(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】椅子の背支桿カバー
(51)【国際特許分類】
A47C 7/42 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A47C7/42
(21)【出願番号】P 2020197677
(22)【出願日】2020-11-28
【審査請求日】2023-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・ウェブサイトの掲載日:令和 2年11月17日・ウェブサイトのアドレス:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/products/office/elua/・公開者:コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴士
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161443(JP,A)
【文献】特開2004-248841(JP,A)
【文献】特開2010-099223(JP,A)
【文献】特開2006-198064(JP,A)
【文献】米国特許第05281002(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の背凭れ下部を覆う背下カバーと、背支桿の表側を覆う背支桿表カバーと、前記背支桿の裏側を覆う背支桿裏カバーとの3パーツで構成され、
前記背下カバーには、前記背支桿が貫通する開口部が備えられ、
前記背支桿裏カバー及び前記背支桿表カバーの上端には前記背下カバーの前記開口部に引っ掛けられる縁部が設けられ、
前記背支桿裏カバー及び前記背支桿表カバーは上端の前記縁部が前記背下カバーの前記開口部に引っ掛けて取り付けられ、前記開口部が前記縁部によって隠蔽される
ことを特徴とする背支桿カバー。
【請求項2】
前記背下カバー
は、背板の下端開口部を塞ぐものであり、前記背板の下端開口部を塞ぐ底面に前記開口部を有すると共に、該開口部に前記背支桿を導入し通過させるためのスリットが
設けられ、前記スリットの間隔を拡げるように弾性変形
させて前記背支桿を通過させ
るように設けられていることを特徴とする請求項1記載の背支桿カバー。
【請求項3】
前記背支桿裏カバーの前記縁部は、前記背下カバーの前記開口部の縁と前記背支桿との間の隙間を埋める段部と、前記開口部の縁の裏側に潜り込むフランジ部とで構成され、
前記背支桿表カバーの前記縁部は、前記背支桿表カバーの表面よりも前記背支桿側に変位した位置に前記開口部の縁と前記背支桿との間の隙間に装入されるフランジ部と、前記フランジ部が前記隙間に装入されたときに前記フランジ部と前記開口部との間の隙間を覆う段差とで構成される
ことを特徴とする請求項1または2記載の背支桿カバー。
【請求項4】
前記背支桿表カバーと前記背支桿裏カバーはそれぞれが係止爪によって掛かり止めされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の背支桿カバー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の背支桿カバーを備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椅子の背支桿カバーに関する。さらに詳述すると、本発明は、椅子の座を支持するメインフレームに対し、背凭れを取り付ける背支桿を被覆する背支桿用カバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椅子のメインフレームより後方へ延びる背支桿に背凭れを取り付けた椅子は存在する。その場合には、背支桿を隠して露出するのを防ぐために、背支桿カバーを取り付けることがある。
【0003】
また、剛性のあるシェル体とクッション体とを組み合わせたものに袋状の張地を上から被せて背凭れを構成する椅子の場合、背凭れ下部も露出する構造となるため、カバー部材で隠すことが必要となる。
【0004】
その場合、背支桿を覆うカバーと、背凭れ下部を隠すカバーが必要となる(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の発明では、背凭れ下部カバーと背支桿の裏側カバーとを一体で成形し、表側カバーとの2部材で背支桿カバーを構成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背凭れ下部カバーと背支桿の裏側カバーを一体で成形する場合、立体的形状の成形品を作成する必要があり、大きな部品構造となってしまい、部品コストの増加を招いてしまう。即ち、金型が大型化するために設備コストが高くなる問題がある。
【0007】
また、特許文献1記載の発明の場合、背支桿カバーを取り付ける最後の段階になって、背凭れ下部に背凭れ下部カバーを固定するためのねじ止めを行うこととなり、作業効率の観点で効率が悪い。
【0008】
本発明は、小さな部品構造で簡単に取り付けることができる椅子の背支桿カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために請求項1記載の背支桿カバーは、椅子の背凭れ下部を覆う背下カバーと、背支桿の表側を覆う背支桿表カバーと、背支桿の裏側を覆う背支桿裏カバーとの3パーツで構成され、背下カバーには、背支桿が貫通する開口部が備えられ、背支桿裏カバー及び背支桿表カバーの上端には背下カバーの前記開口部に引っ掛けられる縁部が設けられ、背支桿裏カバー及び背支桿表カバーは上端の縁部が背下カバーの開口部に引っ掛けて取り付けられ、開口部が縁部によって隠蔽されるようにしている。
【0010】
ここで、背下カバーは、背板の下端開口部を塞ぐものであり、背板の下端開口部を塞ぐ底面に開口部を有すると共に、該開口部に背支桿を導入し通過させるためのスリットが設けられ、スリットの間隔を拡げるように弾性変形させて背支桿を通過させるように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、背支桿裏カバーの縁部は、背下カバーの開口部の縁と背支桿との間の隙間を埋める段部と、開口部の縁の裏側に潜り込むフランジ部とで構成され、背支桿表カバーの縁部は、背支桿表カバーの表面よりも背支桿側に変位した位置に開口部の縁と背支桿との間の隙間に装入されるフランジ部と、フランジ部が隙間に装入されたときにフランジ部と開口部との間の隙間を覆う段差とで構成されることが好ましい。
【0012】
また、背支桿表カバーと背支桿裏カバーはそれぞれが係止爪によって掛かり止めされていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、請求項1から4のいずれか1つに記載の背支桿カバーを備える椅子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の背支桿カバーは、3パーツに分離しているので、小さいパーツを組み合わせることで、金型を小さくすることができ、低コストになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用した椅子の一実施形態を示す後斜め下から見た斜視図である。
【
図3】同椅子の脚の図示を省いた後斜め下から見た斜視図である。
【
図5】同椅子の背支桿と背支桿カバーとの関係を示す拡大中央縦断面図である。
【
図6】背凭れの一実施形態を示す中央縦断面図である。
【
図7】背板の一実施形態を示す前斜め下から見た斜視図である。
【
図10】背支桿とメインフレームと背支桿カバーとの関係を示す斜視図である。
【
図12】背支桿カバーの一実施形態を示す後斜め下から見た分解斜視図である。
【
図13】背支桿カバーの前斜め上から見た分解斜視図である。
【
図14】組み立てられた状態の背支桿カバーの上から見た斜視図である。
【
図15】座を構成するクッション材の一実施形態を示す下から見た斜視図である。
【
図16】座を構成する座板の一実施形態を示す上から見た斜視図である。
【
図17】メインフレームの一実施形態を示す下から見た斜視図である。
【
図18】取扱説明書ホルダーの一実施形態を示す下から見た斜視図である。
【
図19】メインフレームに取扱説明書ホルダーを取付けた状態の下から見た斜視図である。
【
図20】メインフレームに取扱説明書ホルダーを取付けた状態の縦断部分断面斜視図である。
【
図21】本発明を適用した椅子の他の実施形態を示す前斜め上から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す一実施形態に基づいて詳細に説明する。尚、本明細書における説明においては、椅子の座に座った着座者を基準にして「上」及び「下」,「前」及び「後」,並びに「左」及び「右」を定義する(言い換えると、着座者から見て「上」及び「下」,「前」及び「後」,並びに「左」及び「右」を意味する)。さらに、背凭れにおいて表面側とは、着座者と接する面を、背面側とはその反対側の面を意味するものとする。
【0017】
図1から
図20に、本発明を適用した椅子の一実施形態を示す。本実施形態の椅子は、例えば、脚1と、脚1の支柱2の上端に取り付けられ支持されるメインフレームと、このメインフレームに支持された座及び背凭れとを具備してなる。
【0018】
脚1は、本実施形態の場合、
図1及び
図2に示すように、支柱2を支持する脚基部6を中心に放射状に例えば5本の脚羽根7を配置したものであり、例えばPA6-GF(ポリアミド6)などのガラス繊維入り強化ナイロンなどの剛性を備えた合成樹脂で成形されている。本実施形態では、5本の脚羽根7の各々の先端にキャスター8が備えられる。すなわち、本実施形態の椅子は、所謂回転脚と呼ばれる態様の脚を備える。ただし、脚羽根7にキャスター8が備えられることは本発明において必須の構成ではなく、さらに言えば、本発明において脚羽根タイプの脚を採用することは必須の構成ではない。つまり、本発明が適用され得る椅子の脚1の具体的な形状や態様は、特定のものに限定されるものではなく、椅子の用途やデザインなどを踏まえて適当なものが適宜選択される。
【0019】
本実施形態では、放射状に配置される脚羽根7の長さは、転倒防止機能を損なわない範囲内で可能な限り一般的な事務用椅子の場合よりも短く設定され、脚半径が小さな脚とされている。つまり、在宅勤務に適した椅子としての利用を考慮して、幅の狭い家庭用机の下にも脚部が入れるように配慮されている。勿論、一般的な事務用椅子の場合と同様の脚半径が大きなものとする脚羽根7の長さとすることを排除するものではない。
【0020】
本実施形態では、脚1の支柱2としては例えばロック機構付きのガススプリングが採用され、脚基部6に設けられた貫通孔に嵌合されて圧入固定されることによって床面に対して垂直に維持されるように支持されている。
【0021】
また、支柱2の先端部(言い換えると、ガススプリングのロッド上端部)に、メインフレーム3が装着される。尚、ガススプリングのロッドの先端には、
図4に示すように、当該ガススプリングのロック及びロック解除を行うための操作ボタン10が設けられている。当該操作ボタン10は、メインフレーム3に対して揺動可能に取り付けられた昇降操作用レバー11により、押し込まれたり押し込みが解除されたりするように操作される。そして、昇降操作用レバー11が操作されることにより、ガススプリングのロックが解除された状態ではメインフレーム3(換言すれば、座4と背凭れ5)を昇降させることが可能であり、一方、ガススプリングがロックされた状態ではメインフレーム3(換言すれば、座4と背凭れ5)の高さ位置が固定される。
【0022】
メインフレーム3は、座4を受け支えると共に背支桿27を介して背凭れ5を支持するものであり、本実施形態の場合、例えば鋼板をプレス深絞り加工によって、
図17に示すような周縁にフランジ部15を有する箱形に成形されて、支柱2の上端部に圧入により固定されている。尚、メインフレーム3は周縁部の外側に張り出るフランジ部15が座板41の下面に宛がわれて透孔17を貫通する図示しないビスによってビス止めされることで座4に固定されている。
【0023】
メインフレーム3の底部中央には、支柱2の頂部であるガススプリングの先端部分が通過するガススプリング貫通孔12が開けられている。このガススプリング貫通孔12は、例えば
図20及び
図4に示すように、孔の縁が内側へ折り曲げられて筒状に成形されており、ガススプリングの先端部分を締まり嵌めによって固定するためのガススプリング支持筒部13が嵌合される。また、ガススプリング支持筒部13は、上端がメインフレーム3を横切る架橋プレート14によって支持されている。架橋プレート14は、メインフレーム3の両側壁の頂部の一部がフランジ部15ごと周囲の縁よりも凹まされた部分16に収められて受け支えられている。本実施形態では、メインフレーム3の凹部16に収容された架橋プレート14とメインフレーム3とは溶接付などで固定されているが、これに特に限られるものではない。
【0024】
また、メインフレーム3の前側の底部は、前上がりの斜面に形成されると共に幅方向中央部に前後方向に長軸が配置される長孔18が設けられている。他方、メインフレーム3の中程の領域の底部には、例えば前側には、幅方向中央部に貫通孔19が設けられている。そして、前述の長孔18と後方の貫通孔19とを利用して、底部裏面側に取扱説明書を収納するホルダー(以下、取扱説明書ホルダー23と呼ぶ)が取り付け可能とされている。
【0025】
また、メインフレーム3の中程の領域の底部には、背支桿27の先端のメインフレーム取付板29の係合爪(以下、背支桿側係合爪34と呼ぶ)が引っ掛けられる係合爪(以下、メインフレーム側係合爪24と呼ぶ)が設けられている。本実施形態の場合には、メインフレーム3とは別体の独立した爪部材が左右一対の爪装着用孔20を利用して取り付けられることによって、メインフレーム3の中程の領域の底部裏面側にメインフレーム側係合爪24が形成されるように設けられている。このメインフレーム側係合爪24は、本実施形態の場合、詳細に図示していないが、レ形の爪部24aと該爪部24aの基部で屈曲させて水平方向に突出する複数本例えば2本の挿入爪部24bとが直交するように折り曲げられて構成されている。したがって、2本の挿入爪部24bをメインフレーム3の2箇所の爪装着用孔20に差し込んでからメインフレーム側係合爪24を90°転回させることで、メインフレーム3の底部に引っ掛けるようにして取り付けられている。メインフレーム側係合爪部24は、例えば、メインフレーム3の底部と挿入爪部24bとが引っ掛けられるだけでなく、場合によっては溶接付けにより固定されるようにしても良い。
【0026】
さらに、メインフレーム3の後側の領域の底部には、図示していない反力機構のばねを収める凹部(つまり、ばねを受け支える座面)21が形成されている。この凹部21の中央には孔22が開けられ、ばねと連繋された吊りボルト(即ち、反力調整用ねじ)がメインフレーム3の外に突出するように設けられている。尚、反力機構は図示していないが、本実施形態の場合には、背支桿の先端の背支桿側係合爪34を起点に背凭れ5が後傾するときにばねを圧縮して反力を得るばねを用いた反力機構が用いられている。例えば、図示していないが、メインフレーム3の中に反力ばねとその上部に蓋をするプレートとが備えられ、該プレートから下向きに延びている反力調整用ねじが、ばねの内部、メインフレーム3、背支桿の先端のメインフレーム取付板29の孔33を貫通してグリップ25に係合されている。そして、グリップ25を回すことで、ばねの蓋となっているプレートを引き寄せあるいは引き離し、メインフレーム3の底部とプレートと間に配置された反力ばねを圧縮または復元させる構造であり、背凭れ後傾反力の調整が可能となる仕様と成っている。つまり、図示していないが、反力調整用ねじの頭部のプレートとメインフレーム3の底部との間に配置されている反力ばねによって背支桿27に反力を与えるようにしている。
【0027】
つまり、本実施形態の背凭れ5は、背支桿27がメインフレーム3に対し爪24,34同士の係合と反力ばねを介在させた締め付けねじの締め付けによって、揺動可能であるように組み込まれて背凭れがロッキング(傾動動作,揺動動作)可能に支持されている。
【0028】
ただし、背凭れがロッキングすることは本発明において必須の構成ではなく、座と背凭れとが別々にロッキングするように構成されても良く、また、座と背凭れとのうちのどちらか一方のみがロッキングするように構成されても良く、さらに言えば、座も背凭れもロッキングしないように構成されても良い。
【0029】
背支桿27は、背凭れ5を支持すると共にメインフレーム3に揺動自在に取り付けるためのものであり、例えば側面視L字形のパイプであり、上端に背板50の背面に取り付けられる背板取付板28と、先端にメインフレーム3のメインフレーム側係合爪24に引っ掛けられてメインフレーム3に取り付けられるメインフレーム取付板29とを備えている。
【0030】
背板取付板28とメインフレーム取付板29とパイプ27とはそれぞれ金属例えば鋼材で形成され、溶接付けによって一体化されている。本実施形態の場合には、背支桿27は2本の丸パイプを並列に配置して背板取付板28とメインフレーム取付板29と連結プレート30とで相互に固定されたものとされているが、これに特に限られず、例えばチャネル材であったり、楕円パイプであったりしても良い。また、連結プレート30の中心に反力機構の反力調整用ねじが通過するように孔31が開けられている。
【0031】
メインフレーム取付板29は、
図11に示すように、メインフレーム側係合爪24に引っ掛かる下向きに突出する係合爪部34を先端に有すると共に、支柱2が通過する孔32と、反力調整用ねじが貫通する孔33とがそれぞれ設けられている。このメインフレーム取付板29は、本実施形態の場合、両側に上向きに延出する左右一対の側壁を有す箱形を成し、メインフレーム3の後半部に被さるようにしてメインフレーム3の外側を覆うように設けられている。メインフレーム取付板29は、支柱2の先端部分が貫通孔32を貫通してメインフレーム3内に進入した状態で、先端の背支桿側係合爪34をメインフレーム3のメインフレーム側係合爪24(具体的には、レ形の爪部24a)に引っ掛けることにより、メインフレーム3に揺動可能に装着される。そして、後部側の孔31、33に図示していない反力調整用ねじを通して締め付けグリップ25で締め付けることで一体化されている。尚、メインフレーム取付板29の前半部は貫通する支柱2と緩衝しないように傾斜しており、グリップ25で締め付けられる部分を水平に保つように設けられている。
【0032】
また、背支桿27の後端の背板取付板28は、背板50の背面の取付板取付座59に例えばビス止めされることによって固定されている。つまり、背支桿27の後端には背凭れ5が固定されている。
【0033】
本実施形態にかかる椅子は、椅子を購入した需要者自身が組み立てる方式のものである。即ち、メインフレーム3を取り付けた座4と、背支桿27を含む背凭れ5と、脚1とを分離した状態で供給し、購入者自身に組み立ててもらう仕様となっている。より具体的には、座4の底面に取付けられたメインフレーム3に対し、背凭れ5に組み付けられた背支桿27を取り付ける一方、一体化された座4と背凭れ5とを脚1の支柱2の頂部に差し込むことで固定するようにしている。
【0034】
しかし、この購入者自身に組み立ててもらう方式の椅子の場合、組み立て方を正しく理解していない購入者が、メインフレーム側係合爪24の使い方がわからなくて、ねじと平行に背の取付面を配置してからねじ込む場合がある。これでは、メインフレーム側係合爪24と背支桿側係合爪34とが係合していないので、椅子として正しく機能し得ない。
【0035】
そこで、組み立てミスを防ぐため、
図20に示すように、メインフレーム3のレ形のメインフレーム側係合爪24に対し、背支桿27の先端の背支桿側係合爪34が上から引っ掛かけられるような構造を採る一方で、メインフレーム側係合爪24の上に被さるように取扱説明書ホルダー23を配置することにより、メインフレーム側係合爪24に正しく背支桿側係合爪34が嵌め込まれない限り、メインフレーム3と背支桿27のメインフレーム取付板29とを連結する図示していない反力調整用ねじがメインフレーム取付板29の外に突出しない構造とされている。つまり、背凭れパーツをメインフレーム3に正しくセットできなければ、反力調整用ねじが締め付けられずに組み立てられないようにしている。
【0036】
即ち、取扱説明書ホルダー23の一部でメインフレーム側係合爪24の外側を覆って邪魔をすることでねじをメインフレーム取付板29から飛び出させないようにしている。例えば、取扱説明書ホルダー23の一部がメインフレーム側係合爪24の上に載せられ、メインフレーム3に対して離反する方向即ち下向きに突出する突起35が設けられている。この突起35に背支桿27のメインフレーム取付板29が乗り上げることで、メインフレーム取付板29とメインフレーム3との間隔が拡がってメインフレーム取付板29の穴33を締結用ねじが貫通するのを妨げて、メインフレーム3に対して背支桿27が間違って取り付けられるのを防止するようにしている。即ち、背支桿27のメインフレーム取付板29の先端の背支桿側係合爪34がメインフレーム側係合爪24の内側に潜り込むように装入されない限り、締結用ねじがメインフレーム取付板29の穴33を貫通する位置では取扱説明書ホルダー23の突起35の存在が邪魔することで締結用ねじがメインフレーム取付板29の穴33の外に飛び出てくることはない。つまり、メインフレーム3と背支桿27とが正しく機能するように連結されることはない。
【0037】
ここで、本実施形態の場合、取扱説明書ホルダー23は、例えばプラスチック製であり、
図18及び
図19、
図20に示すように、取扱説明書を収めるボックス部の四隅には取扱説明書の四隅を押さえる爪部40が形成されると共に、後端部分にはメインフレーム側係合爪24に覆い被さる凹部36とリブを兼ねた押しつけ脚部37とが設けられ、メインフレーム3に装着したときに
図20に示すようにメインフレーム側係合爪24の上に乗っかり後端縁から垂下する突起35が一体成形されている。この取扱説明書ホルダー23は、裏面側に突出する例えば一対の爪部(十字リブ)39と、後部側で裏面側に突出する係合爪38とを有し、メインフレーム3に設けられている長孔18並びに貫通孔19に弾性変形しながら各爪部38,39が各々係合させられることによって装着される。
【0038】
一方、背凭れ5は、本実施形態の場合、背支桿27に支持される背板50と、背板50の前面側に配置される例えばモールドウレタンやスラブウレタンなどのクッション材51と、これらを包む袋状張地52とで構成されている。
【0039】
ここで、背板50は、例えば
図7~
図9に示すように、側面視において概ね前方に向けて凸となる形状(すなわち、くの字状)に形成されると共に、平面視において概ね後方に向けて凸となるように湾曲した形状を成す樹脂成形品によって構成されている。この背板50には、着座者が凭れかかる時の力を受け支える剛性と軽量性とを両立させる必要がある。そこで、着座者が凭れ掛かる前面側、特に着座者の腰椎が触れる背支点付近の背凭れ面は面板によって成形されると共にその背後では剛性を確保するためのリブ構造とされている。他方、背面側は着座者と触れることがないので面板構造であることが省略できる。しかも、背面側はリブ構造が露出された状態に成形されることが、金型構造を容易にすると共に背板構造を簡略化する上で好ましい。そこで、本実施形態の場合、背板50は大部分をリブ構造が露出する開放的な構造とされている。
【0040】
また、背板50の下部には、袋状張地52の内側に背支桿取付板28及び背支桿27が導入されるように、袋状張地52の下端縁部を拡げて係留させるための下向きで且つ広がる凹部を伴う傾斜面(以下、スカート部54と呼ぶ)が形成されている。このスカート部54は、本実施形態の場合、例えば底面視三日月形状の外輪郭を成すと共に、内方に外輪郭と相似形の凹部を形成している。そして、スカート部54の内側の凹部を囲む前側及び後側のそれぞれの内壁面には、袋状張地52の縁のワイヤ53を引っ掛けて張地を固定するクリップ61が適宜間隔で複数箇所例えば4箇所ずつ設けられている。依って、袋状張地52は、クリップ61にワイヤ53をそれぞれ引っ掛けることで、下端縁部の口を開いたままクッション材51及び背板50を覆って止め付けられる。また、凹部の底には背下カバー63を取り付けるための雌ねじ62が設けられ、背下カバー63をビス止め可能に設けられている。さらに、凹部の底には背支桿取付板28及び背支桿27が通過する開口部55が形成されている。
【0041】
また、背板50は、
図9に示すように、上辺56と下辺(即ち、スカート部54の外側の縁)とが後方側に突出しており、上辺56と下辺であるスカート部54の外側の縁とを結ぶ線分よりも前側に背板取付板28を含む背支桿27並びに内側のリブ領域が収まるように設けられている。また、背板50の背板取付板28の取付位置即ち取付板取付座59よりも上方、例えば取付板取付座59と把手取付座58との間では、背面側が面板57とされ、表面側にリブ60が形成されることにより背板50としての強度が確保されるように設けられている。つまり、背板50の背面側が部分的に面板とされている。したがって、背板50の周縁に沿って張り詰められる袋状張地52の面が背面側では、上辺56と下辺であるスカート部54の外側の縁とそれらの間の面板57との3点で支持され、その他の領域にあるリブ60と接することがない。つまり、背板50の背面側にクッション材が設けられなくともリブ60が張地52に触れて張地52に浮き上がることがないので、見た目を悪くすることがない。
【0042】
背板50を袋状張地52ですっぽりと覆うようにする背凭れ構造の場合、背板50の前面側と背面側との双方にクッション材51を配置して包むようにすると、袋状張地がクッション材に支えられて背凭れとしての外観は損なわれないが、背面側のクッション材は着座者が凭れかかることがないので無駄になる。反面、背板50の前面と背面の双方を面板状に成形することは重量の増加やコスト高となることから好まれない。そこで、本実施形態の場合、
図6に示すように、背凭れ5には、前側にしかクッション材51が設けられていない。つまり、袋状張地52の前側の張地と背板50との間だけにクッション材51が設けられて、背面側のクッション材を省くことでコスト削減を図るようにしている。また、背板50の背面側は必要最小限の部分を面板状とし、その他の部分はリブ60を形成することで背板50としての必要な剛性を確保するように配慮されている。
【0043】
しかしながら、クッション材51を背面側に配置しないとなると、このリブの形状が張地に浮き上がることとなるので、外観が悪くなる問題がある。即ち、袋状張地が背板50の背面のリブ60に触れると、リブ60の凹凸が袋状張地52に表れることとなって外観を損ねる虞がある。これを防ぐため、背板50の上辺56と下辺(スカート部54の外側の縁)と中程の平板部分57との3点で張地52を支持することで、リブ60に張地52が接触しないようしてリブ60が外観に表れないようにしている。
【0044】
また、背凭れ5の上部には持ち運びを容易にするための把手48が備えられている。この把手48は例えば背板50の背面側の把手取付座58に張地52の上から例えばねじ止めによって固定される。
【0045】
尚、背板50を補強するリブ60は背板50の中央に近くなる程高くなり、周辺に向かうにしたがって低くなるように形成され、背板50の周辺側では柔らかく受け支えるように設けられている。
【0046】
背支桿27には、好ましくは比較的軟質な合成樹脂例えば塩化ビニル製の背支桿カバーが装着されている。背支桿カバーは、背凭れ5の下端開口部即ちスカート部54に宛がわれて覆う背下カバー63と、背下カバー63の下方で背支桿27の表側を覆う背支桿表カバー64と、背支桿の裏側を覆う背支桿裏カバー65との3パーツで構成されている。
【0047】
背下カバー63は、背板50の下端開口部を塞ぐものであり、例えば
図3あるいは
図12及び
図13に示すように、背板50の左右方向の湾曲並びに前後方向の厚みの変化に沿った形状を成し、背板50の下端開口部を塞ぐ底面69に背支桿27が貫通する開口部66を有すると共に、該開口部66に背支桿27を導入し通過させるための切り欠き(スリット67)が1カ所に設けられている。このスリット67は、開口部66の周縁の1箇所を切り欠けば済むものであるが、本実施形態の場合には一番見えにくい所(即ち、外観に表れにくい箇所)である背凭れ5の背面側に設けられている。この部分は、通常の視線の位置ではスカート部54に隠れる位置となる。他方、背下カバー63の前面側の側壁面68は、背凭れ5の下端縁付近を覆い隠すものであり、外に露出することから、座4の背後に隠れるとは言っても椅子の前方から見える虞がある。そこで、背下カバー63の前面側側壁面68はスリットの無い面とすることが望まれる。このことから、本実施形態では、背下カバー63の背板50の下端面を塞ぐ底面69の開口部66を区画する縁が背後側でスリット67を設けることによって切り欠かれている。尚、底面69の背板50のスカート部54の内側の雌ねじ62と対応する位置には、図示していないビスを通すビス止め軸部(孔)70が設けられている。
【0048】
開口部66は、本実施形態の場合、背支桿27として2本のパイプを間隔を開けて並べたものを採用していることから、それらが通過する長円形の孔とされている。そして、長円形の孔から成る開口部66を区画する底面69の最も幅が狭くなる部分にスリット67が入れられている。したがって、開口部66は最も幅が狭くなりスリット67により切り離された底面69の開口部66の縁部分を拡げるようにあるいは互い違いに上下に弾性変形させることによりスリット67の間隔を拡げるように弾性変形させて背支桿27の比較的薄い部分(つまり、背支桿27の側方)を通過させるように設けられている。
【0049】
他方、背支桿表カバー64は、本実施形態の場合、例えば
図12及び
図13に示すように、天板78と、当該天板78の左右両縁部のそれぞれから下向きに延出する左右一対の側壁79とを有し、背支桿27のL形の形状に沿って後半部が反り返るように立ち上がった概ね鞍状を成している。また、
図5に示すように、背支桿表カバー64の天板78の内面には、背支桿裏カバー65との間で背支桿27を挟むように配置したときに、例えば最も低位置となる箇所にスペーサとなるリブ71が形成され、リブ71が背支桿27に当接することにより天板78の内面部分が背支桿27に接しないように浮き上がるように設けられている。
【0050】
また、この背支桿表カバー64の上端には、背下カバー63の開口部66に引っ掛けて取り付けられ、開口部66を隠蔽する縁部が備えられている。例えば、本実施形態では、背支桿表カバー64の上端の縁部は、背支桿表カバー64の表面よりも背支桿27側に変位した位置に開口部66の縁と背支桿27との間の隙間に装入されるフランジ部72と、フランジ部72が隙間に装入されたときにフランジ部72と開口部66との間の隙間を覆う段差73とで構成されることが好ましい。具体的には、背下カバー63と背支桿27との間の隙間即ち開口部66の内方に差し込まれるフランジ部72が形成されている。このフランジ部72は、背支桿表カバー64の上端に対して背支桿側寄りに変位するように段差73を伴うように形成されており、先端のフランジ部72が背下カバー63と背支桿27との間の隙間に差し込まれた際に、背支桿表カバー64の上端(段差73の上側)でフランジ部72と背下カバー63の開口部66の周縁部との間の隙間が覆われて遮蔽されるように設けられている。尚、本実施形態では、背支桿表カバー64の上端の縁部としては、フランジ部72と段差73とで構成されたものとしているが、これに特に限られるものではなく、少なくとも開口部66の縁と背支桿27との間の隙間に装入されるフランジ部72を有していれば良い。
【0051】
また、背支桿表カバー64は、
図12及び
図13に示すように、側壁79の下端縁附近には、背支桿裏カバー65の係止用爪部82と係合する複数例えば3箇所の係合用孔75が間隔を空けて設けられている。この背支桿表カバー64の縁には、背支桿裏カバー65の内側に嵌まり込む部分即ち出っ張り部分74が形成され、縁が背支桿裏カバー65の縁と当接した状態で嵌合するように設けられている。つまり、背支桿表カバー64と背支桿裏カバー65とは、印籠継ぎ手のように嵌まり合うように形成されている。本実施形態の場合、片側の接合面例えば背支桿表カバー64に出っ張り部分74を設け、他方の接合面例えば背支桿裏カバー65に受口(印籠型)をつくって接続する印籠継手を構成している。
【0052】
また、背支桿表カバー64の先端側には、メインフレーム取付板29の両側壁の縁に嵌合して挟持する爪76と、背支桿裏カバー65の先端側のストッパ爪84と当接する段差部77とが形成されている。
【0053】
背支桿裏カバー65は、本実施形態の場合、
図13に示すように、底板86と、当該底板86の左右両縁部のそれぞれから上向きに延出する左右一対の側壁87とを有し、背支桿27のL形の形状に沿って湾曲した箱形を成すものである。また、背支桿裏カバー65の前部の底板86は、グリップ25と干渉しないように刳り貫かれており、凹部85とされている。尚、この背支桿裏カバー65の上部には、いちょうの葉のように左右に張り出しデザイン性を高める翼部84が形成されている。
【0054】
また、底板86の内面には、背支桿表カバー64との間で背支桿27を挟むように配置したときに、背支桿表カバー64の出っ張り部分74を挟持するように受け支える鉤部(つまり、印籠継手の受口となる)83が設けられると共に両側壁87の上端縁附近には背支桿表カバー64の出っ張り部分74の係合用孔75と係合する複数例えば3箇所の係止用爪部82が設けられている。さらに、背支桿裏カバー65の先端には、背支桿表カバー64の段差77と当接して前後方向の位置決めを図るストッパ爪84が備えられている。
【0055】
他方、この背支桿裏カバー65の上端には、背下カバー63の開口部66に引っ掛けて取り付けられ、開口部66を隠蔽する縁部が備えられている。例えば、本実施形態では、背支桿裏カバー65の上端の縁部は、背下カバー63の開口部66の縁と背支桿27との間の隙間を埋める段部80と、開口部66の縁の裏側に潜り込むフランジ部81とで構成されることが好ましい。具体的には、
図12及び
図13に示すように、背支桿裏カバー65に対し直交するように外側に突出する、背支桿裏カバー65が差し込まれる側の背下カバー63の開口部66の縁と背支桿27との間の隙間を埋める段部80と、該段部80の下縁部からさらに外側に延出して背下カバー63の裏側に潜り込むフランジ部81とが形成されている。このフランジ部81は、背支桿裏カバー65の上端に対して背支桿27から離れる側に変位して段差を伴うように形成されており、先端のフランジ部81と段部80が背下カバー63の開口部66の縁と背支桿27との間の隙間に下から上へ差し込まれた後に、背支桿裏カバー65の上端を起点に90°回転させると、背支桿27と背下カバー63の開口部66の縁との間の隙間が段部80で塞がれると共にフランジ部分81が背下カバー63の開口部66の周縁部の上に回り込んで宛がわれるため、背下カバー63の裏側(つまり、
図3及び
図14において上側)に潜り込んで引っかかるように係止される。尚、本実施形態では、背支桿裏カバー65の上端の縁部としては、段部80とフランジ部81とで構成されたものとしているが、これに特に限られるものではなく、少なくとも開口部66の縁の裏側に潜り込むフランジ部81を有していれば良い。
【0056】
ここで、段部80の形状や高さは、開口部66の周縁部と背支桿27との間の隙間を埋めるものであることから開口部66の形状に左右されるものである。したがって、本実施形態の場合には、長円形を長軸に沿って半分したような形状を成す。他方、フランジ部81は背下カバー63の裏側に潜り込んで引っかかるように係止されるものであるから、特に輪郭形状に限定は受けないが、段部80の長軸と同じ長さの例えば矩形状であることが好ましい。
【0057】
即ち、本実施形態の背支桿裏カバー65は、例えば背支桿27を下から覆うものであり、上端の段部80及びフランジ部81が背下カバー63に引っ掛けられると共に、背支桿表カバー64の両側縁分の係合用孔75に係止用爪部82が引っ掛けられて背支桿表カバー64に吊り下げられる。つまり、背支桿表カバー64と背支桿裏カバー65とが連結されて背支桿表カバー64に対して背支桿裏カバー65が吊り下げられるように取り付けられる。
【0058】
以上のように構成された背支桿カバーによれば、まず、背支桿27の側方即ちパイプの直径のみの薄い部分に背下カバー63の開口部66のスリット67の部分を向けてから(即ち、背凭れ5に対して直交する方向に背下カバー63を向けて)、背支桿27を相対的にスリット67の部分を通過させて開口部66に収める。即ち、スリット67により切り離された底面69の開口部66の縁部分は最も幅が狭くなっているので、拡げ易くあるいは互い違いに上下に変形させ易いので、スリット67の間隔を変化させて背支桿27の比較的薄い部分を通過させることができる。
【0059】
背支桿27を通過させて開口部66に収めてから、背下カバー63を90°捻る(旋回させる)と、背凭れ5の下端のスカート部54の内側に宛がわれるようにセットされる。そして、背凭れ5の張地52の上から下端開口部を覆うと共に、ビス孔70からビスをねじ込んで背板50の下端のスカート部54に締結する。これによって、背凭れ5の底部開口が張地の上から隙間なく覆われて、張地の端末処理が完了する。
【0060】
その後、背支桿裏カバー65の上端のフランジ部分81を上に向けて背支桿27と背下カバー63の開口部66の縁との間の隙間に挿入してから、90°前方へ捻る(旋回させる)ことで、段部80で上述の隙間を塞ぐことができる。
【0061】
さらに、背支桿表カバー64の上端のフランジ部72を背下カバー63の開口部66の縁と背支桿27との間の隙間に嵌め込んで背支桿裏カバー65へ爪嵌合させる。背支桿表カバー64は先端のフランジ部72が開口部66に差し込まれた際に、背支桿表カバー64の上端(段差73の上側)でフランジ部72と背下カバー63の開口部66の周縁部との間の隙間を覆って遮蔽する。
【0062】
また、背支桿表カバー64と背支桿裏カバー65とは、背凭れ5にビス固定されている背下カバー63に対しそれぞれ上端側が係止されると共に、係止用爪部82と係合用孔75との係合によって相互に連結される。さらには、先端側の爪76とメインフレーム取付板29の両側壁の縁との嵌合及びストッパ爪84と段差部77との当接並びにリブ71と背支桿27との当接により一定間隔を開けて隙間なく保持される。
【0063】
他方、座4は、座板41と、当該座板41上に配設されるクッション材42と、当該クッション材42を覆う表皮部材たる張地43とで構成され、メインフレーム3の上に座板41が配置されて、例えばビス止めなどで固定されている。尚、座の張地43は、本実施形態の場合には紐締めで固定されている。
【0064】
ここで、平坦な座板41の上に平坦なクッション材を載せただけの座構造であれば、臀部に対する座のフィット性が乏しいために着座時の臀部の座りが悪く、座り心地が悪くなってしまったり、適正な着座姿勢の維持が難儀で着座姿勢が崩れてしまったりするという問題がある。さらに、背凭れを有する椅子においては、着座者が背凭れに凭れ掛かった際に臀部が前滑りを起こしてしまうという問題も伴う。そこで、剛性を有するアウターシェルを座面における着座者の臀部付近が窪んだ形状に形成すると共に柔軟性を有するインナーシェルをアウターシェルの窪み形状に沿わせることによって前滑り防止の機能を発揮させるようにしたものがある(例えば、特開2014-90991号公報)。しかしながら、この座の構造では、アウターシェルの上面形状を窪ませる必要があり、この窪み形状を形成するためには金型を用いた成形によってアウターシェルを作成する必要があり、金型費用が発生するという問題がある。また、柔軟性を有するインナーシェルも必要とされることもコストアップに繋がるという問題がある。さらに、インナーシェル及びアウターシェルを特定製品の専用部品とせざるを得ず、汎用性が低いという問題がある。そこで、着座者の臀部付近が窪んだ形状に形成するアウターシェルやインナーシェルを必要とせずに臀部の前滑りを防止することができる座の使用が望まれる。
【0065】
そこで、本実施形態の座4は、クッション材42の下面42aに、平面視における着座者の着座時の臀部位置を含む一部の範囲、例えば前後方向の中央位置よりも後方に形成された撓み促進部44を有するようにしている。本実施形態の場合には、例えば
図15に示すように、4本の左右方向に延びる同じ深さの直線状の溝45が前後方向に均等間隔で配置されて撓み促進部44が構成されているが、このような形態にれに特に限られないことは言うまでもない。
【0066】
即ち、本実施形態の座の構造は、座板41の上面形状がたとえ窪んでいなくても、言い換えるとたとえ扁平であっても、クッション材42の撓み促進部44の働きにより、着座時の臀部へのフィット性を向上させると共に臀部の前滑りを防止することができるようにしたものである。
【0067】
ここで、撓み促進部44は、クッション材42の特定の部分を他の部分よりも撓み易くするためのものであり、例えば下向きに開口する凹部であることが好ましい。
【0068】
撓み促進部44を構成する凹部45は、特定の形状に限定されるものではなく、例えば連続的な凹部即ち溝であっても良いし、断続的あるいは単発的な凹部即ち窪みであっても良い。溝の場合、例えば
図15に示すように直線状であっても、あるいは図示していないが波形やその他の形状例えば大腿部の付け根部分を含む臀部の輪郭を模した形状(具体的には、概ね、前向きの凹字形)であっても良い。また、窪みの場合には、図示していないが、例えば半球面状や円錐面、角錐面状の凹部(または、半球体状や錐体状の凸部が残るような凹部)などの様々な窪みが形成されるようにしても良い。これら凹部45は、1つでも良いし、あるいは複数箇所に形成されるようにしても良いし、場合によっては幾重にも包囲されるように配置されても良い。さらに、凹部45は全て同じ大きさあるいは深さであっても良いし、場所によっては異なる深さあるいは異なる大きさであっても良い。例えば、撓み促進部44を区画する領域の周辺よりも中央の方が凹部45の深さが深くなるようにして、あるいは幅を広くして、中央の方が周辺よりも撓み易くすることにより臀部の沈み具合が調整されるようにしても良い。
【0069】
上述の直線状の溝,波状の溝,凹字形の溝、並びに半球体状の凹部又は半球体状の凸部や錐体状の凹部若しくは凸部のうちの二つ以上の態様の溝や凹部、凸部が組み合わされて用いられるようにしても良い。また、上述の凹部などの深さは、特定の値に限定されるものではなく、例えばクッション材42の柔らかさや撓み促進部44として発現させたい撓み易さなどが勘案された上で、適当な値に適宜設定される。
【0070】
また、撓み促進部44としての具体的な構造は、当該部分が他の部分よりも撓み易くなるものであれば、凹部のような特定の構成・態様に限定されるものではなく、種々の構成・態様が適宜選択される。
【0071】
例えば、クッション材42の下面に凹凸が設けられて撓み促進部44に該当する範囲が他の部分よりも空間(言い換えると、空洞,空隙)が多く設けられることによって撓み促進部44としての部分が他の部分よりも撓み易く構成されるようにしても良く、或いは、クッション材42の下縁部分のうちの撓み促進部44に該当する範囲が他の部分よりも撓み易い材質(言い換えると、柔らかい材質)によって構成されることによって撓み促進部44としての部分が他の部分よりも撓み易く構成されるようにしても良い。この場合に、撓み促進部44は、例えばクッション材42の柔らかさや撓み促進部44として発現させたい撓み易さなどが勘案された上で、適当な値に適宜設定される。例えば、着座時の臀部の外側(外周)部分から内側(中央)部分に向けて次第に一層撓み易くなるように材質などが選択され、あるいは空間(空洞,空隙)が形成されるようにして、着座時のクッション材42の臀部へのフィット性が向上して着座姿勢が安定するように設けられる。
【0072】
尚、撓み促進部44の範囲は、座の平面視における特定の範囲に限定されるものではなく、座全体の形状や想定される使用態様などが勘案された上で、着座時の着座者の臀部の位置を踏まえて当該臀部を沈み込ませて前方へのずれを抑制するのに適切な範囲が適宜設定される。
【0073】
具体的には例えば、撓み促進部44の範囲は、クッション材42の下面のうちの平面視における前後方向の中央位置よりも後方の範囲に設定される。この場合には、クッション材42の下面のうちの前後中央位置より後方のみに撓み促進部44としての空間(空洞,空隙)が形成されるようにしたり、前後中央位置より前方と比べて前後中央位置より後方に一層多くの空間が形成されるようにしたりする。
【0074】
本実施形態の場合、座板41は、例えば鋼板をプレス加工によって、例えば
図16に示すような、剛性を高めるための凹凸を適宜設けているほぼほぼ扁平な板として成形されている。ここで、座板41の形状は、上面側についてはクッション材42を受支える部位を少なくとも有し、下面側についてはメインフレーム3へと取り付けられる部位を少なくとも有していれば、特定の形状には限定されない。また、座板41の材質も特定の種類に限定されるものではない。なお、座板41は、例えば上面形状が完全に扁平であるようにする場合などには、一枚の単なる平板(合板を含む)によって構成されるようにしても良い。また、場合によっては、座受部材の平面視におけるクッション材42の撓み促進部44の位置に通気口が形成されることが好ましい。
【0075】
クッション材42の材質は、弾性を有すると共に任意の形状に形成可能なものであれば、特定の種類に限定されるものではなく、例えば発揮される弾性力や形成加工の容易性などが勘案された上で、適当なものが適宜選択される。具体的には例えば、クッション材42の材質として、ウレタン(なお、モールドウレタンとスラブウレタンとのどちらでも良い)が選択され得る。
【0076】
この座4、即ちクッション材42が着座者の臀部位置に撓み促進部44を有する座によれば、クッション材42の臀部位置の部分が他の部分よりも撓み易く凹み易くなって臀部が沈み込むことにより、着座者の臀部の前方へのずれを抑制して前滑りを防止することができ、また、着座時の臀部へのフィット性を向上させて着座姿勢を安定させることができ、座り心地を良好にして着座の快適性を、延いては椅子利用の快適性を向上させることが可能になる。しかも、インナーシェルとアウターシェルとの二つのシェルを有する構成とすることなく臀部位置の部分のみを撓み易くすることができ、座の構成が簡単でありながらも、また、コストが低廉でありながらも、上記の作用効果を発揮させることが可能になる。
【0077】
つまり、この座によれば、座板41がほぼ平坦な面に形成されていながら、着座者の臀部が沈み込むようにクッション材が変形することから、特に背凭れに凭れながら後ろ向きに押すようにして上半身を後傾させる際の臀部の前方へのずれが抑制されて前滑りが防止されて着座姿勢を安定させることができる。したがって、座り心地を良好にして着座の快適性を、延いては椅子利用の快適性を向上させることが可能になる。しかも、インナーシェルとアウターシェルとの二つのシェルを有する構成とすることなく臀部位置の部分のみを撓み易くすることができ、座の構成が簡単でありながらも、また、コストが低廉でありながらも、上記の作用効果を発揮させることが可能になる。
【0078】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、椅子を購入した需用者サイドで組み立てる方式の椅子に適用した例を示して主に説明したが、これに特に限られるものではなく、予め工場生産時に組み立ててから出荷するタイプの椅子に適用しても良いことは言うまでも無い。また、上述の実施形態では、背下カバー63の開口部66にはスリット67が設けられ、スリット67の間隔を拡げるように弾性変形させて背支桿27を側方から通過させて背板50の下部に取り付けられるようにしているが、これに特に限られるものではなく、例えばスリット67を設けずに開口部66に対して背支桿を下から上へあるいは上から下へと挿入させるようにしても良い。
【0079】
また、上述の実施形態では、背凭れの張地52は、袋状包みタイプ(張地を袋状に縫製したもの)に適用した例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではない。また、張地素材は、場合によっては例えばメッシュ状の素材などでも良い。
【0080】
また、上述の実施形態の脚1では、踏み台が装備されていないが、場合によっては装備するようにしても良い。脚1に踏み台を取り付ける場合には、リング状あるいは半円状の踏み台を支柱2に取り付けたり、別部材で成形した踏み台を脚羽根7の上に載せて脚羽根7にビス止めやバンド締めすることなどで後付けする手法を採ることが一般的であるが、
図21に示すように、隣り合う脚羽根7の間に跨がるように踏み台9を配置するように、射出成形によって脚羽根7と一体成形しても良い。この場合には、踏み台9の取付の際の位置ずれや締め付け不足などの問題が生じないで済む。
【符号の説明】
【0081】
1 脚
2 脚の支柱
3 メインフレーム
4 座
5 背凭れ
24 メインフレーム側係合爪
27 背支桿
28 背板取付板
29 メインフレーム取付板
34 背支桿側係合爪
34 背支桿側係合爪
50 背板
51 クッション材
52 袋状張地
53 ワイヤ
54 スカート部
55 背支桿が通過する開口部
56 背板の上辺
57 背板の背面側の面板
58 把手取付座
59 取付板取付座
60 リブ
61 ワイヤを引っ掛けるクリップ
62 背下カバーを取り付けるねじ孔
63 背下カバー
64 背支桿表カバー
65 背支桿裏カバー
66 開口部(背支桿貫通孔)
67 スリット
68 背下カバーの前面側の側壁面
69 背下カバーの底面
70 背下カバーのビス止め軸部(孔)
71 リブ(スペーサ)
72 背支桿表カバーのフランジ部
73 背支桿表カバーの段差
74 背支桿裏カバーの内側に嵌まり込む背支桿表カバーの出っ張り部分
75 背支桿表カバーの係合用孔
76 背支桿表カバーのメインフレーム取付板の両側壁の縁に嵌合する爪
77 背支桿裏カバーのストッパ爪と当接する背支桿表カバーの段差部
78 背支桿表カバーの天板
79 背支桿表カバーの側壁
80 背支桿裏カバーの段部
81 背支桿裏カバーのフランジ部
82 背支桿裏カバーの係合爪
83 背支桿裏カバーの鉤部(つまり、印籠継手の受口となる)
84 背支桿裏カバーの翼部
85 グリップが通過する凹部
86 底部
87 側壁部