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  • 特許-検出装置及び検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20240913BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N25/18 A
G01J5/48 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021034881
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135219
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】新藤 善二郎
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-282770(JP,A)
【文献】特開昭55-002928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103235003(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理機構により生じた熱を有する物体が撮影されることで得られる熱画像を、取得する熱画像取得部と、
前記熱画像取得部により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換する等温度線処理部と、
前記等温度線処理部により得られた画像が示す等温度線から、代表となる等温度線である代表線を選択する代表線選択部と、
前記代表線選択部により選択された代表線に基づいて、前記熱処理機構自体に伴う特徴を検出する特徴検出部と
を備えた検出装置。
【請求項2】
代表線を選択するための温度情報を取得する温度情報取得部を備え、
前記代表線選択部は、前記温度情報取得部により取得された温度情報に基づいて、代表線の選択を行う
ことを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記温度情報取得部は、温度情報として、前記熱処理機構の熱源温度の設定値又は計測値を取得する
ことを特徴とする請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
熱画像取得部が、熱処理機構により生じた熱を有する物体が撮影されることで得られる熱画像を、取得するステップと、
等温度線処理部が、前記熱画像取得部により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換するステップと、
代表線選択部が、前記等温度線処理部により得られた画像が示す等温度線から、代表となる等温度線である代表線を選択するステップと、
特徴検出部が、前記代表線選択部により選択された代表線に基づいて、前記熱処理機構自体に伴う特徴を検出するステップと
を有する検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱画像を用いて、熱処理機構の機械的な不具合等を検出する検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットメルトの検査等に熱画像(温度分布図)が利用されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示された装置では、熱画像からホットメルトの塗布量を算出し、ホットメルトの塗布量の良否を判定する。なお、上記熱画像は、ホットメルトが塗布されて接着されたワークを撮影するサーモグラフィにより得られた熱画像である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-114497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された装置では、熱画像における温度分布の平均温度、最高温度、最低温度又は温度標準偏差等を算出することで、ホットメルトの塗布量の良否を判定することは可能である。しかしながら、上記装置では、熱処理機構の機械的な不具合等の検出は、対象外である。なお、熱処理機構は、特許文献1であれば、ホットメルトをワークに塗布するノズルヘッド部が相当する。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、熱画像を用いて、熱処理機構の機械的な不具合等も検出可能とする検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る検出装置は、熱処理機構により生じた熱を有する物体が撮影されることで得られる熱画像を、取得する熱画像取得部と、熱画像取得部により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換する等温度線処理部と、等温度線処理部により得られた画像が示す等温度線から、代表となる等温度線である代表線を選択する代表線選択部と、代表線選択部により選択された代表線に基づいて、熱処理機構自体に伴う特徴を検出する特徴検出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、熱画像を用いて、熱処理機構の機械的な不具合等も検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る検出装置の構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る検出装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3A図3Cは、実施の形態1における熱画像取得部により取得された熱画像の一例を示す図である。
図4図4A図4Cは、実施の形態1における等温度線処理部により得られた等温度線に対して、代表線選択部により選択された代表線の一例を示す図である。
図5図4Aに示す代表線と図4Cに示す代表線とを比較した図である。
図6】実施の形態1における熱画像取得部により取得された熱画像の別の一例を示す図である。
図7】実施の形態1における等温度線処理部により得られた等温度線に対して、代表線選択部により選択された代表線の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る検出装置の構成例を示す図である。
検出装置は、熱画像(温度分布図)を用い、熱処理機構の機械的な不具合等を検出する。熱処理機構としては、例えば、ホットメルトを塗布するノズルヘッド部が挙げられる。この検出装置は、図1に示すように、熱画像取得部1、等温度線処理部2、温度情報取得部3、代表線選択部4及び特徴検出部5を備えている。
【0010】
なお、検出装置は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0011】
熱画像取得部1は、熱画像を取得する。この熱画像は、サーモグラフィ等の熱を感知可能な撮影装置によって、熱処理機構により生じた熱を有する物体が撮影されることで得られる。上記熱を有する物体は、例えば熱処理機構がノズルヘッド部である場合には、当該ノズルヘッド部により塗布されたホットメルトである。なお、上記熱画像は、熱処理機構により熱を有する物体が生じた後、可能な限り早い段階で撮影されることで得られた画像であることが望ましい。すなわち、熱画像取得部1は、上記熱を有する物体が熱処理機構以外の諸々の要因で変化する前の状態の熱画像を取得する。また、上記熱を有する物体は、高温の物体に限らず、低温の物体であってもよい。
【0012】
等温度線処理部2は、熱画像取得部1により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換する。この際、例えば、等温度線処理部2は、上記熱画像に対し、所望の等温度線の温度(誤差レベルの温度範囲を含む)に該当する画素以外の画素を無効にすることで、等温度線に相当する部分の画素を残すことができ、等温度線を示す画像に変換可能である。なお、等温度線処理部2による処理方法は、上記例に限らない。
【0013】
温度情報取得部3は、代表となる等温度線(代表線)を選択するための温度情報を取得する。温度情報としては、熱処理機構の熱源温度の設定値又は計測値等が挙げられる。例えば、熱処理機構がノズルヘッド部である場合、温度情報取得部3は、当該ノズルヘッド部におけるホットメルトの温度制御の設定値又は計測値を温度情報として用いることができる。
【0014】
代表線選択部4は、等温度線処理部2により得られた画像が示す等温度線から、代表線を選択する。なお、代表線選択部4は、温度情報取得部3により温度情報が取得されている場合には、当該温度情報に基づいて、上記代表線の選択を行う。例えば、代表線選択部4は、温度情報が熱源温度の設定値又は計測値を示している場合、上記画像が示す等温度線のうち、当該設定値又は計測値に最も近い温度の等温度線を代表線として選択する。
【0015】
特徴検出部5は、代表線選択部4により選択された代表線に基づいて、熱処理機構自体に伴う特徴を検出する。上記熱処理機構自体に伴う特徴としては、例えば、熱処理機構の機械的な不具合が挙げられる。この際、特徴検出部5は、画像認識技術又は画像照合技術を用いて、上記特徴の検出を行う。例えば、特徴検出部5は、代表線を、予め把握している正常パターン又は不具合パターンと比較し、差分領域の総面積等により画像照合を行うことで、上記特徴を検出する。なお、特徴検出部5による処理方法は、上記例に限らない。
【0016】
また、検出装置は、上記の各構成で用いられるデータに対し、ノイズ成分処理又は統計的処理等のような処理を適宜実施してもよい。
【0017】
次に、図1に示す実施の形態1に係る検出装置の動作例について、図2を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示す実施の形態1に係る検出装置の動作例では、図2に示すように、まず、熱画像取得部1は、熱画像を取得する(ステップST201)。この際、熱画像取得部1は、上記熱を有する物体が熱処理機構以外の諸々の要因で変化する前の状態の熱画像を取得する。
【0019】
次いで、等温度線処理部2は、熱画像取得部1により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換する(ステップST202)。
【0020】
また、温度情報取得部3は、代表線を選択するための温度情報を取得する(ステップST203)。温度情報としては、熱処理機構の熱源温度の設定値又は計測値等が挙げられる。
【0021】
次いで、代表線選択部4は、温度情報取得部3により取得された温度情報に基づいて、等温度線処理部2により得られた画像が示す等温度線から、代表線を選択する(ステップST204)。例えば、代表線選択部4は、温度情報が熱源温度の設定値又は計測値を示している場合、上記画像が示す等温度線のうち、当該設定値又は計測値に最も近い温度の等温度線を代表線として選択する。
【0022】
次いで、特徴検出部5は、代表線選択部4により選択された代表線に基づいて、熱処理機構自体に伴う特徴を検出する(ステップST205)。この際、特徴検出部5は、画像認識技術又は画像照合技術を用いて、上記特徴の検出を行う。例えば、特徴検出部5は、代表線を、予め把握している正常パターン又は不具合パターンと比較し、差分領域の総面積等により画像照合を行うことで、上記特徴を検出する。
【0023】
この実施の形態1に係る検出装置のように、熱画像に対して等温度線を鮮明化する処理を行うことで、形状認識技術の対象となる画像に変換可能である。そして、実施の形態1に係る検出装置では、上記変換後の画像に対して、人工知能(AI)等を利用した画像認識技術又は画像照合技術を用いることで、熱処理機構の機械的な不具合等のような熱処理機構自体に伴う特徴を検出可能となる。
【0024】
また、熱画像に対して等温度線を鮮明化する処理を行った場合、言うまでもなく、複数の異なる温度の等温度線が得られる。この場合、複数の等温度線のうち、熱処理機構の影響が現れやすい温度の等温度線を代表線として採用することが好ましい。よって、実施の形態1に係る検出装置では、例えば熱処理機構の熱源温度に近い等温度線を代表線とすることが好ましい。また、熱源温度は、熱処理機構で温度制御されていることが一般的であるため、温度制御の設定値又は計測値を熱源温度と見做すことも可能である。
【0025】
次に、図1に示す実施の形態1に係る検出装置の具体的な動作例について、図3~5を参照しながら説明する。なお、以下では、熱処理機構が、ホットメルトを塗布するノズルヘッド部である場合を例に説明を行う。また、図3~5に示す画像は架空の画像である。
【0026】
まず、熱画像取得部1により取得された熱画像の一例を図3に示す。なお、図3に示す熱画像は、サーモグラフィ等の熱を感知可能な撮影装置によって、ノズルヘッド部による塗布直後のホットメルトが撮影されることで得られた熱画像である。図3に示す熱画像では、色が濃くなるにつれて温度が高い状態を示している。
図3Aは、熱処理機構が正常な状態(例えば初期状態)での熱画像であり、特徴検出部5において基準として用いられる「正常パターンの等温度線」を作成するための熱画像に該当する。また、図3B及び図3Cは、熱処理機構の稼働時の熱画像であり、特徴検出部5において上記基準と照合される「特徴検出対象の等温度線」を作成するための温度分布に該当する。
【0027】
次に、図3に示す熱画像に対し、等温度線処理部2による処理及び代表線選択部4による処理で得られた等温度線及び代表線の一例を図4に示す。
図4Aは、図3Aに示す熱画像に対し、等温度線処理部2による処理で得られた等温度線及び代表線選択部4による処理で得られた代表線を示し、「予め把握している正常パターン」に該当する。図4Aにおいて、実線の等温度線は代表線選択部4により選択された代表線であり、破線の等温度線は当該代表線以外の等温度線である。なお、上記代表線としては、熱源温度(図3Aに示す熱画像を取得した際のノズルヘッド部におけるホットメルトの温度制御の設定値又は計測値)に最も近い温度の等温度線が選択される。
図4B及び図4Cは、図3B及び図3Cに示す熱画像に対し、等温度線処理部2による処理で得られた等温度線及び代表線選択部4による処理で得られた代表線を示し、「特徴検出対象の等温度線」に該当する。図4B及び図4Cにおいて、実線の等温度線は代表線選択部4により選択された代表線であり、破線の等温度線は当該代表線以外の等温度線である。なお、上記代表線としては、熱源温度(図3B及び図3Cに示す熱画像を取得した際のノズルヘッド部におけるホットメルトの温度制御の設定値又は計測値)に最も近い温度の等温度線が選択される。
【0028】
ここで、図4Bに示す等温度線は、上側が下側に対して間隔が狭まっており、一見すると、何らかの不具合等が生じているようにも見える。しかしながら、これは、熱処理機構以外の要因によるものであり、図4Bに示す代表線は図4Aに示す代表線と形状が完全に一致しているため、検出装置は、熱処理機構の機械的な不具合等は生じていないことを検出する。
一方、図4Cに示す等温度線は、ほぼ等間隔となっており、一見すると、不具合等は生じていないようにも見える。しかしながら、図5に示すように、図4Cに示す代表線は図4Aに示す代表線とは形状が一致しておらず、検出装置は、熱処理機構の機械的な不具合等が生じていることを検出する。
【0029】
なお図6は、ノズルヘッド部の熱源温度が変化した場合の熱画像を示している。この場合、代表線選択部4は、上記変化に合わせて、変化後の熱源温度に最も近い温度の等温度線を選択すればよい。図6の例では、図4Aと同じ代表線が得られる。
【0030】
また上記では、代表線選択部4が、等温度線処理部2による処理で得られた等温度線のうち、最高温度の等温度線を代表線として選択した場合を示した。しかしながら、これに限らず、例えば図7に示すように、代表線選択部4が、等温度線処理部2による処理で得られた等温度線のうち、最高温度以外の等温度線を代表線として選択する場合が存在してもよい。
【0031】
また、実施の形態1に係る検出装置(代表線選択部4)で1つの画像から選択される代表線は、1本に限らず、複数本でもよい。例えば、検出装置は、熱源温度に近い温度の等温度線から順に3本までを代表線として選択するとしてもよい。
また、実施の形態1に係る検出装置(等温度線処理部2)は、任意の設定温度間隔で等温度線を示す画像を得るようにすると、更に好適である。これにより、実施の形態1に係る検出装置は、適切な温度間隔を自動で設定して等温度線を示す画像を得ることが可能となり、熱処理機構で設定温度が変更されることが想定される場合等でも臨機応変に対応可能となる。
【0032】
また、温度情報取得部3により取得される温度情報として、熱源温度の設定値又は計測値だけではなく、熱源の周囲の温度の計測値が含まれていてもよい。この場合、例えば、代表線選択部4は、熱源温度の設定値又は計測値と熱源の周囲の温度の計測値との差分値に基づいて、代表線を選択してもよい。
例えば、ノズルヘッド部によるホットメルトの塗布先である部材の温度が低い場合、塗布直後からホットメルトの温度の低下が生じてしまう可能性がある。このような場合、代表線として熱源温度の設定値又は計測値に最も近い温度の等温度線を選択することが適切であるとは限らない。そこで、検出装置は、上記のような点を考慮し、熱源温度及びその周囲の温度との差分値から、熱源温度よりも低い温度に相当する等温度線を代表線として選択してもよい。
【0033】
以上のように、この実施の形態1によれば、検出装置は、熱処理機構により生じた熱を有する物体が撮影されることで得られる熱画像を、取得する熱画像取得部1と、熱画像取得部1により取得された熱画像を、等温度線を示す画像に変換する等温度線処理部2と、等温度線処理部2により得られた画像が示す等温度線から、代表となる等温度線である代表線を選択する代表線選択部4と、代表線選択部4により選択された代表線に基づいて、熱処理機構自体に伴う特徴を検出する特徴検出部5とを備えた。これにより、実施の形態1に係る検出装置は、熱画像を用いて、熱処理機構の機械的な不具合等も検出可能となる。
【0034】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 熱画像取得部
2 等温度線処理部
3 温度情報取得部
4 代表線選択部
5 特徴検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7