(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】マグネトロンスパッタリング成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20240913BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C23C14/35 C
H05H1/46 A
(21)【出願番号】P 2020197512
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2019219155
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】森地 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 剛志
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014102877(DE,A1)
【文献】特開2014-162992(JP,A)
【文献】特開2018-184646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 - 14/58
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜ロールと、
前記成膜ロールと対向配置され、前記成膜ロールの軸線に沿って延びる第1マグネトロンプラズマユニットと、
前記成膜ロールと対向配置され、前記第1マグネトロンプラズマユニットと隣接配置され、前記成膜ロールの軸線に沿って延びる第2マグネトロンプラズマユニットとを備え、
前記第1マグネトロンプラズマユニットは、
前記成膜ロールの軸線と同一方向に軸線が延びる第1ロータリーターゲットと、
前記第1ロータリーターゲットの径方向内側に配置される第1ヨークと、
前記第1ロータリーターゲットの径方向内側において、前記第1ヨークの表面に配置される第1磁石部とを備え、
前記第2マグネトロンプラズマユニットは、
前記第1ロータリーターゲットの軸線と同一方向に軸線が延びる第2ロータリーターゲットと、
前記第2ロータリーターゲットの径方向内側に配置される第2ヨークと、
前記第2ロータリーターゲットの径方向内側において、前記第2ヨークの表面に配置される第2磁石部とを備え、
下記条件[1]~条件[3]のうち、少なくともいずれか1つの条件を満足することを特徴とする、マグネトロンスパッタリング成膜装置。
条件[1]:前記第1ロータリーターゲットの軸線から前記成膜ロールの軸線に向かう第1方向において、前記第1磁石部から前記第1ロータリーターゲットまでの距離が、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って長く、前記第2ロータリーターゲットの軸線から前記成膜ロールの軸線に向かう第2方向において、前記第2磁石部から前記第2ロータリーターゲットまでの距離が、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って長い。
条件[2]:前記第1磁石部が、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って薄く、前記第2磁石部が、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って薄い。
条件[3]:前記第1ヨークが、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って薄く、前記第2ヨークが、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って薄い。
【請求項2】
前記第1ロータリーターゲットおよび前記成膜ロールの間の磁場強度は、前記軸線方向一方側に向かうに従って低く、前記第2ロータリーターゲットおよび前記成膜ロールの間の磁場強度は、前記軸線方向他方側に向かうに従って低いことを特徴とする、請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置。
【請求項3】
前記条件[1]を満足し、
前記第1磁石部の厚み、および、前記第2磁石部の厚みのそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって同一であり、
前記第1ヨークの厚み、および、前記第2ヨークの厚みのそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置。
【請求項4】
前記条件[1]および前記条件[2]を満足し、
前記第1方向における前記第1ヨークから前記第1ロータリーターゲットまでの距離、および、前記第2方向における前記第2ヨークから前記第2ロータリーターゲットまでの距離のそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって、同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置。
【請求項5】
前記条件[3]を満足し、
前記第1方向における前記第1ヨークから前記第1ロータリーターゲットまでの距離、および、前記第2方向における前記第2ヨークから前記第2ロータリーターゲットまでの距離のそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって、同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンスパッタリング成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成膜ロールに、互いに隣り合う2つのマグネトロンスパッタリングユニットが対向配置されたデュアルタイプのマグネトロンスパッタリング成膜装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。2つのマグネトロンスパッタリングユニットのそれぞれは、ロータリーターゲットと、その内側に収容されるマグネットとを備える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「Reactive Sputter Deposition」,出版:Springer、p346,2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1のマグネトロンスパッタリング成膜装置を駆動させると、一のロータリーターゲットの長手方向一端部の近傍の電子密度が、長手方向中間部および他端部の近傍の電子密度より高くなる。一方、他のロータリーターゲットの長手方向他端部の近傍の電子密度が、長手方向中間部および一端部の近傍の電子密度より高くなる。
【0005】
上記の現象は、デュアルタイプのマグネトロンスパッタリング成膜装置の特有の現象であり、ターゲットごとに発生するプラズマの相互作用により、互いに対向配置された2つのターゲットの内側ほど非対称で強く傾斜した電場が発生することに起因する。
【0006】
そうすると、一のロータリーターゲットの長手方向一端部は、中間部および他端部に比べて、電子によって生じたイオンとの衝突頻度が高くなる。そのため、一のロータリーターゲットの長手方向一端部は、一のロータリーターゲットの中間部および他端部に比べて、多くスパッタリングされるため、薄くなる。そうすると、そのような一のロータリーターゲットは、早期に交換を要するので、一のロータリーターゲットの使用期間が短くなってしまうという不具合がある。他のロータリーターゲットについても、長手方向他端部(電子密度が高い領域に対向する部分)と電子によって生じたイオンとの衝突の頻度が高いことに起因して、一のロータリーターゲットの長手方向一端部と同様の不具合を招来する。
【0007】
また、マグネトロンスパッタリング成膜装置により製造されるスパッタリング膜において、一のロータリーターゲットの長手方向一端部に対向する部分が、ロータリーターゲットの中間部および他端部に対向する部分に比べて、厚くなり、その結果、軸線方向において厚みが均一なスパッタリング膜とならないという不具合がある。他のロータリーターゲットに対向するスパッタリング膜についても、上記した一のロータリーターゲットに対向するスパッタリング膜と同様の不具合を招来する。
【0008】
そこで、一のマグネトロンスパッタリングユニットにおける一端部のマグネットを、磁力が弱い磁石とし、中間部および他端部のマグネットを、磁力が強い磁石にすることが試案される(第1の試案)。また、一のマグネトロンスパッタリングユニットにおける一端部のマグネットを部分的になくすことも試案される(第2の試案)。他のマグネトロンスパッタリングユニットについても、上記と同様の試案が検討される。
【0009】
しかし、第1の試案では、磁力が異なる磁石の境界において、磁力の不連続部分を生じ、そのため、電子密度の不均一を生じ、ひいては、スパッタリング膜の厚みを軸方向にわたって均一にできないという不具合がある。さらに、第2の試案では、マグネットの有無に対応して、磁力の不均一部分を生じ、そのため、電子密度の不均一を生じ、ひいては、スパッタリング膜の厚みを軸方向にわたって均一にできないという不具合がある。
【0010】
本発明は、第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制でき、軸線方向にわたって厚みが均一なスパッタリング膜を製造することができるマグネトロンスパッタリング成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、成膜ロールと、前記成膜ロールと対向配置され、前記成膜ロールの軸線に沿って延びる第1マグネトロンプラズマユニットと、前記成膜ロールと対向配置され、前記第1マグネトロンプラズマユニットと隣接配置され、前記成膜ロールの軸線に沿って延びる第2マグネトロンプラズマユニットとを備え、前記第1マグネトロンプラズマユニットは、前記成膜ロールの軸線と同一方向に軸線が延びる第1ロータリーターゲットと、前記第1ロータリーターゲットの径方向内側に配置される第1ヨークと、前記第1ロータリーターゲットの径方向内側において、前記第1ヨークの表面に配置される第1磁石部とを備え、前記第2マグネトロンプラズマユニットは、前記第1ロータリーターゲットの軸線と同一方向に軸線が延びる第2ロータリーターゲットと、前記第2ロータリーターゲットの径方向内側に配置される第2ヨークと、前記第2ロータリーターゲットの径方向内側において、前記第2ヨークの表面に配置される第2磁石部とを備え、下記条件[1]~条件[3]のうち、少なくともいずれか1つの条件を満足する、マグネトロンスパッタリング成膜装置を含む。
【0012】
条件[1]:前記第1ロータリーターゲットの軸線から前記成膜ロールの軸線に向かう第1方向において、前記第1磁石部から前記第1ロータリーターゲットまでの距離が、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って長く、前記第2ロータリーターゲットの軸線から前記成膜ロールの軸線に向かう第2方向において、前記第2磁石部から前記第2ロータリーターゲットまでの距離が、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って長い。
【0013】
条件[2]:前記第1磁石部が、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って薄く、前記第2磁石部が、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って薄い。
【0014】
条件[3]:前記第1ヨークが、前記成膜ロールの軸線方向一方側に向かうに従って薄く、前記第2ヨークが、前記成膜ロールの軸線方向他方側に向かうに従って薄い。
【0015】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置は、条件[1]~条件[3]のうち、少なくともいずれか1つの条件を満足する。
【0016】
そのため、第1ロータリーターゲットの軸線方向一端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲットの軸線方向中間部および他端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となる。また、イオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲットの軸線方向他端部から一端部にかけて、均一となる。そのため、第1ロータリーターゲットの軸線方向一端部だけが過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0017】
また、第2ロータリーターゲットの軸線方向他端部とイオンとの衝突頻度は、第2ロータリーターゲットの軸線方向中間部および一端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となる。また、イオンとの衝突頻度は、軸線方向一端部から他端部にかけて、均一となる。そのため、第2ロータリーターゲットの軸線方向他端部だけが過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0018】
従って、スパッタリング膜の軸線方向両端部が極端に厚くなることを抑制でき、さらに、スパッタリング膜の厚みを軸線方向にわたって均一にできる。
【0019】
本発明(2)は、前記第1ロータリーターゲットおよび前記成膜ロールの間の磁場強度は、前記軸線方向一方側に向かうに従って低く、前記第2ロータリーターゲットおよび前記成膜ロールの間の磁場強度は、前記軸線方向他方側に向かうに従って低い、(1)に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置を含む。
【0020】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、第1ロータリーターゲットおよび成膜ロールの間の磁場強度は、第1ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることをより一層抑制できる。また、第2ロータリーターゲットおよび成膜ロールの間の磁場強度は、軸線方向他方側に向かうに従って低いので、第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることをより一層抑制できる。
【0021】
本発明(3)は、前記条件[1]を満足し、前記第1磁石部の厚み、および、前記第2磁石部の厚みのそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって同一であり、前記第1ヨークの厚み、および、前記第2ヨークの厚みのそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって同一である、(1)または(2)に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置を含む。
【0022】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、軸線方向にわたって同一の厚みを有する第1磁石部が、軸線方向にわたって同一の厚みを有する第1ヨークに配置されている。
そして、これらが軸線に対して傾斜して配置されれば、第1マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニットにより、第1ロータリーターゲットの軸線方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0023】
また、軸線方向にわたって同一の厚みを有する第2磁石部が、軸線方向にわたって同一の厚みを有する第2ヨークに配置されている。そして、これらが軸線に対して傾斜して配置されれば、第2マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニットにより、第2ロータリーターゲットの軸線方向他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0024】
本発明(4)は、前記条件[1]および前記条件[2]を満足し、前記第1方向における前記第1ヨークから前記第1ロータリーターゲットまでの距離、および、前記第2方向における前記第2ヨークから前記第2ロータリーターゲットまでの距離のそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって、同一である、(1)または(2)に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置を含む。
【0025】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、軸線方向にわたって厚みが同一であり、軸線に沿って配置される第1ヨークに、軸線方向一方側に向かって次第に薄くなる第1磁石部が配置されているので、第1マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニットにより、第1ロータリーターゲットの軸線方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0026】
また、軸線方向にわたって厚みが同一であり、軸線に沿って配置される第2ヨークに、軸線方向他方側に向かって次第に薄くなる第2磁石部を配置されているので、第2マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニットにより、第2ロータリーターゲットの軸線方向他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0027】
本発明(5)は、前記条件[3]を満足し、前記第1方向における前記第1ヨークから前記第1ロータリーターゲットまでの距離、および、前記第2方向における前記第2ヨークから前記第2ロータリーターゲットまでの距離のそれぞれが、前記成膜ロールの軸線方向にわたって、同一である、(1)または(2)に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置を含む。
【0028】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、軸線方向にわたって厚みが同一であり、軸線に沿う第1磁石部が、軸線方向一方側に向かって次第に薄くなる第1ヨークに配置されているので、第1マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニットにより、第1ロータリーターゲットの軸線方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0029】
また、軸線方向にわたって厚みが同一であり、軸線に沿う第2磁石部が、軸線方向他方側に向かって次第に薄くなる第2ヨークに配置されているので、第2マグネトロンプラズマユニットを簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニットにより、第2ロータリーターゲットの軸線方向他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のマグネトロンスパッタリング成膜装置は、第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットが軸線方向にわたって均一に薄くなり、軸線方向にわたって厚みが均一なスパッタリング膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明のマグネトロンスパッタリング成膜装置の第1実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のマグネトロンスパッタリング成膜装置に備えられるマグネトロンスパッタリング部の拡大断面図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bのそれぞれは、
図2に示すマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bのそれぞれは、第2実施形態のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bのそれぞれは、第3実施形態のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bのそれぞれは、第1変形例のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bのそれぞれは、第2変形例のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bのそれぞれは、第3変形例のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bのそれぞれは、第4変形例のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bのそれぞれは、比較例1および2のマグネトロンスパッタリング成膜装置のマグネトロンスパッタリング部の第1ロータリーターゲットおよび第2ロータリーターゲットのそれぞれの断面図を示す。
【
図13】
図13は、実施例2の第1ロータリーターゲットの磁束密度の径方向成分の測定結果を示す。
【
図14】
図14は、実施例3の第1ロータリーターゲットの磁束密度の径方向成分の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のマグネトロンプラズマ成膜装置の第1実施形態を、
図1~
図3Bを参照して説明する。
【0033】
図1に示すように、マグネトロンスパッタリング成膜装置1は、基材91を搬送しながら、膜92を基材91に対して形成(成膜)する、ロールトゥロール方式の成膜装置である。マグネトロンスパッタリング成膜装置1は、搬送部2と、成膜部3とを備える。
【0034】
搬送部2は、搬送ケーシング4と、送出ロール5と、巻取ロール6と、ガイドロール7と、真空ポンプ8とを備える。
【0035】
搬送ケーシング4は、搬送方向に沿って延びる略箱形状を有する。搬送ケーシング4は、送出ロール5、巻取ロール6およびガイドロール7を収容する。
【0036】
送出ロール5および巻取ロール6のそれぞれは、搬送ケーシング4内の搬送方向上流側端部および下流側端部のそれぞれに配置されている。
【0037】
ガイドロール7は、送出ロール5および巻取ロール6の間において、複数配置されている。複数のガイドロール7は、基材91を成膜ロール52に巻回させるように、配置されている。
【0038】
真空ポンプ8は、搬送ケーシング4に設けられている。
【0039】
成膜部3は、成膜ケーシング51と、成膜ロール52と、複数(例えば、3つ)のマグネトロンスパッタリング部10とを備える。
【0040】
成膜ケーシング51は、搬送ケーシング4に連通しており、搬送ケーシング4とともに、真空チャンバーを構成する。成膜ケーシング51は、略箱形状を有する。成膜ケーシング51は、複数の隔壁53を有する。複数の隔壁53は、成膜ロール52に向かって延びる。なお、成膜ケーシング51には、図示しないスパッタガス供給装置が設けられる。成膜ケーシング51は、成膜ロール52および複数のマグネトロンスパッタリング部10を収容する。
【0041】
成膜ロール52の軸線A1は、基材91の搬送方向および厚み方向に直交する幅方向に沿う。以下、成膜ロール52の軸線A1を、他の軸線と区別するために、第1軸線A1と称呼する。
【0042】
複数のマグネトロンスパッタリング部10は、成膜ロール52の径方向外側に対向配置されている。複数のマグネトロンスパッタリング部10は、成膜ロール52の周方向に沿って互いに間隔を隔てて配置されている。
【0043】
周方向に隣接するマグネトロンスパッタリング部10は、隔壁53によって仕切られている。隔壁53によって仕切られる空間は、成膜室9を構成する。成膜室9は、成膜ケーシング51内(真空チャンバー)において、複数仕切られている。1つの成膜室9に、1つのマグネトロンスパッタリング部10が設けられている。複数のマグネトロンスパッタリング部10のそれぞれは、プラズマケーシング20と、第1マグネトロンプラズマユニット11と、第2マグネトロンプラズマユニット12とを備える。
【0044】
図2に示すように、プラズマケーシング20は、成膜ロール52に向かって一側が開口された略箱形状を有する。プラズマケーシング20は、成膜ロール52の第1軸線A1に沿って延びる。プラズマケーシング20は、第1マグネトロンプラズマユニット11と第2マグネトロンプラズマユニット12とを収容する。
【0045】
第1マグネトロンプラズマユニット11と第2マグネトロンプラズマユニット12とは、成膜ロール52と対向配置される。第1マグネトロンプラズマユニット11と第2マグネトロンプラズマユニット12とは、成膜ロール52の周方向に沿って互いに間隔を隔てて隣接配置されている。第1マグネトロンプラズマユニット11と第2マグネトロンプラズマユニット12とは、成膜ロール52の第1軸線A1に沿って延びる。第1マグネトロンプラズマユニット11と第2マグネトロンプラズマユニット12とは、プラズマケーシング20の開口を通して、成膜ロール52に面している。
【0046】
図2および
図3Aに示すように、第1マグネトロンプラズマユニット11は、第1ロータリーターゲット13と、第1磁石ユニット31とを備える。
【0047】
第1ロータリーターゲット13は、円筒形状を有する。第1ロータリーターゲット13は、成膜ロール52の第1軸線A1と平行する軸線A2を有する。以下、第1ロータリーターゲット13の軸線A2を、他の軸線と区別するために、第2軸線A2と称呼する。第1ロータリーターゲット13の第2軸線A2は、成膜ロール52の第1軸線A1と同一方向に延びる。第1ロータリーターゲット13は、例えば、成膜ロール52の回転方向と逆向きに回転可能(周回移動可能)である。第1ロータリーターゲット13は、カソード源(図示せず)と電気的に接続されており、これによって、カソードとして作用できる。
【0048】
第1ロータリーターゲット13の材料は、膜92を形成するための材料である。そのような材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられる。
【0049】
第1磁石ユニット31は、第1ロータリーターゲット13の径方向内側に収容(配置)されている。第1磁石ユニット31は、長手方向に延びる平板形状を有する。第1磁石ユニット31は、長手方向にわたって同一の厚みを有する。第1磁石ユニット31は、その長手方向が、第2軸線A2に対して傾斜している。
【0050】
第1磁石ユニット31は、第1ヨーク14と、第1磁石部15とを、第1ロータリーターゲット13の第2軸線A2から、成膜ロール52の第1軸線A1に向かう第1方向に向かって順に備える。好ましくは、第1磁石ユニット31は、第1ヨーク14と、第1磁石部15とのみを備える。
【0051】
第1ヨーク14は、長手方向に延びる平板形状を有する。
図3Aに示すように、第1ヨーク14は、表面23と、裏面24とを含む。表面23は、成膜ロール52に面する。裏面24は、表面23に対して成膜ロール52の反対側に位置する。裏面24は、表面23に平行する。そのため、第1ヨーク14は、長手方向にわたって同一の厚みを有する。第1ヨーク14の材料としては、例えば、比透磁率が、10以上、さらには、50以上の高透磁率材が挙げられ、具体的には、鉄、ステンレスなどの金属が挙げられる。
【0052】
第1磁石部15は、長手方向に延びる平板形状を有する。第1磁石部15は、第1ヨーク14の表面23に固定(配置)されている。第1磁石部15は、表面27と、裏面28とを有する。表面27は、成膜ロール52に面する。裏面28は、表面27に対する成膜ロール52の反対側に位置する。裏面28は、表面27に平行する。そのため、第1磁石部15は、長手方向にわたって同一の厚みを有する。なお、この第1実施形態では、
図2に示すように、第1磁石部15は、2つの第1磁石21と、2つの第1磁石21に挟まれる第2磁石22とからなって(分割されて)おり、例えば、第1磁石21の表面27がN極を有し、第2磁石22の表面27が、S極を有する。
【0053】
そして、
図3Aに示すように、この第1磁石ユニット31では、長手方向にわたって同一の厚みを有する第1ヨーク14に、長手方向にわたって同一の厚みを有する第1磁石部15が配置されている。この第1磁石ユニット31(第1ヨーク14および第1磁石部15のいずれも)が、第2軸線A2に対して傾斜している。具体的には、第1方向において、第1磁石部15から第1ロータリーターゲット13までの距離L1は、軸線A方向一方側に向かうに従って長い。これにより、下記の条件[1]の前半部分を満足する。
【0054】
条件[1]:第1方向において、第1磁石部15から第1ロータリーターゲット13までの距離L1が、軸線A方向一方側に向かうに従って長い(前半部分)。
【0055】
第1磁石部15から第1ロータリーターゲット13までの距離L1は、軸線A方向一方側に100mm移動するときに、例えば、0.01mm以上長く、好ましくは、0.1mm以上長く、また、長くなる量の上限が、例えば、10mmである。
【0056】
図2および
図3Bに示すように、第2マグネトロンプラズマユニット12は、第2ロータリーターゲット33と、第2磁石ユニット32とを備える。第2マグネトロンプラズマユニット12の構成は、第2磁石ユニット32の軸線Aに対する傾斜が、第1磁石ユニット31の軸線Aに対する傾斜と反対である以外は、第1マグネトロンプラズマユニット11の構成と実質的に同様である。以下、第2マグネトロンプラズマユニット12に関し、第1マグネトロンプラズマユニット11と異なる構成を記載する。
【0057】
第2ロータリーターゲット33は、成膜ロール52の第1軸線A1と平行する軸線A3を有する。以下、第2ロータリーターゲット33の軸線A3は、他の軸線と区別するために、第3軸線A3と称呼する。第2ロータリーターゲット33の第3軸線A3は、成膜ロール52の第1軸線A1と同一方向に延びる。第2ロータリーターゲット33は、例えば、成膜ロール52の回転方向と同一向きに回転可能(周回移動可能)である。
【0058】
第2磁石ユニット32は、第2ヨーク34と、第2磁石部35とを、第2ロータリーターゲット33の第3軸線A3から成膜ロール52の第1軸線A1に向かう第2方向に向かって順に備える。
【0059】
第2方向において、第2磁石部35から第2ロータリーターゲット33までの距離L2は、軸線A方向他方側に向かうに従って長い。
【0060】
これによって、条件[1]の後半部分を満足する。
【0061】
条件[1]:第2方向において、第2磁石部35から第2ロータリーターゲット33までの距離L2が、軸線A方向他方側に向かうに従って長い(後半部分)。
【0062】
距離L2が長くなる程度は、上記した距離L1が長くなる程度と同一である。
【0063】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置1は、上記した条件[1]~条件[3]のうち、少なくとも1つの条件である条件[1]を満足するので、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向一方側に向かうに従って低く、また、第2ロータリーターゲット33および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向他方側に向かうに従って低い。
【0064】
図1に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1を準備するには、まず、第1マグネトロンプラズマユニット11および第2マグネトロンプラズマユニット12のそれぞれを準備し、これらをマグネトロンスパッタリング部10に備える。
【0065】
第1マグネトロンプラズマユニット11を準備するには、まず、例えば、長手方向にわたって厚みが同一である第1磁石部15を、長手方向にわたって厚みが同一である第1ヨーク14に固定して第1磁石ユニット31を準備する。続いて、第1磁石ユニット31を第1ロータリーターゲット13内に収容する。そのとき、
図3Aに示すように、第1磁石ユニット31を第2軸線A2に対して傾斜させる。これによって、第1磁石ユニット31を第1ロータリーターゲット13に設置して、第1マグネトロンプラズマユニット11を準備する。
【0066】
また、上記した第1磁石ユニット31の第1ロータリーターゲット13への設置と同様に、第2磁石ユニット32を第2ロータリーターゲット33へ設置して、第2マグネトロンプラズマユニット12を準備する。
【0067】
次に、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1を用いて、基材91に膜92を形成(成膜)する方法を説明する。
【0068】
まず、長尺の基材91をマグネトロンスパッタリング成膜装置1にセットする。基材91としては、特に限定されず、例えば、高分子フィルム(PETフィルムなど)、ガラスフィルム(薄膜ガラス)などが挙げられる。
【0069】
続いて、真空ポンプ8を駆動して、成膜室9を真空にする。これとともに、図示しないスパッタガス供給装置からスパッタガスを成膜室9に供給する。スパッタガスとしては、例えば、アルゴンなどの不活性ガス、例えば、さらに酸素を含む反応性ガスなどが挙げられる。
【0070】
続いて、基材91を成膜ロール52に対して移動させながら、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のそれぞれを回転させるとともにカソード電圧を印加する。
【0071】
これにより、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のそれぞれから電子が放出される。
【0072】
また、スパッタガスに由来するイオン(具体的には、アルゴンイオン)が、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のそれぞれに衝突し、これによって、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33からその材料の粒子が、成膜ロール52の外周面上の基材91に順に付着する。これにより、膜92が基材91の表面に形成(成膜)される。
【0073】
(第1実施形態の作用効果)
そして、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1は、条件[1]を満足する。
【0074】
そのため、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向中間部および他端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となる。第1ロータリーターゲット13とイオンとの衝突頻度は、軸線A方向他端部から一端部にかけて、均一となる。そのため、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部における過度の摩耗(偏った摩耗)を抑制でき、摩耗後の第1ロータリーターゲット13が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0075】
また、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向他端部とイオンとの衝突頻度は、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向中間部および一端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となる。また、第2ロータリーターゲット33とイオンとの衝突頻度は、軸線A方向一端部から他端部にかけて、均一なる。そのため、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向他端部における過度の摩耗(偏った摩耗)を抑制でき、摩耗後の第2ロータリーターゲット33が第3軸線A3方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0076】
従って、膜92の軸方向(長尺方向および厚み方向に直交する方向)(基材91の幅方向に相当)両端部が極端に厚くなることを抑制でき、さらに、膜92の厚みを軸線A方向にわたって均一にできる。
【0077】
また、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1では第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向一方側に向かうに従って低く、第2ロータリーターゲット33および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向他方側に向かうに従って低い。
【0078】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置1では第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向一方側に向かうに従って低いので、第1ロータリーターゲット13が軸線方向にわたって不均一に薄くなることをより一層抑制できる。また、第2ロータリーターゲット33および成膜ロール52の間の磁場強度は、軸線A方向他方側に向かうに従って低いので、第2ロータリーターゲット33が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることをより一層抑制できる。
【0079】
また、この第1実施形態の第1磁石ユニット31では、軸線A方向にわたって同一の厚みを有する第1磁石部15が、軸線A方向にわたって同一の厚みを有する第1ヨーク14に配置されている。そして、第1磁石ユニット31は、軸線Aに対して傾斜するように配置されているので、第1マグネトロンプラズマユニット11を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニット11により、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲット13が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0080】
また、第2磁石ユニット32では、軸線A方向にわたって同一の厚みを有する第2磁石部35が、軸線A方向にわたって同一の厚みを有する第2ヨーク34に配置されている。
そして、これらが軸線Aに対して傾斜するように配置されているので、第2マグネトロンプラズマユニット12を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニット12により、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲット33が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0081】
<第2実施形態>
第2実施形態において、上記した第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態は、特記する以外、第1実施形態態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態および第2実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0082】
第2実施形態では、
図4A~
図4Bに示すように、上記条件[1]に加え、下記条件[2]を満足する。
【0083】
条件[2]:第1磁石部15が、軸線A方向一方側に向かうに従って薄い。第2磁石部35が、軸線A方向他方側に向かうに従って薄い。
【0084】
具体的には、第1磁石部15は、軸線A方向一方側に100mm移動するときに、例えば、0.01mm以上薄く、好ましくは、0.1mm以上薄く、また、薄くなる量の上限が、例えば、10mmである。第2磁石部35が薄くなる程度は、上記した第1磁石部15が薄くなる程度と同一である。
【0085】
第1ヨーク14および第2ヨーク34のそれぞれは、第2軸線A2および第3軸線A3のそれぞれに対して傾斜することなく、第2軸線A2および第3軸線A3のそれぞれに平行して延びる。
【0086】
第1磁石ユニット31では、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿って配置される第1ヨーク14に、軸線A方向一方側に向かって厚みが次第に薄くなる第1磁石部15が配置されている。第1磁石部15は、表面27および/または裏面28を、長手方向一方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削することにより、形成される。
【0087】
第2磁石ユニット32では、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿って配置される第2ヨーク34に、軸線A方向他方側に向かって次第に薄くなる第2磁石部35が配置されている。第2磁石部35は、表面および/または裏面を、長手方向一方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削することにより、形成される。
【0088】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態の第1磁石ユニット31では、第1磁石ユニット31において、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿って配置される第1ヨーク14に、軸線A方向一方側に向かって次第に薄くなる第1磁石部15が配置されている。そのため、上記した第1磁石ユニット31を備える第1マグネトロンプラズマユニット11を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニット11により、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲット13が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0089】
また、第2磁石ユニット32において、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿って配置される第2ヨーク34に、軸線A方向他方側に向かって次第に薄くなる第2磁石部35が配置されている。そのため、上記した第2磁石ユニット32を備える第2マグネトロンプラズマユニット12を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニット12により、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲット33が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0090】
<第3実施形態>
第3実施形態において、上記した第1実施形態~第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第3実施形態は、特記する以外、第1実施形態態~第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態~第3実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0091】
図5A~
図5Bに示すように、第3実施形態は、軸線A方向にわたって、第1磁石部15および第2磁石部35のそれぞれの厚みを変動させず、同じ厚みとする一方、第1ヨーク14および第2ヨーク34のそれぞれの厚みを変動させることとする以外は、第2実施形態と同様である。具体的には、第3実施形態は、下記条件[3]を満足する。
【0092】
条件[3]:第1ヨーク14が、軸線A方向一方側に向かうに従って薄い。第2ヨーク34が、軸線A方向他方側に向かうに従って薄い。
【0093】
第1ヨーク14は、軸線A方向一方側に100mm移動するときに、例えば、0.01mm以上薄く、好ましくは、0.1mm以上薄く、また、薄くなる量の上限が、例えば、10mmである。第2ヨーク34が薄くなる程度は、上記した第1ヨーク14が薄くなる程度と同一である。
【0094】
第1ヨーク14は、表面23および/または裏面24を、長手方向他方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削することにより、形成される。第2ヨーク34は、表面23および/または裏面24を、長手方向一方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削することにより、形成される。
【0095】
(第3実施形態の作用効果)
第3実施形態によれば、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿う第1磁石部15が、厚み方向一方側に向かって次第に薄くなる第1ヨーク14に配置されているので、第1マグネトロンプラズマユニット11を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第1マグネトロンプラズマユニット11により、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部が過度に薄くなることを抑制でき、第1ロータリーターゲット13が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0096】
また、第2磁石ユニット32では、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿う第2磁石部35が、厚み方向他方側に向かって次第に薄くなる第2ヨーク34に配置されているので、第2マグネトロンプラズマユニット12を簡易に構成できる。そのため、簡易な構成の第2マグネトロンプラズマユニット12により、第2ロータリーターゲット33の軸線A他端部が過度に薄くなることを抑制でき、第2ロータリーターゲット33が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制できる。
【0097】
(第1変形例~第3変形例)
以下の各変形例において、上記した第1実施形態~第3実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、第1実施形態態~第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、第1実施形態~第3実施形態および各変形例を適宜組み合わせることができる。
【0098】
第1実施形態は、条件[1]を満足し、第2実施形態は、条件[1]および条件[2]を満足し、第3実施形態は、条件[3]を満足する。
【0099】
本発明は、条件[1]~条件[3]のうち、少なくともいずれか1つ条件を満足すればよく、上記した第1実施形態~第3実施形態以外の態様、具体的には、下の表1に示すように、条件[2]を満足する第1変形例(
図6A~
図6B参照)、条件[1]~条件[3]のいずれをも満足する第2変形例(
図7A~
図7B参照)、条件[1]および条件[3]を満足する第3変形例(
図8A~
図8B参照)、条件[2]および条件[3]を満足する第4変形例(
図9A~
図9B参照)も、本発明に含まれる。各実施形態~各変形例と、条件[1]~条件[3]との対応関係を表1に記載する。また、条件[1]~条件[3]を下に転記する。
【0100】
【0101】
条件[1]:第1方向において、第1磁石部15から第1ロータリーターゲット13までの距離L1が、軸線A方向一方側に向かうに従って長い。第2方向において、第2磁石部35から第2ロータリーターゲット33までの距離L2が、軸線A方向他方側に向かうに従って長い。
【0102】
条件[2]:第1磁石部15が、軸線A方向一方側に向かうに従って薄い。第2磁石部35が、軸線A方向他方側に向かうに従って薄い。
【0103】
条件[3]:第1ヨーク14が、軸線A方向一方側に向かうに従って薄い。第2ヨーク34が、軸線A方向他方側に向かうに従って薄い。
【0104】
第1実施形態~第3実施形態および第1変形例~第4変形例のうち、好ましくは、第1マグネトロンプラズマユニット11および第2マグネトロンプラズマユニット12の構成の簡単さの観点から、第1実施形態~第3実施形態が挙げられる。つまり、第1実施形態は、軸線A方向にわたって厚みがそれぞれ同一である第1ヨーク14および第1磁石部15を備える第1磁石ユニット31が軸線Aに傾斜する簡単な構成、第2実施形態は、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿う第1ヨーク14に、次第に薄くなる第1磁石部15が配置される簡単な構成、第3実施形態は、軸線A方向にわたって厚みが同一であり、軸線Aに沿う第1磁石部15が、次第に薄くなる第1ヨーク14に配置される簡単な構成である。第1実施形態~第3実施形態における第2ヨーク34および第2磁石部35の構成の簡単さは、上記の第1ヨーク14および第1磁石部15の構成の簡単さと同様である。第1実施形態~第3実施形態は、第1変形例~第4変形例に比べて、構成が簡単である。
【0105】
<他の変形例>
第1磁石21の表面27がS極を有し、第2磁石22の表面27が、N極を有してもよい。
【実施例】
【0106】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0107】
(比較例1)
図10A~
図10Bに示す第1マグネトロンプラズマユニット11および第2マグネトロンプラズマユニット12を準備した。
【0108】
第1磁石ユニット31では、平板形状の第1ヨーク14に、平板形状の第1磁石部15が配置されている。第1磁石ユニット31は、軸線Aに沿う。第2磁石ユニット32では、平板形状の第2ヨーク34に、平板形状の第2磁石部35が配置されている。第2磁石ユニット32は、軸線Aに沿う。比較例1は、条件[1]~[3]のいずれをも満足しない。第1ヨーク14および第2ヨーク34は、鉄からなる。第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33は、ITOからなる。
【0109】
アルゴンガスを成膜室9に導入しつつ、真空ポンプ8を駆動して、成膜室9内の内圧を0.5Paに設定し、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のそれぞれに12kWの電圧を印加して、マグネトロンスパッタリングを100時間実施した。この際、基材91は、送出ロール5から巻取ロール6に向けて搬送せず、マグネトロンスパッタリング部10に対して不動とした。但し、成膜ロール52の外周上には、基材91が存在する。
【0110】
その後、第1ロータリーターゲット13、それに対向する第1膜、第2ロータリーターゲット33、および、それに対向する第2膜を観察した。
【0111】
第1ロータリーターゲット13の摩耗量および軸線A方向における位置の関係を、
図11Aに示す。第1膜の厚みおよび第1膜における軸線A方向位置の関係を
図11Bに示す。第2ロータリーターゲット33の摩耗量および軸線A方向における位置の関係を、
図11Cに示す。第2膜の厚みおよび第2膜における軸線A位置の関係を、
図11Dに示す。
【0112】
(比較例1に対する考察)
図11A~
図11Bに示すように、第1ロータリーターゲット13の摩耗量と、第1膜の厚みとの、軸線A方向における挙動は、一致する。そのため、以降の各実施例においても、それらの挙動は、一致すると推測される。
【0113】
図11C~
図11Dに示すように、第2ロータリーターゲット33の摩耗量と、第2膜の厚みとの、軸線A方向における挙動は、一致する。そのため、以降の各実施例においても、それらの挙動は、一致すると推測される。
【0114】
(実施例1)
図1~
図3Bに示すように、上記した第1実施形態のマグネトロンスパッタリング成膜装置1を準備した。
【0115】
具体的には、第1磁石ユニット31では、厚みが10mmの平板形状の第1ヨーク14に、厚みが24mmの平板形状の第1磁石部15が配置されている。第1磁石ユニット31は、軸線Aに傾斜する。第1磁石部15から第1ロータリーターゲット13までの距離L1が、軸線A方向一方側に100mm移動するときに、0.33mm長い。
【0116】
第2磁石ユニット32では、厚みが10mmの平板形状の第2ヨーク34に、厚みが24mmの平板形状の第2磁石部35が配置されている。第2磁石ユニット32は、軸線Aに傾斜する。第2磁石部35から第2ロータリーターゲット33までの距離L2が、軸線A方向他方側に100mm移動するときに、0.33mm長い。
【0117】
そして、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、第1磁石部15に対向する領域における磁束密度の径方向成分を測定した。その結果を、
図12Aの実線で示す。第1ロータリーターゲット13に対向する第1膜の厚みを測定した。その結果を、
図12Bの実線で示す。
【0118】
第2ロータリーターゲット33および成膜ロール52の間において、第4磁石44に対向する領域における磁束密度の径方向成分を測定した。その結果を、
図12Cの実線で示す。第2ロータリーターゲット33に対向する第2膜の厚みを測定した。その結果を、
図12Dの実線で示す。
【0119】
(比較例2)
第1磁石ユニット31および第2磁石ユニット32のそれぞれを軸線Aに対して傾斜させず、軸線Aに沿わせた以外は、実施例1と同様に、処理した。比較例2の測定結果を、
図12A~
図12Dの破線で示す。
【0120】
(実施例1に対する考察)
図12Aから分かるように、実施例1は、比較例2に比べて、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、軸線A方向の一端部の磁束密度が低減しており、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向中間部および他端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となることが推測される。また、実施例1は、軸線A方向他端部から一端部にかけて磁束密度が次第に低くなっており、第1ロータリーターゲット13とイオンとの衝突頻度は、軸線A方向の他端部から一端部にかけて、均一となることが推測される。
図12Bから分かるように、実施例1は、第1膜の一端部が厚くなることを抑制している。そうすると、比較例1の考察を踏まえると、実施例1は、摩耗後の第1ロータリーターゲット13が不均一に薄くなることを抑制していると推測される。
【0121】
図12Cから分かるように、第2ロータリーターゲット33および成膜ロール52の間において、軸線A方向の他端部の磁束密度が低減しており、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向他端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向中間部および一端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となることが推測される。また、軸線A方一端間部から他端部にかけて磁束密度が次第に低くなっており、第2ロータリーターゲット33とイオンとの衝突頻度は、軸線A方向の一端部から他端部にかけて、均一となることが推測される。
図12Dから分かるように、実施例1は、第2膜の他端部が厚くなることを抑制している。そうすると、比較例1の考察を踏まえると、実施例1は、摩耗後の第2ロータリーターゲット33が不均一に薄くなることを抑制していると推測される。
【0122】
以上の結果を踏まえると、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1の搬送部2で基材91を搬送すれば、厚みが軸線A方向にわたって均一な膜92を形成できると推測される。
【0123】
(実施例2)
図4A~
図4Bに示すように、上記した第2実施形態のマグネトロンスパッタリング成膜装置1を準備した。
【0124】
具体的には、下記の点を変更した以外は、比較例1と同様に処理した。
【0125】
第1磁石部15の表面27を、長手方向一方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削し、第1ヨーク14が軸線Aに沿うように、第1磁石ユニット31を第1ロータリーターゲット13内に収容した。第1磁石部15は、軸線A方向一方側に100mm移動するとき、0.33mm薄い。
【0126】
第2磁石部35の表面を、軸線A方向他方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削し、第2ヨーク34が軸線Aに沿うように、第2磁石ユニット32を第2ロータリーターゲット33内に収容した。第2磁石部35は、軸線A方向他方側に100mm移動するとき、0.33mm薄い。
【0127】
そして、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、第1磁石部15に対向する領域における磁束密度の径方向成分を計算した。具体的には、下記のソフトウエアおよび計算手法に基づいて、磁場シミュレーションを実施して、磁束密度を計算した。
ソフトウェア名:JMAG(JSOL社製)
計算手法:有限要素法
その結果を、
図13に示す。
【0128】
(実施例2に対する考察)
図13から分かるように、実施例2は、比較例2に比べて、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、軸線A方向の一端部の磁束密度が低減しており、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向中間部および他端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となることが推測される。そうすると、実施例2は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向の一端部の偏った摩耗を抑制していると推測される。
【0129】
(実施例3)
図5A~
図5Bに示すように、上記した第3実施形態のマグネトロンスパッタリング成膜装置1を準備した。
【0130】
具体的には、軸線A方向にわたって、第1磁石部15および第2磁石部35のそれぞれの厚みを変動させず、同じ厚みとする一方、第1ヨーク14および第2ヨーク34のそれぞれの厚みを変動させることとする以外は、実施例2と同様に処理した。
【0131】
詳しくは、第1ヨーク14の裏面24を、軸線A方向一方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削し、第1磁石部15が軸線Aに沿うように、第1磁石ユニット31を第1ロータリーターゲット13内に収容した。第1ヨーク14は、軸線A方向一方側に100mm移動するとき、0.33mm薄い。
【0132】
第2ヨーク34の裏面を、長手方向他方側に向かって切削量が次第に大きくなるように切削し、第2磁石部35が軸線Aに沿うように、第2磁石ユニット32を第2ロータリーターゲット33内に収容した。第2ヨーク34は、軸線A方向他方側に100mm移動するとき、0.33mm薄い。
【0133】
そして、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、第1磁石部15に対向する領域における磁束密度の径方向成分を計算した。具体的には、下記のソフトウエアおよび計算手法に基づいて、磁場シミュレーションを実施して、磁束密度を計算した。
ソフトウェア名:JMAG(JSOL社製)
計算手法:有限要素法
その結果を、
図14に示す。
【0134】
(実施例3に対する考察)
図14から分かるように、実施例3は、比較例2に比べて、第1ロータリーターゲット13および成膜ロール52の間において、軸線A方向の一端部の磁束密度が低減しており、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部とイオンとの衝突頻度は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向中間部および他端部とイオンとの衝突頻度と、同じ割合となることが推測される。そうすると、実施例2は、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向の一端部の偏った摩耗を抑制していると推測される。
【0135】
<摩耗試験および成膜試験>
(比較例3)
比較例1と同じマグネトロンスパッタリング成膜装置1によって、比較例1と同様にマグネトロンスパッタリングして、第1膜と第2膜とを形成した。但し、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33を回転させなかった。そのため、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のいずれにおいても、エロージョン痕が、周方向の一部に軸線A方向に沿って形成された。
【0136】
第1ロータリーターゲット13の摩耗量と、第2ロータリーターゲット33の摩耗量とを、レーザー変位計で測定した。第1膜の厚みと、第2膜の厚みとを、水晶振動式膜厚計により測定した。
【0137】
第1ロータリーターゲット13の摩耗量を平均で割った値および軸線A方向における位置の関係を、
図15Aに示す。第1膜の厚みを平均で割った値および第1膜における軸線A方向位置の関係を
図15Bに示す。第2ロータリーターゲット33の摩耗量を平均で割った値および軸線A方向における位置の関係を、
図15Cに示す。第2膜の厚みを平均で割った値および第2膜における軸線A位置の関係を、
図15Dに示す。
【0138】
上記した
図15Aおよび
図15Cの縦軸は、軸線A位置における摩耗量を軸線A方向における摩耗量の平均で割った値である。
図15Bの縦軸は、軸線A位置における第1膜の厚みを軸線A方向における第1膜の厚みの平均で割った値である。
図15Dの縦軸は、軸線A位置における第2膜の厚みを軸線A方向における第2膜の厚みの平均で割った値である。
【0139】
(実施例4)
実施例1と同じマグネトロンスパッタリング成膜装置1によって、実施例1と同様にマグネトロンスパッタリングして、第1膜と第2膜とを形成した。但し、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33を回転させなかった。そのため、第1ロータリーターゲット13および第2ロータリーターゲット33のいずれにおいても、エロージョン痕が、周方向の一部に軸線A方向に沿って形成された。
【0140】
第1ロータリーターゲット13の摩耗量と、第2ロータリーターゲット33の摩耗量とを、レーザー変位計で測定した。第1膜の厚みと、第2膜の厚みとを、水晶振動式膜厚計により測定した。
【0141】
第1ロータリーターゲット13の摩耗量を平均で割った値および軸線A方向における位置の関係を、
図16Aに示す。第1膜の厚みを平均で割った値および第1膜における軸線A方向位置の関係を
図16Bに示す。第2ロータリーターゲット33の摩耗量を平均で割った値および軸線A方向における位置の関係を、
図16Cに示す。第2膜の厚みを平均で割った値および第2膜における軸線A位置の関係を、
図16Dに示す。
【0142】
上記した
図16Aおよび
図16Cの縦軸は、軸線A位置における摩耗量を軸線A方向における摩耗量の平均で割った値である。
図16Bの縦軸は、軸線A位置における第1膜の厚みを軸線A方向における第1膜の厚みの平均で割った値である。
図16Dの縦軸は、軸線A位置における第2膜の厚みを軸線A方向における第2膜の厚みの平均で割った値である。
【0143】
(実施例4と比較例3との対比)
図15Aおよび
図16Aから分かるように、実施例4は、比較例3に対して、第1ロータリーターゲット13の軸線A方向一端部における過度の摩耗(偏った摩耗)を抑制でき、摩耗後の第1ロータリーターゲット13が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制したことが分かる。そして、
図15Bおよび
図16Bから分かるように、第1膜の一端部が厚くなることを抑制したことが分かる。
【0144】
図15Cおよび
図16Cから分かるように、実施例4は、比較例3に対して、第2ロータリーターゲット33の軸線A方向一端部における過度の摩耗(偏った摩耗)を抑制でき、摩耗後の第2ロータリーターゲット33が軸線A方向にわたって不均一に薄くなることを抑制したことが分かる。そして、
図15Dおよび
図16Dから分かるように、第2膜の他端部が厚くなることを抑制したことが分かる。
【符号の説明】
【0145】
1 マグネトロンスパッタリング成膜装置
11 第1マグネトロンプラズマユニット
12 第2マグネトロンプラズマユニット
13 第1ロータリーターゲット
14 第1ヨーク
15 第1磁石部
23 表面
33 第2ロータリーターゲット
34 第2ヨーク
35 第2磁石部
52 成膜ロール
A 軸線
A1 第1軸線
A2 第2軸線
A3 第3軸線
L1 距離(第1磁石部から第1ロータリーターゲットまでの距離)
L2 距離(第2磁石部から第2ロータリーターゲットまでの距離)