(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】骨固定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61B17/70
(21)【出願番号】P 2021026611
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-11-22
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホルト・ダネッカー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・フィッシャー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0296256(US,A1)
【文献】特表2003-505138(JP,A)
【文献】特開2014-198248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0278832(US,A1)
【文献】特開2008-126066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0023061(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨に固定するためのシャンク(2)とヘッド(3,3’,3")とを有する固定要素(1,1’,1")と、
前記固定要素の前記ヘッド(3)を受ける受け部(5)とを備え、前記受け部は、前記シャンク(2)が前記受け部に対して所定の角度位置を含む複数の角度位置をとることができるように前記ヘッドを枢動可能に受けるように構成されており、前記受け部は、中心軸(C)を定義する通路(51)を有し、
前記受け部内で前記ヘッドをクランプするために前記ヘッド(3,3',3")に圧力をかけるように構成された圧力部材(6,6')をさらに備え、前記圧力部材は、前記通路内に少なくとも部分的に配置され、
前記ヘッド(3,3',3")は、前記圧力部材(6)の第2の位置指示構造と係合するように構成された第1の位置指示構造を定義する外側表面部を有し、
前記第1の位置指示構造又は前記第2の位置指示構造は、第1の曲率を定義する第1の湾曲部(31)と前記第1の曲率とは異なる第2の曲率を定義する第2の湾曲部(32)との間の遷移(33)を含み、
前記第1の位置指示構造と前記第2の位置指示構造とが相互に係合し、前記ヘッドが前記複数の角度位置のうちの1つから前記所定の角度位置に枢動されるとき、前記遷移は、前記第2の又は前記第1の位置指示構造のそれぞれの他方によって通過され、前記受け部(5)に対する前記シャンク(2)の前記所定の角度位置の指示を提供する、骨固定装置。
【請求項2】
前記第1の位置指示構造は、前記遷移(33)を含む、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記第1の湾曲部(31)は、前記第2の湾曲部(32)よりも湾曲が少ない、請求項1又は2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記第1の湾曲部(31)は、第1の半径(R1)と関連付けられ、前記第2の湾曲部(32)は、第2の半径と関連付けられ、前記第1の半径は、前記第2の半径とは異な
る、請求項1から3のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記第1の湾曲部(31)と前記第2の湾曲部(32)との間の前記遷移(33)は、連続している、請求項4に記載の骨固定装置。
【請求項6】
前記第2の湾曲部(32)は、前記ヘッド(3)の自由端(3a)と近接又は隣接して配置されている、請求項2から
5のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記
第2の位置指示構造は、前記第1の湾曲部(31)と前記
第1の位置指示構造の前記第2の湾曲部(32)との間の前記遷移(33)を通過するように構成されたエッジ(65)を含む、請求項1から
6のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記圧力部材(6、6')は、前記
第2の位置指示構造(65)を定義する挿入された前記ヘッド(3)に面する内面を含むヘッド受け凹部(64)を有し、前記内面は、前記第1の湾曲部(31)の曲率に一致する第3の湾曲部(64a,64b)を有する、請求項2から
7のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記ヘッド受け凹部(64)は、前記ヘッドがロックの前にその中で摩擦によって保持されるようにスナップフィット方式で前記ヘッド(3,3',3")を受けるように構成されている、請求項
8に記載の骨固定装置。
【請求項10】
前記第1又は前記第2の位置指示構造は、溝(35)をさらに有する、請求項1から
9のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記第1の位置指示構造は、第1の平坦部(34)をさらに有し、前記第2の位置指示構造は、前記第1の平坦部と係合するように構成された第2の平坦部(64d)をさらに有
する、請求項1から
10のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項12】
前記第1の平坦部及び前記第2の平坦部は、円錐形である、請求項11に記載の骨固定装置。
【請求項13】
前記第1及び/又は前記第2の位置指示構造は、それぞれの対称軸(C,S)まわりに回転対称である、請求項1から
12のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項14】
前記ヘッド(3')
の外側表面部は、実質的に球形のセグメント形状部(31’)を有し
、
前記第1の位置指示構造は、第1の円錐部(34)を含み、前記第2の位置指示構造は、前記ヘッド(3’)が前記所定の角度位置にあるときに前記第1の円錐部と係合するように構成された第2の円錐部(64d)を有する、
請求項1から13のいずれかに記載の骨固定装置。
【請求項15】
前記第1の円錐部(34)は、前記実質的に球形のセグメント形状部(31’)の2つの球形セクション間に挟まれている、請求項
14に記載の骨固定装置。
【請求項16】
前記第1の円錐部(34)は、前記ヘッドの自由端(3a)よりも前記シャンク(2)に近い前記ヘッド(3’)の下側にある、請求項
14又は
15に記載の骨固定装置。
【請求項17】
前記受け部(5)は、第1の端部(5a)及び反対側の第2の端部(5b)と、前記第1の端部でロッド(100)を受けるための凹部(54)と、を有し、前記通路(51)は、前記第2の端部に開口部(52)を形成しつつ前記第1の端部と前記第2の端部とを通って延び、前記開口部は、前記第2の端部(5b)を通じた前記
ヘッド(3,3',3")の挿入を許容するような大きさである、請求項1から
16のいずれかに記載の骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受け部に対する骨アンカーの所定の角度位置を示すことを可能にする多軸タイプの骨固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの骨固定装置は、米国特許第9833263号明細書から知られている。そこに記載された骨固定アセンブリは、受け部材とシャンクとの相対的な位置関係を示すための1つ以上の特徴を含み、1つ以上の特徴は、例えば、シャンクが受け部材に対して特定の方向に位置決めされたときに触覚又は可聴フィードバックを提供するためにドラッグリングと相互作用する骨アンカーのヘッドに含まれている表面特徴の形態である。別の実施形態では、骨アンカーのヘッド及び受け部材に配置された圧縮キャップは、各々、受け部材に対するシャンクの向きの選択的ロックを可能にするように協働する係合特徴を含むことができる。公知の骨固定アセンブリでは、ヘッドと受け部材との間の相互作用は、シャンクの特別な角度位置を指示するために必要とされる。別の方法として、向きの指示機能がヘッドと圧縮キャップのみに提供されている場合、圧縮キャップの位置は、受け部材に対するシャンクの位置に結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある目的は、受け部材に対するシャンクの位置を示すことを可能にする改良された又は代替の骨固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的は、請求項1又は請求項12にしたがった骨固定装置によって解決される。さらなる発展は、従属請求項に記載されている。
【0006】
ある局面によれば、骨固定装置が提供され、骨固定装置は、骨に固定するためのシャンクとヘッドとを有する固定要素と、固定要素のヘッドを受ける受け部とを備え、受け部は、シャンクが受け部に対して所定の角度位置を含む複数の角度位置をとることができるようにヘッドを枢動可能に受けるように構成されており、受け部は、中心軸を定義する通路を有し、骨固定装置は、受け部内でヘッドをクランプするためにヘッドに圧力をかけるように構成された圧力部材をさらに備え、圧力部材は、通路内に少なくとも部分的に配置される。ヘッドは、圧力部材の第2の位置指示構造に係合するように構成された第1の位置指示構造を含み、受け部に対するシャンクの所定の角度位置の指示を提供する。好ましくは、圧力部材は、ヘッドの少なくとも一部を受けるためのヘッド受け凹部と、ヘッドがヘッド受け凹部内で摩擦によって保持されるような方法でヘッドを包囲するように構成されたセクションと、を有している。
【0007】
一実施形態では、第1の位置指示構造又は第2の位置指示構造は、異なる曲率を有する第1の湾曲部と第2の湾曲部との間の遷移を含む。第1の位置指示構造と第2の位置指示構造とが相互に係合し、ヘッドが複数の角度位置の一つから所定の角度位置に枢動されるとき、遷移は、第2の位置指示構造又は第1の位置指示構造のそれぞれの他方によって通過される。これは、フィードバックを生成する。このようなフィードバックは、ユーザによって受け取られることができ、及び/又は検出器によって検出することができる。
【0008】
より具体的には、第1及び第2の湾曲部は、互いに隣接するとともに異なる半径を有するヘッドの表面部であってもよい。圧力部材に設けられた第2の位置指示構造が、半径の小さい表面部から半径の大きい表面部に移動すると、フィードバックが生成される。
【0009】
別の実施形態では、第1の位置指示構造は、第1の平坦部をさらに含み、第2の位置指示構造は、第1の平坦面部と係合するように構成された第2の平坦部をさらに含み、好ましくは、第1及び第2の平坦面部は、円錐部である。より具体的には、ヘッドは、実質的に球状のセグメント形状部を有していてもよく、第1の円錐部は、実質的に球状のセグメント形状部の2つの球形セクションの間に挟まれてもよい。第2の円錐部は、圧力部材に設けられていてもよい。
【0010】
さらなる実施形態では、第1の位置指示構造は、溝を含み、第2の位置指示構造は、少なくとも部分的に溝に入るように構成されたエッジ又は突起を含む。
【0011】
骨固定装置では、ロッド及び固定要素がまだ受け部に挿入されていないときに、挿入されたシャンクに対する受け部の位置合わせの外科的ステップが、所定の角度位置を確認することができるため容易になる。他の角度位置は、受け部に対してヘッドをロックする前に、ヘッドが受け部に対して摩擦によって一時的に保持されるため、容易に調整することができる。
【0012】
所定の角度位置は、シャンクと受け部とが互いに同軸となる位置であってもよい。この位置は、「ゼロ位置」とも呼ばれる。シャンクがゼロ位置にあるときに、シャンクに対する受け部のその場での位置合わせの間にフィードバックを得ることは、外科医にとって有利であるかもしれない。
【0013】
骨固定装置では、予め定義された角度位置を示すための相互作用は、シャンクと圧力部材との間の相互作用のみに限定される。シャンクが枢動されて予め定義された角度位置に入るときには、受け部材は関与しない。したがって、予め定義された角度位置の指示は、受け部内におけるヘッドのクランプとは実質的に独立している。
【0014】
フィードバックは触覚フィードバックであってもよく、受け部が所定の角度位置に達したときにユーザが手で感じる。さらに、受け部が所定の角度位置にあり、その位置から移動させなければならないとき、触覚フィードバックは、乗り越えるべき抵抗によっても生成されてもよい。
【0015】
いくつかの構成では、ユーザによって得られるフィードバックは可聴フィードバックであってもよい。そのような可聴フィードバックは、第1の位置指示構造と第2の位置指示構造との弾力的な係合によって引き起こされてもよい。
【0016】
ヘッド及び圧力部材上の第1及び第2の位置指示構造は、それぞれ、骨固定要素がその下端部から受け部に挿入されるボトム装填タイプ、及び、骨固定要素がその上端部から受け部に挿入されるトップ装填タイプの多軸骨固定装置において提供されてもよい。
【0017】
別の局面によれば、骨固定装置が提供され、骨固定装置は、骨に固定するためのシャンクとヘッドとを有する固定要素と、固定要素のヘッドを受ける受け部とを備え、受け部は、シャンクが受け部に対して所定の角度位置を含む複数の角度位置をとることができるようにヘッドを枢動可能に受けるように構成されており、受け部は、中心軸を定義する通路を有し、骨固定装置は、受け部内でヘッドをクランプするためにヘッドに圧力をかけるように構成された圧力部材を備え、圧力部材は、通路内に少なくとも部分的に配置される。ヘッドは、圧力部材の第2の位置指示構造に係合するように構成された第1の位置指示構造を含み、受け部に対するシャンクの所定の角度位置の支持を提供する。圧力部材は、ヘッドの少なくとも一部を受けるためのヘッド受け凹部を含み、ヘッド受け凹部は、ヘッドの球形表面部と係合するように構成された球形表面部を含み、球形表面部の端部は、当該端部が第2の位置指示構造を形成するように切り欠きに続いている。
【0018】
さらなる特徴及び利点は、添付の図面による実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における骨固定装置の分解斜視図である。
【
図2】組み立てられた状態での
図1の骨固定装置の斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2の骨固定装置の断面図を示し、その断面は、受け部の中央長手方向軸を含むとともに受け部の脚部の中央を通って延びる平面における断面図である。
【
図4】
図1から3の骨固定装置の一部である骨固定要素の一部の上部からの斜視図である。
【
図5】
図4に示される骨固定要素の一部の側面図である。
【
図6】
図1から3の第1実施形態における骨固定装置の圧力部材の上部からの斜視図である。
【
図9a】
図8におけるA-A線での圧力部材の断面図である。
【
図10】
図3に示される組み立てられた状態での骨固定装置の一部の拡大断面図であって、骨固定要素は、受け部の中心軸との角度がゼロ角度とは異なる角度になっている拡大断面図である。
【
図11】骨固定装置がゼロ角度位置であるときの組み立てられた状態における
図3の骨固定装置の一部の拡大断面図である。
【
図12】骨固定装置がゼロ角度位置とは異なる角度位置における
図3の骨固定装置の拡大断面図である。
【
図13】骨固定装置の第2実施形態における骨固定要素の一部の斜視図である。
【
図15】骨固定要素がゼロ角度位置における骨固定装置の第2実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図16】骨固定要素がゼロ角度位置とは異なる角度位置での
図15に示される骨固定装置の第2実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図17】骨固定装置の第3実施形態における骨固定要素の一部の斜視図である。
【
図19a】骨固定要素がゼロ角度位置での第3実施形態における多軸骨固定装置の断面図を示し、その断面は、受け部の中央長手方向軸を含むとともに受け部の脚部の中央を通って延びる平面における断面図である。
【
図20a】骨固定要素がゼロ角度位置とは異なる角度位置での
図19aと同様の第3実施形態の多軸骨固定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3に一般的に示されている第1の実施形態に従った多軸骨固定装置は、ねじ山シャンク2とヘッド3とを有するねじ部材の形態の骨固定要素1を含んでいる。シャンク軸Sは、シャンク2の長手方向軸又はねじ軸によって定義される。その自由端3aにおいて、ヘッド3は、工具と係合するための凹部4を有していてもよい。骨固定装置は、ロッド100のような細長い安定化部材のための骨固定要素を連結するための受け部5をさらに含んでいる。圧力部材6は、ヘッド3の上面に設けられた受け部内に配置されている。圧力部材6に圧力をかけるためにロッド100を受け部5に固定するために、受け部5と協働する例えば止めねじのような形態のロック要素7をさらに設けてもよい。
【0021】
受け部5は、実質的に円筒状であり、第1の端部又は上端部5aと、第2の端部又は下端部5bと、上端部5aから下端部5bに向かって延びる通路51と、を有し、通路51は、長手方向の中心軸Cを画定している。通路51は、下端部5bに開口部52を形成し、この開口部52は、骨固定要素1のヘッド3が下端部52を通って挿入可能であるように、ヘッドの最大幅よりも大きい幅を有している。通路51は、異なる幅及び/又は形状を有する複数のセクションを有していてもよく、図面に示される正確な形状に限定されない。開口部52に隣接して、通路51は、下端部5bに向かって、例えば円錐状に狭くなる狭窄セクション51aを有している。狭窄セクション51aは、挿入されたヘッド3に対して圧力部材6を介して圧縮力がかかるように圧力部材6の一部と協働する。幅広セクション51bは、上端部5aの方向に狭窄セクション51aに続いている。幅広セクション51bは、当該幅広部内で圧力部材6の一部が広がってヘッド3の進入を許容するような寸法になっている。さらに、通路51は、中間セクション51cを有していてもよく、中間セクションは、幅広セクション51bよりも小さな幅を有し、かつ、圧力部材の一部が軸方向にそこでスライドすることを許容する。最後に、上端部5a及び中間セクション51cに隣接して、通路51は、ロック要素7の挿入及びロック要素7との協働を可能にするために、中間セクション51cよりも大きな内径を有するねじ穴51dとして形成されている。受け部5及びロック要素7のそれぞれのねじ部53,71は、ロック要素7の締め付け時における半径方向の力を低減又は排除するためのねじ部であってもよく、例えば、角ねじのようなものであってもよい。雌ねじ53の下端には、ねじ止まり53aが設けられていてもよい。さらに、
図1及び
図2に最もよく示されているように、実質的にU字形の凹部54が上端部5aに形成され、そこから離れるように延びている。実質的にU字形の凹部54は、受け部5の上部を2つの自由脚部55に分割し、ロッド100を受けるための溝を形成している。実質的にU字形の凹部54の長手方向軸は、ロッドが挿入されたときに、直線状のロッド100の長手方向軸と一致している。
【0022】
各脚部55の周方向の中央部で、かつ、実質的にU字形の凹部54の底部54aの上の軸方向位置には、各脚部55を貫通する貫通孔56が延びている。貫通孔56は、
図3に示すように、ピン57を受けるように構成されている。ピン57は、圧力部材6を受け部5に回転可能に固定するために機能してもよい。また、ピン57は、受け部5内での圧力部材6の上方への移動を制限するために機能してもよい。さらに、脚部55の両側には、受け部5の小型化に寄与する切り欠き58が形成されていてもよい。受け部5への工具の係合を可能にするために、周方向の溝及び/又は中央の凹部のような工具係合部59が脚部55に任意に設けられてもよい。
【0023】
図4及び
図5を追加的に参照して、骨固定要素1をより詳細に説明する。ヘッド3は、球体のセグメントの全体的な形状を有し、言い換えれば、球体の最大直径Eを有する断面を含むような大きさを有する切り取られた球体の全体的な形状を有する。球体のセグメントは、ヘッドの自由端3aとシャンク2の首部21との間に、外径が小さい方の一端が首部21に近く、外径が大きい方の他端が首部21よりも自由端3aに近いように配置されていてもよい。しかし、球体のセグメントはまた、最大直径Eを有する部分から両側に等距離延びていてもよいし、最大直径Eで終わるか最大直径E以下で終わるようにしてもよい。首部21は、実質的にネジ止めされていてもよい。
【0024】
より具体的には、ヘッド3は、その外表面に第1の湾曲部31と第2の湾曲部32とを含んでいる。第1の湾曲部31は、ヘッド3の全体的な形状を形成する球体セグメントによって定義され、球体の半径によって定義される第1の曲率半径R1を有している。さらに、第1の湾曲部31は、首部21に隣接又は近接して配置され、示された実施形態では最大の外径Eを含んでいる。第2の湾曲部32は、例えば、実質的に環状体セグメント形状であってもよく、第1の曲率半径R1よりも小さい第2の曲率半径R2を有している。第2の湾曲部32は、第1の湾曲部31とヘッド3の自由端3aとの間に位置している。ヘッド3の中心を通るとともにシャンク軸Sを含む断面において、第1の湾曲部31及び第2の湾曲部32の表面は、実質的に円弧を形成している。さらに、第1の湾曲部31と第2の湾曲部32は、ヘッド3の外表面が遷移33で実質的に連続するような方法で互いにつながっている。したがって、遷移33においては、実質的な段差がなく、あるいは換言すれば、遷移は無段差である。第1の湾曲部31及び第2の湾曲部32は、遷移33とともに、ヘッド3に設けられた第1の位置指示構造を形成している。なお、遷移の周囲の領域における第1の湾曲部31及び第2の湾曲部32の全体の一部のみが第1位置指示構造を形成してもよいことに留意すべきである。
【0025】
第2の湾曲部32のシャンク軸S方向の軸方向長さは、第1の湾曲部31の軸方向長さよりもかなり小さくてもよい。例えば、第2の湾曲部32は、面取り領域の典型的な軸方向長さのみを有していてもよい。第2の湾曲部は、例えば、ワークピースの端部に半径を形成するように構成された旋削工具を用いて製造されてもよい。なお、第1の湾曲部と第2の湾曲部との間の遷移からなるこのような第1の位置指示構造は、コスト削減の努力に寄与する比較的容易な製造であることに留意すべきである。
【0026】
自由端部3aは、実質的に平坦であってもよい。工具のための凹部4は、工具との形状フィット接続を提供するために、任意の形状、多角形形状、トルク形状、又は他の任意の形状を有していてもよい。
【0027】
ここで、
図6から
図9bを参照して、圧力部材6についてより詳細に説明する。本実施形態の圧力部材6は、単一の部材である。それは、第1の端部又は上端部6aと、第2の端部又は下端部6bと、を有する。上端部6aに隣接して、実質的に円筒状であってもよく、受け部5の通路51内で軸方向に移動可能な外径を有する上側部分61がある。上端部6aには、ロッド支持面を提供するロッド受け凹部62が形成されている。凹部61の下部は、圧力部材が受け部5内にあるときに受け部5の中心軸Cと一致する圧力部材6の円筒軸に対して実質的に垂直に延びる長手方向の軸を有する実質的にV字形の断面を有していてもよい。凹部62の深さは、ロッド100の直径よりも小さくてもよい。それゆえ、ロッド100が支持面上に載置されているとき、ロッド100は、例えば
図3に示されるように、圧力部材6の上端部6aの上に突出する。ロッド支持面のV字形は、異なる直径のロッドを使用することを可能にする。
【0028】
圧力部材6の下側部分63は、下端6bに隣接するその下側領域63aで受け部の狭窄セクション51aと協働するように構成されたテーパ状の、好ましくは円錐状の外表面を含む。ヘッド受け凹部64は、下端部6bからロッド受け凹部62の底部62aから離れた位置まで延びる下部領域63に形成されている。ヘッド受け凹部64は、下端部6bに近い下側セクション64aであって、その半径がヘッド3の第1の湾曲部31の半径と一致する実質的に中空の球体形状のものを有している。さらに、ヘッド受け凹部64の最上部64bもまた、下側セクション64aと同じ半径の中空球形状を有している。これにより、下側球形セクション64a及び上側球形セクション64bは、ヘッド3の第1の湾曲部31に球形の支持を提供し、これによりヘッド3が枢動可能な座部を形成している。これら2つの球形セクション64a,64bの間には、切り欠きの形態を有し、上側球形セクション64bの下端部よりも大きな内径を有する中間セクション64cが設けられている。より詳細には、中間幅広セクション64cは、例えば、実質的に平坦な段差で上側球形セクション64bの下端部から拡幅し、それが下側球形セクション(
図9a,9b)の内径と一致するまで、例えば円錐形状で、内径を増大させながら連続する。段差によって、エッジ65が形成される。エッジ65は、好ましくは丸みを帯びている。エッジ65は、球形部分の境界で規定されているため、ヘッド受け凹部64の内面は、球形部64a,64bのヘッド当接面から内部に突出する別個の突起から実質的に自由に形成することができる。
【0029】
さらに、圧力部材の下側部分63は、下端部6bに向かって開いた軸方向スロット67によって分離された可撓性壁セクション66を備えている。ある程度の可撓性を得るために、スロット67は、その閉じた端部67aに向かって広がってもよい。スロット67は、好ましくは、中間セクション64cと最上端の球形のセグメント形状セクション64bとの間の遷移まで軸方向に延びてもよい。
【0030】
ヘッド受け凹部64及びその中に形成されたセクションの大きさは、ヘッド3が挿入されたときに、ヘッド3の自由端3aが上側球形セクション64b内に延びるようなものである。そして、ヘッド3の外周面とヘッド受け凹部64の中間セクション64cの内周面との間に隙間68が形成される。さらに、ヘッド3とヘッド受け凹部64を含む圧力部材の下側部分63との大きさは、ヘッド3の上側部分がエッジ65に当接するまで可撓性壁セクション66を離間させることにより、ヘッドを下端部6bから挿入することができるようなものである。この接続は、スナップフィット接続に類似している。ヘッド3がヘッド受け凹部64に受けられると、例えばロック要素7でロックされる前に、可撓性壁セクション66を介して摩擦によりその中に保持される。
【0031】
圧力部材は、ロッド受け凹部62の側壁に形成された細長い凹部69をさらに含んでいる。細長い凹部69は、その長辺が中心軸Cに対して実質的に平行になるように配向されている。
図3に示すように、細長い凹部69は、側壁全体を通って延びており、ピン57を受けるように構成されている。これにより、圧力部材6が受け部5に装着された際に、細長い凹部69内に延びるピン57を介してその回転位置に固定することができる。さらに、受け部に対する圧力部材6の第1の端部5aに向けた相対的な上方移動は、凹部69の下端部69aに対するピン57の当接によって制限される。
【0032】
最後に、圧力部材6は、ヘッド3への、より具体的には工具を用いた骨固定要素1の凹部4へのアクセスを可能にするための同軸穴60を有している。
【0033】
骨固定装置の部品及び部分は、任意の材料で作られてよいが、好ましくは、チタンまたはステンレス鋼、または任意の生体適合性金属または金属合金、またはプラスチック材料で作られる。生体適合性合金としては、NiTi合金、例えばニチノールが使用されてもよい。他の材料は、マグネシウム又はマグネシウム合金であってもよい。使用するための生体適合性プラスチック材料は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリ-L-ラクチド酸(PLLA)であってもよい。部品は、同じ材料で作られていてもよいし、互いに別の材料で作られていてもよい。
【0034】
使用時には、骨固定要素1は、最初に骨又は椎骨の準備された穴に挿入されてもよく、予め組み立てられた圧力部材6を有する受け部5がヘッド3に取り付けられている。あるいは、骨固定要素1は、圧力部材6を有する受け部5がヘッド3に既に取り付けられているような方法で事前に組み立てられる。装着の際には、ピン57が細長い凹部69の下端部69aに対して当接する最上部の挿入位置に圧力部材6がある状態で、ヘッド3は、受け部の下端5aから挿入される。ヘッド3が挿入されると、圧力部材6は、下側外テーパ部63aが受け部5の狭窄セクション51aに入り込むとともにヘッド3に圧縮力がかかるまで下方に動かされる。また、この状態では、ヘッド3は、下側開口部52から取り外されることができない。
【0035】
ロッドを挿入してそれをロック要素7で固定することによって骨固定装置がまだ最終的にロックされていない限り、受け部5及び骨固定装置1は、骨固定装置1が受け部の中心軸Cに対するシャンク軸Sの様々な角度位置をとることができるように、互いに相対的に枢動させることができる。ヘッド3の摩擦クランプの強さに応じて、ロック前に任意の位置を暫定的に維持することができる。これは、ロッド及びロック要素7を挿入しなくても可能である。
【0036】
本実施形態における所定の位置は、
図3及び
図11に示すように、シャンク軸Sと受け部の中心軸Cとが一致する位置であってもよい。すなわち、骨固定要素は、受け部5に対してゼロ角度位置をとる。このゼロ角位置とは異なる位置は、
図10及び
図12に示されている。骨固定要素1がゼロ角度位置とは異なる角度位置にあるとき、エッジ65は、シャンクが枢動された側とは反対側でヘッド3の第2の湾曲部32に接触している。その後、ヘッド3が
図3及び
図11に示すゼロ角度位置に向かって受け部5に対して相対的に枢動されると、エッジ65は、半径が小さい第2の湾曲部32から半径が大きい第1の湾曲部31に向かってヘッド3の外表面に沿って移動し、それによって遷移を通過する。移動の間、第1の湾曲部31が上側球形セクション64bに接触するまで、圧力部材はわずかに拡大してもよい。小さな半径から大きな半径への遷移は、傾斜台のように機能し、ユーザへの触覚フィードバックを生成する。ユーザは、ゼロ角度位置に到達するまで、又は、別の角度位置に向かって枢動することによって再び離れるまで、傾斜の変化を経験してもよい。異なる湾曲セクションによって提供される位置指示構造は回転対称であるため、フィードバックは、任意の方向に枢動するときに生成される。
【0037】
適切な角度位置が見つかると、ロッド及び固定要素7を挿入して固定要素7を締め付けることにより、構造全体がロックされる。
【0038】
ここで、
図13から
図16を参照して、多軸骨固定装置の第2の実施形態について説明する。第2実施形態に従った多軸骨固定装置は、第1実施形態に従った多軸骨固定装置とは、骨固定要素及び圧力部材の形状が異なる。受け部は、第1実施形態にのものと同じである。同一又は類似度の高い部品は、同じ参照数字で示され、その説明は繰り返されない。骨固定要素1'は、最大直径Eを有するセクションを含むとともに、首部21につながる球形のセグメント形状部31'を有するヘッド3'を有している。球形の外表面は、首部21に向かって先細りする円錐部34によって中断されている。円錐部34は、自由端表面3aよりも首部21に近い位置にある。より具体的には、円錐部34は、ヘッド3'の下側部に位置しており、すなわち、最大直径Eを有するセクションと首部21に隣接する球形状部との間に挟まれている。円錐部34の軸方向の延長は、球形のセグメント形状部31'全体の軸方向の延長よりもかなり小さくてもよい。軸方向の長さは、枢動を可能にするのに十分な球形表面がまだ存在するのと同じくらい大きくてもよい。具体的には、例えば、球形のセグメント形状部31'の軸方向長さの3分の1未満又は4分の1未満であってもよい。
【0039】
圧力部材6'は、ヘッド3'の円錐セクション34と係合するための対応円錐部を備えている点を除いて、前の実施形態の圧力部材と同一である。
図15及び
図16に示すように、円錐セクション64dは、ヘッド受け凹部64の下側球形セクション64a内に形成されている。円錐セクション64dは、ヘッド3'の円錐セクション34と同じ円錐角を有していてもよく、同じ軸方向の延長を有していてもよい。しかし、軸方向の延長は、ヘッド3'の円錐セクション34の軸方向の延長よりも小さくてもよい。円錐セクション64dは、ヘッド受け凹部64の内壁内で円周方向に完全に延びており、ゼロ角度位置ではヘッド3'の円錐セクション34と一致するような高さにある。
【0040】
使用時には、ヘッド3'が受け部5内にある圧力部材6'に挿入され、圧力部材の外側円錐セクション63aと受け部の狭窄セクション51aとが係合してヘッドをクランプするように圧力部材が下方に移動されると、ヘッドは、球形のセグメント形状部31'がヘッド受け凹部64の球形セクション64a,64bに接触して骨固定要素の枢動を可能にするようにヘッド受け凹部64内に捕捉される。骨固定要素1'が
図15に描かれているようにゼロ角度位置にあるとき、ヘッド3'の円錐セクション34と圧力部材6'の64dとが係合している。これにより、ゼロ角度位置は自動的に中央に位置する。
図16に示すように、骨固定要素がゼロ角度位置とは異なる角度位置に枢動されると、ヘッド3'の円錐セクション34と圧力部材64の64dとは実質的に係合していない。ゼロ角度位置への移動又はゼロ角度位置からの移動は、フィードバック、好ましくはユーザへの触覚フィードバックを生成する。それゆえ、ゼロ角位置は、容易に識別され得る。
【0041】
なお、
図13から
図16に描かれた骨固定要素1'は、前の実施形態においてより小さい半径を有する自由端面3aに近い第2の湾曲部32を有していないことに留意すべきである。しかしながら、骨固定要素1'もまた、第1実施形態と同様に、より小さい半径を有する第2の湾曲部32を有することが考えられる。
【0042】
図17から
図20bを参照して、多軸骨固定装置の第3の実施形態を説明する。
第3の実施形態に従った多軸骨固定装置は、骨固定要素の形状、より具体的には骨固定要素のヘッドの形状において、第1及び第2の実施形態に従った多軸骨固定装置とは異なる。先の実施形態のものと同一又は高度に類似している部品及び部分は、同じ参照数字で示され、その説明は繰り返されない。骨固定要素1"は、第2の実施形態と同様に、全体的に球形のセグメント形状部31"を有するヘッド3"を有している。球形のセグメント形状部31"は、最大直径Eを有するセクションを含んでいてもよい。自由端3aから離れた位置には、中心軸の周りに円周方向にかつ同心円状に延びる溝35が形成されている。溝35は、球形の輪郭のような丸みを帯びた内側輪郭を有していてもよい。さらに、溝35は、比較的小さく浅い。具体的には、溝35の深さは、球形のセグメント形状部31"の球状の外側輪郭と溝35との間に遷移を生じさせるのに十分であるようなものであってもよい。溝の軸方向位置は、溝35が首部21よりも自由端3aに近いようなものである。それは、図示のように、自由端3aからの距離が、軸方向における溝の幅とほぼ同じか、又は溝の幅よりもわずかに大きい程度であってもよい。
【0043】
使用時には、圧力部材6が受け部内にあるときに圧力部材6のヘッド受け凹部64内にヘッド3"が挿入され、圧力部材6の下側外円錐部63aが受け部の狭窄部51aと係合してヘッドをクランプするように下方に移動されると、ヘッド3"は、圧力部材の上側球形のセグメント形状部64bに当接する。
図19a及び19bに示すように、骨固定要素がゼロ角度位置にあるとき、エッジ65は、溝35内にわずかに突出している。したがって、骨固定要素1"は、ゼロ角度位置にわずかに保持される。
図20a及び20bに示すように、骨固定要素1"が枢動されると、エッジ65は、溝35の外に移動される。これにより、使用者にフィードバック、例えば触覚フィードバックが与えられる。同様に、エッジ65が溝35内に移動すると、そのようなフィードバックが発生する。このフィードバックは、触覚抵抗であってもよい。したがって、ゼロ角位置に移動するとき、フィードバックは、ゼロ角位置を容易に識別し得るユーザに与えられる。
【0044】
なお、ヘッドは、第2の実施形態のような円錐面をさらに有していてもよく、圧力部材は、第2の実施形態のような円錐面をさらに有していてもよいことに留意すべきである。代替的に、又は追加的に、ヘッドは、第1の実施形態のように、より小さな半径を有する付加的なセクションを有していてもよい。
【0045】
上述した実施形態の変更が考えられる。1つの実施形態の特徴が他の実施形態の特徴と組み合わされ、様々なさらなる実施形態を提供することができる。受け部は、示された様々な実施形態の受け部に限定されるものではない。相互作用はヘッドと圧力部材との間のみであるため、すべての既知の受け部を使用して、第1及び第2の位置指示構造を有する適切な骨固定要素及び圧力部材を後付けしてもよい。位置指示構造は、ゼロ位置のみを指示することに限定されない。それらはまた、シャンクが受け部に対してゼロとは異なる角度をとる所定の位置を示すために使用することもできる。この場合、位置指示機能は、他の位置にあってもよい。
【0046】
ヘッドは、球形のヘッドであり、圧力部材は、球形のヘッド受け凹部を有するように示されているが、骨固定装置はそれに限定されない。ヘッド及び圧力部材は、1つ又は複数の異なる平面のみで角度調整を可能にするような形状であることが考えられる。