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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240913BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020123431
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020124
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻堂 盛貴
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518808(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118366(WO,A1)
【文献】特表2000-509304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243843(US,A1)
【文献】特表2013-502984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフトの周囲を囲むとともに先端側と基端側とがそれぞれ前記シャフトに接合されているバルーンと、
を備え、
前記シャフトは、軸方向において、前記バルーンの先端側との接合部と前記バルーンの基端側との接合部との相対的な位置が変化可能に構成されており、
前記バルーンは、相対的に剛性が低い第1のバルーン部分と、前記第1のバルーン部分に前記軸方向に隣接し、相対的に剛性が高い一対の第2のバルーン部分と、を有しており、
前記第1のバルーン部分は、前記軸方向において前記一対の第2のバルーン部分同士の間に位置し、
前記一対の前記第2のバルーン部分は、前記バルーンが収縮状態であるときの長さと厚さの少なくとも一方が互いに異なっている、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンカテーテルであって、
前記バルーンの少なくとも一部に造影剤が含まれている、
バルーンカテーテル。
【請求項3】
バルーンカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフトの周囲を囲むとともに先端側と基端側とがそれぞれ前記シャフトに接合されているバルーンと、
を備え、
前記シャフトは、軸方向において、前記バルーンの先端側との接合部と前記バルーンの基端側との接合部との相対的な位置が変化可能に構成されており、
前記バルーンは、相対的に剛性が低い第1のバルーン部分と、前記第1のバルーン部分に前記軸方向の少なくとも一方に隣接し、相対的に剛性が高い第2のバルーン部分と、を有しており、
前記シャフトは、インナーシャフトと、前記インナーシャフトを収容する筒状のアウターシャフトであって、軸方向に伸縮する伸縮部分を有するアウターシャフトと、を備え、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の先端側が前記インナーシャフトに接合された構成であり、
前記バルーンの先端部は、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の先端側に接合され、前記バルーンの基端部は、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の基端側に接合されている、
バルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項3に記載のバルーンカテーテルであって、
前記アウターシャフトの前記伸縮部分は、前記軸方向に収縮すると内径が小さくなって前記インナーシャフトを押圧する構成である、
バルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項4に記載のバルーンカテーテルであって、
前記インナーシャフトは筒状であり、
前記インナーシャフトは、収縮した前記伸縮部分から押圧されることで内径が小さくなって前記インナーシャフトに挿入される線状部材を押圧する構成である、
バルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテルであって、
前記シャフトは、インナーシャフトと、前記インナーシャフトの一部を収容するとともに前記インナーシャフトに対して前記軸方向に移動可能な筒状のアウターシャフトとを備えた構成であり、
前記バルーンの先端部は、前記インナーシャフトに接合され、前記バルーンの基端部は、前記アウターシャフトに接合されている、
バルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、例えば血管等の体腔内に挿入されて拡張・収縮させるバルーンを備えるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の体腔内に挿入して拡張・収縮させるバルーンを備えるバルーンカテーテルが知られている。バルーンカテーテルの中には、筒状のインナーシャフトと、インナーシャフトの一部を収容すると共にインナーシャフトに対して相対的に移動が可能な筒状のアウターシャフトと、先端部がインナーシャフトに接合され、基端部がアウターシャフトに接合されたバルーンと、を備えるものがある。インナーシャフトとアウターシャフトとを相対的に移動させることにより、バルーンが拡張したり収縮したりする(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-305251号公報
【文献】特開昭61-103453号公報
【文献】特表2001-518808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のバルーンカテーテルでは、インナーシャフトとアウターシャフトとを相対的に移動させることでバルーンの拡張・収縮が可能であるが、バルーンに拡張媒体を注入しない限り、拡張したバルーンの形状にバラツキがあり、安定した治療ができないおそれがある。ここで、拡張時のバルーンの定形性の向上のためにバルーンに拡張媒体を注入する場合、例えば拡張媒体の過度な注入に起因してバルーンが破裂して体腔内が損傷するおそれがある。また、バルーンに拡張媒体を注入せずにバルーン全体の剛性を高くする構成が考えられるが、この構成では、バルーンの自由な変形が規制されるため、バルーンの拡張・収縮が円滑にできなくなるおそれがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示されるバルーンカテーテルは、バルーンカテーテルであって、シャフトと、前記シャフトの周囲を囲むとともに先端側と基端側とがそれぞれ前記シャフトに接合されているバルーンと、を備え、前記シャフトは、軸方向において、前記バルーンの先端側との接合部と前記バルーンの基端側との接合部との相対的な位置が変化可能に構成されており、前記バルーンは、相対的に剛性が低い第1のバルーン部分と、前記第1のバルーン部分に前記軸方向の少なくとも一方に隣接し、相対的に剛性が高い第2のバルーン部分と、を有している。本バルーンカテーテルでは、シャフトにおけるバルーンの先端側とシャフトとの接合部とバルーンの基端側とシャフトとの接合部との相対的な位置(以下、「バルーンの先端接合部と基端接合部との相対的な位置」という)が近くなる(相対距離が短くなる)ことでバルーンが拡張し、バルーンの先端接合部と基端接合部との相対的な位置が遠くなる(相対距離が長くなる)ことでバルーンが収縮する。このため、拡張媒体の注入を要することなく、バルーンの拡張・収縮が可能である。さらに、バルーンは、相対的に剛性が低い第1のバルーン部分と、第1のバルーン部分に軸方向の少なくとも一方に隣接し、相対的に剛性が高い第2のバルーン部分とを有する。これにより、第1のバルーン部分によりバルーン自体の拡張・収縮を確保しつつ、第2のバルーン部分によりバルーンの拡張時の定形性を向上させることができる。
【0008】
(2)上記バルーンカテーテルにおいて、前記バルーンは、さらに第3のバルーン部分と、前記第2のバルーン部分と、前記軸方向において前記第2のバルーン部分と前記第3のバルーン部分との間に位置する前記第1のバルーン部分と、を有し、前記第3のバルーン部分は、前記第1のバルーン部分と比較して剛性が高い構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、相対的に剛性の高い第2のバルーン部分と第3のバルーン部分との間に、相対的に剛性が低い第1のバルーン部分が位置している。これにより、バルーンの先端接合部と基端接合部の相対的な位置が近くなると、第2のバルーン部分および第3のバルーン部分の突っ張りによって第1のバルーン部分がバルーンカテーテルの径方向外側に移動して体腔内の内壁等に接触させることができる。
【0009】
(3)上記バルーンカテーテルにおいて、前記一対の前記第2のバルーン部分は、前記バルーンが収縮状態であるときの長さと厚さの少なくとも一方が互いに異なっている構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、相対的に剛性の高い一対の第2のバルーン部分の長さと厚さの少なくとも一方が互いに異なっている。これにより、バルーンの内、相対的に長いまたは厚い第2のバルーンが位置する側の定形性を向上させることができる。
【0010】
(4)上記バルーンカテーテルにおいて、前記バルーンの少なくとも一部に造影剤が含まれている構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、拡張状態のバルーンには拡張媒体が注入されないため、拡張媒体が注入されたバルーンに比べて形状の柔軟性が高く、バルーンは、バルーンが押し当てられた体腔内の内壁等に応じた形状になる。そこで、本バルーンカテーテルでは、バルーンの少なくとも一部に造影剤が含まれている。これにより、造影剤を含むバルーンの形状に基づき体腔内の所定の部位の形状を把握することができる。
【0011】
(5)上記バルーンカテーテルにおいて、前記シャフトは、インナーシャフトと、前記インナーシャフトを収容する筒状のアウターシャフトであって、軸方向に伸縮する伸縮部分を有するアウターシャフトと、を備え、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の先端側が前記インナーシャフトに接合された構成であり、前記バルーンの先端部は、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の先端側に接合され、前記バルーンの基端部は、前記アウターシャフトにおける前記伸縮部分の基端側に接合されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、インナーシャフトに対してアウターシャフトを相対的に移動させることによりアウターシャフトが有する伸縮部分が伸縮し、バルーンの拡張・収縮が可能である。
【0012】
(6)上記バルーンカテーテルにおいて、前記アウターシャフトの前記伸縮部分は、前記軸方向に収縮すると内径が小さくなって前記インナーシャフトを押圧する構成である構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、アウターシャフトの伸縮部分が軸方向に収縮すると、伸縮部分の内径が小さくなってインナーシャフトを押圧する。これにより、伸縮部分が収縮した状態で保持されることによってバルーンを拡張状態に保持させることができる。
【0013】
(7)上記バルーンカテーテルにおいて、前記インナーシャフトは筒状であり、前記インナーシャフトは、収縮した前記伸縮部分から押圧されることで内径が小さくなって前記インナーシャフトに挿入される線状部材を押圧する構成である構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、収縮した伸縮部分から押圧されることでインナーシャフトの内径が小さくなって、インナーシャフトに挿入された線状部材を押圧する。これにより、バルーンカテーテルを線状部材における所定箇所に位置決めすることができる。
【0014】
(8)上記バルーンカテーテルにおいて、前記シャフトは、インナーシャフトと、前記インナーシャフトの一部を収容するとともに前記インナーシャフトに対して前記軸方向に移動可能な筒状のアウターシャフトとを備えた構成であり、前記バルーンの先端部は、前記インナーシャフトに接合され、前記バルーンの基端部は、前記アウターシャフトに接合されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、インナーシャフトに対してアウターシャフトを相対的に移動させるという比較的容易な操作により、バルーンの拡張・収縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成を概略的に示す説明図(バルーン30の収縮時)
図2】バルーンカテーテル100の構成を概略的に示す説明図(バルーン30の拡張時)
図3】第2実施形態におけるバルーンカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図(バルーン30aの収縮時)
図4】バルーンカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図(バルーン30aの拡張時)
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
A-1.バルーンカテーテル100の基本構成:
図1および図2は、第1実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成を概略的に示す説明図である。図1および図2には、バルーンカテーテル100の縦断面(YZ断面:図1に記載されたY軸とZ軸とを含む平面に沿って切断した断面図)の構成が示されている。図1には、後述のバルーン30が収縮した状態(以下、単に「収縮状態」という)が示されており、図2には、バルーン30が拡張した状態(以下、単に「拡張状態」という)が示されている。図1において、Z軸正方向側(バルーンカテーテル100におけるバルーン30の側)が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側(バルーンカテーテル100におけるバルーン30の側とは逆側)が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。なお、図1では、バルーンカテーテル100が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、バルーンカテーテル100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
【0017】
バルーンカテーテル100は、血管等の体腔内に挿入して拡張・収縮させるバルーン30を備える医療用デバイスである。バルーンカテーテル100は、シャフト11と、バルーン30と、インナーハブ40と、アウターハブ50とを備えている。シャフト11は、インナーシャフト10とアウターシャフト20とを備える二重管構造である。
【0018】
インナーシャフト10は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。なお、本明細書において「筒状(円筒状)」とは、完全な筒形状(円筒形状)に限らず、全体として略筒状(略円筒形状、例えば、若干、円錐形状や、一部に凹凸がある形状など)でもよい。インナーシャフト10の内部には、ガイドワイヤ(図1および図2では図示しない)が挿通されるガイドワイヤルーメンS1が形成されている。
【0019】
アウターシャフト20は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。アウターシャフト20の内径は、インナーシャフト10の外径より大きい。アウターシャフト20の内部には、インナーシャフト10が挿通される挿通孔S2が形成されている。アウターシャフト20は、インナーシャフト10の一部を収容し、かつ、インナーシャフト10と同軸上に位置するように配置されている。インナーシャフト10とアウターシャフト20とは接合されておらず、アウターシャフト20はインナーシャフト10に対してシャフト11の軸方向(Z軸方向)に移動可能である。
【0020】
インナーシャフト10の先端部は、アウターシャフト20の先端部より先端側(Z軸正方向側)に突出している。インナーシャフト10の基端部は、アウターシャフト20の基端部より基端側(Z軸負方向側)に突出している。アウターハブ50は、アウターシャフト20の基端部に設けられている。アウターハブ50には、アウターシャフト20の挿通孔S2に連通する貫通孔52が形成されている。インナーシャフト10の基端部は、アウターハブ50の貫通孔52に挿入され、アウターハブ50よりも基端側に突出している。インナーハブ40は、アウターハブ50から突出したインナーシャフト10の基端部に設けられている。インナーハブ40には、インナーシャフト10のガイドワイヤルーメンS1に連通する貫通孔42が形成されている。ガイドワイヤは、インナーハブ40の貫通孔42から挿入されガイドワイヤルーメンS1内に導入され、インナーシャフト10の先端部から外部に導出される。
【0021】
インナーシャフト10とアウターシャフト20とは、熱融着可能であり、かつ、ある程度の可撓性を有する材料により形成されている。インナーシャフト10とアウターシャフト20との形成材料としては、例えば、樹脂、熱可塑性樹脂、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。
【0022】
バルーン30は、インナーシャフト10とアウターシャフト20との相対移動による伸縮に伴い拡張・収縮可能な拡張部である。バルーン30は、インナーシャフト10の内、アウターシャフト20の先端から突出した先端部の周囲を覆う。また、バルーン30の先端部は、例えば溶着により、インナーシャフト10の先端部の外周面に接合されており、バルーン30の基端部は、例えば溶着により、アウターシャフト20の先端部の外周面に接合されている。なお、収縮状態のバルーン30は、インナーシャフト10とアウターシャフト20との外周面に密着するように折り畳まれることが好ましい。
【0023】
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されていることが好ましく、インナーシャフト10やアウターシャフト20より薄くて、可撓性を有する材料により形成されていることがより好ましい。バルーン30の形成材料としては、例えば、樹脂やゴムが挙げられ、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
【0024】
A-2.バルーン30の詳細構成:
次に、バルーン30の詳細構成について説明する。図1および図2に示すように、バルーン30は、全体として筒状であり、軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34とを有している。軟質バルーン部分32は、相対的に剛性が低く(すなわち柔軟性が高く)、硬質バルーン部分34は、相対的に剛性が高い(すなわち柔軟性が低い)。但し、硬質バルーン部分34の剛性は、シャフト11の剛性よりも低い。
【0025】
軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34とは、バルーン30の内、シャフト11の周囲を囲む筒状の部分である。軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34とは、シャフト11の軸方向において隣接している。軟質バルーン部分32は、特許請求の範囲における第1のバルーン部分の一例であり、硬質バルーン部分34は、特許請求の範囲における第2のバルーン部分の一例である。
【0026】
具体的には、軟質バルーン部分32は、先端軟質バルーン部分32Aと基端軟質バルーン部分32Bと中間軟質バルーン部分32Cとを含んでいる。先端軟質バルーン部分32Aは、バルーン30における先端に位置しており、先端軟質バルーン部分32Aの先端部分がインナーシャフト10の外周面に接合されており、先端軟質バルーン部分32Aの基端側が自由端となっている。基端軟質バルーン部分32Bは、バルーン30における基端に位置しており、基端軟質バルーン部分32Bの基端部分がアウターシャフト20の外周面に接合されており、基端軟質バルーン部分32Bの先端側が自由端となっている。中間軟質バルーン部分32Cは、シャフト11の軸方向において、先端軟質バルーン部分32Aと基端軟質バルーン部分32Bとの間に位置している。
【0027】
硬質バルーン部分34は、先端硬質バルーン部分34Aと後端硬質バルーン部分34Bとを含んでいる。先端硬質バルーン部分34Aは、バルーン30の先端側に位置しており、具体的には、先端軟質バルーン部分32Aと中間軟質バルーン部分32Cとの間に位置している。先端硬質バルーン部分34Aは、先端軟質バルーン部分32Aと中間軟質バルーン部分32Cとを全周にわたって連続的に連結している。後端硬質バルーン部分34Bは、バルーン30の後端側に位置しており、具体的には、中間軟質バルーン部分32Cと基端軟質バルーン部分32Bとの間に位置している。後端硬質バルーン部分34Bは、中間軟質バルーン部分32Cと基端軟質バルーン部分32Bとを全周にわたって連続的に連結している。なお、本実施形態では、バルーン30の収縮状態時(図1参照)において、先端硬質バルーン部分34Aと後端硬質バルーン部分34Bとの軸方向の長さは同一である。中間軟質バルーン部分32Cは、軸方向においてバルーン30の中央に位置している。
【0028】
バルーン30の少なくとも一部に、X線透過度の低い造影剤が含まれている。本実施形態では、造影剤がバルーン30の全体に含まれている構成でもよいし、造影剤が軟質バルーン部分32または硬質バルーン部分34に含まれている構成でもよい。造影剤の形成材料の例は、例えば金、白金、タングステン等の金属、ヨウ素化合物、バリウム化合物、ガドリニウム化合物、二酸化炭素などである。
【0029】
なお、軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34とを有するバルーン30の形成方法の例は次の通りである。
(1)例えば樹脂材料によって形成された剛性が均一なバルーンに対して、硬質バルーン部分34を形成したい位置に電子照射を行う。これにより、照射された部分の樹脂が物理架橋から化学架橋に変化して剛性が高くなって硬質バルーン部分34が形成される。
(2)互いに硬度(剛性)が異なる材料によって形成された筒状の樹脂を例えば熱溶着等より接合する。
(3)同一の材料を用いて、硬質バルーン部分34に相当する部分の厚さが軟質バルーン部分32に相当する部分の厚さより厚くなるようにバルーン30を成形する。
(4)同一の材料かつ同一の厚さのバルーンに対して、硬質バルーン部分34に相当する部分にそのバルーンよりも剛性が高い補強材を接合する。
【0030】
A-3.バルーンカテーテル100の使用例:
【0031】
図1に示すように、インナーハブ40とアウターハブ50とを近づけるように操作すると、アウターシャフト20の先端部からのインナーシャフト10の先端部の突出長さが長くなる。すなわち、インナーシャフト10の先端部とアウターシャフト20との先端部との距離(以下、「シャフト先端間距離」という)が長くなる。以下、この操作を、インナーハブ40とアウターハブ50との接近操作という。この近接操作を行うことにより、バルーン30を収縮状態にすることができる。
【0032】
図2に示すように、インナーハブ40とアウターハブ50とを遠ざけるように操作すると、アウターシャフト20の先端部からのインナーシャフト10の先端部の突出長さが短くなる。すなわち、インナーシャフト10とアウターシャフト20とのシャフト先端間距離が短くなる。以下、この操作を、インナーハブ40とアウターハブ50との離間操作という。この離間操作を行うことにより、バルーン30を拡張状態にすることができる。すなわち、バルーン30の内部空間S3に拡張媒体を注入することなく、バルーン30を収縮状態から拡張状態にすることができる。
【0033】
バルーンカテーテル100の使用例は次の通りである。まず、ガイドワイヤを、血管内に挿入する。ガイドワイヤの後端を、バルーンカテーテル100のガイドワイヤルーメンS1に挿入し、バルーンカテーテル100をガイドワイヤに沿って血管内に挿入する。このとき、バルーンカテーテル100に対して接近操作を行ってバルーン30を収縮状態にしておく(図1参照)。バルーンカテーテル100を先端側に押し込むことにより、バルーンカテーテル100がガイドワイヤに沿って血管内における病変部に案内される。
【0034】
次に、バルーンカテーテル100に対して離間操作を行ってバルーン30を拡張状態にする(図2参照)。上述したように、バルーン30は、軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34とを含んでいるため、拡張状態のバルーン30の形状のバラツキを抑制することができる。具体的には、バルーン30が収縮状態から拡張状態に変化する過程で、バルーン30は、軟質バルーン部分32と硬質バルーン部分34との剛性の境目を起点として変形する。より具体的には、先端硬質バルーン部分34Aの基端側と後端硬質バルーン部分34Bの先端側とがシャフト11の径方向外側に広がり、それに伴って中間軟質バルーン部分32Cが径方向外側に押し広げられる。
【0035】
拡張状態になったバルーン30は、例えば血管壁に密着して血管内を一時的に塞ぐことで止血することができる。また、拡張状態のバルーン30には、拡張媒体が注入されていないため、柔軟性が高い。このため、バルーン30は、血管壁や病変部の形状に応じた外形になる。すなわち、血管壁等の形状がバルーン30の外形に反映される。特に、本実施形態では、拡張状態のバルーン30において最外周側に位置する中間軟質バルーン部分32Cが血管壁等に密着する。このため、血管壁等の形状がバルーン30の外形により効果的に反映される。そして、上述したようにバルーン30には造影剤が含まれている。このため、生体の外部からX線によりバルーン30の外形を通じて血管壁等の形状を造影することが可能になる。
【0036】
例えば止血が不要になったときには、バルーンカテーテル100に対して接近操作を行うことにより、バルーン30を拡張状態から収縮状態に戻すことができる。ここで、仮にバルーン30に拡張媒体を注入して拡張させた場合、バルーン30の内部空間S3から拡張媒体を抜き出さないとバルーン30を収縮状態に戻すことができない分だけ、拡張状態から収縮状態に戻すまでの時間が長くなる。これに対して、本実施形態では、拡張状態のバルーン30に拡張媒体は注入されておらず、バルーンカテーテル100に対して接近操作を行うだけでバルーン30を拡張状態から収縮状態に短時間で戻すことができる。
【0037】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のバルーンカテーテル100では、シャフト11におけるバルーン30の先端部とインナーシャフト10との接合部とバルーン30の基端部とアウターシャフト20との接合部との相対的な位置(以下、「バルーン30の先端接合部と基端接合部との相対的な位置」という)が近くなる(相対距離が短くなる)ことでバルーン30が拡張し(図2参照)、バルーン30の先端接合部と基端接合部との相対的な位置が遠くなる(相対距離が長くなる)ことでバルーンが収縮する(図1参照)。このため、拡張媒体の注入を要することなく、バルーンの拡張・収縮が可能である。さらに、バルーン30は、相対的に剛性が低い軟質バルーン部分32と、軟質バルーン部分32に軸方向の少なくとも一方に隣接し、相対的に剛性が高い硬質バルーン部分34とを有する。これにより、軟質バルーン部分32によりバルーン30自体の拡張・収縮(柔軟性)を確保しつつ、硬質バルーン部分34によりバルーン30の拡張時の定形性を向上させることができる。
【0038】
本実施形態では、相対的に剛性の高い硬質バルーン部分34の間に、相対的に剛性が低い軟質バルーン部分32(中間軟質バルーン部分32C)が位置している。これにより、シャフト11におけるバルーン30の先端接合部と基端接合部との相対的な位置が近くなると、一対の硬質バルーン部分34の突っ張りによって軟質バルーン部分32がバルーンカテーテル100の径方向外側に移動して体腔内の内壁等に接触させることができる。
【0039】
本実施形態では、インナーシャフト10に対してアウターシャフト20を相対的に移動させるという比較的に容易な操作により、バルーン30の拡張・収縮が可能である。
【0040】
B.第2実施形態:
図3および図4は、第2実施形態におけるバルーンカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図である。図3および図4には、バルーンカテーテル100aの縦断面(YZ断面)の構成が示されている。図3には、バルーン30aの収縮状態が示されており、図4には、バルーン30aの拡張状態が示されている。以下では、第2実施形態のバルーンカテーテル100aの構成の内、上述した第1実施形態のバルーンカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0041】
図3および図4に示すように、第2実施形態のバルーンカテーテル100aは、シャフト11aと、バルーン30aと、インナーハブ40と、アウターハブ50とを備えている。シャフト11aは、インナーシャフト10とアウターシャフト20aとを備える二重管構造である。
【0042】
アウターシャフト20aは、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。アウターシャフト20aの内径は、インナーシャフト10の外径より大きい。アウターシャフト20aの内部には、インナーシャフト10が挿通される挿通孔S2aが形成されている。アウターシャフト20aは、インナーシャフト10を収容し、かつ、インナーシャフト10と同軸上に位置するように配置されている。インナーシャフト10の先端部とアウターシャフト20の先端部とは接合部36を介して接合されている。
【0043】
アウターシャフト20aは、筒状の蛇腹部分22aを有している。蛇腹部分22aは、相対的に径が大きい環状の径大部と相対的に径が小さい径小部とが軸方向に交互に配置された蛇腹構造であり、シャフト11の軸方向に伸縮自在である。蛇腹部分22aは、アウターシャフト20aの先端側であり、かつ、インナーシャフト10との接合部36の基端側に位置している。蛇腹部分22aは、特許請求の範囲における伸縮部分の一例である。
【0044】
バルーン30aは、アウターシャフト20aの蛇腹部分22aの伸縮に伴い拡張・収縮可能な拡張部である。バルーン30aは、アウターシャフト20aにおける蛇腹部分22aの周囲を覆う。また、バルーン30aの先端部は、例えば溶着により、アウターシャフト20aにおける蛇腹部分22aの先端側の外周面に接合されており、バルーン30aの基端部は、例えば溶着により、アウターシャフト20aにおける蛇腹部分22aの基端側の外周面に接合されている。
【0045】
アウターシャフト20aの蛇腹部分22aは、シャフト11の軸方向に収縮すると内径が小さくなってインナーシャフト10の外周面を押圧する構成である。さらに、インナーシャフト10は、収縮した蛇腹部分22aから押圧されることで内径が小さくなってインナーシャフト10に挿入されたガイドワイヤ60を押圧する構成である。例えばインナーシャフト10のうち、蛇腹部分22aに囲まれる部分の剛性を、他の部分の剛性よりも低い構成として、蛇腹部分22aからの押圧力がガイドワイヤ60まで伝達し易いようにすることが好ましい。この際、インナーシャフト10における剛性が低い部分の外周には、アウターシャフト20aとバルーン30aとが設けられているため、インナーシャフト10における剛性が低い部分の存在に起因してバルーンカテーテル100がキンクし易くなることが抑制される。
【0046】
バルーン30aは、バルーン30の収縮状態時(図3参照)において、先端硬質バルーン部分34Aと後端硬質バルーン部分34Bとの軸方向の長さが互いに異なる点で、第1実施形態のバルーン30とは相違する。図3には、先端硬質バルーン部分34Aの長さが後端硬質バルーン部分34Bの長さよりも長い構成が例示されている。
【0047】
以上の構成により、第2実施形態のバルーンカテーテル100aでは、バルーンカテーテル100aに対して近接操作を行うことにより、蛇腹部分22aが軸方向に伸張し、バルーン30aを収縮状態にすることができる(図3参照)。バルーンカテーテル100aに対して離間操作を行うことにより、蛇腹部分22aが軸方向に収縮し、バルーン30aを拡張状態にすることができる(図4参照)。このとき、蛇腹部分22aの内径が小さくり、蛇腹部分22aからインナーシャフト10の外周面に押圧力が伝わる。この蛇腹部分22aからインナーシャフト10への押圧力に起因するアンカー効果により、蛇腹部分22aが収縮した状態で保持され、バルーン30aを拡張状態に保持させることができる。さらに、蛇腹部分22aからの押圧力によってインナーシャフト10が径方向内側に変形してガイドワイヤ60の外周面に接触して押圧力が伝わる。この蛇腹部分22aからガイドワイヤ60への押圧力に起因するアンカー効果により、バルーンカテーテル100をガイドワイヤ60における所定箇所に位置決めすることができる。
【0048】
また、バルーン30aでは、先端硬質バルーン部分34Aの長さが後端硬質バルーン部分34Bの長さよりも長い。これにより、バルーン30aの内、相対的に長い先端硬質バルーン部分34Aが位置する側(バルーンカテーテル100aの先端側)の定形性を向上させることができる。例えばバルーンカテーテル100aを血管の上流に向かって挿入する場合、定形性が高い先端硬質バルーン部分34Aによって血流を効果的に止めることができる。
【0049】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
上記実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、シャフトとして、二重管構造のシャフト11,11aを例示したが、軸方向において、バルーンの先端側との接合部とバルーンの基端側との接合部との相対的な位置が変化可能に構成を有するものであれば、例えば単管構造のシャフトでもよい。また、上記実施形態では、インナーシャフトとして、筒状のインナーシャフト10を例示したが、貫通孔が形成されていない棒状の部材でもよい。また、上記実施形態では、伸縮部分(蛇腹部分22a)がシャフト11,11aの先端部に位置する構成を例示したが、伸縮部分がシャフトの先端部よりも基端側に位置する構成でもよい。また、シャフトは、伸縮部分を有しなくてもよく、例えば、軸方向に相対的に移動可能な2つの部材(例えばインナーシャフトとアウターシャフト)を備える構成であれば、特許請求の範囲における「軸方向において、バルーンの先端側との接合部とバルーンの基端側との接合部との相対的な位置が変化可能に構成」を実現できる。
【0051】
上記第2実施形態では、伸縮部分として、蛇腹部分22aを例示したが、例えば蛇腹部分22aのうち、伸縮部分だけ、他の部分とは硬度(剛性)が異なる別材料で形成したり、蛇腹部分22a全体を同一の材料で形成しつつ、伸縮部分の厚さを他の部分の厚さより薄くしたりしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、バルーンとして、硬質バルーン部分34を1対だけ有するバルーン30,30aを例示したが、硬質バルーン部分34を1つだけ有する構成や3つ以上有する構成でもよい。上記第2実施形態において、先端硬質バルーン部分34Aの長さが後端硬質バルーン部分34Bの長さよりも短い構成でもよい。
【0053】
上記第2実施形態では、線状部材として、ガイドワイヤ60を例示したが、これに限らず、例えば血栓を回収する回収デバイスなどでもよい。
【0054】
上記実施形態において、アウターハブ50とインナーハブ40との離間操作を行った後、アウターハブ50とインナーハブ40との離間状態を保持するための位置保持構造を設けた構成でもよい。例えばアウターハブ50とインナーシャフト10との間に嵌合構造を設けて、アウターハブ50とインナーシャフト10とが嵌合構造を設けた位置において嵌合状態となることで、アウターハブ50の軸方向での移動が規制され、アウターハブ50とインナーハブ40との離間状態を保持することができる。または、アウターハブ50にインナーシャフト10を押圧するネジ等の構造を設ける構成でもよい。
【0055】
上記実施形態において、バルーン30,において硬質バルーン部分34を2箇所に有する構造を説明したが、1箇所又は3箇所以上有する構造でもよい。硬質バルーン部分34をバルーン30,30aの先端側又は基端側のどちらかに偏って1箇所配置することにより、アウターハブ50とインナーハブ40との離間操作を行うことで、バルーン30,30aを拡張状態にすることができる。また硬質バルーン部分34をバルーン30,30aの先端側及び基端側と、軟質バルーン部分32の中間とに配置することで、軟質バルーン部分32の中間に配置した硬質バルーン部分34を血管内壁に内接させることができる。
【0056】
また、上記実施形態における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0057】
10:インナーシャフト 11,11a:シャフト 20,20a:アウターシャフト 22a:蛇腹部分 30,30a:バルーン 32:軟質バルーン部分 32A:先端軟質バルーン部分 32B:基端軟質バルーン部分 32C:中間軟質バルーン部分 34:硬質バルーン部分 34A:先端硬質バルーン部分 34B:後端硬質バルーン部分 36:接合部 40:インナーハブ 42,52:貫通孔 50:アウターハブ 60:ガイドワイヤ 100,100a:バルーンカテーテル S1:ガイドワイヤルーメン S2,S2a:挿通孔 S3:内部空間
図1
図2
図3
図4