(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】超純水製造装置とその水質管理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20240913BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20240913BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240913BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240913BHJP
【FI】
C02F1/42 B
C02F1/42 A
B01D61/14 500
C02F1/28 F
C02F1/44 A
C02F1/44 J
(21)【出願番号】P 2019212249
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-07-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(74)【復代理人】
【識別番号】100114465
【氏名又は名称】北野 健
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃彦
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-274400(JP,A)
【文献】特開2005-118734(JP,A)
【文献】特開2004-154713(JP,A)
【文献】特開2008-128375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28,1/42,1/44
B01D61/14-61/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置の水質管理方法であって、
前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を含むことを特徴とする、水質管理方法。
【請求項2】
前記超純水製造装置が、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、及び前記返送ラインを流れる水をそれぞれサンプリングするサンプリングラインを有し、
前記サンプリングラインがいずれも、少なくとも接液部が非金属製であるバルブを備える、請求項1に記載の水質管理方法。
【請求項3】
前記分析工程で分析する金属が、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、Ni、CrおよびPbからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の水質管理方法。
【請求項4】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、前記超純水の金属濃度が1ng/L以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項5】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、金属濃度の定量下限値が0.1ng/L以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項6】
前記定量下限値が0.01ng/L以下である、請求項5に記載の水質管理方法。
【請求項7】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置であって、
さらに、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析手段を含むことを特徴とする、超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置とその水質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおけるシリコンウエハの洗浄用水など、多くの用途に、不純物が高度に除去された超純水が用いられている。超純水は、一般に、原水(工業用水、市水、井水等)を、必要に応じて前処理システムで処理し、そして一次純水システムおよび二次純水システム(サブシステム)で順次処理することにより製造する。
【0003】
特許文献1には、超純水製造装置において、超純水を使用点(ユースポイント)に供給するための供給ラインに、サンプリング用分岐ラインを設け、そこから超純水をサンプリングし水質を確認することが記載される。この分岐ラインには、接液部がフッ素樹脂で構成されたバルブが設けられる。特許文献2には、ユースポイントに供給される超純水の分析のための試料を、バルブに起因する汚染を生じさせずに採取するために、金属製のバルブの接液部に金属溶出を低減する表面処理を施すことが開示される。特許文献3には、超純水中の不純物の濃度の分析を連続的に行って、流体中の濃度変化等を精度良く監視できるようにした不純物濃度分析方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-105349号公報
【文献】特開2008-128375号公報
【文献】特開2001-153855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの文献に開示されるように、超純水製造装置における水質管理のために、製造した超純水の不純物濃度を測定する。しかし、製造した超純水の水質を管理するだけでは、ユースポイントにおいて不純物濃度が要求仕様を満足しなくなった際に、その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易ではない。特に、超純水中の金属濃度に関しては、要求仕様がいっそう厳しくなりつつあり、金属濃度が要求仕様を満足しなくなった場合に異常の発生箇所を容易に特定する技術に対するニーズが高まっている。
【0006】
本発明の目的は、ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満足しなくなった際に、その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易な超純水製造装置およびその水質管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置の水質管理方法であって、
前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を含むことを特徴とする、水質管理方法が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置であって、
さらに、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析手段を含むことを特徴とする、超純水製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満足しなくなった際に、その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易な超純水製造装置およびその水質管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】超純水製造装置の概略構成例を示すプロセスフローダイアグラムである。
【
図2】参考例で用いた試験装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、本明細書において、特に断りの無い限り、用語「上流」「下流」はそれぞれ、被処理水の流れ方向についての上流および下流を意味する。
【0012】
図1に、本発明の一態様に係る超純水製造装置1の概略構成例を示す。超純水製造装置1は、一次純水タンク2と、紫外線酸化装置3と、イオン交換装置4と、限外ろ過膜装置5と、を有している。これらは、超純水製造装置の二次純水システム(サブシステム)を構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水をこの順に処理して超純水を製造し、超純水をユースポイントに供給する。超純水の抵抗率(25℃)は例えば15MΩ・cm超であり、場合によっては18MΩ・cm超である。一次純水の抵抗率は、超純水の抵抗率よりも低く、例えば0.1~15MΩ・cmである。
【0013】
一次純水タンク2には、ラインL1を経て一次純水システムから一次純水が適宜供給され、一次純水が被処理水として貯留される。一次純水タンク2と紫外線酸化装置3とを接続するラインL2を経て、一次純水タンク2に貯留された被処理水が紫外線酸化装置3に供給される。ここで被処理水に紫外線が照射され、被処理水中の有機物が分解される。紫外線酸化装置3とイオン交換装置4とを接続するラインL3を経て、紫外線酸化装置3から抜き出された被処理水がイオン交換装置4に供給される。ここで被処理水中の金属イオンなどがイオン交換処理により除去される。イオン交換装置4と限外ろ過膜装置5とを接続するラインL4を経て、イオン交換装置4から抜き出された被処理水(イオン交換装置4の出口の水)が限外ろ過膜装置5に供給される。ここで被処理水中の微粒子が除去される。限外ろ過膜装置5から、限外ろ過膜を透過した被処理水(限外ろ過膜装置出口水)が、超純水としてラインL5に抜き出される。ラインL5は、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインであり、限外ろ過膜装置5の透過水出口とユースポイントとを接続する。図示しないが、限外ろ過膜装置5から、濃縮水(限外ろ過膜を透過しなかった被処理水)を排出することができる。
【0014】
超純水送液ラインL5から、分岐点9において、超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインL6が分岐する。ラインL6は一次純水タンク2に接続される。超純水送液ラインL5の分岐点9より上流側を流れる水のうちの一部がユースポイントに供給され、残余の部分が返送ラインL6を経て一次純水タンク2に還流する。
【0015】
必要に応じて、
図1に示す機器以外の機器を用いることもできる。例えば、被処理水を送液するためのポンプ、および被処理水の温度調節のための熱交換器を、一次純水タンク2と紫外線酸化装置3との間(ラインL2)に設けることができる。さらに、イオン交換装置4と限外ろ過膜装置5との間(ラインL4)に、酸素を除去する膜脱気装置を設けることもできる。
【0016】
前処理システム、一次純水システムおよび二次純水システムを含めて超純水製造装置を構成する各機器には、超純水製造の分野で公知の機器を適宜利用することができる。例えばイオン交換装置4として、非再生型混床式イオン交換樹脂塔(カートリッジポリッシャー)を用いることができる。限外ろ過膜装置5は、例えば、ハウジング中に適宜の中空糸膜モジュールを備える。なお、例えばラインL4、L5、L6には、金属の溶出を防止するために、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの非金属材料(樹脂)を使用することができる。
【0017】
分岐点6において、ラインL4からサンプリングラインL11が分岐する。分岐点7において、ラインL5からサンプリングラインL12が分岐する。分岐点7は、分岐点9よりも上流側に位置する。分岐点8において、ラインL6からサンプリングラインL13が分岐する。サンプリングラインL11、L12およびL13に、それぞれイオン交換装置出口水、限外ろ過膜装置5の下流側であって超純水送液ラインL5の分岐点9より上流側を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる水の金属分析用試料がサンプリングされる。例えば、ラインL4に膜脱気装置を設ける場合、分岐点6の下流に膜脱気装置を設けることができる。この場合、膜脱気装置の下流、かつ限外ろ過膜装置5の上流に、別途サンプリングラインを設けて、金属分析を行うことができる。これによって、膜脱気装置からの汚れと限外ろ過膜からの汚れを分離して評価可能となる。
【0018】
サンプリングラインL11、L12およびL13にはそれぞれ、弁11、12および13が設けられ、また分析手段14、15および16が弁11、12および13の下流側に接続される。弁11、12および13として、開閉弁を用いることができる。これらの弁は、サンプリング時に開とし、サンプリングを行わない際には閉とすることができる。
【0019】
分析手段14、15および16は、イオン交換装置出口水、超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ分析する分析工程で使用される。分析工程で分析する金属は、特に限定しないが、例えばNa、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、Ni、Cr、およびPbからなる群から選ばれる1種または2種以上である。例えば、NaおよびCaはイオン交換樹脂から、Al、Cr、Fe、NiおよびCuは金属製部材から、Znは限外ろ過膜から、溶出する可能性がある。
【0020】
例えば、分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、典型的には分析工程で分析する全ての金属について、超純水の金属濃度(正常値)は1ng/L以下である。したがって、金属濃度異常の的確な検知の観点から、分析工程の金属濃度の定量下限値は、0.1ng/L以下が好ましく、0.01ng/L以下がより好ましい。また、分析工程における金属濃度の定量下限値が1pg/L程度であれば、1ng/Lの1/1000のレベルまで金属濃度を定量分析できる。したがって、分析工程の金属濃度の定量下限値は、1pg/L以上であってよい。なお、分析工程でただ1種の金属を分析する場合、ここでいう定量下限値は、その金属の定量下限値を意味する。分析工程で複数種の金属を分析する場合、分析する複数種の金属のうちの少なくとも1種について定量下限値が上記範囲にあることが好ましいが、全ての金属についての定量下限値が上記の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
近年、半導体工場からはng/Lよりさらに低いレベルの水質管理が求められている。また、IRDS(International Technology Roadmap for Semiconductors)によると超純水中の金属要求水質は1ng/Lであるが、実際には、要求水質の1/1000のレベルの分析を行う必要がある場合もある。微量の金属をより正確に定量分析するためには、サンプル水中に弁から金属が溶出することを防止することが好ましい。そのため、サンプリングラインに設けられる弁11、12および13の少なくとも接液部が非金属製であることが好ましく、これらの弁の全体が非金属製であることがより好ましい。弁に用いる非金属材料は、典型的には樹脂、特にはフッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、PCTFE(三フッ化塩化エチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)などを使用できる。
【0022】
分析工程では、サンプル水中の金属を濃縮したうえで、金属濃度の測定装置、例えば誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いてサンプル水(もしくは濃縮液)中の金属濃度を測定することができる。その濃縮法としては、例えば、イオン吸着膜によってサンプル水中の金属を捕捉し、捕捉した金属を酸等の溶離液を用いて溶離する方法を採用することができる。濃縮法として、イオン吸着膜濃縮法のほかに加熱濃縮法(サンプル水を加熱して濃縮する)があるが、高倍率でクリーンに濃縮するにはイオン吸着膜濃縮法が好ましい。濃縮操作の濃縮倍率は、適宜決めることができる。イオン吸着膜に替えて、モノリス状の樹脂からなるイオン交換体を用いてもよい。モノリス状の樹脂からなるイオン交換体を用いると、イオン交換体にかかる差圧がイオン吸着膜法と比較して小さいため、高SV(空間速度)でイオン交換体に通水でき、所要時間の短縮が可能である。上記以外にも、分析工程(濃縮操作を含む)に、超純水中の金属定量分析の分野で公知の方法を適宜採用することができる。
【0023】
分析手段は、金属濃度の測定装置を含む。濃縮操作を行う場合、分析手段は、さらに濃縮手段を含む。濃縮手段は、例えば前述のようにイオン吸着膜、あるいはモノリス状の樹脂からなるイオン交換体を含む。なお、
図1では分析手段14、15、16がサンプリングラインL11、L12、L13ごとに別個に設けられているが、必ずしもその限りではない。例えば、濃縮手段はサンプリングラインごとに別個に設けて各サンプル水を濃縮し、それぞれの濃縮液を共用の測定装置で分析することができる。
【0024】
なお、サンプリングラインL11、L12、L13や分析手段14、15、16において、弁11、12および13以外の部材についても、サンプル水に接する部分の材料として、適宜非金属材料(樹脂)を用いることができる。
【0025】
ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満たさなかった場合、すなわち水質異常があった場合、イオン交換装置出口水、超純水送液ラインL5の分岐点9より上流側を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる水の金属濃度がそれぞれ要求仕様を満たしているか否かという情報に基づいて、容易に異常発生箇所を特定することができる。
図1に示される超純水製造装置について、その具体的な方法の例を以下に説明する。表1には、ラインL11、L12およびL13のサンプリング水の金属濃度が「○」(正常)と判断とされるか「×」(異常)と判断されるかによって、ケース分けした例を示す。ここで各水は正常時に0.1ng/L以下の金属濃度を有し、各水の金属濃度が0.1ng/L以下の場合に「〇」(正常)、0.1ng/L超の場合に「×」(異常)と判断するものとする。いずれのケースも、ユースポイントにおいて水の金属濃度が0.1ng/L超であったものとする。
【0026】
ケース1は、ユースポイントで水質異常があるが、いずれのサンプル水にも異常が認められない場合である。この場合、水質異常の原因は、ユースポイントの内部にあると推定できる。
【0027】
ケース2は、ラインL11およびL12のサンプル水には異常が認められないが、ラインL13のサンプル水に異常が認められた場合である。この場合、水質異常の原因は、分岐点7から分岐点9までの配管にあると推定できる。
【0028】
ケース3は、ラインL11のサンプル水には異常が認められないが、ラインL12およびL13のサンプル水に異常が認められた場合である。この場合、水質異常の原因は、分岐点7より上流かつ分岐点6より下流、特には限外ろ過膜装置5にあると推定できる。
【0029】
ケース4は、ラインL11、L12およびL13のサンプル水に異常が認められた場合である。この場合、水質異常の原因は、分岐点6より上流、特にはイオン交換装置4にあると推定できる。
【0030】
【0031】
〔参考例〕
以下、サンプリングラインに、金属(SUS316)製の弁を設けた場合と、流体(サンプル水)に接する部分の材質がフッ素樹脂(PFAもしくはPTFE)である非金属製の弁を設けた場合について、サンプル水を濃縮分析して、サンプル水の金属濃度(金属イオン濃度)を調べた例について説明する。
図2に示すように、メイン配管20に、分岐管21を2つ設けた。一方の分岐管に、全体が金属製の開閉弁22を接続し、他方の分岐管に、全体が非金属性の開閉弁23を接続した。それぞれの弁の出口にコネクタ24をねじ込み、コネクタにチューブ25を接続した。それぞれのチューブ25に、多孔質イオン吸着膜を備える濃縮装置26を接続した。上記部材および装置(開閉弁を除く)の少なくともサンプル水に接する部分は非金属製とした。
【0032】
開閉弁22および23を開にしてメイン配管20にサンプル水を供給し、濃縮装置26に備わるイオン吸着膜に約2000Lのサンプル水を通水し、サンプル水中の金属をイオン吸着膜に捕捉した。その後、多摩化学社製の高純度硝酸(商品名:TAMAPURE AA-100)を希釈した2N硝酸100mlを用いて、イオン吸着膜から金属を溶離した。得られた溶離液中の金属量をICP-MSで測定した。濃縮倍率は2000/0.1=20000倍であるから、溶離液中の金属量(ng)を濃縮倍率で除した値からサンプル水中の金属濃度を求めた。
【0033】
その結果を表2に示す。金属製の開閉弁22を用いた場合と比べて、非金属製の開閉弁23を用いた場合のほうが、いずれの金属濃度も低かったか、あるいは同等であった。
【0034】
表2によれば、例えばNiについては、金属製の弁による汚染分が約0.03ng/Lある。したがって、サンプリングラインに金属製の弁を用いた場合、金属分析の分析値が、この程度の誤差を含む可能性がある。非金属製の弁を用いると、このような誤差を排除することが容易である。その結果、異常箇所の特定も、より容易となる。また、金属製の弁を用いると金属が溶出されて超純水の金属濃度を低濃度で評価することが困難になることがあるが、非金属性の弁を用いることで超純水中の金属濃度を低濃度で評価することが可能となる。
【0035】
【符号の説明】
【0036】
1 超純水製造装置
2 一次純水タンク
3 紫外線酸化装置
4 イオン交換装置
5 限外ろ過膜装置
6、7、8、9 分岐点
11、12、13 弁
14、15、16 分析手段
20 メイン配管
21 分岐管
22 金属製の弁
23 非金属製の弁
24 非金属製コネクタ
25 非金属製チューブ
26 濃縮装置