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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】組成物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/23 20060101AFI20240913BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240913BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240913BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240913BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240913BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20240913BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K8/23
A61K8/81
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q5/12
C08K3/30
C08L33/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020045528
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021147323
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】境 正浩
(72)【発明者】
【氏名】與田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智美
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-343379(JP,A)
【文献】特開2014-058657(JP,A)
【文献】特開平10-182370(JP,A)
【文献】特開2016-210909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ系開始剤を用いて重合した重合体と、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類とを含み、
前記硫黄酸化物誘導体塩類がその構造中に硫黄-硫黄結合を有する、組成物。
【請求項2】
前記硫黄酸化物誘導体塩類がチオ硫酸塩類、無水重亜硫酸塩類及び次亜硫酸塩類よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硫黄酸化物誘導体塩類が無水重亜硫酸塩である請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合体を構成する単量体が、アクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体を含む請求項1からのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料。
【請求項6】
界面活性剤を含む請求項に記載の化粧料。
【請求項7】
無色透明である請求項又はに記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ系開始剤を用いて重合した重合体、特にアクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体の重合体を含む組成物と、この組成物を用いた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ系開始剤は、反応性に優れていると共に、爆発の危険性がなく、溶媒種によらず一定速度で分解する等安全性が高いことから、繊維、ゴム、樹脂、塗料、接着剤等、幅広い分野において、重合体製造時の重合開始剤として使用されている。
【0003】
しかし、アゾ系開始剤を用いて重合反応を行うと、重合反応後に残存するアゾ系開始剤により重合体溶液の粘度が変化したり、残存するアゾ系開始剤の分解により窒素が発生し保存容器の内圧が上昇し安全上の問題が発生したり、保存時の着色の原因にもなる(例えば、特許文献1参照)。
残存するアゾ系開始剤は、時間の経過と共に変色し、特に赤味を帯びた変色が顕著である。このような変色は、重合体の用途、例えば化粧料において、使用者に著しく悪い印象を与えるため、変色の抑制が求められていた。
【0004】
製造法を最適化することで、残存するアゾ系開始剤量を低減することは可能であるが、そのためには長時間加温し続ける必要がある等、工業レベルでの実用化が困難であり現実的ではない。またアゾ系開始剤の残存量をゼロにすることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-143158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アゾ系開始剤を用いて製造された重合体における残存アゾ系開始剤に起因する変色を抑制した組成物と、この組成物を用いた化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、アゾ系開始剤を用いて重合した重合体に、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類を共存させると、赤味の着色が抑制されること、さらに、硫黄酸化物誘導体塩類がその構造中に硫黄-硫黄結合を有する場合は着色の抑止効果により一層優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1] アゾ系開始剤を用いて重合した重合体と、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類とを含む組成物。
【0009】
[2] 前記硫黄酸化物誘導体塩類がその構造中に硫黄-硫黄結合を有する[1]に記載の組成物。
【0010】
[3] 前記硫黄酸化物誘導体塩類がチオ硫酸塩類、無水重亜硫酸塩類及び次亜硫酸塩類よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である[1]又は[2]に記載の組成物。
【0011】
[4] 前記硫黄酸化物誘導体塩類が無水重亜硫酸塩である[3]に記載の組成物。
【0012】
[5] 前記重合体を構成する単量体が、アクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体を含む[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
【0013】
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の組成物を含む化粧料。
【0014】
[7] 界面活性剤を含む[6]に記載の化粧料。
【0015】
[8] 無色透明である[6]又は[7]に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物によれば、アゾ系開始剤を用いて製造された重合体における残存アゾ系開始剤に起因する変色、特に赤味の着色を抑制し、重合体本来の色調を長期に亘り維持することができる。
本発明の組成物によれば、特に化粧料として変色の問題のない、商品価値の高い化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を示して本発明を詳細に説明する。
【0018】
[組成物]
本発明の組成物は、アゾ系開始剤を用いて重合した重合体(以下、「本発明の重合体」と称す場合がある。)と、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類とを含むことを特徴とする。
【0019】
<重合体>
本発明の組成物は、重合反応後、重合体と共に反応系中に残留するアゾ系開始剤により発現する「経時による着色」を抑制するものであることから、本発明の重合体は、アゾ系開始剤を使用して合成された重合体であれば、その構成モノマー種等のポリマー組成や、分子量等のポリマー物性や製造方法は特に限定されない。本発明の組成物の化粧料としての用途、着色抑制の重要性から、本発明の重合体としては、化粧料に用いられる重合体、特に原料単量体として(メタ)アクリル酸誘導体、即ち、アクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体を用いて製造された重合体が好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸誘導体として、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリル酸アミド、メタクリル酸イソプロピルアミド等のメタクリル酸アミドが挙げられる。中でも、第4級窒素を含む(メタ)アクリル酸アミド誘導体や第4級窒素を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体は、化粧料用途に好んで用いられる。
【0021】
第4級窒素を含む(メタ)アクリル酸アミド誘導体としては、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N-エチル-N,N-ジメチルアンモニウム=モノエチル硫酸塩、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウムクロライド、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム=モノメチル硫酸塩、N-[3-{N’-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N’,N’-ジメチルアンモニウム}-2-ヒドロキシプロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-[3-{N’-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N’,N’-ジエチルアンモニウム}-2-ヒドロキシプロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。中でも、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられる。
【0022】
第4級窒素を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N-エチル-N,N-ジメチルアンモニウム=モノエチル硫酸塩、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリエチルアンモニウム=モノエチル硫酸塩、N-[3-{N’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N’,N’-ジメチルアンモニウム}-2-ヒドロキシプロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-[3-{N’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N’,N’-ジエチルアンモニウム}-2-ヒドロキシプロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロライド等のカチオン性基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられる。
【0023】
原料単量体として第4級窒素を含む(メタ)アクリル酸誘導体を用いた重合体としては、(メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド/プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマー(ポリクオタニウム-73)、(プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマー、(メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド/ヒドロキシエチルアクリルアミド)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー、(HEMAグルコシド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー、(アクリル酸ブチル/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド/スチレン)コポリマー、(メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド/加水分解コムギタンパク)コポリマー、ポリアクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリレーツ)コポリマーが挙げられる。中でも、ポリクオタニウム-73、(プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド)コポリマー、(メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド/ヒドロキシエチルアクリルアミド)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマーが好ましく、中でもポリクオタニウム-73が好ましく用いられる。
【0024】
このような重合体は、アゾ系開始剤を用いて常法に従って製造される。
【0025】
本発明の組成物は、これらの重合体の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0026】
<アゾ系開始剤>
本発明の重合体の製造に用いられるアゾ系開始剤としては、特に制限はなく、通常、重合体の製造において、重合開始剤として用いられるものであればよく、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。
【0027】
これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
重合体中のアゾ系開始剤の残存量には特に制限はないが、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが好ましい。アゾ系開始剤の残存量が上記上限以下であれば、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類を共存させることによる着色抑制効果を十分に得ることができる。重合体中のアゾ系開始剤の残存量は、前述のとおり現実的にはゼロにすることは困難であり、通常50ppm以上残存する。
なお、ここで、重合体中のアゾ系開始剤の残存量とは、重合体について、後述の実施例の項に記載の残存アゾ系開始剤量の測定方法で測定された値をさす。
【0029】
[硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類]
本発明で用いる酸化数6未満の硫黄原子を含んだ硫黄酸化物誘導体塩類としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、無水重亜硫酸塩(ピロ亜硫酸塩)、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルフィン酸塩等が挙げられる。これらの塩類は、通常Na、K等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩であることが、溶解性の観点より好ましい。これらの硫黄酸化物誘導体塩類のうち、着色抑制効果の観点から、好ましくは硫黄-硫黄結合を有するものであり、より好ましくは無水重亜硫酸塩類、次亜硫酸塩類、チオ硫酸塩類、特に好ましくは無水重亜硫酸塩が用いられる。
これらの硫黄酸化物誘導体塩類は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
硫黄酸化物誘導体塩類が、アゾ系開始剤に起因する着色を抑制するメカニズムの詳細は明らかではないが、開始剤分解物ラジカルの不活性化であることによると考えられる。ここで、硫黄酸化物誘導体塩類であっても、硫黄原子の酸化数が6であると、活性ラジカル吸収能が無く、このような着色抑制効果を得ることができない。
本発明で用いる硫黄酸化物誘導体塩類の硫黄原子の酸化数は、通常-2又は4であり、4であることが特に好ましい。
【0031】
このような硫黄酸化物誘導体塩類は、安定な無機塩類であり、化粧料等として用いられる組成物に含まれていても何ら問題となることはない。
【0032】
本発明の組成物において、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類の含有量は、アゾ系開始剤による着色の抑制効果が得られる量であればよく、特に制限はないが、通常、アゾ系開始剤に対して10~900重量%、特に50~400重量%であることが好ましい。この添加量は、好ましくは、本発明の重合体に対する含有量として0.025~0.2重量%である。硫黄酸化物誘導体塩類の含有量が上記下限以上であれば、硫黄酸化物誘導体塩類による着色抑制効果を十分に得ることができる。硫黄酸化物誘導体塩類の含有量が上記上限以下であれば硫黄酸化物誘導体塩類が有する臭気を抑制することが可能である。
【0033】
<その他の成分>
本発明の組成物は、通常、本発明の重合体と硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類とを含む水溶液として調製される。この水溶液中の本発明の重合体の濃度には特に制限はなく、その用途に応じて設定される。
また、本発明の組成物は、その用途に応じて、本発明の重合体と上記硫黄酸化物誘導体塩類以外の成分を含むものであってもよい。
本発明の組成物が含有するその他の成分の種類及びその含有量については、特に制限はないが、化粧料の用途においては、後述の界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
[化粧料]
本発明の化粧料は本発明の組成物を含むものである。
本発明の化粧料は本発明の重合体と硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類を含む本発明の組成物に、その種類に応じた添加剤が添加されて調製される。
本発明の化粧料の種類には特に制限はないが、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、染毛剤、パーマ剤、アウトバス用トリートメント、ヘアパック、ヘアスプレー、ヘアフォーム、スタイリング剤、ボディーソープ、ハンドソープ、洗顔料等が挙げられる。
【0035】
このような用途において、本発明の化粧料は、本発明の組成物を本発明の重合体濃度が0.05~20重量%程度となるように用い、その他、界面活性剤やアルコール、溶媒、分散媒などが添加されて調製され、好ましくは無色透明である。
ここで無色透明とは光路長10mmの透過光を観察する場合においてJISZ 8105に定義される無彩色であり、JIS K 0101に規定される濁度にして100FTU以下の溶液であることをさす。
本発明の化粧料は、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類によるアゾ系開始剤に起因する着色抑制効果で、このような無色透明の状態を長期に亘り維持することができ、化粧料としての商品価値が高く、着色により清潔感、清浄感、美観、高級感が損なわれることが防止される。
【0036】
以下、本発明の化粧料に含まれる各種成分について説明する。
【0037】
<溶媒・分散媒>
溶媒又は分散媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール、水が挙げられる。これらの溶媒、分散媒は、1種または2種以上を併用することができる。本発明の化粧料は、水を含有することが好ましく、水の含有量は化粧料の用途によっても異なり、0.1~99重量%の範囲で適宜調整される。
【0038】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤などがあり、これらのうち、特にカチオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を含むことが好ましい。
【0039】
カチオン界面活性剤としては、特に制限されないが、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。カチオン界面活性剤は1種のみでも2種以上を組み合わせても使用可能である。
【0040】
本発明の化粧料中のカチオン界面活性剤の含有量は、その用途によっても異なるが、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。一方、カチオン界面活性剤の機能を十分に得るためには、化粧料中のカチオン界面活性剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。
【0041】
アニオン界面活性剤としては、例えばα-オレフィンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチルアルキルエーテル硫酸エステル塩、パラフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、N-アシル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩等の毛髪化粧料に常用されているものを用いることができる。これらのアニオン界面活性剤の対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アニオン界面活性剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
本発明の化粧料中のアニオン界面活性剤の含有量についても、その用途によって異なるが、5~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。この場合には、アニオン界面活性剤の添加効果が十分に得られて例えば洗浄性が向上し、さらに粘度が好適になって取り扱い性が向上する。
【0043】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等POEソルビット脂肪酸エステル類;POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEモノオレエート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類;POEジステアレート、POEモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類;POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2-オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類;プルロニック等のプルロニック型類;POE・POPセチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;POEプロピレングリコール脂肪酸エステル;POEアルキルアミン;POE脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。なお、POEは「ポリオキシエチレン」を表し、POPは「ポリオキシプロピレン」を表す。これらの親水性非イオン界面活性剤は1種のみでも、複数種を任意の組み合わせおよび配合比率で組み合わせて使用することもできる。
【0044】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性
剤は1種のみでも、複数種を任意の組み合わせおよび配合比率で組み合わせて使用することもできる。
【0045】
半極性界面活性剤としては、例えば、ラウラミンオキシド(ラウリルジメチルアミンオキシド)が挙げられ、好適に用いることができる。半極性界面活性剤は1種のみでも、複数種を任意の組み合わせおよび配合比率で組み合わせて使用することもできる。このような界面活性剤としては例えば市販品を使用することができる。
【0046】
<高級アルコール>
本発明の化粧料は、高級アルコールを含有していてもよい。「高級アルコール」とは炭素数12~24のアルコールを意味する。高級アルコールとしては、1価のアルコールが好ましい。高級アルコールの具体例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0047】
特に毛髪化粧料において、高級アルコールを水、カチオン界面活性剤と共に用いることにより、ラメラ構造と呼ばれるゲルが形成される。そのため、毛髪化粧料がなめらかさやしっとり感の機能を発揮することができる。したがって、高級アルコールは水、カチオン界面活性剤と共に用いることが好ましい。ラメラ構造は、カチオン界面活性剤、高級アルコール、水を例えば加熱混合することによって形成される。高級アルコールは1種類のみでも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
化粧料の粘度を適度に押さえ塗布時のなめらかさを向上させるためには、化粧料中の高級アルコールの合計の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。一方、高級アルコールの機能を十分に得るためには、化粧料中の高級アルコールの含有量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
本発明の化粧料は、上記以外にもシリコーンオイルや、カチオン性高分子、アニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子等の高分子、炭化水素油分、保湿剤(すなわち、水溶性高分子)、pH調整剤、防腐剤、増粘剤等の任意成分を含むことができる。
【0050】
<毛髪化粧料>
本発明の化粧料は毛髪化粧料として特に有用である。毛髪化粧料とは、特に限定されないが、例えば、リンス、コンディショナー、トリートメント等のインバストリートメント(コンディショニング剤);シャンプー等のインバス洗浄剤;ヘアオイル、ヘアミルク、ヘアウォーター、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアスプレー等のアウトバストリートメント(コンディショニング剤);ヘアパック、ヘアフォーム、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアスプレー等のスタイリング剤:ヘアカラー等の染毛剤等が挙げられる。
シャンプーについての処方例を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
リンスについての処方例を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
スタイリング剤についての処方例を下記表3に示す。
【0055】
【表3】
【実施例
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
なお、以下において、重合体としてはメタクリル酸エチルトリモニウムクロリドと、プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミドと、ジメチルアクリルアミドの共重合体(以下、「重合体I」と称す。)を用いた。
この重合体Iは、アゾ系開始剤として2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いて製造されたものであり、以下の方法で測定した残存アゾ系開始剤量は0.1重量%であった。
【0058】
<残存アゾ系開始剤量の測定方法>
重合体I水溶液(重合体A濃度20重量%)0.5gを下記移動相A8.5gに希釈し、限外濾過膜にてろ過した(MW10,000、9,000rpm/40min)。このろ液を分析溶液とし、下記条件の液体クロマトグラフィーにて分析した。
(分析条件)
分析システム:Agilent Technologies Agilent 1100
分析カラムA:資生堂CAPCELL PAK MG 2.0mm×75mm 3μm
分析カラムB:資生堂CAPCELL PAK CR 1:20 2.0mm×100mm 5μm
*分析カラムA、BをA-Bの順にて直列に接続
移動相A;25mM酢酸アンモニウム 3%アセトニトリル水溶液
移動相B;アセトニトリル
流速:0.2ml/min
分析温度:40℃
サンプル注入量:20μl
検出器:UV検出器(波長225nm)
【0059】
[実施例1]
重合体Iを20重量%濃度の水溶液とし、ここへピロ亜硫酸ナトリウム(Na)を重合体Iに対して0.01重量%添加してサンプルを調製した。この添加量は、アゾ系開始剤に対して10重量%に相当する。
【0060】
このサンプルを50℃で1週間保管したときの赤色の着色の有無を目視観察し、以下のように4段階で評価した。
<評価基準>
A:無色透明である
B:わずかに着色している
C:着色している
D:非常に強く着色している
【0061】
結果を表4に示す。
【0062】
[実施例2]
ピロ亜硫酸ナトリウムの代りにシステイン(HOC(O)CHNHCHSH)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを調製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0063】
[比較例1]
ピロ亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを調製し、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4より、硫黄原子の酸化数が6未満である硫黄酸化物誘導体塩類、特に硫黄-硫黄結合を有する無水重亜硫酸塩を添加することにより、50℃というより厳しい温度条件下においても、アゾ系開始剤に起因する着色を長期に亘り抑制することができることが分かる。