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▶ アリナミン製薬株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】血圧降下用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/484 20060101AFI20240913BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240913BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K36/484
A61P9/12
A61P43/00 111
A23L33/105
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020128846
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2021024858
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019139783
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521357375
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】井本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】奥野 憲治
(72)【発明者】
【氏名】小池 智弘
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179585(JP,A)
【文献】特開2000-191498(JP,A)
【文献】特開2010-215571(JP,A)
【文献】Science and Technology of Food Industry,2016年,37(10),185-188,207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物を含有することを特徴とする、血圧降下用組成物。
【請求項2】
該抽出物がアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性作用を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
地上部が、葉および/または茎である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物が、水、有機溶媒、またはこれらの混合物で抽出された抽出物である、請求項1~3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、2-ブタノン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、プロパン、ブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,2-トリクロロエテンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物の濃度が、0.20mg/mL以上である、請求項1~5いずれか記載の組成物。
【請求項7】
マメ科カンゾウ属に属する植物が、ウラルカンゾウ種である、請求項1~6いずれか記載の組成物。
【請求項8】
飲食用である、請求項1~7いずれか記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8いずれか記載の組成物を有効成分とする、血圧に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品。
【請求項10】
請求項1~8いずれか記載の組成物を有効成分とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の抽出物を含有する血圧降下用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症は、代表的な生活習慣病の一つであり、その患者数は年々増加している。高血圧症は、脳出血、脳梗塞、心不全、狭心症、心筋梗塞、腎不全などの様々な障害を引き起こすことが知られている。
【0003】
血圧を降下させる物質の探索が行われ、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme:ACE)阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、交感神経抑制薬などが実用化されている。しかしながら、近年の消費者嗜好の変化から、天然由来の有効成分を含む医薬や保健機能食品が求められるようになっている。
【0004】
マメ科カンゾウ属に属する植物を原料とする甘草は、古くから生薬として用いられており、鎮痙、鎮痛、鎮咳、去痰など様々な作用を有することが知られている。
【0005】
甘草の地上部(葉および茎の部分)は、従前医薬品原料として利用できない部位であるため廃棄物として処理されていたが、甘草の地上部からの抽出物にも、様々な作用を有することが知られてきており、具体的には、コラーゲン産生促進(特許文献1)、骨代謝改善(特許文献2)、活性酸素消去およびラジカル消去(特許文献3)、毛髪化粧料(特許文献4)、セラミド合成促進(特許文献5)、幹細胞増殖因子発現上昇抑制(特許文献6)、エンドセリン-1mRNA発現上昇抑制(特許文献7)、抗糖化(特許文献8)、DKKI発現促進およびDKKI発現促進作用に基づく美白(特許文献9)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化(特許文献10)、ならびに腸内細菌叢構成比率改善、抗慢性微弱炎症および健康肥満維持(特許文献11)としての用途が挙げられる。
【0006】
さらに、グリチルリチン酸を含まない甘草抽出物を含んでなる血圧などを低下させるための調製物(特許文献12)、甘草疎水性抽出物を含有する高血圧症などを予防または改善するための組成物(特許文献13および14)も知られている。
【0007】
しかしながら、甘草地上部からの抽出物が、ACE阻害作用、血圧降下用を有することは、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開第2000-191498号
【文献】特開第2002-179585号
【文献】特開第2003-081744号
【文献】特開第2004-285018号
【文献】特開第2008-255051号
【文献】特開第2008-273875号
【文献】特開第2010-215571号
【文献】特開第2012-121874号
【文献】特開第2017-048155号
【文献】特開第2009-242333号
【文献】国際公開第2017/094892号
【文献】特開第2002-114695号
【文献】国際公開第2002/047699号
【文献】国際公開第2008/143182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、血圧降下等の血圧改善効果を有する組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該組成物を有効成分とするACEまたは血圧に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性阻害作用、血圧降下作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物を含有することを特徴とする、血圧降下用組成物。
[2]マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物を含有することを特徴とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性作用を有する組成物。
[3]地上部が、葉および/または茎である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物が、水、有機溶媒、またはこれらの混合物で抽出された抽出物である、[1]~[3]いずれか記載の組成物。
[5]有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、2-ブタノン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、プロパン、ブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,2-トリクロロエテンからなる群から選択される少なくとも1つである、[4]に記載の組成物。
[6]マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物の濃度が、0.20mg/mL以上である、[1]~[5]いずれか記載の組成物。
[7]マメ科カンゾウ属に属する植物が、ウラルカンゾウ種である、[1]~[6]いずれか記載の組成物。
[8]飲食用である、[1]~[7]いずれか記載の組成物。
[9][1]~[8]いずれか記載の組成物を有効成分とする、血圧に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品。
[10][1]~[8]いずれか記載の組成物を有効成分とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品。
【0011】
本発明の組成物は、ACE阻害活性、血圧降下作用などを有するので、ACEまたは血圧に関連する疾患を予防あるいは軽減することができる。また、本発明の組成物は、天然由来の抽出物を有効成分とするため、安全性が高い。さらに、血圧上昇を引き起こすこともあるグリチルリチン酸の含有量も極めて低い。
したがって、本発明の組成物は、ACEまたは血圧に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品および医薬品として有用である。
また、マメ科カンゾウ属に属する植物において、従前医薬品原料として利用可能でない部位(葉および茎の部分)についても、有効に活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物を含む。マメ科カンゾウ属に属する植物としては、例えばGlycyrrhiza acanthocarpa、G.aspera、G.astragalina、G.bucharica、G.echinata(ロシアカンゾウ種)、G.eglandulosa、G.foetida、G.foetidissima、G.glabra(スペインカンゾウ種)、G.gontscharovii、G.iconica、G.inflate(新疆カンゾウ種)、G.korshinskyi、G.lepidota(アメリカカンゾウ種)、G.pallidiflora、G.squamulosa、G.triphylla、G.uralensis(ウラルカンゾウ種)、G.yunnanensis、などが挙げられ、これらマメ科カンゾウ属に属する植物の変種も使用できる。好ましくは、スペインカンゾウ種およびウラルカンゾウ種であり、より好ましくは、ウラルカンゾウ種である。本発明では、例えば、マメ科カンゾウ属ウラルカンゾウ種に属する都甘草(「都1号」とも称される)が用いられる。
【0013】
都甘草の特性は、「草丈はかなり高、根の数はかなり多、根の太さはかなり太、根の表皮の色は褐、根の横断面の黄色系着色の強弱は強、茎の数は中、茎のアントシアニン着色の強弱は無、茎の毛の粗密は無または粗、葉の長さは長、葉の幅はかなり広、葉の波打ちの強弱は中、小葉の数は中、小葉の葉身の長さはかなり長、小葉の葉身の幅はかなり広、花序の数はやや多、花序の長さは中、小花の数はかなり多、花の色はN81A、乾燥根の重量はかなり重、グリチルリチン酸含量はやや多」である(カラーチャートはRHSを使用)。「都甘草」は、「北農試系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること等で区別性が認められる。また、「北大系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること等で区別性が認められる。さらに、「医療大系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること、枯れ上がりの早晩性が晩であること等で区別性が認められる。
【0014】
本発明の組成物に含まれる抽出物は、例えば、上記マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物である。マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部には、例えば、葉、茎、花、種などの部位が含まれ、好ましくは、葉および/または茎である。すなわち、葉または茎いずれかからの抽出物でもよく、葉および茎からの抽出物であってもよい。好ましくは、マメ科カンゾウ属に属する植物の葉および/または茎からの抽出物であり、より好ましくは都甘草の葉および/または茎からの抽出物である。
【0015】
本発明における抽出物は、通常植物抽出に使用される溶媒を用いて、定法に従って抽出することにより得られる。例えば、植物を抽出溶媒に浸漬し、静置または撹拌することにより得られる。
【0016】
抽出に用いる植物は、そのまま(生)、その乾燥物、またはそれらの裁断もしくは粉砕したものであり得る。
【0017】
抽出に用いる溶媒としては、植物の抽出に従来使用されていた溶媒が挙げられ、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、2-ブタノン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、プロパン、ブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,2-トリクロロエテンが挙げられる。
好ましくは、水、エタノールまたはこれらの混合物が挙げられる。また、水とエタノールの混合物を使用する場合、該混合物中のエタノール濃度は、例えば0.1~99.5v/v%、好ましくは5~80v/v%、より好ましくは10~70v/v%である。
【0018】
抽出方法は、通常用いられる方法であればよく、例えば、室温または加熱下で任意の装置を用いて抽出することができる。具体的には、溶媒を満たした処理層に植物を投入し、時々撹拌して溶出させ、その後、必要に応じて遠心分離、ろ過に供して抽出残渣を除去することにより抽出物を得ることができる。また、抽出方法として、水、亜酸化窒素、二酸化炭素等からなる超臨界流体を用いた方法を使用してもよい。
【0019】
抽出に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、例えば植物(乾燥重量換算)1gに対して1~100mL、好ましくは5~50mLである。
抽出条件は、十分に抽出される条件であれば特に限定されないが、通常、抽出温度が低温であればより長時間の抽出を行い、抽出溶媒が高温であればより短時間の抽出を行う。抽出温度は、0~100℃の範囲で適宜設定され、好ましくは室温(約25℃)から抽出溶媒の沸点以下の範囲である。抽出時間は、10分~24時間の範囲で設定され、好ましくは30分~5時間の範囲である。抽出溶媒として水を用いる場合、抽出条件は、例えば約20~95℃で約30分~3時間である。抽出溶媒としてエタノールまたは水とエタノールとの混合溶媒を用いる場合、抽出条件は、例えば約20~80℃で約30分~3時間である。
抽出回数は単回でもよく、収率を上げるために複数回であってもよい。
【0020】
得られた抽出物は、そのまま本発明の組成物として用いることができる。また、抽出物を、必要に応じて、脱色または脱臭などを目的として精製に供してもよい。精製方法としては、例えば、活性炭処理、吸着処理、イオン交換樹脂処理などが挙げられる。
【0021】
抽出物を、さらに濃縮または濃縮乾固してもよく、適当な溶媒で希釈してもよく、または必要に応じて賦形剤を添加後乾燥して粉末状にしてもよい。濃縮または濃縮乾固の方法としては、例えば、減圧濃縮(エバポレーターを用いる方法など)、膜濃縮が挙げられる。粉末状にする方法としては、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動層乾燥が挙げられる。抽出物を粉末状にする際に用いられる賦形剤としては、従来使用されているものが挙げられ、例えば、加工デンプン、澱粉分解物(例えば、デキストリン、マルトデキストリン)などが挙げられる。
【0022】
本発明における「抽出物」は、上記のような抽出方法で得られた各種溶剤抽出液、その精製画分、その希釈液、その濃縮液、およびその乾燥物(粉末等)を含む。
【0023】
本発明の組成物中に含まれるマメ科カンゾウ属に属する植物の地上部からの抽出物の量は、所望の効果を発揮できる量であれば特に限定されない。例えば、本発明の組成物が液体組成物である場合、液体組成物中の濃度(抽出物の乾燥重量/液体組成物の体積)として、その下限は、例えば0.01mg/mL以上、好ましくは0.10mg/mL以上であり、その上限は、例えば100mg/mL以下、好ましくは10mg/mL以下である。
また、本発明の組成物が固体組成物である場合、固体組成物中の配合割合(抽出物の乾燥重量/組成物の乾燥重量)として、その下限は、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、その上限は、例えば99重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0024】
本発明における抽出物は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性阻害作用を有する。ACEは、昇圧系であるレニン・アンギオテンシン系において血管収縮作用を有するアンギオテンシンIIを生成する一方、降圧作用を有するブラジキニンの分解酵素でもある。このためACE活性を阻害することは、アンギオテンシンIIの生成抑制およびブラジキニンの不活性化抑制という二つの機序による降圧効果を生じる。
したがって、当該抽出物を含む本発明の組成物は、ACE活性阻害作用を示し、血圧改善、特に血圧降下に有用である。
【0025】
ここでいう「血圧改善」には、ヒトなどの哺乳類の血管拡張を改善する、正常な血管拡張を維持する、血圧を低下させる、安定な血圧を維持する、ならびに血管の内皮細胞を変性から保護することなどが含まれる。また、血管拡張は、血管の拡張、特に血管の一部への血流の増加をもたらす細動脈の拡張を意味する。
【0026】
また、本発明における抽出物は、天然のマメ科カンゾウ属に属する植物由来であるので、安全性も高い。したがって、本発明の組成物は、食品および医薬品として、特に血圧またはACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品および医薬品として有用である。
【0027】
本発明の医薬品は、上記抽出物または上記組成物を用いて、常法に従って製造される。例えば、上記抽出物または上記組成物を、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体または添加剤に添加・混合するなど公知の方法を用いて、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤などの経口投与のための剤形にすることができる。
担体または添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、酸味料、香料などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0028】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、ショ糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖または糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが用いられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸およびそれらの塩類などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体または添加剤は、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の医薬品は、抽出物を乾燥重量換算で0.05~5g、好ましくは0.1~1.5g含有する単位投与量形態であるのが好ましい。ここで「単位投与量形態」とは、物理的に分けた単位を意味し、各単位は所望の効果が得られるように計算した予め定められた量の有効成分を担体または添加剤と共に含んでいる。
【0030】
本発明の医薬品の投与量は、投与する対象体の年齢、性別体重および状態ならびに投与経路、投与スケジュール、剤形および製剤組成などにより異なるが、例えば1~1000mg、好ましくは5~500mgである。当該投与量は、1日に1回、または2回もしくは3回以上に分けて投与してもよい。
【0031】
本発明の食品は、上記抽出物または上記組成物を用いて常法に従い製造される。例えば、上記抽出物または上記組成物を食品、その食材またはその食品中間素材に添加するなどの公知の手段でもって製造される。例えば、マメ科カンゾウ属に属する植物の地上部を水やエタノールで抽出したのち、濃縮し、得られた濃縮抽出物を食品材料に添加し、次いで常法により食品とすることにより製造される。
【0032】
上記食品としては、例えば、菓子類(例えばポテトチップスをはじめとするスナック菓子、ビスケットまたはクッキーなどの焼菓子、チョコレート、ガム、またはキャンディ等)、デザート類(例えばプリン、ゼリー、ヨーグルトまたはアイスクリーム等)のような嗜好食品の他、麺類(例えば、そば、うどん、ラーメンまたはパスタ等)、シリアルフーズ(例えばコーンフレークまたはオートミール等)のような主食に準ずるもの、調味食品(例えばスープ、カレーまたはシチュー等)、農産加工品(例えばジャム等)、乳油食品(例えばスプレッド類またはチーズ等)、健康食品(例えばプロテインまたはファイバー等)、カロリー調整食品、ノンアルコール飲料(例えば大豆焙煎茶飲料、穀物茶、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、野菜汁飲料、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、清涼飲料等)、またはアルコール飲料(例えばビール、ワイン、清酒、発泡酒、梅酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール類またはカクテル類等)などが挙げられる。
【0033】
本発明の食品は、例えば、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品などを含む一般食品、ならびに特定保健用食品、栄養機能食品および機能性表示食品を含む保健機能食品とすることができる。例えば、本発明の食品は、特定の保健の目的が期待できる旨(例えば、「血圧を低下させる機能が報告されており、血圧が高めの方に適しています。」)を科学的根拠に基づいて表示する機能性表示食品とすることができる。また、本発明の食品は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液体、シロップなどの経口摂取のための形態を有するサプリメントであってもよい。
【0034】
本発明の食品中に含まれる抽出物の量は、所望の効果を発揮できる量であればよく、食品の一般的な摂取量、食品の種類、組成などに応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明の食品は、抽出物を、乾燥重量として0.1~99.0重量%の範囲で含むことができる。
【0035】
本発明の食品の摂取量は、摂取する対象体の年齢、性別体重および状態ならびに食品の種類、組成などにより異なり得て、例えば1~1000mg、好ましくは5~500mgである。当該摂取量は、1日に1回、または2回もしくは3回以上に分けて摂取してもよい。
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0037】
[実施例1~5]都甘草の葉および茎からの水製エキスの調製
都甘草の葉および茎18kgに水約300Lを加え、90℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、250Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、9.7kgの濃縮液を得た。この濃縮液に賦形剤として澱粉分解物(商品名:マックス1000、製造者:松谷化学工業株式会社)を280g溶解した後、2092gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物498gを得た。
上記乾燥抽出物約1.0gを50%エタノール溶液20mLで抽出後、0.1mol/L HEPES緩衝液(pH8.3)にて適宜希釈して、0.26mg/mL(実施例1)、0.28mg/mL(実施例2)、0.30mg/mL(実施例3)、0.34mg/mL(実施例4)および0.40mg/mL(実施例5)の試料濃度を有する都甘草の葉および茎からの水製エキス含有組成物を得た。
【0038】
[実施例6~10]都甘草の葉および茎からのエタノールエキスの調製
都甘草の葉および茎18kgに30%エタノール約300Lを加え、60℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、250Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、10kgの濃縮液を得た。この濃縮液に賦形剤として澱粉分解物(商品名:マックス1000、製造者:松谷化学工業株式会社)を200g溶解した後、2928gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物320gを得た。
上記乾燥抽出物約1.0gを50%エタノール溶液20mLで抽出後、0.1mol/L HEPES緩衝液(pH8.3)にて適宜希釈して、0.25mg/mL(実施例6)、0.35mg/mL(実施例7)、0.45mg/mL(実施例8)、0.55mg/mL(実施例9)および0.65mg/mL(実施例10)の試料濃度を有する都甘草の葉および茎からのエタノールエキス含有組成物を得た。
【0039】
[参考例1~5]
サーデンペプチド(商品名:サーデンペプチドN100、製造者:仙味エキス株式会社)を、0.1mol/L HEPES緩衝液(pH8.3)にて適宜希釈して、0.1mg/mL(参考例1)、0.2mg/mL(参考例2)、0.5mg/mL(参考例3)、0.7mg/mL(参考例4)および0.9mg/mL(参考例5)の試料濃度を有するサーデンペプチド含有組成物を得た。
【0040】
[試験例1]
1.試験概要
アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性試験はNakno etal. Biosci Biotechnol. Biochem., 70, 1118-1126(2006)に記載の方法に基づき、基質(His-His-Leu)からACEにより分解されるジペプチドをオルトフタルアルデヒド(以下「OPA」と略す。)により蛍光化した後、反応物の蛍光強度を測定することで実施した。ACE活性阻害は試験溶液を加えない未処置区の活性を100%とした場合の相対ACE活性をもとに評価した。IC50値は試料濃度(mg/mL)と阻害率(%)のグラフから算出した。
【0041】
2.検体
下記検体1)および2)の試験溶液として、上記実施例1~10で得られた組成物を使用した。また、陽性対照(検体3))として、上記参考例1~5で得られた組成物を使用した。
1)都甘草の葉および茎からの水製エキス(実施例1~5)
2)都甘草の葉および茎からのエタノールエキス(実施例6~10)
3)サーデンペプチド(参考例1~5)
【0042】
3.試験方法
0.1mol/L HEPES緩衝液(pH8.3)(未処置区)または各試験溶液を96穴マイクロプレートに25μL加え、13mU/mL ACE溶液を25μL加えて37℃で5分間インキュベートした。8mmol/L His-His-Leu溶液を25μL加え、37℃で30分間反応した。その後、0.1mol/L 水酸化ナトリウム溶液を25μL加えて反応を停止し、1%OPA溶液を25μL加え、室温で20分間放置した。さらに、0.1mol/L 塩酸を25μL入れて室温で10分間放置し、マイクロプレートリーダーで蛍光強度を測定した。なお、ブランクは13mU/mL ACE溶液の代わりにPBSを用いて同様に試験した。
<マイクロプレートリーダー操作条件>
機種:SH-9000 Lab
測定条件:蛍光、endpointモード、ボトムリード
励起波長:355nm
蛍光波長:460nm
【0043】
4.試験結果
各試験溶液中の阻害率の結果を表1~3に示した。この結果、濃度依存的なACE活性阻害の増強が認められた。試料濃度と阻害率の関係を示すグラフから算出されたIC50値を表4に示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0044】
[実施例11および12]都甘草の地上部からの水製エキスの調製
都甘草の葉および茎18kgに水約300Lを加え、90℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、250Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、9.7kgの濃縮液を得た。この濃縮液に賦形剤として澱粉分解物(商品名:マックス1000、製造者:松谷化学工業株式会社)を280g溶解した後、2092gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物498g(実施例11および12)を得た。
【0045】
[参考例6]都甘草の地下部からの水製エキスの調製
都甘草の根およびストロン3kgに水約30Lを加え、90℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、23.2Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、2544gの濃縮液を得た。この濃縮液2511gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物608g(参考例6)を得た。
【0046】
[試験例2]
14週齢のSHR/NCrlCrlj雄性ラットに、実施例11(100mg/kg)、実施例12(1000mg/kg)、参考例6(1000mg/kg)、参考例7(陽性対照、サーデンペプチド(商品名:サーデンペプチドN100、製造者:仙味エキス株式会社)、1000mg/kg)、参考例8(陽性対照、カプトプリル(製造者:東京化成工業株式会社)、60mg/kg)を単回投与して収縮期血圧(SBP)を評価した。対照群には、媒体(注射用水)を10mL/kgの用量で投与した。SBPは、各投与物質の投与前(群分け前)、投与後2、4、6および8時間に非観血式血圧計(BP MONITOR FOR MICE & RATS、室町機械、MODEL MK-2000)を用いて測定した。
【0047】
結果を表5に示す。都甘草地上部の水製エキス(実施例11および12)投与群では、100mg/kg投与後2および8時間、1000mg/kg投与後2時間のSBPに対照群と比較して有意な低下が認められた。また都甘草地下部の水製エキス(参考例6)投与群では、投与後2時間のSBPに対照群と比較して有意な低下が認められた。サーデンペプチド投与群では、投与後6および8時間のSBPに対照群と比較して有意な低下が認められた。以上の結果から、都甘草地上部の水製エキス、都甘草地下部の水製エキスおよびサーデンペプチドは、高血圧自然発症ラットの血圧上昇に対する抑制作用が示唆された。
【表5】
N:ラット数、各値は平均±SEで表す。
#:P<0.05、##:P<0.01:対照群に対する有意差(ダネットの多重比較検定)
*:P<0.05、**:P<0.01:対照群に対する有意差(スチューデントのt検定)
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の組成物は、ACE阻害活性、血圧降下作用などを有するので、ACEまたは血圧に関連する疾患を予防あるいは軽減することができる。また、本発明の組成物は、天然由来の抽出物を有効成分とするため、安全性が高い。さらに、血圧上昇を引き起こす偽アルドステロン症の原因となるグリチルリチン酸の含有量も極めて低いことが確認されている。
したがって、本発明の組成物は、ACEまたは血圧に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品および医薬品として利用することができる。
また、マメ科カンゾウ属に属する植物において、従前医薬品原料として利用可能でない部位(葉および茎の部分)についても、有効に活用することができる。