(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】濾過装置と、その洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20240913BHJP
B01D 29/13 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/17 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/25 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/37 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/66 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20240913BHJP
B01D 29/50 20060101ALI20240913BHJP
B01D 39/08 20060101ALI20240913BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B01D29/10 510E
B01D29/14 B
B01D29/30 520Z
B01D29/38 520B
B01D29/38 580H
B01D29/10 510F
B01D29/10 520B
B01D29/10 530A
B01D29/24 B
B01D39/08 Z
B01D29/38 510C
B01D63/06
(21)【出願番号】P 2020101781
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-06-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構戦略的省エネルギー技術革新プログラム、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 英一
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-141610(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1474195(KR,B1)
【文献】特開2007-038172(JP,A)
【文献】特開2000-15012(JP,A)
【文献】国際公開第2013/99106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00-29/96
B01D 39/00-39/20
B01D 35/30
B01D 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスフロー式の濾過装置において、
膜モジュールと、ハウジングと、を備え、
前記膜モジュールは、可撓性濾過膜からなる筒体と、該筒体内で周方向に間隔をあけて配置されたガイド体と、一対の配管継手と、を有し、
前記各配管継手は、前記筒体及び前記ガイド体の両端と接続され、
前記ハウジングは、前記濾過膜と所定の隙間を有し、且つ、前記各配管継手を突出した状態で前記膜モジュールを収容するとともに、側面に接続口を有し、
濾過速度低下時に、前記接続口からハウジング内に洗浄水を加水することで、前記濾過膜を変形させ、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子を除去可能な構成である、
濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濾過装置であって、
前記濾過膜は、濾布である、濾過装置。
【請求項3】
請求項2に記載の濾過装置であって、
前記濾布は、緯畝織または平織の織布で構成される、濾過装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の濾過装置であって、
前記ガイド体は、少なくとも3つ以上で構成される、濾過装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載の濾過装置であって、
前記膜モジュールは、前記ハウジング内で周方向に間隔をあけて複数配置される、濾過装置。
【請求項6】
クロスフロー式の濾過装置の洗浄方法において、
膜モジュールと、ハウジングと、を備え、
前記膜モジュールは、可撓性濾過膜からなる筒体と、該筒体内で周方向に間隔をあけて配置されたガイド体と、一対の配管継手と、を有し、
前記各配管継手は、前記筒体及び前記ガイド体の両端と接続され、
前記ハウジングは、前記濾過膜と所定の隙間を有し、且つ、前記各配管継手を突出した状態で前記膜モジュールを収容するとともに、側面に接続口を有し、
前記接続口からハウジング内に洗浄水を加水する工程aと、
工程aによって、前記濾過膜を変形させる工程bと、
を備え、それによって、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子を除去する、
洗浄方法。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄方法であって、
工程bのあと、濾過膜内に洗浄水を通水する工程cと、
工程cによって、前記濾過膜を復元または膨張させる工程dと、
をさらに備え、それによって、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子をさらに除去する、
洗浄方法。
【請求項8】
請求項7に記載の洗浄方法であって、
工程a~工程dを1セットとし、その1セットを複数回することで、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子をさらに除去する、
洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置と、その洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化成品や食品素材の製造工程、或いは建設工事現場や生コンクリート製造工場などの廃水処理工程において、液体に含まれる微細な粒子を濾過処理で回収している。
例えば、澱粉の精製、土木工事現場で発生する濁水の放流前の処理、または生コンクリート製造工場で発生するセメントを含んだ廃水からの練り混ぜ水の製造等が挙げられる。
一般的な濾過方式は、全量濾過方式とクロスフロー濾過方式(以下、クロスフロー式という)に大別される。例えば、セメントを含んだ廃水の濾過処理では、原水を濾過膜面に対して一方から他方へ平行に流す(クロスフロー式)ことで、原水の固液分離や濃縮が可能となる。すなわち、濾過膜面に対し平行な流れを作ることで、原水中の粒子が膜面に堆積する現象を抑制しながら濾過させることができる。
【0003】
ところで、このようなクロスフロー式で使用される濾過膜は、中空糸膜、セラミック製膜、または不織布等からなり、円筒状に成形したものが用いられている。
上述のクロスフロー式は、粒子の堆積を抑制するものの、次第に膜面への堆積、または膜内部の隙間への入り込み、による目詰まりのおそれがある。また、それは濾過速度低下の起因となる。
【0004】
これらの対策として、濾過液(濾過膜外部)側から濾過膜内部を介して原水側に粒子を含まない洗浄水を流すことで濾過膜を洗浄する方法(以下、逆洗浄方法という)がある。
【0005】
また、上述とは異なる対策として特許文献1では、濾過装置に空気を吹き込んで残水を除去した後、空気で加圧された状態から常圧に開放し、その際の振動または衝撃で濾滓を剥離させる方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2では、筒状の濾体と、濾体を外部から打撃する打撃手段とを備え、濾体を膨らませた状態で、打撃手段によって打撃することで膜面上への堆積を防ぎ、濾体の目詰まりを防ぐ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-190208号公報
【文献】特開平9-94413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、逆洗浄方法では、濾過膜外部から濾過膜内部を通過する洗浄水の流速が遅く、濾過膜面の堆積物や膜内部の隙間に入り込んだ粒子を完全に除去することは難しい。
また、特許文献1の方法でも、圧縮空気を発生させる装置が別途必要となり、コストが嵩む。また、液体のない状態で衝撃を加えるため、濾過膜の振動が大きく、離した付着物の衝突などで濾過膜を傷めるおそれもある。
さらに、特許文献2の方法でも、濾過装置内に濾過膜を打撃する機械駆動式の装置が別途必要となり、製造コストが嵩むだけでなく濾過装置自体も大きくなる。また、打撃から濾過膜を保護するために、その外周に樹脂製の筒状ネットを装着するなど、濾過膜の構造が複雑である。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、安価でシンプルな構造、且つ、濾過膜の洗浄時において、目詰まり除去効果の高いクロスフロー式濾過装置を提供することを目的とする。また、それを用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、クロスフロー式の濾過装置において、膜モジュールとハウジングとを備え、膜モジュールは、可撓性濾過膜からなる筒体と、筒体内で周方向に間隔をあけて配置されたガイド体と、一対の配管継手とを有し、各配管継手は、筒体及びガイド体の両端と接続され、ハウジングは、濾過膜と所定の隙間を有し、且つ、各配管継手を突出した状態で膜モジュールを収容するとともに、側面に接続口を有し、濾過速度低下時に、接続口からハウジング内に洗浄水を加水することで、濾過膜を変形させ、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子を除去可能な構成である、濾過装置が提供される。
【0011】
本発明に係る濾過装置では、安価でシンプルな構造でありながら、濾過速度が低下した際に、ポートよりハウジング内部に洗浄水を加水することで、ガイド体を基準として濾過膜を変形させ、濾過膜に堆積した粒子を除去することができる。また、濾過膜に挟まった粒子を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における濾過装置を示した模式図であり、
図1(a)は、濾過装置の内部に収容される膜モジュール、
図1(b)は、濾過装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における濾過装置の断面図であり、
図2(a)は、縦断面図、
図2(b)は、
図2(a)の矢視xから見た断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における濾過装置の膜モジュールの作用図であり、
図3(a)は、原水または洗浄水を通水した状態の濾過膜、
図3(b)は、ハウジング側面から洗浄水を注水した状態の濾過膜をそれぞれ示している。
【
図5】本発明の一実施形態における濾過装置を備えた濾過処理システムの構成を示す模式図である。
【
図6】濾過処理システムにおける濾過運転状態を示す模式図である。
【
図7】濾過処理システムにおける洗浄運転状態を示す模式図である。
【
図8】濾過処理システムにおける洗浄運転状態を示す模式図である。
【
図9】濾過処理システムにおける洗浄運転状態を示す模式図である。
【
図10】濾過処理システムにおける洗浄運転状態を示す模式図である。
【
図11】試験例2において、濾過膜の濾過速度とサイクル回数との関係を模式的に示したグラフである。
【
図12】試験例3において、濾過膜の濾過速度とサイクル回数との関係を模式的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明に説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、限定されるものではなく、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
1.濾過装置
第1節では、本実施形態に係る濾過装置の構成について説明する。
図1~
図4は、本実施形態に係る濾過装置について説明するためのものであり、
図1は、濾過装置の模式図であり、
図1(a)は、濾過装置の内部に収容される膜モジュール、
図1(b)は、濾過装置の斜視図、
図2は、濾過装置の断面図であり、
図2(a)は、縦断面図、
図2(b)は、
図2(a)の矢視xから見た断面図、
図3は、膜モジュールの作用図であり、
図3(a)は、原水または洗浄水を通水した状態の濾過膜、
図3(b)は、ハウジング側面から洗浄水を注水した状態の濾過膜、
図4は、
図3における一部拡大模式図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る濾過装置20の構成は、膜モジュール10とハウジング21と蓋体22などを備える。
【0015】
1.1 膜モジュール
膜モジュール10は、可撓性濾過膜からなる筒体11と、この筒体11内でその中心を基準に周方向に間隔をあけて配置されたガイド体12と、配管継手13と、を有する。ここで筒体11は、円筒状が好ましい。
【0016】
(ガイド体)
ガイド体12は、3本の棒状体で構成され、筒体11内で周方向に120度間隔で配置されている。ここでガイド体12の本数は、少なくとも3本であればよく、筒体11の形状に応じて適宜変更可能である。
また、形状によってはガイド体12同士を補強材で連結することが考えられるが、補強材が濾過膜の収縮制限や原水の通水抵抗となるおそれがあり、好ましくは、補強材は少ない方がよい。さらに好ましくは、補強材は無い方がよい。
【0017】
(配管継手)
配管継手13は、一対の中空の金属製で構成され、円筒状の頭部13aとフランジ部14からなる。具体的には、フランジ部14は、頭部13aの一端側の縁部から外側に一体に延在している。その各フランジ部14が筒体11及びガイド体12の長手方向の両端と夫々接続されている。
これによって、一方の配管継手13から他方の配管継手13へ原水を筒体11内で通水させることができる。
【0018】
(濾過膜)
濾過膜は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、または綿などで可撓性を有してシート状に織られた不織布または織布を円筒状に成形している。これに限らず、液体或いは気体用の濾布として市販されているものを円筒状に成形してもよい。好ましくは、緯畝織または平織の織り方をした織布がよい。これによって、固液分離性能が高まり、より清澄な濾過液または濃縮効果を得ることができる。
【0019】
1.2 ハウジング
ハウジング21は、ハウジング21内を流通する流体圧に耐えられる剛性素材(例えば、ステンレス)で構成される。
ハウジング21の側面には、その内部に流体を供給またはその内部から排出可能な接続口23が設けられている。本実施形態では、接続口23は長手方向に沿って2つ設けているが、これに限るものではなく、1つ以上であれば適宜変更してもよい。
また、ハウジング21は、配管継手13を各々突出した状態で膜モジュール10を収容している。ハウジング21への膜モジュール10の収容は、1つに限らず複数であっても良い。
濾過膜は、
図2に示すように、ハウジング21の内周と所定の隙間sを有した状態で構成され、濾過速度低下時に、前記ポートよりハウジング内部に洗浄水を加水することで、濾過膜を収縮可能に変形させ、濾過膜に堆積或いは挟まった粒子を除去することができる。
【0020】
1.3 蓋体
蓋体22は、有底円筒形状からなり、ハウジング21の両端を嵌合するように構成される。また、底の中央には、配管継手13の頭部13aが嵌合可能な嵌合孔が設けられている。
【0021】
このように、本発明に係るクロスフロー式の濾過装置20は、膜モジュール10をハウジング21内に隙間sを有して配置するとともに、それが径方向または長手方向に移動不能に蓋体22によって封止されている。具体的には、膜モジュール10の両端の配管継手13の頭部13aが各蓋体22の嵌合孔に嵌合することで、径方向の移動が規制され、配管継手13のフランジ部14が蓋体22の底部に当接して収容されることで長手方向が規制されている。
【0022】
(濾過装置の動作)
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る濾過装置20の動作は、一般的には一方の配管継手13から、他方の配管継手13に向かって原水を通水する。
一方で、次第に
図4(a)に示すように濾過膜の内面には、粒子gが次第に膜面に堆積、または膜内部の隙間への入り込みによって、目詰まりをおこし、濾過速度低下となる。
そこで、ハウジング21の接続口23からハウジング内の隙間sに洗浄水を供給することで、
図3(b)に示すように、ガイド体12間の濾過膜を収縮する(中央側におす)ように変形させる。これによって、
図4(b)に示すように、膜の隙間或いは織目が押し広げられることで濾過膜上に堆積した付着物や内部に入り込んだ粒子gを取り除くことができる。次いで、配管継手13から濾過膜内に洗浄水を供給することで、濾過膜を元の形状状態に復元させるか、若しくは膨張状態に変形させる。その繰り返し動作によって、濾過膜の洗浄効果を高めることができる。
【0023】
(濾過処理システムの動作)
具体的に、濾過処理システム1における濾過装置20の動作の一例を説明する。
図5は、本発明の一実施形態における濾過装置を備えた濾過処理システムの構成を示す模式図である。
図6は、濾過処理システムにおける濾過運転状態、
図7は、濾過処理システムにおける洗浄水が水で濾過膜の外側の洗浄運転状態、
図8は、濾過処理システムにおける洗浄水が水で濾過膜の内側の洗浄運転状態、
図9は、濾過処理システムにおける洗浄水が濾過液で濾過膜の外側の洗浄運転状態、
図10は、濾過処理システムにおける洗浄水が濾過液で濾過膜の内側の洗浄運転状態をそれぞれ示す模式図である。
【0024】
図5~
図10に示すように、本実施形態に係る濾過装置20は、濾過処理システム1の1つの構成として担っている。
【0025】
濾過処理システム1は、原水槽31、濾過液槽32、水槽33、濾過装置20、弁34などで構成される。原水槽31には、原水31w、濾過液槽32には、濾過液32w、水槽33には、水33wがそれぞれ貯留されている。また、各槽には、液体を移送するポンプがそれぞれ備えられている。具体的には、原水槽31内の原水31wを移送するポンプ31p、濾過液槽32内の濾過液32wを移送するポンプ32p、水槽33内の水33wを移送するポンプ33pが、各槽にそれぞれ備えられている。
【0026】
原水31wを濾過する場合、原水槽31の原水31wを濾過装置20に通水し、原水槽31に戻す動作が行われる。そして、原水31wを循環させる間に原水31wは濾過装置20内で濾過され、濾過された濾過液32wは濾過液槽32に溜まっていく。ここでは、濾過液槽32に固形分を含まない濾過液32wが溜まり、原水槽31の原水31wは濃縮されることになる。
【0027】
具体的にいうと、
図6に示すように、濾過運転時は、まず配管の弁34を制御する。つまり、濾過装置20にポンプ32p及び33pから液体が移送されないように弁34dの1~3及び34bの2を“閉”に制御し、それ以外の弁を“開”に制御する。ここで、各弁の黒三角は“閉状態”、白三角は“開状態”を表している。
【0028】
ポンプ31pによって移送された原水31wは濾過装置20内を通って原水槽31に戻るように循環させることで、次第に濾過装置20内で原水31は濾過され、濾過された濾過液32wは、接続口23から濾過液槽32に貯留される。
【0029】
原水31wを濾過し続けると、次第に濾過膜が目詰まりし、濾過速度の低下となってくる。そこで、濾過速度の低下、あるいは一定の運転時間のタイミングで、各弁の開閉を適宜実施することで、接続口23から本発明の濾過装置20の内部に収容されている濾過膜の外側を水33wまたは濾過液37wの洗浄水で逆洗浄することで、濾過膜を収縮させ、それによって濾過膜上に堆積した付着物や内部に入り込んだ粒子を取り除くことができる。また、膜の洗浄効果を高めるため、逆洗浄後、続けて水33wまたは濾過液37wの洗浄水を濾過膜の内側に通水し、一旦、濾過膜を復元させ、または膨らませ、再び、逆洗浄を行う。これを複数回行うことで、更に高い膜の洗浄効果が得られる。
【0030】
具体的にいうと、
図7に示すように、濾過装置20内の濾過膜の外側を水で洗浄するときは、弁34b、34c、34dの1を閉とし、弁34a、34dの2と3は開とする。これによって、ポンプ33pによって移送された水33wは濾過装置20の接続口23から濾過膜の外側との隙間sに通水される。それによって濾過膜を収縮させ、逆洗浄し、その洗浄水は原水槽31に貯留される。
【0031】
次に、
図8に示すように、
図7における各弁の状態から弁34dの2と3を閉とし、弁34bの1と2を開とする。これによって、ポンプ33pによって移送された水33wは、接続口23には移送されず、配管継手13から濾過膜の内部に通水され、原水槽31に回収される。このとき濾過膜が復元または膨張することで、濾布の織目が繰り返し揺動し、これによって、より洗浄効果を高めることができる。
【0032】
一方、
図9に示すように、濾過装置20内の濾過膜の外側を濾過液で洗浄するときは、
図7における各弁の状態から弁34dの2を閉とし、弁34dの1と3を開とする。これによって、ポンプ32pによって移送された濾過液32wは濾過装置20の接続口23から濾過膜の外側との隙間sに通水される。それによって濾過膜を収縮させ、逆洗浄し、その洗浄水は原水槽31に貯留される。
【0033】
次に、
図10に示すように、
図9における各弁の状態から弁34dの3を閉とし、弁34bの1と2、弁34dの2を開とする。これによって、ポンプ32pによって移送された濾過液32wは、接続口23には移送されず、配管継手13から濾過膜の内部に通水され、原水槽31に回収される。このとき濾過膜が復元または膨張することで、濾布の織目が繰り返し揺動し、これによって、より洗浄効果を高めることができる。
【0034】
〈試験例1〉
本発明における濾過装置20に用いる濾布を選定するために、濾布毎の濾布仕様による固液分離性能と洗浄による濾過速度の回復度合いの試験を行った。
表1は、9種類の濾布の仕様とその結果を表したものである。
【0035】
本試験例1では、表1に示すように、濾布の仕様(材質、糸構造、織り方、厚さ、通気度)が異なる9種類の市販の濾布を用いた。具体的には、材質をポリプロピレン、糸構造をモノフィラメントとし、織り方が緯畝織、5/3綾織、2/2綾織と異なる濾布を4種類(No.1~4)選定した。また、材質をナイロン、糸構造をモノフィラメントとし、織り方が緯畝織、平織、5/3綾織、2/2綾織と異なる濾布を4種類(No.5~8)選定した。また、材質をナイロン、糸構造をマルチフィラメント、織り方を平織とした濾布を1種類(No.9)選定した。
なお、他の濾布の仕様も試験対象に挙げられるが、入手の困難性や高価格などの影響により、除外して試験を行った。
また、厚さ及び通気度に関しては市販の濾布を用いたため、全て同値または略同値での条件で試験をすることはできなかった。
【0036】
(試験方法)
まず、各濾布を円筒形状(直径20mm)に成形し、その両端に断面凸状の配管継手(濾過膜接続側外径20mm、ビニールチューブ接続側外径14mm、貫通内径10mm)を接続し、膜モジュール(有効膜長さ200mm)を製作した。両端の配管継手には、一対のビニールチューブ(内径14mm、長さ1,000mm)が夫々接続されている。具体的には、一方の配管継手に一方のビニールチューブの一端側が接続され、ビニールチューブの他端側は、小型ポンプ(突出水量10L/min)に接続されている。
また、他方の配管継手に他方のビニールチューブの一端側が接続され、ビニールチューブの他端側は、フリーにされている。
そして、上述のポンプによってスラッジ水(セメント濃度約15%)を濾過膜の内側に通水した。
それによって、濾過膜の外側に滲み出てくる濾過液の1分間における容量(ml/min)及び波長660nmにおける吸光度を計測し、その結果を表1に示した。
なお、ここで吸光度とは、セメント濃度約0.15%以上のスラッジ水が1.000を示し、濾過液中の固形分が少なくなる程0.000に近づき、固液分離性能が高くなることを示す。
【0037】
【0038】
表1の吸光度の結果を見ると、No.1、2、5、6、9の濾布が0.000に近い値であった。すなわち、固液分離性能は、材質、糸構造、厚さ、または通気度よりも、織り方の違いで変わるといえる。つまり、織り方が緯畝織または平織である濾布は、固液分離性能が高いといえる。目的、用途によって濾布の仕様は種々変更できるが、本発明の濾過装置20で使用する場合、濾布は、緯畝織、あるいは平織が好ましい。
【0039】
〈試験例2〉
表1の濾布No.1を円筒形状(直径50mm)に成形し、その両端に配管継手(外径49mm、内径25mm)を接続し、膜モジュール(有効膜長さ440mm)を製作した。
この膜モジュールをハウジング(内径72mm)に収容した濾過装置に水中ポンプ(1.5kW)でスラッジ水(セメント濃度約10%)を通水(ここで「通水」とは、膜モジュール内部にスラッジ水を通すことをいう)していき、その間に膜モジュール外部に滲み出る濾過液を回収した。
【0040】
この時、10分間濾過した直後から濾過速度を計測するため、2,000mlの容器が一杯になるまで濾過を継続し、一杯になるまでの時間を計測して濾過速度(ml/min)を算出した。
【0041】
次に、ハウジング側面の接続口に接続した配管から30秒間、水(洗浄水の一例)の注水洗浄(ここで「注水洗浄」とは、膜モジュール外部を水で加圧させ、濾過膜を収縮させることで洗浄を行うことをいう)を1回行った。
【0042】
次に、膜モジュール内部へ30秒間、水(洗浄水の一例)の通水洗浄(ここで「通水洗浄」とは、膜モジュール内部に水を通し、濾過膜を復元或いは膨張させることで洗浄を行うことをいう)を1回行った。
【0043】
このように、膜モジュールへ注水洗浄及び通水洗浄を行い、その後、濾過速度を計測するサイクルを1回として、連続で87回の試験を行った。
【0044】
図11は、試験例2において、濾過膜の濾過速度とサイクル回数との関係を模式的に示したグラフである。
【0045】
図11に示すように、試験例2によれば、本発明の濾過装置は、濾布No.1を用いた場合、膜モジュールを定期的に洗浄して濾過すると、濾過速度が低下することなく、繰り返し濾過することができることが分かった。
【0046】
〈試験例3〉
試験例2で用いた濾過装置で、セメント濃度を変えたスラッジ水(セメント濃度約15%)を通水していき、その間に膜モジュール外部に滲み出る濾過液を回収した。
試験例2同様に、10分間濾過した直後から濾過速度を計測するため、2,000mlの容器が一杯になるまで濾過を継続し、一杯になるまでの時間を計測して濾過速度(ml/min)を算出した。
【0047】
次に、ハウジング側面の接続口に接続した配管から30秒間、水の注水洗浄を1回行った。
次に、膜モジュール内部へ30秒間、水の通水洗浄を1回行った。
このように、膜モジュールへ注水洗浄及び通水洗浄を行い、その後、濾過速度を計測するサイクルを一回として、連続で試験を繰り返し行い、濾過速度が低下したタイミングで、更に、注水洗浄及び通水洗浄を1セットで3回行った。
【0048】
図12は、試験例3において、濾過膜の濾過速度とサイクル回数との関係を模式的に示したグラフである。図中、黒ベタの上矢印は、注水洗浄及び通水洗浄を1セットで3回行った箇所を示している。
【0049】
図12に示すように、試験例3によれば、本発明の濾過装置は、膜モジュールに対して注水洗浄及び通水洗浄の1セット1回では、濾過速度が徐々に低下したが、1セット3回とすることで、濾過速度が回復することがわかった。すなわち、濾過膜の目詰まりが解消されたといえる。
【0050】
7.結言
以上のように、本発明の濾過装置は、濾過膜を定期的に注水洗浄及び通水洗浄することで、良好な濾過速度で濾過することができる。一方で、濾過速度が低下した場合であっても、注水洗浄及び通水洗浄のセット回数を増やすことで、良好な濾過速度に回復することができる。また、濾過装置で使用する濾過膜は、濾布が好ましく、その織り方は緯畝織または平織が好ましい。
【0051】
次に記載の各様態で提供されてもよい。
濾過装置であって、前記濾過膜は、濾布である、もの。
濾過装置であって、前記濾布は、緯畝織または平織の織布で構成される、もの。
濾過装置であって、前記ガイド体は、少なくとも3つ以上で構成される、もの。
濾過装置であって、前記膜モジュールは、前記ハウジング内で周方向に間隔をあけて複数配置される、もの。
クロスフロー式の濾過装置の洗浄方法において、膜モジュールと、ハウジングと、を備え、前記膜モジュールは、可撓性濾過膜からなる筒体と、該筒体内で周方向に間隔をあけて配置されたガイド体と、一対の配管継手と、を有し、前記各配管継手は、前記筒体及び前記ガイド体の両端と接続され、前記ハウジングは、前記濾過膜と所定の隙間を有し、且つ、前記各配管継手を突出した状態で前記膜モジュールを収容するとともに、側面に接続口を有し、前記接続口からハウジング内に洗浄水を加水する工程aと、工程aによって、前記濾過膜を変形させる工程bと、を備え、それによって、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子を除去する、洗浄方法。
洗浄方法であって、工程bのあと、濾過膜内に洗浄水を通水する工程cと、工程cによって、前記濾過膜を復元または膨張させる工程dと、をさらに備え、それによって、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子をさらに除去する、洗浄方法。
洗浄方法であって、工程a~工程dを1セットとし、その1セットを複数回することで、濾過膜に堆積した或いは挟まった粒子をさらに除去する、洗浄方法。
もちろん、この限りではない。
【0052】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 濾過処理システム
10 膜モジュール
11 筒体
12 ガイド体
13 配管継手
13a 頭部
14 フランジ部
20 濾過装置
21 ハウジング
22 蓋体
23 接続口
31 原水槽
31w 原水
31p ポンプ
32 濾過液槽
32w 濾過液
32p ポンプ
33 水槽
33w 水
33p ポンプ
34、34a、34b、34c、34d 弁
s 隙間
g 粒子