(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】垂直軸風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240913BHJP
F03D 7/06 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D7/06 C
(21)【出願番号】P 2021004145
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】細野 洋司
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】朴 玉丹
(72)【発明者】
【氏名】小野 猛
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部を有する基部と、上記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、上記回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼と、を備える垂直軸風車であって、
上記アームは、上記回転部と上記風車翼とを結ぶ回転軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部を有し、上記可動部
の下部に、上記
垂直軸風車の回転時に生じる遠心力の作用によって該可動部を上記回転軸の軸周りに傾斜させ
て、該可動部の風車回転方向から見た投影面積を大きくし、上記
垂直軸風車の回転停止時には上記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体が設けられている、
ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直軸風車において、
上記アーム及び上記風車翼の取付位置と上記可動部の上記回転軸の取付位置は同一線上に設けられている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の垂直軸風車において、
上記過回転抑制誘導体は、上記可動部の下部における上記回転軸に対して回転方向の前縁側又は後縁側の偏倚位置に設けられている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の垂直軸風車において、
上記風車翼と上記可動部を含む上記アームのうちの少なくとも上記可動部は、同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の垂直軸風車において、
上記過回転抑制誘導体は、上記可動部の下部に連結される支持棒と、該支持棒の先端部に装着される錘とで構成されている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の垂直軸風車において、
上記過回転抑制誘導体は、上記風車翼と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の垂直軸風車において、
上記アームは、上記回転部に連結される第1固定部と、上記風車翼に連結される第2固定部及び上記第1固定部と上記第2固定部との間に配設される上記可動部とからなり、上記可動部と少なくとも上記第1固定部とは、いずれか一方に突設された回転軸と他方に設けられた軸受とで上記可動部が回転可能に連結されている、ことを特徴とする垂直軸風車。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の垂直軸風車において、
上記可動部又は上記アームの上記可動部側にストッパを設け、上記ストッパによって上記可動部を初期状態において水平姿勢又は風車の回転方向の前縁側が上向き姿勢に支持してなる、ことを特徴とする垂直軸風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、垂直軸風車に関するもので、更に詳細には、過回転抑制機構を備える垂直軸風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電部を有する基部と、上記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、上記回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼(主翼)と、を備える垂直軸風車は、その性能が風向に依存しないため、構造がシンプルになり、低コスト化に向いているとされている。
また、最近では、小形垂直軸風車を密集配置することにより、単位設置面積当りの出力が、大型の水平軸風車の風力発電所(ウインドファーム)以上に高くなる可能性も示されており、再生可能エネルギーの導入促進において小形垂直軸風車のウインドファーム実現も期待されている。
【0003】
一方、垂直軸風車は、性能が風向に依存しない特性であるがために、制動コントロールが難しいという一面も有する。すなわち、水平軸風車では尾翼(側翼)などを使用して、風車のロータ面(翼の回転する面)を風向に正対する向きからそらすこと(ファーリング)で、過回転を比較的容易に防止できるが、垂直軸風車では風向に依存しないため、ファーリングは不可能である。そのため、従来の垂直軸風車の制動機構として、主翼の一部あるいはアームの一部に、フラップ(可動部分翼)やスポイラー(突き出し板など)を設けて、それを液圧や空気圧などで駆動・制御して、空力ブレーキとして用いていた。しかし、このような方式は、機構が複雑となり、コストも高くなるため、小形の垂直軸風車に適用することは現実的ではなかった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、垂直軸風車の回転軸と平行な可動翼軸周りに揺動可能な可動翼に錘を取り付け、錘に作用する遠心力によって主翼のピッチ角(揺動角)を変えて回転速度を制御する比較的簡易な方法を提案している。
また、特許文献2,3では、垂直軸風車の主翼の一部に可動翼あるいはスポイラーを取付け、その可動翼あるいはスポイラーに作用する遠心力の作用で可動翼あるいはスポイラーを開閉させて、回転数に依存する受動的空気ブレーキを提案している。
【0005】
また、目的が過回転抑制機構ではなく、始動性の向上が目的となっているが、特許文献4では、垂直軸風車の主翼の下端に、鉛直下方に可動支持棒の先端に付けた錘を吊り下げ、その錘に働く遠心力の作用で錘と可動支持棒を振り上げ、その動作によって更に強く作用する遠心力の効果によって主翼の向き(ピッチ)を変えて、抗力型から揚力型に風車の特性を切り替える仕組みを提案している。この場合、うまく錘の質量を調整しておけば、ばねなどの弾性体による制限機構なしで特定の回転数以上になった場合に主翼のピッチ角を変えることが可能である。したがって、主翼の初期の向きを約90度変えて、低回転数状態では揚力型となる配置とし、高回転数状態となって遠心力で動作機構が作動した場合に主翼が抗力型配置となるように設定すれば、特許文献4の提案方法で過回転抑制機構を構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-85182号公報
【文献】特開2010-261415号公報
【文献】特開2011-27054号公報
【文献】特開2013-245564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~4に記載の方法では、風車が低速回転している場合に風車の特性を損なわせないようにするため、すなわち、過回転抑制機構が作用しないようにするため、ばねなどの弾性体で、特定の回転数までは錘や可動翼の動作を制限する必要がある。
ただし、特許文献4に記載の方法では、高回転数状態から低回転数状態に戻る際に、錘に作用する重力が復元力となって働き、振りあがった錘自体は鉛直下方に戻るが、ばねなどの弾性体が無ければ、変化した主翼の向きは変化後の向きのままであり、初期の状態には戻らない。
【0008】
結局、特許文献1~4に記載の方法においては、ばねなどの弾性体で、可動翼あるいはスポイラーなどを元の状態に戻す機構が必要となる。また、いずれも風車の主翼に相当する直線翼を想定した機構であり、円形翼などその他の任意形状の主翼に対しては適用が不可能である。また、ばねなどの弾性体は経年変化によって特性が変わり、耐久性にも問題がある。
【0009】
更に、遠心力のみによって動作する過回転抑制機構の場合、30~40m/sの強風状態あるいは60m/s近い50年に1回経験する程度の確率である極値風状態においても、遠心力の作用で風車の過回転が制動される特定の最大回転数までは回転数が増加することになる。一定の回転数以上に風車が至らないという過回転抑制機構の動作が可能であったとしても、非常に高い風速の中で、高回転数で回転する状態が繰り返し発生することは、風車の構造的強度を考えた場合に好ましくなく、一般的には設計時において、風車の強度を高める必要性からコスト増になってしまう。
【0010】
例えば、
図18に示すように、発電性能的には、強風状態においても高い発電性能が維持されることは好ましく思えるが、現実的には、強風状態にある風車の回転数は、定格回転数(最大回転数)よりも十分に低い状態になるように抑制されることが、過回転抑制機構の理想動作となる。なお、
図18には、過回転制御の有る場合Rと無い場合Sの2つの風車のパワーカーブが示されている。計算の便宜のため、過回転制御の場合Rは、風速18m/sにおいて発電電力Pが一定値(980.8W)になると仮定している。また、風速31m/s以上においては実質的に風速出現率を0とみなせるため、31m/s以上の発電は行わないと仮定している。
【0011】
特許文献1~4に記載の方法も、基本的に遠心力のみで錘が駆動されるため、それらを装着した風力発電機の風速依存性は、
図18と同様の特性になると想定され、強風状態の中において高回転数で回転することが予想される。
【0012】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、任意形状の主翼を持つ垂直軸風車に適用可能であり、耐久性が高く、シンプル構造であり、かつ、強風状態における風車回転数は定格回転数(最大回転数)よりも十分に低い状態に抑制される過回転抑制機構を備える垂直軸風車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために、この発明は、発電部を有する基部と、上記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、上記回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼と、を備える垂直軸風車であって、上記アームは、上記回転部と上記風車翼とを結ぶ回転軸の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部を有し、上記可動部の下部に、上記垂直軸風車の回転時に生じる遠心力の作用によって該可動部を上記回転軸の軸周りに傾斜させて、該可動部の風車回転方向から見た投影面積を大きくし、上記垂直軸風車の回転停止時には上記可動部を初期状態に戻す過回転抑制誘導体が設けられている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
このように構成することにより、風車の回転時に過回転抑制誘導体に働く遠心力の回転方向成分によって過回転抑制誘導体と鉛直方向との間の角度(以下に傾角という)変化に伴ってアームに設けられた可動部が回転軸周りに傾斜し、可動部に空気力による制動力が作用する。また、風車の回転停止時には、可動部が自動的に元の初期状態に戻る。更に、経年変化により特性の変化の虞があるばねなどの弾性体を不要にすることができる。
【0015】
この発明において、上記アーム及び上記風車翼の取付位置と上記可動部の上記回転軸の取付位置は同一線上に設けられているのが好ましい(請求項2)。
このように構成することにより、アームに働く引っ張りや圧縮に抗するアームの構造的強度が向上する。
【0016】
また、この発明において、上記過回転抑制誘導体は、上記可動部の下部における上記回転軸に対して回転方向の前縁側又は後縁側の偏倚位置に設けられているのが好ましい(請求項3)。
このように構成することにより、過回転抑制誘導体と鉛直方向との間の傾角が増大し、可動部に空気力による大きな制動力が作用する。
【0017】
また、この発明において、上記風車翼と上記可動部を含む上記アームのうちの少なくとも上記可動部は、同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されているのが好ましい(請求項4)。
このように構成することにより、風車翼と可動部を構成する部材を共通化することができると共に、可動部を有するアームと風車翼の軽量化が図れる。
【0018】
また、この発明において、上記過回転抑制誘導体は、上記可動部の下部に連結される支持棒と、該支持棒の先端部に装着される錘とで構成されるか(請求項5)、上記風車翼と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されているが好ましい(請求項6)。
【0019】
この場合、過回転抑制誘導体を、風車翼と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成することにより、空気力すなわち水平方向を向く揚力による回転方向成分が発生し、風車の推進力を高めることができる。また、可動部を風車翼と同形状に形成した場合、過回転抑制誘導体が可動部と同形状に形成されることにより、可動部と同形状の過回転抑制誘導体を用いることができる。
【0020】
また、この発明において、上記アームは、上記回転部に連結される第1固定部と、上記風車翼に連結される第2固定部及び上記第1固定部と上記第2固定部との間に配設される上記可動部とからなり、上記可動部と少なくとも上記第1固定部とは、いずれか一方に突設された回転軸と他方に設けられた軸受とで上記可動部が回転可能に連結されているのが好ましい(請求項7)。
【0021】
このように構成することにより、可動部の回転を円滑にすることができ、風車の回転による遠心力で軸周りに傾斜した過回転抑制誘導体が、遠心力が小さくなって元の位置に戻るのを円滑にすることができる。
【0022】
加えて、この発明において、上記可動部又は上記アームの上記可動部側にストッパを設け、上記ストッパによって上記可動部を初期状態において水平姿勢又は風車の回転方向の前縁側が上向き姿勢に支持するのが好ましい(請求項8)。
【0023】
このように構成することにより、過回転抑制誘導体が回転軸に対して回転方向の前縁側に設けられた場合の初期状態における可動部の前傾を防止し、また、過回転抑制誘導体が回転軸に対して回転方向の後縁側に設けられた場合の初期状態における可動部の後傾を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、上記のように構成されているので、任意形状の主翼を持つ垂直軸風車に適用可能であり、ばねなどの弾性体を不要にし、耐久性が高く、シンプル構造であり、かつ、強風状態における風車回転数は定格回転数(最大回転数)よりも十分に低い状態に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明に係る垂直軸風車の第1実施形態の使用状態を示す概略側面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【
図2A】この発明における風車翼と回転部との固定状態を示す斜視図である。
【
図3】この発明における風車翼、アーム、可動部の断面図である。
【
図4】この発明におけるアーム、可動部、過回転抑制誘導体を構成する錘及び風車翼を示す概略平面図である。
【
図4A】
図4のIII部拡大断面図(a)及び
図4のIV-IV線に沿う拡大断面図(b)である。
【
図5】風車の低回転数状態の可動部と錘を示す斜視図である。
【
図6】風車の高回転数状態の可動部と錘を示す斜視図である。
【
図7A】可動部と錘の取付状態を示す断面図である。
【
図7B】可動部と錘の別の取付状態を示す断面図である。
【
図8】錘を使用した過回転抑制機構の力の作用関係を示す概略平面図(a)及び概略側面図(b)である。
【
図9】この発明に係る垂直軸風車の第2実施形態における風車の低回転数状態の可動部と過回転抑制誘導体を構成する補助翼を示す斜視図である。
【
図10】風車の高回転数状態の可動部と補助翼を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態における可動部と補助翼の取付状態の一例を示す断面図である。
【
図12】この発明に係る垂直軸風車の別の形態を示す概略側面図である。
【
図13】第1実施形態の錘を使用した実施例1の風車の具体例を示す概略平面図である。
【
図14】実施例1の風車のトルク特性を示すグラフである。
【
図15】実施例1の風車の回転数と可動部傾角の風速依存を示すグラフである。
【
図16】第2実施形態の補助翼を使用した実施例2の風車のトルク特性を示すグラフである。
【
図17】実施例2の風車の回転数と可動部傾角の風速依存を示すグラフである。
【
図18】従来の過回転制御が有る場合と無い場合のパワーカーブを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<第1実施形態>
この発明に係る垂直軸風車1(以下に、単に風車1という)は、
図1に示すように、発電部を有する基部2と、基部2に対して垂直軸Z周りに回転する回転部3と、回転部3にアーム20を介して連結されて垂直軸Z周りに回転する複数(例えば、3枚)の風車翼10とを備えている。
【0028】
基部2は、風車1の土台となる部分である。基部2は、風車1の風車翼10を設置面4から所定の高さに位置させるために所定の高さに形成される脚部2aと、図示しない発電部を収容する収容部2bとを備えている。
【0029】
回転部3は、風車翼10が受風したときに基部2に対して垂直軸Z周りに回転する。回転部3は、
図2A及び
図2Bに示すように、風車翼10が取り付けられて回転する回転ハブ3aと、回転ハブ3aの回転軸となり、基部2の収容部2b内に回転可能に支承される軸部3bとを備えている。
【0030】
風車翼10は、回転部3の回転ハブ3aに支持されて水平方向に延びるアーム基部5に連結されるアーム20を介して取り付けられて、回転部3と共に回転する。本実施形態では、風車翼10は、垂直軸Z周りに等間隔で複数(例えば3枚)設けられている。なお、風車翼10の枚数はこれに限定されるものではない。
【0031】
この場合、
図2A及び
図2Bに示すように、回転ハブ3aの上下のフランジ3a1,3a2とアーム基部5を貫通する固定ボルト6とナット(図示せず)をねじ結合して、アーム基部5が固定される。
一方、アーム20は、後述する風車翼10を形成する延在部11、主翼12及び湾曲部13と同じ断面形状の中空部10a~10gを有するアルミニウム製の押出形材にて形成されており、
図3に示すように、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面を有し、複数のリブ10hによって中空部10a~10gが区画されている。また、
図2Bに示すように、一端の開口側のリブ10hが切り欠かれており、この切欠部10i内にアーム基部5の他端部が挿入され、アーム20とアーム基部5に設けられた貫通孔5aに貫通される連結ボルト6aにナット(図示せず)をねじ結合して、アーム基部5とアーム20が連結される。
【0032】
風車翼10は、風車1の垂直軸Zに近い側が固定部材7によってアーム20に固定されている。垂直軸Zから離れるにつれて互いの間隔が広くなるように回転部3から延びる一対の延在部11と、風車翼10の垂直軸Zに略平行な方向に沿って延びる主翼12と、延在部11と主翼12とを連結部材(図示せず)によって湾曲状に連結する湾曲部13とを有する。具体的には、風車翼10は、側面視で、水平軸Xに対して略対称に形成された略三角形状に形成されている。なお、ここでいう略三角形状とは、風車翼10の全体形状が三角形に近い形状であることをいい、三角形の角部が湾曲したものや、三辺のいずれかが湾曲したものを含む。
【0033】
風車翼10を形成する延在部11、主翼12及び湾曲部13は、同じ断面形状の中空部10a~10gを有するアルミニウム製の押出形材にて形成されており、
図3に示すように、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面を有し、複数のリブ10hによって中空部10a~10gが区画されている。なお、
図3においては、6つのリブ10hによって7つの中空部10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gを有する場合が示されているが、中空部の形状や数は任意である。また、風車翼10(延在部11、主翼12、湾曲部13)は、具体的には前縁から後縁までの長さが約380mm、表裏面の最大高さが約91mmに設定されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
風車翼10を固定する固定部材7は、風車翼10の延在部11の基端側の外側面とアーム20の上面又は下面に当接する当接片を有する鈍角屈曲状の一対の外側ブラケット7aと、延在部11の基端側の内側面とアーム20の上面又は下面に当接する当接片を有する一対の鋭角屈曲状の内側ブラケット7bと、一対の外側ブラケット7aと内側ブラケット7bによってそれぞれ延在部11とアーム20を挟んだ状態で、アーム20に延在部11を固定する固定ボルト7c,固定ナット7dとを具備する。
【0035】
この場合、外側ブラケット7aと内側ブラケット7bは、アルミニウム製鋳物にて形成されており、外側ブラケット7aの当接片と内側ブラケット7bの当接片の当接面は、延在部11とアーム20の外面流線形に相似する形状に形成されている。なお、当接片には固定ボルト7cが貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。また、アーム20の中空部10b,10d,10fの箇所の表裏面には固定ボルト7cが貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0036】
アーム20は、回転部3と風車翼10の主翼12を結ぶ回転軸24の軸周りに回転可能な過回転抑制用の可動部23を有し、可動部23の下部に、風車1の回転時に生じる遠心力の作用によって可動部23を回転軸24周りに傾斜させ、風車1の回転停止時には可動部23を初期状態に戻す過回転抑制誘導体30が設けられている。
【0037】
アーム20は、回転部3に連結される第1固定部21(以下に第1固定アーム21という)と、主翼12に連結部材25を介して連結される第2固定部22(以下に第2固定アーム22という)及び第1固定アーム21と第2固定アーム22との間に配設される可動部23(以下に可動アーム23という)とで構成されており、可動アーム23に設けられた水平方向に延在する回転軸24が第1固定アーム21と第2固定アーム22に設けられた軸受26(例えば転がり軸受)に嵌合されて、可動アーム23が回転可能に連結されている。なお、アーム20を構成する第1固定アーム21、第2固定アーム22及び可動アーム23は、風車翼10と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されている(
図3参照)。なお、以下の説明を分かりやすくするために、第1固定アーム21、第2固定アーム22及び可動アーム23の中空部と風車翼10の中空部を同一の符号を付してある。
【0038】
主翼12と第2固定アーム22とを連結する連結部材25は、
図1(b)に示すように、主翼12の内側面と第2固定アーム22の上面又は下面に当接する一対の直角ブラケット25aと、直角ブラケット25aの垂直当接片と主翼12、水平当接片と第2固定アーム22を貫通する連結ボルト25bと、連結ボルト25bにねじ結合するナット25cとで構成されている。
【0039】
この場合、回転軸24は可動アーム23の中空部10e内を貫通し、中空部10eの両端部に嵌挿された座金24aによって固定され、その突出部が第1固定アーム21と第2固定アーム22に設けられた中空部10e内に挿入される座金27によって固定された軸受26によって回転可能に支承されている(
図4A(a)、
図4A(b)参照)。
【0040】
上記説明では、可動アーム23に回転軸24を設け、第1固定アーム21と第2固定アーム22に軸受26を設ける場合について説明したが、必ずしもこのような構造とする必要はない。例えば、第1固定アーム21と第2固定アーム22に回転軸24を突設し、可動アーム23に軸受26を設けるようにしてもよい。あるいは、可動アーム23と少なくとも第1固定アーム21とは、いずれか一方に突設された回転軸24と他方に設けられた軸受26とで可動アーム23を回転可能に連結してもよい。
【0041】
上記のように構成することにより、第1固定アーム21、第2固定アーム22及び主翼12の取付位置と可動アーム23の回転軸24の取付位置を同一線上に設けることができる。したがって、アーム20に働く引っ張りや圧縮に抗するアーム20の構造的強度を高めることができる。
【0042】
過回転抑制誘導体30は、可動アーム23の下部における回転軸24に対して回転方向の前縁側の偏倚位置に連結される支持棒31と、該支持棒31の先端部に装着される球形の錘32とで構成されている。なお、錘32は必ずしも球形である必要はなく、球形以外の任意の形状であってもよい。
【0043】
過回転抑制誘導体30の可動アーム23への取付は、例えば、
図7Aに示すように、支持棒31の基端部に雄ねじ部31aを設け、雄ねじ部31aを可動アーム23の中空部10c内に挿入された座金28に設けられたねじ孔28aにねじ結合することによって可動アーム23に過回転抑制誘導体30を取り付けることができる。
また、
図7Bに示すように、支持棒31を可動アーム23の中空部10cの上下部に設けられた貫通孔23a,23b内を貫通させ、その突出部に設けられた雄ねじ部31aにスペーサ33とワッシャ34を介してナット35をねじ結合することによって可動アーム23に過回転抑制誘導体30を取り付けるようにしてもよい。
【0044】
なお、過回転抑制誘導体30を可動アーム23の下部における回転軸24に対して回転方向の前縁側の偏倚位置に連結することで、初期状態において可動アーム23が前傾姿勢となり、風車1の回転に支障を来す虞がある。これを回避するために可動アーム23の風車回転方向から見た投影面積がほぼ最小状態となるように、例えば、第1固定アーム21の可動アーム23側端部にストッパ40を突設して可動アーム23を係止し、可動アーム23の初期状態を水平姿勢、あるいは、支持棒31と鉛直方向との間の角度α(傾角α)を微少な角度(1度~5度程度)の上向き姿勢に支持している。
【0045】
次に、上記のように構成される錘32を使用した過回転抑制機構を有する風車1の動作態様について、
図5,
図6,
図8を参照して説明する。
風速が高くなり、風車1が高回転数状態になってくると、錘32に働く遠心力Fcの回転方向成分F1が大きくなる。この時、(1)可動アーム23の回転軸周りの可動アーム23に作用する空気力によるモーメント(抗力及び揚力FLによる取付位置周りのモーメント)、(2)可動アーム23の重力FG1によるモーメント、更に(3)錘32,支持棒31に作用する空気力によるモーメント(抗力Fr)、(4)錘32,支持棒31の重力FG2によるモーメントの総和{(1)+(2)+(3)+(4)}による、可動アーム23を頭下げの方向(前縁が下方に動く向き)に回転させる正味のモーメントが働く。この正味のモーメントに比較して、(5)錘32に働く遠心力Fcの回転方向成分F1による頭上げのモーメントが大きくなれば、傾角αは増加する。
【0046】
その結果、
図6及び
図8(b)に示すように傾角αが非常に大きくなって、可動アーム23の風車回転方向から見た投影面積が大きくなり、可動アーム23には、空気力による大きな制動力F2が作用し、風車1の過回転を抑制する。ただし、強風状態では、低い回転数状態においても、(1)の可動アーム23に働く空気力のモーメントが頭上げの方向(前縁が上方に動く向き)に大きくなり、(5)の錘32に働く遠心力Fcによる頭上げ方向の回転モーメントに比べて支配的となり、大きな制動力F2を生み出す。その結果として、強風状態では、風車1は低い回転数に抑制される。
【0047】
可動アーム23の回転軸24が風車回転軸(垂直軸Z)と直角(あるいは多少の角度がついていてもよい)になっており、回転軸24が軸受26によって支承されているため、遠心力で持ち上げられた錘32が、遠心力が小さくなって元の位置に戻るときに、可動アーム23も元の状態に自然に戻ることができ、ばねなどの弾性体が不要である。
【0048】
上記実施形態では、過回転抑制誘導体30を可動アーム23の下部における回転軸24に対して回転方向の前縁側の偏倚位置に連結した場合について説明したが、過回転抑制誘導体30を回転軸24に対して回転方向の後縁側の偏倚位置に連結してもよい。この場合、初期状態において可動アーム23が後傾姿勢となり、風車1の回転に支障を来す虞がある。これを回避するために上記と同様にストッパ(図示せず)を設けて、可動アーム23の初期状態を水平姿勢にすればよい。
なお、初期状態において可動アーム23の頭上げ方向(前縁が上に動く向き)に傾斜する場合は、可動アーム23が傾斜した際に、鉛直上向きに揚力が働き、風車翼10やアーム20(第1固定アーム21、第2固定アーム22、可動アーム23)の重力を緩和するため望ましい。
【0049】
<第2実施形態>
第2実施形態の風車1は、第1実施形態の過回転抑制誘導体30の錘32に代えて、風車翼10と第1固定アーム21、第2固定アーム22、可動アーム23と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成される補助翼36を具備する。
【0050】
第2実施形態における補助翼36は、風車翼10と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されているので、以下の説明において、補助翼36と風車翼10の中空部を同一の符号を付して説明する。
第2実施形態における過回転抑制誘導体30Aは、可動アーム23の下部における回転軸24に対して回転方向の前縁側の偏倚位置に取り付けられる連結棒37を介して連結される補助翼36にて構成されている。
【0051】
過回転抑制誘導体30Aの可動アーム23への取付は、例えば、
図11に示すように、連結棒37の両端に雄ねじ部37aを設け、一端の雄ねじ部37aを補助翼36の中空部10cの上端側に嵌挿された座金38のねじ孔38aにねじ結合して補助翼36の上方へ突出させ、連結棒37を可動アーム23の中空部10cの上下部に設けられた貫通孔23a,23b内を貫通させ、その突出部に設けられた雄ねじ部37aにスペーサ33とワッシャ34を介してナット35をねじ結合することによって可動アーム23に過回転抑制誘導体30Aを取り付ける。ここでは、1本の連結棒37を用いて可動アーム23に過回転抑制誘導体30Aを取り付けているが、強度を持たせるためには、複数本の連結棒37を用いて上記と同様に可動アーム23に過回転抑制誘導体30Aを取り付ける方がよい。
なお、連結棒37を用いずに、主翼12と第2固定アーム22を連結すると同様に、ブラケットを介して可動アーム23の下面に補助翼36を直接取り付けるようにしてもよい。
【0052】
第2実施形態では、錘32に代えて補助翼36を用いているので、
図9、
図10に示すように、錘32の場合は空気力として抗力のみが作用するため多少の風車1の損失となっていたが、補助翼36の場合は、風車翼10の回転方位角(アジマス角)によっては、空気力Fa(水平方向を向く揚力)による回転方向成分F1が発生し、風車1の推進力になる。したがって、低回転数状態では、風車1の性能向上に寄与する。また、錘32と比べてデザイン性もよいという長所もある。補助翼36の翼弦長や形状は、可動アーム23と同じにする必要はないが、可動アーム23と同じ形状を補助翼36に用いることで、錘32の製作に要するコストの低減にもなり得る。
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0053】
上記のように構成される第2実施形態の風車1においても、風車1が高回転数状態時には、補助翼36に働く遠心力の回転方向成分F1による頭上げモーメントが大きくなり、傾角αを増加する。その結果、可動アーム23には空気力による大きな制動力F2が作用し、風車1の過回転を抑制する。ただし、強風状態では、低い回転数状態においても、可動アーム23に働く空気力のモーメントが頭上げの方向(前縁が上方に動く方向)に大きくなり、補助翼36に働く遠心力による頭上げの方向の回転モーメントに比べて支配的となり、大きな制動力F2を生み出す。その結果、強風状態では、風車1は低い回転数に抑制される。
【0054】
<その他の実施形態>
(1)上記実施形態では、可動アーム23の回転軸24を第1固定アーム21及び第2固定アーム22と主翼12の取付位置と同一線上に一致させたが、第1固定アーム21及び第2固定アーム22と主翼12の取付位置と平行な位置に可動アーム23の回転軸24を配置してもよい。
また、可動アーム23は板状のものであっても差し支えないが、風車翼10と同形状の中空部を有する翼型断面形状に形成されているのが望ましい。なお、第1固定アーム21及び第2固定アーム22の形状は任意の形状であってもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、固定アームが第1固定アーム21と第2固定アーム22の場合について説明したが、固定アームを第1固定アーム21のみとし、主翼12に固定(突設)された回転軸24と可動アーム23に設けられた軸受26とで可動アーム23を回転可能に連結してもよい。また、固定アームを第2固定アーム22のみとし、可動アーム23と第2固定アーム22のいずれか一方に突設された回転軸24と他方に設けられた軸受26とで可動アーム23を回転可能に連結してもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、可動アーム23を第1固定アーム21と第2固定アーム22の間に配設した場合について説明したが、アーム全体を可動アームとしてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では風車翼の形状が回転部3から延びる一対の延在部11と、風車翼10の垂直軸Zに略平行な方向に沿って延びる主翼12と、延在部11と主翼12とを連結部材(図示せず)によって湾曲状に連結する湾曲部13とを有する略三角形状に形成されたバタフライ型風車について説明した。この発明に係る風車はこれに限定されるものではなく、
図12(a)に示すように、水平アーム20の先端に垂直状主翼12を取り付けたH型ダリウス風車1A(この場合、第1固定アームと第2固定アームは何等かの方法で互いに拘束してあるものとする。)、
図12(b)に示すように、斜めアーム20の先端に垂直状主翼12を取り付けたH型ダリウス風車1B(斜めアーム)、あるいは、
図12(c)に示すように、水平アーム20の先端に円弧状主翼12を取り付けたダリウス風車1Cにも適用できる。
【0058】
次に、上記錘32を使用した過回転抑制機構と補助翼36を使用した過回転抑制機構を備えた風車の実施例(特性計算例)について説明する。
【0059】
<実施例1>
実施例1は、第1実施形態の錘使用の可動アーム式過回転抑制機構を備えた風車の特性計算例である。
図5、
図6に示した、第1実施形態の錘使用の可動アーム式過回転抑制機構を、
図13に示すように、直径14m、高さ14.2mの大きさを持つ、バタフライ型風車に適用した場合の風車特性の計算例を以下に示す。
【0060】
計算は翼素運動量複合理論(Blade Element Momentum method: BEM)に基づいて行った。翼型は対称翼のアメリカ航空諮問委員会の NACA0018を仮定し、その空力データ(揚力係数・抗力係数・モーメント係数)を用いている。風車翼の形状は
図1と同様であり、主翼として三角形状のループを構成し、その中央部に補強材としての水平アームを仮定した。ただし、水平アーム(固定アーム及び可動アーム)の断面も、主翼と同じNACA 0018翼型とし、翼弦長も同じ長さ(375mm)を想定した。なお、翼数は3枚を仮定している。発電機は定格10kWの永久磁石式多極発電機を想定し、増速機として7.5倍速を取り付けることも仮定している。
【0061】
図14と
図15は計算結果の一例であるが、想定している増速機付き発電機の負荷トルクを条件として、大きな年間発電量(計算結果では、年平均風速3.7m/sにおいて21,987 kWh)が得られた場合の結果である。この時、可動アーム23は、水平アーム20の一部として、風車回転中心から半径方向の5.5mから6.8mにわたって設置されている(すなわち、可動アーム23の長さは1.3m)。錘32は、風車の回転中心Cから半径方向の6.15mの位置(すなわち可動アーム23のスパンの中央位置)にある。錘32の質量は5 kg (直径106 mmのステンレス球)であり、錘支持棒31の長さは0.5mであって、可動アーム23の前縁から翼弦長の30%の位置に吊り下げられていると仮定している。主翼12及び水平アーム20(第1,第2固定アーム21,22+可動アーム23)は、その翼弦長の58%に、
図4で示した半径方向に伸びる一点鎖線で示した基準線が一致するように、風車の回転中心Cにあるハブ(図示せず)に取り付けられている。なお、水平アーム20は初期状態において多少頭上げ配置となるように、予め、初期傾角2度が設けられている。
【0062】
図14のトルク特性に示されるように、どのような風速(V)においても、風車のトルク曲線は、増速機付き発電機の負荷トルク曲線と、最大回転数41.7rpm以下で交点を持つことが予想されている。また、
図15に示す予想動作点における平均回転数と平均傾角の風速依存性に示されるように、風速が増加すると可動アームの平均傾角は増加し、風車の回転数は減少する。
【0063】
<実施例2>
実施例2は、第2実施形態の補助翼使用の可動アーム式過回転抑制機構を備えた風車の特性計算例である。
図16と
図17は、
図9、
図10に示した、補助翼36を使用した可動アーム式過回転抑制機構を、直径14m、高さ14.2mの大きさを持つ、バタフライ型風車に適用した場合の風車特性の計算例である。計算方法や想定している発電機・増速機などは、錘が補助翼に変わったこと以外は、
図14及び
図15の計算で仮定した内容と同じである。
【0064】
図16と
図17に示す結果は、年間発電量として、年平均風速3.7 m/sにおいて21,787kWhが得られた場合の結果である。この時、可動アーム23は、風車回転中心から半径方向の5.5mから6.8mにわたって設置されている(すなわち、可動アーム23の長さは1.3m)。補助翼36は、風車の回転中心から半径方向の6.15mの位置(すなわち可動アーム23のスパン中央位置)にある。補助翼36は、可動アーム23の中心から鉛直下方の50mmから700mmの長さにわたってあり(補助翼長さは650mm)、その質量は4.872 kg (アルミニウム製押出形材を仮定)である。補助翼断面内の重心位置(前縁から42.93%)は、可動アーム23の前縁から翼弦長の30%の位置(112.5 mm)に合わせて吊り下げられていると仮定している。主翼12及び水平アーム20(第1,第2固定アーム21,22+可動アーム23)は、その翼弦長の58%に、
図4で示した半径方向に伸びる一点鎖線で示した基準線が一致するように、風車の回転中心Cにあるハブ(図示なし)に取り付けられている。なお、水平アーム20は初期状態において多少頭上げ配置となるように、予め1.2度の傾角が設けられていると仮定している。
【0065】
図14の錘使用の場合とほぼ同様に、
図16のトルク特性に示されるように、どのような風速においても、風車のトルク曲線は、増速機付き発電機の負荷トルク曲線と、最大回転数42.3 rpm以下で交点を持つことが予想されている。また、
図15の錘使用の場合と同様に、
図17に示す予想動作点における平均回転数と平均傾角の風速依存性においても、風速が増加すると可動アーム23の平均傾角は増加し、風車の回転数は減少することが予想されている。
【0066】
図15及び
図17より、錘32、補助翼36のいずれの場合でも、風速40 m/s 以上、あるいは60 m/s程度の極値風の中でも、風車は最大回転数(約42 rpm)の半分以下の低い回転数で回転することが予想されている。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B,1C 風車
2 基部
3 回転部
10 風車翼
11 延在部
12 主翼
13 湾曲部
20 アーム
21 第1固定アーム(第1固定部)
22 第2固定アーム(第2固定部)
23 可動アーム(可動部)
24 回転軸
26 軸受
30,30A 過回転抑制誘導体
31 支持棒
32 錘
36 補助翼
37 連結棒
40 ストッパ
α 傾角
Fa 空気力
F1 回転方向成分
F2 制動力
C 回転中心
X 水平軸
Z 垂直軸