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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】下着
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/12 20060101AFI20240913BHJP
   A61F 13/74 20060101ALI20240913BHJP
   A61F 13/72 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A41B9/12 E
A61F13/74 100
A61F13/72 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020203845
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091191
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 孝臣
(72)【発明者】
【氏名】西本 博尊
(72)【発明者】
【氏名】倉田 承江
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雅博
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125168(JP,A)
【文献】実開平07-028903(JP,U)
【文献】登録実用新案第3037997(JP,U)
【文献】登録実用新案第3136098(JP,U)
【文献】特開2019-044275(JP,A)
【文献】登録実用新案第3047126(JP,U)
【文献】登録実用新案第3138232(JP,U)
【文献】登録実用新案第3164944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/00-9/16;13/00-17/00
A61F 13/72
A61F 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布を備えたサニタリーショーツであって、
前記ショーツ本体は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成され、前記当て布は前記ショーツ本体の肌側に接着剤で接合され、前記当て布と前記ショーツ本体との間に防水シートが配され、
前記当て布は裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成され、前記当て布の前端縁部および後端縁部が前記ショーツ本体に接着剤で接合され、前記当て布の前端縁部と後端縁部の間の中間部が前記ショーツ本体から遊離しており、
前記防水シートは少なくとも防水層を含む2層以上の多層で構成され、前記防水シートの前端縁部および後端縁部が前記当て布に接着剤で接合され、前記防水シートの前端縁部と後端縁部の間の中間部が前記当て布から遊離しているサニタリーショーツ。
【請求項2】
前記当て布の前端縁部と後端縁部との間で前記ショーツ本体から遊離する中間部の長さは、前記防水シートの前端縁部と後端縁部の間で前記当て布から遊離する中間部の長さより長く設定され、少なくとも10mm以上長く設定されている請求項記載のサニタリーショーツ。
【請求項3】
前記防水シートは前記防水層の両面側がシート状の生地でラミネートされた3層以上の多層で構成されている請求項または記載のサニタリーショーツ。
【請求項4】
前記防水層と前記シート状の生地とが全面で接着されている請求項記載のサニタリーショーツ。
【請求項5】
前記シート状の生地は疎水性を示す生地である請求項または記載のサニタリーショーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布を備えたサニタリーショーツに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ショーツ身生地の縫製にてショーツ本体を構成するとともに、該ショーツ本体となる身ごろのクロッチ部に、一方の肌側の面を吸水面に、反肌側となる他方のショーツ身生地側の面を撥水面にそれぞれ編製し、かつ通気性を備えた当て布をあてがい、一体に構成したことを特徴とするサニタリーショーツが開示されている。
【0003】
このようなサニタリーショーツは、ナプキンを所定位置に保持するとともに、ナプキンによる防水機能の補完として、ナプキンで吸収しきれなかった経血などを当て布の吸水面にて吸収し、かつ撥水面にて外部への漏れを防止するという機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-279064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたような従来のサニタリーショーツは、ショーツ本体が身生地を縫製することにより一体的に構成され、当て布もショーツ本体のクロッチ部に縫着することにより接合されている。
【0006】
そのため、ナプキンから漏れる経血などが当て布を縫製した針穴と縫製糸を伝ってショーツ本体に染み出して外衣に漏れることがあった。また、脚繰り部でも解れ防止のために生地端縁を折り返して縫製しているため、クロッチ部と同様に、縫製箇所から経血などが染み出す虞もあった。さらに、生地端縁の折り返しや共生地などの使用により生地が重畳されているため、着圧が高くなり脚部が大きく締め付けられる結果、着心地が悪く、またショーツの内部との通気性や透湿性が悪く、蒸れを感じやすいという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、経血の量が多いときでも漏れを回避でき、しかも蒸れにくく着用感に優れたサニタリーショーツを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるサニタリーショーツの第一の特徴構成は、ショーツ本体と、前記ショーツ本体のクロッチ部に配した当て布を備えたサニタリーショーツであって、前記ショーツ本体は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成され、前記当て布は前記ショーツ本体の肌側に接着剤で接合され、前記当て布と前記ショーツ本体との間に防水シートが配され、前記当て布は裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地で構成され、前記当て布の前端縁部および後端縁部が前記ショーツ本体に接着剤で接合され、前記当て布の前端縁部と後端縁部の間の中間部が前記ショーツ本体から遊離しており、前記防水シートは少なくとも防水層を含む2層以上の多層で構成され、前記防水シートの前端縁部および後端縁部が前記当て布に接着剤で接合され、前記防水シートの前端縁部と後端縁部の間の中間部が前記当て布から遊離している点にある。
【0009】
当て布がショーツ本体の肌側に接着剤で接合されているため、仮に当て布に経血などが漏れるようなことがあっても、針穴や縫製糸がないので当て布からショーツ本体に染み出すようなことが回避できる。また、当て布への経血などの漏れ量が多い場合でも、当て布とショーツ本体との間に配された防水シートによりショーツ本体への染み出しが効果的に回避できる。しかも、ショーツ本体が解れ止め加工された伸縮性生地で構成されることで、脚繰り部に特段の解れ止め処理が不要になり、脚部が大きく締め付けられることもなく、しかも適度な通気性を確保することができる。
【0010】
当て布の前端縁部および後端縁部がショーツ本体に接着剤で接合されるとともに、当て布の前端縁部と後端縁部の間の中間部がショーツ本体から遊離しているため、接合部を除き着用者の動きに応じて当て布とショーツ本体が自由に伸縮変形するようになり快適な着心地が得られる。当て布とショーツ本体とが中間部で遊離しているため通気性を確保して蒸れを抑制でき、また当て布で保持されるナプキンの状態がショーツ本体の伸縮に伴って不自然に位置変化することがないためナプキンの位置ずれも抑制できる。しかも、当て布に解れ止め加工された伸縮性生地を用いることで、裁断部にヘム処理などの解れ止め処理が不要になり、ごわつくこともなく、一層の良好な着心地が得られる。
【0011】
防水シートがショーツ本体ではなく当て布に接合されているため、ショーツ本体の伸縮性が防水シートによって妨げられることなく、着用者の動きに応じて当て布とショーツ本体が自由に伸縮変形できる。また、防水シートが当て布に沿うようになるので、経血などが浸潤した当て布からショーツ本体への滲みだしも効果的に抑制される。しかも、防水シートの前端縁部と後端縁部の間の中間部が当て布から遊離しているため、適度な通気性が確保でき、蒸れを抑制できる。
【0012】
同第の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記当て布の前端縁部と後端縁部との間で前記ショーツ本体から遊離する中間部の長さは、前記防水シートの前端縁部と後端縁部の間で前記当て布から遊離する中間部の長さより長く設定され、少なくとも10mm以上長く設定されている点にある。
【0013】
防水シートの接合によって当て布の伸縮性が抑制される場合でも、当て布の前端縁部と後端縁部との間でショーツ本体から遊離する中間部の長さが、防水シートの前端縁部と後端縁部の間で当て布から遊離する中間部の長さより10mm以上長く設定されると、ショーツ本体のクロッチ部の伸縮性が適度に確保でき、着心地を損なうことがない。
【0014】
同第の特徴構成は、上述した第または第の特徴構成に加えて、前記防水シートは前記防水層の両面側がシート状の生地でラミネートされた3層以上の多層で構成されている点にある。
【0015】
防水層を接着面とする場合には接着強度が低して剥がれ易くなるが、防水層の両面側がシート状の生地でラミネートされた防水シートであれば、シート状の生地が接着面となるため十分な接着力が得られる。なお、接着強度の低下とは、防水層の破断、防水層と生地の剥離などを含む意味で用いている。
【0016】
同第の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記防水層と前記シート状の生地とが全面で接着されている点にある。
【0017】
防水層がシート状の生地で強固に接着されるので、防水シートとして十分な耐久性が得られる。
【0018】
同第の特徴構成は、上述した第または第の特徴構成に加えて、前記シート状の生地は疎水性を示す生地である点にある。
【0019】
疎水性の生地で防水層をラミネートすることにより、防水層のみならずショーツ本体への経血などの浸透を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、経血の量が多いときでも漏れを回避でき、しかも蒸れにくく着用感に優れたサニタリーショーツを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるサニタリーショーツの表側を正面から視た説明図
図2】(a)は本発明によるサニタリーショーツの裏側を正面から視た説明図、(b)は本発明によるサニタリーショーツの裏側を背面から視た説明図
図3】ショーツ本体を構成する身生地の裁断図
図4】ショーツ本体のクロッチ部に防水シートおよび当て布を配した状態の説明図
図5】(a),(b)は防水シートの断面の説明図
図6】(a)はクロッチ部の要部の説明図、(b)は(a)のA-A断面図
図7】別実施形態を示すクロッチ部の要部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明によるサニタリーショーツの一例を図面に基づいて説明する。
図1にはサニタリーショーツの表側を正面から視た説明図が示され、図2(a)には、サニタリーショーツの裏側を正面から視た説明図が示され、図2(b)にはサニタリーショーツの裏側を背面から視た説明図が示されている。
【0023】
図1および図2(a),(b)に示すように、サニタリーショーツ1は、ショーツ本体2と、ショーツ本体2のクロッチ部5に配した当て布8を備えている。
【0024】
ショーツ本体2は、前身頃3と後身頃4とクロッチ部5を備え、前身頃3の左右の脇部3A,3Bと後身頃4の左右脇部4A,4Bが接着剤11で接合されている。そして、身頃3,4の上部に胴部開口6が形成され、身頃3,4の下部に脚繰り部7A,7Bが形成されている。
【0025】
図3に示すように、ショーツ本体2は、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であるヨコ編地が身生地に採用され、ヨコ編地のコース方向が胴囲に沿う姿勢で、前身頃3と後身頃4とクロッチ部5が一体となる一枚ものに裁断され、裁断された身生地のうち、前身頃3および後身頃4の左右の脇部3A,4Aと3B,4B同士が接着剤11を介して接合されている。図1および図3でハッチングしている領域は接着材11の塗布領域を示している。
【0026】
図4および図6(a),(b)に示すように、当て布8はショーツ本体2の肌側つまり肌に接する内側面に接着剤11を介して接合されている。また、図4中に破線で示すように、当て布8とショーツ本体2との間に防水シート10が配されている。ショーツの装着状態で、当て布8と肌との間に生理用のナプキンが保持される。
【0027】
当て布8は、ショーツ本体2と同様に、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であるヨコ編地が用いられ、ヨコ編地のコース方向がショーツ本体2のコース方向と同じ方向になるように配されている。そのため、クロッチ部5で当て布8はコース方向に沿う左右の幅方向への伸縮性がウェール方向に沿う前後方向(前身頃から後身頃への方向)への伸縮性よりも大きくなる。従って、着用者の動きに応じて良好にナプキンを保持できるようになる。
【0028】
当て布8の前端縁部8Fおよび後端縁部8Rがショーツ本体2に接着剤11で接合され、当て布8の前端縁部8Fと後端縁部8Rの間の中間部8Mがショーツ本体2から遊離している。その結果、接着剤11による接合部を除き着用者の動きに応じて当て布8とショーツ本体2が自由に伸縮変形するようになり快適な着心地が得られる。
【0029】
そして、当て布8とショーツ本体2とが中間部8Mで遊離しているため通気性を確保して蒸れを抑制でき、また当て布8で保持される生理用のナプキンの状態が着用者の動きに従って変化するショーツ本体2の伸縮に伴って不自然に位置変化することがないためナプキンの位置ずれも抑制できる。しかも、当て布8に解れ止め加工された伸縮性生地を用いているため、ヨコ編地の裁断部にヘム処理などの解れ止め処理が不要になり、ごわつくこともなく、一層の良好な着心地が得られる。
【0030】
防水シート10は少なくとも防水層10Aを含む2層以上の多層で構成され、防水シート10Aの前端縁部10Fおよび後端縁部10Rが当て布8に接着剤11で接合され、防水シート10の前端縁部10Fと後端縁部10Rの間の中間部10Mが当て布8から遊離している。
【0031】
防水シート10がショーツ本体2ではなく当て布8に接合されているため、ショーツ本体2の伸縮性が防水シートによって妨げられることなく、着用者の動きに応じて当て布8とショーツ本体2が自由に伸縮変形できる。また、防水シート10が当て布8に沿うようになるので、経血などが浸潤した当て布8からショーツ本体2への滲みだしも効果的に抑制される。しかも、防水シート10の前端縁部10Fと後端縁部10Rの間の中間部10Mが当て布8から遊離しているため、適度な通気性が確保でき、蒸れを抑制できるようになる。
【0032】
図5(a)には、防水層10Aの両面に接着剤12による接着層を介してシート状の生地10Bがラミネートされた防水シート10が示され、図5(b)には、防水層10Aの一方の面に接着剤12による接着層を介してシート状の生地10Bで接着された防水シート10が示されている。防水シート10の厚さは適度な防水性と透湿性を発揮するとともに良好な着用感を維持するために1.5mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがさらに好ましい。1.5mmを超えると、ごわつきによる着用感の悪化を招く。接着剤12を用いた接着層は全面に接着剤が塗布された態様が好ましいが、ドット状に塗布され、あるいは格子状に塗布された態様であってもよい。
【0033】
防水層10Aとして厚さ25μmまたはそれ以下の防水性と透湿性を備えたポリウレタンシートが好適に用いられる。また、シート状の生地10Bとして、厚さ650μm以下、好ましくは500μm以下の疎水性を示すPET製の天竺編みによるヨコ編地が好適に用いられる。何れも接着層の厚みは50μm以下が好ましく、25μm以下がさらに好ましい。防水層10Aとしてポリウレタンシートに代えてゴアテックス(登録商標)などのPTFE(フッ素樹脂)シートを用いることも可能である。
【0034】
防水層10Aは同一組成のシートが重畳された構成でもよいし、異なる組成のシートが重畳された構成でもよい。また、防水層10Aとシート状の生地10Bとの間に、例えば防臭機能を備えた他のシートが重畳されていてもよい。つまり、防水シート10は少なくとも防水層を含む2層以上の多層で構成され、あるいは、防水層10Aの両面側がシート状の生地10Bでラミネートされた3層以上の多層で構成されていてもよい。
【0035】
防水層10Aを介して当て布8に接着すると、接着剤の影響で防水層10Aの劣化を来し短期間で剥離を招く虞があるため、当て布8に対する接着面をシート状の生地10Bとすることで十分な接着強度を得ることができる。なお、防水層10Aの劣化とは、防水層の破断、防水層と生地の剥離などを含む意味で用いている。なお、図5(b)の例では、シート状の生地10Bを配した面が当て布8に接着されることになるが、ショーツ本体2と防水シート10との間に形成される遊離部8Mにナプキンの羽根部分が折り込まれると、羽根部分に付加された粘着剤の影響で防水層10Aの劣化を来す虞もあるため、図5(a)の態様が好ましい。
【0036】
当て布8の前端縁部8Fと後端縁部8Rとの間でショーツ本体2から遊離する中間部8Mの長さL1は、防水シート10の前端縁部10Fと後端縁部10Rの間で当て布8から遊離する中間部10Mの長さL2より長く設定されている。これにより、ショーツ本体2のクロッチ部5の伸縮性が適度に確保でき、着心地を損なうことがない。具体的に、L1-L2の値は、少なくとも10mm以上であり、20mm以上であるとより好ましい。なお、中間部8M,10Mの長さL1,L2は平均長さである。
【0037】
ショーツ本体2を構成するヨコ編地を編成する原糸には、綿糸以外にキュプラ、ビスコースレーヨンなどの再生セルロース繊維、さらには吸水性加工されたポリエステルやナイロンなどの合成繊維糸を含む吸水性を有する極細繊維を用いることができ、また編地としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編みなどを好適に用いることができる。当て布8を構成するヨコ編地の場合には、肌に対する優しさと吸水性を考慮して、少なくとも綿糸が20%以上含まれていることが好ましい。
【0038】
当該ヨコ編地は、熱変形性弾性糸と綿糸を含むその他の糸がプレーティング編みで編成され、その後にヒートセット加工が施されることによって熱変形した熱変形性弾性糸がその他の糸の周りで互いに融着することにより解れ止め機能が発現する編地であり、裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地である。
【0039】
例えば、熱変形性弾性糸として22~110dtex(デシテックス)で、軟化温度140℃から185℃のポリウレタン弾性糸を用い、その他の糸12として単糸繊度80/1~30/1番手の綿糸または綿とレイヨンの混紡糸を用いることができる。ポリウレタン弾性糸のフィラメント数は特に限定されず、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。
【0040】
それぞれ異なる給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける低融点ポリウレタン弾性糸と綿糸との配置が安定しているため、全てのループに低融点ポリウレタン弾性糸を隣接させることができ、編立後のヒートセット加工により低融点ポリウレタン弾性糸を溶融すれば、編地の全てのループで確実にほつれ止め機能が発現するようになる。
【0041】
当該ヨコ編地はヨコ編機を用いて編成された編地をその後にセット機にセットして150~190℃でヒートセットし、必要に応じて染色工程を経た後に再度セット機にセットして、張力をかけた状態で100~120℃の温度で最終的なヒートセットを行なうことにより得られる。
【0042】
このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、ヘム処理やパイピング処理などの特段の解れ止め処理をしなくても、裁断端部から繊維が解れることが無い。このような端部を切りっ放し処理された端部といい、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるような見栄えの悪化を招くことが無い。
【0043】
例えば端部を折り返して縫着するような解れ止め加工が不要になるので、脚繰り部などで端部の厚みなどに起因する締付や肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい衣類が提供できるようになる。
【0044】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。
【0045】
当て布8とショーツ本体2、および防水シート10と当て布8を接合する接着剤11としてホットメルト接着剤、例えば湿気硬化性の反応型ホットメルト接着剤が好適に用いられる。
【0046】
例えば、120℃に加熱した液状の接着剤を、ギアポンプを備えたノズルから生地片(例えば前身頃3の脇部)の帯状領域に供給塗布した後、その上に接合対象となる生地片(例えば後身頃4の脇部)を位置決めして重畳することで仮止めし、仮止め後、例えば両生地片の重畳部を約70℃の温度で加熱および押圧することにより、接着剤が溶融して両生地片を構成する繊維に浸潤する。接着後に架橋反応が進むことにより耐熱性が現れ、その後の加熱処理で溶融することは無い。
【0047】
接着剤11を用いたショーツ本体2に対する当て布8の接着層、および当て布8に対する防水シート10の接着層は、生地の伸縮性を損なうことなく、肌触りを良好に保つために、全面に接着剤11を塗布するのではなく、ドットパターンや格子パターンまたは生地の伸縮方向と繰り返し交差するジグザグパターンなどで接着剤11を塗布することが好ましい。生地の伸縮方向と交差するように接着すると生地の伸縮性を阻害するようなことがない。
【0048】
このような接着剤11を生地片の接着部位に塗布して加熱処理すると、接着剤が軟化または溶融して生地を構成する繊維間に浸潤して両生地が接着されるようになる。このとき、生地片に編み込まれた解れ止めの熱変形弾性糸に熱による影響を及ぼすことなく、解れ止め機能の劣化を来すことが無い。
【0049】
接着剤の120℃溶融粘度が8000mPa・sから22000mPa・sであることが好ましく、13000mPa・sから19000mPa・sであることがさらに好ましい。
【0050】
接着剤の120℃溶融粘度がこれらの範囲であれば熱処理時に大きな加圧力を与えなくても、生地を構成する繊維間つまり生地の厚み方向及び面方向に良好に接着剤が浸潤し、十分な接着強度が得られるようになる。また、その際に接着剤が生地の反対側表面に浸潤することも無いので、見栄えの劣化が生じることも無い。その結果、熱変形弾性糸に熱的影響を与えたり、生地片にテカリや当たり等のダメージを与えたりすることなく良好に接着できるようになる。
【0051】
接着剤11に用いられる熱可塑性樹脂としては、上述の加熱処理条件を満たす限りにおいて、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも湿気硬化型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0052】
防水シート10の多層化に用いる接着剤12として2液反応硬化型接着剤が好適に用いられる。例えば、主剤と硬化剤の接触による付加重合反応で硬化するウレタン系接着剤やシリコーン系接着剤などを用いることができる。
【0053】
当該サニタリーショーツ1は、裁断処理した当て布8に防水シート10を接着し、次に裁断した身生地のクロッチ部5に防水シート10を接着した当て布8を接着し、さらに裁断した身生地の身頃の脇部を接着する必要がある。其々の接着部に加熱押圧処理を要するため、多層化された防水シート10の接着層に影響が出ないように、熱で溶融し難い2液反応硬化型接着剤が用いられる。
【0054】
つまり、当て布8とショーツ本体2とを接合する接着剤11は、防水シート10の多層化に用いる接着剤12とは硬化メカニズムが異なる接着剤が用いられる。
【0055】
上述した実施形態では、防水シート10を当て布8に接着する例を説明したが、図7に示すように、防水シート10をショーツ本体2に接着することも可能である。
【0056】
上述した実施形態では、ショーツ本体2および当て布8がヨコ編地で構成された例を説明したが、ショーツ本体2および当て布8は裁断部のヘム処理または縁かがりが不要な解れ止め加工された伸縮性生地であればよくタテ編地で構成されていてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、サニタリーショーツにより生理用のナプキンを保持する態様を説明したが、サニタリーショーツにより尿漏れパッドを保持する態様で使用することも可能であることはいうまでもない。
【実施例
【0058】
防水シート10と当て布8またはショーツ本体2との接着強度について行なった試験結果を示す。
防水シートの試験片として、図5(a)で説明した防水層の両面をPET生地でラミネートした防水シートAと、図5(b)で説明した防水層の片面をPET生地で接着した防水シートBを準備した。また、当て布8またはショーツ本体2の試験片として、綿糸とポリウレタン糸を含む解れ止め加工された伸縮性生地Cを準備した。伸縮性生地の綿糸成分は20%であり、他に再生セルロース繊維を含む。
【0059】
各試験片を幅25mm×長さ150mmのサイズにカットし、120℃で溶融した接着剤を其々6mmの接着幅で長手方向に交差するようにジグザグ状に塗布して、防水シートAと伸縮性生地Cを接着したサンプル1を製作するとともに、防水シートBと伸縮性生地Cを接着したサンプル2を製作した。なお、防水シートBと伸縮性生地Cの接着では、防水シートBの防水層側と伸縮性生地Cを接着した。接着剤は、湿気硬化型ホットメルト樹脂を用いた。上述したサンプル1,2に対して、JIS L 1086に準拠して剥離強度を測定した。
【0060】
なお、JIS L 1086には、幅25mm×長さ150mmの試験片を被接着布のたて方向及びよこ方向、又はウェール方向及びコース方向にそれぞれ5枚以上採取し、長辺の方向に、辺から約50mmを剥離し、自記記録装置付引張試験機を用い、試験片のつかみ間隔を50mmとして、クランプに挟む。
引張速度は,100mm/minとし、50mm間を剥離して、剥離するときに示す極大値(cN)の大きいものから順次3個、小さいものから順次3個をとり,計6個の平均値を算出し、たて方向及びよこ方向、又はウェール方向及びコース方向それぞれ5回以上の平均値をJIS Z 8401の規則B(四捨五入法)によって整数位まで求める、と規定されている。
【0061】
試験の結果、サンプル1の剥離強度は18.1Nとなり、サンプル2の剥離強度は6.5Nとなった。また、上述の伸縮性生地C同士を同様に接着したサンプルに対しても剥離強度を測定したところ、16.8Nとなった。
洗濯耐久性などを考慮すると、剥離強度は、10N以上が好ましく、14N以上が更に好ましいと判断できる。
以上の試験結果に基づいて接着剤の単位幅当たりの剥離強度は、約3N/mmとなり、1.7N/mm以上が好ましく、2.3N/mm以上がより好ましい。
接着部位の剥離強度は所定以上(上述したように、10N以上が好ましい)あれば、接着幅については限定されないが、接着幅が小さい方が、生地の伸縮性を阻害せず、着心地に優れ、接着領域の長手方向に直交する方向の接着幅は15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。接着幅は、接着剤がドット形状の時はおおよそドットの直径となるが、複数のドット形状(2列、千鳥など)で、単一ドット径より大きい接着幅を形成する場合は、接着領域の長手方向に直交する方向に複数のドットが形成される範囲になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によるサニタリーショーツは、身生地への漏れを回避でき、しかも蒸れにくく着用感に優れたサニタリーショーツとして、幅の広い世代に利用される。
【符号の説明】
【0063】
1:サニタリーショーツ
2:ショーツ本体
3:前身頃
4:後身頃
5:クロッチ部
6:胴部開口
7A,7B:脚繰り部
8:当て布
8F:前端縁部
8M:中間部
8R:後端縁部
10:防水シート
10F:前端縁部
10M:中間部
10R:後端縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7