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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240913BHJP
   H02P 27/04 20160101ALI20240913BHJP
   H02P 5/74 20060101ALI20240913BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240913BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P27/04
H02P5/74
H02M7/48 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020201949
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089509
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 吉則
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和成
(72)【発明者】
【氏名】植野 修吾
(72)【発明者】
【氏名】田井 慎太郎
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220045(JP,A)
【文献】特開2017-184077(JP,A)
【文献】特開平05-207766(JP,A)
【文献】特表2015-519035(JP,A)
【文献】特開2015-006021(JP,A)
【文献】特開2019-122164(JP,A)
【文献】特開平06-086556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 27/04
H02P 5/74
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームと下アームとを構成する一対の半導体スイッチング素子を備えるスイッチングレグが負荷である電動機の相数に対応して複数設けられた制御装置であって、
前記半導体スイッチング素子の短絡故障を検出するスイッチ短絡検出部と、
該スイッチ短絡検出部の検出結果に基づいて前記短絡故障が前記上アーム或いは前記下アームの何れで発生したかを短絡極性として判定し、当該判定の結果に基づいて前記短絡故障が発生したアームを構成する全ての前記半導体スイッチング素子をON状態に設定する制御部とを備え
前記制御部は、前記半導体スイッチング素子が既に全てON状態に設定されている場合、全てON状態に設定してからの経過時間が所定の時間しきい値内か否かを判断し、当該時間しきい値内の場合には、全てON状態に設定されているアームが前記短絡極性と合致しているか否かを判断し、合致していない場合には全てON状態に設定するアームを切替えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記スイッチ短絡検出部は、前記半導体スイッチング素子毎に設けられ、自身に対応する前記半導体スイッチング素子と前記スイッチングレグを構成する他の前記半導体スイッチング素子の短絡故障を検出することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電動機の制御中において前記短絡極性を判定し、当該判定の結果に基づいて前記短絡故障が発生したアームを構成する全ての前記半導体スイッチング素子をON状態に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
各相における前記短絡故障の検出結果を上側アーム及び下側アームにて各々1つの信号に集約して前記制御部に供給することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記半導体スイッチング素子は、出力電流のモニタ端子を備えており、
前記スイッチ短絡検出部は、前記モニタ端子から入力される前記出力電流に基づいて前記短絡故障を検出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電動機の制御装置が開示されている。この制御装置は、電動機を駆動すると共に複数のスイッチ部からなるインバータ回路について、電動機の運転中にスイッチ部の短絡故障を検知すると、短絡故障が発生したスイッチ部が正極側か負極側かを判断し、この判断に基づいて三相短絡制御を行うものである。
【0003】
すなわち、この制御装置では、正極側のスイッチ部及び負極側のスイッチ部のうち、短絡故障が発生した極側のスイッチ部を全てON状態に設定することにより、短絡故障したスイッチ部に電流が集中することを抑制し、短絡故障が発生した極側のスイッチ部に電流を分散させる。この電流の分散によって短絡故障したスイッチ部の異常発熱を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4757815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記背景技術では、各相の電流(相電流)をECU(Electronic Control Unit)に取り込んで演算処理することによって、短絡故障が発生したスイッチ部が正極側(上アーム)か負極側(下アーム)かを判断している。このような短絡極性の判定処理は、ECU(制御装置)における相電流の演算処理によって行われるので、三相短絡制御の実行までのタイムラグが大きくなる虞がある。
【0006】
すなわち、ECU(制御装置)は、制御プログラムに基づくソフトウエア処理によって相電流の演算処理を行うので、他の演算処理の実行状況によっては相電流の演算処理を速やかに開始することができない場合がある。したがって、上記背景技術では、相電流の演算処理の開始タイミングを安定化させることができない。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、相電流の演算処理を必要としない制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、制御装置に係る第1の解決手段として、上アームと下アームとを構成する一対の半導体スイッチング素子を備えるスイッチングレグが負荷である電動機の相数に対応して複数設けられた制御装置であって、前記半導体スイッチング素子の短絡故障を検出するスイッチ短絡検出部と、該スイッチ短絡検出部の検出結果に基づいて前記短絡故障が前記上アーム或いは前記下アームの何れで発生したかを短絡極性として判定し、当該判定の結果に基づいて前記短絡故障が発生したアームを構成する全ての前記半導体スイッチング素子をON状態に設定する制御部とを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記スイッチ短絡検出部は、前記半導体スイッチング素子毎に設けられ、自身に対応する前記半導体スイッチング素子と前記スイッチングレグを構成する他の前記半導体スイッチング素子の短絡故障を検出する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1又は第2の解決手段において、前記制御部は、前記電動機の制御中において前記短絡極性を判定し、当該判定の結果に基づいて前記短絡故障が発生したアームを構成する全ての前記半導体スイッチング素子をON状態に設定する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、制御装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3の何れかの解決手段において、前記制御部は、前記半導体スイッチング素子が既に全てON状態に設定されている場合、全てON状態に設定してからの経過時間が所定の時間しきい値内か否かを判断し、当該時間しきい値内の場合には、全てON状態に設定されているアームが前記短絡極性と合致しているか否かを判断し、合致していない場合には全てON状態に設定するアームを切替える、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、制御装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4の何れかの解決手段において、各相における前記短絡故障の検出結果を1つの信号に上側アーム及び下側アームにて各々集約して前記制御部に供給する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、制御装置に係る第6の解決手段として、上記第1~第5の何れかの解決手段において、前記半導体スイッチング素子は、出力電流のモニタ端子を備えており、前記スイッチ短絡検出部は、前記モニタ端子から入力される前記出力電流に基づいて前記短絡故障を検出する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、相電流の演算処理を必要としない制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置Aの全体構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置Aの要部構成を示す回路図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置Aの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置Aの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る制御装置Aは、図1に示すようにPCU1(Power Control Unit)、ゲートドライバ2及びECU3(Electronic Control Unit)を備えている。また、PCU1は、図示するように3つの電力変換回路、つまり昇降圧コンバータD1、第1インバータD2及び第2インバータD3を備えている。なお、制御装置Aの構成要素であるゲートドライバ2及びECU3は、本発明の制御部を構成している。
【0017】
また、上記昇降圧コンバータD1は、第1コンデンサ4、トランス5、4つの変圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)6a~6d及び第2コンデンサ7を備えている。また、第1インバータD2は、6つの駆動用IGBT8a~8fを備え、第2インバータD3は、6つの発電用IGBT9a~9fを備えている。
【0018】
この制御装置Aには、図示するように電池P、三相モータM(電動機)及び発電機Gが接続されている。すなわち、この制御装置Aは、外部接続用の端子として、電池Pが接続される一対の電池用端子E1、E2、三相モータMが接続される3つのモータ用端子Fu、Fv、Fw、また発電機Gが接続される3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwを備えている。
【0019】
このような制御装置Aは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に備えられる電気装置であり、回転電機である三相モータMを制御すると共に、発電機Gで発生した交流電力の電池Pへの充電を制御する。すなわち、この制御装置Aは、三相モータMの駆動制御と電池Pの充電制御とを行う。
【0020】
ここで、上記電池Pは、図示するように、プラス電極がプラス極電池用端子E1に接続され、マイナス電極がマイナス極電池用端子E2に接続されている。この電池Pは、リチウムイオン電池等の二次電池であり、制御装置Aに対する直流電力の放電と制御装置Aを介した直流電力の充電とを行う。
【0021】
三相モータMは、相数が「3」の三相電動機であり、第1インバータD2の負荷である。この三相モータMは、U相入力端子がU相モータ用端子Fuに接続され、V相入力端子がV相モータ用端子Fvに接続され、またW相入力端子がW相モータ用端子Fwに接続されている。このような三相モータMは、回転軸(駆動軸)が電動車両の車輪に接続されており、当該車輪に回転動力を作用させることにより車輪を回転駆動する。
【0022】
発電機Gは、三相発電機であり、U相出力端子がU相発電機用端子Huに接続され、V相出力端子がV相発電機用端子Hvに接続され、またW相出力端子がW相発電機用端子Hwに接続されている。この発電機Gは、電動車両に搭載されたエンジン等の動力源の出力軸に接続されており、三相交流電力を制御装置Aに出力する。
【0023】
上記昇降圧コンバータD1は、一対の電池用端子E1、E2を介して電池Pから入力された直流電力を昇圧して第1インバータD2に出力する昇圧動作と、第1インバータD2或いは第2インバータD3から入力された直流電力を降圧して一対の電池用端子E1、E2を介して電池Pに出力する降圧動作とを択一的に行う電力変換回路である。すなわち、昇降圧コンバータD1は、電池Pと第1インバータD2或いは第2インバータD3との間で直流電力を双方向に入出力する電力回路である。
【0024】
第1インバータD2は、三相モータM(電動機)の相数に対応して3つ(複数)設けられた3つ(複数)のスイッチングレグ(U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグ)を備える。この第1インバータD2は、力行動作と回生動作とを択一的に行う電力変換回路である。
【0025】
すなわち、第1インバータD2は、昇降圧コンバータD1から入力された直流電力を三相交流電力に変換し、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwを介して三相モータMに出力する力行動作と、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwを介して三相モータMから入力された三相交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する回生動作とを択一的に行う。このような第1インバータD2は、昇降圧コンバータD1と三相モータMとの間で直流電力と三相交流電力とを相互変換する電力回路である。
【0026】
第2インバータD3は、3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwを介して発電機Gから入力される三相交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する電力変換回路である。すなわち、この第2インバータD3は、発電機Gから昇降圧コンバータD1に向かって三相交流電力を直流電力に変換する電力回路である。
【0027】
このようなPCU1の構成についてさらに詳しく説明する。最初に昇降圧コンバータD1において、第1コンデンサ4は、一端が第1の直流入出力端子E1及びトランス5に接続され、他端が第2の直流入出力端子E2に接続されている。このような第1コンデンサ4の両端は、昇降圧コンバータD1における一次側入出力端子である。
【0028】
すなわち、この第1コンデンサ4は、電池Pに対して並列接続されており、当該電池Pから昇降圧コンバータD1に入力される直流電力(電池電力)に含まれ得る高周波ノイズを除去する。また、この第1コンデンサ4は、トランス5から入力される直流電力(充電電力)については、含まれ得るリップルを平滑化する。
【0029】
トランス5は、一次巻線5aと二次巻線5bとを備えており、一次巻線5aの一端及び二次巻線5bの一端が上記第1の直流入出力端子E1及び第1コンデンサ4の一端に接続されている。また、一次巻線5aの他端は、第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に接続され、二次巻線5bの他端は、第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に接続されている。
【0030】
このようなトランス5は、一次巻線5aと二次巻線5bとが所定の結合係数kで電磁気的に結合している。すなわち、一次巻線5aは、自身の巻き数等に応じた所定の第1自己インダクタンスLaを有し、二次巻線5bは自身の巻き数等に応じた所定の第2自己インダクタンスLbを有している。また、一次巻線5aと二次巻線5bとは、上述した第1自己インダクタンスLa、第2自己インダクタンスLb及び結合係数kに基づく相互インダクタンスMを有している。
【0031】
4つの変圧用IGBT6a~6dのうち、第1の変圧用IGBT6a及び第2の変圧用IGBT6bは、昇降圧コンバータD1における第1変圧用スイッチングレグを構成している。これら第1の変圧用IGBT6a及び第2の変圧用IGBT6bのうち、第1の変圧用IGBT6aは、第1変圧用スイッチングレグの上アームを構成している。
【0032】
この第1の変圧用IGBT6aは、コレクタ端子が第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に共通接続されており、エミッタ端子が一次巻線5aの他端及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第1出力端子に接続されている。このような第1の変圧用IGBT6aは、ゲートドライバ2から入力される第1変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0033】
第2の変圧用IGBT6bは、第1スイッチングレグの下アームを構成しており、コレクタ端子が一次巻線5aの他端及び第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に共通接続されている。
【0034】
また、この第2の変圧用IGBT6bは、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第2出力端子に接続されている。このような第2の変圧用IGBT6bは、ゲートドライバ2から入力される第2変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0035】
4つの変圧用IGBT6a~6dのうち、第3の変圧用IGBT6c及び第4の変圧用IGBT6dは、昇降圧コンバータD1における第2スイッチングレグを構成している。これら第3の変圧用IGBT6c及び第4の変圧用IGBT6dのうち、第3の変圧用IGBT6cは、第2スイッチングレグの上アームを構成している。
【0036】
この第3の変圧用IGBT6cは、コレクタ端子が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に共通接続され、エミッタ端子が二次巻線5bの他端及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に共通接続され、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第3出力端子に接続されている。このような第3の変圧用IGBT6cは、ゲートドライバ2から入力される第3変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0037】
第4の変圧用IGBT6dは、第2スイッチングレグの下アームを構成しており、コレクタ端子が二次巻線5bの他端及び第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に共通接続されている。
【0038】
また、この第4の変圧用IGBT6dは、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第4出力端子に接続されている。このような第4の変圧用IGBT6dは、ゲートドライバ2から入力される第4変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0039】
また、第2コンデンサ7は、一端が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続され、他端が第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子、第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2の直流入出力端子E2に共通接続されている。このような第2コンデンサ7の両端は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子である。
【0040】
このような第2コンデンサ7は、第1、第2スイッチングレグから入力される直流電力(昇圧電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。また、この第2コンデンサ7は、第1インバータD2から入力される直流電力(回生電力)及び第2インバータD3から入力される直流電力(充電電力)に含まれ得るリップルを平滑化する。
【0041】
続いて、第1インバータD2を構成する6つの駆動用IGBT8a~8fのうち、第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bはU相駆動用スイッチングレグを構成し、第3の駆動用IGBT8c及び第4の駆動用IGBT8dはV相駆動用スイッチングレグを構成し、第5の駆動用IGBT8e及び第6の駆動用IGBT8fはW相駆動用スイッチングレグを構成している。
【0042】
第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bのうち、第1の駆動用IGBT8aは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子及びU相モータ用端子Fuに共通接続されている。
【0043】
また、この第1の駆動用IGBT8aは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第1出力端子に接続されている。このような第1の駆動用IGBT8aは、ゲートドライバ2から入力される第1駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0044】
第2の駆動用IGBT8bは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子及びU相モータ用端子Fuに共通接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0045】
また、この第2の駆動用IGBT8bは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第2の駆動用IGBT8bは、ゲートドライバ2から入力される第2駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0046】
第3の駆動用IGBT8cは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子及びV相モータ用端子Fvに共通接続されている。
【0047】
また、この第3の駆動用IGBT8cは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第3の駆動用IGBT8cは、ゲートドライバ2から入力される第3駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0048】
第4の駆動用IGBT8dは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子及びV相モータ用端子Fvに共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0049】
また、この第4の駆動用IGBT8dは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第4出力端子に接続されている。このような第4の駆動用IGBT8dは、ゲートドライバ2から入力される第4駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0050】
第5の駆動用IGBT8eは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子及びW相モータ用端子Fwに共通接続されている。
【0051】
また、この第5の駆動用IGBT8eは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第5出力端子に接続されている。このような第5の駆動用IGBT8eは、ゲートドライバ2から入力される第5駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0052】
第6の駆動用IGBT8fは、コレクタ端子が第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子及びW相モータ用端子Fwに共通接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子に共通接続されている。
【0053】
また、この第6の駆動用IGBT8fは、ゲート端子がゲートドライバ2における第1インバータD2用の第6出力端子に接続されている。このような第6の駆動用IGBT8fは、ゲートドライバ2から入力される第6駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0054】
このような第1インバータD2において相互に共通接続された3つのスイッチングレグつまりU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグの両端は、第1インバータD2の一次側入出力端子である。
【0055】
また、これたU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグにおける3つの中点、つまり第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子と第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子との接続点、第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子と第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子との接続点及び第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子と第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子との接続点は、第1インバータD2の二次側入出力端子である。
【0056】
また、第1インバータD2の一次側入出力端子の一方つまり第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子、第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の一方、つまり第2コンデンサ7の一端、第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続されている。
【0057】
さらに、第1インバータD2の一次側入出力端子の他方つまり第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子、第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の他方、つまり第1、第2コンデンサ4、7の他端、第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子に接続されている。
【0058】
続いて、第2インバータD3を構成する6つの発電用IGBT9a~9fのうち、第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bはU相発電用スイッチングレグを構成し、第3の発電用IGBT9c及び第4の発電用IGBT9dはV相発電用スイッチングレグを構成し、第5の発電用IGBT9e及び第6の発電用IGBT9fはW相発電用スイッチングレグを構成している。
【0059】
第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bのうち、第1の発電用IGBT9aは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子及びU相発電機用端子Huに共通接続されている。
【0060】
また、この第1の発電用IGBT9aは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第1出力端子に接続されている。このような第1の発電用IGBT9aは、ゲートドライバ2から入力される第1発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0061】
第2の発電用IGBT9bは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子及びU相発電機用端子Huに共通接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0062】
また、この第2の発電用IGBT9bは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第2出力端子に接続されている。このような第2の発電用IGBT9bは、ゲートドライバ2から入力される第2発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0063】
第3の発電用IGBT9cは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子及びV相発電機用端子Hvに共通接続されている。
【0064】
また、この第3の発電用IGBT9cは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第2出力端子に接続されている。このような第3の発電用IGBT9cは、ゲートドライバ2から入力される第3発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0065】
第4の発電用IGBT9dは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子及びV相発電機用端子Hvに共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に共通接続されている。
【0066】
また、この第4の発電用IGBT9dは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第4出力端子に接続されている。このような第4の発電用IGBT9dは、ゲートドライバ2から入力される第4発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0067】
第5の発電用IGBT9eは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子に共通接続され、エミッタ端子が第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子及びW相発電機用端子Hwに共通接続されている。
【0068】
また、この第5の発電用IGBT9eは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第5出力端子に接続されている。このような第5の発電用IGBT9eは、ゲートドライバ2から入力される第5発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0069】
第6の発電用IGBT9fは、コレクタ端子が第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子及びW相発電機用端子Hwに共通接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子に共通接続されている。
【0070】
また、この第6の発電用IGBT9fは、ゲート端子がゲートドライバ2における第2インバータD3用の第6出力端子に接続されている。このような第6の発電用IGBT9fは、ゲートドライバ2から入力される第6発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される半導体スイッチング素子である。
【0071】
このような第2インバータD3において、U相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグにおける3つの中点、つまり第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子と第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子との接続点、第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子と第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子との接続点及び第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子と第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子との接続点は、第2インバータD3の一次側入出力端子である。
【0072】
このような第2インバータD3における3つの一次側入出力端子のうち、U相発電用スイッチングレグの中点はU相発電機用端子Huに接続され、V相発電機用端子Hvの中点はV相発電機用端子Hvに接続され、またW相発電機用端子Hwの中点はW相発電機用端子Hvに接続されている。
【0073】
また、第2インバータD3において相互に共通接続されたU相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグの両端、つまり第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子、第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子と第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子、第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子とは、第2インバータD3における二次側入出力端子である。
【0074】
このような第2インバータD3の二次側入出力端子は、図示するように、昇降圧コンバータD1の二次側入出力端子及び第1インバータD2の一次側入出力端子に共通接続されている。すなわち、昇降圧コンバータD1は、電池Pとの間において第1インバータD2及び/或いは第2インバータD3と直流電力の入出力を相互に行う。
【0075】
ここで、上述した変圧用IGBT6a~6d、駆動用IGBT8a~8f及び発電用IGBT9a~9fは、図示するように各々に還流ダイオードを備えている。すなわち、この還流ダイオードは、各々のIGBTについて、カソード端子がコレクタ端子に接続され、またアノード端子がエミッタ端子に接続されている。このような還流ダイオードは、IGBTがOFF状態の時にアノード端子からカソード端子に還流電流を流すことができる。
【0076】
続いて、ゲートドライバ2は、ECU3から入力される電圧制御指令値に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号、第1~第6駆動用ゲート信号及び第1~第6発電用ゲート信号を生成するパルス回路である。このゲートドライバ2は、例えば所定周期の搬送波(三角波)と上記電圧制御指令値とを比較することにより、電圧制御指令値に応じたデューティ比を有するPWM(Pulse Width Modulation)信号を第1~第4変圧用ゲート信号、第1~第6駆動用ゲート信号及び第1~第6発電用ゲート信号として生成する。
【0077】
ECU3は、PCU1及びゲートドライバ2を介して三相モータMの駆動制御及び電池Pの充電制御を行う。すなわち、このECU3は、昇降圧コンバータD1、第1インバータD2及び第2インバータD3に付帯的に設けられる電圧センサの検出値(電圧検出値)及び電流センサの検出値(電流検出値)並びに電動車両の操作情報等に基づいて昇降圧コンバータD1、第1インバータD2及び第2インバータD3を制御するために必要な複数の電圧制御指令値を生成する。
【0078】
このECU3は、上記各電圧制御指令値をゲートドライバ2に供給することにより第1~第4変圧用ゲート信号、第1~第6駆動用ゲート信号及び第1~第6発電用ゲート信号を生成させる。第1~第4変圧用ゲート信号によって昇降圧コンバータD1が制御され、第1~第6駆動用ゲート信号によって第1インバータD2が制御され、また第1~第6発電用ゲート信号によって第2インバータD3が制御される。
【0079】
以上、図1を参照して本実施形態に係る制御装置Aの全体構成について説明したが、この制御装置Aは、図2に示す特徴的な構成を備えている。
【0080】
ここで、図2は、第1インバータD2を構成する3つのスイッチングレグ、つまりU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグのうち、1つのスイッチングレグに関するゲートドライバ2及びECU3の詳細構成を一例として示している。本実施形態に係る制御装置Aは、3つのスイッチングレグの全てについて、図2に示す詳細構成を備えている。
【0081】
また、この図2では、1つのスイッチングレグにおいて上アームを構成するIGBT(上アーム用IGBT)に符号10を付し、下アームを構成するIGBT(下アーム用IGBT)に符号20を付している。上アーム用IGBT10は、上述した第1インバータD2の第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eの何れかに相当し、また下アーム用IGBT20は、第1インバータD2の第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fの何れかに相当する。
【0082】
さらに、上アーム用IGBT10及び下アーム用IGBT20は、図示するように出力電流(エミッタ電流)をモニタするためのモニタ端子(センスエミッタ端子)が設けられている。すなわち、図1では説明しなかったが、第1~第6の駆動用IGBT8a~8fは、何れもセンスエミッタ端子を備えるタイプのIGBTである。
【0083】
ゲートドライバ2は、図示するように一対のゲートドライブ用IC2a、2b、一対の絶縁電源回路2c、2d及びプルダウン抵抗器2eを備えている。また、ECU3は、マイコン3a、ANDゲート回路3b、ORゲート回路3c及び4つのプルダウン抵抗器3d~3gを備えている。
【0084】
一対のゲートドライブ用IC2a、2bは、上アーム用IGBT10及び下アーム用IGBT20に対応して設けられている。一対のゲートドライブ用IC2a、2bのうち、第1のゲートドライブ用IC2aは、上アーム用IGBT10に対応するゲートドライブ回路であり、ECU3に接続する一次側回路と上アーム用IGBT10に接続する二次側回路とを備える。この第1のゲートドライブ用IC2aは、一次側回路で受信したECU3の電圧制御指令値に基づいて上アーム用ゲート信号L1を生成し、当該上アーム用ゲート信号L1を二次側回路から上アーム用IGBT10のゲート端子に出力する。
【0085】
また、この第1のゲートドライブ用IC2aは、上アーム用IGBT10のセンスエミッタ端子に接続されるモニタ端子、ECU3のゲート遮断信号Jを受け付ける入力端子及び第1の検出信号K1をECU3に出力する出力端子を備えている。すなわち、第1のゲートドライブ用IC2aは、モニタ端子に入力される第1のゲートドライブ用IC2aのエミッタ電流(モニタ電流)を所定の電流しきい値Riと比較する比較回路を備え、当該比較回路の出力信号として第1の検出信号K1を出力する。
【0086】
上記第1の検出信号K1は、上アーム用IGBT10の過電流状態を検出できる信号であり、つまり下アーム用IGBT20の短絡故障の有無に関係するパルス信号である。この第1の検出信号K1は、例えば下アーム用IGBT20の正常時にはHi(ハイ)電位であり、下アーム用IGBT20の過電流(短絡故障)時にLo(ロー)電位となる。
【0087】
すなわち、上アーム用IGBT10に対応する第1のゲートドライブ用IC2aは、上アーム用IGBT10の短絡故障を検出するものではなく、自身に対応する上アーム用IGBT10とスイッチングレグを構成する下アーム用IGBT20(他の半導体スイッチング素子)の短絡故障を検出するスイッチ短絡検出部である。
【0088】
また、この第1のゲートドライブ用IC2aは、上記ゲート遮断信号JがECU3から入力されると、上アーム用IGBT10を強制的にOFF状態に設定する上アーム用ゲート信号L1を生成する。すなわち、第1のゲートドライブ用IC2aは、ECU3からゲート遮断信号Jが入力されると、電圧制御指令値の如何に関わらず上アーム用IGBT10をOFF状態に強制設定する。
【0089】
第2のゲートドライブ用IC2bは、下アーム用IGBT20に対応するゲートドライブ回路であり、ECU3に接続する一次側回路と下アーム用IGBT20に接続する二次側回路とを備える。この第2のゲートドライブ用IC2bは、一次側回路で受信したECU3の電圧制御指令値に基づいて下アーム用ゲート信号L2を生成し、当該下アーム用ゲート信号L2を二次側回路から下アーム用IGBT20のベース端子に出力する。
【0090】
また、この第2のゲートドライブ用IC2bは、下アーム用IGBT20のセンスエミッタ端子に接続されるモニタ端子、ECU3のゲート遮断信号Jを受け付ける入力端子及び第2の検出信号K2をECU3に出力する出力端子を備えている。すなわち、第2のゲートドライブ用IC2bは、モニタ端子に入力される第2のゲートドライブ用IC2bのエミッタ電流を所定の電流しきい値Riと比較する比較回路を備え、当該比較回路の出力信号として第2の検出信号K2を出力する。
【0091】
上記第2の検出信号K2は、下アーム用IGBT20の過電流状態を検出できる信号であり、つまり上アーム用IGBT10の短絡故障の有無に関係するパルス信号である。この第2の検出信号K2は、例えば上アーム用IGBT10の正常時にはHi(ハイ)電位であり、上アーム用IGBT10の過電流(短絡故障)時にLo(ロー)電位となる。
【0092】
すなわち、下アーム用IGBT20に対応する第2のゲートドライブ用IC2bは、下アーム用IGBT20の短絡故障を検出するものではなく、自身に対応する下アーム用IGBT20とスイッチングレグを構成する上アーム用IGBT10(他の半導体スイッチング素子)の短絡故障を検出するスイッチ短絡検出部である。
【0093】
また、この第2のゲートドライブ用IC2bは、上記ゲート遮断信号JがECU3から入力されると、下アーム用IGBT20を強制的にOFF状態に設定する下アーム用ゲート信号L2を生成する。すなわち、第2のゲートドライブ用IC2bは、ECU3からゲート遮断信号Jが入力されると、電圧制御指令値の如何に関わらず下アーム用IGBT20をOFF状態に強制設定する。
【0094】
このような一対のゲートドライブ用IC2a、2bは、半導体スイッチング素子である上アーム用IGBT10及び下アーム用IGBT20のセンスエミッタ端子から入力されるエミッタ電流(モニタ電流)に基づいて、下アーム用IGBT20及び上アーム用IGBT10の短絡故障を検出するスイッチ短絡検出部である。また、一対のゲートドライブ用IC2a、2bは、上記短絡故障を第1の検出信号K1及び第2の検出信号K2としてECU3のマイコン3aに出力する。
【0095】
ここで、一対のゲートドライブ用IC2a、2bは、上述したようにU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグ毎に設けられている。すなわち、第1の検出信号K1及び第2の検出信号K2は、各々についてU相、V相及びW相の三相分つまり3つ存在する。
【0096】
図2では示していないが、ゲートドライバ2は、このように各々3つある第1の検出信号K1及び第2の検出信号K2つまり各相における短絡故障の検出結果を1つの信号に集約してECU3に出力(供給)する。すなわち、ゲートドライバ2は、3つの第1の検出信号K1を1つの検出信号としてECU3に出力し、また3つの第2の検出信号K2を1つの検出信号としてECU3に出力する。
【0097】
また、図示していないが、一対のゲートドライブ用IC2a、2bには、上記電圧制御指令値を受け付ける制御入力端子が各々設けられている。ECU3は、第1のゲートドライブ用IC2a用の第1電圧制御指令値と第2のゲートドライブ用IC2b用の第2電圧制御指令値を個別に生成し、第1電圧制御指令値を第1のゲートドライブ用IC2aの上記制御入力端子に出力し、第2電圧制御指令値を第2のゲートドライブ用IC2bの上記制御入力端子に出力する。
【0098】
一対の絶縁電源回路2c、2dのうち、第1の絶縁電源回路2cは、第1のゲートドライブ用IC2aに対応して設けられた電源回路であり、第1のゲートドライブ用IC2aの一次側回路と二次側回路とに個別に電源を供給する。すなわち、第1の絶縁電源回路2cは、互いに絶縁された一次用電源と二次用電源とを生成し、一次用電源を第1のゲートドライブ用IC2aの一次側回路に供給し、二次用電源を第1のゲートドライブ用IC2aの二次用電源に供給する。
【0099】
第2の絶縁電源回路2dは、第2のゲートドライブ用IC2bに対応して設けられた電源回路であり、第2のゲートドライブ用IC2bの一次側回路と二次側回路とに個別に電源を供給する。すなわち、第2の絶縁電源回路2dは、互いに絶縁された一次用電源と二次用電源とを生成し、一次用電源を第2のゲートドライブ用IC2bの一次側回路に供給し、二次用電源を第2のゲートドライブ用IC2bの二次用電源に供給する。
【0100】
プルダウン抵抗器2eは、所定の抵抗値を有し、第1のゲートドライブ用IC2a及び第2のゲートドライブ用IC2bにおいてゲート遮断信号Jを受け付ける入力端子に一端が接続され、他端が接地ライン(GND)に接続された抵抗器である。このプルダウン抵抗器2eには、ECU3のORゲート回路3cの出力端子から接地ラインに所定のプルダウン電流が流れる。
【0101】
続いて、マイコン3aは、ECU3の中心部を構成する電子部品である。このマイコン3aは、予め記憶した制御プロブラム、上述した電圧センサや電流センサの各検出値及び外部から入力される操作情報等に基づいて第1電圧制御指令値及び第2電圧制御指令値を生成する。また、このマイコン3aは、第1電圧制御指令値を第1のゲートドライブ用IC2aに出力し、第2電圧制御指令値を第2のゲートドライブ用IC2bに出力する。
【0102】
さらに、マイコン3aには第1の検出信号K1を受け付ける入力端子IN1、第2の検出信号K2を受け付ける入力端子IN2及び遮断制御信号Nを出力する出力端子DISが少なくとも備えられている。この遮断制御信号Nは、一対のゲートドライブ用IC2a、2bの動作を制御するパルス信号であり、遮断無効時にはHi(ハイ)電位となり、遮断有効時にはLo(ロー)電位となる。
【0103】
詳細については後述するが、マイコン3aは、第1、第2の検出信号K1、K2つまり一対のゲートドライブ用IC2a、2bにおける短絡故障の検出結果に基づいて、短絡故障が上アーム或いは下アームの何れで発生したかを短絡極性として判定する。また、このマイコン3aは、上記判定の結果つまり短絡極性に基づいて短絡故障が発生したアームを構成する全ての半導体スイッチング素子をON状態に設定する。
【0104】
すなわち、マイコン3aは、自身で短絡故障が発生したアームを特定するのではなく、一対のゲートドライブ用IC2a、2bから入力される第1、第2の検出信号K1、K2に基づいて短絡極性を判定する。また、このマイコン3aは、上記短絡極性に基づいて、短絡故障が発生したアームを構成する全ての半導体スイッチング素子をON状態に設定する制御つまり三相短絡制御を実行する。
【0105】
ANDゲート回路3bは、図示するように一方の入力端子が第1のゲートドライブ用IC2aの出力端子及びマイコン3aの入力端子IN1に接続され、他方の入力端子が第2のゲートドライブ用IC2bの出力端子及びマイコン3aの入力端子IN2に接続されている。また、ANDゲート回路3bは、出力端子がORゲート回路3cにおける他方の入力端子に接続されている。
【0106】
このようなANDゲート回路3bは、第1の検出信号K1と第2の検出信号K2との論理積を取り、当該論理積を示す出力信号をORゲート回路3cにおける他方の入力端子に出力する。すなわち、ANDゲート回路3bは、第1、第2の検出信号K1、K2の何れもが正常を示す場合に出力がHi(ハイ)電位となり、これ以外では出力がLo(ロー)電位となる。
【0107】
ORゲート回路3cは、一方の入力端子がマイコン3aの出力端子DISに接続され、他方の入力端子がORゲート回路3cの出力端子に接続されている。また、このORゲート回路3cは、出力端子が第1のゲートドライブ用IC2aの入力端子及び第2のゲートドライブ用IC2bの入力端子に共通接続されている。
【0108】
このようなORゲート回路3cは、マイコン3aの遮断制御信号NとANDゲート回路3bの出力信号との論理和を取り、当該論理和を示すゲート遮断信号Jを第1のゲートドライブ用IC2a及び第2のゲートドライブ用IC2bに出力する。詳細については後述するが、上記ゲート遮断信号Jは、第1、第2のゲートドライブ用IC2a、2bにおける第1、第2の検出信号K1、K2による相互の遮断論理を制御するパルス信号である。
【0109】
4つのプルダウン抵抗器3d~3gのうち、第1のプルダウン抵抗器3dは、所定の抵抗値を有し、一端が第1のゲートドライブ用IC2aの出力端子、マイコン3aの入力端子IN1及びANDゲート回路3bにおける一方の入力端子に接続され、他端が接地ライン(GND)に接続された抵抗器である。第1のプルダウン抵抗器3dには、第1のゲートドライブ用IC2aの出力端子から接地ラインに所定のプルダウン電流が流れる。
【0110】
第2のプルダウン抵抗器3eは、所定の抵抗値を有し、一端が第2のゲートドライブ用IC2bの出力端子、マイコン3aの入力端子IN2及びANDゲート回路3bにおける他方の入力端子に接続され、他端が接地ライン(GND)に接続された抵抗器である。第2のプルダウン抵抗器3eには、第2のゲートドライブ用IC2bの出力端子から接地ラインに所定のプルダウン電流が流れる。
【0111】
第3のプルダウン抵抗器3fは、所定の抵抗値を有し、一端がマイコン3aの出力端子DIS及びANDゲート回路3bにおける一方の入力端子に接続され、他端が接地ライン(GND)に接続された抵抗器である。第3のプルダウン抵抗器3eには、マイコン3aの出力端子DISから接地ラインに所定のプルダウン電流が流れる。
【0112】
第4のプルダウン抵抗器3gは、所定の抵抗値を有し、一端がORゲート回路3cの出力端子及びANDゲート回路3bにおける他方の入力端子に接続され、他端が接地ライン(GND)に接続された抵抗器である。第4のプルダウン抵抗器3gには、ORゲート回路3cの出力端子から接地ラインに所定のプルダウン電流が流れる。
【0113】
次に、本実施形態に係る制御装置Aの要部動作について、図3のフローチャート及び図4のタイミングチャートを参照して詳しく説明する。
【0114】
ECU3のマイコン3aは、所定のタイムインターバルで行う通常の第1~第6駆動用ゲート信号の生成処理の間つまり三相モータMの制御中において、図3のフローチャートに示す第1~第6の駆動用IGBT8a~8fの短絡故障確認処理を行う。すなわち、マイコン3aは、自身に記憶された制御プログラムに基づいて、最初に第1~第6の駆動用IGBT8a~8fの三相短絡制御を既に実行中であるか否かを判断する(ステップS1)。
【0115】
マイコン3aは、このステップS1の判断が「No」の場合つまり第1~第6の駆動用IGBT8a~8fの三相短絡制御の実行中でない場合、第1、第2の検出信号K1、K2に基づく故障フラグが設定されているか否かを判断する(ステップS2)。この故障フラグは、マイコン3aの内部に設定された制御データ設定領域であり、第1の検出信号K1に対応する第1故障フラグと第2の検出信号K2に対応する第2故障フラグとからなる。
【0116】
このような故障フラグには、第1~第6の駆動用IGBT8a~8fの正常状態つまり第1、第2の検出信号K1、K2がHi電位のままであれば、制御データとして「0」が設定されている。また、この故障フラグには、第1、第2の検出信号K1、K2がLo電位になると、つまり第1~第6の駆動用IGBT8a~8fに短絡故障が発生すると「1」が設定される。
【0117】
すなわち、第1の検出信号K1がLo電位になると第1故障フラグに「1」が設定され、第2の検出信号K2がLo電位になると第2故障フラグに「1」が設定される。マイコン3aは、上記ステップS2において、第1故障フラグ或いは第2故障フラグに「1」が設定されているか否かを確認することにより、故障フラグが設定されているか否かを判断する。
【0118】
そして、マイコン3aは、上記ステップS2の判断が「Yes」の場合、第1故障フラグ及び第2故障フラグの何れに「1」が設定されているかを確認することにより、第1インバータD2において上アームを構成する第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eと、下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fとの何れに短絡故障が発生したかを判定する(ステップS3)。
【0119】
そして、マイコン3aは、短絡故障が発生したアームを構成する3つの駆動用IGBTについて三相短絡制御を行う。すなわち、マイコン3aは、ステップS3の判断が「上アーム」の場合、つまり上アームを構成する第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eの何れかが短絡故障したと判定した場合、第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eを全てON状態に設定する(ステップS4)。
【0120】
一方、マイコン3aは、ステップS3の判断が「下アーム」の場合、つまり下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fの何れかが短絡故障したと判定した場合、下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fを全てON状態に設定する(ステップS5)。
【0121】
ここで、図4のタイミングチャートを参照して図2に示した回路の時系列的な動作つまり三相短絡制御の実行までの動作について説明する。なお、この図4ではU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグのうち、1つのスイッチングレグの時系列的な動作を示しているが、他の2つのスイッチングレグの動作は図4と同様である。
【0122】
本実施形態に係る制御装置Aが搭載された電動車両は、ゲートドライバ2が第1インバータD2に第1~第6のゲート信号を供給することによって車輪を回転駆動して走行する。すなわち、この電動車両は、U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグが第1~第6のゲート信号によって制御されることによって走行動力を発生させる。
【0123】
U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグのうち、1つのスイッチングレグに着目すると、電動車両は、一対のゲートドライブ用IC2a、2bによって上アーム用ゲート信号L1及び下アーム用ゲート信号L2が生成されることによって、図4に示すように走行状態が停止状態から発進・加速状態に移行する。
【0124】
上アーム用ゲート信号L1と下アーム用ゲート信号L2とは、図4に示すように互いに逆位相関係のPWM信号であり、そのデューティ比がマイコン3aから適宜入力される電圧指令値に応じて可変設定される。また、図4では明示していないが、上アーム用ゲート信号L1及び下アーム用ゲート信号L2には、スイッチングレグの貫通電流を防止するためのデッドタイムが設定されている。
【0125】
このような上アーム用ゲート信号L1及び下アーム用ゲート信号L2が順次生成されて電動車両が走行している状態において、例えば第2のゲートドライブ用IC2bが下アーム用IGBT20のモニタ電流が電流しきい値Riを超すように増加したことを検知すると、第2の検出信号K2がHi(ハイ)電位からLo(ロー)電位に遷位する。
【0126】
そして、マイコン3aは、このような第2の検出信号K2が入力されると、タイマを起動して経過時間を計時し、所定の時間しきい値Tが経過すると、遮断制御信号NをLo(ロー)電位からHi(ハイ)電位に遷位させる。この遮断制御信号NがORゲート回路3cに入力されることにより、図4に示すゲート遮断信号Jは、Hi(ハイ)電位となり、第1、第2の検出信号K1、K2の状態によらず、マイコン3aより指示される出力論理に従い上アーム用ゲート信号L1及び下アーム用ゲート信号L2を制御することが可能となる。
【0127】
なお、遮断制御信号NがLo(ロー)電位の間は、第1、第2の検出信号K1、K2の何れかがLo(ロー)電位の場合には、ゲート遮断信号JはLo(ロー)電位となり、上アーム用ゲート信号L1及び下アーム用ゲート信号L2は、強制的にLo(ロー)電位となる。
【0128】
そして、マイコン3aは、第2の検出信号K2のHi(ハイ)電位からLo(ロー)電位への遷位が3回発生すると、つまり第2のゲートドライブ用IC2bが下アーム用IGBT20のモニタ電流に基づいて電流しきい値Riを超すような過電流を3回検出すると、三相短絡制御を実行する。
【0129】
このような三相短絡制御の実行までの時系列的な動作において、マイコン3aにおける短絡故障ステータスは、図4の最下段に示すように、第2の検出信号K2が最初にHi(ハイ)電位からLo(ロー)電位に遷位した時刻t1において「正常」から「故障判定中」に移行する。そして、第2の検出信号K2が2回目にHi(ハイ)電位からLo(ロー)電位に遷位した時刻t2を経過し、第2の検出信号K2が3回目にHi(ハイ)電位からLo(ロー)電位に遷位した時刻t3を経過すると、「故障確定」に移行する。
【0130】
一方、マイコン3aは、上記ステップS1の判断が「Yes」の場合つまり三相短絡制御中の場合には、三相切替時間内であるか否かを判定する(ステップS6)。すなわち、三相短絡制御を開始してからの経過時間が所定の時間しきい値を越えていない場合は、ステップS6の判断を「No」とし、経過時間が所定の時間しきい値を越えている場合には、ステップS6の判断を「Yes」とする。
【0131】
そして、マイコン3aは、上記ステップS6の判断が「No」の場合、実行中の三相短絡制御がステップS3の判断と整合しているか否かを判断する(ステップS7)。そして、マイコン3aは、このステップS7の判断が「No」の場合、つまり実行中の三相短絡制御がステップS3の判断と食い違っている場合には、三相短絡切替を行う(ステップS8)。
【0132】
すなわち、マイコン3aは、実行中の三相短絡制御が下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fであり、またステップS3の判断が「上アーム」の場合、下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fに代えて上アームを構成する第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eを三相短絡制御する。
【0133】
一方、マイコン3aは、実行中の三相短絡制御が上アームを構成する第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eであり、またステップS3の判断が「下アーム」の場合、上アームを構成する第1、第3、第5の駆動用IGBT8a、8c、8eに代えて下アームを構成する第2、第4、第6の駆動用IGBT8b、8d、8fを三相短絡制御する。
【0134】
このような本実施形態によれば、マイコン3aは、第1故障フラグ及び第2故障フラグの設定値を確認することのみによって短絡故障が発生したアーム(上アーム或いは下アーム)を判定することが可能である。したがって、本実施形態によれば、相電流の演算処理を必要としない制御装置Aを提供することが可能である。
【0135】
また、本実施形態によれば、一対のゲートドライブ用IC2a、2b(スイッチ短絡検出部)が三相モータM(電動機)の制御中(動作中)に短絡故障を検出するので、短絡故障が発生した場合に速やかに三相短絡制御を実行することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、三相短絡制御の実行タイミングを早期化することが可能である。
【0136】
また、本実施形態によれば、ECU3のマイコン3aは、三相短絡制御が既に実行されている場合、三相短絡制御の実行からの経過時間が所定の時間しきい値内か否かを判断し、当該時間しきい値内の場合には、三相短絡制御が実行されているアームが短絡極性と合致しているか否かを判断し、合致していない場合には三相短絡制御の対象アームを切替える。このような本実施形態によれば、より的確な三相短絡制御を実現することが可能である。
【0137】
また、本実施形態によれば、一対のゲートドライブ用IC2a、2b(スイッチ短絡検出部)の第1、第2の検出信号を上アーム毎及び下アーム毎に集約してECU3のマイコン3aに供給するので、マイコン3aにおける入力ポートの個数を削減することが可能である。すなわち、集約しない場合には合計で6個の入力ポートが必要になるが、上アーム毎及び下アーム毎に集約することによって合計2個の入力ポートで済む。
【0138】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、第1インバータD2を構成するU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグにおける短絡極性の判定について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、三相電動機つまり相数が3の電動機にのみ適用されるものではなく、相数が3以外の電動機にも適用可能である。また、本発明における電動機は、車輪を駆動するものに限定されない。
【0139】
(2)上記実施形態では、一対のゲートドライブ用IC2a、2b内で短絡極性の判定処理を行ったが、本発明はこれに限定されない。すなわち、一対のゲートドライブ用IC2a、2bとは個別に設けられた電子回路において短絡極性の判定処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0140】
A 制御装置
D1 双方向昇降圧コンバータ
D2 第1インバータ
D3 第2インバータ
E1、E2 電池用端子
Fu、Fv、Fw モータ用端子
G 発電機
Hu、Hv、Hw 発電機用端子
J ゲート遮断信号
K1、K2 検出信号
L1、L2 ゲート信号
M 三相モータ(電動機)
N 遮断制御信号
P 電池
1 PCU(パワーコントロールユニット)
2 ゲートドライバ(制御部)
2a、2b ゲートドライブ用IC(スイッチ短絡検出部)
2c、2d 絶縁電源回路
2e プルダウン抵抗器
3 ECU(制御部)
3a マイコン
3b ANDゲート回路
3c ORゲート回路
3d~3g プルダウン抵抗器
4 第1コンデンサ
5 トランス
5a 一次巻線
5b 二次巻線
6a~6d 変圧用IGBT
8a~8f 駆動用IGBT(半導体スイッチング素子)
9a~9f 発電用IGBT
10 上アーム用IGBT(半導体スイッチング素子)
20 下アーム用IGBT(半導体スイッチング素子)


図1
図2
図3
図4