(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
F21S 43/239 20180101AFI20240913BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240913BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240913BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240913BHJP
【FI】
F21S43/239
F21S2/00 435
F21W103:00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021019456
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】小泉 浩哉
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-197016(JP,A)
【文献】特許第5701434(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0215950(US,A1)
【文献】特開2012-079559(JP,A)
【文献】特開2020-173985(JP,A)
【文献】特開2003-270446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/239
F21S 2/00
F21W 103/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、表面と裏面を有し内部に前記光源の光を導光する導光体を備え、前記導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、前記複数の光反射ステップにおいて反射されかつ前記導光体の表面から出射される光により所要の発光パターンが構成される車両用ランプであって、
前記複数の光反射ステップは
、
前記導光体の内部を導光される光を
それぞれ相違する方向に向けて指向性を有する状態で反射する複数の第1光反射ステップ
と、
前記導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射する複数の第2光反射ステップを備え、
一の視認位置では第1光反射ステップの一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンが視認され、
前記一の視認位置と異なる視認位置では第1光反射ステップの他の一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された前記所要の発光パターンと部分的に異なる発光パターンが視認される車両用ランプ。
【請求項2】
前記第2光反射ステップで反射される光の発光パターンは、前記一の視認位置と前記異なる視認位置で同じ発光パターンが視認される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され、出射される光の方向が相違する複数の第1光反射ステップは、それぞれ導光体における反射面の角度が相違されている請求項
1または2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている請求項
1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記光反射ステップは、それぞれ複数の第1光反射ステップで構成された複数のステップ群として構成され、同じステップ群の第1光反射ステップから出射される光の方向は同じであり、異なるステップ群の第1光反射ステップから出射される光の方向が相違される請求項1ないし
4のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記ステップ群は、複数の第1光反射ステップが線状に配列された複数のステップ列として構成される請求項
5に記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記第1光反射ステップは、導光板から出射される光の方向が少なくとも水平方向に相違される請求項1ないし
6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記導光体は、配設される車両の車体形状の曲面に倣って裏面と表面が湾曲された板状に形成される請求項1ないし
7のいずれかに記載の車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設されるランプに関し、特に導光体を用いたランプであって、複数の異なる方向から視認したときに異なる発光パターンが視認される車両用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ランプの一つとして導光体を用いたランプが提案されている。このランプは、導光体の表面が自動車の車体外面側に向けて配置され、導光体の裏面側に所要のパターンの光反射ステップが形成されている。そして、光源の光を導光体の内部に入射すると、導光体の内部を導光される光の一部が光反射ステップにおいて反射され、その反射光が導光体の表面から出射される。これにより、光反射ステップのパターン形状に対応した発光パターンのランプとして機能されることになる。
【0003】
特許文献1には、この種のランプにおいて、導光体の表面に凸レンズを配設し、この凸レンズによる光屈折効果を利用することにより、異なる方向から視認したときに発光パターンが異なる発光パターンが視認されるようにしたランプが提案されており、ランプの意匠的な効果を高めることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のランプは、いわゆるレンチキュラーレンズを用いた技術であると言え、導光体の表面に凸レンズを形成し、裏面に光反射ステップを形成しているので、導光体の表面と裏面にそれぞれ加工を施す必要があり、構造が複雑になるとともに、その製造が難しくなる。また、光反射ステップは凸レンズに対応した位置に配設する必要があるので光反射ステップの配設位置に制約を受けることになり、光反射ステップにより構成される発光パターンのパターン形状の設計の自由度に制限を受けるとともに、光反射ステップを所定の位置に形成するための設計も難しくなる。
【0006】
本発明の目的は、導光体の構成を簡略化するとともに、発光パターンのパターン形状の自由度を高め、さらに導光体の設計、製造を容易に行なうことが可能な車両用ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光源と、表面と裏面を有し内部に前記光源の光を導光する導光体を備え、導光体はその裏面に内部を導光される光を反射して表面から出射させる複数の光反射ステップが形成されており、複数の光反射ステップにおいて反射されかつ導光体の表面から出射される光により所要の発光パターンが構成される車両用ランプであって、複数の光反射ステップは導光体の内部を導光される光を所要の方向に向けて反射する複数の第1光反射ステップを含み、これら複数の第1光反射ステップで反射されて導光体から出射される光の方向がそれぞれ相違される構成である。
【0008】
本発明は、さらに、光反射ステップは、導光体の内部を導光される光を指向性がない状態で反射して表面から出射させる第2光反射ステップを備える。そして、第1光反射ステップにより構成される発光パターンと、第2光反射ステップにより構成される発光パターンが結合されて発光パターンが構成される。一の視認位置では第1光反射ステップの一部と第2光反射ステップで反射される光が結合されて所要の発光パターンが視認され、これと異なる視認位置では第1光反射ステップの他の一部と第2光反射ステップで反射される光が結合された所要の発光パターンと部分的に異なる発光パターンが視認される。
【0009】
本発明の好ましい形態として、第1光反射ステップは円柱状又は角柱状の凹部として構成されてその底面が反射面として構成され、出射される光の方向が相違する複数の第1光反射ステップは、それぞれ導光体における反射面の角度が相違される。また、第2光反射ステップは球面状又は円錐面状の凹部で構成されてその底面が反射面として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導光体の表面が平坦に構成されていても、ランプに対する視認位置が移動すると、これに応じて異なる発光パターンを視認することができる。これにより、導光体の表面に凸部やレンズ等を形成する必要がなく、また凸部やレンズ等を所定の正確な位置に形成する必要がなく、導光体の構成を簡略化するとともに導光板の設計、製造を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明をリアコンビネーションランプに適用した自動車の一部の外観図と、そのリアコンビネーションランプの一部を破断した概略斜視図。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った拡大断面図。
【
図4】光反射ステップの1つの単位パターンを説明する図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB部の拡大図。
【
図5】第1光反射ステップと第2光反射ステップでの光反射形態を説明する模式図。
【
図6】複数のステップ列の第1光反射ステップの形態を模式的に示す図。
【
図7】第1光反射ステップの傾斜角度を設定する手法を説明する模式図。
【
図8】視認者が移動したときに視認される発光パターンが相違することを説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を車体の後部左側に配設された左リアコンビネーションランプL-RCLに適用した自動車CARの部分斜視図である。この左リアコンビネーションランプL-RCLはテールランプTLとターンシグナルランプTSLとバックアップランプBULを備えており、当該テールランプTLに本発明が適用されている。右リアコンビネーションランプR-RCLはこの左リアコンビネーションランプL-RCLと左右対称の構成であるので、以降は左リアコンビネーションランプL-RCLで代表して説明する。
【0013】
図1には左リアコンビネーションランプL-RCLを自動車CARの車体から取り外した状態の一部を破断した概略斜視図を併せて示している。左リアコンビネーションランプL-RCLは、自動車CARの車体の後部左角部に取り付けられたランプボディ101と、当該後部左角部の湾曲形状に倣って少なくとも水平方向に凸状に湾曲され、ランプボディ11の正面開口に取り付けられた透明な透光カバー102とで構成されたランプハウジング100を備えている。このランプハウジング100は内部が複数の領域に区画され、各領域に前記したテールランプTLとターンシグナルランプTSLとバックアップランプBULが一体的に組み込まれている。ターンシグナルランプTSLとバックアップランプBULの構成は特に限定されるものではないので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0014】
前記テールランプTLは、光源部1と、板状の導光体(以下、導光板)2を備えたランプユニットとして構成されている。
図2はこのランプユニットの正面図であり、
図3はそのIII-III線の拡大断面図である。光源部1は、給電されたときに赤色光を発光するLED(発光ダイオード)11を備えており、このLED11は発光面を下方に向けた状態で、前記ランプボディ101に取り付けられた支持基板12に搭載されている。この支持基板12には、図示は省略するが、LED11を発光するための発光回路が構成されている。これにより、発光回路を通してLED11に給電され、LED11が発光されたときには発光面からは下方に向けて赤色光が出射される。
【0015】
前記導光板2は光を透過する透明樹脂、例えばPMMA(アクリル)樹脂で形成されており、鉛直方向にはほぼ真直で、水平方向にはランプハウジング100の湾曲形状に倣って幾分正面方向に凸状に湾曲したほぼ均一な厚さの板部材として形成されている。この導光板2は前記光源部1の下側に位置されて前記ランプボディ101に取り付けられている。ここで、導光板2の両板面のうち、テールランプTLの正面側に向けられた面を表面21とし、その反対側の面を裏面22とする。
【0016】
また、前記導光板2は上辺よりも下辺が長い台形に形成されており、その上端面23は前記LED11の発光面に対向位置されている。この上端面23にはLED11から出射された光を効率良く入射させるための入射レンズ24が形成されており、この入射レンズ24によりLED11の光は幾分発散されるように導光板2の内部に均等に入射され、さらに導光板2の内部においては上方領域から下方領域に向けて導光板2のほぼ全域にわたって導光される。
【0017】
さらに、前記導光板2の裏面22には、詳細を後述する光反射ステップ3が所要のパターンで形成されている。この光反射ステップ3は、
図3に示したように、導光板2の裏面22を所要の形状に凹設した微小サイズの凹部として構成されている。テールランプTLが点灯されたとき、すなわちLED11が発光されたときには、
図3に矢印線で示すように、導光板2の内部を導光された光を光反射ステップ3の凹底面において反射し、導光板2の表面21から出射させる。この表面21から出射された光は前記透光カバー102を透過してテールランプTLの正面方向に出射され、テールランプTLの照射光とされる。
【0018】
したがって、テールランプTLの点灯時には、ランプ正面から視認すると、導光板2のほぼ全面が低輝度の赤色で発光した外観となるが、光反射ステップ3で反射されて導光板2の表面21から出射される光により、複数の光反射ステップ3で構成された高輝度の発光パターンが視認され、テールランプTLの意匠性が向上されることになる。また、この実施形態では、テールランプTLはストップランプを兼用する構成とされており、自動車の減速、停止時にはLED11で発光する赤色光の光度が高められ、テールランプとして点灯する時よりも高い輝度の発光パターンとして発光されるようになっている。
【0019】
前記光反射ステップ3で構成される発光パターン4は、この実施形態では、
図2に示したように、複数の光反射ステップ3により偏平な台形枠状をした5つの単位パターン41~45が鉛直方向(同図の上下方向、以下同じ)に配列された発光パターン4として構成されている。これら5つの単位パターン41~45は、上から下に向けて水平方向(同図の左右方向、以下同じ)のサイズが徐々に短くされているが、基本的なパターン形状はほぼ同じである。
【0020】
図4(a)は、前記5つの単位パターン41~45のうちの一つの単位パターン43の正面図である。単位パターン43は水平方向に延びる上辺部4u及び下辺部4dと、これらの両端において傾斜された左辺部4lと右辺部4rで台形枠状に構成されている。上辺部4uと下辺部4dは所要の上下方向の幅寸法を有する直線状領域として構成されている。左辺部4lと右辺部4rは下端部から上端部に向けて水平方向の幅寸法が徐々に増加するテーパ状領域として構成されている。
【0021】
その上で、前記光反射ステップ3は、左辺部4lと右辺部4rに配列された光反射ステップ31と、上辺部4uと下辺部4dに配列された光反射ステップ32は異なる形態のステップで構成されている。ここでは、左辺部4lと右辺部4rに配列された光反射ステップ31を第1光反射ステップと称し、上辺部4uと下辺部4dに配列された光反射ステップ32を第2光反射ステップと称する。
【0022】
図4(b)は、
図4(a)のB部の拡大図であり、左辺部4lの第1光反射ステップ31と下辺部4dの第2光反射ステップ32の各一部が示されている。第1光反射ステップ31は、水平方向について所要の方向に向けて光を反射するステップ形状、すなわち水平方向に指向性を有する光反射を行なう光反射ステップとして形成されている。ここでは、柱軸を水平方向ないし水平方向に対して所要の角度で傾斜された円柱状の凹部、換言すればシリンドリカル(かまぼこ)状の凹部として形成されている。
【0023】
このシリンドリカル状の凹部からなる第1光反射ステップ31は、
図5(a)に模式図を示すように、上方から導光されてきた光Lが投射されたときには、その周面において鉛直方向Vにはある程度の発散状態で光反射するが、水平方向Hには光Lの発散が抑制された指向性を有する状態で光反射する構成である。なお、図示は省略するが、第1光反射ステップ31は水平方向に指向性のある反射を行なう構成であれば、水平方向と鉛直方向の両方に指向性のある光反射を行う三角柱や四角柱の凹部として形成されてもよい。
【0024】
一方、
図4(b)に示した第2光反射ステップ32は、水平方向及び鉛直方向にそれぞれ発散状態で光反射を行なうステップ、ここでは球面状の凹部として形成されている。この球面状の凹部からなる第2反射光ステップ32は、
図5(b)に模式図を示すように、上方から導光されてきた光Lが投射されたときには、その球面において鉛直方向Vと水平方向Hのそれぞれに発散状態で光反射する構成である。なお、図示は省略するが、第2光反射ステップ32は、鉛直方向Vと水平方向Hのそれぞれに発散状態で光反射する構成であれば円錐状の凹部として形成されてもよい。
【0025】
そして、
図4(a)に示したように、左辺部4lと右辺部4rでは、第1光反射ステップ31は、それぞれ右上がり、左上がりの複数列で整列するように配列されており、この配列により前記したテーパ状領域が構成されている。また、上辺部4uと下辺部4dでは、第2光反射ステップ32は鉛直方向及び水平方向にマトリクス状又は所定の規則で配列されており、この配列により前記した直線状領域が構成されている。
【0026】
その上で、左辺部4lと右辺部4rの第1光反射ステップ31は、それぞれ所要の光反射特性を有するステップ形状に構成されている。例えば、
図4に示したように、左辺部4lでは、複数の第1光反射ステップ31が右上がり方向に傾斜した一列に配列されるとともに、この列がほぼ水平方向に並んだ複数列に配列されている。ここでは便宜的にランプにおける車幅方向外側(同図の左側)から車幅方向内側(同図の右側)に向けて右下がりに順次第1ステップ列C1ないし第nステップ列Cn(nは正の整数)とする。これら第1ステップ列C1ないし第nステップ列Cnは、それぞれ下端部は近接配置されているが、右斜め上側に向けて相互の間隔寸法が徐々に増加する配列とされている。
【0027】
このように配列された第1光反射ステップ31は、同じステップ列を構成している複数の第1光反射ステップはそれぞれ導光されてきた光を同じ方向に向けて反射するようにシリンドリカル凹部の反射面の方向が設定されている。すなわち、各ステップ列C*(*は1~n)を構成する複数の第1光反射ステップ31は全て同じ方向に向けて光を反射し、導光板の表面から出射するように形成されている。その一方で、各ステップ列C*の相互間については、導光されてきた光を反射する方向が相違するようにシリンドリカル凹部の反射面の方向が設定されている。
【0028】
図6は一部のステップ列Ci,Ci+1,Ci+2(iは自然数)の各第1光反射ステップ31の形態を模式的に示す図である。
図3に示したように、導光板2の内部を導光された光が各ステップ列の第1光反射ステップ31に対して上方から投射されると、各光反射ステップ31で反射された光はランプ正面方向に対して水平方向にそれぞれ特定の角度方向に向けられ、その後導光板2の表面21から出射されるように構成されている。
【0029】
すなわち、車幅方向外側のステップ列Ciの第1光反射ステップ31を構成しているシリンドリカル凹部の長手方向の軸(柱軸)が水平線H(水平方向に延びる線)に対してなす傾斜角度θtiは、これよりも車幅方向内側のステップ列Ci+1の第1光反射ステップ31で反射された傾斜角度θti+1よりも大きくされている。同様に、ステップ列Ci+1の第1光反射ステップ31の傾斜角度θti+1は車幅方向内側のステップ列Ci+2の第1光反射ステップ31の傾斜角度θti+2よりも大きくされている。
【0030】
各ステップ列の第1光反射ステップ31で反射されて導光板2から出射される出射光がランプ正面方向に対してなす角度を出射角度とすると、この例では、車幅方向外側のステップ列Ciの第1光反射ステップ31で反射された光D1の出射角度θoiは、これよりも車幅方向内側のステップ列Ci+1の第1光反射ステップ31で反射された光D2の出射角度θoi+1よりも大きい。同様に、相対的に車幅方向外側のステップ列Ci+1で反射された光D2の出射角度θoi+1は、車幅方向内側のステップ列Ci+2で反射された光D3の出射角度θoi+2よりも大きい。
【0031】
なお、この実施形態では、
図4(b)からも判るように、車幅方向の最も内側ないしその近傍に配置されている一部のステップ列、例えばステップ列Cn等では第1光反射ステップ31の傾斜角度は逆方向に傾斜された角度とされている。このような傾斜が逆方向になる第1光反射ステップ31で構成されるステップ列では、ランプ正面方向に対して車幅方向内側に向けて反射されるように構成されている。そして、全てのステップ列C*で反射された光の方向はテールランプTLに要求される配光特性を満たす領域に向けられる。
【0032】
図7は各ステップ列における第1光反射ステップ31の傾斜角度を設計する一つの手法を説明するための概念図である。
図7(a)は第1光反射ステップ31を構成している半円柱状のシリンドリカル凹部を正面から見た図であり、水平線Hに対する柱軸Aの傾斜角度θtiを設計する。
図7(b)に示すように、導光板2の上端面23から入射されて、導光板2の内部を導光された入射光Linの光路R1を設定し、この入射光Linが設計対象となる第1光反射ステップ31に投射して反射される反射点P1を設定する。
【0033】
一方、この反射点P1から導光板2の表面21に向けられ、この表面21において屈折されて出射される出射光Loutの反射光路R2を設定する。この反射光路R2の設定では、導光板2を構成する樹脂の屈折率を考慮し、表面から出射される出射光Loutの出射角度が所定の角度θoiとなるように設定する。このとき、出射光Loutの反射光路R2を水平なXY面Fに投影した状態で出射角度θoiを設定することにより、水平方向における正確な出射角度θoiの設定が可能になる。
【0034】
しかる上で、反射点P1において入射光路R1と出射光路R2がなす角度θttを求め、この角度θttを二分する垂線Tを求める。そして、この垂線Tに対して柱軸Aが垂直になる角度を演算することにより、傾斜角度θtiが得られる。なお、ここで説明した手法は一例であり、種々の他の手法により傾斜角度を演算することができるので、本発明はこの手法に限定されるものではない。
【0035】
ここで、導光板2はLED11の光が発散される状態で上側から下方に向けて内部を導光されるので、各第1光反射ステップ31に入射する入射光の方向は一定ではない。また、この実施形態では導光板2は自動車の車体後部左右の曲面形状に倣って表面及び裏面が水平方向に湾曲されているので、各第1光反射ステップ31の傾斜角度は必ずしもランプ正面方向から見た角度とは一致しない。そのため、同じステップ列C*の第1光反射ステップ31の傾斜角度は必ずしも正確に同じ角度にならないことがある。
【0036】
以上の説明は左辺部4lにおける第1光反射ステップ31の例を説明したが、右辺部4rにおいても同様に第1光反射ステップ31は車幅方向に並ぶ複数のステップ列として構成され、かつ各ステップ列はそれぞれ複数の第1光反射ステップ31で構成されている。ただし、右辺部4rにおいては、
図4(a)からも解るように、各ステップ列は左上がりないし鉛直上方に向けた配列とされている。また、各ステップ列を構成する第1光反射ステップ31の個数も左辺部4lよりも少なくなっている。
【0037】
左辺部4lと右辺部4rでは、このような構成の相違が存在するが、右辺部4rを構成するステップ列の数は左辺部4lと同じである。また、図示は省略するが、右辺部4rの車幅方向に並んだ複数のステップ列において反射される出射光が導光板2から出射される光の出射角度θoiは、それぞれ左辺部4lにおいて車幅方向に並んだ複数のステップ列の出射角度θoiと同じにされている。すなわち、左辺部4lにおいて左側からX番目のステップ列Cxの出射角度と、右辺部4rにおいて左側からX番目のステップ列Cxの出射角度は等しくなるように設定されている。
【0038】
以上の構成のリアコンビネーションランプでは、光源部1のLED11が給電されて発光すると、
図3に示したように、LED11の発光面から出射された光は導光板2の上端面23の入射レンズ24を通して導光板2に入射され、導光板2の内部を下方に向けて若干発散状態で導光される。導光された光は導光板2の裏面に形成されている全ての光反射ステップ3、すなわち第1光反射ステップ31と第2光反射ステップ32にまで導光され、それぞれにおいて反射される。反射された光は導光板2の表面21から出射される。
【0039】
これにより、
図8の概念図に示すように、視認者が自動車CARの後方からリアコンビネーションL-RCLを視認すると、各光反射ステップ31,32が点状にないしは若干広がった面状に発光された発光パターンとして視認され、さらにこれらの光反射ステップ31,32の発光パターンが結合された発光パターン4として視認される。この例では、5つの台形をした単位パターン41~45が上下方向に配列された発光パターン4が視認される。
【0040】
そして、視認者がテールランプTLの正面方向に対して左右方向の所定角度位置に移動すると視認されるパターン形状が変化される。すなわち、単位パターンの右辺部4rと左辺部4lでは各ステップ列で反射された光は導光板2から出射される光の方向が相違している。そのため、最も左側の角度位置から視認する視認者M1には、右辺部4rと左辺部4lのそれぞれ左側の位置に配列されているステップ列からの出射光が視界に入る。すなわち、これらのステップ列による発光パターンが視認される。
【0041】
これよりもテールランプTLの右側に移動した視認者M2は、視認者M1の位置の場合よりも右辺部4rと左辺部4lの幾分右側の位置に配列されているステップ列からの出射光が視界に入り、これらのステップ列による発光パターンが視認される。さらにテールランプTLの右側に移動した視認者M3は、さらに右辺部4rと左辺部4lの幾分右側の位置に配列されているステップ列からの出射光が視界に入り、これらのステップ列による発光パターンが視認される。
【0042】
すなわち、
図4(b)に示した左辺部4lの構成例の場合には、例えば、視認者M1はステップ列C1による発光パターンが視認され、視認者M2はステップ列C5による発光パターンが視認され、視認者M3はステップ列C8による発光パターンが視認されることになる。このとき、他のステップ列から出射される光は視認者の眼に入らないので、当該他のステップ列による発光パターンは視認されない。
【0043】
ここで、各第1光反射ステップ31で反射される光は、
図5(a)に示した反射特性を有しており、水平方向には殆ど発散されることはなく、鉛直方向では発散されるので、隣接する第1光反射ステップ31の光が一部において互いに重畳される。特に、鉛直方向について一部が重畳される。これにより、このステップ列の第1光反射ステップ31による発光パターンは相互に連結された状態となり、所要の角度で傾斜する細目の斜線状の発光パターンとして視認される。
【0044】
一方、単位パターン41~45の上辺部4uと下辺部4dについては、それぞれ直線状領域を構成している第2光反射ステップ32は、
図5(b)に示したように反射の指向性が少ないため、少なくとも水平方向には広い領域に向けて出射される。したがって、視認者の移動にかかわらず、ほぼ全ての第2光反射ステップ32の光が視認者の眼に入り、水平方向に延びる太い線状のパターンとして視認される。
【0045】
このように、視認者がテールランプTLの正面に対して異なる位置に移動すると、視認される各単位パターン41~45は、上辺部4uと下辺部4dの発光パターンは変化されないが、左辺部4lと右辺部4rの発光パターンは変化される。この実施形態では、視認者がテールランプTLの側方から正面側に移動するのに伴って左辺部4lと右辺部4rの線状をした発光パターンの傾斜が大きくなるように視認される。換言すれば、台形枠状の斜辺の傾斜角度が大きくなり、各単位パターンの形状が変化するように視認される。この形状の変化は鉛直方向に配列された5つの単位パターン41~45の全てにおいてほぼ同じであるので発光パターン4の形状が変化したような視認性が得られる。
【0046】
また、自動車が移動しているときには、外部にいる視認者は、ランプの光る様子が動いて見える部分と静止して見える部分とを見ることになり、観察される形状が変化される。これにより、視認者がランプに気付いて認識し易くなるとともに、確実のランプを確認することができる。
【0047】
なお、単位パターンの左辺部4lと右辺部4rの第1光反射ステップ31はシリンドリカル凹部で構成されているので、
図5(a)に示したように、その円周面からなる反射面で反射される光は鉛直方向に若干発散される。そのため、視認者の眼の高さ位置が相違していても左辺部4lと右辺部4rの各第1光反射ステップ31からの反射光は眼に入り、身長が相違する視認者でも発光パターンを視認することが可能となる。上辺部4uと下辺部4dの第2光反射ステップ32も鉛直方向に発散されるので同様である。
【0048】
以上のように、導光板2の表面21が平坦に構成されていても、テールランプTLに対する視認位置が移動すると、これに応じて第1光反射ステップ31により異なる発光パターンを視認することができる。したがって、導光板2の表面に特許文献1のような凸部を形成する必要がなく、導光板2の構成を簡略化することができる。また、これに伴い、導光板2の裏面22に形成される光反射ステップ31,32を表面の凸部に対応させて正確な位置に形成する必要がなく、導光板2の設計、製造を容易に行なうことができる。
【0049】
第1光反射ステップ31を三角注、四角注等の角柱状の凹部として構成した場合には、反射される光は鉛直方向にもある程度の指向性が生じるので、発光パターンが視認可能な高さ範囲はシリンドリカル凹部よりも狭くなる。しかし、この鉛直方向の指向性により、光の発散が抑制されるので、視認者においてはより明るい発光パターンが視認される。
【0050】
実施形態では、表面及び裏面が水平方向に湾曲した導光板として構成されているが、平面に形成された導光板として構成されている場合でも同じである。また、光源としてのLEDと導光板との間に集光性のあるレンズ等の光学系を配設すれば、光を導光板の内部で平行に導光させることができるので、導光板の正面形状を四角形に形成してもよい。また、この場合には、複数の第1光反射ステップに入射される光の方向が同じであるので反射面の角度の設定を容易に演算して形成することが可能になる。
【0051】
実施形態では台形枠状の単位パターンが結合された発光パターンの例を示したが、この形状に限られるものではない。また、台形枠状のパターンとして構成した場合でも光反射ステップの形態、特にステップ列の数や配列形態を左辺部と右辺部で同じにする必要もない。さらに、第1光反射ステップで構成される発光パターンは線状でなくてもよく、所要の形状を構成する面状に形成されるようにしてもよい。この場合、実施形態に記載した複数の第1光反射ステップで構成されるステップ列は、複数の第1光反射ステップが面状に配置されたステップ群として構成される。このように第1光反射ステップによる光の出射方向が相違する光ステップ群を混在させた面状のパターンを構成することにより、視認される発光パターンの面形状が変化されるので、意匠効果をより高めることができる。
【0052】
本発明は実施形態に記載したテールランプに適用することに限られるものではなく、導光板を用いたランプであれば適用できる。また、光源の種類や導光板の形状は適宜に変更することが可能である。例えば、自動運転中を表す用途のランプとしても良い。この場合は、ターコイズ色で光らせたりすることができる。また、点滅させてウェルカムランプとしても良い。この場合、人が車に近づくと点滅して見え方が変化する新しい見せ方ができる。
【符号の説明】
【0053】
1 光源部
2 導光板(導光体)
3 光反射ステップ
4 発光パターン
11 LED(光源)
12 支持基板
21 表面
22 裏面
23 上端面
24 入射レンズ
31 第1光反射ステップ
32 第2光反射ステップ
41~45 単位パターン(発光パターン)
CAR 自動車
TL テールランプ(車両用ランプ)
C1~Cn ステップ列(ステップ群)