(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】建設作業管理システムおよび建設作業管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240913BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020057528
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】山口 瞳
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148946(JP,A)
【文献】特開2016-212469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
G06T 1/00
G06T 7/00 - 7/90
G06T 11/60 -13/80
G06T 17/05
G06T 19/00 -19/20
G06V 10/00 -20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設対象物の3次元設計データを用いて建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムであって、
前記3次元設計データは、前記3次元設計データを構成する部材モデルに対して設置作業が行われる日付を含む作業予定情報が含まれ、
レーザスキャナにより取得された前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、
前記3次元点群データと前記3次元設計データとを比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づいて、前記部材モデルの状態を、注目する部材の存在範囲に点群データが存在しない未着手の状態、注目する部材の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっている完了の状態、および注目する部材の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっていないが、注目する部材の存在範囲に点群データは存在する仕掛の状態のうちいずれかに分類する作業進捗推定部と、
前記部材モデルの前記作業予定情報と前記作業進捗推定部による分類結果とを比較し、前記3次元点群
データの取得時までに設置完了予定の部材が前記完了の状態または前記仕掛の状態となっている場合には、当該部材に関する作業は予定通り作業が進捗していると推定し、前記3次元点群データの取得時までに設置完了予定の部材の中に前記未着手の状態の部材がある場合には、当該部材に関する作業が遅延していると推定することで、前記部材モデルに関する実際の作業進捗と作業予定とのずれを推定する作業管理部と、
備えることを特徴とする建設作業管理システム。
【請求項2】
ディスプレイ上に
前記3次元点群データを表示するとともに、前記ずれが推定された箇所を識別可能に表示する差分箇所表示部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載の建設作業管理システム。
【請求項3】
前記レーザスキャナを搭載し、前記建設現場を自動巡回する自動巡回移動体をさらに備えることを特徴とする請求項1または2項記載の建設作業管理システム。
【請求項4】
作業進捗管理装置で実行され、建設対象物の3次元設計データを用いて建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理方法であって、
前記3次元設計データは、前記3次元設計データを構成する部材モデルに対して設置作業が行われる日付を含む作業予定情報が含まれ、
レーザスキャナにより取得された前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記3次元点群データと前記3次元設計データとを比較するデータ比較工程と、
前記データ比較工程での比較結果に基づいて、前記部材モデルの状態を、注目する部材の存在範囲に点群データが存在しない未着手の状態、注目する部材の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっている完了の状態、および注目する部材の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっていないが、注目する部材の存在範囲に点群データは存在する仕掛の状態のうちいずれかに分類する作業進捗推定工程と、
前記部材モデルの前記作業予定情報と前記作業進捗推定工程での分類結果とを比較し、前記3次元点群
データの取得時までに設置完了予定の部材が前記完了の状態または前記仕掛の状態となっている場合には、当該部材に関する作業は予定通り作業が進捗していると推定し、前記3次元点群データの取得時までに設置完了予定の部材の中に前記未着手の状態の部材がある場合には、当該部材に関する作業が遅延していると推定することで、前記部材モデルに関する実際の作業進捗と作業予定とのずれを推定する作業管理工程部と、
を含んだことを特徴とする建設作業管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムおよび建設作業管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザスキャナ等を利用して建設現場の点群データを取得し、建設現場における作業進捗を管理する技術が開発されている。
例えば下記特許文献1は、建設工事の施工管理システムに関する技術であり、画像取込部が、建設部材の表面の3次元座標を、3次元点群データとしてステレオカメラから取得し、記憶部が、建設部材の表面の設計上の3次元座標を記憶し、処理部が、記憶部に記憶された3次元座標を含む立体領域を挟んで互いに対向する面A、Bを設定する。そして、処理部が、面A、B間の領域に存在する3次元点群データの量に基づいて建設部材の設置/未設置を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設現場では日々様々な作業が行われており、工期の遅れや作業ミスを防ぐためにも、作業進捗の管理は重要である。一方で、建設対象物が大きいほど作業進捗の管理は煩雑となり、作業管理者の負担が大きいという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、建設現場における作業進捗をより効率的かつ確実に管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建設作業管理システムは、建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムであって、レーザスキャナにより取得された前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記3次元点群データと所定の基準データとを比較するデータ比較部と、前記データ比較部による比較結果に基づいて前記建設現場における作業進捗状態を推定する作業進捗推定部と、を備えることを特徴とする。
本発明にかかる建設作業管理方法は、建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理方法であって、レーザスキャナにより前記建設現場の3次元点群データを取得する点群データ取得工程と、前記3次元点群データと所定の基準データとを比較するデータ比較工程と、前記データ比較工程での比較結果に基づいて前記建設現場における作業進捗を推定する作業進捗推定工程と、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建設現場における作業進捗をより効率的かつ確実に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態にかかる建設作業管理システムの概要構成を示す図である。
【
図2】建設作業管理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1における作業進捗管理のフローを示す図である。
【
図4】実施の形態2における作業進捗管理のフローを示す図である。
【
図5】実施の形態3における作業進捗管理のフローを示す図である。
【
図6】実施の形態4における作業進捗管理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる建設作業管理システムおよび建設作業管理方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態にかかる建設作業管理システムの概要構成を示す図である。
建設作業管理システム10は、建設現場における作業進捗を管理する。建設現場とは、ビルやマンション、倉庫などの建築建設現場であってもよいし、ダムや橋、トンネルなどの土木建設現場であってもよい。
建設作業管理システム10は、作業進捗管理装置として機能するコンピュータ12、自動巡回移動体14(14A,14B)、可搬型情報処理端末16(16A,16B)を備える。
【0010】
コンピュータ12は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
コンピュータ12は、例えば建設現場の管理棟など建設現場の近傍に設置されてもよいし、建設工事を請け負う事業者の事業所やクラウド事業者が運営しているデータセンターなど建設現場から離れた場所に設置されてもよい。
図1では、コンピュータ12をデスクトップ型パソコンとして図示しているが、後述する可搬型情報処理端末16と同様にノートパソコンやタブレット端末等であってもよい。
【0011】
自動巡回移動体14(14A,14B)は、レーザスキャナ18を搭載し、建設現場を自動巡回する。自動巡回移動体14は、例えば建設現場内を巡回する巡回経路が設定されており、建設現場内に設置されたビーコンやGPSなどにより現在位置を確認しながら、所定のスキャン地点においてレーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する。
【0012】
図1では、自動巡回移動体14の一例としてドローン14Aと台車ロボット14Bとを図示しているが、自律的に移動できる機器であれば従来公知の様々な機器を自動巡回移動体14として利用することができる。例えば高所作業の頻度が高い建設現場(または建設現場のうち高所作業を実施する箇所)ではドローン14Aを用い、その他の現場では台車ロボット14Bを用いる、など使い分けをしてもよい。
【0013】
レーザスキャナ18(3次元レーザースキャナ)は、計測対象物にレーザを放射状に照射し、レーザの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度に基づいて計測対象物の表面形状の3次元座標を取得する。レーザスキャナ18の性能にもよるが、毎秒数万点程度の速度で非接触により計測し、高密度で面的な点群データを得ることができる。
また、レーザスキャナ18に内蔵されたカメラによって計測箇所で画像を撮影し、画像の色やレーザの反射強度(計測対象の材質や色によって変化するレーザの反射具合)に応じて点群データを着色することもできる。
また、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをすることができる。
【0014】
本実施の形態では、自動巡回移動体14が建設現場を自動巡回し、建設現場各部の点群データを取得するものとするが、これに限らず、例えば建設現場の作業者がレーザスキャナ18を所持して建設現場内を巡回し、所定の地点でスキャン作業を行い、建設現場各部の点群データを取得するようにしてもよい。
また、ドローン14Aや台車ロボット14Bを自動巡回させるのではなく、遠隔操作により巡回およびスキャン作業を実施するようにしてもよい。
【0015】
可搬型情報処理端末16は、建設現場の作業員や作業管理者、建設工事を請け負う事業者の従業員などが携帯する小型の情報処理端末である。可搬型情報処理端末16にはディスプレイ160が設けられており、後述する各種情報を表示出力可能である。また、可搬型情報処理端末16は、図示しないスピーカやバイブレーション機能などを有しており、コンピュータ12の指示でアラートを鳴らすことが可能である。
【0016】
なお、本実施の形態において、可搬型情報処理端末16は、作業進捗管理装置として機能するコンピュータ12とは異なる情報処理端末との意味であり、必ずしも可搬型でなくてもよい。例えば
図1では、可搬型情報処理端末16の一例としてタブレット端末16Aとノートパソコン16Bとを図示しているが、コンピュータ12とは異なる場所に設置されたデスクトップ型パソコンで可搬型情報処理端末16の機能を実行してもよい。
【0017】
図2は、建設作業管理システムの機能的構成を示すブロック図であり、特にコンピュータ12の機能的構成について示している。
コンピュータ12は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、点群データ取得部120、データ比較部122、作業進捗推定部124、作業進捗箇所表示部126、作業管理部128として機能する。
また、コンピュータ12の記憶領域(ストレージ)であるEEPROMには、基準データDが記憶されている。なお、基準データDの記憶場所はコンピュータ12内に限らず、コンピュータ12がアクセス可能な外部ストレージ等であってもよい。
また、コンピュータ12の記憶領域には、後述する3次元点群データや作業予定データ、作業進捗データ等が記憶される。
【0018】
点群データ取得部120は、レーザスキャナ18により取得された建設現場の3次元点群データを取得する。本実施の形態では、点群データ取得部120は、自動巡回移動体14の自動巡回中にレーザスキャナ18が取得した3次元点群データを、レーザスキャナ18のメモリから読み出す、またはレーザスキャナ18から送信させることにより、建設現場の3次元点群データを取得する。取得した3次元点群データは、コンピュータ12の記憶領域に記憶され、以下に説明する各種処理に利用される。
【0019】
データ比較部122は、点群データ取得部120で取得した3次元点群データと所定の基準データDとを比較する。
本実施の形態では、基準データDは、前回取得された3次元点群データである。「前回取得された3次元点群データ」について説明する。自動巡回移動体14は、建設現場での作業期間中、所定期間ごとに自動巡回を行い、その都度レーザスキャナ18で3次元点群データを取得する。所定期間ごととは、例えば1日1回、週に1回などが考えられる。例えば1日1回ずつ3次元点群データを取得する場合、データ比較部122は、本日取得された3次元点群データと、昨日取得された3次元点群データ(基準データ)とを比較する。また、例えば週に1回ずつ3次元点群データを取得する場合、データ比較部122は、今週取得された3次元点群データと、先週取得された3次元点群データ(基準データ)とを比較する。
【0020】
作業進捗推定部124は、データ比較部122による比較結果に基づいて建設現場における作業進捗を推定する。本実施の形態では、基準データDが前回取得された3次元点群データであるため、作業進捗推定部124は、前回取得された3次元点群データと今回取得された3次元点群データとの差分を前回から今回までの作業進捗箇所として抽出する。
より詳細には、作業進捗推定部124は、建設現場上の同一領域に対応する3次元点群データ同士を比較して、一定距離(閾値)以内に対応する相手の点がいないかどうかによって差分となる点群を検出する。この差分が、前回の3次元点群データの取得時以降に行われた作業により変化した箇所、すなわち作業進捗箇所に対応する。
なお、差分が生じる箇所としては、例えば新しい部材が追加された箇所(例えばフロア内に内壁が追加された場合など)の他、例えば部材が撤去された箇所(例えば作業用足場を利用した作業が完了し、足場が撤去された場合など)や部材が変更された箇所などが挙げられる。
【0021】
作業進捗箇所表示部126は、作業進捗推定部124で抽出された作業進捗箇所をディスプレイ上に表示された3次元点群データ上または建設現場の画像上で識別可能に表示する。ディスプレイとは、可搬型情報処理端末16のディスプレイ160やコンピュータ12のディスプレイ12A(
図1参照)である。
例えば点群データをディスプレイに表示する場合、今回取得した点群データのうち前回取得した点群データとの差分に対応する点群を他の点群とは異なる色で表示することにより作業進捗箇所を識別可能とする。
また、例えば画像データ(点群データ取得時にカメラで撮影した画像データ)をディスプレイに表示する場合、画像データのうち作業進捗箇所をマーキングする(例えば作業進捗箇所の外形を示す線分を表示するなど)ことにより作業進捗箇所を識別可能とする。
なお、作業進捗箇所表示部126による表示態様は上記に限らず、作業者等が作業進捗箇所を特定することができればどのような態様であってもよい。
【0022】
建設現場の作業員や作業管理者は、ディスプレイ上の表示を確認することにより、前回と比較した作業進捗箇所を把握することができる。また、建設現場から離れた箇所においても、建設現場の状態や作業進捗を逐一確認することができる。
また、記憶領域に記憶された点群データおよび画像は、作業員等の指示により適宜ディスプレイに表示可能である。この時、例えば建物のフロアや管理区画ごとの進捗を色分けして表示したり、任意の日付を指定し過去に遡って作業進捗を確認することも可能である。
【0023】
作業管理部128は、建設現場における作業進捗を管理する。
作業管理部128は、例えば建設現場の作業管理者(または作業員や建設工事を請け負う事業者の従業員であってもよい)から当日の日付と実施した作業内容の入力を受け、これを作業進捗データとして記録する。作業管理者は、作業進捗箇所表示部126により表示された作業進捗箇所を参照しながら、実施した作業を入力することができ、自身が直接巡回することなく作業が確実に行われたことを確認することができる。また、過去に遡って作業状況を確認することができ、建設現場におけるトレーサビリティを向上させることができる。
【0024】
図3は、実施の形態1における作業進捗管理のフローを示す図である。
まず、自動巡回移動体14が建設現場内を巡回し、レーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の点群データを取得する(S300)。上述のように、このステップは自動巡回ではなく、作業員等がレーザスキャナ18を持って建設現場内を巡回して行ってもよい。
つぎに、コンピュータ12(作業進捗管理装置)の点群データ取得部120により、レーザスキャナ18で取得した点群データを読み込み、今回スキャン時の点群データ(以下「今回スキャンデータ」という)や画像データを取得する(ステップS302:点群データ取得工程)。
この後、必要に応じて点群データからノイズを除去する(ステップS304)。ノイズの除去は、コンピュータ12のアプリケーションで自動的に行ってもよいし、作業員が手動で行ってもよい。
【0025】
つづいて、データ比較部122により今回スキャンデータと前回スキャン時の点群データ(以下「前回スキャンデータ」という)を比較し(ステップS306:データ比較工程)、作業進捗推定部124により差分がある部分を作業進捗箇所として抽出する(ステップS307:作業進捗箇所抽出工程)。
そして、作業進捗箇所表示部126は、ディスプレイ上に今回スキャンデータまたは今回スキャン時に撮影された画像を表示するとともに、作業進捗箇所が識別可能となるようにマーキングして表示する(ステップS308:作業進捗箇所表示工程)。
作業管理者は、ディスプレイ上に表示された作業進捗箇所を確認し(ステップS310)、作業内容の入力を行う(ステップS312)。
作業管理部128は、作業管理者から入力された作業内容を日付とともに作業進捗データに記憶し、作業進捗データを更新する(ステップS314)。
【0026】
以上説明したように、実施の形態1にかかる建設作業管理システム10によれば、建設現場の3次元点群データを用いて建設現場における作業進捗状態を推定するので、作業員等が目視等で作業進捗状態を確認するのと比較して、作業員等の負担を軽減する上で有利となるとともに、より確実に建設現場の作業進捗を把握する上で有利となる。また、作業進捗状況を3次元点群データとして記録するので、建設現場の作業状況を客観的データとして残すことができ、建設現場のトレーサビリティを向上させる上で有利となる。
また、本実施の形態のように基準データとして前回取得された3次元点群データを用いることによって、前回スキャン時から今回スキャン時までの作業進捗箇所を特定し、日々の作業進捗をより細かく管理する上で有利となる。
また、本実施の形態のように作業進捗箇所をディスプレイ上で識別可能に表示するようにすれば、建設現場の作業進捗状況をより詳細に把握する上で有利となる。
また、本実施の形態のように自動巡回移動体14により3次元点群データを取得すれば、作業員等が建設現場を巡回してスキャンを行うのと比較して、作業員等の負担を軽減し、建設作業の効率を向上させる上で有利となる。
【0027】
(実施の形態2)
実施の形態1では、作業管理部128は、作業員から入力された作業進捗を作業進捗データとして記憶するものであった。
実施の形態2では、作業管理部128の機能を更に強化し、建設現場における作業進捗と、予め定められた建設現場における作業予定とを比較し、作業が所定の段階となるまでの必要工期を推定するものとする。所定の段階とは、例えば「建設現場での作業が全て完了する段階」、「複数階ある建物のうち特定の階での作業が完了する段階」など任意に定めることができる。
【0028】
なお、実施の形態2における建設作業管理システムの構成について、実施の形態1と同様の点は説明を省略する。
【0029】
実施の形態2では、作業管理部128は、作業予定データを参照可能となっている。作業予定データには、日付およびその日に実施予定の作業内容が含まれている。作業予定データは、例えば建設工事を請け負う事業者により予め作成されている。作業予定データを作成する際には、例えば各作業についての標準歩掛や作業に従事する予定の作業員数などが参照される。
【0030】
作業管理部128は、作業進捗データの入力(
図3のステップS312参照)を受けると、作業進捗データと作業予定データとを比較する。
作業管理部128は、作業予定データと作業進捗データとに差分がない場合、すなわち予定通り作業が進捗している場合には、作業予定データ上における当該作業の完了日までを上記必要工期と推定する。
また、作業予定データと作業進捗データとに差分がある場合、すなわち予定よりも作業の進捗が遅い、または早い場合には、例えば現在の日付に、残りの作業に必要な日数を足し合わせることで上記必要工期を推定する。この時、例えば標準歩掛と実際に作業にかかった日数を比較し、今後も同様の作業が実施予定の場合には、実際に作業にかかった日数を元に工期を推定してもよい。
【0031】
図4は、実施の形態2における作業進捗管理のフローを示す図である。
ステップS400からステップS414については、
図3を用いて説明した実施の形態1のフローと同様のため、説明を省略する。
ステップS414の後、作業管理部128は、更新した作業進捗データ(最新の作業進捗データ)と作業予定データとを比較し、必要工期を推定する(ステップ416)。
作業管理部128により必要工期が通知されると(ステップS418)、作業管理者は、必要工期を確認し、予定通り(または誤差が許容範囲内)であれば、そのまま確認してフローを終了する(ステップS420)。また、必要工期の誤差が許容範囲外の場合、作業管理者は、作業予定を変更することを検討し(ステップS420)、作業予定を変更した場合には、作業管理装置側の作業予定データに変更を反映させる(ステップS422)。
【0032】
以上説明したように、実施の形態2では、建設現場の点群データと予め定められている作業予定に基づいて作業が完了するまでの必要工期を推定する。これにより、作業中も適宜作業予定を見直すことができ、建設現場における効率を向上させることができる。
具体的には例えば工期遅れを早期に発見するとともに、例えば遅れを挽回するために必要な追加人員数の検討に活用したり、建設工事の発注元への価格交渉のエビデンスとして活用することができる。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、基準データとして前回スキャンデータ(点群データ)を用いた。
実施の形態3では、基準データとして建設対象物の3次元設計データを用いる。本実施の形態では、3次元設計データとしてBIM(Building Information Modeling)モデルを用いる場合について説明する。
BIMでは、コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを建設作業の各フェーズで活用する。BIMモデルはオブジェクトの集合体であり、建材パーツには幅や奥行き、高さ等の寸法に加え、素材や組み立てる工程(時間)なども含めることができる。本実施の形態では、基準データとしてBIMモデルを用いることにより基準データ内に建設現場における作業手順を含めるができる。
【0034】
なお、実施の形態3における建設作業管理システムの構成について、実施の形態1および2と同様の点は説明を省略する。
【0035】
実施の形態3では、データ比較部122は、点群データ取得部120で取得した3次元点群データとBIMモデル(建設対象物の3次元設計データ)とを比較する。
なお、3次元点群データには、例えば作業に用いる建設機器や仮設の手すりや足場、仮置き資材などなど、BIMモデルには含まれない物体が含まれる可能性がある。これらの物体に対応する点群は、例えばノイズ除去処理(
図5のステップS504など)により除去する。また、点群データとBIMモデルとの座標系(原点、スケール、方向)を予め一致させる。
【0036】
作業進捗推定部124は、BIMモデルと3次元点群データとの差分を抽出する。BIMモデルには、建設対象物を構成する全ての部材が含まれているため、建設途中における3次元点群データと比較した場合でも、各点に対応する部材が存在する。例えば心材が露出した状態の壁をスキャンした点群データとBIMモデルとを比較すると、点群としてスキャンされた心材の位置とBIMモデル上の心材の位置が略一致する。よって、作業進捗推定部124は、建設現場上の同一領域に対応する3次元点群データとBIMモデルとを比較して、3次元点群データの各点に対応する位置から一定距離(閾値)以内に表面が位置する部材があるか否かを判断する。
【0037】
3次元点群データとBIMモデルとの差分がない場合は、設計通りに作業が進んでいると推定することができる。
一方、BIMモデルと3次元点群データとの差分がある場合は、設計通りに作業が進んでいない可能性がある。この場合に考えられる原因としては、例えば作業上の間違い(部材の取り付け位置や部材型番の間違い等)、BIMモデルの間違い(設計構造や部材指定のミス等)、システム上の間違い(例えば3次元点群データとBIMモデルとの座標がずれている等)が考えられる。誤差の原因の特定は、例えば作業管理者やBIMモデルの作成者等が行う。
【0038】
作業進捗箇所表示部126は、作業進捗推定部124で差分が抽出された箇所をディスプレイ上に表示された3次元点群データ上またはBIMモデル上または今回スキャン時に撮影された画像上で識別可能に表示する差分箇所表示部として機能する。
具体的には、3次元点群データに基づくモデル(線分)をBIMモデル上に表示したり、3次元点群データ上で差分がある箇所の点群を他の点群と異なる色に表示したりする。
このように差分がある箇所を識別可能に表示することによって、作業管理者やBIMモデルの作成者等による誤差の原因の特定を支援することができる。
【0039】
図5は、実施の形態3における作業進捗管理のフローを示す図である。
ステップS500からステップS504については、
図3を用いて説明した実施の形態1のフローと同様のため、説明を省略する。
ステップS504の後、データ比較部122は、今回スキャンデータとBIMモデルとを比較し(ステップS506:データ比較工程)、作業進捗推定部124は、今回スキャンデータとBIMモデルの差分を抽出する(作業進捗推定工程)。差分がない場合は(ステップS508:No)、そのまま本フローを終了する。
一方、差分がある(例えば点群データ上に存在する部材がBIMモデル上にない場合など)場合は(ステップS508:Yes)、作業管理者等にその旨を通知する(ステップS510)。この時、差分箇所表示部により、ディスプレイ上に今回スキャンデータBIMモデルまたは今回スキャン時に撮影された画像を表示するとともに、差分が検出された箇所を識別可能に表示する。
作業管理者等は、ディスプレイ上に表示された差分箇所を確認し、差分が生じた原因を特定する(ステップS512)。その後、特定された原因に応じた担当者が対応を行う。例えばBIMモデルに変更があった場合には、作業管理装置が記憶するBIMモデルにも変更を反映する(ステップS514)。
【0040】
以上説明したように、実施の形態3では、基準データとしてBIMモデル(建設対象物の3次元設計データ)を用い、BIMモデルと3次元点群データとの差分を抽出する。よって、建設現場の作業が設計通りに進捗しているかを確認する上で有利となる。
また、BIMモデルと3次元点群データとの差分をディスプレイ上で識別可能に表示することによって、建設現場の作業進捗状況をより詳細に把握する上で有利となる。
【0041】
(実施の形態4)
実施の形態4は、3次元点群データとBIMモデルとを用いて、建設現場における工期管理を行う場合について説明する。
なお、実施の形態4における建設作業管理システムの構成について、実施の形態1から3と同様の点は説明を省略する。
【0042】
実施の形態4において、作業管理部128は、BIMモデルに含まれる建設現場における作業進捗予定と、3次元点群データとを比較し、作業進捗予定と実際の作業進捗とのずれを推定する。上述のように、BIMモデルには各建材パーツを組み立てる工程(時間)なども含めることができる。よって、BIMモデルの各パーツに対して設置作業が行われる日付(作業予定情報)を設定することにより、各作業日時点における作業進捗予定を把握可能となり、この作業進捗予定と3次元点群データで示される実際の作業進捗とを比較することにより、作業の遅れや作業順序の間違い等を検出することができる。
【0043】
具体的には、例えば作業進捗推定部124は、BIMモデルを構成する各部材モデル(建設対象物を構成する各部材)を、以下の3状態に分類する。
1.未着手:注目する部品の存在範囲に点群データが存在しない。
2.完了:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっている。
3.仕掛:注目する部品の形状と当該部分の点群データの形状との誤差が所定範囲内に収まっていないが、注目する部品の存在範囲に点群データは存在する。
【0044】
作業管理部128は、点群データ取得時(今回スキャン時)までに設置完了予定の部材(または設置作業開始予定の部材)が完了(または仕掛)の状態となっているかを判断する。今回スキャン時までに設置完了予定の部材が全て完了または仕掛の状態となっている場合には、予定通り作業が進捗していると推定する。一方、今回スキャン時までに設置完了予定の部材の中に未着手の状態の部材がある場合、作業が遅延していると推定する。
【0045】
図6は、実施の形態4における作業進捗管理のフローを示す図である。
ステップS600からステップS604については、
図3を用いて説明した実施の形態1のフローと同様のため、説明を省略する。
ステップS604の後、データ比較部122は、今回スキャンデータとBIMモデルとを比較し、作業進捗推定部124は、BIMモデルを構成する各部材モデルの状態を「未着手」、「完了」、「仕掛」のいずれかに分類する(ステップS606)。
作業管理部128は、各部材モデルの作業予定情報とステップS606の分類結果を比較し、実際の作業進捗と作業予定とのずれを推定する(ステップS608)。すなわち、今回スキャン時までに設置完了予定の部材が完了または仕掛の状態となっている場合には、当該部材に関する作業は予定通り作業が進捗していると推定する。また、今回スキャン時までに設置完了予定の部材の中に未着手の状態の部材がある場合には、当該部材に関する作業が遅延していると推定する。
【0046】
作業管理部128は、作業管理者等に実際の作業進捗と作業予定とのずれの推定結果を通知する(ステップS610)。この時、差分箇所表示部により、ディスプレイ上に今回スキャンデータBIMモデルまたは今回スキャン時に撮影された画像を表示するとともに、ずれが検出された箇所を識別可能に表示してもよい。
作業管理者等は、通知された実際の作業進捗と作業予定とのずれを確認し、予定通り(またはずれが許容範囲内)であれば、そのまま確認してフローを終了する。また、ずれが許容範囲外の場合、作業管理者等は、作業予定を変更することを検討し(ステップS612)、作業予定を変更した場合には、BIMモデルに含まれる作業進捗予定にも変更を反映させる(ステップS614)。
【0047】
以上説明したように、実施の形態4では、建設現場の点群データとBIMモデルに含まれる作業進捗予定に基づいて、工期のずれを推定する。これにより、作業中も適宜作業予定を見直すことができるともに、作業順序の間違えを早期に発見することができ、建設現場における作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 建設作業管理システム
12 コンピュータ(作業進捗管理装置)
120 点群データ取得部
122 データ比較部
124 作業進捗推定部
126 作業進捗箇所表示部
128 作業管理部
14 自動巡回移動体
16 可搬型情報処理端末
18 レーザスキャナ