IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

特許7555191マニホールド、冷却装置、および情報処理システム
<>
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図1
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図2
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図3
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図4
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図5
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図6
  • 特許-マニホールド、冷却装置、および情報処理システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】マニホールド、冷却装置、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240913BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
H05K7/20 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020027081
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021131753
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147164
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】林 信幸
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】富澤 哲生
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-170877(JP,A)
【文献】実開昭56-176270(JP,U)
【文献】特開昭56-156334(JP,A)
【文献】特開2018-74100(JP,A)
【文献】特開2018-6594(JP,A)
【文献】特開2018-6527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/20
H05K7/20
H01L23/34-23/46
E03B7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却対象に向けて液体を供給する複数の配管の各々との複数の第1の接続口を長手方向に配置しており、前記複数の第1の接続口の少なくとも一部よりも長手方向における下部に配置した給水口から流入した前記液体であって、ポンプを介して前記給水口から給水された前記液体を前記複数の配管に分岐して前記複数の冷却対象に向けて供給する給水配管と、
前記給水配管から前記複数の配管を介して前記複数の冷却対象に向けて供給された前記液体を、長手方向に配置された複数の第2の接続口から回収して、前記複数の第2の接続口の少なくとも一部より長手方向における下部に配置した排水口から前記ポンプに排水する排水配管と、
を有し、
前記給水配管及び前記排水配管の少なくとも一方は、
前記給水配管又は前記排水配管の内壁と前記液体とを隔て、前記液体の凍結に起因する体積膨張によって加わる圧力によって前記内壁との間の気体層の体積が減少する方向への変形であって、前記内壁側に凸の曲線の形状に変形するように、前記給水口または前記排水口よりも長手方向における上部に配置された壁と
を有する
ことを特徴とするマニホールド。
【請求項2】
前記壁は、前記給水配管から前記複数の配管を介して前記複数の冷却対象に向けて供給された前記液体が前記排水配管から排水可能となるような位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記壁は、前記給水配管又は前記排水配管の内壁の長手方向の側面に沿って設けられることを特徴とする請求項2に記載のマニホールド。
【請求項4】
前記壁は、前記給水配管および前記排水配管における前記給水口および前記排水口と前記複数の配管との接続部分とを除くすべての内壁の側面に沿って設けられることを特徴とする請求項2に記載のマニホールド。
【請求項5】
前記壁は、前記給水配管又は前記排水配管の内壁と対面する側面に沿って設けられることを特徴とする請求項2に記載のマニホールド。
【請求項6】
前記壁は、樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマニホールド。
【請求項7】
前記壁は、ゴムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマニホールド。
【請求項8】
複数の冷却対象に向けて液体を供給する複数の配管の各々との複数の第1の接続口を長手方向に配置しており、前記複数の第1の接続口の少なくとも一部よりも長手方向における下部に配置した給水口から流入した前記液体であって、ポンプを介して前記給水口から給水された前記液体を前記複数の配管に分岐して前記複数の冷却対象に向けて供給する給水配管と、前記給水配管から前記複数の配管を介して前記複数の冷却対象に向けて供給された前記液体を、長手方向に配置された複数の第2の接続口から回収して、前記複数の第2の接続口の少なくとも一部より長手方向における下部に配置した排水口から前記ポンプに排水する排水配管と、
前記給水配管と前記排水配管前記複数の配管を介して接続される複数の熱冷却用のプレートと、
を有し、
前記給水配管及び前記排水配管の少なくとも一方は、
前記給水配管又は前記排水配管の内壁と前記液体とを隔て、前記液体の凍結に起因する体積膨張によって加わる圧力によって前記内壁との間の気体層の体積が減少する方向への変形であって、前記内壁側に凸の曲線の形状に変形するように、前記給水口または前記排水口よりも長手方向における上部に配置された壁と
を有する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
複数の冷却対象に向けて液体を供給する複数の配管の各々との複数の第1の接続口を長手方向に配置しており、前記複数の第1の接続口の少なくとも一部よりも長手方向における下部に配置した給水口から流入した前記液体であって、ポンプを介して前記給水口から給水された前記液体を前記複数の配管に分岐して前記複数の冷却対象に向けて供給する給水配管と、前記給水配管から前記複数の配管を介して前記複数の冷却対象に向けて供給された前記液体を、長手方向に配置された複数の第2の接続口から回収して、前記複数の第2の接続口の少なくとも一部より長手方向における下部に配置した排水口から前記ポンプに排水する排水配管と、
前記給水配管と前記排水配管前記複数の配管を介して接続される複数の熱冷却用のプレートと、
前記複数の冷却対象の何れかであるプロセッサを格納し、前記格納されたプロセッサから発生する熱を前記複数の熱冷却用のプレートのうち少なくとも何れかのプレート内に流れる液体によって吸収可能な位置に設けられる情報処理装置と、
を有し、
前記給水配管及び前記排水配管の少なくとも一方は、
前記給水配管又は前記排水配管の内壁と前記液体とを隔て、前記液体の凍結に起因する体積膨張によって加わる圧力によって前記内壁との間の気体層の体積が減少する方向への変形であって、前記内壁側に凸の曲線の形状に変形するように、前記給水口または前記排水口よりも長手方向における上部に配置された壁と
を有する
ことを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールドおよび冷却装置、および情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の分野においては、電子部品の発熱量の増大に伴い、従来から用いられている空冷方式の冷却機構に代えて、液体の冷媒を循環させる液冷方式の冷却機構の採用が試みられている。
【0003】
例えば、サーバブレードを差し込む複数のスロットを有するラックマウント型サーバの場合、マニホールドを使用し、スロットに差し込むサーバブレードそれぞれに対して冷却液用の配管を設ける。
【0004】
冷却液はマニホールドに流入し、マニホールドは冷却液を一時的に蓄えることで流量の増減を平準化した後、マニホールドから各ブランチへ分配され、サーバブレードそれぞれに対して設けられた配管へ配水される。これによって、複数のサーバブレードを効率よく冷却することができる。
【0005】
例えば、特許文献1や特許文献2のような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-170877号公報
【文献】特開2018-74100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、寒冷地でサーバを設置する場合、点検のためなどにサーバを電源OFFにしたとき、マニホールドに残っている冷却液が凍ってしまい体積膨張することがある。冷却液の体積膨張が発生したことによる圧力に、マニホールドが耐えられなくなり破損してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一観点によれば、液体の給水口と給水口から流入した液体を排水する排水口とを有する配管と、液体の冷却膨張による液体の体積の変動量分、体積の減少する気体層と、を有することを特徴とするマニホールドが提供される。
【発明の効果】
【0009】
マニホールド内の冷却液が凍ってしまって体積が膨張しても、マニホールドの破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各実施形態に係るサーバシステムの外観図の一例である。
図2】各実施形態に係るクーリングプレートを接続した冷却システムの一例である。
図3】各実施形態に係る冷却システムにおける冷却液の流れを説明するための図である。
図4】従来のマニホールドの給水配管または排水配管の断面図である。
図5】第1実施形態に係るマニホールドの給水配管または排水配管の断面図である。
図6】第2実施形態に係るマニホールドの給水配管または排水配管の断面図である。
図7】第3実施形態に係るマニホールドの給水配管または排水配管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0012】
図1(a)および(b)は、各実施形態に係るサーバシステム100の外観図の一例である。
【0013】
図1(a)に示すサーバシステム100は情報処理システムの一例である。サーバシステム100は、ブレードサーバ110と冷却システム120と電源ユニット130とサーバラック140とを含む。
【0014】
ブレードサーバ110は、複数のシステムボード111と複数のIOシステムボード112とを含む。
【0015】
システムボード111とIOシステムボード112は、情報処理装置の一例である。システムボード111とIOシステムボード112は、サーバラック140に対して抜き差し可能なサーバである。システムボード111とIOシステムボード112の内部には、1つもしくは複数のCPU(Central Processing Unit)を搭載した回路基板を備えている。これらのCPUには、CPUの熱を冷却液に伝導するためのクーリングプレートが装着されている。クーリングプレート内部に冷却液を流すことによってCPUの熱を冷却液に伝導させている。クーリングプレート(C/P)は、熱伝導の良い例えば銅、アルミニウム等の金属が用いられる。
【0016】
冷却システム120は、ブレードサーバ110で発生した熱を冷却するためのシステムである。
【0017】
電源ユニット130は、サーバラック140に対して抜き差し可能であり、システムボード111とIOシステムボード112に電力を供給するユニットである。
【0018】
サーバラック140は、ブレードサーバ110と、冷却システム120と、電源ユニット130等を搭載するラックである。
【0019】
図1(b)に冷却システム120の詳細を示す。
【0020】
冷却システム120は、給水側マニホールド150と排水側マニホールド160とを含む。給水側マニホールド150と排水側マニホールド160は、例えばステンレス、銅、アルミニウム等の金属や架橋ポリエチレン(PE)、ポリブテン(PB)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂で製造される。
【0021】
給水側マニホールド150は、冷却液をシステムボード111とIOシステムボード112それぞれに搭載されているクーリングプレートに給水するための配管である。
【0022】
排水側マニホールド160は、システムボード111とIOシステムボード112の熱を吸収した冷却液をラジエータに排出するための配管である。
【0023】
冷却液は、給水側マニホールド150から給水され、クーリングプレートを介して、排水側マニホールド160から排出される。
【0024】
給水側マニホールド150は、給水口151と、給水配管152と、システムボード用給水配管153と、IOシステムボード用給水配管154と、空気抜き弁155と、電動弁156とを含む。他にも給水側マニホールド150は、各種センサやフィルタなどを含んでも良い。冷却液は、例えば、水またはプロピレングリコール系不凍液またはフッ素系不活性液体が使用される。
【0025】
給水口151は、ラジエータなどで熱交換により冷やされた冷却液を給水配管152に供給する。
【0026】
給水配管152は、給水口151から供給された冷却液をシステムボード用給水配管153およびIOシステムボード用給水配管154に分岐させる。
【0027】
システムボード用給水配管153は、給水配管152から分岐されて供給された冷却液をシステムボード111に搭載されたクーリングプレートに供給する。
【0028】
IOシステムボード用給水配管154は、給水配管152から分岐されて供給された冷却液をIOシステムボード112に搭載されたクーリングプレートに供給する。
【0029】
空気抜き弁155は、給水配管152に溜まってしまった空気をぬくために設けられる。給水配管152に空気がたまってしまうと、システムボード用給水配管153やIOシステムボード用給水配管154を介して流入量を調整するポンプに空気が流入してしまう。そうすると、ポンプが正常に動かずに給水口151における冷却液の流入量の調整ができなくなってしまう。給水配管152に溜まった空気を、空気抜き弁155を用いてぬくことができる。
【0030】
電動弁156は、電動モータにより弁を開閉させ、給水配管152に供給する冷却液の流れを適切に制御する。
【0031】
排水側マニホールド160は、排水口161と、排水配管162と、システムボード用排水配管163と、IOシステムボード用排水配管164と、逆止弁165とを含む。
【0032】
排水口161は、システムボード111やIOシステムボード112の熱を吸収した冷却液を、ラジエータに排水する。
【0033】
排水配管162は、システムボード用排水配管163およびIOシステムボード用排水配管164を介して、システムボード111やIOシステムボード112の熱を吸収した冷却液が流入される。
【0034】
システムボード用排水配管163は、システムボード111に搭載されるクーリングプレートと接続され、クーリングプレートから供給された冷却液を排水配管162に供給する。
【0035】
IOシステムボード用排水配管164は、IOシステムボード112に搭載されるクーリングプレートと接続され、クーリングプレートから供給された冷却液を排水配管162に供給する。
【0036】
逆止弁165は、排水配管162に供給された冷却液が排水口161ではなくシステムボード用排水配管163やIOシステムボード用排水配管164側に逆流するのを防ぐ。
【0037】
このような構成の冷却システム120により、システムボード111およびIOシステムボード112で発生した熱を、冷却液により吸収することができる。
【0038】
図2(a)、(b)、および(c)は、各実施形態に係るクーリングプレートを接続した冷却システム120の一例である。
【0039】
図2(a)は、クーリングプレートを接続した冷却システム120を説明するための図である。
【0040】
冷却システム120は、図1(b)で説明した部品のほかに、システムボード用クーリングプレート210と、IOシステムボード用クーリングプレート220とを含む。システムボード用クーリングプレート210と、IOシステムボード用クーリングプレート220は、熱冷却用のプレートの一例である。
【0041】
システムボード用クーリングプレート210は、システムボード111に搭載されているCPUなどが発する熱を吸収するためのプレートである。
【0042】
システムボード用クーリングプレート210は、システムボード111内にCPUなどと共に搭載される。
【0043】
さらに、システムボード用クーリングプレート210は、システムボード用給水配管153と接続されることによって、システムボード用クーリングプレート210の内部に冷却液を流入させる。システムボード用クーリングプレート210は、システムボード用排水配管163と接続されることによって、システムボード用クーリングプレート210の内部に流入した冷却液を排水する。
【0044】
IOシステムボード用クーリングプレート220は、IOシステムボード用給水配管154と接続されることによって、IOシステムボード用クーリングプレート220の内部に冷却液を流入させる。IOシステムボード用クーリングプレート220は、IOシステムボード用排水配管164と接続されることによって、IOシステムボード用クーリングプレート220の内部に流入した冷却液を排水する。
【0045】
図2(b)は、システムボード用クーリングプレート210の詳細図である。
【0046】
冷却液は、システムボード用クーリングプレート流入口211から流入し、複数のクーリングプレート213を経由し、システムボード用クーリングプレート流出口212から流出する。
【0047】
図2(c)は、IOシステムボード用クーリングプレート220の詳細図である。
【0048】
冷却液は、IOシステムボード用クーリングプレート流入口221から流入し、複数のクーリングプレート223を経由し、IOシステムボード用クーリングプレート流出口222から流出する。
【0049】
図3は、各実施形態に係る冷却システム120における冷却液の流れを説明するための図である。
【0050】
給水口151から給水された冷却液は給水配管152を介してシステムボード用給水配管153またはIOシステムボード用給水配管154に給水される。このとき、給水配管152では、空気がポンプに流入しないように、運用中は出来るだけ給水配管152が満水となるように冷却液が給水される。
【0051】
各システムボード用給水配管153またはIOシステムボード用給水配管154に流入した冷却液は、システムボード111に搭載されているシステムボード用クーリングプレート210、またはIOシステムボード112に搭載されているIOシステムボード用クーリングプレート220に流入される。このとき、冷却液はシステムボード111またはIOシステムボード112で発生した熱を吸収する。
【0052】
システムボード111またはIOシステムボード112の熱を吸収した冷却液は、システムボード用排水配管163またはIOシステムボード用排水配管164を介して排水配管162に流入される。
【0053】
排水配管162も、給水配管152と同様に、空気がポンプに流入しないように運用中は出来るだけ排水配管162が満水となるように冷却液の流入量が制御されていることが望ましい。
【0054】
排水配管162に流入された冷却液は、排水口161を介してラジエータへ流入される。ラジエータでは冷却液が冷却され、ポンプを介して給水口151へ給水される。
【0055】
このようにして冷却液を循環させることで、システムボード111およびIOシステムボード112を冷却する。
【0056】
図4(a)および(b)は、従来のマニホールドの給水配管または排水配管の断面図である。
【0057】
図4(a)および(b)は、図3における点線301の断面を矢印302の方向からみたときの給水配管または点線303の断面を矢印304の方向からみたときの排水配管の断面図である。
【0058】
上述したとおり、給水配管や排水配管はポンプに空気が入らないように可能な限り満水となるように冷却液の流入量を制御することが望ましい(図4(a))。図4(b)のように給水配管や排水配管が満水の状態で電源がOFFとなってしまうと、外部環境等によって冷却液が凍結によって膨張し、給水配管や排水配管の一部401が破損してしまう。
【0059】
(実施例1)
図5(a)および(b)は、第1実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0060】
図5(a)および(b)は、図3における点線301の断面を矢印302の方向からみたときの給水配管152または点線303の断面を矢印304の方向からみたときの排水配管162の断面図である。
【0061】
図5(a)は冷却液凍結前の第1実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0062】
給水配管152または排水配管162内に、給水口151または排水口161(下部)とは逆側の位置(上部)に隔壁510を設けている。
【0063】
隔壁510は、壁の一例である。
【0064】
隔壁510と給水配管152(または排水配管162)の内壁との間に空気層511が形成され、給水口151より流入する冷却液は空気層511には流入しない。また、冷却液層512を満水にするように制御することで、ポンプへの空気の流入を防ぐことができる。空気層511は気体層の一例であり、空気以外の気体であっても適用可能である。例えば、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウムなどが適用可能である。特に、窒素は体積変化の温度依存性が小さく安価なので実用に適する。
【0065】
また、気体層(空気層511)は、大気圧または加圧で封入されている必要はなく、10Pa程度の低真空に減圧されていても構わない。
【0066】
気体は個体に比べて熱伝導率が小さいため、空気層511を設けることによってマニホールド自体の断熱性が向上し、冷却液に対する凍結耐性が高めることができる。さらに、空気層511を低真空状態にした場合、気体による熱伝導が小さくなるため、凍結耐性をより高めることができる。
【0067】
隔壁510は、冷却液が凍結し膨張したときの圧力により変形する素材で作られる。隔壁510は、冷却液の流入による圧力ではほぼ変形しない素材で作られる。例えばゴム、樹脂など柔軟性や弾性を有する素材が隔壁をつくるために用いられる。
【0068】
図5(b)は、冷却液の凍結時の第1実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0069】
冷却液層512に冷却液が満水の状態で冷却液が凍結した場合、凍結した冷却液の体積は約1.1倍に増える。冷却液の体積の膨張により隔壁510に圧力がかかる。隔壁510に圧力がかかることによって隔壁は変形する。これによって給水配管152または排水配管162方向への圧力は軽減されるので、給水配管152または排水配管162の破損を防止することができる。
【0070】
また、上記の実施形態では、隔壁510を設けることによって空気層511を形成したが、給水口151から流入する冷却液の流入量の制御によって常に空気層511が形成されるようにしてもよい。しかし、この場合は、各システムボード用給水配管153またはIOシステムボード用給水配管154に、空気層511の空気が流入しないように流入量を制御する必要がある。
【0071】
(実施例2)
運用開始前にテストで冷却液を循環させることがある。その場合、輸送する前には冷却液を抜いてから輸送するが、マニホールドから完全に冷却液をぬくことは難しい。その結果、マニホールドの一部に水が残ったまま寒冷地に輸送され、一時的に外に保管されることがある。
【0072】
この一時的な保管の際にも、マニホールドに残っている冷却液が凍結し、マニホールドが破損してしまう場合がある。
【0073】
実施例2に係るマニホールドは上記のようにマニホールドの一部に残っている冷却液が凍結してしまった場合にもマニホールドの破損を防ぐことができる。
【0074】
図6(a)および(b)は、第2実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0075】
図6(a)および(b)は、図3における点線301の断面を矢印302の方向からみたときの給水配管152または点線303の断面を矢印304の方向からみたときの排水配管162の断面図である。
【0076】
図6(a)は、冷却液凍結前の第1実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0077】
給水配管152または排水配管162内の側壁(給水口付近は除く)に、隔壁610が設けられている。隔壁610は、冷却液が凍結し膨張したときの圧力により変形する素材で作られる。隔壁610は、冷却液の流入による圧力ではほぼ変形しない素材で作られる。例えばゴム、樹脂など柔軟性や弾性を有する素材が隔壁をつくるために用いられる。
【0078】
隔壁610と給水配管152(または排水配管162)の内壁との間に、空気層611が形成され、給水口151より流入する冷却液は空気層611には流入しない。また、運用中は、冷却液層612を満水にするように制御することで、ポンプへの空気の流入を防ぐことができる。空気層611は気体層の一例であり、空気以外の気体であっても適用可能である。
【0079】
図6(a)は、マニホールドの給水配管152または排水配管162の一部に冷却液が残っている状態である。
【0080】
図6(b)は、冷却液の凍結時の第2実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0081】
冷却液層612内の冷却液が凍結した場合、冷却液は膨張し、圧力により隔壁610は図6(b)のとおり変形する。空気層611は圧縮されるものの、給水配管152または排水配管162への圧力はかからない(または軽減される)ので、給水配管152または排水配管162の破損を防止することができる。
【0082】
(実施例3)
実施例3に係るマニホールドは、給水配管152または排水配管162のほぼすべての面への圧力を軽減するためのものである。
【0083】
図7(a)および(b)は、第3実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0084】
図7(a)および(b)は、図3における点線301の断面を矢印302の方向からみたときの給水配管152または点線303の断面を矢印304の方向からみたときの排水配管162の断面図である。
【0085】
図7(a)は、冷却液凍結前の第3実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162の断面図である。
【0086】
給水配管152または排水配管162内の側壁(給水口付近は除く)、および給水口151または排水口161(下部)とは逆側の位置(上部)に、隔壁710を設けている。隔壁710は、冷却液が凍結し膨張したときの圧力により変形する素材で作られる。隔壁710は、冷却液の流入による圧力ではほぼ変形しない素材で作られる。例えば、ゴムまたは樹脂などの、柔軟性や弾性を有する素材が隔壁をつくるために用いられる。
【0087】
隔壁710と給水配管152(または排水配管162)の内壁との間に、空気層711が形成され、給水口151より流入する冷却液は空気層711には流入しない。また、運用時は冷却液層712を満水にするように制御することでポンプへの空気の流入を防ぐことができる。空気層711は気体層の一例であり、空気以外の気体であっても適用可能である。
【0088】
図7(b)は、冷却液の凍結時の第3実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管の断面図である。
【0089】
冷却液層712内の冷却液が凍結した場合、冷却液は膨張し、圧力により隔壁710は図7(b)のとおり変形する。空気層711は圧縮されるものの、給水配管152または排水配管162への圧力はかからない(または軽減される)ので、給水配管152または排水配管162の破損を防止することができる。
【0090】
また、図7(b)の例では満水状態で冷却液が凍結しているが、第3実施形態に係るマニホールドの給水配管152または排水配管162は、第2実施形態と同じように、マニホールドの給水配管152または排水配管162の一部に冷却液が残っている状態であっても、冷却液の凍結時に側面に沿って設けられた隔壁710が変形することによって、給水配管152または排水配管162の破損を防止することができる。
【0091】
マニホールド内に設けた空気層と液体層の比率と、マニホールドが満水状態で凍結時の破損の有無について実験結果を以下の表で示す。
【0092】
【表1】
【0093】
上記のとおり、マニホールド内に設ける空気層が4%以上となるようにマニホールド内に隔壁を設けることで、凍結時のマニホールドの破損を防ぐことができる。
【0094】
以上の実施例に限らず、ポンプに空気が流入しない位置に隔壁を設け、空気層を形成すればマニホールドの破損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0095】
100 サーバシステム
110 ブレードサーバ
111 システムボード
112 IOシステムボード
120 冷却システム
130 電源ユニット
140 サーバラック
150 給水側マニホールド
160 排水側マニホールド
210 システムボード用クーリングプレート
220 IOシステムボード用クーリングプレート
510、610、710 隔壁
511、611、711 空気層
512、612、712 冷却液層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7