(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】容器保持具及び包装製品
(51)【国際特許分類】
B65D 71/48 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B65D71/48
(21)【出願番号】P 2019235769
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 誉章
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04192540(US,A)
【文献】実公昭10-001213(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 71/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n行×2列(nは2以上の整数である。)で並列する容器の上面近傍を保持するための容器保持具であって、
前記並列する各容器の上面近傍が挿入されて前記各容器を保持するための保持孔がn行×2列で並列するように形成されている底面板と、
前記底面板に第1折り線を介して連接される側面部と、
前記第1折り線に対向する第2折り線を介して前記側面部に連接され、前記第2折り線に沿って前記底面板に折り重ねることで、前記底面板に接することなく前記底面板の略全体を被覆する上面板と
を備え、
前記保持孔の周縁には、前記保持孔に挿入される容器の挿入先端を係止可能な複数の係止片が形成されており、
前記底面板には、略円形状の指差孔が少なくとも1つ設けられ、
前記上面板には、折り曲げ可能な基部に沿って前記容器の上面側に押込可能な押込片が少なくとも1つ設けられ、
前記押込片と前記指差孔とは、それぞれ、前記第2折り線に沿って前記上面板を前記底面板に折り重ね、前記押込片が前記容器の上面側に押し込まれたときに、前記押込片が前記指差孔に挿入可能な位置に設けられており、
前記押込片は、前記基部の第1端部及び第2端部の間に連続する切込部により構成され、前記押込片の外側に向かって突出する2つの係止部を有し、
前記切込部は、前記第1端部に連続し、前記基部に略直交する第1線分と、前記第2端部に連続し、前記基部に略直交する第2線分と、前記第1線分の端部に連続し、前記第1線分に交差する方向であって、前記押込片の外側に延びる第3線分と、前記第2線分の端部に連続し、前記第2線分に交差する方向であって、前記押込片の外側に延びる第4線分とを有し、
前記第1線分及び前記第3線分の交差角度と、前記第2線分及び前記第4線分の交差角度とが、それぞれ直角又は鋭角であり、
前記押込片が前記容器の上面側に押し込まれたときに、前記2つの係止部が前記指差孔に係止されることを特徴とする容器保持具。
【請求項2】
前記切込部は、前記第3線分の端部及び前記第4線分の端部の間に連続する略U字形状の湾曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の容器保持具。
【請求項3】
前記第3線分及び前記第4線分のそれぞれと前記湾曲部とは、前記押込片の外側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲線分及び第2湾曲線分のそれぞれを介して連続していることを特徴とする請求項2に記載の容器保持具。
【請求項4】
前記押込片は、前記第1線分及び前記第3線分の連続部分から前記押込片の内側に向かって延びる第1切込線と、前記第2線分及び前記第4線分の連続部分から前記押込片の内側に向かって延びる第2切込線とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の容器保持具。
【請求項5】
前記第1切込線及び前記第2切込線は、
それぞれ、前記第3線分及び前記第4線分と略
同一線上に位置することを特徴とする請求項4に記載の容器保持具。
【請求項6】
前記指差孔は、前記容器の上面側に押し込まれ、前記指差孔に挿入された前記押込片が前記指差孔から抜けるのを防止可能なかえり部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の容器保持具。
【請求項7】
前記複数の保持孔は、前記底面板における第1方向に沿って前記n行に並列し、前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記2列に並列しており、
前記指差孔は、前記第1方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する前記第2方向に平行な第1仮想線分と、前記第2方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する前記第1方向に平行な第2仮想線分との交点よりも、前記指差孔の幾何学的中心が前記第1仮想線分に沿って前記底面板の外側に位置するように前記底面板に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の容器保持具。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の容器保持具に前記容器が保持されていることを特徴とする包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器保持具及び包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料が充填された複数の容器を一列又は複数列で整列させて置いた容器群の上面(天面)及び側面、並びに下面(底面)を包み込むようにして包装することのできる紙製のマルチパック包装箱が使用されている。このようなマルチパック包装箱を使用することにより、複数個の缶ビールや缶ジュース等を1個の包装体にまとめて一度に容易に持ち運ぶことができるようになり、さらに、纏め売りの効果も相俟って、当該マルチパック用包装箱の使用が近年急速に拡大しつつある。
【0003】
マルチパック包装箱は、1枚の板紙に切り込みを入れ、折り曲げることで形成され、一般には、容器群の上面を覆う天板、当該天板の対向する両端に連接され容器群の側面を覆う側板、当該側板に連接され容器群の底面を覆う底板を備え、側板が存在しない両端において、容器群を構成する一部の容器の側面が視認可能な開口部が形成されている。
【0004】
一方で、容器群を包装する包装材の製造コストの低減及び省資源化等を目的として、飲料が充填された複数の容器を一列あるいは複数列で整列させて置いた容器群の上面のみを保持することのできる紙製の容器保持具が提案されている。
【0005】
このような紙製の容器保持具として、例えば、頂部パネルと、底部パネルと、折り線を介して頂部パネル及び底部パネルを連結する側部とを備え、底部パネルには、容器の上部が挿入され得る複数の保持孔が形成され、各保持孔の外周には、容器の上部を係止可能な複数の係止片が形成され、頂部パネルと底部パネルとの間を貫通する指差孔を有するものが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平8-508702号公報
【文献】特開平11-193059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示されている容器保持具においては、容器の上部のみが保持され、底部が保持されていない。このような容器保持具に3行×2列で並列する容器を保持させ、当該指差孔に指を挿入して持ち上げると、底部パネルの長手方向の中心線近傍が上方に凸になるように湾曲する一方、容器の重量により、各保持孔の係止片には下方の力がかかることになる。これにより、容器保持具を持ち上げたときに、当該中心線の近傍に位置する係止片が、容器の上部から外れやすくなり容器が容器保持具から脱落するおそれがある。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、複数の容器をまとめて保持し、各容器が脱落することなく運搬可能な容器保持具及び包装製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、n行×2列(nは2以上の整数である。)で並列する容器の上面近傍を保持するための容器保持具であって、前記並列する各容器の上面近傍が挿入されて前記各容器を保持するための保持孔がn行×2列で並列するように形成されている底面板と、前記底面板に第1折り線を介して連接される側面部と、前記第1折り線に対向する第2折り線を介して前記側面部に連接され、前記第2折り線に沿って前記底面板に折り重ねることで、前記底面板に接することなく前記底面板の略全体を被覆する上面板とを備え、前記保持孔の周縁には、前記保持孔に挿入される容器の挿入先端を係止可能な複数の係止片が形成されており、前記底面板には、略円形状の指差孔が少なくとも1つ設けられ、前記上面板には、折り曲げ可能な基部に沿って前記容器の上面側に押込可能な押込片が少なくとも1つ設けられ、前記押込片と前記指差孔とは、それぞれ、前記第2折り線に沿って前記上面板を前記底面板に折り重ね、前記押込片が前記容器の上面側に押し込まれたときに、前記押込片が前記指差孔に挿入可能な位置に設けられており、前記押込片は、前記基部の第1端部及び第2端部の間に連続する切込部により構成され、前記押込片の外側に向かって突出する2つの係止部を有し、前記切込部は、前記第1端部に連続し、前記基部に略直交する第1線分と、前記第2端部に連続し、前記基部に略直交する第2線分と、前記第1線分の端部に連続し、前記第1線分に交差する方向であって、前記押込片の外側に延びる第3線分と、前記第2線分の端部に連続し、前記第2線分に交差する方向であって、前記押込片の外側に延びる第4線分とを有し、前記第1線分及び前記第3線分の交差角度と、前記第2線分及び前記第4線分の交差角度とが、それぞれ直角又は鋭角であり、前記押込片が前記容器の上面側に押し込まれたときに、前記2つの係止部が前記指差孔に係止されることを特徴とする容器保持具を提供する。
【0010】
前記切込部は、前記第3線分の端部及び前記第4線分の端部の間に連続する略U字形状の湾曲部を有していてもよい。
【0011】
前記押込片は、前記第1線分及び前記第3線分の連続部分から前記押込片の内側に向かって延びる第1切込線と、前記第2線分及び前記第4線分の連続部分から前記押込片の内側に向かって延びる第2切込線とを有していてもよく、前記第1切込線及び前記第2切込線は、それぞれ、前記第3線分及び前記第4線分と略同一線上に位置していてもよい。
【0012】
前記第3線分及び前記第4線分のそれぞれと前記湾曲部とは、前記押込片の外側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲線分及び第2湾曲線分のそれぞれを介して連続していてもよく、 前記第1線分及び前記第3線分の交差角度、並びに前記第2線分及び前記第4線分の交差角度が、鋭角であってもよい。
【0013】
前記指差孔は、前記容器の上面側に押し込まれ、前記指差孔に挿入された前記押込片が前記指差孔から抜けるのを防止可能なかえり部が設けられていてもよく、前記複数の保持孔は、前記底面板における第1方向に沿って前記n行に並列し、前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記2列に並列しており、前記指差孔は、前記第1方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する前記第2方向に平行な第1仮想線分と、前記第2方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する前記第1方向に平行な第2仮想線分との交点よりも、前記指差孔の幾何学的中心が前記第1仮想線分に沿って前記底面板の外側に位置するように前記底面板に設けられていてもよい。前記指差孔の幾何学的中心は、第1方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する第1仮想線分と、前記第1方向に直交する第2方向において隣接する2つの前記保持孔の間に位置する第2仮想線分との交点よりも、前記第1仮想線分に沿って前記底面板の外側に位置していてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記容器保持具に前記容器が保持されていることを特徴とする包装製品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の容器をまとめて保持し、各容器が脱落することなく運搬可能な容器保持具及び包装製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る容器保持具の概略構成を示す展開図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す容器保持具を組み立て、容器を保持した状態の容器運搬具の概略構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る容器保持具に保持される容器の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における押込片の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における押込片の他の態様の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における押込片の他の態様の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態における押込片の他の態様の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態における指差孔の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における指差孔の他の態様の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【
図10】
図10は、比較例1の容器保持具における押込片の概略構成を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る容器保持具について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、3行×2列に並列配置する容器の上面近傍を保持することのできる容器保持具を例に挙げて説明するが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、2行×2列に並列配置する容器を保持可能なもの、4行×2列に並列配置する容器を保持可能なもの等、n行×2列(nは2以上の整数)に並列配置する容器を保持可能なものであってもよい。また、本実施形態において保持される容器として、飲料が充填された缶容器を例に挙げて説明するが、このような態様に限定されるものではなく、飲料が充填された瓶容器や飲料が充填されたポリエチレンテレフタラート(PET)を材料とするPET容器等であってもよい。さらに本実施形態において保持される容器に充填され得る飲料としては、例えば、ミネラルウォーター、茶飲料(例えば、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ブレンド茶等)、醸造酒(例えば、ビールや発泡酒などの穀類分解物含有発泡性飲料、日本酒、ワインやシードルなどの果実酒、梅酒などのリキュール等)、蒸留酒(例えば、ウイスキー、焼酎、ブランデー等)、野菜飲料(例えば、トマトジュース、にんじんジュース、トマトミックスジュース、にんじんミックスジュース等)、果実飲料(例えば、リンゴジュース、オレンジジュース、果汁入り飲料等)、果実・野菜ミックスジュース、コーヒー飲料、穀物乳(例えば、豆乳、ライスミルク、ココナッツミルク、アーモンドミルク等)、酢飲料(例えば、果実酢飲料等)、ノンアルコールビールテイスト飲料等が挙げられる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る容器保持具の概略構成を示す展開図であり、
図2は、
図1に示す容器保持具を組み立て、容器を保持した容器運搬具の概略構成を示す側面図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る容器保持具1は、底面板2と、当該底面板2に第1折り線31を介して連接される第1側面部3Aと、第1折り線31に対向する第2折り線32を介して第1側面部3Aに連接される第1上面板4Aと、底面板2における第1折り線31に対向する第3折り線33を介して当該底面板2に連接される第2側面部3Bと、第3折り線33に対向する第4折り線34を介して第2側面部3Bに連接される第2上面板4Bとを備える。第1上面板4Aを第2折り線32に沿って底面板2に折り重ね、第2上面板4Bを第4折り線34に沿って底面板2に折り重ねることで、当該第1上面板4A及び第2上面板4Bにより、底面板2の略全体を被覆可能な上面板4を構成する。
【0020】
底面板2には、3行×2列で並列配置する容器を保持するための6個の保持孔21が3行×2列で並列するように形成されている。保持孔21は、当該保持孔21に挿入される容器5の上面近傍の外径よりも小さい内径で底面板2に形成されている。
【0021】
第1上面板4Aの端縁部には、3つの係止爪6が連接されており、第2上面板4Bには、3つの係止爪6を挿入可能な係止孔7が形成されている。各係止爪6を各係止孔7に挿入することで、上面板4と底面板3とを係合することができる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る容器保持具に保持される容器の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、容器5は、底部51と当該底部に連続する胴部52と、当該胴部52の開口上端を覆う蓋部53と、当該蓋部53の周縁で巻き締めることにより形成された環状の巻締部54とを有する。また、容器5の上面近傍は、巻締部54と、当該巻締部54よりも下方に位置する肩部55と、巻締部54から肩部55に向かって徐々に拡径する拡径部56から構成される。
【0023】
保持孔21の周縁には、当該保持孔21に挿入される容器5の挿入先端を係止可能な複数の係止片22が所定の間隔を有して形成されている。複数の係止片22は、略台形形状であり、それぞれの先端部23が保持孔21の中心に向かうように放射状に形成されている。この係止片22が、保持孔21に挿入された容器5によって基部24から折れ曲がり、係止片22の先端部23が容器5の巻締部54に当接することで、容器5を保持することが可能となる。
【0024】
図1に示すように、複数の保持孔21は、第1方向D1に沿って3行に並列し、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って2列に並列している。底面板2には、手指を差し込んで容器保持具1を持ち上げるための略円形状の2つの指差孔25が形成されている。2つの指差孔25は、第2方向D2において隣接する2つの保持孔21の間に位置する第1方向D1に平行な第2仮想線分VL2に重なるように、底面板2の長手方向に沿って並列して形成されている。
【0025】
各指差孔25の幾何学的中心Cは、第1方向D1において隣接する2つの保持孔21の間に位置する第2方向D2に平行な第1仮想線分VL1と、第2仮想線分VL2との交点Pよりも第1仮想線分VL1に沿って底面板2の外側に位置するのが好ましい。各指差孔25の幾何学的中心Cが交点Pよりも底面板2の外側に位置することで、後述する押込片42を容器5の上面側に押し込んだときに、押込片42が指差孔25に係止され、手指を差し込んで持ち上げたときに、押込片42が指差孔25から抜けにくくなるとともに、底面板3が破損するのを抑制することができる。なお、交点Pと指差孔25の幾何学的中心Cとの距離は、1~4mmの範囲内であればよく、好ましくは、2~3mmの範囲内であればよい。
【0026】
第1上面板4Aには、折り曲げ可能な基部41に沿って容器5の上面側に押込可能な2つの押込片42が設けられている。押込片42は、第2折り線32に沿って第1上面板4Aを底面板2に折り重ね、第4折り線34に沿って第2上面板4Bを底面板2に折り重ね、押込片42が容器5の上面側に押し込まれたときに、各押込片42が各指差孔25に挿入可能な位置に設けられている。なお、本実施形態において第1上面板4Aに設けられている押込片42と底面板2に設けられている指差孔25とが、それぞれ2個設けられているが、この態様に限定されるべきものではなく、第1上面板4Aに設けられている押込片42と底面板2に設けられている指差孔25とが、それぞれ少なくとも1個設けられていればよい。
【0027】
押込片42は、当該押込片42の外側に向かって突出する2つの係止部421を有している。押込片42が容器5の上面側に押し込まれたときに、2つの係止部421が指差孔25に係止される。これにより、6個の容器5がまとめて保持されている容器保持具1を持ち上げた際に、底面板2の仮想線分VL1近傍が下方に凸になるように湾曲するのを抑止し、各容器5が脱落することなく運搬可能となる。
【0028】
押込片42の形状は、2つの係止部421が指差孔25に係止されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、
図4に示すように、基部41の第1端部411及び第2端部412の間に連続する切込部43により構成されていればよい。切込部43は、第1端部411に連続し、基部41に略直交する第1線分431と、第2端部412に連続し、基部41に略直交する第2線分432と、第1線分431の端部に連続し、当該第1線分431に交差する方向であって、押込片42の外側に延びる第3線分433と、第2線分432の端部に連続し、当該第2線分432に交差する方向であって、押込片42の外側に延びる第4線分434と、第3線分433の端部及び第4線分434の端部の間に連続する略U字形状の湾曲部435とを有していてもよい。
図4に示す押込片42によれば、指差孔25に挿入されやすく、また指差孔25から外れにくいため、6個の容器5がまとめて保持されている容器保持具1を持ち上げた際に、当該容器保持具1は底面板2の仮想線分VL1近傍が下方に凸になるように湾曲するのを抑止でき、容器5を確実に保持することができる。
【0029】
図5は、本実施形態における押込片の他の態様を示す部分拡大平面図である。
図5に示すように、押込片42は、第1線分431及び第3線分433の連続部分から押込片42の内側に向かって延びる第1切込線439と、第2線分432及び第4線分434の連続部分から押込片42の内側に向かって延びる第2切込線436とを有していてもよい。このとき、第1切込線439及び第2切込線436は、第3線分433及び第4線分434と略平行であることが好ましい。
図5に示す押込片42によれば、第1切込線439及び第2切込線436から指差孔25の周縁部に食い込みやすくなるため、指差孔25への押込片42の引っ掛かり性を向上させることができ、押込片42が指差孔25から外れにくくなる。なお、第1切込線439及び第2切込線436の長さは、1~3mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは、1.5~2.5mmの範囲内であればよい。
【0030】
図6は、本実施形態における押込片の他の態様を示す部分拡大平面図である。
図6に示す押込片42において、第3線分433及び第4線分434のそれぞれと湾曲部435とは、押込片42の外側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲線分437及び第2湾曲線分438のそれぞれを介して連続していてもよい。
図6に示す押込片42は、
図4及び
図5、並びに後述の
図7に示す押込片42に比して指差孔25に挿入しやすくなるとともに、押込片42が指差孔25から外れにくくなる。
【0031】
図7は、本実施形態における押込片の他の態様を示す部分拡大平面図である。
図7に示すように、押込片42は、第1線分421及び第3線分423の交差角度α1、並びに第2線分422及び第4線分424の交差角度α2が鋭角であってもよい。
図7に示す押込片42によれば、第1線分421及び第3線分423の交差角度α1、並びに第2線分422及び第4線分424の交差角度α2が鋭角であることで、押込片42が指差孔25から外れにくくなる。なお、交差角度α1及びα2は55~85°の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、60~80°の範囲内であればよい。
【0032】
図8は、本発明の一実施形態における指差孔の概略構成を示す部分拡大平面図である。
図8に示すように、指差孔25は、かえり部251を有していてもよい。
図8に示す指差孔25は、かえり部251を有することで、容器5の上面側に押し込まれ、当該指差孔25に挿入された押込片42が指差孔25から抜けてしまうのを抑止することが可能となる。なお、指差孔25は、
図9に示すように略円形状であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る容器保持具1の作用について説明する。
3行×2列で並列配置された6個の容器5の上部を底面板2の各保持孔21に挿入する。このとき、各保持孔21の係止片22は、容器5の蓋部53(巻締部54)により押し上げられて、先端部23が上方に向くようにして基部24から折り曲げられる。そして、巻締部54が保持孔21を通過すると、各係止片22が容器5の拡径部56に摺接し、巻締部54の下側に係止片22の先端部23が当接する。次に、第1折り線31及び第2折り線32に沿って第1上面板4Aを底面板3に折り重ね、第3折り線33及び第4折り線34に沿って第2上面板4Bを底面板3に折り重ね、係止爪6を係止孔7に挿入する。このようにして、本実施形態に係る容器保持具1に複数(6個)の容器5が保持された包装製品が完成する。このような包装製品において、押込片42を容器5の上面側に押し込むと、押込片42が指差孔25に挿入され、2つの係止部421が指差孔25に確実に係止される。これにより、指差孔25に手指を挿入して包装製品を持ち上げたとしても、底面板2が下方に凸になるように湾曲するのを抑止することができ、各容器5が脱落することなく運搬可能となる。
【0034】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0036】
[試験例1]容器保持力試験
〔実施例1〕
3行×2列で並列配置する500mL缶ビールを6本保持した容器保持具1(
図1の展開図に示すもの)を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して鉛直方向に持ち上げ、その状態で揺動させ、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。押込片42は、
図4に示す形状とし、指差孔25は、
図8に示す形状とした。なお、揺動方法は、容器保持具1を鉛直方向に持ち上げた状態のまま手首を水平方向に回転させる方法とした。
【0037】
〔実施例2〕
3行×2列で並列配置する500mL缶ビールを6本保持した状態の容器保持具1(
図1の展開図に示すもの)を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。押込片42は、
図5に示す形状とし、指差孔25は、
図8に示す形状とした。
【0038】
〔実施例3〕
3行×2列で並列配置する500mL缶ビールを6本保持した状態の容器保持具1(
図1の展開図に示すもの)を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。押込片42は、
図6に示す形状とし、指差孔25は、
図8に示す形状とした。
【0039】
〔実施例4〕
3行×2列で並列配置する500mL缶ビールを6本保持した状態の容器保持具1(
図1の展開図に示すもの)を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。押込片42は、
図7に示す形状とし、指差孔25は、
図8に示す形状とした。
【0040】
〔実施例5〕
指差孔25を
図9に示す形状(円形状)とした以外は、実施例1と同様にして容器保持具1を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。
【0041】
〔実施例6〕
指差孔25を
図9に示す形状(円形状)とした以外は、実施例2と同様にして容器保持具1を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。
【0042】
〔実施例7〕
指差孔25を
図9に示す形状(円形状)とした以外は、実施例3と同様にして容器保持具1を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。
【0043】
〔実施例8〕
指差孔25を
図9に示す形状(円形状)とした以外は、実施例4と同様にして容器保持具1を5個用意し、容器5の上面側に押込片42を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の方法により、容器保持具1の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。
【0044】
〔比較例1〕
図10に示す形状の押込片42′と、円形の指差孔25とを有する以外は、
図1の展開図に示す構成を有する容器保持具1′を準備した。
図10に示すように、押込片42′は、基部41′と当該基部41′の第1端部411′及び第2端部412′の間に連続する切込部43′とにより構成される。切込部43′は、第1端部411′に連続し、基部41′に略直交する第1線分431′と、第2端部412′に連続し、前記基部41′に略直交する第2線分432′と、第1線分431′の端部及び第2線分432′の端部の間に連続する略U字形状の湾曲部435′とを有している。
【0045】
3行×2列で並列配置する500mL缶ビールを6本保持した上記容器保持具を5個用意し、容器5の上面側に押込片42′を押し込み、手指を指差孔25に挿入して持ち上げた状態で揺動させ、実施例1と同様の揺動方法により、容器保持具1′の耐久性及び容器5の脱落の有無を試験した。
【0046】
その結果、実施例1~8については、手首の回転動作ですべての容器保持具1に異常はなく、容器の脱落は生じなかったが、比較例1については、手首の回転動作で容器保持具1′には異常がなかったものの、5個の容器保持具中4個の容器保持具において容器5の脱落が発生した。比較例1の押込片42′は外側に向かって突出する2つの係止部421を有していないため、容器保持具を持ち上げたときに押込片42′が指差孔25から外れやすく、上面板と底面板との間隔が広がりやすくなる。その結果として、容器保持具を揺動させたときの遠心力で容器5の下部が外側に広がるため、容器5の脱落が発生しやすくなると推察される。このことから、押込片42は、当該押込片42の外側に向かって突出する2つの係止部421を有することで、指差孔25に挿入された押込片42が当該指差孔25に確実に係止され、その結果として、容器保持具1の容器5の保持力を向上させ得ると考えられる。
【0047】
また、実施例1~8の容器保持具1を、指差孔25に手指を挿入して持ち上げることで、押込片42の形状に関する官能評価試験を行った。その結果、実施例1及び実施例5の押込片42の形状(
図4に示す形状)においては、挿入された指差孔25から押込片42が抜けにくかった。また、実施例2及び実施例6の押込片42の形状(
図5に示す形状)においては、第1切込線439及び第2切込線436に指差孔25の周縁部が食い込むことで、挿入された指差孔25に押込片42が確実に係止されているという感覚は向上するが、押込片42が破れてしまいそうな感覚を覚えた。さらに、実施例3及び実施例7の押込片42の形状(
図6に示す形状)においては、指差孔25に押込片42を挿入しやすかった。一方で、実施例3の指差孔25の形状(
図8に示す形状)においては、指差孔25から押込片42が抜けにくかったが、実施例7の指差孔25の形状(
図9に示す形状)においては、実施例3よりも指差孔25から押込片42が抜けやすいような感覚を覚えた。さらにまた、実施例4及び実施例8の押込片42の形状においては、他の実施例(実施例1~3及び実施例5~7)と比較して、指差孔25に押込片42を挿入しにくかった。
【符号の説明】
【0048】
1…容器保持具
2…底面板
21…保持孔
25…指差孔
4…上面板
4A…第1上面板
4B…第2上面板
41…基部
42…押込片
421…係止部
5…容器
54…巻締部
55…肩部
56…拡径部