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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】剥離機構及びこれを用いた積層装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240913BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B65H41/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211295
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097992
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由
(72)【発明者】
【氏名】植野 琴美
(72)【発明者】
【氏名】森永 高広
(72)【発明者】
【氏名】森 隆博
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-167205(JP,A)
【文献】特開平08-244019(JP,A)
【文献】特開2018-206833(JP,A)
【文献】特開2017-122154(JP,A)
【文献】特開2020-100502(JP,A)
【文献】特開2007-149883(JP,A)
【文献】特開2020-92127(JP,A)
【文献】特開2011-54650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム付きシートを固定状態で載置する剥離ステージと、
前記剥離ステージに載置された前記シートから前記フィルムを剥離させる剥離ヘッドと、
を備え、
前記剥離ヘッドは、
前記フィルム付きシートの外周部の一部に対向配置された状態で、前記シートと前記フィルムとの界面に紫外線をスポット照射して、剥離起点部を形成するUV照射手段と、
前記剥離起点部における前記フィルムを保持した状態で、前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージの相対移動により、前記シートから前記フィルムを剥離するフィルム保持手段と、を含む剥離機構。
【請求項2】
前記UV照射手段は、紫外線をスポット照射するUV-LEDを備え、
前記UV-LEDは、紫外線のスポット照射角度を上下方向に調整可能である、請求項1に記載の剥離機構。
【請求項3】
前記紫外線のスポット照射角度は、水平面に対して、0°から90°まで調整可能である、請求項2に記載の剥離機構。
【請求項4】
前記フィルム保持手段は、前記剥離ヘッドに垂下して設けられる付勢部材と、前記付勢部材に回転可能に設けられ、外周面の少なくとも一部に粘着面を備える粘着ローラと、を有し、
前記粘着ローラは、前記付勢部材により、前記粘着面が前記剥離起点部に押圧されるとともに、前記シートに対して相対移動することにより、前記粘着面に前記フィルムを巻付ける、請求項1から3のいずれか一項に記載の剥離機構。
【請求項5】
前記フィルム保持手段は、前記粘着ローラに対向配置され、前記粘着ローラに対して離接方向に移動可能であるクランプ爪をさらに有し、
前記クランプ爪は、前記粘着ローラに近接配置された状態において、前記粘着ローラの前記粘着面に巻付いた前記フィルムを前記粘着ローラとの間に挟持する、請求項4に記載の剥離機構。
【請求項6】
前記フィルム付きシートは、略矩形形状を有しており、前記剥離起点部は、前記フィルム付きシートの一つの角部に形成され、
前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージとの間に、前記シートの対角線方向への相対移動を生じさせて、前記シートから前記フィルムを剥離させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の剥離機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の剥離機構と、
前記シートの位置合わせを行うアライメント手段と、
位置合せされた前記シートを積層する積層手段と、
を備える、積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、UV照射手段を備える剥離機構及びこれを用いた積層装置に関する。
【0002】
積層装置は、電子部品を構成する複数枚のシートを積層するものであり、剥離機構、アライメント手段、積層手段、及び搬送手段などを備える。この剥離機構は、アライメント手段によって、シートがアライメントされる前や、積層手段によって、複数のシートからなる積層体が形成された後に、最上層のシートからフィルムを剥離する。
【0003】
例えば、特許文献1(特に、段落[0052]及び図8参照)には、剥離機構であって、UVランプ(以下、「従来のUVランプ」という)を用いて、フィルム付きシートの全面に対して、紫外線照射(以下、「UV照射」という)を行い、シートとフィルムとの界面を改質させた後に、シートからフィルムを剥離させるものが記載されている。
【0004】
しかしながら、従来のUVランプは、主に、以下の2つの問題点を有していた。第1に、従来のUVランプは、UV照射の熱や照度などの影響が比較的大きいため、シートの変形などが生じ、品質が低下するという問題点(以下、「UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下」という)を有していた。第2に、従来のUVランプは、大型で重量もあるため、UV照射後から剥離動作までに比較的長い時間を要し、シートとフィルムとの界面の改質効果が、経時変化により低下するという問題点(以下、「剥離動作時における界面の改質効果低下」という)を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/031374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに近年、積層体には、小型化及び低背化が要望されているため、積層されるシート自体の薄化が行われている。この薄化されたシートの剛性は、比較的低くなっている。よって、従来のUVランプを用いて、薄化されたフィルム付きシートの全面に対して、UV照射を行うと、前述の第1の問題点(UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下)が、より顕著に生じ、シートが損傷してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下を抑制できる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、剥離動作時における界面の改質効果が低下することを抑制できる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の剥離機構は、フィルム付きシートを固定状態で載置する剥離ステージと、前記剥離ステージに載置された前記シートから前記フィルムを剥離させる剥離ヘッドと、を備え、前記剥離ヘッドは、前記フィルム付きシートの外周部の一部に対向配置された状態で、前記シートと前記フィルムとの界面に紫外線をスポット照射して、剥離起点部を形成するUV照射手段と、前記剥離起点部における前記フィルムを保持した状態で、前記剥離ヘッド及び前記剥離ステージの相対移動により、前記シートから前記フィルムを剥離するフィルム保持手段と、を含むものである。
【0009】
本発明に係る一実施形態の積層装置は、上記剥離機構を備え、前記シートの位置合わせを行うアライメント手段と、位置合せされた前記シートを積層する積層手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下を抑制できる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、剥離動作時における界面の改質効果が低下することを抑制できる剥離機構及びこれを用いた積層装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る剥離機構を用いた積層装置を示す平面模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る剥離機構の概略説明図であり、(a)剥離機構の平面図、(b)剥離ヘッドのシート対角線に沿う側面図、(c)剥離ステージのシート対角線に沿う側面図、をそれぞれ表す。
図3】フィルムの剥離工程における照射準備動作から剥離起点部形成動作までの説明図であり、(a)及び(b)照射準備動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)剥離起点部形成動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
図4】フィルムの剥離工程における粘着動作から巻付き動作までの説明図であり、(a)及び(b)粘着動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)巻付け動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
図5】フィルムの剥離工程における引上げ動作からクランプ動作までの説明図であり、(a)及び(b)引上げ動作の側面図及び平面図、(c)及び(d)クランプ動作の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
図6】フィルムの剥離工程における剥離動作の説明図であり、(a)及び(b)剥離動作(水平方向)の側面図及び平面図、(c)及び(d)剥離動作(斜め上方向)の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
図7】フィルムの剥離工程における剥離終了時の説明図であり、(a)及び(b)剥離終了時の側面図及び平面図、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、各用語を以下のように定義する。「積層」とは、複数枚(2枚も含む)の貼り合わせを示す。「積層体」とは、複数枚(2枚も含む)のシートSを貼り合わせたものを示す。「剥離線」とは、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域との境界線を示す。「フィルムの粘着境界線」とは、粘着ローラ12の下端部に粘着されているフィルムfの領域と、粘着ローラ12の下端部に粘着されていないフィルムfの領域との境界線を示す。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る剥離機構100を用いた積層装置1を示す平面模式図である。ここで、X軸方向は、剥離ステージ20が延在する一方向を示すものであり、Y軸方向は、X軸方向と直交し、かつ、剥離ステージ20が延在する他方向を示すものである。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交し、かつ、剥離ステージ20が面する方向を示すものである。さらに、図1中の点Aから点Cは、各ステージの中心位置を示し、それぞれ、剥離ステージ位置、アライメントステージ位置、及び、積層ステージ位置に対応する。
【0015】
<積層装置について>
積層装置1は、電子部品を構成する薄化された複数のシートSを高精度かつ高速に積層するものである。この積層装置1は、剥離機構100と、アライメント手段200と、積層手段300と、搬送手段(不図示)と、を備える。以下、それらを順に説明する。なお、積層装置1は、剥離機構100、アライメント手段200、積層手段300、及び、搬送手段を制御する制御手段(不図示)をさらに備える。
【0016】
<剥離機構について>
剥離機構100は、剥離ヘッド10(図2(a)参照)と、剥離ステージ20と、を備える。剥離機構100は、詳細は後述するが、剥離対象物であるフィルム付きシートSfを剥離ステージ20に固定状態で載置させた後、剥離ヘッド10により、シートSからフィルムfを剥離させる。
【0017】
<アライメント手段について>
アライメント手段200は、シートSの基準位置への位置合わせを行うものである。アライメント手段200は、シートSを吸着固定し載置するアライメントステージ201と、シートSを基準位置へと位置合わせするために、アライメントステージ201のXY平面内における移動及び回動を行う電動アクチュエータ(不図示)と、シートSに設けられる位置合わせ参照用のマークを撮像するアライメント撮像ユニット(不図示)と、を備える。
【0018】
アライメント手段200は、アライメントステージ201上に載置されたシートSを複数の吸着ポート(不図示)により真空吸着する。そして、アライメント撮像ユニットが、シートSに設けられた参照用のマークを撮像する。この撮像された画像は、画像処理装置(不図示)に送信され、画像処理により、参照用のマークの位置が算出されるとともに、この算出された参照用のマークと予め定められた基準位置との誤差が算出される。ここで、この誤差が所定範囲内であれば、シートSの位置合わせが適切に行われたものと判断され、制御手段からの指示により、シートSの位置合わせ動作を終了にする。一方、この誤差が所定範囲外であれば、シートSの位置合わせが適切に行われなかったものと判断される。この際、電動アクチュエータが、制御手段からの指示により、誤差が最小となるように、アライメントステージ201を介して、シートSのXY平面内における移動及び回動を行う。この予め定められた基準位置への位置合わせは、誤差が所定範囲内となるまで続けられる。
【0019】
<積層手段について>
積層手段300は、複数のシートSが積層され、積層体が形成される積層ステージ301を備える。
【0020】
<搬送手段について>
搬送手段は、X軸方向(矢印I方向:剥離ステージ位置Aとアライメントステージ位置B、矢印II方向:アライメントステージ位置Bと積層ステージ位置C)及びZ軸方向へと移動可能である搬送スライド機構(不図示)と、搬送スライド機構に吊り下げ支持され、シートSを吸着保持する搬送保持機構(不図示)と、を備える。
【0021】
<積層装置における積層工程ついて>
図1を用いて、積層装置1におけるシートSの積層工程を順に説明する。
【0022】
まず、剥離機構100において、1枚のフィルム付きシートSfが、剥離ステージ20上に固定状態で載置された後、フィルムfの外周部の一部が、剥離ヘッド10により、保持される。その後、剥離ヘッド10(図2(a)参照)と剥離ステージ20との相対移動により、シートSからフィルムfが剥離される。詳細は後述するが、UV照射の熱や照度などによるシートSの品質低下が抑制されている。
【0023】
剥離機構100において、シートSからフィルムfの剥離が完了すると、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置(不図示)から剥離ステージ位置Aへと移動した後、Z軸方向の下方へと移動する。この搬送保持機構が、シートSに当接されると、真空吸着により、シートSが、搬送保持機構に保持される。その後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、Z軸方向の上方へと移動し、剥離ステージ位置Aからアライメントステージ位置Bへと、X軸方向(矢印I方向)に移動した後、Z軸方向の下方へと移動し、アライメントステージ201の上面に当接される。そして、搬送保持機構が、吸着保持を解除することにより、シートSが、アライメントステージ201の所定位置に載置された後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置に移動する。
【0024】
さらに、アライメント手段200において、シートSの位置合わせが適切に行われると、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、待機位置からアライメントステージ位置Bに移動した後、Z軸方向の下方へと移動する。そして、搬送保持機構が、アライメントステージ201上の位置合わせが適切に行われたシートSに当接されると、真空吸着により、シートSが、搬送保持機構に保持される。その後、搬送保持機構が、搬送スライド機構により、Z軸方向の上方へと移動し、アライメントステージ位置Bから積層ステージ位置Cへと、X軸方向(矢印II方向)に移動した後、Z軸方向の下方へと移動し、積層ステージ301の上面、又は、既に積層された他のシートSに当接される。そして、搬送保持機構が、吸着保持を解除することにより、シートSが、積層ステージ301の所定位置に載置される。以上、説明した積層装置1における積層工程を行うことにより、フィルムfがシートSから剥離されるとともに、位置合わせが適切に行われたシートSが積層され、積層体が形成される。これにより、品質低下が抑制されたシートSを用いて、積層体を形成することができる。
【0025】
なお、本実施形態における剥離機構100は、剥離対象物が、1枚のフィルム付きシートSfであるため、アライメント手段200により、シートSがアライメントされる前に、シートSからフィルムfを剥離させている。しかしながら、これに限らず、例えば、剥離対象物が、積層体の最上層のフィルム付きシートSfであれば、積層手段300により、複数のシートSからなる積層体を形成し、仮圧着した後に、最上層のシートSからフィルムfを剥離させてもよい。
【0026】
本実施形態における積層装置1は、剥離機構100、アライメント手段200、積層手段300、搬送手段、及び、制御手段を備えるものである。しかしながら、本実施形態における積層装置1は、これに限らず、例えば、シートSを剥離ステージ20上に供給するシート供給手段や、シートSの積層体を圧着し一体化する圧着手段などを備えてもよい。
【0027】
<剥離機構の詳細構成について>
図2は、本発明の実施形態に係る剥離機構の概略説明図であり、(a)剥離機構の平面図、(b)剥離ヘッドのシート対角線に沿う側面図、(c)剥離ステージのシート対角線に沿う側面図、をそれぞれ表す。ここで、図2(a)中における一点鎖線Lは、剥離ステージ20に載置されたフィルム付きシートSfの一方の対角線の延長線上を示すものである。また、図2(a)中の点A、点D、点E、及び、点Fは、それぞれ、シートSの中心位置、待機位置、開始位置、及び、終了位置を示し、一点鎖線L上に配置されるものである。
【0028】
剥離機構100は、剥離ヘッド10と、剥離ヘッド10の対角線方向Lへの移動を行う剥離ヘッド駆動手段(相対移動手段)(不図示)と、剥離ステージ20と、剥離ステージ20の対角線方向Lへの移動を行う剥離ステージ駆動手段(相対移動手段)(不図示)と、備える。以下、それらを順に説明する。なお、本実施形態においては、説明を簡略化するために、図2(a)及び図2(b)に示すように、剥離ステージ20を固定状態とし、剥離ヘッド10を、剥離ヘッド駆動手段により、対角線方向L(矢印III方向)、Z軸方向(矢印IV方向)、及び、対角線方向Lに沿う斜め上方向(矢印IX方向)へと移動させるものとする。これにより、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20に、相対移動を生じさせることができる。
【0029】
<剥離ヘッドについて>
図2(b)に示すように、剥離ヘッド10は、UV-LEDモジュール(UV照射手段)11と、粘着ローラ(フィルム保持手段)12と、付勢部材13と、クランプ爪(フィルム保持手段)14と、クランプ爪駆動機構(不図示)と、を備える。
【0030】
<UV-LEDモジュール>
UV-LEDモジュール11は、剥離ヘッド10の下端部に設けられ、紫外線を照射するUV-LED11aと、UV-LED11aから照射された紫外線を集光する光学系部品(例えば、リフレクタ、レンズなど)(不図示)と、UV-LED11aを回動させるUV-LED駆動機構と、を備える。このUV-LED11aは、紫外線を発光する発光ダイオードからなり、従来のUVランプと比べ、熱量が極めて小さく、軽量及び小型化である。また、光学系部品は、UV-LED11aから照射された紫外線を集光することにより、従来のUVランプと同程度の比較的強い照度の紫外線をスポット照射することができる(図2(b)中の破線参照)。さらに、UV-LED駆動機構は、対角線方向Lと直交し、水平方向に延在する回動軸11bを中心に、UV-LED11aを回動方向(矢印V方向)へと回動させ、紫外線のスポット照射角度α(図3(c)参照)の調整を行う。
【0031】
ここで、本実施形態におけるUV-LED11aから剥離対象物までの照射距離を、近接した距離(例えば、5(mm)~40(mm))に設定する。また、本実施形態におけるUV-LED11aから照射される紫外線の波長は、一般的な紫外線の波長である380nm以下であるが、シートSとフィルムfとの界面を効果的に改質するために、365nm以下とすることが好ましく、310nm以下とすることがより好ましい。さらに、本実施形態におけるUV-LED11aから照射される紫外線の積算照射量は、シートSの損傷を抑制するために、1000~50000(mJ/cm2)とすることが好ましい。加えて、本実施形態におけるUV-LED11aから照射される紫外線の照度は、一定とするものであるが、これに限らず、例えば、変化させるものであってもよい。また、本実施形態におけるUV-LED11aの紫外線のスポット照射角度αは、様々な規格のフィルム付きシートSfにおけるシートSとフィルムfとの界面へと、紫外線を照射させるために、水平面に対して、0(°)~90(°)とする。
【0032】
<粘着ローラ及び付勢部材>
粘着ローラ12は、円筒形状を有し、外周面12bに粘着性を有する粘着面を備える。詳細は後述するが、この粘着ローラ12の粘着面が、フィルムfを粘着することにより、フィルムfをシートSから剥離させるとともに、この剥離させたフィルムfを保持することができる。本実施形態における粘着ローラ12の外周面12bは、全体を粘着面とするものであるが、これに限らず、少なくとも一部(例えば、フィルムfが粘着する領域)のみを粘着面としてもよい。また、本実施形態における粘着ローラ12の粘着面の材質は、例えば、ゴム系、アクリル系、又は、シリコン系などの粘着剤から構成される。
【0033】
付勢部材13は、スプリングなどからなり、下端部に対角線方向Lと直交し、水平方向に延在する回転軸13aを備え、剥離ヘッド10から垂下した状態で支持されている。
【0034】
粘着ローラ12は、付勢部材13に対して、回転軸13aを中心とする回転方向(矢印VII方向)に回転可能に軸支されている。本実施形態において、粘着ローラ12をフィルムfに接触させる際に、剥離ヘッド駆動手段により、付勢部材13の付勢方向(矢印VI方向)への押し込み量が調整されることにより、粘着ローラ12をフィルムfに対して所望の付勢力で負荷することができる。
【0035】
<クランプ爪及びクランプ爪駆動機構>
クランプ爪14は、下端部に対角線方向Lに突出する突起14aを備え、粘着ローラ12と対角線方向Lに対向配置される。クランプ爪駆動機構は、クランプ爪14を、粘着ローラ12に対して離接方向(矢印VIII方向)へと移動させる。このクランプ爪駆動機構により、クランプ爪14が、粘着ローラ12に近接配置され、クランプ爪14と粘着ローラ12との間にフィルムfを挟持することができる。
【0036】
<剥離ステージについて>
図2(c)に示すように、剥離ステージ20は、剥離ステージ20上に配置される吸着板21と、吸着板21を介して、剥離対象物であるフィルム付きシートSfを真空吸着させる複数の吸着ポート22と、を備える。
【0037】
吸着板21は、シートSの破損を防止するために、複数の連通孔を有するものであり、例えば、複数の孔を有する板状部材から構成されてもよいし、樹脂性の多孔質材料から構成されてもよい。
【0038】
<フィルム付きシートSfについて>
剥離対象物であるフィルム付きシートSfは、シートSの上にフィルムfが積層されている。このフィルム付きシートSfには、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有するもの(例えば、テープ)や、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有さないもの(例えば、PETフィルム)などを含む。ここで、本実施形態におけるフィルム付きシートSfは、薄化されたものであり、シートS及びフィルムfの厚みを、それぞれ、50(μm)及び20(μm)とするものであるが、これに限らず、例えば、シートSの厚み及びフィルムfの厚みを、それぞれ、1(μm)以下としてもよい。
【0039】
<剥離機構における剥離工程について>
図3から図7を用いて、剥離機構100における剥離工程を説明する。なお、剥離機構100の駆動は、制御手段を主体とし、制御手段からの指示により実行される。ここで、図3(b)、図3(d)、図4(b)、図4(d)、図5(b)、図5(d)、図6(b)、図6(d)及び図7(b)については、説明の便宜上、剥離ヘッド10の外形を破線で示すとともに、UV-LEDモジュール11を実線で示している。
【0040】
<照射準備動作について>
まず、図3(a)及び図3(b)を用いて、照射準備動作について説明する。なお、初期状態として、剥離ヘッド10は、待機位置Dで停止しており、UV-LED11aは、水平方向を向くように配置されている。また、剥離ステージ20上に、吸着板21を介して、剥離対象物であるフィルム付きシートSfが吸着固定されている。
【0041】
剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、待機位置Dから開始位置Eへと、対角線方向L(矢印III(1)方向)に移動する。この際、粘着ローラ12は、フィルム付きシートSfの角部の一つ(後の剥離起点部Ra)の上方に配置される。その後、剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の下方(矢印IV(2)方向)に移動する。また、UV-LED11aが、UV-LED駆動機構により、回動方向(矢印V(3)方向)へと回動され、フィルム付きシートSfの角部の一つと対向配置される。
【0042】
フィルム付きシートSfの種類(例えば、色や厚みなど)に応じて、UV-LED11aの配置を調整することができる。例えば、フィルムfが紫外線の波長を透過するもの(例えば、透明なPETフィルムなど)である場合には、UV-LED11aを、フィルム付きシートSfから上方(矢印IV(2)方向)に離間させるとともに、回動方向(矢印V(3)方向)へと大きく回動させ、スポット照射角度α(図3(c)参照)を比較的大きく設定する。一方、フィルム付きシートSfのフィルムfが紫外線の波長を透過しないもの(例えば、白いPETフィルムなど)である場合には、UV-LED11aを、フィルム付きシートSfに下方向(矢印IV(2)方向)に近接させるとともに、回動方向(矢印V(3)方向)へと小さく回動させ、スポット照射角度α(図3(c)参照)を比較的小さく設定する。
【0043】
<剥離起点部形成動作について>
次に、図3(c)及び図3(d)を用いて、剥離起点部形成動作を説明する。UV-LED11aは、フィルム付きシートSfの角部の一つに対向配置された状態で、シートSとフィルムfとの界面に紫外線をスポット照射する。シートSとフィルムfとの界面において、UV-LED11aからの紫外線がスポット照射された照射領域は、改質されることにより、界面の密着力が著しく低下した剥離起点部Raが形成される。
【0044】
<紫外線のスポット照射による界面の改質について>
この紫外線のスポット照射による界面の改質について、具体的に説明する。紫外線のスポット照射により、シートSとフィルムfとの界面は、一時的に励起状態となり改質される。この励起状態による改質は、シートSとフィルムfとの密着力の低下を生じさせる。ここで、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有する場合には、主に、粘着層の粘着力(化学的結合力)を低下させるものである。また、シートSとフィルムfとの間に粘着層を有さない場合には、アンカー効果による結合力(機械的結合力)、分子間相互作用による結合力(物理的結合力)を低下させるものである。この励起状態は、一時的なものであり、経時変化により、基底状態へと遷移する。したがって、紫外線のスポット照射により、密着力が低下した剥離起点部Raが形成された後、迅速に、剥離起点部Raにおける剥離が行われる必要がある。
【0045】
本実施形態においては、UV-LEDモジュール11では、発熱量が比較的小さいUV-LED11aを採用するとともに、光学系部品により、紫外線をスポット照射することにより、従来のUVランプが有する第1の問題点(UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下)を解消させることができる。また、本実施形態においては、UV-LEDモジュール11では、軽量及び小型化であるUV-LED11aを採用することで、界面における改質効果が維持されている時間内(例えば、スポット照射直後~数秒以内)に、剥離起点部Raにおける剥離を行うことが可能となる。これにより、従来のUVランプが有する第2の問題点(剥離動作時における界面の改質効果低下)を解消させることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、フィルム付きシートSfの角部の一つに剥離起点部Raを形成し、この剥離起点部Raからフィルム付きシートSfの中心位置Aに向けて、シートSからフィルムfを剥離させるものである。これは、フィルム付きシートSfの一辺に沿って均一な剥離起点部Raを形成する場合と比べ、剥離起点部Raの形成時間を短縮することができるとともに、シートSからのフィルムfの剥離を剥離線に沿って均一に維持することができる。また、本実施形態におけるUV-LED11aは、剥離起点部Raを形成する際に、紫外線のスポット照射を行うものであるが、これに限らず、例えば、UV-LED11aを水平方向に走査可能な構成とし、シートSからフィルムfを剥離する際に、水平方向に走査しながら、シートSとフィルムfとの界面に対して、紫外線のスポット照射を行ってもよい。
【0047】
<粘着動作について>
図4(a)及び図4(b)を用いて、粘着動作を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の下方(矢印IV(4)方向)に移動し、粘着ローラ12の外周面12bにおける粘着性を有する粘着面が、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域に接触される。この際、剥離ヘッド駆動手段が、付勢部材13の付勢方向(矢印VI(5)方向)の押し込み量を調整することにより、粘着ローラ12が、フィルムfに対して所望の付勢力で押圧される。これにより、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域が、粘着ローラ12の粘着面により、確実に粘着保持される。さらに、UV-LED11aが、UV-LED駆動機構により、回動方向(矢印V(6)方向)へと回動され、水平方向を向く初期状態に戻される。これにより、後の剥離動作において、UV-LED11aが他の部材との干渉を回避することができる。
【0048】
<巻付け動作について>
図4(c)及び図4(c)を用いて、巻付け動作を説明する。まず、剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、開始位置Eから中心位置Aへ向けて、対角線方向L(矢印III(7)方向)に移動する。
【0049】
この巻付け動作において、界面における改質効果が維持されており、剥離起点部RaにおけるシートSとフィルムfとの密着力は低下している。また、粘着ローラ12が、付勢部材13により、常時、付勢方向(矢印VI(5)方向)に負荷され、フィルムfが、粘着ローラ12の粘着面に粘着保持されている。さらに、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着面の粘着力を、剥離起点部Ra以外のシートSとフィルムfとの界面に生じる密着力より高く設定している。
【0050】
次に、剥離ヘッド10が、対角線方向L(矢印III(7)方向)へ移動するにともない、粘着ローラ12が回転軸13aを中心として、回転方向(矢印VII(8)方向)に回転される。この際、粘着ローラ12の外周面12bがフィルムfに対して転動することにより、フィルムfの剥離起点部Raに対応する領域から順に、粘着ローラ12の粘着面に巻付くように粘着保持されるともに、剥離線Pl1が形成される。
【0051】
この粘着ローラ12へのフィルムfの巻付けにより、粘着保持される面積を増加させること、つまり、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着力を増加させることができる。ここで、後のクランプ動作のために、粘着ローラ12に巻付くフィルムfの先端が、クランプ爪14の突起14a及び粘着ローラ12の回転軸13aを結ぶ直線より、Z軸方向の上方位置となるまで巻付けられる。
【0052】
本実施形態においては、剥離起点部形成動作後から巻付け動作までの時間は、0(s)~60(s)と設定しているが、0(s)~10(s)とすることが好ましい。このように、本実施形態においては、界面における改質効果が維持されている時間内(例えば、スポット照射直後~数秒以内)に、剥離起点部Raにおける剥離を行うことにより、従来のUVランプが有する第2の問題点(剥離動作時における界面の改質効果低下)を解消させることができる。
【0053】
<引上げ動作について>
図5(a)及び図5(b)を用いて、引上げ動作を説明する。この引上げ動作は、後の剥離動作(水平方向)において、剥離ヘッド10が、剥離ステージ20、吸着板21、シートS、及び剥離させたフィルムfと、物理的に干渉することを回避するために行うものである。
【0054】
剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、Z軸方向の上方(矢印IV(9)方向)に移動する。この際、粘着ローラ12は、付勢部材13により、付勢方向(矢印VI(10)方向)に負荷されるとともに、フィルムfの一部が粘着ローラ12に巻付いているため、フィルムfの粘着境界線faと剥離線Pl2との間のフィルムfに引張力が生じる。この引張力により、シートSからフィルムfが新たに剥離され、剥離線Pl1から剥離線Pl2へと移動する。ここで、粘着ローラ12が回転する際に、粘着ローラ12と付勢部材13との間で生じる摩擦力を調整することにより、引上げ動作において、粘着ローラ12が回転することを防止することができる。また、粘着ローラ12へのフィルムfの巻付けにより、フィルムfに対する粘着ローラ12の粘着力を増加させているため、引上げ動作の際に、粘着ローラ12からフィルムfが落下することを防止できる。
【0055】
<クランプ動作について>
図5(c)及び図5(d)を用いて、クランプ動作を説明する。このクランプ動作は、後の剥離動作(水平方向)において、シートSからフィルムfを継続的に剥離させるために行うものである。
【0056】
クランプ爪14が、クランプ爪駆動機構により、近接方向(矢印VIII(11)方向)へと移動する。この際、クランプ爪14の突起14aと、粘着ローラ12との間に、粘着ローラ12の粘着面に巻付いたフィルムfが挟持される。これにより、粘着ローラ12の粘着力に加え、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力により、フィルムfを、粘着ローラ12へとより堅固に支持することができる。
【0057】
<剥離動作(水平方向)について>
図6(a)及び図6(b)を用いて、剥離動作(水平方向)を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、中心位置Aへと、対角線方向L(矢印III(12)方向)に移動する。ここで、剥離ヘッド10が中心位置Aに向かうに伴い、剥離線(Pl2,Pl3))の長さ、つまり、剥離させる領域が増加し、剥離力が比較的大きくなる。したがって、剥離線Pl3を介して、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域とが成す角度β1を、比較的小さな鋭角に設定するとともに、対角線方向L(矢印III(12)方向)への移動速度を、比較的低速(例えば、1(mm/sec)~50(mm/sec))に設定する。これにより、図6(a)に示すように、粘着ローラ12の粘着力及びクランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が生じる方向(略水平方向)と、剥離ヘッド駆動手段によりフィルムfに生じる引張力の方向とを一致させることができ、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することを防ぐとともに、シートSからフィルムfを、確実に剥離させることができる。
【0058】
<剥離動作(斜め上方向)について>
図6(c)及び図6(d)を用いて、剥離動作(斜め上方向)を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、対角線方向L、かつ、Z軸方向の上方である斜め上方向(矢印IX(13)方向)に移動する。ここで、剥離ヘッド10が中心位置Aから終了位置Fに向かうに伴い、剥離線(Pl3,Pl4))の長さ、つまり、剥離させる領域が減少し、剥離力が比較的小さくなる。したがって、剥離線Pl4を介して、フィルムfがシートSに接着されている領域と、剥離された領域とが成す角度β2を、比較的大きな鈍角に設定するとともに、斜め上方向(矢印IX(13)方向)への移動速度を、比較的高速(例えば、10(mm/sec)~100(mm/sec))に設定する。これにより、図6(c)に示すように、粘着ローラ12の粘着力及びクランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が生じる方向(略水平方向)と、剥離ヘッド駆動手段によりフィルムfに生じる引張力の方向とが若干異なっていても、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することなく、シートSからフィルムfを、迅速に剥離させることができる。
【0059】
<剥離終了時について>
図7(a)及び図7(b)を用いて、剥離終了時を説明する。剥離ヘッド10が、剥離ヘッド駆動手段により、終了位置Fに移動する。剥離されたフィルムfは、粘着ローラ12から垂下される。この剥離されたフィルムfは、回収機構(不図示)(例えば、吸盤、ハンドなど)により、吸着又は把持された後、クランプ爪14が、クランプ爪駆動機構により、粘着ローラ12より離間され、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力が解除される。さらに、回収機構が、回収機構駆動手段(不図示)により、回収箱(不図示)の上方へと移動した後、吸着又は把持を解除する。これにより、フィルムfが、粘着ローラ12から剥離され、回収箱へと排出される。その後、剥離ヘッド10は、初期状態である待機位置Dに移動し、他のフィルム付きシートSfに対する剥離工程を行う。
【0060】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、フィルム付きシートSfを固定状態で載置する剥離ステージ20と、剥離ステージ20に載置されたシートSからフィルムfを剥離させる剥離ヘッド10と、を備え、剥離ヘッド10は、フィルム付きシートSfの外周部の一部に対向配置された状態で、シートSとフィルムfとの界面に紫外線をスポット照射して、剥離起点部Raを形成するUV照射手段11と、剥離起点部Raにおけるフィルムfを保持した状態で、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20の相対移動により、シートSからフィルムfを剥離するフィルム保持手段12,14と、を含む剥離機構100である。
【0061】
このように、フィルム付きシートSfの外周部の一部に、紫外線をスポット照射して、剥離起点部Raを形成することにより、UV照射の熱や照度などによる影響を、局所的な領域に限定することができるため、従来のUVランプが有する、シート全体へのUV照射により生じていた第1の問題点(UV照射の熱や照度などによるシートの品質低下)を解消させることができるという効果を奏する。
【0062】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、更に、UV照射手段11は、紫外線をスポット照射するUV-LED11aを備え、UV-LED11aは、紫外線のスポット照射角度を上下方向に調整可能である。
【0063】
このように、フィルム付きシートSfの種類(例えば、色や厚みなど)に応じて、スポット照射角度を調整することにより、シートSとフィルムfとの界面に、紫外線を適切にスポット照射し、界面の改質を確実に生じさせることができるという効果を奏する。また、UV照射手段11では、軽量及び小型化であるUV-LED11aを採用することで、界面における改質効果が維持されている時間内に、剥離起点部Raにおける剥離を行うことにより、従来のUVランプが有する第2の問題点(剥離動作時における界面の改質効果低下)を解消させることができるという効果を奏する。
【0064】
本発明の第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、更に、前記紫外線のスポット照射角度は、水平面に対して、0°から90°まで調整可能である。
【0065】
これにより、フィルムfが紫外線の波長を透過するものに対しては、シートSとフィルムfとの界面の上方より、また、フィルム付きシートSfのフィルムfが紫外線の波長を透過しないものに対しては、シートSとフィルムfとの界面の側方より、紫外線をスポット照射することができるという効果を奏する。
【0066】
本発明の第4の実施の態様は、第1~第3のいずれかの実施の態様において、更に、フィルム保持手段12,14は、剥離ヘッド10に垂下して設けられる付勢部材13と、付勢部材13に回転可能に設けられ、外周面12bの少なくとも一部に粘着面を備える粘着ローラ12と、を有し、粘着ローラ12は、付勢部材13により、粘着面が剥離起点部Raに押圧されるとともに、シートSに対して相対移動することにより、粘着面にフィルムfを巻付けることである。
【0067】
これにより、剥離起点部Raに対して、界面における改質効果が維持されている間に剥離動作を行うことができるため、従来のUVランプが有する第2の問題点(剥離動作時における界面の改質効果低下)を解消させることができるという効果を奏する。
【0068】
本発明の第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、更に、フィルム保持手段12,14は、粘着ローラ12に対向配置され、粘着ローラ12に対して離接方向に移動可能であるクランプ爪14をさらに有し、クランプ爪14は、クランプ爪駆動機構により、粘着ローラ12に近接配置された状態において、粘着ローラ12の粘着面に巻付いたフィルムfを粘着ローラ12との間に挟持することである。
【0069】
このように、クランプ爪14と粘着ローラ12との挟持力により、フィルムfを、粘着ローラ12に対して、より堅固に支持することができるため、剥離動作(水平方向、斜め上方向)の際に、フィルムfが、粘着ローラ12から脱落することを防ぐことができるという効果を奏する。
【0070】
本発明の第6の実施の態様は、第1~第5のいずれかの実施の態様において、更に、フィルム付きシートSfは、略矩形形状を有しており、剥離起点部Raは、フィルム付きシートSfの一つの角部に形成され、剥離ヘッド10及び剥離ステージ20との間に、シートSの対角線方向Lへの相対移動を生じさせて、シートSからフィルムfを剥離させることである。
【0071】
これにより、フィルム付きシートSfの一辺に沿って均一な剥離起点部Raを形成する場合と比べ、剥離起点部Raの形成時間を短縮することができるとともに、シートSからのフィルムfの剥離を剥離線に沿って均一に維持することができるという効果を奏する。
【0072】
本発明の第7の実施の態様は、第1~第6のいずれかの実施の態様に係る剥離機構100を有し、シートSの位置合わせを行うアライメント手段200と、位置合せされたシートSを積層する積層手段300と、を備える、積層装置1である。
【0073】
これにより、品質低下を解消させたシートを用いて、積層体を形成することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0074】
1 積層装置
10 剥離ヘッド
11 UV-LEDモジュール(UV照射手段)
11a UV-LED
11b 回動軸
12 粘着ローラ(フィルム保持手段)
12b 外周面
13 付勢部材
13a 回転軸
14 クランプ爪(フィルム保持手段)
14a 突起
20 剥離ステージ
21 吸着板
22 吸着ポート
100 剥離機構
200 アライメント手段
300 積層手段
f フィルム
fa 粘着境界線
Pl1,Pl2,Pl3,Pl4 剥離線
Ra 剥離起点部
S シート
Sf フィルム付きシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7