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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】補強された返し付き閉鎖器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240913BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20240913BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C12M1/00 C
B65D47/06
C12M3/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019528842
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017063655
(87)【国際公開番号】W WO2018102379
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/428,243
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ラームモーハン,アラヴィンド ラガヴァン
(72)【発明者】
【氏名】シート,ポール ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ノン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】福井 悟
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-318066(JP,A)
【文献】実開平6-67354(JP,U)
【文献】特開2009-126527(JP,A)
【文献】特開2006-204263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-3/10
B65D35/00
B65D39/00
F16L21/00
F16L27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖アセンブリ(200)において、
キャップ部分(210)であって、該キャップ部分(210)の上面(230)から延びる環状側壁(220)、前記キャップ部分(210)の前記上面(230)から下に延びる環状スカート部(280)、および前記キャップ部分(210)の前記上面(230)から下に延びるショルダー部(290)、を含むキャップ部分と、
前記キャップ部分(210)の前記上面(230)から延びる管状ネック部(310)と、
前記キャップ部分(210)の前記上面(230)と前記管状ネック部(310)の外面との間に延びる少なくとも1つの補強部材(250)
を含み、
前記管状ネック部(310)が、当該管状ネック部(310)の前記外面から延びる、半径が0.04インチ(1.016mm)~0.08インチ(2.032mm)の返し(320)を含み、
前記キャップ部分(210)と、前記管状ネック部(310)と、前記少なくとも1つの補強部材(250)とが一体部品であり、
前記ショルダー部(290)が、前記キャップ部分(210)の前記上面(230)から下に延びる第1の表面(292)および前記環状側壁(220)の内壁から外に延びる第2の表面(294)を有し、
記ショルダー部(290)の前記第1の表面(292)と前記環状スカート部(280)の、前記第1の表面(292)に最も近い表面との間の距離が、0.025インチ(0.635mm)~0.035インチ(0.889mm)の範囲であり、
前記第1の表面(292)および前記第2の表面(294)のうちの少なくとも一方が、細胞培養装置のポートの外面と係合し、
前記少なくとも1つの補強部材(250)は、前記管状ネック部(310)が曲げ力を受けた際に、ひび割れまたは破損を生じることなく前記閉鎖アセンブリ(200)が受ける最大負荷が、補強部材を有しない従来の閉鎖アセンブリと比較して75%~88%増加する、ことを特徴とする閉鎖アセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強部材(250)が、前記管状ネック部(310)の前記周囲の周りに等間隔に離間された複数の補強部材を含む、請求項1記載の閉鎖アセンブリ。
【請求項3】
ネック開口部(340)と、キャップ部分開口部(260)と、前記管状ネック部内(310)において前記ネック開口部(340)と前記キャップ部分(210)との間に延びる通路(350)とを更に含み、該通路(350)が前記キャップ部分開口部(260)と連続している、請求項1~2のいずれか一項記載の閉鎖アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2016年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/428,243号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その内容の全体を以下に完全に記載されているかのように参照して本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的に、返し付き管状ネック部を有する閉鎖アセンブリ、およびそのような閉鎖アセンブリが組み込まれた容器系に関する。具体的には、本開示は、返し付き管状ネック部を有する補強された閉鎖アセンブリ、およびそのような閉鎖アセンブリが組み込まれた容器系に関する。
【背景技術】
【0003】
キャップおよび閉鎖アセンブリは、閉鎖系として設けられることが好ましい細胞培養容器に必要な機能である。特定の細胞培養容器では、キャップおよび閉鎖アセンブリには、気体、液体、または他の材料(例えば、細胞増殖培地等)の供給源を細胞培養容器の内部と連通させるための手段が設けられてきた。そのような手段には、様々な管またはプローブが取り付けられ得るものであり、そのような手段は、閉鎖系を維持しつつ、容器の内部に制御された量の気体、液体、または他の材料を送出するために用いられ得る。従来、キャップまたは閉鎖器によって容器が閉じられている位置において漏れが生じないこと、および、キャップまたは閉鎖器によって容器が閉じられている位置において容器の内部に汚染物質が入らないことを確実にするために、高度な注意が払われる。
【0004】
漏れおよび/または汚染を防止するために高度な注意を払っても、従来のキャップおよび閉鎖器は、常に十分適切に閉鎖系を維持するわけではない。例えば、細胞培養容器をキャップまたは閉鎖器で閉じ、上述のような漏れまたは汚染を防止するには、細胞培養容器のポートを十分適切に閉じて密閉するために、キャップまたは閉鎖器に対して十分な力が加えられなければならない。しばしば、そのような力を加えると、キャップまたは閉鎖器にひび割れ、破損、または別様の不具合が生じる。同様に、外部の供給源を細胞培養容器の内部と連通させる手段を有するキャップまたは閉鎖器については、細胞培養容器にキャップもしくは閉鎖器を施すために加えられる力、または(例えば、そのような手段に管もしくはホースを取り付ける際に加えられる)他の曲げ力が、そのような手段にひび割れ、破損、または別様の不具合を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞培養容器のポートを閉じて密閉するためにキャップまたは閉鎖器がポート上に配置される際に、キャップまたは閉鎖アセンブリに加えられる力に耐えることができるキャップまたは閉鎖アセンブリが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によれば、閉鎖アセンブリが提供される。閉鎖アセンブリは、キャップ部分と、キャップ部分の上面から延びる管状ネック部と、キャップ部分の上面と管状ネック部の外面との間に延びる少なくとも1つの補強部材とを含み、キャップ部分と、管状ネック部と、少なくとも1つの補強部材とは一体部品である。
【0007】
更なる特徴および長所は、以下の詳細な説明で述べられると共に、部分的にはその説明から当業者に自明であり、または、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載されているように実施形態を実施することによって認識される。
【0008】
上記の概要説明および以下の詳細説明は、単に例示的なものであり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部をなすものである。図面は、1以上の実施形態を示しており、明細書と共に、様々な実施形態の原理および作用を説明する役割をするものである。
【0009】
本開示は、純粋に限定するものではない例として与えられている以下の説明および添付の図からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態による例示的な細胞培養装置の模式的な上面図
図2図1に示されている装置の線2-2に沿った模式的な断面図
図3】本開示の実施形態による閉鎖アセンブリを示す
図4】本開示の実施形態による閉鎖アセンブリを示す
図5】本開示の実施形態による閉鎖アセンブリの断面図
図6】本開示の実施形態による閉鎖アセンブリの一部分の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に例が示されている本実施形態を詳細に参照する。可能な場合には常に、同じまたは類似の部分を参照するために、図面を通して同じの参照番号が用いられる。
【0012】
本明細書において用いられる単数形の「a」、「an」、および「the」は、特に明記しない限り、複数の被参照物を含むものである。同じ特徴を記載している全ての範囲の終点は、独立して組み合わせることができ、記載されている終点を含む。全ての参照文献は、本明細書において参照することにより組み込まれる。
【0013】
本明細書において用いられる「有する」、「含む」等は非限定的な意味で用いられ、一般的に「含むが、それに限定されない」を意味する。
【0014】
本明細書において用いられる全ての科学用語および技術用語は、特に明記しない限り、当該技術分野において通常用いられている意味を有する。本明細書において与えられる定義は、本明細書において頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することは意図しない。
【0015】
以下、本開示をまず大まかに説明し、次に、幾つかの例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。個々の例示的な実施形態において互いに組み合されて示されている特徴は、必ずしも全てが実現される必要はない。具体的には、個々の特徴は省略されてもよく、または、他の何らかの方法で、同じ例示的な実施形態の示されている他の特徴、もしくは、他の例示的な実施形態の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0016】
本開示の実施形態は、キャップ部分と、キャップ部分の上面から延びる管状ネック部とを含む閉鎖アセンブリに関する。管状ネック部およびキャップ部分は、一体部品としてモールド成型されるのが好ましい。閉鎖アセンブリは、閉鎖アセンブリ上に一体に形成された少なくとも1つの補強要素であって、管状ネック部の外面とキャップ部分の上面との間に延びる少なくとも1つの補強要素を更に含み、少なくとも1つの補強要素は、管状ネック部およびキャップ部分のうちの一方または両方に力が加えられた際の管状ネック部およびキャップ部分に安定性を提供する。本明細書に記載される閉鎖アセンブリは、任意の適切な細胞培養系において用いられ得る。例えば、広口ビン、フラスコ、ボトル、プレート、ビーカー、管、バッグ、灌流チャンバ、バイオリアクター、コーニング社のCellSTACK(登録商標)培養チャンバ装置、および発酵槽は、閉鎖アセンブリまたはその構成要素を組み込むよう容易に適合され得る。
【0017】
例として、図1を参照すると、本明細書に記載されるポート100を組み込んだ細胞培養装置10の例の模式的な上面図が示されている。図示されている細胞培養装置10は、上面15と、上面から延びる2つのポート100とを有する。2つのポートが図示されているが、細胞培養装置10は、任意の適切な数のポート100を含み得ることが理解されよう。また、図示されているポート100は装置10の上面15から延びているが、装置の内部チャンバへのアクセスを設けるために、1以上のポート100が装置10の任意の適切な位置に配置され得ることも理解されよう。ここで図2を参照すると、図1の細胞培養装置の実施形態の線2-2に沿った模式的な断面図が示されている。図示されている装置10は、上壁12、底壁14、および側壁16によって画成された細胞培養チャンバ20を含む。図示されている実施形態では、培養チャンバ20の上壁12は、装置の上部としての役割もする。チャンバ20へのアクセスを設けるために、1以上のポート100(例えば、図1を参照)がチャンバ20と連通している。当然ながら、図2に示されている装置10はかなり簡単な装置であるが、より複雑な装置(例えば、複数の細胞培養チャンバ、気管チャンバ、または、隣接する細胞培養チャンバに流体および/または他の成分を導入するためのチャンバを有するもの等)が、本明細書に記載されるポートまたは閉鎖アセンブリを含むよう修正され得ることが理解されよう。いずれにしても、本明細書に記載されるポートは、細胞培養装置の1以上のチャンバへのアクセスを設ける。
【0018】
本明細書に記載されるポートは、例えば、硬質プラスチック材料、ガラス、金属等の任意の適切な材料で作られ得る。適切なプラスチック材料の例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。ポートは、生体適合性材料で形成されるのが好ましい。一部の実施形態では、ポートは、細胞培養装置のハウジングと同じまたは類似の材料で形成される。ポートは、細胞培養装置のハウジングの一部分と一体にモールド成型されてもよく、溶接されてもよく、接着されてもよく、または別様で細胞培養装置に取り付けられてもよい。
【0019】
本明細書に記載される閉鎖アセンブリは、例えば、硬質プラスチック材料、ガラス、金属等の任意の適切な材料で作られ得る。適切なプラスチック材料の例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が挙げられる。閉鎖アセンブリは、生体適合性材料で形成されるのが好ましい。一部の実施形態では、閉鎖アセンブリは、ポートと同じまたは類似の材料で形成される。閉鎖アセンブリは、例えば、モールド成型等の任意の適切な処理によって形成され得る。
【0020】
本明細書において用いられる「流体」という用語は、例えば、液体、懸濁液、気体、懸濁気体等であるがそれらに限定されない、流れることができる任意の物質を意味する。本開示を通して用いられる「流体および/または他の成分」という用語は、細胞増殖のための栄養素を有する細胞培養培地、細胞、細胞培養処理の副生成物、および、バイオプロセス系において従来添加または生成され得る他の任意の生物学的材料または成分を含み得る流体を指す。本明細書に記載される構造化されたバッグおよび他の容器は、1以上の細胞または試薬を含み得る。それに加えて、バッグは、細胞培養培地を含み得る。細胞培養培地は、例えば、糖類、塩類、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎児血清)、抗生物質、成長因子、異化因子、着色剤、または他の所望の因子であり得るが、それらに限定されない。バッグ内に設けられ得る一般的な培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12混合培地、最小必須培地(MEM)、RPMI培地等が挙げられる。バッグ内には、不死化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚多能性幹細胞または人工多能性幹細胞)等を含むが、それらに限定されない、任意のタイプの培養される細胞が含まれ得る。細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞等であり得る。細胞は、腎細胞、線維芽細胞、乳腺細胞、皮膚細胞、脳細胞、卵巣細胞、肺細胞、骨細胞、神経細胞、筋細胞、心臓細胞、結腸直腸細胞、膵臓細胞、免疫細胞(例えば、B細胞)、血液細胞等を含むが、それらに限定されない、任意の組織タイプであり得る。バッグ内の細胞は、例えば、新たに種まきされた)分散状、密集、二次元、三次元、球状等を含む任意の培養形態であり得る。一部の実施形態では、細胞は、培地無しで存在する(例えば、フリーズドライ、保存料中、冷凍等)。
【0021】
図3図4、および図5を参照すると、本開示の実施形態による閉鎖アセンブリ200は、キャップ部分210と、キャップ部分210の上面230から延びる管状ネック部310とを含む。管状ネック部310は、ネック開口部340と、ネック開口部340から長手方向に管状ネック部310を通って延びる通路350の境界を成す内面340とを含む。通路350は、ネック開口部340とキャップ部分開口部260との間を連通させるよう構成されており、通路350はキャップ部分開口部260と連続している。通路350が、管状ネック部310を通る流体および/または他の成分のための略まっすぐな流路を設けるように、通路350は管状ネック部310の縦軸と同心に画成され得る。管状ネック部310は外面330を更に含み、外面330は、そこから延出する返し320または他の突起を含む。
【0022】
キャップ部分210は、キャップ部分210の上面230から延びる環状側壁220を含む。図3に示されているように、環状側壁220は、キャップ部分210の底部に、環状側壁220の残りの部分の幅を越えて延出する拡張部240を含み得る。図5に示されているように、キャップ部分210は、環状側壁220の内部上に、ポートの外ねじと協働するよう構成された内ねじ270を更に含み、キャップ部分210とポートとが係合するまで閉鎖アセンブリ200が捻られ得るようになっている。キャップ部分210の上面230の下側は、キャップ部分210の上面230から下に延びる環状スカート部280を更に含む。環状スカート部280は環状側壁220よりも直径が小さく、環状側壁220と同心であり、細胞培養装置のポートの内側に嵌るよう構成されている。従来のツイストキャップと同様に、細胞培養装置のポートの壁と環状スカート部280とが協働して、閉鎖アセンブリ200と細胞培養装置のポートとの間を実質的に密閉するようになっている。
【0023】
図4は、本開示の実施形態による、図3に示されている閉鎖アセンブリと類似の閉鎖アセンブリを示す。図4では、同じまたは類似の部分を参照するために、図3において用いられているものと同じ参照番号が用いられている。図示されているように、閉鎖アセンブリ200は、少なくとも1つの刻み222を有する環状側壁220の外面を含み得る。少なくとも1つの刻み222、または、図4に示されているアセンブリでは複数の刻み222は、閉鎖アセンブリのキャップ部分210を把持することを補助する。
【0024】
図5および図6に示されているように、キャップ部分210は、キャップ部分210の上面230から下に延びるショルダー部290を更に含んでおり、ショルダー部290の第1の表面292が環状スカート部280の表面と実質的に対向するようになっている。また、ショルダー部290は、キャップ部分210の環状側壁220の内壁から外にも延びており、ショルダー部290の第2の表面294が内ねじ270に面するようになっている。一般的に、ショルダー部290の第1の表面292および第2の表面294のうちの少なくとも一方は、細胞培養装置のポートの外面と係合して、キャップ部分210の効果的な密閉を更に高める。
【0025】
本開示の実施形態によれば、本明細書に記載される閉鎖アセンブリ200は、環状スカート部280とショルダー部290との間の距離を有する。本明細書において用いられる環状スカート部280とショルダー部290との間の距離とは、環状スカート部の外壁(即ち、環状側壁220に最も近い壁部分)とショルダー部290の第1の表面との間の直線距離の測定値を指す。環状スカート部280とショルダー部290との間の距離は、約0.010インチ(約0.254mm)より大きいものであり得る。例えば、環状スカート部280とショルダー部290との間の距離は、約0.015インチ(約0.381mm)より大きい、約0.020インチ(約0.508mm)より大きい、約0.025インチ(約0.635mm)より大きい、または約0.030インチ(約0.762mm)より大きいものであり得る。環状スカート部280とショルダー部290との間の距離は、約0.010(約0.254mm)インチ~約0.035インチ(約0.889mm)、または約0.015インチ(約0.381mm)~約0.030インチ(約0.762mm)であり得る。本発明者らは、従来のツイストキャップと比較して、環状スカート部280とショルダー部290との間の距離を増加することで、キャップ部分210に力(特に捻る力)が加えられた際の安定性が提供されること、および、閉鎖アセンブリ200にひび割れ、破損、または別様の不具合を生じることなく、本明細書に記載される閉鎖アセンブリ200により大きい力を加えることができることを見出した。
【0026】
再び図3を参照すると、本開示の実施形態による閉鎖アセンブリ200は、少なくとも1つの補強要素250を更に含む。少なくとも1つの補強要素250は、閉鎖アセンブリ200上に一体に形成され、管状ネック部310の外面330とキャップ部分210の上面230との間に延びている。少なくとも1つの補強要素250は、管状ネック部310の外面330とキャップ部分210の上面230との間の距離に跨る角度のついた部分を含む。少なくとも1つの補強要素250は、管状ネック部310およびキャップ部分210の両方に厚さが増加した領域を設け、管状ネック部310およびキャップ部分210のうちの一方または両方に力が加えられた際の管状ネック部310およびキャップ部分210の安定性を提供するよう構成されている。図3には、管状ネック部310の周囲の周りに等間隔に離間された4つのタブとして示されているが、本開示の実施形態による閉鎖アセンブリは任意の数の補強要素250を含んでよく、そのような補強要素250は任意の寸法を有してよい。別の一例として、少なくとも1つの補強要素250は、ネック部の周囲全体の周りに延びる単一のタブであってもよい。
【0027】
本明細書に記載される閉鎖アセンブリ設計についてのエンジニアリングモデルを開発し、従来の閉鎖アセンブリ設計についてのモデルと比較した。モデル1は従来の閉鎖アセンブリに従って設計され、環状スカート部とショルダー部との間の距離は0.0075インチ(0.1905mm)とした。モデル2は、環状スカート部とショルダー部との間の距離が0.025インチ(0.635mm)の閉鎖アセンブリである。モデル3は、環状スカート部とショルダー部との間の距離が0.035インチ(0.889mm)の閉鎖アセンブリである。これらのモデル設計は、(米国ペンシルベニア州キャノンズバーグに所在するANSYS社から市販されている)構造解析ソフトウェアを用いて生成および解析された。異なるモデル設計のキャップ部分に、閉鎖アセンブリモデルに140.6lbf(約63.76kgf)の負荷が加えられるシミュレーションされた締付けトルクを受けさせ、応力解析を行った。各モデルについて最大ミーゼス応力を決定し、その結果が表Iに示されている。
【0028】
【表1】
【0029】
表Iの結果からわかるように、環状スカート部とショルダー部との間の距離が増加すると、締付けトルクを受けた際に閉鎖アセンブリに生じる最大ミーゼス応力が増加した。上記の構造解析ソフトウェアを用いて、モデルの材料の降伏強度を決定したところ、約4100psi(約288.26kg/cm)であった。表Iの結果を参照すると、モデル1の従来の閉鎖アセンブリには、材料の降伏強度より高い最大ミーゼス応力が生じ、一方、モデル2およびモデル3の閉鎖アセンブリ設計には、材料の降伏強度より低い最大ミーゼス応力が生じたことがわかる。従って、モデル1の従来の閉鎖アセンブリは、キャップ部分を細胞培養装置のポートと係合させるためにキャップ部分が捻られる間にキャップ部分が締付けトルクを受ける際に、モデル2およびモデル3の閉鎖アセンブリ設計よりも、ひび割れ、破損、または別様の不具合が生じる可能性が高いことが予測できる。
【0030】
本明細書に記載される閉鎖アセンブリ設計についての更なるエンジニアリングモデルを開発し、従来の閉鎖アセンブリ設計についてのモデルと比較した。モデル4は従来の閉鎖アセンブリに従って設計され、本明細書に記載される補強部材を有していなかった。モデル5は、半径が0.04インチ(1.016mm)の返しを有する外面と、管状ネック部の周囲の周りに等間隔に離間された4つの補強部材とを含む管状ネック部を有する閉鎖アセンブリである。モデル6は、半径が0.08インチ(2.032mm)の返しを有する外面と、管状ネック部の周囲の周りに等間隔に離間された4つの補強部材とを含む管状ネック部を有する閉鎖アセンブリである。これらの異なるモデル設計の返し付き管状ネック部に、最大ミーゼス応力が材料の降伏強度に達するまで力を徐々に増加させたシミュレーションされた曲げ力を受けさせた。各モデルについて、各閉鎖アセンブリ設計についての最大負荷を決定し、その結果が表IIに示されている。
【0031】
【表2】
【0032】
表IIの結果からわかるように、閉鎖アセンブリ設計に補強部材を追加することで、ひび割れ、破損、または別様の不具合を生じることなく閉鎖アセンブリが受け得る最大負荷が増加した。表IIの結果を参照すると、モデル5およびモデル6の補強部材は、閉鎖アセンブリが受け得る最大負荷を、モデル4の従来の閉鎖アセンブリと比較して約75%~約88%増加させたことがわかる。従って、モデル4の従来の閉鎖アセンブリは、管状ネック部が曲げ力を受けた際に、モデル5およびモデル6の閉鎖アセンブリ設計よりも、ひび割れ、破損、または別様の不具合が生じる可能性が高いことが予測できる。
【0033】
本開示の態様(1)によれば、閉鎖アセンブリが提供される。前記閉鎖アセンブリは、キャップ部分と、前記キャップ部分の上面から延びる管状ネック部と、前記キャップ部分の前記上面と前記管状ネック部の外面との間に延びる少なくとも1つの補強部材とを含み、前記キャップ部分と、前記管状ネック部と、前記少なくとも1つの補強部材とは一体部品である。
【0034】
本開示の別の態様(2)によれば、態様(1)の閉鎖アセンブリが提供され、前記少なくとも1つの補強部材は、前記管状ネック部の前記周囲の周りに等間隔に離間された複数の補強部材を含む。
【0035】
本開示の別の態様(3)によれば、態様(1)の閉鎖アセンブリが提供され、前記少なくとも1つの補強部材は、前記ネック部の前記周囲全体の周りに延びる1つの補強部材を含む。
【0036】
本開示の別の態様(4)によれば、態様(1)~(3)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、ネック開口部と、キャップ部分開口部と、前記管状ネック部内において前記ネック開口部と前記キャップ部分との間に延びる通路とを更に含み、該通路は前記キャップ部分開口部と連続している。
【0037】
本開示の別の態様(5)によれば、態様(1)~(4)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記管状ネック部は、前記管状ネック部の前記外面から延びる返しを更に含む。
【0038】
本開示の別の態様(6)によれば、態様(1)~(5)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記キャップ部分は、前記キャップ部分の前記上面から延びる環状側壁を含む。
【0039】
本開示の別の態様(7)によれば、態様(6)の閉鎖アセンブリが提供され、前記環状側壁は、前記環状側壁の内壁から延出する内ねじを含む。
【0040】
本開示の別の態様(8)によれば、態様(1)~(7)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記キャップ部分は、前記キャップ部分の前記上面から下に延びる環状スカート部を含み、該環状スカート部は前記環状側壁と同心であり、前記環状スカート部は、前記環状側壁の直径より小さい直径を有する。
【0041】
本開示の別の態様(9)によれば、態様(6)~(8)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記キャップ部分の前記上面から下に延びる第1の表面と前記環状側壁の内壁から外に延びる第2の表面とを有するショルダー部を含む。
【0042】
本開示の別の態様(10)によれば、態様(9)の閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の距離を有し、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.010インチ(約0.254mm)より大きい。
【0043】
本開示の別の態様(11)によれば、態様(10)の閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.015インチ(約0.381mm)より大きい。
【0044】
本開示の別の態様(12)によれば、態様(10)~(11)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.020インチ(約0.508mm)より大きい。
【0045】
本開示の別の態様(13)によれば、態様(10)~(12)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.025インチ(約0.635mm)より大きい。
【0046】
本開示の別の態様(14)によれば、態様(10)~(13)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.030インチ(約0.762mm)より大きい。
【0047】
本開示の別の態様(15)によれば、態様(10)の閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.010インチ(約0.254mm)~約0.035インチ(約0.889mm)である。
【0048】
本開示の別の態様(16)によれば、態様(10)の閉鎖アセンブリが提供され、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離は約0.015インチ(約0.381mm)~約0.030インチ(約0.762mm)である。
【0049】
本開示の別の態様(17)によれば、態様(6)~(16)のいずれか1つの閉鎖アセンブリが提供され、前記環状側壁の前記外面上に少なくとも1つの刻みを更に含む。
【0050】
本開示は、限られた数の実施形態を含んでいるが、本開示の利益を得た当業者には、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることが認識されよう。
【0051】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0052】
実施形態1
閉鎖アセンブリにおいて、
キャップ部分と、
前記キャップ部分の上面から延びる管状ネック部と、
前記キャップ部分の前記上面と前記管状ネック部の外面との間に延びる少なくとも1つの補強部材と
を含み、
前記キャップ部分と、前記管状ネック部と、前記少なくとも1つの補強部材とが一体部品である
ことを特徴とする閉鎖アセンブリ。
【0053】
実施形態2
前記少なくとも1つの補強部材が、前記管状ネック部の前記周囲の周りに等間隔に離間された複数の補強部材を含む、実施形態1記載の閉鎖アセンブリ。
【0054】
実施形態3
前記少なくとも1つの補強部材が、前記ネック部の前記周囲全体の周りに延びる1つの補強部材を含む、実施形態1記載の閉鎖アセンブリ。
【0055】
実施形態4
ネック開口部と、キャップ部分開口部と、前記管状ネック部内において前記ネック開口部と前記キャップ部分との間に延びる通路とを更に含み、該通路が前記キャップ部分開口部と連続している、実施形態1~3のいずれか1つの閉鎖アセンブリ。
【0056】
実施形態5
前記管状ネック部が、前記管状ネック部の前記外面から延びる返しを更に含む、実施形態1~4のいずれか1つの閉鎖アセンブリ。
【0057】
実施形態6
前記キャップ部分が、前記キャップ部分の前記上面から延びる環状側壁を含む、実施形態1~5のいずれか1つの閉鎖アセンブリ。
【0058】
実施形態7
前記環状側壁が、前記環状側壁の内壁から延出する内ねじを含む、実施形態6記載の閉鎖アセンブリ。
【0059】
実施形態8
前記キャップ部分が、前記キャップ部分の前記上面から下に延びる環状スカート部を含み、該環状スカート部が前記環状側壁と同心であり、前記環状スカート部が、前記環状側壁の直径より小さい直径を有する、実施形態1~7のいずれか1つの閉鎖アセンブリ。
【0060】
実施形態9
前記キャップ部分の前記上面から下に延びる第1の表面と前記環状側壁の内壁から外に延びる第2の表面とを有するショルダー部を更に含む、実施形態6~8のいずれか1つに記載の閉鎖アセンブリ。
【0061】
実施形態10
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の距離を有し、前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.010インチ(約0.254mm)より大きい、実施形態9記載の閉鎖アセンブリ。
【0062】
実施形態11
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.015インチ(約0.381mm)より大きい、実施形態10に記載の閉鎖アセンブリ。
【0063】
実施形態12
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.020インチ(約0.508mm)より大きい、実施形態10~11のいずれか1つに記載の閉鎖アセンブリ。
【0064】
実施形態13
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.025インチ(約0.635mm)より大きい、実施形態10~12のいずれか1つに記載の閉鎖アセンブリ。
【0065】
実施形態14
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.030インチ(約0.762mm)より大きい、実施形態10~13のいずれか1つに記載の閉鎖アセンブリ。
【0066】
実施形態15
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.010インチ(約0.254mm)~約0.035インチ(約0.889mm)である、実施形態10記載の閉鎖アセンブリ、
実施形態16
前記環状スカート部と前記ショルダー部の前記第1の表面との間の前記距離が約0.015インチ(約0.381mm)~約0.030インチ(約0.762mm)である、実施形態10記載の閉鎖アセンブリ。
【0067】
実施形態17
前記環状側壁の前記外面上に少なくとも1つの刻みを更に含む、実施形態6~16のいずれか1つに記載の閉鎖アセンブリ。
【符号の説明】
【0068】
10 細胞培養装置
20 細胞培養チャンバ
100 ポート
200 閉鎖アセンブリ
210 キャップ部分
220 環状側壁
222 刻み
230 上面
250 補強要素
260 キャップ部分開口部
280 環状スカート部
290 ショルダー部
310 管状ネック部
330 外面
320 返し
340 ネック開口部
350 通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6