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特許7555231廃コンクリートからのセメント原料回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】廃コンクリートからのセメント原料回収方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20240913BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240913BHJP
   B02C 21/00 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
C04B18/16
B09B5/00 F
B02C21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020175863
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067246
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121764(JP,A)
【文献】特開平08-245248(JP,A)
【文献】特開平10-211441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B02C 9/00-11/08
B02C 19/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
篩目が5mmの第1の篩と、篩目が0.5~1.2mmの第2の篩を使用して廃コンクリート破砕物を分級する分級工程と、
第2の篩の篩下を比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する比重選別工程
を含み、
比重選別工程において、第2の篩の篩下から分離された低比重物を回収する、
廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
【請求項2】
廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
篩目が5mmの第1の篩と、篩目が0.5~1.2mmの第2の篩と、篩目が0.1~0.4mmの第3の篩を使用して廃コンクリート破砕物を分級する分級工程と、
第3の篩の篩上及び篩下をそれぞれ比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する比重選別工程
を含み、
比重選別工程において、第3の篩の篩上及び篩下から分離された低比重物をそれぞれ回収する
廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
【請求項3】
破砕工程において、廃コンクリートを粒径40mm未満に破砕する、請求項1記載のセメント原料回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃コンクリートからのセメント原料回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート建築物等の解体工事に伴って発生する廃コンクリートは、鉄筋等のコンクリート以外の異物を除去した後、粒径が40mmアンダー程度となるまで破砕され、路盤材又は埋戻し材等として活用されていた。しかし、大都市部を中心に廃コンクリートが増加しているのに対し、路盤材等の需要が減少傾向にあるため、破砕後の廃コンクリートを更に磨砕等することで、コンクリート中の骨材に付着しているセメントペーストと骨材とを分離し、この骨材を再生骨材として再利用する試みがなされている。
【0003】
例えば、粒径1000mm以下の廃コンクリートを破砕機及び細破砕機により篩分機を介在させて粒径約5mm以下に粉砕した後、粒径0.5~5mmの粉砕物を比重選別し、粒径0.5mm以下の粉砕物をサイクロンで選別し、高比重物を再生細骨材として回収する方法(特許文献1)、約40mm以下の廃コンクリート破砕物を更に5mm以下に破砕し、これを研磨してモルタルを除去し、被処理物から微粉を除去して再生細骨材として回収する方法(特許文献2)が提案されている。また、廃コンクリートを破砕し、振動篩により粒径5mm未満の砂セメントと粒径5mm以上の砂利砕石分とに選別した後、砂利砕石分を摩鉱してモルタル分を剥離して砂利砕石分とモルタル分との集合体とし、この集合体を比重選別して高比重物を再生骨材として回収するとともに、砂セメントを摩鉱してモルタル分を剥離して砂分とモルタル分との集合体とし、この集合体をスパイラル分級して砂とセメントを回収する方法(特許文献3)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-220192号公報
【文献】特開平08-245248号公報
【文献】特開平11-314951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した先行技術はいずれも、廃コンクリート破砕物を摩砕や研磨等により骨材表面のセメントペースト分を剥ぎ取ることで、高品位の再生骨材を回収することを目的とするものであり、セメント原料の回収について一切検討していないか、検討したとしても、セメント原料の品位向上を前提としたものではない。
本発明者らは、上記した先行技術により回収されるセメント原料の品位について分析したところ、廃コンクリート破砕物を摩砕や研磨することに起因して骨材が多く含まれ、セメントペースト分が低いだけでなく、アルカリ等量が高いため、その再利用が制限されるという課題が存在することを見出した。
したがって、本発明の課題は、廃コンクリートから高品位のセメント原料を回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、廃コンクリートから回収されるセメント原料の品位を向上させるべく検討した結果、廃コンクリートを破砕し、その破砕物を3以上の分級物に分けた後、分級物ごとに比重選別して高比重物と低比重物とに分離し、所定の粒径未満の分級物から分離された低比重物を回収することで、セメントペースト分が高く、アルカリ等量の低い高品位のセメント原料が効率よく得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
〔1〕廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
廃コンクリート破砕物を、3以上の分級物に分ける分級工程と、
分級物ごとに比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する比重選別工程
を含み、
比重選別工程において、所定の粒径未満の分級物から分離された低比重物を回収する、
廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
〔2〕破砕工程において、廃コンクリートを粒径40mm未満に破砕する、前記〔1〕記載のセメント原料回収方法。
〔3〕分級工程において、篩目が5mmの第1の篩と、篩目が0.5~1.2mmの第2の篩を少なくとも使用する、前記〔1〕又は〔2〕記載のセメント原料回収方法。
〔4〕比重選別工程において、第2の篩の篩通過分から分離された低比重物を回収する、前記〔3〕記載のセメント原料回収方法。
〔5〕セメント原料は、セメントペースト含有率が60質量%以上であり、アルカリ等量が2%以下である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載のセメント原料回収方法。
〔6〕廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
廃コンクリート破砕物を、3以上の分級物に分ける分級工程と、
分級物ごとに比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する比重選別工程
を含み、
比重選別工程において、
所定の粒径未満の分級物から分離された低比重物をセメント原料として回収し、
所定の粒径未満の分級物から分離された高比重物を再生路盤材又は再生骨材として回収する、
廃コンクリートの再生方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃コンクリートから高品位のセメント原料を効率よく回収することが可能であり、また回収されたセメント原料は、セメントペースト分が高く、アルカリ等量が低いため、制限なく再利用することができる。更に、本発明によれば、廃コンクリートから再生路盤材や再生骨材として再資源化可能な材料も効率的に回収することができる。したがって、本発明方法は、廃コンクリートの再生方法としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のセメント原料回収方法は、破砕工程と、分級工程と、比重選別工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0010】
(破砕工程)
本工程は、廃コンクリートを破砕する工程である。
本工程で使用する廃コンクリートは、土木工事や構造物の解体等によって発生する解体コンクリートや、建築物等の建設時等に発生した余剰コンクリート等が挙げられる。
また、廃コンクリートとして、作業効率、セメント原料の品位向上の観点から、鉄筋等の異物を分離する目的で小割り、磁力選別、手選別されたコンクリート塊を用いることが好ましい。その寸法は、通常200~400mm角であり、好ましくは300mm角程度である。
【0011】
本工程では、破砕機を使用することができる。破砕機としては公知のものを使用できる。例えば、フレームに固定された固定刃と動刃によって圧縮破砕するジョークラッシャ、高速回転させた打撃板及び装置に固定された反発板への衝撃によって衝撃破砕するインパクトクラッシャ、円錐状のコンケーブと偏心するマントルによって圧縮破砕するコーンクラッシャ、回転による遠心力によってコンクリート塊同士を衝突させて破砕する遠心式粉砕機、コンケーブとマントル間に噛み込んで圧縮破砕するジャイレトリクラッシャを用いることができる。
破砕機は廃コンクリートの大きさにより適宜選択することが可能である。例えば、比較的大きな塊であれば、ジョークラッシャ、ジャイレトリクラッシャ等を用い、比較的小さな塊であれば、インパクトクラッシャ、コーンクラッシャ、ジョークラッシャ等を用いることができる。なお、破砕機には、廃コンクリートが破砕される際に発生する粉塵を含む排ガスを集塵するためのバグフィルタを備えてもよい。
【0012】
破砕処理は、2回以上行ってもよく、2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕装置を使用することができる。破砕処理を2回以上行う場合、廃コンクリート破砕物が所望の粒径となるように破砕機を適宜選択することが可能である。例えば、1次粉砕及び2次粉砕をジョークラッシャで行っても、また1次破砕をジョークラッシャで行い、2次破砕をインパクトクラッシャで行ってもよく、更に3次破砕をコーンクラッシャで行うこともできる。
【0013】
本工程で得られる廃コンクリート破砕物の粒径は、セメント原料の品位、とりわけセメントペーストが濃縮されたセメント原料回収の観点から、40mm未満が好ましく、35mm未満がより好ましく、30mm未満が更に好ましい。
【0014】
(分級工程)
本工程は、廃コンクリート破砕物を、3以上の分級物に分ける工程である。
本工程は、分級機を使用することができる。分級機としては、例えば、振動式篩や旋回式篩を挙げることができる。
【0015】
本工程では、作業効率、セメント原料の品位向上の観点から、廃コンクリート破砕物を3以上の分級物に分離するが、4以上の分級物、更には5以上の分級物に細分化してもよい。なお、分級数の上限は特に限定されないが、作業効率の観点から、7以下が好ましく、6以下が更に好ましい。この場合、所望の粒度の分級物が得られるように、各篩の篩目を適宜選択可能であるが、高品位のセメント原料、並びに再生路盤材及び再生骨材を回収する観点から、篩目が5mmである第1の篩と、篩目が0.5~1.2mmの範囲内である第2の篩を少なくとも使用することが好ましい。なお、本工程においては、篩目の大きい方から順に篩分けしても、篩目の小さい方から順に篩分けしてもよい。
【0016】
好適な態様として、廃コンクリート破砕物を、第1の篩、第2の篩及び第3の篩を用いて4つの分級物に分けることが挙げられる。この場合、第1の篩の篩目は、5mmが好ましく、第2の篩の篩目は、0.5~1.2mmが好ましく、0.5~1.0mmがより好ましく、0.6~0.8mmが更に好ましく、第3の篩の篩目は、0.1~0.4mmが好ましく、0.1~0.3mmがより好ましく、0.1~0.2mmが更に好ましい。
【0017】
4つの分級物の好適な組み合わせとしては、粒径5mm以上の分級物と、粒径0.7mm以上5mm未満の分級物と、粒径0.15mm以上0.7mm未満の分級物と、粒径0.15mm未満の分級物との組み合わせを挙げることができる。
【0018】
(比重選別工程)
本工程は、分級工程で得られた分級物について、分級物ごとに比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する工程である。
本工程では、比重選別機を使用することができる。比重選別機としては公知のものを使用することが可能であり、乾式及び湿式のいずれでも構わない。例えば、乾式比重選別機としては、傾斜させたデッキを左右に往復振動させ、そのデッキの底部から送風することにより比重の異なる粒子を選別するエアテーブル選別機を挙げることができる。また、湿式比重選別機としては、例えば、水中の固定網上にある粒子層に上下に脈動する水流を与え、粒子を比重別に網上で成層させ分離するジグ式選別機、傾斜させたデッキの水平運動と水流によって、比重の異なる粒子を選別するテーブル選別機(ジェームステーブル、ウイルフレーテーブル)、粒子に遠心力を与えて比重の異なる粒子を選別する遠心力選別を挙げることができる。
【0019】
比重選別は、分級物ごとに同一又は異なる比重選別機を使用することが可能であり、分級物の粒径により適宜選択してもよい。例えば、粒径の大きな分級物を比重選別する場合には、乾式の比重選別機を使用し、粒径の小さな分級物を比重選別する場合には、湿式の比重選別機を使用することができる。なお、比重選別機には、比重選別の際に発生する粉塵を集塵するためのバグフィルタを備えてもよい。
【0020】
(回収工程)
本工程では、分級物ごとに分離された低比重物の中から、所定の粒径未満の分級物から分離された低比重物を回収する。例えば、分級工程において、上記した第1の篩と第2の篩を少なくとも用いた場合には、第2の篩の篩を通過する粒度を有する分級物にセメントペースト分が濃縮されているため、第2の篩の篩を通過する粒度を有する分級物について、比重選別により高比重物と低比重物に分離することで、低比重物はアルカリ等量が低減される。そして、この低比重物を回収することで、セメントペースト含有量が高く、アルカリ等量の低いセメント原料を得ることができる。
【0021】
本発明方法により回収されたセメント原料は、下記の(1)及び(2)の特性を具備することができる。
(1)セメントペースト含有率が、通常60質量%以上であり、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。なお、セメントペースト含有率の上限値は特に限定されず、100質量%であっても構わないが、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。ここで、本明細書において「セメントペースト含有率」とは、下記式(i)にて算出されるものをいう。
【0022】
セメントペースト含有率(%)=100-骨材含有率 (i)
【0023】
なお、本明細書において「骨材含有率」は、セメント協会F-18法に準拠し、試料を粉砕後、塩酸(1+100)溶解により残った不溶残分量(in.sol)を骨材含有率とする。
【0024】
(2)アルカリ等量が、通常2%以下であり、好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.5%以下である。なお、アルカリ等量の下限値は特に限定されず、0%であっても構わないが、通常0.1%以上、好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上である。ここで、本明細書において「アルカリ等量」とは、試料の化学分析の結果から、下記式(ii)によって算出されるものをいう。
【0025】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (ii)
【0026】
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率(%)である。〕
【0027】
このように、回収されたセメント原料は、品位の高いものであるから、制限なく再利用することができる。
【0028】
また、分級工程において、上記した第1の篩と第2の篩を少なくとも用いた場合には、第2の篩の篩を通過する粒度を有する分級物について、比重選別により高比重物と低比重物に分離することで、低比重物は、上記したとおり、セメント原料として回収されるが、高比重物は、再生路盤材や再生骨材として回収することができる。ここで、本明細書において「再生路盤材」とは、舗装再生便覧(日本道路協会)の再生路盤材の品質規定を満たすものをいう。また、「再生骨材」とは、JIS A 5021「コンクリート用再生骨材H」、JIS A 5022「再生骨材コンクリートM」、及びJIS A 5023「再生骨材コンクリートL」のいずれかの規格を満たすものをいう。なお、第1の篩の篩上物と、第2の篩の篩上物については、再度破砕工程に戻し、上記工程に供することができる。
【0029】
このように、本発明方法は、廃コンクリートから高品位のセメント原料を効率よく回収できるだけでなく、再生路盤材や再生骨材として再資源化可能な材料も効率的に回収することが可能であるから、本発明方法は、廃コンクリートの再生方法としても有用である。すなわち、廃コンクリートを破砕する破砕工程と、廃コンクリート破砕物を、3以上の分級物に分ける分級工程と、分級物ごとに比重選別し、高比重物と低比重物とに分離する比重選別工程を含み、比重選別工程において、所定の粒径未満の分級物から分離された低比重物をセメント原料として回収し、所定の粒径未満の分級物から分離された高比重物を再生路盤材又は再生骨材として回収するコンクリートの再生方法を提供することができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
本実施例においては、廃コンクリートとして、最大直径約300mmであり、原骨材に石灰石骨材を含まない解体コンクリート塊を用いた。
【0032】
実施例1~5
(破砕工程)
表1に示す破砕機を用いて廃コンクリートを破砕し、粒径40mm未満の廃コンクリート破砕物を得た。なお、実施例1の破砕2では、破砕1の破砕物に対して篩分けを行い、篩目40mmの篩を通過しない40mm上を篩目40mmの篩を通過するまで破砕処理し、粒径40mm未満の廃コンクリート破砕物とした。
【0033】
【表1】
【0034】
(分級工程)
篩目が0.15mm、0.7mm、5mmの3つの篩を使用し、粒径40mm未満の廃コンクリート破砕物の篩分けを実施した。篩分けは、振動によって篩に上下動及び水平動を与えて破砕物を揺り動かす振動篩を用いた。そして、粒径が0.15mm未満の破砕物、粒径が0.15mm以上0.7mm未満の破砕物、粒径が0.7mm以上5mm未満の破砕物、粒径が5mm以上の破砕物について質量割合を測定した。
また、各粒径群の破砕物について、セメントペースト含有率及びアルカリ等量を測定した。なお、セメントペースト含有率は、下記式(i)にて算出した。また、アルカリ等量(Na2Oeq:試料中の全アルカリの含有率)は、化学分析の結果から、下記式(ii)によって算出した。これらの結果を表2に示す。
【0035】
セメントペースト含有率(%)=100-骨材含有率 (i)
【0036】
〔式中、骨材含有率は、セメント協会F-18法に準拠し、試料を粉砕後、塩酸(1+100)溶解により残った不溶残分量(in.sol)である。〕
【0037】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (ii)
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率(%)である。〕
【0038】
【表2】
【0039】
(比重選別工程)
分級物のうち、粒径が0.7mm以上5mm未満の分級物についてはジグ式選別機(TACUB JIG)を使用し、粒径が0.15mm以上0.7mm未満の分級物については水テーブル式選別機(ウィルフレーテーブル)を使用し、粒径が0.15mm未満の分級物については遠心力式選別機(Falcon選鉱機)を使用して比重選別を行った。このうち、粒径が0.15mm以上0.7mm未満の分級物と、粒径が0.15mm未満の分級物を比重選別し、分離された低比重物をセメント原料として回収した。回収したセメント原料について、セメントペースト含有率及びアルカリ等量を測定した。その結果を表3に示す。なお、粒径が0.7mm以上5mm未満の分級物を比重選別により分離した低比重物については、モルタルを多く含みアルカリ等量が高いため、セメント原料に適さないことから、破砕工程に戻した。
【0040】
【表3】
【0041】
表3から、実施例1~5のいずれにおいても、セメントペースト含有率が70%以上であり、アルカリ等量が1.1%以下である高品位のセメント原料を回収できることがわかる。
【0042】
粒径が0.15mm以上0.7mm未満の分級物と、粒径が0.15mm未満の分級物を比重選別により分離した高比重物について、再生路盤材としての評価を行った。その結果、実施例1の高比重物はRC40及び再生砂10-0の規格を満たし、実施例2の高比重物はRC20の規格を満たすことを確認した。また、再生骨材としての評価を行った結果、実施例3~5の高比重物は再生粗骨材M、再生細骨材Lの規格を満たし、いずれの実施例で回収される高比重物についても再資源化可能であることを確認した。
【0043】
比較例1
(破砕工程)
表4に示すように、廃コンクリートを実施例1と同様の破砕1、破砕2に供して得られた破砕物に対し、更に遠心式粉砕機にて粉砕を行った。なお、破砕2では、実施例1と同様に破砕1の破砕物に対して篩分けを行い、篩目40mmの篩を通過しない40mm上のみを破砕処理し、粒径40mm未満の廃コンクリート破砕物とした。また、粉砕機には集塵機を設置し、ダストを回収した。
【0044】
【表4】
【0045】
(分級工程、選別工程)
粉砕工程後、振動篩により分級し、粒径5mm以上の破砕物を粗骨材として、粒径5mm未満の破砕物を細骨材としてそれぞれそのまま回収した。
回収したダストはセメントペーストの濃縮を目的として、サイクロンで選別を行った。
各回収物について、セメントペースト含有率及びアルカリ等量を測定した。その結果を表5に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
回収物のうちダスト選別後微粉が最もセメントペーストが濃縮されていたが、セメントペースト含有率が52.8%であり、アルカリ等量が2.4%であり、セメント原料に適さない品位であった。また、再生骨材の評価を行った結果、粒径が5mm以上の破砕物は再生粗骨材Hの規格を満たし、粒径5mm未満の破砕物は再生細骨材Hの規格を満たすものであった。