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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】増幅方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240913BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/04
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020568683
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 AU2019050590
(87)【国際公開番号】W WO2019237145
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】62/683,415
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/757,634
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509330264
【氏名又は名称】モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】モーレー,アレキサンダー,アラン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/086450(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/005983(WO,A1)
【文献】American Journal of Hematology,1996年,Vol.52,pp.171-177
【文献】Leukemia,1997年,Vol.11,pp.1742-1752
【文献】Advances in Molecular and Cell Biology,1996年,Vol.15B,pp.473-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N 15/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VJ、DJまたはVDJ再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法であって、前記方法が、前記再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とする1種のフォワードプライマー及び1種のリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、
(i)5mMのマグネシウム濃度及び300μMの各ヌクレオチド三リン酸の濃度を使用して推定される場合に、少なくとも67℃のTmを有する、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーのうちの少なくとも1つのプライマー、及び
(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度
を使用して前記核酸試料を増幅すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプライマーが、ASOプライマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ASOプライマーが、フォワードプライマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸領域が、DNA領域である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象とするプライマーが、67~80℃、68~76℃、または69~74℃のTmを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アニーリング温度が、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アニーリング温度が、70℃~83℃、71℃~80℃、70℃~77℃、71℃~77℃、または72℃~75℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプライマーが67℃~80℃のTmを有し、及び/または前記アニーリング温度が70℃~83℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有し、前記アニーリング温度が70℃~78℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有し、前記アニーリング温度が72℃~75℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプライマーが、69℃~72℃のTmを有し、前記アニーリング温度が72℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプライマーが72℃以上のTmを有し、前記アニーリング温度が75℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上のA及び/またはTヌクレオチドが、前記プライマーの3’末端に含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記フォワードまたは前記リバースプライマーのいずれかまたは両方が、前記A及び/またはTヌクレオチドを含むように設計される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リバースプライマーのみが、前記A及び/またはTヌクレオチドを含むように設計される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記プライマーの少なくとも1つが、前記VJ、DJまたはVDJ再編成の少なくとも2つのN遺伝子セグメントとハイブリダイズする、請求項1~15のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項17】
記再編成が、VJまたはDJ再編成である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記VJまたはDJ再編成が、該再編成少なくとも1つのN領域む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
記再編成が、VDJ再編成である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記VDJ再編成が、該再編成内に少なくとも2つのN遺伝子セグメントを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記フォワード及び/または前記リバースプライマーが、3’末端に少なくとも1つのA及び/またはTヌクレオチドを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
遺伝子セグメントを対象とする前記プライマーが、3’末端に少なくとも1つのA及び/またはTヌクレオチドを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物のクローン細胞集団を検出及び/または監視する方法であって、クローン細胞が、VJ、DJまたはVDJ再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を特徴とし、前記方法が、請求項1~22のいずれか1項に記載の増幅方法を実施すること、及び増幅産物を検出することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記方法が、前記VJ、DJまたはVDJ再編成を含むIgまたはTCR核酸領域を特徴とするクローン細胞集団を特徴とする病状を監視するために使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記クローン細胞が、クローンリンパ系細胞の集団である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記病状が、新生物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記新生物が、リンパ系新生物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リンパ系新生物が、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、微小残存病変を監視するために使用される、請求項2328のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸試料が、哺乳動物の核酸試料である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項2330のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、目的の核酸領域を増幅する改良された方法、及びそこで使用されるプライマーに関する。より詳細には、本発明は、2つ以上の免疫グロブリンまたはT細胞受容体遺伝子セグメントの再構成から生じている核酸領域を増幅する改良された方法、及びそこで使用されるプライマーに関する。本発明の方法は、高いTmを示すプライマーを使用して、及び/または高いアニーリング温度を使用して増幅ステップを実施すると、再編成免疫学的もしくはT細胞受容体遺伝子を増幅する先行技術の方法と関連して以前に達成されているよりも高いレベルの感度を可能にする、という判断に基づく。主題のプライマーが再構成遺伝子の少なくとも2つのN領域にハイブリダイズする場合、感度のさらなる改善が達成可能である。特定の免疫学的及びT細胞受容体核酸再構成事象を検出する高感度であるが単純な手段の提供は、特定のV/D/J再構成事象(例えば、白血病における微小残存病変の検出)または目的の免疫学的もしくはT細胞受容体遺伝子領域の分析もしくは同定を特徴とする、限定されないが、クローンリンパ系細胞集団または病態の診断及び/または監視を含む、幅広い用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
本明細書での、任意の先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)、または既知の任意の事項への言及は、その先行出版物(もしくはそれから得られる情報)または既知の事項が、本明細書の取り組みの分野における一般的な共通知識の一部を形成することの承認または容認または任意の形態の示唆ではなく、これらとしてみるべきではない。
【0003】
本明細書での、任意の先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)、または既知の任意の事項への言及は、その先行出版物(もしくはそれから得られる情報)または既知の事項が、本明細書が関連する取り組みの分野における一般的な共通知識の一部を形成することの承認または容認または任意の形態の示唆ではなく、これらとしてみるべきではない。
【0004】
本明細書で著者が言及する出版物の文献詳細は、説明の最後にアルファベット順にまとめられる。
【0005】
クローンは一般に、共通の前駆細胞の子孫である細胞の集団として理解される。対象におけるクローン細胞集団または生物の存在を診断及び/または検出することは一般に、比較的問題のある手順を構成している。具体的には、クローン集団は、細胞または生物のより大きな集団内のわずかな構成要素のみを構成し得る。例えば、哺乳動物生物に関して、クローン細胞集団の検出が必要とされるより一般的な状況の1つは、がんなどの新生物の診断及び/または検出に関して生じる。しかし、1つ以上のクローン集団の検出はまた、骨髄異形成または真性赤血球増加症などの状態の診断において、また、免疫系により生成された抗原駆動クローンの検出に重要であり得る。
【0006】
一般に、クローンが生じる集団は、体の特定の組織または区画内の細胞集団に対応する。それにもかかわらず、そのような細胞集団をサンプリングすることは、細胞または生物の下位群に検査を効果的に狭めるという事実にもかかわらず、これは、それにもかかわらず、クローン集団が同定されなければならない非クローン細胞または生物の大きいバックグラウンド集団内で、臨床医に提示し得る。
【0007】
クローンのメンバーが、DNAの配列の変更などの分子マーカーを特徴とする場合、検出の問題は、全てが、異なる配列を有する大きい分子集団内に同じ分子配列を有する分子集団を検出する問題に変換することが可能であることがあり、全てが類似で異なるか、または多かれ少なかれ異種である。達成することができるマーカー分子の検出のレベルは、検出方法の感度及び特異性に大いに依存するが、ほとんどの場合、より大きな分子集団内の標的分子の割合が小さくなると、より大きな集団からのシグナルノイズは、標的分子からのシグナルを検出することを不可能にする。
【0008】
非常に特異的であるが、検出に関して固有の複雑さを示す特定のクラスの分子マーカーは、遺伝子再構成事象から生じるものである。
【0009】
体細胞における遺伝物質の再構成は、最初は分離しているゲノムの2つ以上の領域を一緒にすることを含む。それは、ランダムなプロセスとして生じ得るが、それは、正常リンパ系細胞の発生プロセスの一部としても生じ得る。
【0010】
がんに関連して、再構成は、単純または複雑であり得る。単純な再構成は、2つの無関係な遺伝子または領域が並置されるものとみなされてもよい。複雑な再構成は、3つ以上の遺伝子または遺伝子セグメントが再構成されるものとみなされ得る。複雑な再構成の典型例は、リンパ系細胞の正常な発育中に起こり且つV、D、及びJ遺伝子セグメントの再構成を伴う免疫グロブリン(Ig)及びT細胞受容体(TCR)可変遺伝子の再編成である。これらの遺伝子セグメントの遺伝子座は、生殖系列で広く分離されるが、リンパ球の発達中の再構成は、V、D、及びJ遺伝子セグメント、またはV及びJ遺伝子セグメントの並置をもたらし、これらの遺伝子セグメント間の接合部は、ヌクレオチドの挿入及び欠失の小さい領域を特徴とする(N及びN領域)。このプロセスは、ランダムに生じ、従って、各正常リンパ球が、再編成される遺伝子及び再編成の性質の両方に応じて、完全なVDJ再編成またはVJもしくはDJ再編成であり得る固有のV(D)J再編成を有するようになる。急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、または骨髄腫などのリンパ性癌が、単一の正常細胞の腫瘍性変化の結果として生じるので、がん細胞は全て、創始細胞に元々存在する接合部V(D)J再編成を、少なくとも元々有するであろう。サブクローンが、腫瘍性集団の膨張中に生じ得、さらに、V(D)J再編成が、それらの中に生じ得る。
【0011】
再構成から生じ且つがんクローンまたはサブクローン中に存在する固有のDNA配列は、治療への応答を監視し、治療法を決定するために使用することができる固有の遺伝子マーカーを提供する。クローンの監視は、PCR、フローサイトメトリー、または次世代配列決定で実施することができる。フローサイトメトリーによる監視は、診断時にがん細胞の免疫表現型を決定すること、ならびにがん細胞を検出及び定量化するために、後続の試料で同じ表現型を調査することを含む。次世代配列決定は、より新しいアプローチであり、この長所及び短所は依然として評価されている。しかし、これも費用のかかる手法である。
【0012】
PCRベースの分析は、その潜在的に高レベルの特異性及び自動化のために、好ましい方法である。PCRによる定量化は従来、診断時に採取した試料からのDNAを使用したマーカー再編成の配列決定、患者固有のプライマーの合成、及び治療中に得られた試料から抽出したDNAのPCRでのこれらのプライマーの使用を含む。通常、2つのプライマーが、再構成部位の片側に配置され、通常、下流プライマーは、J遺伝子セグメントを対象とし、上流プライマー(対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド[ASO]としても知られる)は、再編成の最も可変な領域を対象とする(Bruggemann et al,2004、Pongers-Willemse et al,1999、Nakao et al,2000、van der Velden et al,2002、van der Velden et al,2004、van der Velden et al,2007、van der Velden et al,2009、van der Velden et al,2014、Verhagen et al,2000)。場合により、上流プライマーは、V遺伝子セグメントを対象とし、ASOプライマーは、下流にあり、再編成の最も可変な領域を対象とする。
【0013】
白血病における微小残存病変(MRD)のPCRによる監視は、臨床診療で広く使用されるようになっている。通常、導入治療(約1か月)の終了時及び数サイクルの地固め治療(約80日)後に白血病細胞(MRD)の数を測定することにより、治療を継続または変更するかどうかの決定がなされる。通常、導入終了時のMRDのレベルが、規定されたカットオフレベルを超える場合、治療の強度を増加させる決定がなされてもよい。このカットオフレベルは、グループプロトコールによりわずかに変動するが、通常は、10-3(1/1000)~10-4(1/10,000)の白血病細胞/総細胞である。
【0014】
現在この方法で存在する問題は、偽陽性結果を生じ且つ重要なことに検出及び測定の感度を制限し得る非特異性である。結果として、10-4のレベル未満のMRDを、場合によると検出することができず、多くの場合定量化することができない。これは、2つの結果を有する:
・MRDが検出限界以下の場合、定量化が不可能である。これは、多くの患者の場合である。初期治療に非常によく応答し、且つその後の治療の強度が減少させることができる患者を特定する試みには大きな関心が寄せられている。そのような患者は、非常に低レベルの、例えば、10-6未満のMRDを有することを特徴とすることになるが、検出限界が10-4である場合、10-4~10-6のレベルを有する患者と区別することができない。
・アッセイの確率的変動のために、MRDのレベルが検出限界に近いが、依然としてそれを超える場合、測定の精度は不十分である。
【0015】
非特異性につながる要因は、以下を含む:
・2つのプライマーが結合する配列は固有ではなく、通常はゲノムに存在する配列であり、増幅の特異性は、結合配列を互いに近づける再編成に起因してのみ生じる。
・ある程度の相同性は、V遺伝子ファミリーの異なるメンバー間、及びD遺伝子ファミリーの異なるメンバーの間でも存在する。これは、非白血病性再編成にハイブリダイズする上流プライマーの確率を増加させる。
・非白血病リンパ球の集団における再編成は非常に不均一であり、従って、正常集団の1つ以上の細胞の再編成が、白血病細胞の集団の普遍的な再編成に類似する可能性がある。
【0016】
過去18年間にわたって、非特異的増幅の発生率を最小限に抑えるように試みている多くの先行技術の方法がある。それらは、以下を含む:
・再編成標的遺伝子の異なる領域を標的とする一連の上流プライマーを使用する2ラウンドまたは3ラウンドのネスティッドPCRの実施。これは、非特異性を排除し、高感度アッセイをもたらす(例えば、Morley et al、2009)。しかし、このアプローチは、より複雑であり、PCR産物による環境汚染のリスクがある。
・PCRを次世代配列決定に置き換えること。この手順は、可能性として、10-5までのMRDを、及びおそらく、追加ステップを用いて、10-6までのMRDを測定し得る。しかし、この手順は、特に、高感度が所望される場合、複雑で費用がかかる。
・約60℃のアニーリング温度と組み合わせて、上流のASOプライマーを最大のN領域に、下流のプライマーを生殖細胞系J配列に導くこと(例えば、Bruggemann et al,2004;Pongers-Willemse et al,1999;Nakao et al,2000;van der Velden et al,2002;van der Velden et al,2004;van der Velden et al,2007;van der Velden et al,2009;van der Velden et al,2014;Verhagen et al,2000)。
・単一プライマーがN領域の1つを対象とする単一増幅反応、または、第1の反応が上流のN領域を対象とする単一プライマーを含み、第2の反応が下流のN領域を対象とする単一プライマーを含むネスティッド増幅反応。
・Tmが最大約65℃のプライマーの使用及び/または最大69℃のアニーリング温度の使用(Bruggemann et al,2004、Pongers-Willemse et al,1999、Nakao et al,2000、van der Velden et al,2002、van der Velden et al,2007、van der Velden and van Dongen,2009、van der Velden et al,2014、Verhagen et al,2000)。
・短縮プライマーの使用。
・再編成遺伝子上での配置に関連して、特定の配置特性を示すようにプライマーを設計すること。
【0017】
しかし、これらの方法は、非特異的な増幅を大幅に低減させることができない。約20年にわたり、従来の知見にも関わらず、アニーリング温度を60℃から69℃まで漸増させることは、非特異性のレベルに対してわずかで変わりやすい影響のみを有する(Bruggemann et al,2004;Pongers-Willemse et al,1999;Nakao et al,2000;van der Velden et al,2002;van der Velden et al,2007;van der Velden et al,2009;van der Velden et al,2014;Verhagen et al,2000)。これにより、60℃の推奨値から増加するアニーリング温度の定石の最適化は、所望の効果を生じることができず、種々の先行技術の配置推奨に従って設計された単一の上流のASOプライマーの使用により、非特異的増幅が頻繁に観察される。非特異的増幅は、MRD結果を解釈するための基準が、観察されている非特異性のレベルに、その結果を関連付けることを推奨するような程度まで認められている(van der Velden et al,2007)。
【0018】
従って、単純であり、しかもなお、再編成Ig及びTCR遺伝子の検出との関連で(例えば、MRDとの関連で)、非特異的増幅のレベルの低減により、さらに改善された感度を示す改善された増幅方法を開発する継続的な必要性がある。
【0019】
本発明に至るまでの研究では、高感度のワンラウンドPCRは、Tmが少なくとも67℃及び/またはアニーリング温度が少なくとも70℃のプライマーの使用に基づいて開発されている。これらの条件を組み込むように設計された反応における非特異的増幅の低減は、非常に重要であり、その効果に関して予想外に非線形であり、急性リンパ芽球性白血病または慢性リンパ性白血病患者の治療中に得られた試料においてMRDの定量化を可能にする再現可能な手段を提供することは、現在までに達成できていない。これは、試験されている次第に高くなったアニーリング温度及びプライマーTmの広範な組み合わせに関して、現在までに達成されているごくわずかな改善に照らして考えられる場合、予想外であり、完全に直感に反する。実際に、臨界温度が存在し、それを超えると、特異性の劇的な改善が達成可能であるが、これは、PCR反応の代表的な59℃/60℃のアニーリング温度を超えて次第に10℃の温度増加を超える有意な改善がないので、当業者が想定していなかった。これらの改善は、アニーリング温度が70℃をはるかに超えて増加しても維持される。さらに、プライマーが少なくとも67℃のTmを示すように設計されている場合、これらの結果も達成可能であると結論付けられている。
【0020】
最終的に、本発明者らは、再編成IgまたはTCRの少なくとも2つのN領域にハイブリダイズするように設計されたプライマーの使用がさらに、PCR反応の非特異性を有意に低減すると結論付けている。
【0021】
本方法の開発により、より複雑なマルチプレックスまたはネスティッドPCR反応を実施するニーズ、または別途非常に高価な次世代配列結果を使用するニーズが不要になる。目下、本方法の開発により、T細胞またはB細胞の腫瘍性集団などの特定のIgまたはTCR遺伝子再構成を特徴とするリンパ系細胞のクローン集団の改善された検出及び/または監視が可能になっている。そのような細胞のクローン集団の膨張を特徴とし得る病状を診断及び/または監視する手段も提供される。
【発明の概要】
【0022】
本明細書及び続く特許請求の範囲の全体にわたって、文脈に別途要求のない限り、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変化形は、記載の完全体もしくはステップ、または完全体もしくはステップの群を含むが、他の任意の完全体もしくはステップ、または完全体もしくはステップの群を除外することを意味すると理解されるであろう。
【0023】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲を制限されることはなく、これにより、例示目的のみが意図される。機能的に同等の製品、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本発明の範囲内である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「から由来する」という用語は、特定の完全体または完全体の群が特定された種に由来しているが、必ずしも特定された供給源から直接得られたわけではないことを示すと解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用される場合、「a」、「and」、及び「the」の単数形は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。
【0025】
本明細書は、参考文献の後に本明細書に提示されたプログラムPatentInバージョン3.1を使用して調製されたヌクレオチド配列情報を含有する。各ヌクレオチド配列は、数字見出し<210>、それに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)による配列表で同定される。各ヌクレオチド配列の長さ、配列の種類(DNAなど)、及び供給源生物は、それぞれ数字見出し欄<211>、<212>、及び<213>に提示される情報によって示される。本明細書で言及されるヌクレオチド配列は、見出し、配列番号、それに続く配列識別子(例えば、配列番号1、配列番号2など)により同定される。本明細書で言及される配列識別子は、配列識別子に続く、配列表の数字見出し欄<400>で提示される情報に関連する(例えば、<400>1、<400>2など)。すなわち、本明細書に詳述される配列番号1は、配列表において<400>1として示される配列と相関する。
【0026】
本発明の一態様は、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法に関し、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマーを使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0027】
本発明の別の態様では、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、少なくとも70℃のアニーリング温度を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0028】
さらに別の態様では、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR DNA領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度、を使用して該DNA試料を増幅すること、を含む。
【0029】
一態様では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0030】
別の態様では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0031】
さらに別の態様では、主題のプライマーは、67~80℃のTmを有し、別の実施形態では、68~76℃のTmを有し、さらに別の実施形態では、69~74℃のTmを有する。
【0032】
さらに別の態様では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0033】
それ故、さらに別の態様では、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、(i)67℃~80℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)70℃~83℃のアニーリング温度を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0034】
さらなる態様では、V、D、及びJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントを対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸サンプルを接触させることであって、該プライマーの少なくとも1つが、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントの少なくとも2つのN遺伝子セグメントを対象とするハイブリダイゼーションサブ領域を含む、該接触させること、ならびに、(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0035】
さらに別の態様では、V、D、及びJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントを対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させることであって、該プライマーのうちの少なくとも1つが、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする、該接触させること、ならびに(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度、を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0036】
本発明の別の態様は、哺乳動物のクローン細胞集団を検出及び/または監視する方法を提供し、このクローン細胞が、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を特徴とし、該方法は、以下を含む。
(i)該プライマーと該標的核酸分子との相互作用を促進するのに十分な時間及び条件下で、上記で規定されるフォワード及びリバースプライマーと、哺乳動物に由来する生物学的試料のDNA物質を接触させること、
(ii)核酸標的を増幅すること、ならびに
(iii)増幅産物を検出すること。
【0037】
本発明の上述の態様によれば、一実施形態では、該クローン細胞は、クローンリンパ系細胞の集団である。
【0038】
別の実施形態では、該プライマーの少なくとも1つは、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントの少なくとも2つのN遺伝子セグメントを対象にするハイブリダイゼーションサブ領域を含む。
【0039】
さらに別の実施形態では、該N遺伝子セグメントは、N及びN遺伝子セグメントである。
【0040】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、NDN遺伝子セグメントの再編成N領域にハイブリダイズする。
【0041】
一実施形態では、該核酸は、DNAである。
【0042】
さらなる実施形態では、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする該プライマーは、フォワードプライマーである。
【0043】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0044】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、67℃~80℃のTmを有する。
【0045】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、68~76℃のTmを有する。
【0046】
さらなる実施形態では、該プライマーは、69~73℃のTmを有する。
【0047】
別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0048】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~83℃である。
【0049】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~80℃である。
【0050】
さらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~77℃である。
【0051】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~77℃である。
【0052】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0053】
別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0054】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~78℃である。
【0055】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらに別のさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0056】
ASOプライマーが69℃~72℃のTmを有するさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃である。
【0057】
ASOプライマーのTmが72℃以上であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、75℃である。
【0058】
さらに別の態様では、該状態は、新生物、好ましくは、リンパ性新生物である。
【0059】
別の態様では、本発明の方法は、リンパ性白血病との関連で微小残存病変を検出するために使用される。
【0060】
本発明のさらに別の態様は、上述のような単離プライマーに関する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】様々なアニーリング温度にわたって、プライマーの機能及び非特異性を試験する表形式表現を提供する。3つのプライマーを試験し、それらの配列及びTm推定値が示される。最初の行では、D0は、それぞれ400pgの白血病DNAを含有する2つのウェルを指し、Pblは、それぞれ500ngの非白血病DNAを含有する2つのウェルを指す。2行目では、アニーリング温度が示される。3行目では、平均Ct値が示される。NAは、増幅を示さない。シングル1及びシングル2が十分に増幅し、全てのアニーリング温度で、全く非特異性を生じない。シングル3は、75のアニーリング温度で次善の増幅を示し、1つのウェルは、69.4のアニーリング温度で非特異的増幅を示す。
図2】非特異性対アニーリング温度のグラフ表示である。5人の患者由来の2μgの非白血病DNA及びプライマーペアを使用して、PCRを実施した。これらのプライマーは、低温で一部の非特異性を示したので、試験のために選択した。非特異性の量は、Ct値に反比例する。各場合では、非特異性の量は、アニーリング温度が、70℃を超えるまで、ほぼ同じままであった。次に、漸減し、最終的にはプライマーペアのうちの4つでは検出することができなかった。
図3】MRD観測値対MRD予測値のグラフ表示である。白血病性DNA及び非白血病性DNAを種々の既知の比率で混合して、様々なレベルのMRDを含有する人工試料を得る。各試料からの30μgのDNAを分析し、観察されたMRDのレベルを図で予測値に関連する。DNAのこの量の分析では、MRDの検出の限界が、10-6未満であることに留意すべきである。ALLは、急性リンパ芽球性白血病の患者由来のDNAを指し、CLLは、慢性リンパ性白血病患者由来のDNAを指す。
図4】急性リンパ芽球性白血病患者の血液サンプル中のMRDレベルのグラフ表示である。10-6未満のレベルを検出し、測定した。MRDが検出されなかった試料も示され、MRDのレベルは、示された値より小さかった。これらの陰性試料に示されている異なる値は、アッセイに利用可能であった試料DNAの異なる量を反映する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、部分的に、再編成IgまたはTCR遺伝子を特徴とするクローン細胞集団を検出するための単純なさらに高感度の増幅方法の開発に基づいている。プライマー、特に、Tmもしくは少なくとも67℃のASOプライマー、及び/または70℃以上のアニーリング温度のいずれかを使用すると、予想外に高感度のシングルラウンドPCRの開発が可能になっている。さらに、目的の完全または部分的に再構成IgまたはTCR遺伝子の少なくとも2つのN領域にハイブリダイズするプライマーの使用は、増幅反応の感度及び特異性のさらなる改善を容易にする。目下、本方法の開発により、特に、既知のIgまたはTCR遺伝子再編成を発現するクローン細胞集団などの細胞の存在を特徴とする状態を検出または監視することとの関連で、目的の特定のIgまたはTCR遺伝子再編成の検出が容易になっている。本発明の方法及びプライマーは、高レベルの感度及び特異性を必要とする微小残存病変の検出に関して特定の用途を見出し、これは現在一般に、非常に複雑で高価な分子手法の適用によってのみ達成可能である。
【0063】
従って、本発明の一態様は、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法に関し、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマーを使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0064】
一実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0065】
本発明の別の態様では、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、少なくとも70℃のアニーリング温度を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0066】
別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0067】
ロックされた核酸または架橋核酸または他の修飾などのヌクレオチド修飾の効果もまた、Tmの推定に組み込まれる必要がある。
【0068】
「IgまたはTCR核酸領域」への言及は、増幅されるように求められるIgまたはTCR DNAまたはRNAの任意の領域への言及として理解されるべきである。該核酸領域は、部分的に再編成された遺伝子または完全に再編成された遺伝子に対応し得る。
【0069】
「核酸」または「ヌクレオチド」への言及は、デオキシリボ核酸またはヌクレオチドとリボ核酸またはヌクレオチドまたはその誘導体もしくはアナログの両方への言及として理解されるべきである。この点に関して、とりわけDNA(cDNAもしくはゲノムDNA)、RNAまたはmRNAを含む、リボヌクレオチド及び/またはデオキシリボヌクレオチドのリン酸エステルを包含することが理解されるべきである。本発明の核酸分子は、天然に存在するもの(例えば、生物学的試料に由来するであろう)、再構成産生されるもの、または合成的に産生されるものを含む任意の起源のものであり得る。核酸はまた、イノシンなどの非標準ヌクレオチドであってもよい。
【0070】
「誘導体」への言及は、天然、合成、または再構成供給源の該核酸分子のフラグメント、部分、一部、相同体、及び模倣物への言及を含むと理解されるべきである。「機能的誘導体」は、ヌクレオチドまたは核酸分子の機能的誘導体のうちのいずれか1つ以上を示す誘導体として理解されるべきである。該ヌクレオチドまたは核酸配列の誘導体は、他のタンパク性または非タンパク性分子に融合しているヌクレオチドまたは核酸分子の特定の領域を有するフラグメントを含む。本明細書で企図される「アナログ」は、ヌクレオチドまたは核酸分子への改変、例えば、その化学的組成または全体的な立体配座への改変を含むが、これらに限定されない。これは、例えば、ヌクレオチドまたは核酸分子が、例えば、骨格形成または相補的塩基対ハイブリダイゼーションのレベルの、他のヌクレオチドまたは核酸分子と相互作用する方法に対する改変を含む。ヌクレオチドまたは核酸分子のビオチン化は、本明細書で記載される「機能的誘導体」の例である。核酸分子の誘導体は、単一または複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/または付加に由来し得る。「機能的誘導体」という用語はまた、ヌクレオチドまたは核酸配列、例えば、天然の産物スクリーニング後に得られた産物の機能的活性のいずれか1つ以上を示すヌクレオチドまたは核酸を包含することが理解されるべきである。
【0071】
主題の「核酸」領域は、DNAもしくはRNAまたはそれらの誘導体もしくはアナログであり得る。目的の領域が、タンパク質性分子をコードするDNA配列であるので、それは、ゲノムDNA、mRNA転写産物から生成されたcDNA、または核酸増幅により生成されたDNAの形をとってもよい。主題の方法がRNAの領域を検出することに関する場合、例えば、RT-PCRを使用して、最初にRNAをDNAに逆転写することが必要であることが理解されるだろう。主題のRNAは、mRNA、1次RNA転写物、リボソームRNA、転移RNA、マイクロRNAなどの任意の形態のRNAであってよい。好ましくは、目的の該核酸領域は、目的のDNA領域である。この目的のために、該DNAは、最終的に分析の対象となるRNAからの逆転写により生成されたDNA、及びPCRなどの核酸増幅方法により生成されたDNAを含む。
【0072】
増幅の対象である核酸領域は、V、D、またはJ遺伝子セグメントのうちの2つ以上の再編成を受けているIgまたはTCR核酸領域である。従って、目的の主題の核酸領域は、部分的または完全再編成遺伝子のいずれかに対応し得る。以下でより詳細に考察されるように、Ig及びTCR再編成は、一連の連続的な再編成として生じ、これにより、最後のステップで、定常領域遺伝子に結合するように再編成される完全に再編成された可変領域がもたらされる。本発明の方法は、クローンリンパ系細胞が分化を停止し得る点に応じて、部分的に再編成された遺伝子の全部または一部が増幅してもよい。
【0073】
一実施形態では、該標的核酸領域は、DNAである。
【0074】
本実施形態によれば、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR DNA領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度、を使用して該DNA試料を増幅すること、を含む。
【0075】
別の実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0076】
さらに別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0077】
本発明の方法は、フォワード及びリバースプライマーと、試験されるべき核酸試料を接触させることにより達成される。「プライマー」または「オリゴヌクレオチドプライマー」への言及は、ヌクレオチドの配列、またはその機能的誘導体もしくはアナログを含む任意の分子への言及として理解されるべきであり、その機能は、目的の核酸分子の領域へのハイブリダイゼーションを含む。プライマーは、1つ以上のロックされた核酸を含有してもよい。プライマーが非核酸成分を含み得ることも理解されるべきである。例えば、プライマーはまた、蛍光もしくは酵素タグなどの非核酸タグ、またはプローブとしての分子の使用を容易にするか、もしくは別途検出または固定化を容易にする他の一部の非核酸成分を含んでもよい。プライマーはまた、オリゴヌクレオチドタグなどの追加の核酸成分を含んでもよい。別の例では、プライマーは、核酸の側鎖を示すペプチド骨格を含むタンパク質核酸であってよい。好ましくは、該オリゴヌクレオチドプライマーは、DNAプライマーである。本発明のプライマーは、再編成IgまたはTCR核酸を「対象とする」。「対象とする」は、プライマーが、増幅されるように求められる再編成IgまたはTCR核酸領域に、部分的または全体的にハイブリダイズするように設計されることを意味する。
【0078】
本発明をいかなる1つの理論または作用様式にも限定することなく、適応免疫系を有する生物におけるV(D)J再構成は、免疫細胞が、新しい病原体を認識して、それに適応するように急速に多様化するのを助ける一種の部位特異的遺伝子再構成の例である。各リンパ系細胞は、約1016の異なる可変領域構造の総抗原多様性を生じるために、再編成された特定の遺伝子セグメントに応じて、生殖細胞系列可変領域遺伝子セグメント(V及びJ、D及びJ、またはV、D、及びJセグメントのいずれか)の体細胞再構成を受ける。T細胞またはB細胞などの任意の所与のリンパ系細胞では、少なくとも2つの異なる可変領域遺伝子セグメント再編成が、TCRまたは免疫グロブリン分子を含む2つの鎖、具体的には、TCRのα、β、γもしくはδ鎖及び/または免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖のうちの2つ以上の再編成に起因して起こる可能性がある。任意の所与の免疫グロブリンまたはTCR遺伝子のVJ、DJ、またはVDJセグメントの再編成に加えて、ヌクレオチドが、ランダムに除去及び/またはセグメント間の接合部に挿入される。これにより、膨大な多様性の生成がもたらされる。
【0079】
これらの遺伝子セグメントの遺伝子座は、生殖細胞系列で広く分離されるが、リンパ球の発育中の再構成により、V、(D)、及びJ遺伝子が並置され、これらの遺伝子間の接合部は、ヌクレオチドの挿入及び欠失の小さな領域を特徴とする。このプロセスは、各正常リンパ球が固有のV(D)J再編成を有するようになるようにランダムに生じる。急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、または骨髄腫などのリンパ性癌が、単一の正常細胞の腫瘍性変化の結果として生じるので、がん細胞は全て、創始細胞に元々存在する接合部V(D)J再編成を、少なくとも元々有するであろう。サブクローンが、腫瘍性集団の膨張中に生じ得、さらに、V(D)J再編成が、それらの中に生じ得る。
【0080】
「遺伝子セグメント」への言及は、免疫グロブリン及びT細胞受容体遺伝子のV、D、及びJ領域への言及として理解されるべきである。V、D、及びJ遺伝子セグメントは、ファミリーにクラスター化される。例えば、κ免疫グロブリン軽鎖の52の異なる機能的V遺伝子セグメント及び5つのJ遺伝子セグメントがある。免疫グロブリン重鎖では、55の機能的V遺伝子セグメント、23の機能的D遺伝子セグメント、及び6つのJ遺伝子セグメントがある。免疫グロブリンならびにT細胞受容体のV、D、及びJ遺伝子セグメントファミリーの全体にわたって、多数の個別の遺伝子セグメントがあり、それにより、影響を受けることができるV(D)J再編成の固有の組み合わせに関する膨大な多様性が可能になる。明確にするために、再編成免疫グロブリンまたはT細胞受容体[V(D)J]可変核酸領域は、本明細書では「遺伝子」と呼ばれ、個々のV、D、またはJ核酸領域は、「遺伝子セグメント」と呼ばれる。従って、「遺伝子セグメント」という用語は、もっぱら遺伝子のセグメントへの言及ではない。むしろ、Ig及びTCR遺伝子再編成の文脈では、それは、これらの遺伝子セグメントがファミリーにクラスター化されることの関連での遺伝子への言及である。「再編成」免疫グロブリンまたはT細胞受容体可変領域遺伝子は、本明細書では、(Dセグメントが、問題の特定の再編成可変遺伝子に組み込まれる場合)1つのVセグメント、1つのJセグメント、及び1つのDセグメントのうちの2つ以上が、単一の再編成「遺伝子」を形成するように、一緒にスプライシングされている遺伝子として理解されるべきである。実際には、この再編成「遺伝子」は実際に、一緒にスプライシングされている1つのV遺伝子セグメント、1つのJ遺伝子セグメント、及び1つのD遺伝子セグメントを含むゲノムDNAのストレッチである。それ故、実際には、一緒にスプライシングされている2つまたは3つの異なるV、D、またはJ遺伝子(本明細書では遺伝子セグメントと呼ばれる)で実際構成されるので、「遺伝子領域」とも呼ばれる場合がある(但し、本明細書の文脈ではない)。従って、再編成免疫グロブリンまたはT細胞受容体遺伝子の個々の「遺伝子セグメント」は、個々のV、D、及びJ遺伝子として記載される。これらの遺伝子は、IMGTデータベースで詳細に説明される。「遺伝子」という用語は、本明細書では、再編成免疫グロブリンまたはT細胞受容体可変遺伝子を指すように使用される。「遺伝子セグメント」という用語は、本明細書では、V、D、J及びフレームワーク3領域を指すように使用されるであろう。しかし、免疫グロブリン及びT細胞受容体再編成に関して、「遺伝子」/「遺伝子セグメント」という文言の使用はかなりの不整合性があるという点に留意すべきである。例えば、IMGTは、個々のV、D、及びJ「遺伝子」に言及するが、一部の科学出版物は、これらを「遺伝子セグメント」と呼ぶ。再編成可変免疫グロブリンまたはT細胞受容体を「遺伝子領域」と呼ぶ供給元もいれば、「遺伝子」と呼ぶ供給元もいる。本明細書で使用される命名法は、上記のとおりである。
【0081】
さらに、本発明をいかなる1つの理論または作用様式にも限定することなく、遺伝子再構成事象の性質は、再構成遺伝子または遺伝子セグメント(本明細書で記載される)間の接合部が、「N領域」の形成をもたらすランダムヌクレオチドの欠失及び挿入を特徴とし得るようなものである。これらのN領域もまた独特であり、従って、本発明のプライマーの設計に関連して有用な標的である。この点に関しては、本発明のプライマーのサブ領域に関して、それらが結合する遺伝子/遺伝子セグメントと比較して、本文書中で考察することを単純化するために、これらのN領域は、それらが別個の遺伝子セグメントとして染色体に存在せず且つ再構成部位でのヌクレオチドの挿入及び欠失による再編成時にのみ生成されるという事実にもかかわらず、代替的に本発明の文脈では「遺伝子セグメント」と呼ばれてもよい。これらをN遺伝子セグメントまたはN領域と呼ぶという選択は、明確にするために、この文書の任意の所与のセクションの文言を単純化することに純粋に基づいて行われる。従って、特に、V(D)J再編成との関連で、分析の対象となり得る遺伝子セグメントは、個々のV、N、D、N、及びJ領域、ならびにフレームワーク3遺伝子セグメントである。本文脈中、V及びD遺伝子セグメント間のN遺伝子セグメントは、Nと呼ばれ、D及びJ遺伝子セグメント間のN遺伝子セグメントは、Nと呼ばれる。しかし、N領域(または「遺伝子セグメント」)が、V、D、またはJ遺伝子セグメント内で生じ得ることも理解されるべきである。本発明を作用様式のいかなる1つの理論にも限定することなく、これは、J遺伝子セグメントとの再編成中に、D遺伝子セグメント内の1つ以上のN領域の形成を受けることができるD遺伝子セグメントとの関連で最も一般に観察される。従って、完全再編成VDJ領域は一般に常に、N1及びN2遺伝子セグメントを含むであろうが、それは、例えば、V、D、もしくはJ遺伝子セグメント内に、または再編成J遺伝子セグメント及び定常遺伝子の接合部にさえも、付加的なN領域も含んでもよく、この最終的な再編成は通常、VDJ再編成の終了後に生じる。
【0082】
「フォワードプライマー」(または「上流プライマー」または「ASOプライマー」)への言及は、標的DNAのアンチセンス鎖及び他のプライマーの5’にハイブリダイズすることにより、目的の核酸(例えば、DNA)試料中の標的核酸(例えば、DNA)を増幅するプライマーへの言及として理解されるべきである。
【0083】
「リバースプライマー」(または「下流ムプライマー」)への言及は、標的核酸(例えば、DNA)のセンス鎖に、または他のプライマーの3’にハイブリダイズすることにより、目的の核酸(例えば、DNA)試料中の且つPCRでの標的核酸(例えば、DNA)を増幅するプライマーへの言及として理解されるべきである。
【0084】
本発明での使用に適するプライマーを設計及び合成するための手段は、当業者らに周知であろう。上述のように、V、D、及びJ遺伝子セグメントファミリーは、完全に同定及び配列決定されている。従って、特定のセグメントまたは再編成セグメントの組み合わせを増幅するためのプライマーの設計は、十分に当業者の技術の範囲内である。それにもかかわらず、本明細書で使用されるTm値を示すプライマーの合成及び試験に関する実質的な例示は、実施例2にも提供される。
【0085】
Tmに関連して、当業者により理解されるように、これは、プライマーの融解温度及びプライマーがその正確な補体に50%ハイブリダイズされる温度への言及である。本発明をいずれか1つの理論または作用様式に限定することなく、プライマーのその補体へのハイブリダイゼーションは、プライマーオリゴヌクレオチドの長さ及び配列、ヌクレオチド修飾の存在、オリゴヌクレオチド及びその補体の濃度、種々の塩、特に、マグネシウムの濃度、ならびにハイブリダイゼーションに影響を与える種々の化学物質、例えば、ホルムアミドまたはジメチルスルホキシドの存在を含む多くの要因により影響を受ける。実際には、プライマーのTmは通常、使用条件下で実際に測定されるのではなく、ソフトウェアプログラムを使用して推定または予測される。本発明の一実施形態では、Tm値は、実際の測定値ではなく、推定値または予測値である。例えば、プライマーのTm値は、IDT(http://sg.idtdna.com/calc/analyzer)により提供されるOligoAnalyzer3.1プログラムを使用して推定されてもよい。さらなる例示は、実施例1及び2に提供される。しかし、特定の具体的なTmパラメーターを満たすために必要とされるプライマーの設計及び合成は、当業者らに周知であろう。
【0086】
本発明をいかなる方法でも限定することなく、本明細書に例示される本発明の実施形態に関して、Tm値は、実際の測定値ではなく、推定値または予測値である。本発明では、プライマーTm値は、5mMのマグネシウム濃度及び300μMの各ヌクレオチド三リン酸の濃度を使用して、IDTにより提供されるOligoAnalyzer3.1プログラムを使用して推定されている。ウェブサイトに示されるOligoAnalyzer3.1プログラムの設定、前提条件、及び制限は、実施例1に記述される。異なる塩もしくはオリゴヌクレオチド濃度の使用、または種々のオリゴヌクレオチド修飾、またはOligoAnalyzer3.1とは異なるプログラムを使用した計算が、OligoAnalyzer3.1プログラムによって与えられるものとは異なるTm予測値を与え得ることを、当業者は認識しているであろう。しかし、本発明で使用するために、予測Tmは、5mMのマグネシウム濃度及び300μMの各ヌクレオチド三リン酸の濃度を使用して、OligoAnalyzer3.1プログラム(または同様の結果を提供するプログラム)により提供されるものに変換することができる。ロックされた核酸または架橋核酸または他の修飾などのヌクレオチド修飾の効果もまた、Tmの推定に組み込まれる。
【0087】
上述のように、67℃以上のTm及び/または少なくとも70℃のアニーリング温度を用いて、少なくとも1つのプライマー、好ましくは、ASOプライマーのいずれかを使用して増幅反応を実施することにより、増幅感度の予想外の大幅な改善を達成することができ、これは、アニーリング温度が代表的な60℃から69℃まで増加するにつれて、非特異性のごくわずかな減少を示す先行技術の調査に基づいて、完全に直感に反しており、結果として生じる少ない改善は、MRDの測定などの臨床目的には不十分であると結論付けられている。この点に関しては、「アニーリング温度」への言及は、標的核酸領域(テンプレート)へのプライマーのハイブリダイゼーションが起こる増幅段階の温度への言及として理解されるべきである。
【0088】
従って、一実施形態では、主題のプライマーは、67~80℃のTm、別の実施形態では、68~76℃のTm、さらに別の実施形態では、69~74℃のTmを有する。
【0089】
別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0090】
それ故、本実施形態によると、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、(i)67℃~80℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)70℃~83℃のアニーリング温度を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0091】
一実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、68℃~76℃のTmを有する。
【0092】
別の実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、69℃~73℃のTmを有する。
【0093】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0094】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~80℃である。
【0095】
さらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~77℃である。
【0096】
さらに別のさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~77℃である。
【0097】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0098】
アニーリング温度は、ASOプライマーなどの、使用のために選択されるプライマーのTmに最適化され得ることが、当業者により理解されるであろう。互いに比較してTm及びアニーリング温度を最適化するための手段はまた、十分に当業者の能力の範囲内であることが理解されるであろう。この点に関しては、フォワード及びリバースプライマーが異なるハイブリダイゼーション特異性を示し得、例えば、通常下流(リバース)プライマーである他のプライマーと比較したASOプライマーであるが、2つのプライマーのTmは、幾分異なり得る。この場合、Tm最適化は、好ましくは、ASOプライマーと比較して計算され、これは通常、フォワードプライマーである。それ故、様々な異なるASOフォワードプライマーと一緒に利用され得るリバースプライマーは、様々なアニーリング温度で機能するように設計されるべきである。例えば、69℃のTmは、70℃~73℃の範囲のアニーリング温度などの様々なアニーリング温度に適し得る。当業者には周知であるが、所与のTmを有するプライマーの適切なアニーリング温度を選択することに関する教示が実施例2に提供される。
【0099】
該ASOプライマーTmが69℃~72℃であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃である。
【0100】
該ASOプライマーのTmが72℃以上であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、75℃である。
【0101】
上記で詳述されるように、フォワードプライマーは通常、ASOプライマーであり、IgHまたはTCR再編成の最も可変な領域を対象とし、リバースプライマーは、IgHまたはTCR遺伝子の下流の遺伝子セグメントを対象とする。本発明によってもたらされる感度の改善が非特異性の低減からもたらされるので、非特異性を最小限に抑えるために、下流の遺伝子セグメントに対するプライマーを設計することが有利である。従って、別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とするプライマーは、67℃以上のTmを有し、及び/または70℃以上のアニーリング温度で使用される。
【0102】
さらなる実施形態では、当業者は、最適なハイブリダイゼーションをさらに可能にするために、例えば、プライマーの3’末端に1つ以上のA及び/またはTヌクレオチドを挿入することにより、プライマーを設計及び合成しようとしてもよい。例えば、フォワードまたはリバースプライマーのいずれかまたは両方の3’に少なくとも1つのAまたはTプライマーが含まれてもよい。別の例では、該AまたはTヌクレオチドは、リバースプライマーのみの3’末端、Jプライマーの3’末端、または表1に開示されるJプライマーのいずれかに含まれる。
【0103】
上述のように、プライマーが、再編成IgまたはTCR遺伝子の少なくとも2つのN領域(本明細書では、代わりに「遺伝子セグメント」とも呼ばれる)にハイブリダイズするように設計される場合、さらに別の感度を達成することができる。当業者であれば、完全なIg重鎖遺伝子再編成または完全なTCRβ鎖遺伝子再編成(ともにVDJ再編成を含む)が、2つのN領域(N1及びN2)を含むだけでなく、部分的再編成が、V、D、またはJ遺伝子セグメントのうちの1つ以上が再編成プロセス中に形成される内部N領域を示す場合、2つ以上のN領域も含み得ることを理解するであろう。例えば、Ig軽鎖及びTCRα鎖は、VJ再編成のみを含むが、IgH鎖及びTCRβ鎖の部分的DJ再編成は、DJ再構成によるV遺伝子セグメントの再編成が完了する前に生じる。従って、VDJ再編成は、2つのN領域(場合により、V、D、またはJ遺伝子セグメント内のN領域が生成される場合は3つ以上)を生じることになり、これらは、VNDNJとして構成され、Ig軽鎖、TCRα鎖、または一時的な部分的な再編成により、VNJまたはDNJなどの唯一のN領域を生じ得る。しかし、部分的に再編成V、D、またはJ遺伝子セグメントは、V、D、またはJ遺伝子セグメント内にN領域を得ている場合は、少なくとも2つのN領域が存在するので、本発明の本実施形態の方法を利用することができる。VJまたはDJ再編成のみを含み且つ唯一のN領域を含む再編成に関して、本発明の感度の改善は、本明細書に記載のアニーリング温度及び/またはTmの適用に基づいて達成される。これは、例えば、D遺伝子を含有しない遺伝子座、例えば、IGκ及びTCRγに適用してもよく、再編成は、V及びJ遺伝子のみを含む。これは、VJまたはDJ構造及び唯一のN領域を有し得る「部分的な」再編成のみが存在するIGHまたはTCRβ遺伝子の再編成にも適用し得る。
【0104】
従って、さらに別の実施形態では、V、D、及びJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントを対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸サンプルを接触させることであって、該プライマーの少なくとも1つが、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントの少なくとも2つのN遺伝子セグメントを対象とするハイブリダイゼーションサブ領域を含む、該該接触させること、ならびに、(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度、を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0105】
一実施形態では、該N遺伝子セグメントは、N及びN遺伝子セグメントである。
【0106】
別の実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、NDN遺伝子セグメントの再編成N領域にハイブリダイズする。
【0107】
別の実施形態では、該核酸は、DNAである。
【0108】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0109】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、67℃~80℃のTmを有する。
【0110】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、68~76℃のTmを有する。
【0111】
さらなる実施形態では、該プライマーは、69~73℃のTmを有する。
【0112】
別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0113】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~83℃である。
【0114】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~80℃である。
【0115】
さらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~77℃である。
【0116】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~77℃である。
【0117】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0118】
さらに別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0119】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~78℃である。
【0120】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらに別のさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0121】
ASOプライマーが69℃~72℃のTmを有するさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃である。
【0122】
ASOプライマーのTmが72℃以上であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、75℃である。
【0123】
さらに別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とするプライマーは、少なくとも67℃のTmを有し、及び/または少なくとも70℃のアニーリング温度で使用される。
【0124】
別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とする該プライマーは、Jセグメントを対象とする。
【0125】
本明細書で上述したように、本発明の本実施形態との関連で、プライマーは、少なくとも2つのN遺伝子セグメント、例えば、完全再編成VDJ遺伝子のD遺伝子セグメントの5’のN遺伝子セグメント、D遺伝子セグメントの3’のN遺伝子セグメント、または再編成V、D、もしくはJ遺伝子セグメント内に形成され得るN領域(遺伝子セグメント)にハイブリダイズするように、プライマーの設計により改善された感度を達成する。この点に関しては、フォワードまたはリバースプライマーのうちの少なくとも1つが、少なくとも2つのN遺伝子セグメントにハイブリダイズする場合に、本発明の本実施形態の改善された感度が達成されることが理解されるべきである。好ましい実施形態では、2つのN遺伝子セグメントにハイブリダイズするのは、フォワード(ASO)プライマーである。本実施形態では、リバースプライマーは、J遺伝子セグメントなどの下流遺伝子セグメントにハイブリダイズしてもよく、必ずしも患者特異的である必要はない。別の実施形態では、少なくとも2つのN遺伝子セグメントにハイブリダイズするのは、リバースプライマーである。
【0126】
本発明のプライマーの設計は、2つのN遺伝子セグメント間でハイブリダイズするために、プライマーが、目的の再構成遺伝子の少なくとも3つの連続遺伝子セグメント間でハイブリダイズしなければならないようなものであり、これらの3つの連続遺伝子セグメントの5’及び3’遺伝子セグメントがN領域である。従って、プライマーは、それぞれ目的の再構成遺伝子の3つの連続遺伝子セグメントのうちの1つにハイブリダイズするように設計される3つのサブ領域を含むように、構成され、このうちの2つがN遺伝子セグメントである。「連続的」とは、3つの遺伝子セグメントが、好ましくは、線形配置で互いに直接隣接するように再構成されていることを意味する。この点に関しては、3つの再構成及び連続した遺伝子セグメントにハイブリダイズするプライマーの3つのサブ領域のそれぞれが互いに作動可能に連結されて単一のプライマーを形成すると理解すべきである。
【0127】
プライマーサブ領域は、長さに関して同じであっても異なっていてもよい。これらのオリゴヌクレオチドのサブ領域のそれぞれの長さ及びそれらが対象とされる特定の遺伝子セグメント標的に依存して、それらは排他的にただ1つの遺伝子セグメントの全部もしくは一部にハイブリダイズし得るか、または、それらが多数の遺伝子セグメントのそれぞれの全部もしくは一部にハイブリダイズし得ると理解すべきである。概念的には、部分的再編成(DNJまたはVNJ)のプライマーは、以下の再編成遺伝子セグメント標的:DN、NJ、DNJ、VN、NJ、VNJのうちの1つにハイブリダイズするように設計されてもよい。但し、少なくとも1つの他のN領域は、関連するV、D、またはJ遺伝子セグメント内にみられ、その結果、それにより、プライマーが2つのN領域にハイブリダイズしている。同様に、完全なVNDNJ再編成へのプライマーは、例えば、以下の再編成遺伝子セグメント標的:VN、ND、VND、NDN、VNDN、NDNJ、VNDNJ、N、DN、NJ、DNJのうちの1つにハイブリダイズするように設計されてもよい。但し、プライマーが、N1またはN2遺伝子セグメントの1つのみを対象とする場合、標的とされる第2のN領域は、関連するV、D、またはJ遺伝子セグメントのうちの1つにみられ、その結果、それにより、プライマーが2つのN領域にハイブリダイズしている。
【0128】
理解されるように、プライマーが2つのN遺伝子セグメントにハイブリダイズするように設計される場合、プライマーは、2つのN遺伝子セグメントに介在する遺伝子セグメントの全長に及ぶであろう。通常の状況は、VDJ再編成であり、介在する遺伝子セグメントは通常、D遺伝子セグメントである。D遺伝子セグメントの長さに起因して、D遺伝子セグメントの全長にわたってハイブリダイズするプライマーを設計することは、N遺伝子セグメントが通常比較的短いので、D遺伝子セグメントにハイブリダイズするプライマーのサブ領域は、プライマーの最も長いサブ領域を表す可能性が高いという事実のために、特異性の喪失をもたらし得ることが、当業者により理解されるであろう。それ故、プライマーのハイブリダイゼーションのほとんどが、D遺伝子セグメントへの相補性により決定されるので、N遺伝子セグメントの特異性が損なわれ得る。目的の特定のD遺伝子セグメントが、未再編成遺伝子に加えて、他の多くのVDJ再編成組み合わせにみられる可能性があり、それ故、それは、まさに目的の細胞以外の多くの異なる細胞で検出可能であろう。これは、重大な偽陽性結果をもたらし得る。この非特異的結合の発生率を低減させるためには、特異性を低減させるために、D遺伝子セグメントにハイブリダイズするプライマーのサブ領域に修飾を施すことができる。これを達成する方法は、以下を含むが、これらに限定されない:
(i)D遺伝子セグメント(または特異性を低減させることが試みられる他の遺伝子セグメント)にハイブリダイズするように設計されるプライマーのサブ領域への、オリゴヌクレオチドのそのサブ領域のD遺伝子セグメントへのハイブリダイゼーションを減少させるための、1つ以上のスペーサーまたはリンカーの導入。
(ii)D遺伝子セグメントなどの遺伝子セグメントにハイブリダイズするように設計されたプライマーのサブ領域内のいくつかのヌクレオチド位置で、単一のヌクレオチドの付加が、4つの核酸塩基全ての等モル混合物(N混合物と呼ばれる)からランダムに選択されたヌクレオチドの付加により置き換えられるようなプライマーの合成。これは、置換位置での増幅の各ラウンドで、テンプレートヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドヌクレオチド間の適切な結合の確率が4分の1しかないので、オリゴヌクレオチドプライマーの全体的なハイブリダイゼーションに対するこれらの位置での水素結合の寄与を大幅に低減させる。ランダム性の低いN混合物、例えば、A/Tのみを使用すると、効果は低くなる。
本発明をいかなる1つの理論または作用様式にも限定することなく、長い遺伝子セグメントを対象とするプライマーサブ領域の約4塩基毎または3~7隣接ヌクレオチドのストリングのいずれかをN混合物で修飾すると、プライマー機能を失うことなく、特異性の十分な低減が達成され得ると結論付けられている。この問題がD遺伝子セグメントの言及により例示されるが、この問題は、2つのN領域に介在する他の長い遺伝子または遺伝子セグメント配列に等しく当てはまることを、当業者は理解するであろう。
【0129】
従って、さらに別の実施形態では、V、D、及びJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法が提供され、該方法は、該再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントを対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させることであって、該プライマーのうちの少なくとも1つが、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする、該接触させること、ならびに(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー及び/または(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度、を使用して該核酸試料を増幅すること、を含む。
【0130】
一実施形態では、該核酸は、DNAである。
【0131】
さらなる実施形態では、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする該プライマーは、フォワードプライマーである。
【0132】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0133】
さらに別のさらなる実施形態では、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする該フォワードプライマーは、N混合物で置換される1つ以上のヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、該プライマーは、67℃~80℃のTmを有する。
【0134】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、68~76℃のTmを有する。
【0135】
さらなる実施形態では、該プライマーは、69~73℃のTmを有する。
【0136】
別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0137】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~83℃である。
【0138】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~80℃である。
【0139】
さらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~77℃である。
【0140】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~77℃である。
【0141】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0142】
別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0143】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~78℃である。
【0144】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらに別のさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0145】
ASOプライマーが69℃~72℃のTmを有するさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃である。
【0146】
ASOプライマーのTmが72℃以上であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、75℃である。
【0147】
さらに別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とするプライマーは、少なくとも67℃のTmを有し、及び/または少なくとも70℃のアニーリング温度で使用される。
【0148】
別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とする該プライマーは、Jセグメントを対象とし、任意に、3’末端として1つ以上のA及び/またはTヌクレオチドを含む。
【0149】
Jセグメントにハイブリダイズすることに関連して使用するのに適したプライマーの例は、以下の表1に提供される。
【表1】
【0150】
本発明のプライマーと標的DNAとの相互作用を促進することは、任意の好適な方法により実施されてもよい。それらの方法が当業者らに既知であろう。プライマー指向増幅を達成するための方法はまた、当業者らに非常に周知である。一方法では、該増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応、NASBA、または鎖置換増幅である。好ましくは、該増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応である。
【0151】
「試料」への言及は、生物学的または非生物学的試料への言及として理解されるべきである。非生物学的試料の例としては、例えば、合成的に生成された核酸集団の核酸産物が挙げられる。「生体試料」への言及は、動物の体内に導入、続いて、除去されている、限定されないが、細胞物質、血液、粘液、糞便、尿、組織生検標本、または体液(例えば、肺洗浄後の肺から抽出された生理食塩水または浣腸洗浄から取り出された溶液)などの、哺乳動物または哺乳動物組織培養物に由来する生物学的物質の任意の試料への言及として理解されるべきである。本発明の方法に従って試験される生物学的試料は、直接試験され得るか、または試験前に、一部の形態の処理を必要とし得る。例えば、生検試料は、試験前に均質化を必要とし得る。さらに、生物学的試料は、液体形態でない限り、試料に流動性をもたせるために、緩衝液などの試薬の添加を必要とし得る。
【0152】
標的DNAが生物学的試料に存在する限り、生物学的試料は、直接試験され得るか、または、他に、生物学的試料に存在する核酸物質の全部もしくは一部が試験前に単離されてもよい。試験前に標的核酸分子が前処理されること、例えば、生ウイルスの不活化またはゲル上での遊動は、本発明の範囲内である。また、生体試料は、新たに採取され得るか、または試験前に(例えば、凍結により)保存されている可能性があるか、もしくは別途試験前に(例えば、培養することにより)処理されている可能性があると理解されるべきである。
【0153】
試料をプライマーと「接触させること」への言及は、相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)が生じ得るように、試料とのプライマーの混合を促進することへの言及として理解されるべきである。この目的を達成するための手段は、当業者らに周知であろう。
【0154】
本明細書に開示の方法に従って試験するのに最も適する試料のタイプの選択は、監視されている状態の性質などの状況の性質に依存するであろう。例えば、好ましい実施形態では、腫瘍性状態が、分析の対象である。腫瘍性状態がリンパ性白血病である場合、血液試料、リンパ液試料、または骨髄穿刺液が、好適な試験試料を提供する可能性が高いであろう。腫瘍性状態がリンパ腫である場合、リンパ節生検または血液または骨髄試料が、試験に適する組織供給源を提供する可能性が高いであろう。腫瘍性細胞の元の供給源を監視しているかどうか、または転移もしくは起点からの新生物の拡散の他の形態の存在が監視されるべきかどうかについての考慮も必要とされるであろう。この点に関しては、任意の1つの哺乳動物から多くの異なる試料を採取及び試験することが望ましいことがある。所与の検出シナリオに適切な試料を選択することは、当業者の技術の範囲内に入るであろう。
【0155】
本明細書で使用される範囲での「哺乳動物」という用語は、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)及び飼育下の野生動物(例えば、カンガルー、シカ、キツネ)。好ましくは、哺乳動物は、ヒトまたは実験室試験動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0156】
本発明の本態様の方法は、目的の標的核酸領域の存在を検出するための手段(例えば、診断または監視目的用)と、任意にその標的を定量化及び/または単離するための手段の両方を提供する。従って、標的のさらなる分析などの、任意のために、目的の標的核酸集団を検出、濃縮、または精製する手段が提供される。
【0157】
本発明の別の態様は、哺乳動物のクローン細胞集団を検出及び/または監視する方法を提供し、このクローン細胞が、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を特徴とし、該方法は、以下を含む:
(i)該プライマーと該標的核酸分子との相互作用を促進するのに十分な時間及び条件下で、上で規定されるフォワード及びリバースプライマーと、哺乳動物に由来する生物学的試料のDNA物質を接触させること、
(ii)該核酸標的を増幅すること、ならびに
(iii)該増幅産物を検出すること。
【0158】
「細胞」への言及は、任意の種由来の全ての形態の細胞、及びその変異体またはバリアントへの言及として理解されるべきである。好ましくは、細胞は、リンパ系細胞であるが、本発明の方法は、部分的または完全なIgまたはTCR再編成を受けている可能性がある任意のタイプの細胞に対して実施することができる。本発明をいかなる1つの理論または作用様式にも限定することなく、細胞は、生物を構成し得るか(単細胞生物の場合)、または個々の細胞が特定の機能について多かれ少なかれ特殊化(分化され)され得る多細胞生物のサブユニットであってよい。全ての生物は、1つ以上の細胞から構成される。主題の細胞は、同系、同種異系、または異種の状況での試験の対象である生物学的試料の一部を形成し得る。同系の状況は、クローン細胞集団及びクローン集団が存在する生物学的試料が、同じMHC遺伝子型を共有するということを意味する。これは、例えば、個体の新生物の存在についてスクリーニングしている場合である可能性が最も高いであろう。「同種異系」の状況は、主題のクローン集団が、実際に、生物学的試料が採取される個体とは異なるMHCを発現する場合である。これは、例えば、移植片対宿主病などの状態との関連で、移植されたドナー細胞集団(例えば、免疫担当骨髄移植)の増殖についてスクリーニングしている場合に生じ得る。「異種」の状況は、主題のクローン細胞が、生物学的試料が由来する対象とは完全に異なる種のものである場合である。これは、例えば、潜在的に腫瘍性のドナー集団が異種移植に由来する場合に生じ得る。
【0159】
主題の細胞の「バリアント」は、それがバリアントである細胞の形態学的もしくは表現型の特徴または機能的活性の全てではないがいくつかを示す細胞を含むが、これらに限定されない。「変異体」は、遺伝子改変される細胞などの、自然にまたは非自然に改変さている細胞を含むが、これらに限定されない。
【0160】
「クローン」とは、主題の細胞集団が共通の細胞起源に由来することを意味する。例えば、腫瘍性細胞集団は、分化の特定の段階で形質転換を受けている単一細胞に由来する。この点に関して、遺伝的に異なる腫瘍性細胞集団を生成するためにさらなる核再編成または変異を受ける腫瘍性細胞はまた、異なるクローン細胞集団ではあるが、「クローン」細胞集団である。別の例では、急性または慢性の感染症または免疫刺激に応答して膨張するTまたはBリンパ球もまた、本明細書で提供される記載内の細胞の「クローン」集団である。さらに別の例では、クローン細胞集団は、より大きな微生物集団内で生じている薬物耐性クローンなどのクローン微生物集団である。好ましくは、主題のクローン細胞集団は、腫瘍性細胞集団またはクローン免疫細胞集団である。
【0161】
一実施形態では、該クローン細胞は、クローンリンパ系細胞の集団である。
【0162】
別の実施形態では、該プライマーの少なくとも1つは、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントの少なくとも2つのN遺伝子セグメントを対象にするハイブリダイゼーションサブ領域を含む。
【0163】
さらに別の実施形態では、該N遺伝子セグメントは、N及びN遺伝子セグメントである。
【0164】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、NDN遺伝子セグメントの再編成N領域にハイブリダイズする。
【0165】
一実施形態では、該核酸は、DNAである。
【0166】
さらなる実施形態では、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする該プライマーは、フォワードプライマーである。
【0167】
さらなる実施形態では、該少なくとも1つのプライマーは、ASOプライマーである。
【0168】
さらに別のさらなる実施形態では、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントのNDN遺伝子セグメントにハイブリダイズする該フォワードプライマーは、N混合物で置換される1つ以上のヌクレオチドを含む。
【0169】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、67℃~80℃のTmを有する。
【0170】
さらに別の実施形態では、該プライマーは、68~76℃のTmを有する。
【0171】
さらなる実施形態では、該プライマーは、69~73℃のTmを有する。
【0172】
別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である。
【0173】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~83℃である。
【0174】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~80℃である。
【0175】
さらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~77℃である。
【0176】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、71℃~77℃である。
【0177】
さらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0178】
別の実施形態では、該方法は、少なくとも67℃のTmを有するプライマー及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有するプライマーの両方を使用することを含む。
【0179】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、70℃~78℃である。
【0180】
該少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有するさらに別のさらなる実施形態では、該アニーリング温度は、72℃~75℃である。
【0181】
ASOプライマーが69℃~72℃のTmを有するさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、72℃である。
【0182】
ASOプライマーのTmが72℃以上であるさらに別の実施形態では、該アニーリング温度は、75℃である。
【0183】
さらに別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とするプライマーは、少なくとも67℃のTmを有し、及び/または少なくとも70℃のアニーリング温度で使用される。
【0184】
別の実施形態では、下流の遺伝子セグメントを対象とする該プライマーは、Jセグメントを対象とし、任意に、3’末端に少なくとも1つのAまたはTヌクレオチドを含む。「リンパ系細胞」への言及は、免疫グロブリンまたはTCR可変領域遺伝子セグメントの少なくとも1つの生殖系列セットを再編成している任意の細胞への言及であると理解すべきである。再編成され得るゲノムDNAをコードする免疫グロブリン可変領域は、重鎖またはκもしくはλ軽鎖に関連する可変領域を含むが、再編成され得るゲノムDNAをコードするTCR鎖可変領域は、α、β、γ、及びδ鎖を含む。この点に関して、細胞が少なくとも1つの免疫グロブリンまたはTCR遺伝子セグメント領域のDNAをコードする可変領域を再編成している場合、細胞は「リンパ系細胞」記載の範囲内に入ると理解されるべきである。細胞はまた、再編成DNAを転写及び翻訳している必要はない。この点に関して、「リンパ系細胞」は、その範囲内に、TCRもしくは免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントを再編成しているが、再編成鎖(例えば、TCR胸腺リンパ球)をまだ発現していないか、またはTCRもしくは免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントの両方の鎖をまだ再編成していない未成熟T及びB細胞を含むが、これらに全く限定されない。この定義はさらに、少なくとも一部のTCRまたは免疫グロブリン可変領域再編成を受けているが、細胞が、別途、成熟T細胞またはB細胞に従来関連する全ての表現型または機能的特徴を示さない可能性があるリンパ様細胞にまで及ぶ。従って、本発明の方法は、限定されないが、1つの可変領域の遺伝子領域の少なくとも一部の再編成が生じていることを条件として、発育の任意の分化段階のリンパ系細胞、活性化リンパ系細胞、または非リンパ系/リンパ様細胞を含む細胞の新形成を監視するために使用することができる。特定の抗原に応答して生じるクローン増殖を監視するために使用することもできる。
【0185】
本発明のこの態様に関して、「監視」への言及は、該集団の存在の初期診断後に、主題のクローン細胞集団の存在またはレベルについて対象を試験することへの言及として理解されるべきである。「監視」は、孤立した1回限りの試験、または数日、数週間、数か月、もしくは数年にわたる一連の試験の両方を実施することへの言及を含む。試験は、好適な治療に関する決定に至るのを助けるために、または新しい形態の治療を試験するために、限定されないが、寛解期にある哺乳動物が再発する可能性の予測、微小残存病変のスクリーニング、治療プロトコールの有効性の監視、寛解期にある患者の状態のチェック、治療レジメンの適用前または適用後の状態の進行の監視を含む任意数の理由で実施されてもよい。それ故、本発明の方法は、臨床ツール及び調査ツールの両方として有用である。
【0186】
少なくとも1つの可変領域遺伝子領域の再編成が完了していることが好ましいが、それにもかかわらず、本発明の方法は、部分的な再編成のみを示す腫瘍性細胞の監視に適用可能であることも理解されるべきである。例えば、DJ再構成事象のみを受けているB細胞は、部分的な再編成のみを受けている細胞である。DJ再構成セグメントがさらに、Vセグメントと再構成するまで、完全な再編成は達成されないであろう。それ故、本発明の方法は、このマーカー配列に相補的な参照分子を利用して、1つのTCRもしくは免疫グロブリン鎖の部分的もしくは完全な可変領域再編成を検出するように設計することができるか、または、例えば、より高い特異性が必要とされ且つ腫瘍性細胞がTCRもしくは免疫グロブリン鎖の両方の可変領域を再編成している場合に、再編成の両形態を対象とするプライマー分子を利用することができる。
【0187】
「腫瘍性細胞」への言及は、異常な「成長」を示す細胞への言及として理解されるべきである。「成長」という用語は、その最も広い意味で理解されるべきであり、増殖への言及を含む。この点に関しては、異常な細胞成長の例は、細胞の制御不能な増殖である。リンパ系細胞の制御不能な増殖は、固形腫瘍または単一細胞懸濁液(例えば、白血病患者の血液で観察されるような)のいずれかの形態をとる細胞集団をもたらし得る。腫瘍性細胞は、良性細胞または悪性細胞であってよい。好ましい実施形態では、腫瘍性細胞は、悪性細胞である。この点に関しては、「腫瘍性状態」への言及は、対象哺乳動物における腫瘍性細胞の存在への言及である。「腫瘍性リンパ状態」が、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫で生じる異常に多数の腫瘍性細胞の存在への言及を特徴とする病状への言及を含むが、この表現はまた、哺乳動物にみられる腫瘍性細胞の数が、通常、哺乳動物の明らかな病状から寛解状態への移行またはその逆の移行を区別するとみなされる閾値より低くなる(寛解中に存在する細胞数は多くの場合、「微小残存病変」と呼ばれる)状況への言及を含むと理解されるべきである。さらに、哺乳動物に存在する腫瘍性細胞の数が、本発明の出現前に利用されたスクリーニング方法により検出可能な閾値を下回った場合でも、それにもかかわらず、哺乳動物は、「腫瘍性状態」を示すとみなされる。
【0188】
この点に関して分析に適する病状は、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、及び骨髄腫などの任意のリンパ系悪性腫瘍である。微小残存病変の監視は、一例として、これらの状態の全てにおいて重要である。急性リンパ芽球性白血病の監視に使用されるプライマーの例が実施例3に示され、プライマーの評価及び試料の定量化のためのワークシートが実施例4~6に示される。
【0189】
好ましくは、該状態は、新生物、さらにより好ましくは、リンパ系新生物である。
【0190】
特定の一実施形態では、本発明の方法は、リンパ性白血病との関連で微小残存病変を検出するために使用される。
【0191】
本発明のさらに別の態様は、上述のような単離プライマーに関する。
【0192】
本発明のさらに別の態様は、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域の同定を容易にするためのキットに関し、該キットが、上で規定されるオリゴヌクレオチドプライマー、標的核酸分子で該プライマーの相互作用を促進するのに有用な試薬、及び該核酸標的の増幅をもたらすために該相互作用を可能にするのに有用な試薬、のうちの任意の1つ以上を含有するのに適する区画を含む。例えば、生物学的または非生物学的試料を受容する、さらなる区画も含まれ得る。
【0193】
本発明は、以下の非限定的な実施例でさらに説明される。
【実施例
【0194】
実施例1
OLIGOANAYSER 3.1-設定、前提条件、及び制限
(http://sg.idtdna.com/calc/analyzerからダウンロードされる)
融解温度設定
【表2】
【0195】
融解温度の前提条件及び制限
・1.2Mから1.5mMまでの一価陽イオン(Na)濃度、600mMから0.01mMまでの二価陽イオン(Mg++)濃度、及び二価陽イオン濃度の最大120%の三リン酸(dNTP)濃度を有する中性緩衝液(pH7~8)中の長さが8~60塩基のオリゴの予測は正確である。
・オリゴ濃度は、相補的な標的の濃度よりも大幅に高い(少なくとも6倍)とみなされ、これは、分子生物学実験の大部分に当てはまる。そうでない場合は、標的の濃度は、無視できず、ボックスに入力されるべきである。
・[鎖1]≧[鎖2]の場合、オリゴ濃度=[鎖1]-[鎖2]/2
・[鎖1]=[鎖2]の場合、オリゴ濃度=([鎖1]+[鎖2])/4
【0196】
融解温度の精度及びモデル:(オリゴ/テンプレート)
【表3】
・DNAテンプレートにハイブリダイズされた連続LNA塩基は、Owczarzy’11のモデルを使用する。経験的データがない場合、RNAテンプレートのLNA塩基は、RNA値を仮定し、それ故、予測の精度が低い。
・DNAテンプレートにハイブリダイズされた非連続LNA塩基は、McTigue’04のモデルを使用する。DNAテンプレート上の連続LNA塩基及びRNAテンプレート上の任意のLNA塩基は、RNAエネルギーパラメーターを仮定しており、それ故、予測の精度が低い。
・化学修飾の影響は、修飾が塩基を含有する場合を除いて無視される(例えば、5-メチルdC、内部フルオレセインdT)。これらの修飾のエネルギー効果は単に近似される。
【0197】
実施例2
プライマー設計のガイドライン
3’末端
-A/Tになる最後の塩基
-好ましくは、A/Tになる最後の2塩基
-最後の最大4塩基に対する塩基としてA/Tを有し得る。これ以上の場合、プライマーが効率的に機能しないリスクがある。
-最後の6塩基中の2つ以下のG/C。
【0198】
2N領域を使用する場合の設計
-プライマーは、N1の一部または全て、Dの全て、及びN2の一部または全てを対象とする。
-N1の5’に最大4塩基、及び/またはN2の3’に1~3塩基を含むことが、有利な可能性がある。これは、半固有V-N1及びN2-J接合部、ならびにJに提供される任意のA/T塩基を利用する。
-プライマーのTmが高すぎ、74℃より高い場合、1つ以上のN塩基を、実効Tmを下げるために、D領域に挿入することができる。
【0199】
1つのN領域を使用する場合の設計
唯一のN領域が、V-N-Jまたは部分的なD-N-J再編成の存在下で利用可能であろう。場合により、2つのN領域が利用可能な場合であっても、1つだけを使用することが決定されてもよく、時に、それが長い場合、好ましい不均一な塩基配列を含み、良好な3’末端の設計が可能になる。
-N領域の後にD領域が続く場合、特に、これが3’末端を改善する場合、通常、D領域にプライマーを4~6塩基を延長することが有利である。これは、半固有ND接合部を利用する。
-N領域の後にJ領域が続く場合、場合により、さらに3’末端でA/Tが調査される場合、通常は、プライマーを1~3塩基伸長させてJ領域にすることが有利である。しかし、特に、この状況では、いくつかの異なるプライマーを試験することが重要である。
【0200】
アニーリング温度
PCRで使用されるアニーリング温度は、プライマーのTmに依存する。ガイドラインは、以下のとおりである。
Tm=69~72、アニーリング温度=72。
Tm=72~74、アニーリング温度=75。
Tm>74、アニーリング温度=75であるが、N塩基の使用を検討する。
実際に最終的に使用される温度は、様々なアニーリング温度の試験中のプライマーの機能の仕方により決定される。
【0201】
注記
上記は単なるガイドラインであり、ほとんどの患者の場合、複数の候補プライマーを合成及び試験することが望ましい。
【0202】
プライマーの試験
1.増幅効率及び特異性の決定
各患者に対し1つまたはいくつかのプライマーが合成される。アニーリング温度の勾配を使用して、各プライマーは、白血病DNAから増幅する能力及び非白血病DNAからの増幅の失敗について試験される。
一例が以下に示される。
【表4】
上の行は、アニーリング温度の範囲を示し、次の2行は、2つの異なるプライマーを試験して観察されたCt値を示す。左の4つのセルは、400pgの白血病DNAからの増幅の結果を示し、右の4つのセルは、1μgの非白血病DNAからの増幅の結果を示す。2つのプライマーは、68.3~73℃のアニーリング温度で十分に増幅されたが、非特異的増幅は生じなかった。
わずかに異なる温度範囲を使用した別の例を以下に示す。
【表5】
上の行は、試験されるDNAを示す。Doは、400pgの白血病DNAであり、Pblは、1μgの非白血病DNAである。第2行は、アニーリング温度であり、第3行は、Ct観測値である。使用されたプライマーは、69.5℃のCt予測値を有していた。それは、73.9及びそれ以下のアニーリング温度で良好に作用していたが、75のアニーリング温度で準最適に作用していたことを見ることができる。それは、任意のアニーリング温度で非特異性を生じなかった。
【0203】
2.選択されたプライマーは、白血病DNAの再編成標的遺伝子を増幅する能力が、非白血病DNAの同時存在により阻害されないことを確認するために最後に試験される。
試験の一例が以下に示される。500ngまたは1μgの非白血病DNAの存在は、400pgの白血病DNAで観察されたCTに変化をもたらさなかった。増幅は、500ngの非白血病DNA単独で、または水対照で観察されなかった。
【表6】
【0204】
実施例3
患者のASOプライマー、配列、TM、及び特異性の例。
【表7】
特異性の評価は、それぞれ5人の正常な個体からプールされた1μgの非白血病DNAを含有する20ウェルの増幅を含んでいた。非特異的増幅は、34のプライマーのうちのわずか3つでみられた。20ウェルのうち1つからの増幅は、2.3x10-7のMRDレベルと同等である。
【0205】
実施例4
勾配-プライマーの試験用
2μl/チューブに追加された200pg/μlの診断DNAは、35μl/プライマーを必要とする。
2μl/チューブに追加された250ng/μlのpbl DNAは、35μl/プライマーを必要とする。
D0プライマーA行C行E行G行
PBL同じプライマーB行D行F行H行
【表8】
8.5×17.6=149.6μlで12に分割し、リバースプライマー2ul、50uMの単一フォワードプライマー2μl、及び200pg/μLのDNA 17μlまたは250ng/μLのpblを添加する。
20μlをウェルに分注し、密封し、以下のプロトコールを実行する。
PCRマシンCFX上で、91℃、3分で1回実行する:
97℃、15秒、68~75℃、30秒、×5サイクル
96℃、15秒、68~75℃、30秒、×5サイクル
94℃、15秒、68~75℃、30秒、×35サイクル
65℃~95℃で融解させる
-この方法は、様々なアニーリング温度でプライマーの増幅効率及び特異性を試験するためのものである。
-1及び106は、それぞれ、単一のウェルまたは全てのウェルの成分量を指す。
【0206】
実施例5
付表5.ワークシート4:単一のプライマーを使用して定量化するための混合物を作成する
1ng/μlの患者診断DNA
Pbl DNAは、4ul/チューブ中250ng/μlで120μlを必要とする
MRチューブの希釈
1ng/ul 3ul+27ul FG3 0.1ng/ulから
0.1ng/ul 2ul+18ul FG3 0.01ng/ulから
20ul/チューブを添加する混合物を構成するためのpbl 250ng/ulを必要とする
【表9】
【0207】
実施例6
2つの試料、2本のチューブ、及び5本のチューブのための単一プライマーを使用する定量化
【表10】
【表11】
実行:91℃、3分
97℃、15秒;72℃、30秒x5サイクル、
96℃、15秒;72℃、30秒x5サイクル、
94℃、15秒;72℃、30秒x35サイクル、
【0208】
本明細書に記載の発明は、具体的に記載されるもの以外の変更及び修正を受けやすいことを、当業者らは理解するであろう。本発明は、全てのこのような変形及び修正を含むことが理解されるべきである。本発明はまた、個別にまたは集合的に本明細書で言及されるか、または示されるステップ、特徴、組成物、及び化合物の全て、ならびに該ステップまたは特徴の任意の2つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。
参考文献
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以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を増幅する方法であって、前記方法が、前記再編成IgまたはTCR核酸領域を対象とするフォワード及びリバースプライマーと、目的の核酸試料を接触させること、ならびに、
(i)少なくとも67℃のTmを有する少なくとも1つのプライマー、及び/または
(ii)少なくとも70℃のアニーリング温度
を使用して前記核酸試料を増幅すること、を含む、前記方法。
[発明2]
前記方法が、少なくとも67℃のTm及び少なくとも70℃のアニーリング温度を有する少なくとも1つのプライマーを使用して実施される、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記少なくとも1つのプライマーが、ASOプライマーである、発明1または2のいずれか1つに記載の方法。
[発明4]
前記ASOプライマーが、フォワードプライマーである、発明3に記載の方法。
[発明5]
前記核酸領域が、DNA領域である、発明1~4のいずれか1つに記載の方法。
[発明6]
前記対象とするプライマーが、67~80℃、68~76℃、または69~74℃のTmを有する、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明7]
前記アニーリング温度が、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、または83℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明8]
前記アニーリング温度が、70℃~83℃、71℃~80℃、70℃~77℃、71℃~77℃、または72℃~75℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明9]
前記少なくとも1つのプライマーが67℃~80℃のTmを有し、及び/または前記アニーリング温度が70℃~83℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明10]
前記少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有し、前記アニーリング温度が70℃~78℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明11]
前記少なくとも1つのプライマーが69℃~76℃のTmを有し、前記アニーリング温度が72℃~75℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明12]
前記少なくとも1つのプライマーが、69℃~72℃のTmを有し、前記アニーリング温度が72℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明13]
前記少なくとも1つのプライマーが72℃以上のTmを有し、前記アニーリング温度が75℃である、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明14]
1つ以上のA及び/またはTヌクレオチドが、前記プライマーの3’末端に含まれる、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明15]
前記フォワードまたは前記リバースプライマーのいずれかまたは両方が、前記A及び/またはTヌクレオチドを含むように設計される、発明14に記載の方法。
[発明16]
前記リバースプライマーのみが、前記A及び/またはTヌクレオチドを含むように設計される、発明14に記載の方法。
[発明17]
前記プライマーの少なくとも1つが、再編成V、D、及びJ遺伝子セグメントの少なくとも2つのN遺伝子セグメントを対象とするハイブリダイゼーションサブ領域を含む、発明1~16のいずれか1つ以上に記載の方法。
[発明18]
前記V、D、J再編成が、部分的な再編成である、発明17に記載の方法。
[発明19]
前記部分的なV、D、J再編成が、D、J、またはV遺伝子セグメント内の少なくとも1つのN領域も含むDNJまたはVNJ再編成である、発明18に記載の方法。
[発明20]
前記少なくとも2つのN遺伝子セグメントが、DN 2 、N 2 J、DN 2 J、VN 1 、N 2 J、VN 2 J、N 1 D、またはVN 1 D再編成の前記N遺伝子セグメント、及び前記関連D、J、またはV遺伝子セグメント内の少なくとも1つのN領域である、発明19に記載の方法。
[発明21]
前記少なくとも2つのN遺伝子セグメントが、N 1 DN 2 、VN 1 DN 2 、またはN 1 DN 2 J再編成の前記N遺伝子セグメントである、発明19に記載の方法。
[発明22]
前記V、DJ再編成が、完全なVDJ再編成である、発明17に記載の方法。
[発明23]
前記少なくとも2つのN遺伝子セグメントが、前記N 1 DN 2 再編成の前記N遺伝子セグメントである、発明22に記載の方法。
[発明24]
前記フォワード及び/または前記リバースプライマーが、3’末端に少なくとも1つのA及び/またはTヌクレオチドを含む、発明1~24のいずれか1つに記載の方法。
[発明25]
前記J遺伝子セグメントを対象とする前記プライマーが、3’末端に少なくとも1つのA及び/またはTヌクレオチドを含む、発明1~24のいずれか1つに記載の方法。
[発明26]
プライマーサブ領域が、前記サブ領域の前記ヌクレオチドのうちの1つ以上をN混合物からのヌクレオチドで置換するように改変される、発明1~24のいずれか1つに記載の方法。
[発明27]
前記サブ領域の4ヌクレオチド毎が、置換される、発明26に記載の方法。
[発明28]
前記サブ領域の3~7つの隣接ヌクレオチドの配列が、置換される、発明26に記載の方法。
[発明29]
哺乳動物のクローン細胞集団を検出及び/または監視する方法であって、クローン細胞が、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの再編成を特徴とするIgまたはTCR核酸領域を特徴とし、前記方法が、発明1~27のいずれか1つに記載の増幅方法を実施すること、及び増幅産物を検出することを含む、前記方法。
[発明30]
前記方法が、2つ以上のV、D、またはJ遺伝子セグメントの前記再編成を含むIgまたはTCR核酸領域を特徴とするクローン細胞集団を特徴とする病状を診断または監視するために使用される、発明29に記載の方法。
[発明31]
前記クローン細胞が、クローンリンパ系細胞の集団である、発明30に記載の方法。
[発明32]
前記病状が、新生物、好ましくは、リンパ系新生物である、発明31に記載の方法。
[発明33]
前記リンパ系新生物が、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である、発明32に記載の方法。
[発明34]
前記方法が、最小残存疾患を検出するために使用される、発明29~33のいずれか1つに記載の方法。
[発明35]
前記哺乳動物が、ヒトである、発明1~34のいずれか1つに記載の方法。

図1
図2
図3
図4
【配列表】
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