端部11を屈曲させて分岐した体腔に進入させる際の良好な選択性(良好な血管選択性など)が得られる。
【0059】
なお、距離L1と距離L2とは同じでもよい。この場合、第1操作線41及び第2操作線42の牽引のスムーズさと、医療機器本体10の先端部11を屈曲させて分岐した体腔に進入させる際の良好な選択性と、をバランス良く得ることができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、図12から図18(c)を用いて第3実施形態に係る医療機器100を説明する。
図16(a)及び図16(b)は医療機器本体10の先端部11を図15の矢印A方向に視たときの屈曲動作を説明するための模式図であり、図16(a)は屈曲前の状態を示し、図16(b)は屈曲した状態を示す。
図16(c)及び図16(d)は医療機器本体10の先端部11を図15の矢印B方向に視たときの屈曲動作を説明するための模式図であり、図16(c)は屈曲前の状態を示し、図16(d)は屈曲した状態を示す。
図18(a)、図18(b)及び図18(c)においては、医療機器本体10の長手方向における途中部分を破断して省略している。図18(a)、図8(b)及び図18(c)に示す医療機器本体10において、省略部分よりも基端側の部分と先端側の部分とでは、医療機器本体10の軸周りにおける回転位相が90度異なっている。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第2実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第2実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0061】
本実施形態に係る医療機器100は、医療機器本体10の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線43及び第4操作線44を備えている。第3操作線43及び第4操作線44は、第1操作線41及び第2操作線42と同様に、それぞれ金属又は樹脂などの細線により構成されている。
【0062】
医療機器本体10は、更に、樹脂管20に埋設されている第3中空管33及び第4中空管34を備えている。第3中空管33には第3操作線43が挿通されており、第4中空管34には第4操作線44が挿通されている。
第3中空管33及び第4中空管34は、第1中空管31及び第2中空管32と同様のサブルーメンチューブであり、これらサブルーメンチューブの内腔はサブルーメンである。すなわち、各操作線(第3操作線43、第4操作線44)は、サブルーメンに挿通されている。
第3中空管33及び第4中空管34の内径は、ルーメン21の内径よりも小さい。
【0063】
本実施形態の場合、医療機器本体10の中間部12においては、第1中空管31と第3中空管33とが互いに近接又は当接して並列に延在しているとともに、第2中空管32と第4中空管34とが互いに近接又は当接して並列に延在している(図13参照)。
同様に、医療機器本体10の基端部においても、第1中空管31と第3中空管33とが互いに近接又は当接して並列に延在しているとともに、第2中空管32と第4中空管34とが互いに近接又は当接して並列に延在している。
【0064】
医療機器本体10の先端部11の湾曲領域15では、第3中空管33と第4中空管34とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。これにより、第3中空管33内の第3操作線43と第4中空管34内の第4操作線44とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲している。
湾曲領域15において第3中空管33及び第3操作線43が湾曲している方向は、第1中空管31及び第1操作線41が湾曲している方向と対称な方向である。
同様に、湾曲領域15において第4中空管34及び第4操作線44が湾曲している方向は、第2中空管32及び第2操作線42が湾曲している方向と対称な方向である。
なお、各中空管(第1中空管31、第2中空管32、第3中空管33及び第4中空管34)は、他の中空管と交差はしていない。また、各操作線(第1操作線41、第2操作線42、第3操作線43及び第4操作線44)は、他の操作線と交差はしていない。
【0065】
並列領域16においては、第1操作線41と第2操作線42とが互いに近接して並列に延在しているのと同様に、第3操作線43と第4操作線44とが互いに近接して並列に延在している。
また、並列領域16においては、第1中空管31と第2中空管32とが互いに当接又は近接して並列に延在しているのと同様に、第3中空管33と第4中空管34とが互いに当接又は近接して並列に延在している。
第3操作線43の先端43aは、第3中空管33の先端から突出している。同様に、第4操作線44の先端44aは、第4中空管34の先端から突出している。
【0066】
第3操作線43の先端43aは、例えば、スポット状の半田である第3固定部73によりマーカー70に対して固定されている(図15)。
同様に、第4操作線44の先端44aは、例えば、スポット状の半田である第4固定部74によりマーカー70に対して固定されている。
第3固定部73及び第4固定部74は、例えば、マーカー70における基端側の端部に配置されている。
第3固定部73及び第4固定部74が配置されている領域と、第1固定部71及び第2固定部72が配置されている領域とは、医療機器本体10の周方向において互いに対向している。
【0067】
本実施形態の場合、第3操作線43の先端43aと第4操作線44の先端44aとが相互に連結されている。すなわち、第3操作線43と第4操作線44との先端どうしが連結されている。
より詳細には、第3固定部73と第4固定部74とが互いに隣り合って接している。つまり、第3固定部73と第4固定部74とが一体化している。
なお、先端43aと先端44aとが一の固定部によりマーカー70に対して固定されていてもよい。
【0068】
図14に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、環状部材60の代わりに、湾曲領域15の先端部において樹脂管20に埋設されている第1環状部材61を備えている。第1環状部材61は、第2実施形態における環状部材60と同様のものであり、第1環状部材61に第1中空管31と第2中空管32とが挿通されている。
更に、本実施形態の場合、医療機器100は、湾曲領域15の先端部において樹脂管20に埋設されている第2環状部材62を備えている。第2環状部材62は、第1環状部材61と同様のものである。第2環状部材62に第3中空管33と第4中空管34とが挿通されている。
第1環状部材61と第2環状部材62とは、医療機器本体10の周方向において互いに対向して配置されている。
【0069】
本実施形態の場合も、第1操作線41と第2操作線42との双方を牽引することによって、図16(a)及び図16(b)に示すように、医療機器本体10の先端部11を一方向に屈曲させることができる。
更に、本実施形態の場合は、第3操作線43と第4操作線44との双方を牽引することによって、図16(c)及び図16(d)に示すように、医療機器本体10の先端部11を上記一方向に対する反対方向に屈曲させることができる。
【0070】
図17及び図18(a)に示すように、本実施形態の場合、屈曲操作部80は、第1操作線41及び第2操作線42の牽引により医療機器本体10の先端部11の屈曲操作を行うための第1屈曲操作部180と、第3操作線43及び第4操作線44の牽引により医療機器本体10の先端部11の屈曲操作を行うための第2屈曲操作部280と、を備えている。
【0071】
第1屈曲操作部180は、第1回転部材181、第1進退部材182、第1ピニオン183、第1ダイヤル操作部184及び第1ガイド185を備えている。第1回転部材181、第1進退部材182、第1ピニオン183、第1ダイヤル操作部184及び第1ガイド185は、第1実施形態で説明した回転部材81、進退部材82、ピニオン83、ダイヤル操作部84及びガイド85にそれぞれ相当する。
したがって、第1進退部材182は、保持部82a、棒状部82b及びラック部82cにそれぞれ相当する第1保持部182a、第1棒状部182b及び第1ラック部182cを備えている。
第1実施形態において回転部材81に対して第1操作線41及び第2操作線42が巻回及び固定されているのと同様に、第1回転部材181には、第1操作線41及び第2操作線42が巻回及び固定されている。
【0072】
第2屈曲操作部280は、第2回転部材281、第2進退部材282、第2ピニオン283、第2ダイヤル操作部284及び第2ガイド285を備えている。第2回転部材281、第2進退部材282、第2ピニオン283、第2ダイヤル操作部284及び第2ガイド285は、第1回転部材181、第1進退部材182、第1ピニオン183、第1ダイヤル操作部184及び第1ガイド185と同様のものである。
第2進退部材282は、第1保持部182a、第1棒状部182b及び第1ラック部182cとそれぞれ同様の第2保持部282a、第2棒状部282b及び第2ラック部282cを備えている。
第1回転部材181に対して第1操作線41及び第2操作線42が巻回及び固定されているのと同様に、第2回転部材281には、第3操作線43及び第4操作線44が巻回及び固定されている。
例えば、第2屈曲操作部280は、第1屈曲操作部180に対して、図17において上下対称に配置されている。
【0073】
本実施形態の場合、第1ダイヤル操作部184を回転させて第1進退部材182及び第1回転部材181を後退させることにより、第1操作線41及び第2操作線42を牽引して、医療機器本体10の先端部11を一方向に屈曲させることができる(図18(b))。
また、第2ダイヤル操作部284を回転させて第2進退部材282及び第2回転部材281を後退させることにより、第3操作線43及び第4操作線44を牽引して、医療機器本体10の先端部11を上記一方向に対する反対方向に屈曲させることができる(図18(c))。
【0074】
このように、本実施形態の場合、医療機器100は、第3操作線43及び第4操作線44の牽引により、第1操作線41及び第2操作線42の牽引による医療機器本体10の先端部11の屈曲の方向とは異なる方向への医療機器本体10の先端部11の屈曲操作を行うための第2屈曲操作部280を備えている。
医療機器本体10の軸方向における中間部12及び基端部では、第3操作線43と第4操作線44とは医療機器本体10の周方向において互いに離間して並列に延在しており、医療機器本体10の軸方向における先端部11では、第3操作線43と第4操作線44とが先端側に向けて徐々に医療機器本体10の周方向において互いに近づくように湾曲し合流している。
【0075】
また、第2屈曲操作部280に対する操作により、第3操作線43と第4操作線44とが一度に牽引される。
【0076】
第2屈曲操作部280は、回転可能に軸支されている第2回転部材281であって、第3操作線43の基端部と第4操作線44の基端部とが固定されている第2回転部材281と、第2回転部材281を第3操作線43及び第4操作線44を牽引する第2牽引方向及び第2牽引方向に対する反対方向に移動させる第2移動機構と、ユーザの操作を受け付けて動作する第2操作受付部(第2ダイヤル操作部284)と、を備えている。そして、第2操作受付部の動力が第2移動機構を介して第2回転部材281に伝達されることで、第2回転部材281が第2牽引方向及び第2牽引方向に対する反対方向に移動するようになっている。
なお、本実施形態の場合、第2牽引方向は、上記牽引方向と同方向である。
より詳細には、第2回転部材281には、第3操作線43及び第4操作線44が係合しているとともに第3操作線43の基端部と第4操作線44の基端部とが固定されている。
【0077】
上記のように、屈曲操作部80は、筐体86を備えている。そして、回転部材(第1回転部材181)の全体、及び、第2回転部材281の全体が、筐体86に収容されている。
【0078】
第2回転部材281は、第3操作線43及び第4操作線44が係合する第2係合部を有し、第2係合部は、第2回転部材281の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている。
【0079】
第2操作受付部(第2ダイヤル操作部284)は、回転操作可能に軸支されており、第2移動機構は、第2操作受付部と一体且つ同軸に設けられた第2ピニオン283と、第2ピニオン283の回転に連動して進退する第2ラック部材(第2進退部材282)と、を備え、第2ラック部材に第2回転部材281が軸支されている。
【0080】
〔第4実施形態〕
次に、図19(a)及び図19(b)を用いて第4実施形態に係る医療機器100を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0081】
本実施形態の場合、医療機器本体10の先端部11の周方向において、第1操作線41と第2操作線42との間の領域、又は、医療機器本体10の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域には、当該医療機器本体10の屈曲性が局部的に高い易屈曲部110が形成されている。
これにより、先端部11の屈曲性が向上するので、屈曲操作時に第1操作線41及び第2操作線42に作用する張力を低減できる。よって、第1操作線41又は第2操作線42が近道をしようとして医療機器本体10が軸周りに回転する現象の発生をより一層抑制できる。
【0082】
より詳細には、図19(b)に示すように、医療機器本体10の先端部11の周方向において、第1操作線41と第2操作線42との間の領域と、医療機器本体10の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域との双方に、易屈曲部110が形成されている。
これにより、先端部11の屈曲性が一層向上する。
【0083】
易屈曲部110は、医療機器本体10の外面側に形成された切欠形状部111を含んで構成されている。
切欠形状部111は、例えば、図19(b)に示すように弧状に抉れた形状とすることができる。
これにより、先端部11をより急峻に屈曲させることができる。
【0084】
〔第5実施形態〕
次に、図20(a)及び図20(b)を用いて第5実施形態に係る医療機器100を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0085】
本実施形態の場合、医療機器本体10の先端部11の周方向において、第1操作線41と第2操作線42との間の領域、又は、医療機器本体10の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域には、当該医療機器本体10の屈曲性が局部的に高い易屈曲部110が形成されている。
これにより、先端部11の屈曲性が向上するので、屈曲操作時に第1操作線41及び第2操作線42に作用する張力を低減できる。よって、第1操作線41又は第2操作線42が近道をしようとして医療機器本体10が軸周りに回転する現象の発生をより一層抑制できる。
【0086】
より詳細には、図20(b)に示すように、医療機器本体10の先端部11の周方向において、第1操作線41と第2操作線42との間の領域に、易屈曲部110が形成されており、医療機器本体10の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域には、易屈曲部110が形成されていない。
ただし、易屈曲部110は、医療機器本体10の先端部11の周方向において、第1操作線41と第2操作線42との間の領域と、医療機器本体10の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域との双方に形成されていてもよい。
【0087】
易屈曲部110は、医療機器本体10の外面側に形成された切欠形状部111を含んで構成されている。
本実施形態の場合、医療機器本体10は、当該医療機器本体10の軸方向において相互に隣接して配置された複数の切欠形状部111を有する。これら切欠形状部111は、医療機器本体10の周方向に長尺であり、断面形状が楔形である。
本実施形態の場合、医療機器本体10の先端部11は、屈曲の初期段階では容易に屈曲するが、ある程度の屈曲角度に達すると、楔形の傾斜面どうしが接することでそれ以上の屈曲はしにくくなる(ある程度の屈曲角度に達すると剛性が高くなる)。
このため、医療機器本体10の先端部11は、体腔に押し込まれる際において軸方向の圧縮に対する耐変形性が良好となるため、医療機器100の血管選択性が良好となる。
【0088】
〔第6実施形態〕
次に、図21を用いて第6実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で上記の第3実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では上記の第3実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0089】
本実施形態の場合、以下に説明するように、屈曲操作部80の構成が、上記の第3実施形態と相違している。
本実施形態の場合、屈曲操作部80は、筐体86と、第1回転部材181(回転部材)と、第2回転部材281と、ダイヤル操作部194(第3回転部材)と、第1回転部材181とダイヤル操作部194とを相互に連結している第1連結ワイヤ192と、第2回転部材281とダイヤル操作部194とを相互に連結している第2連結ワイヤ193と、を備えている。
【0090】
第1回転部材181及び第2回転部材281の各々は、例えば、プーリである。
第1回転部材181の回転軸は、例えば、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向(図21における左右方向)に対して直交する方向に延在している。
第1回転部材181の回転軸は、当該回転軸の軸周りに回転可能、且つ、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向(図21における左右方向)において筐体86に対して相対的に移動可能に、筐体86によって保持されている。例えば、筐体86に形成された長孔(不図示)によって、第1回転部材181の回転軸が軸支されている。
同様に、第2回転部材281の回転軸は、例えば、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に対して直交する方向に延在している。第2回転部材281の回転軸は、当該回転軸の軸周りに回転可能、且つ、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向において筐体86に対して相対的に移動可能に、筐体86によって保持されている。
一例として、第1回転部材181の回転軸と第2回転部材281の回転軸とは、互いに平行となっている。ただし、これら回転軸は、互いに平行ではなくてもよい。
【0091】
第1操作線41、第2操作線42、第3操作線43及び第4操作線44は、筐体86内においてそれぞれ医療機器本体10から導出されている。
第1操作線41の基端部は、例えば、第1回転部材181に対して1周半巻回されて、当該第1操作線41の基端が第1回転部材181に固定されている。同様に、第2操作線42は、例えば、第1回転部材181に対して1周半巻回されて、当該第2操作線42の基端が第1回転部材181に固定されている。第1回転部材181に対する第1操作線41の巻回方向と第2操作線42の巻回方向とは互いに反対方向となっている。このため、第1回転部材181の回転角度は、第1操作線41の張力と第2操作線42の張力とが均衡する角度に自律的に調整されるようになっている。
第3操作線43の基端部は、例えば、第2回転部材281に対して1周半巻回されて、当該第3操作線43の基端が第2回転部材281に固定されている。同様に、第4操作線44は、例えば、第2回転部材281に対して1周半巻回されて、当該第4操作線44の基端が第2回転部材281に固定されている。第2回転部材281に対する第3操作線43の巻回方向と第4操作線44の巻回方向とは互いに反対方向となっている。このため、第2回転部材281の回転角度は、第3操作線43の張力と第4操作線44の張力とが均衡する角度に自律的に調整されるようになっている。
【0092】
ダイヤル操作部194は、筐体86に対して回転可能に軸支されている。ダイヤル操作部194の回転軸は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に対して直交する方向に延在している。
一例として、ダイヤル操作部194の回転軸は、第1回転部材181の回転軸及び第2回転部材281の回転軸に対して平行となっている。ただし、ダイヤル操作部194の回転軸は、第1回転部材181の回転軸及び第2回転部材281の回転軸に対して平行でなくてもよい。
ダイヤル操作部194は、少なくとも一部分が筐体86の外部に露出しており、医療機器100の操作を行う操作者がダイヤル操作部194を回転させる操作を筐体86の外部から行うことができるようになっている。
【0093】
ダイヤル操作部194は、例えば、円盤状に形成された本体部と、この本体部の一方の面側に固定されている巻取部191と、を備えている。
巻取部191は、例えば、円筒状のボビンである。巻取部191は、ダイヤル操作部194の回転軸と同軸に配置されている。
【0094】
第1連結ワイヤ192の先端は、第1回転部材181の回転軸に連結されている。第1連結ワイヤ192の基端部は、例えば、巻取部191に対して1周半巻回されて、当該第1連結ワイヤ192の基端が第1連結部位195において巻取部191に固定されている。
同様に、第2連結ワイヤ193の先端は、第2回転部材281の回転軸に連結されている。第2連結ワイヤ193の基端部は、例えば、巻取部191に対して1周半巻回されて、当該第2連結ワイヤ193の基端が第2連結部位196において巻取部191に固定されている。
巻取部191に対する第1連結ワイヤ192の巻回方向と第2連結ワイヤ193の巻回方向とは互いに反対方向となっている。
【0095】
本実施形態の場合、医療機器100の操作を行う操作者が筐体86又はハブ90を把持してダイヤル操作部194を回転させることにより、第1連結ワイヤ192又は第2連結ワイヤ193が選択的に巻取部191に巻き取られるため、第1回転部材181又は第2回転部材281が選択的に基端側に牽引される。
すなわち、ダイヤル操作部194を図21において時計回りに回転させる操作が行われたときには、第1連結ワイヤ192が巻取部191に巻き取られるため、第1回転部材181が基端側に牽引される。よって、第1操作線41及び第2操作線42の双方が医療機器本体10の基端側に牽引されるので、医療機器本体10の先端部11が一方向に屈曲する。
また、ダイヤル操作部194を図21において反時計回りに回転させる操作が行われたときには、第2連結ワイヤ193が巻取部191に巻き取られるため、第2回転部材281が基端側に牽引される。よって、第3操作線43及び第4操作線44の双方が医療機器本体10の基端側に牽引されるので、医療機器本体10の先端部11が上記一方向に対する反対方向に屈曲する。
つまり、1個のダイヤル操作部194に対する操作によって、第1操作線41及び第2操作線42の双方を牽引する操作と、第3操作線43及び第4操作線44の双方を牽引する操作と、を行うことができる。
【0096】
このように、本実施形態に係る医療機器100は、医療機器本体10の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線43及び第4操作線44を備え、屈曲操作部80に対する操作により、第3操作線43及び第4操作線44を牽引し、第1操作線41及び第2操作線42の牽引による医療機器本体10の先端部11の屈曲の方向とは異なる方向へ医療機器本体10の先端部11を屈曲させることが可能である。
【0097】
より詳細には、屈曲操作部80は、回転部材(第1回転部材181)の他に、それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材281及び第3回転部材(ダイヤル操作部194)を更に備え、回転部材の回転軸は、第3回転部材における第1連結部位195に連結されており、第2回転部材281の回転軸は、第3回転部材における第2連結部位196に連結されている。
また、回転部材には、第1操作線41の基端部と第2操作線42の基端部とが固定されており、第2回転部材281には、第3操作線43の基端部と第4操作線44の基端部とが固定されている。
そして、第3回転部材が一方向に回転することで、回転部材が牽引されるとともに、第1操作線41及び第2操作線42が牽引されて、医療機器本体10の先端部11が屈曲し、第3回転部材が上記一方向に対する反対方向に回転することで、第2回転部材281が牽引されるとともに、第3操作線43及び第4操作線44が牽引されて、医療機器本体10の先端部11が、第1操作線41及び第2操作線42の牽引による医療機器本体10の先端部11の屈曲の方向とは異なる方向(例えば反対方向)へ屈曲する。
【0098】
なお、第6実施形態では、回転部材(第1回転部材181)の回転軸がワイヤ(第1連結ワイヤ192)を介して第3回転部材(ダイヤル操作部194)に連結されているとともに、第2回転部材281の回転軸がワイヤ(第2連結ワイヤ193)を介して第3回転部材に連結されている例を説明したが、本発明は、この例に限らない。
例えば、回転部材の回転軸が第3回転部材における第1連結部位に対して直に軸支されているとともに、第2回転部材281の回転軸が第3回転部材における第2連結部位に対して直に軸支されていてもよい。この場合、第3連結部材は、上記の巻取部191を備える必要がない。
【0099】
〔第7実施形態〕
次に、図22を用いて第7実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で上記の第6実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では上記の第6実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0100】
本実施形態の場合、以下に説明するように、屈曲操作部80の構成が、上記の第6実施形態と相違している。
本実施形態の場合、屈曲操作部80は、それぞれ図21に示す巻取部191、第1連結ワイヤ192及び第2連結ワイヤ193を備えていない。その代わりに、屈曲操作部80は、図22に示すピニオン197、第1ラック部材198、第2ラック部材199及びガイド200を備えている。
【0101】
ピニオン197は、円盤状のダイヤル操作部194の一方の面に、ダイヤル操作部194と一体に形成されており、ダイヤル操作部194の回転軸と同軸に配置されている。
【0102】
第1ラック部材198は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に延在している棒状の部材である。第1ラック部材198の先端部には、第1回転部材181(回転部材)が回転可能に軸支されている。第1ラック部材198の一方の側面には、ピニオン197の外周の歯車と噛み合っているラックが形成されている。
屈曲操作部80は、例えば、第1ラック部材198に対応して設けられた前後一対のガイド200を備えている。これらガイド200によって、第1ラック部材198は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に直線状に進退可能にガイドされている。
【0103】
同様に、第2ラック部材199は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に延在している棒状の部材である。第2ラック部材199の先端部には、第2回転部材281が回転可能に軸支されている。第2ラック部材199の一方の側面には、ピニオン197の外周の歯車と噛み合っているラックが形成されている。
屈曲操作部80は、例えば、第2ラック部材199に対応して設けられた前後一対のガイド200を備えている。これらガイド200によって、第2ラック部材199は、筐体86内における医療機器本体10の軸心方向に直線状に進退可能にガイドされている。
【0104】
本実施形態の場合も、第1回転部材181に対する第1操作線41及び第2操作線42の係合及び固定のされ方、並びに、第2回転部材281に対する第3操作線43及び第4操作線44の係合及び固定のされ方は、第6実施形態と同様である。
このため、第1回転部材181の回転角度は、第1操作線41の張力と第2操作線42の張力とが均衡する角度に自律的に調整されるようになっているとともに、第2回転部材281の回転角度は、第3操作線43の張力と第4操作線44の張力とが均衡する角度に自律的に調整されるようになっている。
【0105】
本実施形態の場合、医療機器100の操作を行う操作者が筐体86又はハブ90を把持してダイヤル操作部194を回転させることにより、それぞれピニオン197と噛み合っている第1ラック部材198又は第2ラック部材199が選択的に基端側に移動する。
すなわち、ダイヤル操作部194を図22において時計回りに回転させる操作が行われたときには、第1ラック部材198が基端側に移動(後退)するため、第1回転部材181が基端側に牽引される。よって、第1操作線41及び第2操作線42の双方が医療機器本体10の基端側に牽引されるので、医療機器本体10の先端部11が一方向に屈曲する。
また、ダイヤル操作部194を図22において反時計回りに回転させる操作が行われたときには、第2ラック部材199が基端側に移動(後退)するため、第2回転部材281が基端側に牽引される。よって、第3操作線43及び第4操作線44の双方が医療機器本体10の基端側に牽引されるので、医療機器本体10の先端部11が上記一方向に対する反対方向に屈曲する。
なお、第1ラック部材198が基端側に移動する際には、第2ラック部材199が先端側に移動し、第2ラック部材199が基端側に移動する際には、第1ラック部材198が先端側に移動する。
【0106】
このように、本実施形態の場合、屈曲操作部80は、回転部材(第1回転部材181)の他に、それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材281及び第3回転部材(ダイヤル操作部194)と、第3回転部材と一体且つ同軸に設けられたピニオン197と、第1回転部材181の回転軸が連結されているとともにピニオン197の回転に連動して進退する第1ラック部材198と、第2回転部材281の回転軸が連結されているとともにピニオン197の回転に連動して第1ラック部材198の進退方向とは常に逆方向に進退する第2ラック部材199と、を備えている。
回転部材(第1回転部材181)には、第1操作線41の基端部と第2操作線42の基端部とが固定されており、第2回転部材281には、第3操作線43の基端部と第4操作線44の基端部とが固定されている。
第3回転部材(ダイヤル操作部194)が一方向に回転することで、第1ラック部材198を介して第1回転部材181が牽引されるとともに、第1操作線41及び第2操作線42が牽引されて、医療機器本体10の先端部11が屈曲する。
また、第3回転部材が上記一方向に対する反対方向に回転することで、第2ラック部材199を介して第2回転部材281が牽引されるとともに、第3操作線43及び第4操作線44が牽引されて、医療機器本体10の先端部11が、第1操作線41及び第2操作線42の牽引による医療機器本体10の先端部11の屈曲の方向とは異なる方向へ屈曲する。
【0107】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0108】
上記の第1実施形態では、屈曲操作部80の回転機構がダイヤル操作部84である例を説明したが、屈曲操作部80の回転機構は、ダイヤル操作部84以外(例えば回転式のレバーなど)であってもよい。
また、上記の第1実施形態では、屈曲操作部80の変換機構がラック(ラック部82c)とピニオン83とを備えて構成されている例を説明したが、屈曲操作部80は、その他の変換機構(例えば、カム、リンク機構、又は、ピンと溝付きガイドなど)を備えて構成されていてもよい。
他の実施形態でも同様である。
【0109】
また、上記の各実施形態では第1操作線41と第2操作線42とが別個の細線により構成されている例を説明したが、第1操作線41と第2操作線42とは1本の細線の一部分ずつにより構成されていても良い。すなわち、当該1本の細線が先端41a、42aにおいて折り返されていても良い。
同様に、上記においては第3操作線43と第4操作線44とが別個の細線により構成されている例を説明したが、第3操作線43と第4操作線44とは1本の細線の一部分ずつにより構成されていても良い。すなわち、当該1本の細線が先端43a、44aにおいて折り返されていても良い。
【0110】
また、上記の各実施形態では、第1操作線41の基端部と第2操作線42の基端部とが個別に屈曲操作部80に固定されている例を説明したが、第1操作線41の基端と第2操作線42の基端とが相互に繋がっていて屈曲操作部80においてループ(例えば回転部材81に係合している部分でループ)していてもよい。
同様に、上記においては第3操作線43の基端部と第4操作線44の基端部とが個別に第2屈曲操作部280に固定されている例を説明したが、第3操作線43の基端と第4操作線44の基端とが相互に繋がっていて第2屈曲操作部280においてループ(例えば第2回転部材281に係合している部分でループ)していてもよい。
【0111】
上記の第3実施形態(図17図18(a)、図18(b)、図18(c))では、第1ダイヤル操作部184と第2ダイヤル操作部284とがそれらの板面に対して直交する方向において互いに重なる配置とされており、第1ダイヤル操作部184の回転軸と第2ダイヤル操作部284の回転軸とが互いに同軸に配置されている例を説明したが、本発明は、この例に限らない。
例えば、第1ダイヤル操作部184の回転軸と第2ダイヤル操作部284の回転軸とは、互いに同軸に配置されていなくてもよい。例えば、第1ダイヤル操作部184と第2ダイヤル操作部284とが医療機器本体10の軸方向において互いに異なる位置に配置されていてもよい。
【0112】
また、上記の第1実施形態では、医療機器100が備える操作線の数が2であり、これら操作線が合流している例を説明し、上記の第3実施形態では、医療機器100が備える操作線の数が4であり、2つずつの操作線が合流している例を説明した。
ただし、本発明は、この例に限らず、医療機器100は、2本の操作線が、それらの先端から基端に亘って並列に延在していて、操作線どうしが合流していない構成であってもよい。この場合、2本の操作線は、医療機器本体10の周方向において互いに対向する位置に配置されている。この場合には、例えば、オーバーザワイヤと呼ばれる手技を用いて医療機器100を体腔内に侵入させた状態で、2本の操作線を牽引することで医療機器本体10を剛直化させて、医療機器本体10を体腔の屈曲に沿った屈曲形状に保持させることができる。なお、2本の操作線がそれらの先端から基端に亘って並列に延在している場合、医療機器100は、操作線により先端部11の屈曲操作が可能な能動カテーテルであってもよいし、操作線が専ら医療機器本体10を剛直化させるために用いられるタイプのものであってもよい。医療機器100が能動カテーテルの場合、上記のように医療機器本体10を剛直化させた状態で、更に先端部11を屈曲させることにより、操作線が近道をしようとして医療機器本体10が軸周りに回転する現象の発生を抑制できる。この場合も、操作線の数が4本の場合には、このうち一対の操作線どうしが、医療機器本体10の周方向において互いに対向する位置に配置され、他の一対の操作線どうしも、医療機器本体10の周方向において互いに対向する位置に配置される。そして、2本又は4本の操作線を一度に牽引することにより、医療機器本体10を剛直化させてその形状を保持させたり、更にその状態で先端部11を屈曲させたりすることができる。
【0113】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0114】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
<1>長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する操作受付部と、
を備え、
前記操作受付部の動力が前記移動機構を介して前記回転部材に伝達されることで、前記回転部材が前記牽引方向及び前記反対方向に移動する医療機器。
<2>前記屈曲操作部は、筐体を備え、
前記回転部材の全体が前記筐体に収容されている<1>に記載の医療機器。
<3>前記回転部材は、前記第1操作線及び前記第2操作線が係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記回転部材の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている<1>又は<2>に記載の医療機器。
<4>前記操作受付部は、回転操作可能に軸支されており、
前記移動機構は、
前記操作受付部と一体且つ同軸に設けられたピニオンと、
前記ピニオンの回転に連動して進退するラック部材と、
を備え、
前記ラック部材に前記回転部材が軸支されている<1>から<3>のいずれか一項に記載の医療機器。
<5>前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線と、
前記第3操作線及び前記第4操作線の牽引により、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向への前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための第2屈曲操作部と、
を備え、
前記第2屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている第2回転部材であって、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されている第2回転部材と、
前記第2回転部材を前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引する第2牽引方向、及び、前記第2牽引方向に対する反対方向に移動させる第2移動機構と、
ユーザの操作を受け付けて動作する第2操作受付部と、
を備え、
前記第2操作受付部の動力が前記第2移動機構を介して前記第2回転部材に伝達されることで、前記第2回転部材が前記第2牽引方向及び前記第2牽引方向に対する反対方向に移動する<1>から<4>のいずれか一項に記載の医療機器。
<6>前記屈曲操作部は、筐体を備え、
前記回転部材の全体、及び、前記第2回転部材の全体が、前記筐体に収容されている<5>に記載の医療機器。
<7>前記第2回転部材は、前記第3操作線及び前記第4操作線が係合する第2係合部を有し、
前記第2係合部は、前記第2回転部材の回転中心を中心とする円形状ないしは円弧状に形成されている<5>又は<6>に記載の医療機器。
<8>前記第2操作受付部は、回転操作可能に軸支されており、
前記第2移動機構は、
前記第2操作受付部と一体且つ同軸に設けられた第2ピニオンと、
前記第2ピニオンの回転に連動して進退する第2ラック部材と、
を備え、
前記第2ラック部材に前記第2回転部材が軸支されている<5>から<7>のいずれか一項に記載の医療機器。
<9>前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線を備え、
前記屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線及び前記第4操作線を牽引し、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ前記医療機器本体の先端部を屈曲させることが可能である<1>に記載の医療機器。
<10>前記屈曲操作部は、
それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材及び第3回転部材を更に備え、
前記回転部材の回転軸は、前記第3回転部材における第1連結部位に連結されており、
前記第2回転部材の回転軸は、前記第3回転部材における第2連結部位に連結されており、
前記回転部材には、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されており、
前記第2回転部材には、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されており、
前記第3回転部材が一方向に回転することで、前記回転部材が牽引されるとともに、前記第1操作線及び前記第2操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が屈曲し、
前記第3回転部材が前記一方向に対する反対方向に回転することで、前記第2回転部材が牽引されるとともに、前記第3操作線及び前記第4操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ屈曲する<9>に記載の医療機器。
<11>前記屈曲操作部は、
それぞれ回転可能に軸支されている第2回転部材及び第3回転部材と、
前記第3回転部材と一体且つ同軸に設けられたピニオンと、
前記回転部材の回転軸が連結されているとともに、前記ピニオンの回転に連動して進退する第1ラック部材と、
前記第2回転部材の回転軸が連結されているとともに、前記ピニオンの回転に連動して前記第1ラック部材の進退方向とは常に逆方向に進退する第2ラック部材と、
を備え、
前記回転部材には、前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されており、
前記第2回転部材には、前記第3操作線の基端部と前記第4操作線の基端部とが固定されており、
前記第3回転部材が一方向に回転することで、前記第1ラック部材を介して前記回転部材が牽引されるとともに、前記第1操作線及び前記第2操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が屈曲し、
前記第3回転部材が前記一方向に対する反対方向に回転することで、前記第2ラック部材を介して前記第2回転部材が牽引されるとともに、前記第3操作線及び前記第4操作線が牽引されて、前記医療機器本体の先端部が、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向へ屈曲する<9>に記載の医療機器。
【0115】
更に、本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)長尺な医療機器本体と、
前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第1操作線及び第2操作線と、
前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引により前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための屈曲操作部と、
を備え、
前記医療機器本体の軸方向における中間部及び基端部では、前記第1操作線と前記第2操作線とが前記医療機器本体の周方向において互いに離間して並列に延在しており、
前記医療機器本体の軸方向における先端部では、前記第1操作線と前記第2操作線とが先端側に向けて徐々に前記医療機器本体の周方向において互いに近づくように湾曲し合流している医療機器。
(2)前記屈曲操作部に対する操作により、前記第1操作線と前記第2操作線とが一度に牽引される(1)に記載の医療機器。
(3)前記第1操作線と前記第2操作線との先端どうしが連結されている(1)又は(2)に記載の医療機器。
(4)前記医療機器本体の軸方向における中間部及び基端部では、前記第1操作線と前記第2操作線とが前記医療機器本体の周方向において互いに対向する位置に配置されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療機器。
(5)前記医療機器本体は、ルーメンを有する樹脂管と、前記樹脂管に埋設されているとともに前記第1操作線及び前記第2操作線がそれぞれ挿通されている第1中空管及び第2中空管と、を含んで構成されており、
前記医療機器本体の軸方向における先端部では、前記第1中空管と前記第2中空管とが先端側に向けて徐々に前記医療機器本体の周方向において互いに近づくように湾曲している(1)から(4)のいずれか一項に記載の医療機器。
(6)前記屈曲操作部は、
回転可能に軸支されている回転部材であって、前記第1操作線及び前記第2操作線が係合しているとともに前記第1操作線の基端部と前記第2操作線の基端部とが固定されている回転部材と、
前記回転部材を前記第1操作線及び前記第2操作線を牽引する牽引方向、及び、前記牽引方向に対する反対方向に移動させる移動機構と、
を備えて構成されている(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療機器。
(7)前記医療機器本体の先端部の周方向において、前記第1操作線と前記第2操作線との間の領域、又は、前記医療機器本体の軸心を間に挟んで当該領域の反対側に位置する領域には、当該医療機器本体の屈曲性が局部的に高い易屈曲部が形成されている(1)から(6)のいずれか一項に記載の医療機器。
(8)前記易屈曲部は、前記医療機器本体の外面側に形成された切欠形状部を含んで構成されている(7)に記載の医療機器。
(9)前記医療機器本体は、ルーメンを有する樹脂管を含んで構成されており、
前記樹脂管の前記ルーメンの周囲に前記第1操作線及び前記第2操作線が挿通されており、
前記第1操作線と前記第2操作線とが先端側に向けて徐々に前記医療機器本体の周方向において互いに近づくように湾曲している湾曲領域の先端において、前記第1操作線と前記第2操作線とが前記樹脂管の肉厚よりも小さい距離で近接しており、
前記湾曲領域の先端と、前記第1操作線及び前記第2操作線の先端との間には、前記第1操作線と前記第2操作線とが互いに近接して並列に延在している並列領域が形成されている(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療機器。
(10)前記医療機器本体の軸方向において、前記湾曲領域の基端から先端までの距離よりも、前記湾曲領域の先端から前記第1操作線及び前記第2操作線の先端までの距離の方が長い(9)に記載の医療機器。
(11)前記医療機器本体の軸方向において、前記湾曲領域の基端から先端までの距離の方が、前記湾曲領域の先端から前記第1操作線及び前記第2操作線の先端までの距離よりも長い(9)に記載の医療機器。
(12)当該医療機器は、前記湾曲領域の先端部において前記樹脂管に埋設されている環状部材を更に備え、
前記環状部材は、前記樹脂管よりも高剛性に構成されていて前記樹脂管の肉厚よりも小さい外径に形成されており、
前記環状部材に前記第1操作線と前記第2操作線とが挿通されている(9)から(11)のいずれか一項に記載の医療機器。
(13)前記医療機器本体は、前記樹脂管に埋設されているとともに前記第1操作線及び前記第2操作線がそれぞれ挿通されている第1中空管及び第2中空管を含んで構成されており、
前記環状部材に前記第1中空管と前記第2中空管とが挿通されており、
前記湾曲領域では、前記第1中空管と前記第2中空管とが先端側に向けて徐々に前記医療機器本体の周方向において互いに近づくように湾曲している(12)に記載の医療機器。
(14)前記医療機器本体の軸方向に沿ってそれぞれ挿通されている第3操作線及び第4操作線と、
前記第3操作線及び前記第4操作線の牽引により、前記第1操作線及び前記第2操作線の牽引による前記医療機器本体の先端部の屈曲の方向とは異なる方向への前記医療機器本体の先端部の屈曲操作を行うための第2屈曲操作部と、
を備え、
前記医療機器本体の軸方向における中間部及び基端部では、前記第3操作線と前記第4操作線とは前記医療機器本体の周方向において互いに離間して並列に延在しており、
前記医療機器本体の軸方向における先端部では、前記第3操作線と前記第4操作線とが先端側に向けて徐々に前記医療機器本体の周方向において互いに近づくように湾曲し合流している(1)から(13)のいずれか一項に記載の医療機器。
(15)前記第2屈曲操作部に対する操作により、前記第3操作線と前記第4操作線とが一度に牽引される(14)に記載の医療機器。
【符号の説明】
【0116】
10 医療機器本体
11 先端部
12 中間部
13 基端部
15 湾曲領域
15a 基端位置
15b 先端位置
16 並列領域
20 樹脂管
21 ルーメン
22 内層
23 外層
31 第1中空管
31a 先端
32 第2中空管
32a 先端
33 第3中空管
34 第4中空管
41 第1操作線
41a 先端
42 第2操作線
42a 先端
43 第3操作線
43a 先端
44 第4操作線
44a 先端
51 ブレード層
52 巻回ワイヤ
60 環状部材
61 第1環状部材
62 第2環状部材
70 マーカー
71 第1固定部
72 第2固定部
73 第3固定部
74 第4固定部
80 屈曲操作部
81 回転部材
81a 第1固定部
81b 第2固定部
82 進退部材(移動機構)
82a 保持部
82b 棒状部
82c ラック部
83 ピニオン(移動機構)
84 ダイヤル操作部
85 ガイド
86 筐体
90 ハブ
92 羽部
93 連結部
100 医療機器
110 易屈曲部
111 切欠形状部
180 第1屈曲操作部
181 第1回転部材
182 第1進退部材(移動機構)
182a 第1保持部
182b 第1棒状部
182c 第1ラック部
183 第1ピニオン(移動機構)
184 第1ダイヤル操作部
185 第1ガイド
191 巻取部
192 第1連結ワイヤ
193 第2連結ワイヤ
194 ダイヤル操作部(第3回転部材)
195 第1連結部位
196 第2連結部位
197 ピニオン
198 第1ラック部材
199 第2ラック部材
200 ガイド
280 第2屈曲操作部
281 第2回転部材
282 第2進退部材(移動機構)
282a 第2保持部
282b 第2棒状部
282c 第2ラック部
283 第2ピニオン(移動機構)
284 第2ダイヤル操作部
285 第2ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22